(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182747
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】解体方法
(51)【国際特許分類】
E04G 23/08 20060101AFI20221201BHJP
B25D 17/11 20060101ALI20221201BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20221201BHJP
G10K 11/168 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
E04G23/08 C
E04G23/08 Z
B25D17/11
G10K11/16 150
G10K11/168
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090463
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤井 太志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 伶
(72)【発明者】
【氏名】堀口 泰裕
【テーマコード(参考)】
2D058
2E176
5D061
【Fターム(参考)】
2D058AA12
2D058DA33
2E176AA01
2E176DD14
2E176DD64
5D061AA26
5D061CC15
(57)【要約】
【課題】効率的に騒音を低減して解体作業を行なうことができる解体方法を提供する。
【解決手段】アタッチメント20は、ジャイアントブレーカのアーム15の先端に固定される。アタッチメント20には、ノミ25を先端に押出す動作を繰り返すピストン23が内蔵されている。アタッチメント20のカバー部22の外側に、スポンジ31を密着させて、スポンジ31に防音シート32を巻き付けて固定する。スポンジ31及び防音シート32は、ピストン23とノミ25との接触部の周囲を覆う。そして、アタッチメント20に散水し、この散水によってスポンジ31に吸水させる。その後、ジャイアントブレーカは、アタッチメント20のノミ25を、軸方向に往復振動させて、対象物を解体する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレーカのアームの先端に固定されたアタッチメントのチゼルを、軸方向に往復移動させて、対象物を解体する解体方法であって、
前記アタッチメントのカバー部の外側に、スポンジを密着させて、前記スポンジに防音シートを巻き付けて固定したことを特徴とする解体方法。
【請求項2】
前記アタッチメントは、前記チゼルを押出す動作を繰り返すピストンを内蔵しており、
前記スポンジ及び前記防音シートが、前記チゼルと前記ピストンとの接触部の周囲を覆った状態で、前記対象物を解体することを特徴とする請求項1に記載の解体方法。
【請求項3】
前記アタッチメントに散水することにより前記スポンジに吸水させ、前記対象物を解体することを特徴とする請求項1又は2に記載の解体方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物等を解体する解体方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート等で構成された建築物を解体する場合、アームの先端に、チゼル(ノミ)を備えるアタッチメントを取り付けたジャイアントブレーカ等の解体用機械を用いることがある(例えば、非特許文献1参照。)。非特許文献に示すように、アタッチメントにおいては、チゼルを往復移動させるためのピストンがチゼルと同じ軸線上に並んで設けられている。
更に、この解体用機械を用いて解体作業を行なう場合には、作業中に大きな騒音が発生する。そこで、騒音を低減したブレーカが検討されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のジャイアントブレーカは、アームの先端に、ノミを有するアタッチメントを取り付ける。このアタッチメントは、ノミの周囲を覆うように泡状体を吐出する泡状体分配部を備えている。そして、泡状体分配部からの泡状体を、ノミの外周を覆う袋体に充填し、ノミの周囲を泡状体で覆った状態で、アタッチメントを稼働させて解体作業を行なう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】FRD古賀ロックドリル、新型油圧ブレーカ Fxαシリーズ、[online]、[令和3年5月27日検索]、インターネット<http://www.furukawarockdrill.co.jp/products/breaker/spec/lineup-index.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術においては、ノミの周囲を泡状体で覆った状態にして解体作業を行なうため、泡状体を発生するための装置が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する解体方法は、ブレーカのアームの先端に固定されたアタッチメントのチゼルを、軸方向に往復移動させて、対象物を解体する解体方法であって、前記アタッチメントのカバー部の外側に、スポンジを密着させて、前記スポンジに防音シートを巻き付けて固定する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、効率的に騒音を低減して解体作業を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態における解体用機械を説明する全体斜視図。
