(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182755
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】管間端口のシール方法及びシール構造
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20221201BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20221201BHJP
F16L 55/163 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
F16L55/163
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090479
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【弁理士】
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】山崎 政浩
(72)【発明者】
【氏名】木原 彬
(72)【発明者】
【氏名】乙川 貴史
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 武司
【テーマコード(参考)】
3H025
4F211
【Fターム(参考)】
3H025EA01
3H025EB07
3H025EC01
3H025ED02
4F211AG08
4F211AH43
4F211SA05
4F211SC03
4F211SD06
4F211SJ13
4F211SJ15
4F211SP04
4F211SW40
(57)【要約】
【課題】既設管の内周に張り付け製管された更生管と既設管との間の管間端口を確実に止水する。
【解決手段】帯状部材10を既設管1の内周に張り付けるように螺旋状に巻回して、螺旋管状の更生管9を製管する。更生管9の管端部9eの周の複数条のリブ15によって画成された螺旋溝17の互いに1ピッチ以上離れた位置に手前側堰部31a及び奥側堰部31bを形成する。螺旋溝17における手前側堰部31aと奥側堰部31bの間の螺旋溝部分18に止水材32を充填する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側面に帯長方向へ延びる複数条のリブが形成された帯状部材を既設管の内周に張り付けるように螺旋状に巻回してなる螺旋管状の更生管における管端部の外周と、前記既設管の内周との間の管間端口をシールする方法であって、
前記管端部の外周の前記複数条のリブによって画成された螺旋溝の互いに1ピッチ以上離れた位置に手前側堰部及び奥側堰部を形成する堰形成工程と、
前記螺旋溝における前記手前側堰部と前記奥側堰部の間の螺旋溝部分に止水材を充填する充填工程と、
を備えたことを特徴とする管間端口シール方法。
【請求項2】
前記既設管における前記管端部と対応する部分の内周面に止水性及び弾性を有する止水シートを貼り付けておき、その後、前記更生管の前記管端部を製管することを特徴とする請求項1に記載の管間端口シール方法。
【請求項3】
前記堰形成工程においては、前記手前側堰部又は奥側堰部と対応する位置におけるリブを切除して、該対応する位置に前記手前側堰部又は奥側堰部となるブロック部材を配置することを特徴とする請求項1又は2に記載の管間端口シール方法。
【請求項4】
前記堰形成工程においては、前記螺旋溝の断面に合わせた形状の嵌合ピースを、前記手前側堰部又は奥側堰部として、前記螺旋溝における前記手前側堰部又は奥側堰部と対応する位置に嵌め込むことを特徴とする請求項1又は2に記載の管間端口シール方法。
【請求項5】
前記堰形成工程においては、前記螺旋溝における前記手前側堰部又は奥側堰部と対応する位置に、前記手前側堰部又は奥側堰部となる硬化材を充填することを特徴とする請求項1又は2に記載の管間端口シール方法。
【請求項6】
外周側面に帯長方向へ延びる複数条のリブが形成された帯状部材が既設管の内周に張り付けられるように螺旋状に巻回されてなる螺旋管状の更生管における管端部の外周と、前記既設管の内周との間の管間端口に設けられた管間端口シール構造であって、
前記管端部の外周の前記複数条のリブによって画成された螺旋溝の互いに1ピッチ以上離れた位置に設けられた手前側堰部及び奥側堰部と、
前記螺旋溝における前記手前側堰部と前記奥側堰部との間の螺旋溝部分に充填された止水材と、
を備えたことを特徴とする管間端口シール構造。
【請求項7】
