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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018273
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】光量調節装置および携帯端末
(51)【国際特許分類】
   G03B 9/02 20210101AFI20220120BHJP
   G03B 9/06 20210101ALI20220120BHJP
   G02B 7/02 20210101ALI20220120BHJP
   G02B 7/04 20210101ALI20220120BHJP
   G03B 5/00 20210101ALI20220120BHJP
【FI】
G03B9/02 C
G03B9/06
G02B7/02 H
G02B7/04 E
G03B5/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121268
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000104652
【氏名又は名称】キヤノン電子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川久保 直樹
【テーマコード(参考)】
2H044
2H080
2K005
【Fターム(参考)】
2H044AG01
2H044BE02
2H044BE06
2H044BE10
2H080AA21
2H080AA34
2H080AA38
2H080AA54
2H080AA64
2H080AA76
2H080DD07
2K005AA04
2K005CA14
2K005CA23
2K005CA53
(57)【要約】
【課題】絞り部材が光軸と直交する方向に移動した場合においても、光量を精度よく調整することができる光量調節装置を提供する。
【解決手段】光通過開口1bを有するベース部材1と、光が通過するレンズを保持し、基準位置から光の光軸と直交する方向に移動可能なレンズ保持部材2と、レンズ保持部材2に取り付けられ、光通過開口1b内に進退して絞り開口を形成する絞り羽根9と、レンズ保持部材2に取り付けられると共に、マグネットを保持し絞り羽根9を駆動する駆動力を伝達する駆動レバー5と、マグネット6と対向してベース部材1に配置されたコイル7を有し、駆動力を発生する駆動源とを備え、コイル7に通電して駆動レバー5を移動させる際に、レンズ保持部材2における基準位置からの移動量に応じて駆動レバー5の移動量を補正することを特徴とする。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光通過開口を有するベース部材と、
前記光が通過するレンズを保持し、基準位置から前記光の光軸と直交する方向に移動可能なレンズ保持部材と、
前記レンズ保持部材に取り付けられ、前記光通過開口内に進退して絞り開口を形成する絞り羽根と、
前記レンズ保持部材に取り付けられると共に、マグネットを保持し前記絞り羽根を駆動する駆動力を伝達する駆動レバーと、
前記マグネットと対向して前記ベース部材に配置されたコイルを有し、前記駆動力を発生する駆動源と
を備え、
前記コイルに通電して前記駆動レバーを移動させる際に、前記レンズ保持部材における前記基準位置からの移動量に応じて前記駆動レバーの移動量を補正することを特徴とする光量調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載する光量調節装置であって、
前記レンズ保持部材が移動される時に、前記レンズ保持部材に対する前記駆動レバーの相対位置が変化しないことを特徴とする光量調節装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の光量調節装置を有し、
前記コイルへの通電量を制御して前記絞り開口の開口面積を変更することを特徴とする携帯端末。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯端末に搭載されるカメラ等の光学系として設けられる光量調節装置及びそれを備えるスマートフォンなどに代表される携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、スマートフォンに代表される携帯端末や電子機器では、写真や動画が撮影できる光学機器が備えられている。最近のそれらの光学機器は、手振れによる撮影画像のブレを抑制する防振機構が備えられたものや、絞りを備えることで、光学特性を高めているものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-151312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、防振機構などを作動させる際に、光通過口を変化させる絞り部材が光軸と直交する方向に移動すると、その駆動機構との相対位置がずれ、調整した光量がずれる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような課題を鑑み、本発明の光量調節装置では、
