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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182740
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】カーペット用防汚洗浄剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/37 20060101AFI20221201BHJP
   C11D 3/12 20060101ALI20221201BHJP
   C11D 1/02 20060101ALI20221201BHJP
   A47L 11/03 20060101ALN20221201BHJP
   A47L 11/204 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
C11D3/37
C11D3/12
C11D1/02
A47L11/03
A47L11/204
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090453
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】319001710
【氏名又は名称】シーバイエス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079382
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 征彦
(74)【代理人】
【識別番号】100123928
【弁理士】
【氏名又は名称】井▲崎▼ 愛佳
(74)【代理人】
【識別番号】100136308
【弁理士】
【氏名又は名称】西藤 優子
(72)【発明者】
【氏名】石井 重和
(72)【発明者】
【氏名】菊地原 紀裕
【テーマコード(参考)】
4H003
【Fターム(参考)】
4H003AA02
4H003AB13
4H003AB18
4H003AB24
4H003AB27
4H003AB42
4H003DA04
4H003EA21
4H003EA25
4H003EB22
4H003EB28
4H003ED02
4H003FA04
4H003FA16
(57)【要約】
【課題】汚れの多様化および重歩行にも充分に対応できる洗浄力を有し、しかも大掛かりなシャンプー洗浄が不要で、簡便な日常メンテナンスでカーペットの美観を維持することができるカーペット用防汚洗浄剤組成物を提供する。
【解決手段】下記の(A)~(F)成分を含有するカーペット用防汚洗浄剤組成物であって、前記(A)~(D)成分をカーペット用防汚洗浄剤全体に対し下記の割合で含有し、JIS Z-8802:1984「pH測定方法」におけるpHが6~11であるカーペット用防汚洗浄剤組成物。
(A)平均分子量(Mw)が2000~30000であり、ガラス転移点(Tg)が50~150℃であるアルカリ可溶性樹脂:0.1~10質量%
(B)平均粒子径3~500nmであるコロイダルシリカ:0.1~5質量%
(C)アニオン系界面活性剤:0.1~5質量%
(D)フッ素系界面活性剤:0.08~2質量%
(E)水
(F)中和成分
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の(A)~(F)成分を含有するカーペット用防汚洗浄剤組成物であって、前記(A)~(D)成分をカーペット用防汚洗浄剤組成物全体に対し下記の割合で含有し、JIS Z-8802:1984「pH測定方法」におけるpHが6~11であることを特徴とするカーペット用防汚洗浄剤組成物。
(A)平均分子量(Mw)が2000~30000であり、ガラス転移点(Tg)が50~150℃であるアルカリ可溶性樹脂:0.1~10質量%
(B)平均粒子径3~500nmであるコロイダルシリカ:0.1~5質量%
(C)アニオン系界面活性剤:0.1~5質量%
(D)フッ素系界面活性剤:0.08~2質量%
(E)水
(F)中和成分
【請求項2】
(C)アニオン系界面活性剤として、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、メタキシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウムおよびクメンスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つを用いる請求項1記載のカーペット用防汚洗浄剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の内部の床等に施工されたカーペットの洗浄および防汚に用いられるカーペット用防汚洗浄剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーペットは、その外観や歩行感、保温性、および安全性等において他の床材より優れているため、従来、ホテル、オフィスビル、百貨店、会館、空港、小売店舗、スーパーマーケット、ショッピングモール、娯楽施設等の建物内部の有用な床材として多用されている。これらに施工されたカーペットのメンテナンスは、ほとんどが施工されたその場でカーペットを洗浄することによって行われており、その洗浄には、カーペットの材質や汚染状況および施工場所における歩行量による汚染の傾向等を把握した上で、カーペット用洗剤とカーペット洗浄機器類、ツールなどを組合せて行われている。
【0003】
このようなカーペットを洗浄する方法としては、例えば、シャンプー式洗浄方法、ヤーンパッド(ボンネットバフィング)式洗浄方法、エクストラクション式洗浄方法、パウダー式洗浄方法等があげられるが、これらの方法はそれぞれ一長一短がある。そこで、長所を生かしつつ欠点を排除し得るカーペット用防汚洗浄剤として、特許文献1のものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-101033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のものは、大掛かりなシャンプー洗浄が不要で、簡便な日常メンテナンスでカーペットの美観を維持することができるものの、近年の汚れの多様化および重歩行(例えば、大型商業施設等)を考慮すると、洗浄力がやや不足するおそれがある。