前記既設管の内周面と前記更生管の管端部との間には止水性及び弾性を有する止水シートが挟み付けられ、前記止水シートによって前記螺旋溝部分の全域が覆われていることを特徴とする請求項6に記載の管間端口シール構造。
【請求項8】
前記手前側堰部及び奥側堰部が、前記管端部の周方向の互いに同一位置に配置されて前記管端部の軸方向に一直線に連なり又は並んでいることを特徴とする請求項6又は7に記載の管間端口シール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、老朽化した下水道管等の既設管とその内周に構築した更生管の管端部とで作る管間端口をシールする方法及び構造に関し、特に、既設管の内周に張り付けるように製管してなる螺旋管状の更生管の管端部と既設管とによる管間端口のシール方法及びシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水道管等の既設管の内周に沿って帯状部材(プロファイル)を螺旋状に巻回して、螺旋管状の更生管を構築することによって、既設管を更生する方法が知られている。一般に、帯状部材の外周側面(更生管において外周面を構成する面)には、帯長方向へ延びる複数条のリブが形成されており、隣接するリブどうしの間には溝が形成されている(特許文献1~4等参照)。
【0003】
特許文献1、2には、更生管を拡径気味に製管して既設管の内周に張り付け可能な製管機が提案されている。
特許文献3には、更生管用の帯状部材として、製管に伴って拡径しようとすることで既設管の内周に張り付け可能な断面形状の帯状部材が提案されている。
特許文献4には、更生管を既設管より小径に製管した後で周長を拡張(エキスパンド)させることで、更生管を既設管の内周に張り付けることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2016/175243A1
【特許文献2】国際公開WO2017/170866A1
【特許文献3】国際公開WO2018/159627A1
【特許文献4】特開2020-093547号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
更生管の製管後は、更生管の管端部の外周と既設管の内周との間の管間端口を止水材によってシールする。通常の管間端口は、作業者が指を挿し入れ可能な余裕があるため、止水材の塗布作業に支障を来すことがない、一方、更生管が既設管に張り付けられている場合は、管間端口が狭隘で指を挿し入れることができず、管間端口の全周に止水材を塗布するのが困難であり、止水施工が容易でなかった。
本発明は、かかる事情に鑑み、既設管の内周に張り付け製管された更生管と既設管との間の管間端口を確実に止水することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明方法は、外周側面に帯長方向へ延びる複数条のリブが形成された帯状部材を既設管の内周に張り付けるように螺旋状に巻回してなる螺旋管状の更生管における管端部の外周と、前記既設管の内周との間の管間端口をシールする方法であって、
前記管端部の外周の前記複数条のリブによって画成された螺旋溝の互いに1ピッチ以上離れた位置に手前側堰部及び奥側堰部を形成する堰形成工程と、
前記螺旋溝における前記手前側堰部と前記奥側堰部の間の螺旋溝部分に止水材を充填する充填工程と、
を備えたことを特徴とする。
【0007】
前記手前側堰部及び奥側堰部によって画成された螺旋溝部分は、螺旋管状の更生管の巻回方向に沿って一周以上にわたる長さを有する閉鎖空間となる。該螺旋溝部分の一箇所に止水材を注入することで、止水材が、螺旋溝部分を通り路として、前記巻回方向の一周以上に行き渡る。すなわち管間端口の全周に行き渡る。したがって、管間端口の全周にわたってその各部分ごとに止水材の塗布作業を行なう必要が無い。
手前側堰部によって、止水材が螺旋溝部分よりも更生管の管端側(手前側)へ漏れ出るのが阻止される。奥側堰部によって、止水材が螺旋溝部分よりも更生管の管端とは反対側(奥側)へ漏れ出るのが阻止される。
止水材は、閉鎖された螺旋溝部分の内部に閉じ込められる。したがって、既設管が例えば供用中の下水道管であっても、止水材が、注入後硬化するまでの間に、既設管内の流水によって流されてしまうのを防止できる。
止水材の硬化によって、管間端口が全周にわたって止水される。
【0008】
前記既設管における前記管端部と対応する部分の内周面に止水性及び弾性を有する止水シートを貼り付けておき、その後、前記更生管の前記管端部を製管することが好ましい。