光通過開口を有するベース部材と、
前記光が通過するレンズを保持し、基準位置から前記光の光軸と直交する方向に移動可能なレンズ保持部材と、
前記レンズ保持部材に取り付けられ、前記光通過開口内に進退して絞り開口を形成する絞り羽根と、
前記レンズ保持部材に取り付けられると共に、マグネットを保持し前記絞り羽根を駆動する駆動力を伝達する駆動レバーと、
前記マグネットと対向して前記ベース部材に配置されたコイルを有し、前記駆動力を発生する駆動源と
を備え、
前記コイルに通電して前記駆動レバーを移動させる際に、前記レンズ保持部材における前記基準位置からの移動量に応じて前記駆動レバーの移動量を補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、絞り部材が光軸と直交する方向に移動した場合においても、光量を精度よく調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る携帯端末の一例。
図2】本発明の一実施形態に係るレンズユニットの斜視図。
図3】本発明の一実施形態に係るレンズユニットの分解斜視図。
図4】本発明の一実施形態に係る絞り羽根の斜視図。
図5】本発明の一実施形態に係るレンズユニットのフォーカス機構動作図。
図6】本発明の一実施形態に係るレンズユニットの防振機構動作図。
図7】本発明の一実施形態に係る絞りアクチュエータの動作説明図。
図8】本発明の一実施形態に係る絞りの状態図。
図9】本発明の一実施形態に係る防振機構およびアクチュエータの動作説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(第1実施形態)
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る携帯端末の斜視図で、携帯端末は一例としてスマートフォンが挙げられる。
【0009】
図1に示すように、レンズモジュール100は、点線で示すスマートフォン500における背面側に設けられる。このレンズモジュール100に対し、スマートフォン500の正面側には撮像素子としてのカメラモジュールが配置され、レンズモジュール100内部に配置されるレンズによって撮像素子の撮像面に被写体像を結像する。
【0010】
レンズモジュール100について詳述する。図2(a)には本実施形態に係るレンズモジュール100の斜視図を示している。図2(b)は一部部品の表示を消した内部構造を示す斜視図を示している。図2(c)は図2(b)を中心軸に対して180度回転させた方向からの斜視図を示している。図3には本実施形態に係るレンズモジュール100の分解斜視図を示している。
【0011】
レンズモジュール100は、図3に示すようにベース部材1とレンズユニット300と、レンズ保持部材2と、フォーカスベース部材18と、2つの防振コイル3a、3b(以下、まとめて防振コイル3と称す)と、2つの防振マグネット4a(図3では不図示)、4b(以下、まとめて防振マグネット4と称す)と、駆動レバー5と、駆動レバー5に取り付けられた絞りマグネット6と、複数の絞りコイル7と、駆動リング8と、複数の絞り羽根9と、羽根押さえ部材10と、レンズカバー11と、ベースカバー12を有する。
【0012】
このレンズモジュール100の中心軸200が、撮像装置の光軸となっている。ベース部材1は直方体形状で、後述のフォーカスベース部材18およびレンズ保持部材2が配置される空間1aが内部に設けられている。中心軸200周りには光を通す円形の光通過口1bが開いており、中心軸200と平行な側面には図2(b)、(c)に示すように後述の防振コイル3a、3bをそれぞれ取り付ける防振コイル取り付け部1c、1dと絞りコイル7を取り付ける絞りコイル取り付け部1eとフォーカス用コイル16を取り付けるフォーカス用コイル取り付け部1fの穴が開いている。図2(c)は図2(b)を中心軸に対して180度回転させた方向から表した斜視図であり、防振コイル取付部1cは絞りコイル取付部1eと対向する側面に、フォーカス用コイル取り付け部1fは防振コイル取り付け部1dと対向する側面に設けられている。
【0013】
レンズユニット300は1つまたは複数のレンズとそれらのレンズを保持するレンズ枠から成り、被写体の光を撮像素子に導く。
【0014】