【
図2】実施形態における解体用機械のアタッチメントの要部拡大図。
【
図3】実施形態における解体用機械のアタッチメントの正面図。
【
図4】実施形態における解体用機械のアタッチメントの一部断面正面図。
【
図5】実施形態において解体用機械を用いた解体作業を説明する正面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図5を用いて、本発明の解体方法を具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、本実施形態の解体用機械としてのジャイアントブレーカ(打撃式破砕装置)10は、ベースマシン11とアタッチメント20とを備えている。具体的には、ベースマシン11は、クローラ12を含む下部走行体と、操作室13及びブーム14を含む上部旋回体とを備える。ブーム14には、アーム15を介して、アタッチメント20が取り付けられている。このアタッチメント20には、騒音低減部材30が取り付けられている。
【0011】
(騒音低減部材30)
図2~
図4は、それぞれ
図1のアタッチメント20の拡大斜視図、正面図及び一部破断断面図である。
図3及び
図4に示すように、アタッチメント20は、トップマウントタイプであって、略直方体形状のアタッチメント本体21と、これの外周を覆うカバー部22とを備える。アタッチメント本体21は、チゼルとしてのノミ25と、このノミ25を油圧によって往復移動させる駆動機構と、これらを保持するケースとを有している。ノミ25の下部は、ケースの端部から突出しており、ノミ25の先端(下端部)は、細くなった針形状を有する。ノミ25の上端部25a(基端部)は、駆動機構の往復移動可能なピストン23に当接可能に保持されている。なお、ピストン23及びノミ25の上端部25aは、駆動機構のシリンダに往復移動可能に保持されている。更に、アタッチメント本体21の上端部には、圧力室24が設けられている。圧力室24には、ピストン23の上端部が収容され、ピストン23を下方に押圧する油が収容される。そして、この圧力室24の油圧の変化によってピストン23を介してノミ25を上下方向(軸方向)に往復移動させる。
【0012】
また、アタッチメント20のカバー部22は、アタッチメント本体21の4つの側面を覆っている。更に、このカバー部22には、ノミ25の上方となる位置に、アーム15に取り付ける取付部18が設けられている。
【0013】
更に、
図2に示すように、アタッチメント20のカバー部22の外周には、騒音低減部材30が巻き付けられている。この騒音低減部材30は、通常、ピストン23がノミ25を押圧する際においてピストン23とノミ25との接触部の周囲(側方)を覆うように配置される。
具体的には、
図4に示すように、騒音低減部材30は、自然状態でのピストン23とノミ25とが接触する接触部を、上下方向の中心となる位置にして、アタッチメント本体21から露出したノミ25の露出部の上端部までを覆う大きさで配置される。この場合、騒音低減部材30は、ノミ25が移動可能な最上位置までを少なくとも覆う。
【0014】
図3に示すように、騒音低減部材30は、吸水性のある多孔質体のスポンジ31と、防音シート32と、これらを巻き付けて固定する索状体33とを備える。
スポンジ31は、カバー部22の外周面に密着して固定される。本実施形態では、スポンジ31として、厚みのある長方形状の複数枚の軟質ウレタンフォームで構成する。具体的には、複数枚の軟質ウレタンフォームを重ねた状態のスポンジ31を、カバー部22の4つの側面に巻き付ける。そして、索状体33をスポンジ31の外周面に回して固定することにより、スポンジ31をカバー部22の外周面に密着させて配置する。この場合、スポンジ31は、ピストン23とノミ25との接触部を中心高さとして、カバー部22の下端部が露出する高さで巻き付ける。更に、カバー部22の外周面において複数配置されるスポンジ31同士には隙間が生じないように巻き付ける。
【0015】
防音シート32は、スポンジ31の外周に、索状体33によって巻き付けられる。この防音シート32は、一定の防音効果があるとして市販されているシートを用いる。本実施形態では、東山産業株式会社製の防音シートを所定の幅に折り畳んだ状態で、スポンジ31を覆うように、スポンジ31に巻き付けられる。具体的には、防音シート32は、ノミ25の上端部25aを中心高さとして、スポンジ31の上端部よりも少し上まで覆うとともに、スポンジ31の下端部よりも少し下であって、アタッチメント本体21から露出しているノミ25の露出部の上端部を覆うように配置する。ここで、防音シート32の上端部は、外部から水がスポンジ31に流入するように、スポンジ31の上面部31aの全体を覆わずに露出させた状態にする。
【0016】
スポンジ31及び防音シート32をそれぞれ固定する索状体33は、例えば、針金で構成される。更に、スポンジ31を巻いて固定した索状体33の位置に重ならない位置に、防音シート32を巻いて固定する索状体33を配置する。
【0017】
(解体作業)
次に、
図5を用いて、上述したジャイアントブレーカ10を用いた解体作業について説明する。
解体作業を行なう前に、騒音低減部材30を巻き付けたアタッチメント20にホース40で散水する。これにより、散水された水W1は、カバー部22を伝って、上面部31aからスポンジ31に水W1が到達し、スポンジ31が吸水する。
【0018】
スポンジ31に十分に吸水させた後、解体作業を行なう。例えば、解体対象物50として鉄筋コンクリートを用いる場合、ジャイアントブレーカ10のノミ25の先端を、解体対象物50の上面に配置する。そして、ホース40を用いて、解体箇所周辺を含めて散水する。この状態で、ジャイアントブレーカ10のアーム15及びアタッチメント20を、ノミ25を上下動させて、解体対象物50の表面を破砕する。
