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特開2022-182772シュリンク包装用印刷インキ組成物、シュリンク包装用印刷物の製造方法及びシュリンク包装用印刷物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182772
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】シュリンク包装用印刷インキ組成物、シュリンク包装用印刷物の製造方法及びシュリンク包装用印刷物
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/107 20140101AFI20221201BHJP
   C09D 11/102 20140101ALI20221201BHJP
【FI】
C09D11/107
C09D11/102
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090497
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000105947
【氏名又は名称】サカタインクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100214363
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】太田 伸彦
(72)【発明者】
【氏名】堀 智博
(72)【発明者】
【氏名】田淵 太基
(72)【発明者】
【氏名】北瀬 輝
【テーマコード(参考)】
4J039
【Fターム(参考)】
4J039AB02
4J039AB08
4J039AD09
4J039BA13
4J039BA21
4J039BA32
4J039BA39
4J039BC07
4J039BC20
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE13
4J039CA04
4J039DA05
4J039EA40
4J039FA02
4J039GA03
(57)【要約】
【課題】バイオマス度を高くしても、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)が優れ、他の性能も良好であるシュリンク包装用印刷インキ組成物を提供すること。
【解決手段】顔料、樹脂成分及び溶剤成分を含有するシュリンク包装用印刷インキ組成物であって、
樹脂成分として、下記条件1及び2を満足する、カルボキシル基含有アクリル樹脂、セルロース樹脂、ロジン樹脂及びその誘導体を含むシュリンク包装用印刷インキ組成物。
条件1:
カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量とセルロース樹脂の固形分質量の比が、カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量/セルロース樹脂の固形分質量=80/20~60/40
条件2:
ロジン樹脂及びその誘導体の酸価が150mgKOH/g以下であり、インキ組成物の固形分中に3.0~20.0質量%含有する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、樹脂成分及び溶剤成分を含有するシュリンク包装用印刷インキ組成物であって、
樹脂成分として、下記条件1及び2を満足する、カルボキシル基含有アクリル樹脂、セルロース樹脂、ロジン樹脂及びその誘導体を含むシュリンク包装用印刷インキ組成物。
条件1:
カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量とセルロース樹脂の固形分質量の比が、カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量/セルロース樹脂の固形分質量=80/20~60/40
条件2:
ロジン樹脂及びその誘導体の酸価が150mgKOH/g以下であり、インキ組成物の固形分中に3.0~20.0質量%含有する。
【請求項2】
カルボキシル基含有アクリル樹脂が、酸価2~20mgKOH/g、質量平均分量30,000~100,000である請求項1に記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
【請求項3】
セルロース樹脂が、セルロースアセテートプロピオネート樹脂及びセルロースアセテートブチレート樹脂である請求項1又は2に記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
【請求項4】
ロジン樹脂及びその誘導体の酸価が30mgKOH/g以下である請求項1~3のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
【請求項5】
溶剤成分が、アルコール系溶剤及びエステル系溶剤を含有し、アルコール系溶剤とエステル系溶剤の質量比が、アルコール系溶剤/エステル系溶剤=60/40~80/20である請求項1~4のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
【請求項6】
可塑剤を含有する請求項1~5のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
【請求項7】
可塑剤がエポキシ化植物油である請求項6に記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