レンズ保持部材2は前記レンズユニット300を保持し、フォーカスベース部材18の中央部の空間18aに配置される。フォーカスベース部材18の中央部の空間18aはレンズ保持部材2よりも大きく、空間18a内において、レンズモジュール100の中心軸200に直交する平面上でレンズ保持部材2が移動可能となっている。詳しくは後述するが、本実施形態においてレンズモジュール100の中心軸200に直交する平面上での移動とは、防振コイル3a、3bが設けられたベース部材1の二側面に直交する二方向に移動することを意味する。レンズ保持部材2の一側面で、防振コイル3aと近接する面には防振マグネット4aが取り付けられ、その面と直交する他側面で、防振コイル3bと近接する面には別の防振マグネット4bが取り付けられている。
【0015】
レンズ保持部材2は後述の光量調節装置のベースの部材となり、レンズモジュール100の被写体側の面には、後述の絞り羽根9の回転中心となる羽根回転軸2aと、後述の駆動リング8をラジアル方向に保持するラジアル支持凸部2bと、スラスト方向に保持するスラスト受け部2cとを備える。なお、図3においては、羽根回転軸2a、スラスト受け部2cに対しそれぞれ1つずつにのみ符号を付しているが、図3に示すように同様の構成のものを絞り羽根9の枚数や駆動リング8の支持に必要な数だけ複数ずつ有している。
【0016】
上述したように、フォーカスベース部材18はレンズ保持部材2が配置される空間18aが内部に設けられている。中心軸200周りには光を通す円形の光通過口18bが開いている。フォーカスベース部材18はベース部材1の中央部の空間1aに配置され、ベース部材1に対して中心軸200の方向になめらかに動くことが可能で、動作時はフォーカスベース部材18の内部の空間18aに配置されるレンズ保持部材2と共に中心軸200の方向に移動する。
【0017】
防振コイル3は、導線が巻き回され、通電によって磁界が発生するコイルであり、2つの防振コイル3a、3bがレンズモジュール100のベース部材1に取り付けられている。2つの防振コイル3a、3bは互いに直交するベース部材1の側面に配置されている。
【0018】
防振マグネット4は角型の永久磁石であり、両面4極に着磁されている。2つの防振マグネット4a、4bがレンズ保持部材2に取り付けられ、一方の防振マグネット4aは防振コイル3aに対向するよう配置され、もう一方の防振マグネット4bは防振コイル3aとは異なるもう一方の防振コイル3bに対向するよう配置されている。対になる防振コイル3と防振マグネット4は、防振コイル3のコイル中心軸上に、防振マグネット4の着磁境界線が略一致するよう配置されている。
【0019】
フォーカス用コイル16は、導線が巻き回され、通電によって磁界が発生するコイルであり、レンズモジュール100のベース部材1に取り付けられている。フォーカス用コイル16は防振コイル3bに対向するベース部材1の側面に配置されている。
【0020】
フォーカス用コイル16に対向するよう配置されたフォーカス用マグネット17(図5参照)は角型の永久磁石であり、両面4極に着磁されている。フォーカスベース部材18に取り付けられる。フォーカス用コイル16のコイル中心軸上に、フォーカス用マグネット17の着磁境界線が略一致するよう配置されている。
【0021】
駆動レバー5はレンズ保持部材2の側面に配置され、かつ、絞りコイル7に対向するように配置される。駆動レバー5の中央部には後述の絞りマグネット6が固定されている。駆動レバー5の被写体側には駆動リング8の接続部8cに挿通される駆動軸5aを備え、駆動レバー5の移動を駆動軸5a、接続部8cを介して駆動リング8に伝え、駆動リング8を回転運動させる。
【0022】
絞りマグネット6は角型の永久磁石であり、板圧方向に着磁されている。一方の面が駆動レバー5に固定され、もう一方の面が絞りコイル7に面対向するよう配置される。
【0023】
絞りコイル7は導線が巻き回され、通電によって磁界が発生するコイルであり、3つの絞りコイル7a、7b、7cがレンズモジュール100のベース部材1に、2つの防振コイル3が取り付けられた2つの面とは異なる面に設けられた絞りコイル取り付け部1eに取り付けられている。なお、本実施形態の絞りコイル7は3つ配置されているが、2つであっても4つ以上であってもよい。
【0024】
レンズ保持部材2、駆動リング8、複数の絞り羽根9、羽根押さえ部材10およびレンズカバー11が、この順でスラスト方向において積層される絞り装置の中心軸は、レンズモジュール100の中心軸200と一致しており、以下の説明では、この中心軸200に平行な方向をスラスト方向、直交する方向をラジアル方向という。
【0025】