前記止水シートは、既設管の劣化が進んでいる場合に特に有効である。すなわち、劣化によって既設管の内周面が凸凹になっていたとしても、該既設管の内周面と更生管の管端部のリブとの間に止水シートが挟み付けられることによって、螺旋溝部分を確実に閉鎖できる。これによって、管間端口の止水施工を確実に行なうことができる。
【0009】
前記堰形成工程においては、前記手前側堰部又は奥側堰部と対応する位置におけるリブを切除して、該対応する位置に前記手前側堰部又は奥側堰部となるブロック部材を配置することが好ましい。
これによって、手前側堰部又は奥側堰部を確実に設置できる。
【0010】
前記堰形成工程においては、前記螺旋溝の断面に合わせた形状の嵌合ピースを、前記手前側堰部又は奥側堰部として、前記螺旋溝における前記手前側堰部又は奥側堰部と対応する位置に嵌め込むことが好ましい。
これによって、螺旋溝部分に注入した止水材を嵌合ピースによって確実に堰き止めることができる。
【0011】
前記堰形成工程においては、前記螺旋溝における前記手前側堰部又は奥側堰部と対応する位置に、前記手前側堰部又は奥側堰部となる硬化材を充填することが好ましい。
これによって、手前側堰部又は奥側堰部を容易に形成できる。
【0012】
本発明構造は、外周側面に帯長方向へ延びる複数条のリブが形成された帯状部材が既設管の内周に張り付けられるように螺旋状に巻回されてなる螺旋管状の更生管における管端部の外周と、前記既設管の内周との間の管間端口に設けられた管間端口シール構造であって、
前記管端部の外周の前記複数条のリブによって画成された螺旋溝の互いに1ピッチ以上離れた位置に設けられた手前側堰部及び奥側堰部と、
前記螺旋溝における前記手前側堰部と前記奥側堰部との間の螺旋溝部分に充填された止水材と、
を備えたことを特徴とする。
前記螺旋溝部分ひいては止水材は、巻回方向の一周以上ひいては管間端口の全周に行き渡る。これによって、管間端口を確実に止水できる。
【0013】
前記既設管の内周面と前記更生管の管端部との間には止水性及び弾性を有する止水シートが挟み付けられ、前記止水シートによって前記螺旋溝部分の全域が覆われていることが好ましい。
これによって、管間端口の止水施工を確実に行なうことができる。
【0014】
前記手前側堰部及び奥側堰部が、前記管端部の周方向の互いに同一位置に配置されて前記管端部の軸方向に一直線に連なり又は並んでいることが好ましい。
これによって、手前側堰部及び奥側堰部の構築を容易化できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、既設管の内周に張り付け製管された更生管と既設管との間の管間端口を確実に止水することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態に係る管間端口シール構造が施工された更生済既設管の側面断面図である。
【
図2】
図2(a)は、前記更生済既設管の更生管を更生する帯状部材の断面図である。
図2(b)は、前記帯状部材から前記更生管が製管される様子を示す断面図である。
【
図3】
図3は、施工中の前記管間端口シール構造を、リブを切除して収容溝を形成する工程で示す、
図4のIII-III線に沿う断面図である。
【
図5】
図5は、
図1の円部Vを拡大して示す、施工済の前記管間端口シール構造の側面断面図である。
【
図6】
図6は、
図5のVI-VI線に沿う、前記管間端口シール構造の平面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2実施形態に係る管間端口シール構造を示し、
図8のVII-VII線に沿う側面断面図である。
【
図8】
図8は、
図7のVIII-VIII線に沿う、前記第2実施形態に係る管間端口シール構造の平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第3実施形態に係る管間端口シール構造を示し、
図10のIX-IX線に沿う側面断面図である。
【
図10】
図10は、
図9のX-X線に沿う、前記第3実施形態に係る管間端口シール構造の平面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第4実施形態に係る管間端口シール構造の側面断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第5実施形態に係る管間端口シール構造を示し、
図13のXII-XII線に沿う側面断面図である。
【
図13】
図13は、