また、特にカーペットに過剰な油分が付着すると、その表面がべたつき、ブラシ付き真空掃除機では残留洗浄剤を回収できないおそれがあるため、これらの改善が望まれていた。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、汚れの多様化および重歩行にも充分に対応できる優れた洗浄力を有し、しかも大掛かりなシャンプー洗浄が不要で、簡便な日常メンテナンスでカーペットの美観を維持することができるカーペット用防汚洗浄剤組成物の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するため、本発明は、下記の[1]、[2]をその要旨とする。
[1] 下記の(A)~(F)成分を含有するカーペット用防汚洗浄剤組成物であって、前記(A)~(D)成分をカーペット用防汚洗浄剤組成物全体に対し下記の割合で含有し、JIS Z-8802:1984「pH測定方法」におけるpHが6~11であるカーペット用防汚洗浄剤組成物。
(A)平均分子量(Mw)が2000~30000であり、ガラス転移点(Tg)が50~150℃であるアルカリ可溶性樹脂:0.1~10質量%
(B)平均粒子径3~500nmであるコロイダルシリカ:0.1~5質量%
(C)アニオン系界面活性剤:0.1~5質量%
(D)フッ素系界面活性剤:0.08~2質量%
(E)水
(F)中和成分
[2](C)アニオン系界面活性剤として、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモウム、メタキシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウムおよびクメンスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つを用いる[1]記載のカーペット用防汚洗浄剤組成物。
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、従来のカーペット用防汚洗浄剤や繊維用の撥水撥油加工剤が有する撥水性および撥油性をさらに強化するのではなく、特に撥水性に着目し、むしろ、撥水性とは逆の、親水性を付与した方が、カーペットの洗浄性およびメンテナンスが容易になるのではないかと想起した。
【0009】
すなわち、従来、カーペット用防汚剤や繊維用の撥水撥油加工剤は、どのような汚れも寄せ付けないように、撥水性および撥油性をカーペットに付与することをよしとしている。このようなカーペット用防汚剤や繊維用の撥水撥油加工剤は、カーペットへの施工初期段階および歩行量が少ない箇所では効果がある。しかし、上記撥水性および撥油性は下記に示すとおり時間の経過とともに減少する。
まず、歩行による土砂の持ち込みおよび土砂の堆積、重歩行等により、撥水性および撥油性が付与されたカーペットといえども、その繊維が徐々に摩耗していく。この段階では、撥水性が不完全ではあるものの多少残っているため、水系洗剤でカーペットを洗浄しても上記撥水性の作用により、カーペットへの水系洗剤の浸透、拡散が妨げられてしまい、汚れを充分に落とすことができず「洗浄ムラ」が生じる。
そして、さらに繊維の摩耗が続くと、撥水性は完全になくなるが、その頃には撥油性もなくなっているため、カーペットの防汚性自体がなくなっている。この状態になるとカーペットは汚れきってしまい、通常のマイルドなカーペットクリーナーなどによる洗浄では汚れを落とすことが困難となる。本発明者らは上記知見に基づき本発明を完成させた。
【発明の効果】
【0010】
本発明のカーペット用防汚洗浄剤組成物(以下「洗浄剤組成物」と略すことがある)は、撥水性ではなく親水性を付与した防汚性を有しているため、水性の汚れに対しては親和性を発揮し、汚れを取り込んでカーペットの繊維に浸透および拡散させ、その汚れを目立たなくすることができる。しかも、その一方で、撥油性を有しているため、強固な油汚れおよび土砂汚れ等に対しては、徹底的にこれを弾いて寄せ付けることがない。
しかも、カーペットの汚れを取り込んだ上記洗浄剤組成物を乾燥させて上記汚れと一体的に皮膜化し、この皮膜化した洗浄剤組成物をブラシ付きの真空掃除機等で擦りながら吸引して除去することにより、カーペットに浸透および拡散した水性の汚れも洗浄することができる。
よって、上記洗浄剤組成物で定期的に洗浄等の簡便なメンテナンスを行うことにより、カーペットの美観を長期にわたって保つことができる。
【0011】
また、上記洗浄剤組成物は、pHが6~11、とりわけpH6~8の中性~弱アルカリの範囲を堅持することにより、洗浄剤組成物の安定性の維持、作業および環境への安全性の担保、そしてなによりも洗浄等のメンテナンスを定期的に行ってもカーペットの劣化を抑制し、同床材の品質保持をより簡便に行うことができる。
【0012】
さらに、本発明の中でも、アニオン系界面活性剤として、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、メタキシレンスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウムおよびクメンスルホン酸ナトリウムからなる群から選ばれた少なくとも一つを用いるものは、カーペットに散布し、汚れを洗浄して取り込んだ後に、固形物および半固形物の乾燥状態になりやすい(皮膜化しやすい)ため、真空掃除機による吸引が容易となり、清掃しやすくなる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0014】
本発明の洗浄剤組成物は、下記の(A)~(F)成分を含有するカーペット用防汚洗浄剤組成物であって、前記(A)~(D)成分を、カーペット用防汚洗浄剤組成物全体に対して特定の設定された割合で含有し、JIS Z-8802:1984「pH測定方法」におけるpHが6~11であるカーペット用防汚洗浄剤組成物である。