絞り羽根9は、ベース部材1に形成された光通過口1bの周方向に複数配置されている。本実施形態では6つの絞り羽根9が用いられている。なお、絞り羽根の数は6つに限らず、複数であってもよい。図4には1つの絞り羽根9を拡大して示している。絞り羽根9は、絞り装置のラジアル方向にほぼ平行になるよう、隣接する絞り羽根9同士の表裏が重なり合うように環状に配置され、遮光機能を有する平板形状の遮光部9aと、レンズ保持部材2の羽根回転軸2aが挿通され嵌合する回転軸穴9bと、後述の駆動リング8に備えられた羽根駆動軸8bが挿通されるカム溝9cを有する。絞り羽根9は、駆動レバー5による駆動力が伝達された駆動リング8の回動に伴い光通過口1b内に進退し、絞り開口を形成する。
【0026】
駆動リング8は、中心に開口部8aを形成したリング形状をしており、複数の絞り羽根9のカム溝9cと嵌合する羽根駆動軸8bを有している。外周部の一部には、駆動レバー5の駆動軸5aが挿通する接続部8cが形成されている。また、駆動リング8の内周部は、レンズ保持部材2に形成されたラジアル支持凸部2bに当接することで、駆動リング8がレンズ保持部材2と嵌合し、中心軸200周りで回転可能に支持される。
【0027】
羽根押さえ部材10はその中央に光通過開口となる開口部10aを有する板状に形成されている。図2に示すように、カバー板10は、カバー板10とレンズ保持部材2との間に配置された絞り羽根9および駆動リング8を覆うように配置され、レンズ保持部材2に接着固定されることにより、駆動リング8とカバー板10の間に絞り羽根9が走行するスペースを形成する。また、羽根押さえ部材10には、レンズ保持部材2の羽根回転軸2aおよび駆動リング8の羽根駆動軸8bの動作軌跡を避ける穴が開いており、それ以外の部分においては絞り羽根9がこれらの軸から抜けることの無いようスラスト方向で押さえる羽根押さえ部が形成されている。
【0028】
レンズカバー11は、羽根押さえ部材10に固定され、中央に設けられた光通過開口の周囲の部分がレンズモジュール100の外観の一部となる部品である。被写体側の面にメッキや塗装を施すと美観を有する面にすることができる。
【0029】
ベースカバー12は、レンズモジュールの外装部品であり、ベース部材1の外周に配置される部品で、防振コイル3、絞りコイル7を保持している。
【0030】
以上のように構成されたレンズモジュール100においては、2つの防振コイル3へ通電することによって、手振れを補正するためにレンズ(レンズ保持部材2)を中心軸200に直交する平面方向に移動させる手振れ補正動作を行うことができ、フォーカス用コイル16へ通電することによって、合焦のためにレンズ(レンズ保持部材2)を中心軸200の方向(光軸方向)に移動させるオートフォーカス動作を行うことができる。また、後述するように3つの絞りコイル7へ所定の組み合わせで通電することによって絞り開口面積を変えて光量を調整することができる。
【0031】
合焦動作について図5を用いて説明する。フォーカス用コイル16に通電することにより磁界が発生し、両面4極に着磁されフォーカス用コイル16に対向して配置されたフォーカス用マグネット17が、例えば図5(a)に示す位置から図5(b)に示す位置に向けて、中心軸200方向に移動する。通電の電圧と移動量には相関があり、また通電の向きを逆方向とすると移動する方向も逆方向となる、これによりフォーカス用マグネット17と一体となっているレンズ保持部材2は中心軸200の方向に移動が可能で、レンズと撮像素子の距離を調整することにより合焦する。
【0032】
防振機構の動作について図6を用いて説明する。図6(a)はレンズモジュール100の中心軸200とレンズユニット300の中心軸が一致している状態を示している。
【0033】
図6(b)はレンズユニット300の中心軸がレンズモジュール100の中心軸200に対して図の右方向にずれている状態を示している。これは、防振コイル3bに通電することにより、板厚方向に着磁された防振マグネット4bが吸着された結果の一例である。また、通電の大きさによって移動量を変化させることができ、通電の向きを逆方向とすると、レンズユニット300およびレンズ保持部材2は図の左方向に移動する。
【0034】
図6(c)はレンズユニット300の中心軸がレンズモジュール100の中心軸200に対して図の上方向にずれている状態を示している。これは、防振コイル3aに通電することにより、着磁された防振マグネット4aが吸着された結果の一例である。また、通電の向きを逆方向とすると、レンズユニット300およびレンズ保持部材2は図の下方向に移動する。
【0035】
図6(d)はレンズユニット300の中心軸がレンズモジュール100の中心軸200に対して図の右上方向にずれている状態を示している。これは、防振コイル3aおよび3bに通電することにより、着磁された防振マグネット4a、4bが吸着された結果の一例である。また、通電の向きを逆方向とすると、レンズユニット300およびレンズ保持部材2は図の左下方向に移動する。
【0036】