図12のXIII-XIII線に沿う、前記第5実施形態に係る管間端口シール構造の平面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第6実施形態に係る管間端口シール構造の側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図6)>
図1に示すように、本実施形態の更生対象の既設管1は、老朽化した下水道管である。なお、更生対象の既設管は、下水道管に限らず、上水道管、農業用水管、水力発電導水管、ガス管、トンネル等であってもよい。
【0018】
既設管1の内周に沿って更生管9が設置されている。これによって、既設管1が更生されている。更生管9は、帯状部材10(プロファイル)からなる螺旋管である。帯状部材10の材質は、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂である。
【0019】
図2(a)に示すように、帯状部材10は、平帯部11と、雌雄の嵌合部13,14と、複数条(図では3つ)のリブ15(突条)を含み、一定の断面形状に形成されている。平坦な平帯部11の幅方向の一端部に雌嵌合部13が設けられ、平帯部11の幅方向の他端部に雄嵌合部14が設けられている。雌嵌合部13は、内周側(更生管9における管内側、
図2(a)において下側)へ開口する嵌合溝13aを有して、外周側(更生管9における管外側、
図2(a)において上側)へ隆起されるとともに、帯長方向へ延びている。雄嵌合部14は、平帯部11から外周側へ突出されるとともに帯長方向へ延びている。
【0020】
リブ15は、平帯部11から外周側へ突出されるとともに、帯長方向へ延びている。複数条のリブ15が平帯部11の幅方向に間隔を置いて平行に配置されている。これらリブ15を互いに区別するときは、符号にそれぞれA,B,Cを付す。左右の異形断面のリブ15A,15Bは、中央のT字断面のリブ15Cよりも外周側(
図2(a)において上側)へ突出されている。
なお、
図2(a)に示す帯状部材10の断面形状は例示であって、本発明に係る帯状部材の断面形状は図示したものに限定されず種々改変できる。例えば、すべてのリブの高さが互いに等しくてもよく、すべてのリブが同一断面形状であってもよい。リブの数は3つに限らず、1つ又は2つでもよく4つ以上でもよい。複数のリブ15が、平帯部11以外の部分で連結されていてもよい。帯状部材10は、金属や繊維強化樹脂などからなる補強材を備えていてもよい。
【0021】
図1に示すように、前記帯状部材10が既設管1の内周に張り付けられるように螺旋状に巻回されて、螺旋管状の更生管9に製管されている。以下、螺旋状に巻回された帯状部材10のひと巻き分を周回部分10aと称す。
図2(b)に示すように、隣接する周回部分10aの対向する雌雄の嵌合部13,14どうしが凹凸嵌合されている。これら凹凸嵌合された嵌合部13,14によって、外周側へ突出する嵌合突条16が構成されている。嵌合突条16は、リブ15A,15Bより低い。なお、隣接する周回部分は、別体の接続部材を介して連結するようになっていてもよい。
【0022】
図2(b)、
図3及び
図4に示すように、螺旋管状をなす更生管9において、リブ15及び嵌合突条16は螺旋状に延びている。背が高いリブ15A,15Bの頂部が既設管1の内周面に突き当てられている。隣接するリブ15A,15Bどうしの間に螺旋溝17が形成されている。2つ(複数)のリブ15A,15Bによって2条(複数条)の螺旋溝17が形成されている。隣接する螺旋溝17どうしがリブ15A,15Bによって隔てられている。これら螺旋溝17を互いに区別するときは、一方を「周回内螺旋溝17A」又は「螺旋溝17A」と称し、他方を「周回間螺旋溝17B」又は「螺旋溝17B」と称す。
【0023】
周回内螺旋溝17Aは、同一周回部分10a上の2つのリブ15A,15Bどうしの間に画成されている。螺旋溝17Aの中央部に背の低いリブ15Cが配置されている。
周回間螺旋溝17Bは、隣接する2つの周回部分10aを跨ぎ、これら周回部分10aにおける対向するリブ15B,15Aどうし間に画成されている。螺旋溝17Bの中央部に嵌合突条16が設けられている。
周回内螺旋溝17Aは幅広であり、周回間螺旋溝17Bは幅狭であるが、本発明がこれに限られるものではない。
【0024】
図1に示すように、更生管9の両側の管端部9eは、既設管1の両端の人孔4に臨んでいる。
図3に示すように、更生管9の管端部9eの外周と、既設管1の内周との間に環状の管間端口20が形成されている。
図1に示すように、管間端口20には、管間端口シール構造30が設けられている。
【0025】
図5及び