(A)平均分子量(Mw)が2000~30000であり、ガラス転移点(Tg)が50~150℃であるアルカリ可溶性樹脂:0.1~10質量%
(B)平均粒子径3~500nmであるコロイダルシリカ:0.1~5質量%
(C)アニオン系界面活性剤:0.1~5質量%
(D)フッ素系界面活性剤:0.08~2質量%
(E)水
(F)中和成分
以下、各成分について説明する。
【0015】
<(A)成分:アルカリ可溶性樹脂>
上記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、上記洗浄剤組成物の有効成分をカーペットの繊維に担持させて、その効果を持続させることを目的として配合されるものであり、通常、常温(23℃)では固体形状であり、液性に応じて中和溶解している。
そして、上記アルカリ可溶性樹脂は、平均分子量(Mw)が2000~30000の範囲にあり、3000~25000の範囲にあることが好ましく、5000~20000の範囲にあることがより好ましい。すなわち、上記アルカリ可溶性樹脂の平均分子量(Mw)が30000を超えると、アルカリ可溶性に劣る傾向がみられ、粘性が著しく高くなったり、ゲル状になったりして好ましくない。一方、上記アルカリ可溶性樹脂の平均分子量(Mw)が2000未満であると、上記有効成分をカーペットの繊維に担持させる樹脂としての硬度を維持できない傾向がみられる。
上記平均分子量(Mw)は、標準ポリスチレン分子量換算による重量平均分子量として算出することができる。
また、上記アルカリ可溶性樹脂は、ガラス転移点(Tg)が50~150℃の範囲にあり、70~130℃であることが好ましく、90~110℃であることがより好ましい。上記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移点が50℃未満であると、上記洗浄剤組成物が柔らかくなりすぎてカーペットに固着し、上記洗浄剤組成物を乾燥させた皮膜の崩壊性に乏しくなり好ましくない。一方、上記アルカリ可溶性樹脂のガラス転移点が150℃を超えると、アルカリ可溶性樹脂の重合が困難になる傾向がみられる。
【0016】
上記アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ジイソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ロジン変性マレイン酸、シェラック等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0017】
なかでも、他成分との組み合わせの容易性や産業上の入手のし易さの点から、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体,スチレン-メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-アクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-メタクリル酸エステル-アクリル酸共重合体、スチレン-αメチルスチレン-メタクリル酸エステル-メタクリル酸共重合体が好ましく用いられる。
【0018】
上記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、洗浄剤組成物全体に対して0.1~10質量%の範囲で配合され、より好ましくは0.5~3.0質量%の範囲で配合される。すなわち、0.1質量%未満の配合量では、洗浄剤組成物の皮膜化には至らず所望の効果が発揮できない上、界面活性剤のベタつきが抑えられない傾向がみられる。これに対し、上記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂を10質量%を超えて配合すると、皮膜強度が大き過ぎてカーペットの繊維に固着し、繊維の風合いを損ねたり、白い皮膜が目立ち外観を損ねたり、真空掃除機での回収が困難となる等の不具合を生じる。また、(B)成分であるコロイダルシリカの洗浄剤組成物中での安定性が低下しシリカ(二酸化ケイ素)の分離、沈降の原因となる傾向がみられる。
【0019】
上記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂の製造方法については、特に制限するものではないが、乳化重合法、溶液重合法、塊状重合法を採用することが好ましい。
【0020】
上記乳化重合法によって(A)アルカリ可溶性樹脂を製造するには、例えば、以下に述べる乳化剤、重合開始剤等を用いることができる。
【0021】
上記乳化剤としては、例えば、ジアルキルコハク酸ナトリウム、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキル硫酸ナトリウム、ジアルキルスルホ琥珀酸ナトリウム、ナフタレンスルホン酸のホルマリン縮合物等のアニオン系界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、スチレンスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホン酸ナトリウム、アルキルアリルスルホ琥珀酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルグリセリンエーテルサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェノールアルキルグリセリンエーテルサルフェート等の反応性乳化剤、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、水溶性アクリル酸エステル共重合体、水溶性メタクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体およびその塩、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体およびそれらの塩、ポリアクリルアミド共重合体、ポリメタクリルアミド共重合体等の高分子系界面活性剤等を用いることができ、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0022】