本実施形態に係るレンズモジュール100が搭載されるカメラユニットが撮影状態にある場合、レンズモジュール100に加わる振れの方向と大きさに応じて、防振コイル3と防振マグネット4からなる防振機構の防振アクチュエータによってレンズ保持部材2を光軸直交平面内で移動させることでレンズユニット300を中心軸200に対してシフトさせ、結像面上での被写体像の像振れを抑制することができる。
【0037】
携帯端末500に内蔵した不図示のジャイロセンサによって移動角速度を検出し、その振れの角速度を時間積分して移動角度を求め、該移動角度から結像面上での像の移動量を演算すると共に、この像振れをキャンセルするためのレンズ保持部材2の駆動量を演算する。そして、この演算値に基づいて防振コイル3aと3bの通電制御を行う。
【0038】
次に、絞り装置の動作について図を用いて説明する。本実施形態のレンズモジュール100は、3つの絞りコイル7と駆動レバー5と絞りマグネット6で絞りアクチュエータを構成する。絞りコイル7に通電、励磁させ、マグネット6との間に吸着力、反発力を発生させて駆動レバー5を動作させる。
【0039】
図7(a)に示すように、左側の絞りコイル7aに通電をし、絞りマグネット6との間に吸着力を発生させると、マグネット6および駆動レバー5は左側のコイル7aに面対向する位置まで移動する。
【0040】
図7(b)に示すように、中央の絞りコイル7bに通電をし、絞りマグネット6との間に吸着力を発生させると、マグネット6および駆動レバー5は中央のコイル7bに面対向する位置まで移動する。
【0041】
図7(d)に示すように、右側の絞りコイル7に通電をし、絞りマグネット6との間に吸着力を発生させると、マグネット6および駆動レバー5は右側のコイル7cに面対向する位置まで移動する。
【0042】
さらに、図7(c)に示すように、中央と右側の絞りコイル7に通電をし、絞りマグネット6との間に吸着力を発生させると、マグネット6および駆動レバー5は中央と右側のコイル7b、7cの間の位置まで移動し停止する。さらに2つのコイル7b、7cの電圧のバランスを変えることで2つのコイル7b、7cに対向する任意の位置にマグネット6および駆動レバー5を移動させることができる。コイル7a、7bに対しても同様である。
【0043】
このように、駆動リング8を回動する駆動力を発生する駆動源として3つの絞りコイル7への通電を制御することにより、マグネット6および駆動レバー5は直線運動が可能で、作動範囲内の任意の位置に停止することができる。これによって、予め絞り開口径(絞り値)に対応付けて設定された所定量に通電を制御し、駆動レバー5を所望の位置に移動させることで、所望の絞り開口の開口面積が得られるように絞り開口を変更することができる。
【0044】
コイル7への通電は、上述したような吸着方向とは逆向きの電流を流してマグネット6と反発する磁界を発生させても良い。吸着と反発を組み合わせて動作することで、マグネット6および駆動レバー5の急加速、急減速が可能となり、絞り装置を高速に動作させることが可能となる。なお、このコイル7などへの通電量の制御は、レンズモジュール100が搭載される携帯端末500の制御装置(CPUなど)によって行われる。また、通電量の制御とは、3つの絞りコイル7に対し、どのコイルに通電するか、それぞれどの程度の電流を供給するか、のいずれの場合も含む。
【0045】
このように駆動レバー5が直進動作を行うと、駆動レバー5の駆動軸5aと駆動リング8の接続部8cを介して、駆動リング8がレンズ保持部材2に対して中心軸200の周方向に回転する。駆動リング8は、6つの絞り羽根9に駆動ピン8bを介して駆動レバー5からの駆動力を伝達する。これにより、各絞り羽根9は、駆動リング8の駆動ピン8bが絞り羽根のカム溝9cに沿って移動することで、羽根回転軸2aを中心として回動する。
【0046】
図8には、レンズモジュール100の上面図を示している。図8(a)に絞り羽根9がレンズモジュール100の光通過開口を開いている状態、図8(b)に絞り羽根9がレンズモジュール100の光通過開口を絞っている状態、図8(c)に絞り羽根9がレンズモジュール100の光通過開口を図8(b)よりもさらに絞っている状態を示す。駆動レバー5の停止位置を制御することで、駆動リング8の回転位置を制御することができ、複数の絞り羽根9の回動位置、つまりは該複数の絞り羽根9の遮光部9aによって形成される絞り開口のサイズ(径)が制御される。絞り開口径を調整することによって、レンズモジュール100を通過する光量を調節することができる。
【0047】
次に、絞り機構を小絞り状態としている際の防振機構の動作について、図9を用いて説明する。
【0048】
図9(a)は絞り機構が小絞り状態で、レンズモジュール100の中心軸の位置とレンズユニット300の中心軸が一致している基準位置にレンズユニット300が位置している状態を示している。つまり、防振機構が非作動の状態を示している。図9(b)は絞り機構の絞り値が図9(a)と同じで、防振機構が動作しレンズユニット300の中心がレンズモジュール100の中心軸に対して図の左方向にずれている状態を示している。 図9(c)は図9(b)の駆動レバー5周辺部を拡大した図を示している。