図6に示すように、管間端口シール構造30は、ブロック部材31と、止水材32を含む。ブロック部材31は、直方体に形成されている。ブロック部材31の材質は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の合成樹脂であるが、これに限らず、スチール等の金属であってもよい。ブロック部材31の長手方向は、更生管9の管軸方向へ向けられている。ブロック部材31の長さ寸法は、帯状部材10の幅寸法の2倍以上である。ブロック部材31の高さ方向は、更生管9の管径方向(
図5において上下方向)へ向けられている。ブロック部材31の高さ寸法は、リブ15A,15Bの高さと実質的に等しい。実質的とは、製造公差や0.数mm程度の違いは許容される趣旨である。
【0026】
ブロック部材31は、環状の管間端口20の周方向の一箇所に配置されている。好ましくは、ブロック部材31は、管間端口20の上端部すなわち更生管9の管端部9eの管頂部9pに配置されている。
図3及び
図4に示すように、ブロック部材31が配置される部分9pにおけるリブ15及び嵌合突条16は切除されている。これによって、管端部9eの管頂部9pには、管軸方向へ延びる収容溝9qが形成されている。収容溝9qにブロック部材31が収容されている。
【0027】
図5及び
図6に示すように、ブロック部材31は、更生管9の管端部9eにおける帯状部材10の隣接する2つの周回部分10aに跨っている。ブロック部材31の長手方向の中央部から人孔4側の端部までの手前側部分は、手前側堰部31aを構成している。ブロック部材31の長手方向の中央部から奥側(人孔4とは反対側)の端部までの奥側部分は、奥側堰部31bを構成している。
【0028】
これら手前側堰部31a及び奥側堰部31bは、管端部9eの外周における帯状部材10の巻回方向に沿ってちょうど1ピッチずれた位置に設けられている。かつ手前側堰部31a及び奥側堰部31bは、管端部9eの管周方向の互いに同一位置(好ましくは管頂部)に配置され、管端部9eの管軸方向に沿って一直線に連なっている。
【0029】
図5及び
図6に示すように、ブロック部材31によって、閉鎖された複数条の螺旋溝部分18が形成されている。詳しくは、ブロック部材31の手前側堰部31aは、管端部9eにおける手前側(人孔4側、
図5において左側)から1周目の周回部分10a
1の周回内螺旋溝17A、及び1周目と2周目の周回部分10a
1,10a
2に跨る周回間螺旋溝17Bを塞いでいる。ブロック部材31の奥側堰部31bは、2周目の周回部分10a
2の周回内螺旋溝17A、及び2周目と3周目の周回部分10a
2,10a
3に跨る周回間螺旋溝17Bを塞いでいる。
【0030】
これによって、周回内螺旋溝17Aにおける、1周目から2周目の周回部分10a1~10a2にわたる1ピッチ分の螺旋溝部分18Aが閉鎖空間となっている。かつ、周回間螺旋溝17Bにおける、1、2周目間から2、3周目間の周回部分10a1,10a2~10a2,10a3にわたる1ピッチ分の螺旋溝部分18Bが閉鎖空間となっている。
閉鎖空間すなわち螺旋溝部分18(18A,18B)は、リブ15A,15Bと、堰部31a,31bと、平帯部11と、既設管1の内周面とによって画成されている。これら螺旋溝部分18の両端部が堰部31a,31bによって塞がれている。
【0031】
各螺旋溝部分18には、止水材32が注入、充填されている。止水材32は、注入時には流動性を有し、その後、硬化する硬化性を有している。好ましくは、止水材32は、硬化反応の過程で膨張される膨張性を有している。より好ましくは、止水材32は、発泡ウレタン樹脂などの発泡樹脂によって構成されている。これによって、管間端口20が止水施工されている。
図1に示すように、更生管9の両側の管端部9eにそれぞれ管間端口シール構造30が設けられることで、更生管9の両側の管間端口20がそれぞれ止水施工されている。
【0032】
管間端口20は、次のようにして止水施工される。
<製管工程>
まず、製管機(図示せず)によって更生管9を既設管1の内周に張り付け製管する。更生管9を拡径気味に製管することで張り付けてもよく(特許文献1,2等参照)、帯状部材10を製管に伴って拡径されるような断面形状にすることで張り付けてもよく(特許文献3等参照)、更生管9を小径に製管した後で周長を拡張(エキスパンド)させることで張り付けてもよい(特許文献4等参照)。
製管機は、自走式でもよく(特許文献1,2等参照)、元押し式又は牽引式でもよい(特許文献4等参照)。
【0033】
<切除工程、収容溝形成工程>
図3及び
図4に示すように、製管した更生管9の管端部9eの管頂部9p(堰部31a,31b(