上記乳化剤の望ましい使用量は、通常、単量体質量の0.05~5質量%である。乳化剤の使用量が0.05質量%未満では乳化性に乏しく、一方5質量%を超えると耐水性に劣ることがある。
【0023】
上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、過酸化水素、ベンゾイルペルオキシド、t-ブチルヒドロキシペルオキシド等の過酸化物等を用いることができる。これらは亜硫酸水素ナトリウム、ピロ重亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート等の還元剤を併用したレドックス系として使用してもよい。
【0024】
より具体的には、例えば、水性媒体中に上記単量体、乳化剤、重合開始剤、還元剤、連鎖移動剤、キレート化剤、pH調整剤等を添加し、温度30~100℃で1~30時間程度重合反応を行うこと等により、上記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。上記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂は、市販のものを用いてもよい。
なお、上記(A)成分のアルカリ可溶性樹脂の外観は、後述する(F)成分の中和成分で中和した後の溶液において透明である。
【0025】
<(B)成分:コロイダルシリカ>
上記(B)成分のコロイダルシリカは、上記洗浄剤組成物中のアルカリ可溶性樹脂の皮膜を脆くして粉化させ、洗浄乾燥後の組成物の乾燥残渣をブラシ付きの真空掃除機によりバキュームして回収性を向上させるための皮膜強度調整剤の役割を果たし、かつ、カーペットに親水性を付与することを目的として配合されるものであり、微粒子状のシリカ(二酸化ケイ素)を水中に分散したものが好適に用いられる。なお、上記シリカの平均粒子径は3~500nmであり、(B)成分のコロイダルシリカは固形分として、洗浄剤組成物全体に対して0.1~5質量%、より好ましくは0.2~3質量%、さらに好ましくは0.3~1質量%の割合で配合される。また、上記平均粒子径は、レーザ回折法により測定される値である。
(B)成分のコロイダルシリカの含有量が多すぎると、貯蔵安定性に悪影響を及ぼしたり、多くの乾燥残渣がカーペットの繊維に付着したりして、皮膜の白色が目立ち、カーペットの外観を損ねる傾向がみられる。逆に少なすぎると、親水性が低下したり、上記の皮膜強度調整剤としての役割を充分に果たせなくなったりする傾向がみられる。
【0026】
<(C)成分:アニオン系界面活性剤>
上記(C)成分のアニオン系界面活性剤は、洗浄性を高めるために用いるものである。このような(C)アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキル硫酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼン硫酸塩、αオレフィンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、メタキシレンスルホン酸塩、パラキシレンスルホン酸塩、クメンスルホン酸塩、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸塩等があげられる。これらのアニオン系界面活性剤の対イオンは、ナトリウム、マグネシウム、アンモニウム、エタノールアミン等である。
なかでも、エチレンオキサイドが付加されていないラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸アンモニウム、ラウリル硫酸マグネシウム、ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム、トルエンスルホン酸ナトリウム、クメンスルホン酸ナトリウムを用いると、カーペットに散布した際に、乾燥しやすくなり、上記洗浄剤組成物を固形または半固形の皮膜に形成しやすく、洗浄後のカーペットのベタつきを抑制できるため好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0027】
上記(C)成分のアニオン系界面活性剤の含有量は、洗浄剤組成物全体に対して0.1~5質量%の範囲であり、より好ましくは0.5~1.5質量%の範囲である。上記(C)成分のアニオン系界面活性剤の含有量が上記の範囲内にあると、充分な洗浄性を発揮できるだけでなく、洗浄時の余分な泡立ちが抑制され、洗浄剤組成物のカーペットへの残留によるベタつきを防止することができる。
【0028】
<(D)成分:フッ素系界面活性剤>
上記(D)成分のフッ素系界面活性剤は、カーペットへの濡れ性(レベリング性)向上に加え、本発明のポイントとなる親水性と撥油性を付与するために配合されるものである。
このような(D)成分のフッ素系界面活性剤としては、例えば、電解フッ素化法から合成されるパーフルオロスルホン酸系(PFOS系)界面活性剤、テロメリゼーション法から合成されるパーフルオロカルボン酸系(PFOA系)界面活性剤、およびオリゴメリゼーション法から合成されるフッ化エチレンの多量体系界面活性剤等があげられる。
なかでも、パーフルオロカルボン酸系界面活性剤、フッ化エチレン多量体系界面活性剤が好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
また、本発明においては、洗浄剤組成物の表面張力を30dyn/cm以下となるよう(D)成分のフッ素系界面活性剤を配合することが効果的である。
【0029】