【請求項8】
顔料が白色顔料である請求項1~7のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
【請求項9】
白色顔料が、シリカ及び/又はアルミナからなる処理層を有するルチル型酸化チタンである請求項8に記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物を収縮性フィルムの印刷するシュリンク包装用印刷物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物を収縮性フィルムに印刷して得たシュリンク包装用印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュリンク包装用印刷インキ組成物、シュリンク包装用印刷物の製造方法及びシュリンク包装用印刷物に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料・化粧品・洗剤等の分野における各種容器として、紙容器、スチール缶、アルミ缶、ガラス容器、プラスチック容器等がそれぞれの特性を生かしながら利用されている。
そして、これら各種容器の表面には、内容物の表示等のための種々の印刷が施されている。上記各種容器のうち、紙容器の場合は、シートあるいは巻紙の状態で必要な印刷が行われた後に成形されるため、印刷効率は極めて高い。
しかし、その他の容器の場合は、予め特別な形状に成型されたものであるため、通常の印刷方式が適用出来なかった。よって、ラベル印刷物を貼付けたり、あるいはスクリーン方式、凹版版面のインキを弾性体に転写する等して印刷、又は缶用の特別な印刷方式を使用して、成型された容器に直接印刷していた。ところが、これらの方式は、作業効率が極めて悪いか、又は多品種少量生産に適さないものであった。
そこで被印刷材として熱収縮性フィルムを使用し、これに印刷した後の印刷物を筒状にし、その筒状物を容器に被せた後、表面に熱収縮により装着して包装とする、いわゆるシュリンク包装が利用されている。そして、一般的に、シュリンク包装の印刷では、被印刷材であるポリスチレンフィルム、PETフィルム、塩ビフィルム等の各種フィルムに適するように、有機溶剤とアクリル樹脂とニトロセルロースを併用したバインダー樹脂(例えば、特許文献1,2参照)、アクリル樹脂とセルロース樹脂を併用したバインダー樹脂(例えば、特許文献3)を用いたシュリンク包装用グラビア印刷インキ組成物が使用されている。
しかし、近年、環境問題から、シュリンク包装用グラビア印刷インキ組成物においても、バイオマス度が高いインキが要求されている。なかでも、耐界面活性剤性、耐アルカリ性が要求される用途等では、セルロース系成分の使用に限度があり、バイオマス度を高くすることが困難であった。さらに、白インキでは、固形分中の酸化チタン等の顔料の含有比率が高く、バインダー樹脂のアクリル樹脂は石油由来の樹脂であるため、バイオマス度を高くすることがより困難であった。
また、シュリンク包装が使用される製品の中でも、特に家庭用洗剤や、シャンプー、ボディソープ、アルカリ性洗浄剤等の容器用にする場合、使用開始後において、容器表面に内容物が付着することがあり、その際にも印刷を傷めないような内容物への耐性を有することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-175858号公報
【特許文献2】特開2009-286974号公報
【特許文献3】特許第6732151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、バイオマス度を高くしても、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)が優れ、他の性能も良好であるシュリンク包装用印刷インキ組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、以下の本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
1.顔料、樹脂成分及び溶剤成分を含有するシュリンク包装用印刷インキ組成物であって、樹脂成分として、下記条件1及び2を満足する、カルボキシル基含有アクリル樹脂、セルロース樹脂、ロジン樹脂及びその誘導体を含むシュリンク包装用印刷インキ組成物。
条件1:
カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量とセルロース樹脂の固形分質量の比が、カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量/セルロース樹脂の固形分質量=80/20~60/40
条件2:
ロジン樹脂及びその誘導体の酸価が150mgKOH/g以下であり、インキ組成物の固形分中に3.0~20.0質量%含有する。
2.カルボキシル基含有アクリル樹脂が、酸価2~20mgKOH/g、質量平均分量30,000~100,000である1に記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
3.セルロース樹脂が、セルロースアセテートプロピオネート樹脂及びセルロースアセテートブチレート樹脂である1又は2に記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
4.ロジン樹脂及びその誘導体の酸価が30mgKOH/g以下である1~3のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