図5)と対応する位置)のリブ15及び嵌合突条16を切除する。これによって、管頂部9pに収容溝9qを形成する。
【0034】
<堰形成工程>
前記収容溝9qにブロック部材31を差し入れて設置する。ブロック部材31の手前側部分が手前側堰部31aとなり、奥側部分が奥側堰部31bとなる。言い換えると、複数条の螺旋溝17の互いに1ピッチ離れた位置に手前側堰部31a及び奥側堰部31bが形成される(堰形成工程)。ブロック部材31は、管軸方向に沿って人孔4側から奥側へまっすぐ管頂部9pに差し入れればよく、容易に設置できる。しかも、1つのブロック部材31を管頂部9pに配置することによって、手前側堰部31a及び奥側堰部31bの両方を同時に構築できる。これら堰部31a,31bによって、複数条の螺旋溝部分18が形成される。各螺旋溝部分18は、更生管9を巻回方向に一周する長さを有する。螺旋溝部分18の両端部が、堰部31a,31bによって塞がれる。さらに、堰部31a,31bとリブ15A,15Bと平帯部11と既設管1によって、各螺旋溝部分18が閉鎖される。
【0035】
<充填工程>
続いて、各螺旋溝部分18に止水材32を充填する。具体的には、例えば発泡ウレタン樹脂原料を螺旋溝部分18に注入して発泡させる。
注入方法としては、例えば、管端部9eの一部をめくってブロック部材31の側面や既設管1の内周面との間に隙間を作り、そこからノズルを螺旋溝部分18に差し入れて、該ノズルから止水材32を注入する。管端部9eにノズル口を穿孔して、該ノズル口にノズルを差し込んで止水材32を注入し、その後、ノズル口を塞いでもよい。あるいは、ブロック部材31の内部に螺旋溝部分18へ臨む止水材注入路が形成され、ブロック部材31が止水材注入ノズルを兼ねていてもよい。
【0036】
螺旋溝部分18の一箇所に止水材32を注入すればよく、管間端口20の全周にわたってその各部分ごとに止水材の塗布作業を行なう必要が無い。前記一箇所に注入された止水材32は、螺旋溝部分18を通り路として、管間端口30の全周に行き渡る。しかも、螺旋溝部分18は閉鎖されているから、止水材32が螺旋溝部分18から漏れ出るのを防止できる。特に、手前側堰部31aによって、止水材32が螺旋溝部分18よりも更生管9の管端側(手前側)へ漏れ出るのが阻止される。奥側堰部31bによって、止水材32が螺旋溝部分18よりも更生管9の管端とは反対側(奥側)へ漏れ出るのが阻止される。これによって、止水材32の注入量を必要最低限に抑えることができる。
止水材32は、閉鎖された螺旋溝部分18の内部に閉じ込められる。したがって、既設管1が供用中の下水道管であっても、止水材32が、注入後硬化するまでの間に、既設管1内の流水によって流されてしまうのを防止できる。
【0037】
やがて、止水材32が硬化される。このようにして、管間端口シール構造30が構築され、管間端口20を全周にわたってシールできる。したがって、下水が、管間端口20から既設管1と更生管9との間に入り込んだり、既設管1の不良部を透過して既設管1と更生管9との間に流入した地下水が管間端口20から人孔4に漏れ出たりするのを防止できる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において、既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図7~
図8)>
図7及び
図8に示すように、第2実施形態の管間端口シール構造30Bは、既設管1の内周面が劣化によって凸凹になっている場合に適している。管間端口シール構造30Bは、堰部31a,31bを構成するブロック部材31及び螺旋溝部分18内の止水材32に加えて、止水シート33を備えている。止水シート33は、水の透過を阻止する止水性に加えて、少なくとも厚み方向へ弾性的に圧縮変形可能な弾性を有している。好ましくは、止水シート33はゴムによって構成されている。
【0039】
止水シート33は、筒形状に形成されている。止水シート33の軸長は、ブロック部材31の長さ寸法とほぼ等しい。止水シート33の周長は、既設管1の内周長ないしは更生管9の外周長と実質的に等しい。
【0040】
該止水シート33が、既設管1の内周と更生管9の管端部9eとの間に挟み付けられている。止水シート33によって、複数条の螺旋溝部分18の全域及びブロック部材31が覆われている。
【0041】
図8に示すように、止水シート33は、既設管1の内周面の凸凹になじむように変形されている。かつ、螺旋溝部分18を画成するリブ15A,15Bの頂部が止水シート33に強く押し当てられ、止水シート33におけるリブ15A,15Bとの対応部分が厚み方向に圧縮されている。更に、