上記(D)成分のフッ素系界面活性剤の含有量は、洗浄剤組成物全体に対して0.08~2質量%の範囲であり、なかでも、0.1~1質量%の範囲であることがより好ましい。上記(D)成分の含有量は、従来の洗浄剤組成物に比べて多くなっており、この点が本発明の特徴の一つである。すなわち、上記洗浄剤組成物は、従来の洗浄剤組成物に比べてフッ素系界面活性剤が多く含まれており、その(A)~(E)成分の配合バランスに加え、特に(B)成分のコロイダルシリカと(D)成分のフッ素系界面活性剤とがそれぞれ所定の割合で含有されている相乗効果により、本発明の洗浄剤組成物は親水性と撥油性に優れたものとなり、易洗浄性および美観の持続性を実現することができる。
なお、(D)成分のフッ素系界面活性剤の含有量が上記の範囲内にあると、優れた親水性および撥油性が得られるとともに、洗浄の作業性を損ねる余分な泡立ちを抑制することができるため、易洗浄性にも優れるようになる。
【0030】
したがって、上記(D)成分のフッ素系界面活性剤の含有量は、上記(B)成分のコロイダルシリカの含有量との兼ね合い(バランス)も重要であり、上記(D)成分のフッ素系界面活性剤の上記(B)成分のコロイダルシリカに対する割合(D/B)が0.016~20の範囲にあることが好ましく、0.2~10の範囲にあることがより好ましい。上記(D)成分のフッ素系界面活性剤の、(B)成分のコロイダルシリカに対する割合(D/B)が上記の範囲内である洗浄剤組成物は、より優れた親水性、撥油性、防汚性とその持続性および易洗浄性を発揮することができる。
【0031】
<(E)成分:水>
上記(E)成分の水としては、純水、イオン交換水、軟水、蒸留水、水道水等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。なお、上記「水」は、洗浄剤組成物を構成する各成分に由来する結晶水や水溶液の形で含まれる水と、外から加えられる水との総和であり、洗浄剤組成物全体が100質量%となるようバランスとして配合される。
【0032】
<(F)中和成分>
上記(F)中和成分は、洗浄剤組成物の(A)成分のアルカリ可溶性樹脂の中和溶解剤として用いることができるものであり、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水酸化アルカリ、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等の炭酸塩、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等のアミン、アンモニア等を用いることができる。なかもで、取り扱いが容易である点で水酸化ナトリウムが好ましく用いられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
本発明の洗浄剤組成物は、pHを6~11の範囲に設定することにより、洗浄剤組成物の安定性の維持することができ、しかも作業上および環境への安全性を担保し、カーペット素材への悪影響を防止できる。pHが6未満の酸性であると、アルカリ可溶性樹脂が析出し、固形形状となるため、洗浄剤組成物の系の安定性が損なわれる。
一方、pHが11を超えるアルカリ性であると、(B)成分のコロイダルシリカの微粒子が凝集析出、沈降するため、洗浄剤組成物の安定性が損なわれる。
本発明の洗浄剤組成物では、とりわけ、pHを6~8とすることが洗浄剤組成物の系の安定性と洗浄性とのバランスに優れる点から好ましい。
上記pHは、JIS Z-8802:1984「pH測定方法」により25℃測定された値である。
【0033】
本発明の洗浄剤組成物は、上記(A)~(F)成分を必須成分として調製されるが、さらに各種の任意成分を適宜配合することができる。このような任意成分としては、例えば、防腐剤、水溶性溶剤、香料、染料、増粘剤、殺菌剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0034】
<任意成分:防腐剤>
上記防腐剤は、例えば、イソチアゾリン系、トリアジン系、ブロノポール系等の防腐剤等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。上記防腐剤を用いる場合、その含有量は、洗浄剤組成物全体に対して0.1~0.8質量%の範囲内に設定されることが好ましく、より好ましくは0.2~0.6質量%の範囲内に設定されることである。すなわち、防腐剤が多すぎても効果の上積みが見込めず余剰成分となるだけであり、少なすぎると防腐効果に劣る傾向がみられる。
【0035】
<任意成分:水溶性溶剤>
上記水溶性溶剤は、上記(D)成分のフッ素系界面活性剤の可溶化剤として用いるものであり、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。上記水溶性溶剤を用いる場合、例えば、ネオス社のパーフルオロアルケニルオキシベンゼンスルホン酸ナトリウムである「フタージェント100」(以下「FT-100」とすることがある)を30~60質量%の範囲内で含有するように溶解することが好ましく、より好ましくは40~50質量%の範囲内で含有するように溶解することである。上記(D)成分のフッ素系界面活性剤と水溶性溶剤との配合割合が上記の範囲内であると、上記(D)成分のフッ素系界面活性剤の水溶化を効率よく行うことができる。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物は、前記必須成分(A)~(F)と、必要に応じて配合されるこれらの成分を用いて、通常の、洗浄剤組成物を調製する方法にしたがって調製することができる。
【0037】
このようにして得られた洗浄剤組成物は、例えば、以下のようにして洗浄および防汚剤として用いられる。
【0038】
すなわち、本発明の洗浄剤組成物は、カーペット表面の汚れの度合いに応じて、原液ないしは、水またはぬるま湯で2~10倍程度に希釈して使用することができる。
また、上記洗浄剤組成物は、通常、噴霧量として20~60g/m2の割合で用いられるが、特に、大型の自走式カーペット洗浄機を用いた場合にあっては、噴霧量がおよそ20~40g/m2と少ない割合で用いることができる。そして、通常の雰囲気(温度23℃、湿度40%前後)であれば20~30分間で上記洗浄剤組成物は水分が蒸発して皮膜化し、掃除機を掛けることができる。よって、作業効率が大幅に向上するとともに、作業員にとっても簡便な清掃方法であり、作業労力が低減する。