5.溶剤成分が、アルコール系溶剤及びエステル系溶剤を含有し、アルコール系溶剤とエステル系溶剤の質量比が、アルコール系溶剤/エステル系溶剤=60/40~80/20である1~4のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
6.可塑剤を含有する1~5のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
7.可塑剤がエポキシ化植物油である6に記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
8.顔料が白色顔料である1~7のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
9.白色顔料が、シリカ及び/又はアルミナからなる処理層を有するルチル型酸化チタンである8に記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物。
10.1~9のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物を収縮性フィルムの印刷するシュリンク包装用印刷物の製造方法。
11.1~9のいずれかに記載のシュリンク包装用印刷インキ組成物を収縮性フィルムに印刷して得たシュリンク包装用印刷物。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、インキ組成物、特に白色インキ組成物の顔料含有量が多い場合でもバイオマス度を高くすることが可能となり、さらに耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)にも優れた(容器の内容物である石鹸やトイレタリーが印刷面に付着したときに印刷部が傷まない)シュリンク包装用印刷インキ組成物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、顔料、樹脂成分及び溶剤成分を含有するシュリンク包装用印刷インキ組成物であって、樹脂成分として、下記条件1及び2を満足するカルボキシル基含有アクリル樹脂、セルロース樹脂、ロジン樹脂及びその誘導体を含むシュリンク包装用印刷インキ組成物である。
条件1:
カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量とセルロース樹脂の固形分質量の比が、カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量/セルロース樹脂の固形分質量=80/20~60/40
条件2:
ロジン樹脂及びその誘導体の酸価が150mgKOH/g以下であり、樹脂固形分中に1~6質量%の範囲で含有する。
以下、本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物について、具体的に説明する。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物のバイオマス度は、10以上が好ましい。バイオマス度は、下記式で計算される。
バイオマス度=バイオマス成分量/シュリンク包装用印刷インキ組成物中の顔料を含む全固形分×100
バイオマス成分・・・樹脂固形分、添加剤固形分に占めるバイオマス由来の重量の総量(樹脂重量×バイオマス重量比率+添加剤重量×バイオマス重量比率)
【0008】
<酸価>
本発明における酸価は、カルボキシル基含有アクリル樹脂、ロジン樹脂等を1g得るために理論上必要な各単量体の量に対して、水酸化カリウム(KOH)の理論上の中和量を求め、その中和量の総和のmg数を上記重合体の酸価とする。
【0009】
<質量平均分子量>
本発明における樹脂の質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によって測定することができる。一例として、GPC装置としてWater2690(ウォーターズ社製)、カラムとしてPLgel、5μ、MIXED-D(Polymer Laboratories社製)を使用して、展開溶媒としてテトラヒドロフラン、カラム温度25℃、流速1ミリリットル/分、RI検出器、試料注入濃度10ミリグラム/ミリリットル、注入量100マイクロリットルの条件下、クロマトグラフィーを行ない、ポリスチレン換算の質量平均分子量として求める。
【0010】
<顔料>
顔料としては、印刷インキで一般的に用いられている各種無機顔料、有機顔料等が使用でき、具体的には無機顔料として、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛等の有色顔料、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。さらに、有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等を挙げることができる。酸化チタンや、シリカ及び/又はアルミナからなる処理層を有するルチル型酸化チタン等の白色顔料及びその他の着色顔料でもよい。顔料の含有量は、シュリンク包装用印刷インキ組成物の総質量に対して1~50質量%である。本発明は、無機顔料である酸化チタンに有用である。
【0011】
<樹脂成分>
樹脂成分として、カルボキシル基含有アクリル樹脂、セルロース樹脂、ロジン樹脂及びその誘導体を含有する。
(カルボキシル基含有アクリル樹脂)
カルボキシル基含有アクリル樹脂としては、ラジカル重合性カルボン酸単量体とラジカル重合性アクリル系単量体との共重合体、及びラジカル重合性カルボン酸単量体、ラジカル重合性アクリル系単量体以外のラジカル重合性単量体も含む共重合体が挙げられる。