【0019】
(作用)
アタッチメント20のカバー部22の外周に、スポンジ31を密着させた後、このスポンジ31の外周を防音シート32で覆う。これにより、カバー部22に密着するスポンジ31で吸音されるとともに、防音シート32により騒音を閉じ込める。
【0020】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、アタッチメント20のカバー部22にスポンジ31を密着して索状体33により固定し、スポンジ31の周囲に防音シート32を巻いて索状体33で固定する。これにより、騒音低減部材30を、アタッチメント20に簡単に取り付けて、騒音を低減することができる。
【0021】
騒音低減部材30を設けた場合と設けなかった場合におけるジャイアントブレーカ10からの騒音を測定した。この場合、ジャイアントブレーカ10から約40mの位置に騒音振動計を設置した。騒音低減部材30をアタッチメント20に取り付けない場合、騒音の最高値は83dBで、平均値は約80dBであった。これに対して、上述したように騒音低減部材30を設けて、上述した解体作業を行なった場合、騒音の最高値は73dBで、平均値は約70dBであった。
【0022】
(2)本実施形態では、騒音低減部材30は、ピストン23がノミ25を押圧する際においてピストン23とノミ25との接触部の周囲を覆う。これにより、効率的に騒音を低減することができる。
【0023】
(3)本実施形態では、スポンジ31に水W1を含ませた状態で、ジャイアントブレーカ10を用いて解体作業を行なうので、スポンジ31に含んだ水W1により騒音を低減することができる。
【0024】
(4)本実施形態では、アタッチメント20に向けて散水することにより、スポンジ31に吸水させる。これにより、粉塵の飛散防止のための散水を用いて、効率的にスポンジ31に吸水させることができる。
【0025】
(5)本実施形態のアタッチメント20として、ノミ25の上方となる位置に、アーム15に取り付ける取付部18が設けられたトップマウントタイプを用いる。これにより、アタッチメント20のカバー部22の形状が略直方体形状であるため、騒音低減部材30をカバー部22に広く巻くことができる。従って、アタッチメント20から発生する騒音を広範囲で低減することができる。
【0026】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態においては、トップマウントタイプのアタッチメント20に騒音低減部材30を設けた。アタッチメント20は、トップマウントタイプに限られず、例えば、サイドマウントタイプに適用してもよい。このサイドマウントタイプのアタッチメントのカバー部は、アームに取り付ける取付部が圧力室の側部に固定される。このアタッチメントにおいても、ピストン23とノミ25との接触部の側方を覆うように、騒音低減部材が固定されている。そして、この騒音低減部材は、これを構成するスポンジによって、カバー部の外周を隙間なく覆うことができる太さの部分に設けられる。
【0027】
・上記実施形態においては、騒音低減部材30のスポンジ31、防音シート32及び索状体33は、上述した材料で構成した。これらは、上述した材料で構成する場合に限られない。例えば、スポンジ31は、吸水性のある多孔質材料の部材であれば、軟質ウレタンフォーム以外の材質でもよい。また、防音シート32は、音を低減できるシート状の部材であればよい。更に、索状体は、スポンジをカバー部に密着させるように固定できる物や、防音シートをスポンジの外周に固定できる物であれば、ロープ等であってもよい。
【0028】
・上記実施形態においては、騒音低減部材30は、アタッチメント20のカバー部22において、通常、ピストン23がノミ25を押圧する際においてピストン23とノミ25との接触部の周囲(側方)を覆うように配置した。騒音低減部材30の配置箇所は、これに限られない。例えば、カバー部22の先端部やアタッチメント本体21内のノミ25の上部を覆うように配置してもよい。この場合、騒音低減のためには、ピストン23とノミ25との接触部の周囲を覆うことが効率的ではあるが、他の部分を覆っても、騒音を低減することが可能である。
【0029】
・上記実施形態においては、解体作業の前には、散水により、騒音低減部材30のスポンジ31を吸水させた。スポンジ31に吸水させるタイミングは、解体作業前に限られず、解体作業時であってもよい。更に、スポンジ31への吸水は、散水でなくてもよく、例えば、防音シート32の上部にホースを繋げて、常時、又は定期的にスポンジ31に吸水させてもよい。
・上記実施形態においては、解体対象物50として鉄筋コンクリートを用いた。解体対象物50は、鉄筋コンクリートに限られない。
【0030】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。
(a)前記防音シートは、前記防音シートとの間に隙間を設けた状態で前記カバー部に巻き付けて固定し、前記カバー部に散水した水を前記スポンジに吸水させて、前記対象物を解体することを特徴とする請求項1~3の何れか1項に記載の解体方法。
【0031】
(b)前記アタッチメントは、前記チゼルの上方に前記アームに取り付けられる取付部が配置されたトップマウントタイプであることを特徴とする請求項1~3の何れか1項又は(a)に記載の解体方法。
【符号の説明】
【0032】
10…ジャイアントブレーカ、11…ベースマシン、12…クローラ、13…操作室、14…ブーム、15…アーム、18…取付部、20…アタッチメント、21…アタッチメント本体、22…カバー部、23…ピストン、24…圧力室、25…ノミ、25a…上端部、30…騒音低減部材、31…スポンジ、31a…上面部、32…防音シート、33…索状体、40…ホース、50…解体対象物。