【0039】
本発明の洗浄剤組成物を用いてカーペットを洗浄するには、通常、上記のように、洗浄剤組成物またはその希釈洗浄液(以下「洗浄剤組成物等」とすることがある)をカーペット表面に噴霧し、ブラッシングを行った後、上記洗浄剤組成物等が噴霧されたカーペット表面を乾燥させて、汚れを内包して皮膜化した洗浄剤組成物等をブラシ付き真空掃除機で吸引、除去して行われる。
具体的には、例えば、以下の(1)~(3)の方法があげられる。
(1)大区画(広大な作業面積)に施工されたカーペットを洗浄するような際には、洗浄剤組成物等を噴霧する噴霧機構とブラッシング機構とを備えた自走式カーペット洗浄機を用いて、洗浄剤組成物等の噴霧とブラッシングを同時に行ってカーペットの汚れを洗浄剤組成物等に内包させる工程と、カーペットを乾燥させた後に、ブラッシング機構と吸引機構とを備えた自走式掃除機等を用いて上記洗浄剤組成物等ごと汚れを吸引除去する工程を有する洗浄方法。
(2)中区画に施工されたカーペットを洗浄する場合には、電動噴霧器等で洗浄剤組成物等を上記カーペットに噴霧し、ポリッシャーに装着されたマイクロファイバーパッドにより、カーペットの汚れを洗浄剤組成物等に内包させる工程と、カーペットを乾燥させた後に、ブラッシング機構と吸引機構を備えた真空掃除機を用いて上記洗浄剤組成物等ごと汚れを吸引除去する工程を有する洗浄方法。
(3)小区画に施工されたカーペットを洗浄する場合には、電動噴霧器等で洗浄剤組成物等を上記カーペットに噴霧し、柄つきブラシ等を用いてブラッシングして、上記洗浄剤組成物等をカーペットの繊維に馴染ませて、カーペットの汚れを洗浄剤組成物等に内包させる工程と、カーペットを乾燥させた後、ブラッシング機構と吸引機構を備えた真空掃除機を用いて上記洗浄剤組成物等ごと汚れを吸引除去する工程を有する洗浄方法。
【0040】
このように、本発明の洗浄剤組成物によれば、撥水性ではなく親水性を付与しているため、水性の汚れに対しては親和性を発揮し、汚れを取り込んでカーペットの繊維に浸透および拡散させ、その汚れを目立たなくすることができる。一方で、撥油性を有しているため、強固な油汚れおよび土砂汚れ等に対しては、徹底的に弾いて寄せ付けることがない。このため、本発明の洗浄剤組成物は、付着した汚れに対しての充分な洗浄性を有することから、カーペットに散布し、それを真空掃除機によって吸引する等のメンテナンスを定期的に行うことにより、カーペットの美観を長期にわたって保つことができる。また、所定のpHに設定されているため、カーペット素材を傷めることがない。そして、カーペット繊維に付着、および堆積する汚れに噴霧し、ブラッシング等を行い、カーペットの汚れを洗浄剤組成物に内包するようにし、さらにカーペット洗浄面を乾燥させた後、上記汚れと一体的に皮膜化した洗浄剤組成物をブラシ付きの真空掃除機等で吸引、除去するだけで洗浄作業が行えるため、わざわざカーペットを取り外して洗浄工場へ移送する等の大掛かりな作業が不要で、簡便に汚れを取り除くことができる。
【実施例0041】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
実施例・比較例に先立って、下記の成分を準備した。準備した各成分とその有効濃度(%)の詳細は、下記の通りであり、表1~3中の数値は、各成分を純分で示したものである。
【0042】
<(A)アルカリ可溶性樹脂>
・a-1:アルカリ可溶性樹脂(ガラス転移点50℃、平均分子量(Mw)8100、酸価53)
商品名:ジョンクリル611、BASF社製
・a-2:アルカリ可溶性樹脂(ガラス転移点102℃、平均分子量(Mw)16500、酸価240)
商品名:ジョンクリル690、BASF社製
・a-3:アルカリ可溶性樹脂(ガラス転移点128℃、平均分子量(Mw)17250、酸価214)
商品名:HDP-671、BASF社製
【0043】
<(B)コロイダルシリカ>
・b-1:コロイダルシリカ(平均粒子径10~20nm、不揮発分20%)
商品名:スノーテックスC、日産化学工業社製
・b-2:コロイダルシリカ(平均粒子径450nm、不揮発分40%)
商品名:スノーテックスMP-4540M、日産化学工業社製
【0044】
<(C)アニオン系界面活性剤>
・c-1:ドデシルジフェニルオキサイドジスルホン酸ナトリウム(有効濃度46%)
商品名:ダウファックス2A-1、ダウケミカル社製
・c-2:炭素数C12のラウリル硫酸ナトリウム(有効濃度92%)
商品名:エマール10N-HD、花王社製
・c-3:メタキシレンスルホン酸ナトリウム(有効濃度40%)
商品名:テイカトックスN1140、テイカ社製
・c-4:炭素数C12のラウリル硫酸ナトリウム(有効濃度30%)
商品名:テイカライトN2030、テイカ社製
・c-5:クメンスルホン酸ナトリウム(有効濃度40%)
商品名:テイカトックスN5040、テイカ社製
【0045】
<(D)フッ素系界面活性剤>
・d-1:PFOA、パーフルオロカルボン酸系界面活性剤
商品名:ゾニールFSJ(有効濃度40%)、SIGMA-RBI社製
・d-2:FTOHs、フッ化エチレン多量体系界面活性剤
商品名:フタージェント100(有効濃度100%)、ネオス社製
・d-3:PFOA、パーフルオロカルボン酸系界面活性剤、C6ベース環境対応品
商品名:サーフロンS-231(有効濃度30%)、AGCセイミケミカル社製
・d-4:PFOA、パーフルオロカルボン酸系界面活性剤、C6ベース環境対応品
商品名:サーフロンS-232(有効濃度30%)、AGCセイミケミカル社製
・d-5:PFOA、パーフルオロカルボン酸系界面活性剤
商品名:キャプストーンFS-60(有効濃度40%)、ケマーズ社製
【0046】
<(E)水>
・イオン交換水
<(F)中和成分>
・水酸化ナトリウム
商品名:25%液体苛性ソーダ(有効濃度25%)、東亞合成社製
【0047】
<その他の成分>
・繊維用撥水撥油加工剤(フッ素系素材 パーフルオロアクリレートとポリオキシエチレン基含有共重合体)
商品名:アサヒガードEシリーズAG-E081(有効濃度20%)、AGCセイミケミカル社製