前記ラジカル重合性カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸のモノエステル、モノアミド;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸;ビニルアルコールと酢酸、プロピオン酸、ラウリル酸、ステアリン酸等の炭素原子数2~18の飽和カルボン酸のエステル等が挙げられる。
ラジカル重合性アクリル系単量体としては、アクリル酸やメタクリル酸のメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルアルコール等のアルコールエステル、エチレングリコール、ピロピレングリコール等のジエステルが挙げられる。また、ラジカル重合性カルボン酸単量体及びラジカル重合性アクリル系単量体以外のラジカル重合性単量体(c)としては、スチレン、α-メチルスチレン等が挙げられる。
これらのカルボキシル基含有アクリル樹脂のなかでも、カルボキシル基の由来がメタアクリル酸モノマーである共重合体が好ましく、さらにメタアクリル酸(MAA)、メタアクリル酸メチル(MMA)及びメタアクリル酸ブチル(BMA)の共重合体が好ましい。
【0012】
前記の単量体を共重合して得られるカルボキシル基含有アクリル樹脂の酸価は2~20mgKOH/gが好ましい。また3mgKOH/g以上がより好ましく、15mgKOH/g以下がより好ましく、10mgKOH/g以下がさらに好ましい。2mgKOH/g未満では、セルロース樹脂との相溶性に問題が生じ易く、20mgKOH/gより高い場合は、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)が劣る傾向である。
また、カルボキシル基含有アクリル樹脂の質量平均分子量は、30,000~100,000が好ましい。中でも、35,000以上がより好ましく、40,000以上がさらに好ましい。また90,000以下がより好ましく、80,000以下がさらに好ましい。
質量平均分子量が30,000未満では、ブロッキング性、接着性等が低下する傾向となり、一方、100,000を超える場合は、溶解性及びセルロース樹脂との溶解性が低下する傾向となる。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中のカルボキシル基含有アクリル樹脂の含有量としては、10.0質量%以上が好ましく、13.0質量%以上がより好ましく、14.0質量%以上がさらに好ましい。また、40.0質量%以下が好ましく、35.0質量%以下がより好ましく、30.0質量%以下がさらに好ましい。
【0013】
(セルロース樹脂)
セルロース樹脂としては、従来からグラビアインキに使用されているセルロースアセテートプロピオネート樹脂、セルロースアセテートブチレート樹脂、ニトロセルロース樹脂等が使用できる。耐界面活性剤性、耐アルカリ性等を向上させる点から、セルロースアセテートプロピオネート樹脂やセルロースアセテートブチレート樹脂が好ましい。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物中のセルロース樹脂は下記条件1:を満足する。
シュリンク包装用印刷インキ組成物中の、カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量と、セルロース樹脂の固形分質量の比が、カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量/セルロース樹脂の固形分質量=80/20~60/40である。そして、75/25~65/35が好ましい。セルロース樹脂の固形分質量の割合が40より多いと、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)が低下する傾向となり、一方、20より少ないと、ブロッキング性等が低下する傾向となる。
また、本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中の各セルロース樹脂の合計含有量としては、 3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上がさらに好ましい。また、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下がさらに好ましい。
【0014】
(セルロースアセテートプロピオネート樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されている公知のセルロースアセテートプロピオネート樹脂を使用できる。
セルロースアセテートプロピオネート樹脂は、セルロースを酢酸及びプロピオン酸でトリエステル化した後に加水分解して得られる。一般的にはセルロースアセテートプロピオネート樹脂中のアセチル基含有量が0.6~2.5重量%、プロピオネート基含有量が42.0~46.0重量%、水酸基が1.8~5.0重量%である樹脂が市販されている。これらの中でも、バイオマス度を向上させるために、低分子量の樹脂を使用することが好ましい。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中のセルロースアセテートプロピオネート樹脂の含有量としては、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上がさらに好ましい。また、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下がさらに好ましい。