図7に示すように、ブロック部材31が止水シート33に強く押し当てられ、止水シート33におけるブロック部材31との対応部分が厚み方向に圧縮されている。
図において、止水シート33の厚みは誇張されている。
【0042】
管間端口シール構造30Bの施工の際は、更生管9の管端部9eを製管するのに先立ち、止水シート33を既設管1における管端部1e(更生管9の管端部と対応する部分)の内周面の全周に接着剤(図示省略)を介して貼り付ける。そのうえで、更生管9の管端部9eを既設管1の内周に張り付けるように製管する。これによって、リブ15A,15Bの頂部が止水シート33に密着される。
【0043】
続いて、管頂部9pのリブ15及び嵌合突条16を切除して収容溝9qを形成し、そこにブロック部材31を差し込む。このときブロック部材31が止水シート33から摩擦抵抗を受けるときは、管頂部9pを少し押し下げて、ブロック部材31を差し込みやすくする。差し込み後のブロック部材31は止水シート33に密着される。
これによって、螺旋溝部分18が確実に閉鎖空間となる。既設管1の内周面が劣化によって凸凹になっていたとしても、そのため特に凹の部分における更生管9の張り付きが不十分であったとしても、止水シート33によって螺旋溝部分18を確実に密閉することができる。
その後、前記密閉された螺旋溝部分18に止水材32を充填する。これによって、管間端口20を確実にシールできる。
【0044】
<第3実施形態(
図9~
図10)>
図9及び
図10に示すように、第3実施形態の管間端口シール構造30Cにおいては、手前側堰部及び奥側堰部として、第1実施形態(
図5~
図6)の直方体形状のブロック部材31に代えて、4つ(複数)の嵌合ピース41,42,43,44が用いられている。かつ、手前側堰部及び奥側堰部と対応する位置におけるリブ15及び嵌合突条16は切除されずにそのまま残置されている。
【0045】
嵌合ピース41,42,43,44の材質は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン等の合成樹脂であるが、これに限らず、スチール等の金属であってもよい。
人孔4に近い側(手前側、
図9の左側)の2つの嵌合ピース41,42は、手前側堰部を構成している。嵌合ピース41は、周回内螺旋溝17Aの断面に合わせた形状に形成され、螺旋溝部分18Aの手前側の端部に嵌め込まれている。嵌合ピース42は、周回間螺旋溝17Bの断面に合わせた形状に形成されており、螺旋溝部分18Bの手前側の端部に嵌め込まれている。
【0046】
人孔4から遠い側(奥側、
図9の右側)の2つの嵌合ピース43,44は、奥側堰部を構成している。嵌合ピース43は、周回内螺旋溝17Aの断面形状に合わせて、嵌合ピース41と同一形状に形成され、螺旋溝部分18Aの奥側の端部に嵌め込まれている。嵌合ピース44は、周回間螺旋溝17Bの断面に合わせて、嵌合ピース42と同一形状に形成されており、螺旋溝部分18Bの奥側の端部に嵌め込まれている。
これら嵌合ピース41,42,43,44は、更生管9の管頂部9pの管軸方向へ一直線に並んで配置されている。
【0047】
管間端口シール構造30Bの施工の際は、更生管9の管端部9eの製管と併行して、又は前後して、嵌合ピース41,42,43,44をそれぞれ螺旋溝17における堰部と対応する位置に嵌め込む(堰形成工程)。
例えば、更生管9の奥側(
図9の右側)から手前側(
図9の左側)へ製管する場合、周回部分10a
2を製管した後、製管機を一旦停止して、嵌合ピース44及び43を奥側堰部と対応する位置に嵌め込む。嵌め込みの際は、周回部分10a
2を弾性変形させて、嵌め込み代を確保する。
【0048】
続いて、製管機を再駆動させて。周回部分10a1を製管する。そして、製管機を停止して、嵌合ピース42及び41を手前側堰部と対応する位置に嵌め込む。嵌め込みの際は、周回部分10a1を弾性変形させて、嵌め込み代を確保する。
これによって、螺旋溝部分18が閉鎖される。
その後、螺旋溝部分18に止水材32を充填する。
【0049】
<第4実施形態(
図11)>
図11に示すように、第4実施形態の管間端口シール構造30Dにおいては、第3実施形態(
図9~
図10)と同様の嵌合ピース41,42,43,44からなる堰部を含み、更に第2実施形態(
図7~
図8)と同様の止水シート33を含む。止水シート33が、既設管1の内周と更生管9の管端部9eの外周との間に挟み付けられることで、管端部9eにおけるリブ15A,15Bと嵌合ピース41,42,43,44が止水シート33に密着されている。