・変性シリコーン(アミドポリエーテル変性シリコーンオイル)
商品名:ダウシルBY16-906(有効濃度100%)、東レダウコーニング社製
・ブロックポリマー(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール)
商品名:ニューポールPE-128(有効濃度100%)、三洋化成工業社製
・PVA(完全ケン化型ポリビニルアルコール、ケン化度98%)
商品名:J-ポバールJC-40(有効濃度100%)、日本酢ビ・ポバール社製
・防腐剤:イソチアゾリン系防腐剤
商品名:アクティサイドMV-4(有効濃度4%)、ソージャパン社製
・水溶性溶剤:エチレングリコールモノブチルエーテル
商品名:ブチセノール20、協和発酵工業社製
【0048】
・a'-1:アルカリ可溶性樹脂(ガラス転移点19℃、分子量60000、酸価65) 商品名:PDX-6102B、BASF社製
・b’-1:微粉末状ヒュームドシリカ(表面積200m3/g、平均粒子径0.014μm)
商品名:CAB-O-SIL M-5、米国Cabot Corporation製
・c’-1:ノニオン系界面活性剤[炭素数C12のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル(有効濃度99%以上)]
商品名:アデカトールLB-83、アデカ社製
【0049】
[実施例1~7、比較例1~14]
後記の表1~3に示す組成(各表の数値の単位は質量%である)のカーペット用防汚洗浄剤を調製し、防汚性とその持続性、親水性、撥油性、易洗浄性、貯蔵安定性について評価した。また、それらのpHを測定した。なお、上記カーペット用防汚洗浄剤において、(F)成分の中和成分を用いているものは、溶解している(A)アルカリ可溶性樹脂を中和し、カーペット用防汚洗浄剤全体のpH調整を行っている。(F)成分の中和成分を用いたカーペット用防汚洗浄剤のpHはいずれも6~11の範囲に収まるようにした。
これらの結果を下記の表1~3に併せて示す。
なお、各項目の試験方法、評価基準は、下記に示すとおりである。
【0050】
[防汚性とその持続性]
(はじめに)
防汚性とその持続性について、各組成物間の微妙な防汚性能の差異を、より正確に評価するにはカーペットを用いて実施するよりも、平織りの綿布を用いて実施する方が都合がよい。なぜなら、カーペットでは評価により適した白色の色合いのものがなく、人工汚垢で黒く汚しても大きな明度差が得られないためである。この点、生成りの(白色の)平織り綿布であれば汚染度合いの差異の明度差が大きく目視において判別しやすい。
なお、カーペットは、通常、ナイロン、ポリエステル等を主な材料とする繊維からなり、綿布とは材料とする繊維が異なっているものの、材料が異なる繊維間での防汚性およびその持続性に差異はなく、これらを同等に扱ってもよいことを確認している。
【0051】
(試験方法)
まず、糊剤処理された新品の綿布を洗濯機で洗浄して糊剤を除去し乾燥させた後、アイロン掛けしてから小片(5cm×10cm)に切断した。さらに同寸法の化学床片(白色ホモジニアスタイル、東リ社製MSプレーン5626)を基盤として用い、これらを重ね合わせて四隅をホッチキスでとめたものを布片として準備した。
上記布片の表面(綿布側)に対し、調製されたカーペット用防汚洗浄剤をハンドスプレーヤーで散布(散布量:50~100g/m2の割合)した後、室温下に放置し乾燥させて試験片を作製した。
(1)この試験片に、下記の人工土砂汚垢(以下「汚垢」とすることがある)を均一に散布(散布量:0.7g)した後、洋服ブラシ(リントブラシ)で上記汚垢を擦りながら20回程度円を描くように汚垢を擦りつけて均一に行き渡らせた。その後、すき間用ノズルを装着した真空掃除機で試験片に付着した汚垢を、ノズルの先端でよく擦りつけながらできるだけ吸い取るように清掃した。
・人工土砂汚垢としては、JIS L 1023の8.1に規定された以下の人工汚垢96.6質量部にキャノーラ油3.4質量部を混合したものを用いている。
・JIS規定の人工汚垢:ピートモス20g、ポルトランドセメント8.50g、はくとう土8.50g、カーボンブラック0.05g、フェライト用酸化鉄(III)0.07g、ヌジョール4.38g。
(2)清掃後の試験片について、その清浄度合いを目視で観察した。この観察を「初回観察」とする。
(3)上記(1)の操作を3回繰り返して行い、3回目の操作が終了した試験片について、上記(2)と同様にその清浄度合いを目視で観察した。この観察を「3回後観察」とする。
(4)上記初回観察および3回後観察の結果から、各試験片の防汚性とその持続性を下記の評価基準に基づいて評価した。
【0052】
(評価基準)
◎:初回観察と3回後観察の試験片の清浄度合いの差異はなく、いずれも汚れが確認できず非常にきれいであった。
○:3回後観察の試験片の清浄度合いは、初回観察の試験片と比べ僅かに汚れて見えたが、全体的にきれいであった。
△:3回後観察の試験片の清浄度合いは、初回観察の試験片と比べ部分的に黒く汚れて見える箇所があった。
×:3回後観察の試験片の清浄度合いは、初回観察の試験片と比べ全体的に黒く汚れて見えた。
【0053】
[親水性]
(試験方法)
まず、ナイロン製タイルカーペット(東リ社製GA-1033、防汚加工品、色調:明色グレー、予め25cm角に裁断)を準備し、その表面に処理された防汚加工剤を除去するために、カーペット用の中性洗剤(カーペットシャンプー、シーバイエス社製、10倍希釈液)で充分に濡らしてから、コシの強いハンドブラシを用いてまんべんなく擦り洗い(擦り洗い時間:3分間)を行った。その後、上記中性洗剤を水道水でよくすすぎ、室温下に放置乾燥し、さらに小片(12.5cm角)に裁断したものを小片として準備した。
上記小片に対し、調製されたカーペット用防汚洗浄剤をハンドスプレーヤーで散布(散布量:50~100g/m2の割合)した後、室温下に放置し乾燥させて試験片を作製した。