【0049】
図9(b)および(c)の破線は、図9(a)の状態における駆動レバー5および駆動リング接続部8cの位置を示している。図9(a)の状態の駆動レバー5の位置と、図9(b)および(c)の状態の駆動レバー5の位置の差をレバー補正量dとして示している。
【0050】
図9において破線で示すように、防振機構によってレンズユニット300が駆動レバーの動作方向に動く場合は、駆動レバー5および駆動リング接続部8cも防振機構の移動量分だけ非作動時に比べて移動する必要がある。なお、防振機構の移動量は、前述のように携帯端末500に内蔵したジャイロセンサの移動角速度から演算で求められており、これより駆動レバー5および駆動リング接続部8cの必要な移動量つまりレバー補正量dが求められる。
【0051】
前述のように、3つの絞りコイル7a、7b、7cへの通電を制御することにより、マグネット6および駆動レバー5は直線運動が可能で、作動範囲内の任意の位置に停止することができる。また、これにより図9(b)および(c)における破線で示す駆動レバーの位置から実線で示す駆動レバー5の位置に動かすことが可能である。
【0052】
したがって、防振機構によってレンズユニット300が移動していない状態に比べて、防振機構によってレンズユニット300が移動している状態においては駆動レバー5の位置をベース部材1に対してレバー補正量dに基づいて移動させることで、レンズ保持部材2に対する相対位置が変化しないようにすることにより、絞り開口の径を防振機構の動作の有無に関わらずに一定にすることができる。
【0053】
このような制御を防振機構作動時に行うことによって、設定された所望の絞り開口を形成することができ、レンズモジュールを通過する光量を精度よく調整することができる。
【0054】
なお、本実施形態においては、防振機構によってレンズユニット300が駆動レバー5の動作方向に動く場合のみレバー補正量dに基づいて駆動レバー5の位置を補正するものについて説明したが、これに限られない。例えば、防振機構によってレンズユニット300が駆動レバー5の動作方向と直交する方向に動く場合には、駆動レバー5が動く前後における絞りコイル7から及ぼされる磁界に大きな変化がないため、絞り開口は大きく変化しないが、そのわずかな変化を考慮した上でレバー補正量dを算出しても良い。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係るレンズモジュール100は、防振機構によって光軸と直交する方向に移動可能に構成したレンズユニット300を通過する光に対して絞り機構を設ける場合に、絞り羽根を移動させる駆動力を発生する駆動源(絞りコイル7)を、レンズユニット300が光軸と直交する方向に移動する際に移動しない部分(ベース部材1)に固定して取り付けたものである。この構成によって、防振機構を有するレンズモジュール100に絞り機構を設ける場合でも、駆動源の重量による防振動作への影響を低減することができ、また、防振動作時に光軸と直交する方向に移動する部材に駆動源を取り付けることによる、駆動源の配線への影響を低減することが出来る。さらに、本実施形態においては、防振機構によるレンズユニット300の移動に応じて、絞り羽根9を駆動する駆動力を伝達する駆動レバー5の移動量を補正することによって、レンズモジュール100を通過する光量を精度よく調整することができる。
【符号の説明】
【0056】
100 レンズモジュール
200 中心軸
300 レンズユニット
500 携帯端末
1 ベース部材
1a 空間 1b 光通過口 1c 防振コイル取り付け部
1d 防振コイル取り付け部 1e 絞りコイル取り付け部
1f フォーカス用コイル取り付け部
2 レンズ保持部材
2a 羽根回転軸 2b ラジアル支持凸部 2c スラスト受け面
3 防振コイル
4 防振マグネット
5 駆動レバー
5a 駆動軸
6 絞りマグネット
7 絞りコイル
8 駆動リング
8a 開口部 8b 羽根駆動軸 8c 接続部
9 絞り羽根
9a 遮光部 9b 回転軸穴 9c カム溝
10 羽根押さえ部材
10a 開口部
11 レンズカバー
12 ベースカバー
13 レンズ保持部材
13a 羽根回転穴 13b ラジアル支持凸部 13c スラスト受け面
14 駆動リング
14a 開口部 14b カム溝 14c 接続部
15 絞り羽根
15a 遮光部 15b 回転軸 15c 駆動軸
16 フォーカス用コイル
17 フォーカス用マグネット
18 フォーカスベース部材
18a 空間 18b光通過口
d レバー補正量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9