【0050】
<第5実施形態(
図12~
図13)>
図12及び
図13に示すように、第5実施形態の管間端口シール構造30Eにおいては、更生管9の管端部9eの管頂部9pに第3実施形態(
図9~
図10)の嵌合ピース41,42,43,44に代えて、硬化材50が充填されている。硬化材の材質としては、例えば急結モルタルやエポキシパテ等が用いられている。
【0051】
硬化材50によって、手前側堰部51,52及び奥側堰部53,54が構成されている。手前側堰部51は、螺旋溝部分18Aの手前側の端部に配置されている。手前側堰部52は、螺旋溝部分18Bの手前側の端部に配置されている。奥側堰部53は、螺旋溝部分18Aの奥側の端部に配置されている。奥側堰部54は、螺旋溝部分18Bの奥側の端部に配置されている。
【0052】
管間端口シール構造30Eの施工の際は、更生管9の管端部9eの製管後、管頂部9pをめくってノズルを差し込み、手前側堰部51,52及び奥側堰部53,54となるべき硬化材50を充填する。硬化材50の硬化を待って、螺旋溝部分18に止水シート33を充填する。
【0053】
<第6実施形態(
図14)>
図14に示すように、第6実施形態の管間端口シール構造30Fにおいては、第5実施形態(
図12~
図13)と同様の硬化材50からなる堰部51,52,53,54を含み、更に第2実施形態(
図7~
図8)と同様の止水シート33を含む。止水シート33が、既設管1の内周と更生管9の管端部9eの外周との間に挟み付けられることで、管端部9eにおけるリブ15A,15Bと硬化材50が止水シート33に密着されている。
【0054】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、中央のリブ15Cが、両端のリブ15A,15Bと同一高さに形成されて既設管1の内周又は止水シート3に突き当たっていてもよく、これによって、螺旋溝17Aが2条に分割されていてもよい。
嵌合凸条16が、リブ15A,15Bと同一高さに形成されて既設管1の内周又は止水シート3に突き当たっていてもよく、これによって、螺旋溝17Bが2条に分割されていてもよい。嵌合突条16が螺旋溝を画成するリブの1つを構成していてもよい。
第1実施形態(
図5~
図6)の手前側堰部31a及び奥側堰部31bが、互いに別体のブロック部材によって構成され、分離可能であってもよい。互いに別体の手前側堰部31a及び奥側堰部31bが、帯状部材10の巻回方向に沿ってちょうど1ピッチずれることで管軸方向に一直線に並んで配置されていてもよく、帯状部材10の巻回方向に沿って1ピッチ超(一周超)ずれることで管周方向の互いに異なる位置に配置されていてもよい。
第3実施形態(
図9~
図10)及び第4実施形態(
図11)において、手前側嵌合ピース41,42と奥側嵌合ピース43,44とは、更生管9の巻き方向に沿って互いに1ピッチ以上離れていればよく、必ずしも更生管9の管軸方向へ一直線に並んで配置されている必要はなく、更生管9の管周方向に互いにずれて配置されていてもよい。第5実施形態(
図12~
図13)及び第6実施形態(
図14)の硬化剤50によって構成される堰部51~54についても同様である。
手前側堰部及び奥側堰部が互いに異なる材質、構造であってもよい。例えば、手前側堰部及び奥側堰部のうち一方が、リブ15を切除して設置されるブロック部材であり、手前側堰部及び奥側堰部のうち他方はリブを切除することなく螺旋溝17に嵌め込まれる嵌合ピースであってもよい。手前側堰部及び奥側堰部のうち一方がブロック部材又は嵌合ピースであり、手前側堰部及び奥側堰部のうち他方は硬化剤50であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、例えば老朽化した下水道管の更生技術に適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 既設管
9 更生管
9e 管端部
9p 管頂部(ブロック部が配置される部分、堰部と対応する位置)
9q 収容溝
10 帯状部材(プロファイル)
10a 周回部分
10a1 1周目の周回部分
10a2 2周目の周回部分
10a3 3周目の周回部分
15 リブ
17 螺旋溝
18 螺旋溝部分
20 管間端口
30 管間端口シール構造
30B~30F 管間端口シール構造
31 ブロック部材
32 止水材
31a 手前側堰部
31b 奥側堰部
32 止水材
33 止水シート
41,42 嵌合ピース(手前側堰部)
43,44 嵌合ピース(奥堰部)
50 硬化材
51,52 手前側堰部
53,54 奥側堰部