つぎに、微量の青色染料をイオン交換水に添加して着色水(0.0005%のスミライトターコイズブルーの染料希釈水)を作製し、この着色水をスポイトで0.4g吸い取り、水平に静置した上記試験片の表面に、試験片表面から10cmの高さから滴下し、1時間放置した。その後、試験片表面の着色の度合いを目視にて確認し、下記の評価基準に基づいて評価した。なお、水系のシミや汚れは、拡散して試験片に浸み込んだ方が色合いも薄れてシミとして目立たないで済むことが確認されている。また、本発明のカーペット用防汚洗浄剤で洗浄することで除去することができるため、下記の評価基準を採用した。
【0054】
(評価基準)
○:着色水は滴下された後、すぐに試験片に拡散しながら浸み込み、シミとしての青色の色合いが目立つことなく淡色に見えた。
△:着色水は滴下された後、数分間、試験片表面に留まっていたが、その後拡散せずにスポット的に浸み込み、シミとして青色の色合いが目立った。
×:着色水は滴下された後、いつまでも試験片の表面に留まりそのまま乾燥してしまい、シミとしての青色の度合いが(凝縮され)色濃く残り目立った。
【0055】
[撥油性]
(試験方法)
まず、親水性の評価と同様にして試験片を作製した。
つぎに、微量の赤色顔料をキャノーラ油に添加して着色油(0.02%のスダンの顔料
溶解油)を作製し、この着色油をスポイトで0.3g吸い取り、水平に静置した上記試験片の表面に、試験片表面から10cmの高さから滴下し、1時間放置した後、ペーパークロスで上記着色油を拭き取った。その後、試験片表面の着色油の拭き取り(着色)の度合いを目視にて確認し、下記の評価基準に基づいて評価した。なお、キャノ-ラ油等の粘性のある食油がカーペットに浸み込んでしまうとペーパークロス等では拭き取ることが難しいため、洗浄には本格的なカーペット洗剤を用いた煩雑な洗浄プロセスが要求される。よって、油類のシミや汚れは、カーペットに浸透させないで徹底的に撥油させることが防汚の点から好ましいため、下記の評価基準を採用した。
【0056】
(評価基準)
○:着色油はシミ込まず、そのまま試験片表面に留り、ペーパークロスでほとんど拭き取ることができた。
△:着色油は滴下された後、数分間、試験片表面に留まっていたが、その後、拡散せずにスポット的に浸み込み、ペーパークロスで充分に拭き取れず、シミとして赤色の色合いが目立った。
×:着色油は滴下された後、すぐに試験片に拡散せずスポット的に浸み込んでしまい、ペーパークロスではほとんど拭き取れず、シミとして赤色の色合いが色濃く残り目立った。
【0057】
[易洗浄性]
(試験方法)
まず、防汚性とその持続性の評価と同様にして試験片を作製した。
つぎに、上記試験片に対し、下記の人工土砂汚垢(以下「汚垢」とすることがある)を均一に散布(散布量:0.7g)した後、洋服ブラシ(リントブラシ)で上記汚垢を擦りながら20回程度円を描くように汚垢を擦りつけて均一に行き渡らせた。その後、すき間用ノズルを装着した真空掃除機で試験片に付着した汚垢を、ノズルの先端でよく擦りつけながらできるだけ吸い取るように清掃した。この清掃後の試験片を、ウォッシャビリティーテスター(テスター産業社製)を用いて以下の洗浄条件で洗浄し、すすいだ後、乾燥させた。
・人工土砂汚垢として、JIS L 1023の8.1に規定された以下の人工汚垢96.6質量部にキャノーラ油3.4質量部を混合したものを用いている。
・JIS規定の人工汚垢:ピートモス20g、ポルトランドセメント8.50g、はくとう土8.50g、カーボンブラック0.05g、フェライト用酸化鉄(III)0.07g、ヌジョール4.38g。
洗浄後の試験片表面に残った汚垢を目視にて確認し、汚垢の落ち易さ(易洗浄性)の度合いを下記の評価基準に基づいて評価した。
なお、ウォッシャビリティーテスターとは、耐洗浄性および耐湿潤摩耗性を評価するための試験機であり、洗浄稼働部が往復運動して、自動的に擦り洗い洗浄を行うことができるものである。
また、ウォッシャビリティーテスターにおける洗浄条件は、試験片へのカーペット用防汚洗浄剤の滴下量を1gとし、滴下後5秒間静置した後、ウォッシャビリティーテスターの稼働部に装着した洗浄パッド(白パッド、スリーエム社製)を用いて、テスターの稼働回数5往復させ、洗浄後のすすぎを、試験片を溜水の中に数回出し入れすることにより行った。
【0058】
(評価基準)
◎:汚垢が非常に良く落ちており、新品の綿布とほぼ同様の状態である。
○:汚垢は僅かな黒ずみとして残っているが、全体としてはきれいな状態である。
△:汚垢が洗浄ムラとして部分的に残っており、全体としてきれいな状態ではない。
×:汚垢が洗浄ムラとして多く残り、全体的に汚れが残っている。
【0059】
[貯蔵安定性]
(試験方法)
カーペット用防汚洗浄剤を250mLのサンプルボトル(透明ポリエチレン製のプラスチックボトル)に200mL入れ、50℃に保った恒温槽内(KAX-734、小林理化器械工業社製)と5℃に保った冷凍冷蔵庫内(HRF-90P、ホシザキ社製)でそれぞれ1か月間保管し、保管期間中、サンプルボトル内のカーペット用防汚洗浄剤を毎日目視観察し、下記の評価基準に基づいて貯蔵安定性を評価した。
【0060】
(評価基準)
〇:30日経過後も白濁、沈降、分離等の変化は一切みられなかった。
△:14日経過後に、白濁、沈降、分離のいずれかの変化が僅かにみられた。
×:数日経過後に、白濁、沈降、分離のいずれかの変化が明確にみられた。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
上記の結果から、実施例1~7では、どの評価項目に対しても概ね優れた評価が得られていることがわかる。一方、(A)~(E)成分のいずれかが含まれていないか、含有量が本発明で規定する範囲から外れている比較例1~14は、いずれかの評価項目において「×」の評価があるか、「△」の評価が2つ以上あり、防汚性とその持続性、親水性、撥油性、易洗浄性、貯蔵安定性のいずれかに問題があるか、総合力に劣るものであることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、建物の内部の床等に施工されたカーペットを、施工場所から取り外したりすることなく洗浄し、防汚性を付与するカーペット用防汚洗浄剤組成物に利用することができる。