【0015】
(セルロースアセテートブチレート樹脂)
セルロースアセテートプロピオネート樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用される樹脂を使用できる。セルロースアセテートブチレート樹脂は、セルロースを酢酸及び酪酸でトリエステル化した後、加水分解して得られる。一般的にはアセチル化が2~30重量%、ブチリル化が17~53重量%、水酸基が1~5%の樹脂が市販されている。これらの中でも、バイオマス度を向上させるために、低分子量の樹脂を使用することが好ましい。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中のセルロースアセテートブチレート樹脂の含有量としては、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上がさらに好ましい。また、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下がさらに好ましい。
【0016】
(ニトロセルロース樹脂)
ニトロセルロース樹脂としては、従来からグラビア印刷インキ組成物に使用されているニトロセルロース樹脂を使用できる。ニトロセルロース樹脂としては、天然セルロースと硝酸を反応させて、天然セルロース中の無水グルコピラノース基の6員環中の3個の水酸基を、硝酸基に置換した硝酸エステルとして得られるものである。本発明に使用されるニトロセルロース樹脂としては、窒素量10~13%、平均重合度35~90のものが好ましく用いられる。具体例としては、SS1/2、SS1/4、SS1/8、TR1/16、NCRS-2、(KOREA CNC LTD社製)等を挙げることができる。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中のニトロセルロース樹脂の含有量としては、3.0質量%以上が好ましく、5.0質量%以上がより好ましく、7.0質量%以上がさらに好ましい。また、20.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以下がより好ましく、11.0質量%以下がさらに好ましい。
【0017】
(ロジン樹脂及びその誘導体)
ロジン樹脂としては、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジン等が挙げられる。一般的にロジンは松から得られる琥珀色、無定形の樹脂であり、天然から得られるため混合物であるが、アビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマール酸、イソピマール酸、サンダラコピマール酸、デヒドロアビエチン酸という構成成分ごとに単離して用いても良く、本発明ではこれらもロジン樹脂と定義する。
ロジン樹脂誘導体は、上記のロジン樹脂を変性してなる化合物であり、具体的に以下に列挙する。
(1)水素化ロジン:共役二重結合に水素を付加(水素添加)させて、耐候性を向上させたロジンである。
(2)不均化ロジン:不均化とは、二分子のロジンが反応し、共役二重結合を持った二分子のアビエチン酸が、一方は芳香族へ、もう一方は単独二重結合の分子となる変性である。一般に水添ロジンよりは耐候性が劣るが、未処理のものよりは耐候性が向上する。
(3)ロジン変性フェノール樹脂:オフセット印刷のインキには、メインバインダーとしてロジン変性フェノール樹脂が使われることが多い。ロジン変性フェノール樹脂は公知の製造法で得ることができる。
(4)ロジンエステル:ロジンから誘導されるエステル樹脂であり、古くから粘着・接着剤の粘着付与剤(タッキファイヤー)として用いられる。
(5)ロジン変性マレイン酸樹脂:ロジンに無水マレイン酸を付加反応させたもので、必要に応じてグリセリン等の水酸基含有化合物を、無水酸基とエステル化させグラフトさせたものも含まれる。
(6)重合ロジン:天然樹脂のロジンから誘導される二量化された樹脂酸を含む誘導体である。
その他、公知のロジン、ロジン誘導体も用いることが可能であり、これらは単独だけでなく併用することができる。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物中のロジン樹脂は下記条件2:を満足する。
ロジン樹脂及びその誘導体の酸価は150mgKOH/g以下である。150mgKOH/gを超えると、インキ組成物の安定性及び耐内容物適性(耐アルカリ性及び耐界面活性剤性)が低下する。さらに優れた内容物適性の点から、100mgKOH/g以下が好ましく、50mgKOH/g以下がさらに好ましく、30mgKOH/g以下がより好ましく、20mgKOH/g以下が極めて好ましく、10mgKOH/g以下が最も好ましい。
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の固形分中の、ロジン樹脂及びその誘導体の含有量は、3.0~20.0質量%である。そして、5.0質量%以上が好ましく、7.0質量%以上がより好ましい。また、15.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以下がより好ましい。
【0018】
(その他の樹脂)
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物には、前記カルボキシル基含有アクリル樹脂、セルロース樹脂、ロジン樹脂及びその誘導体以外の樹脂成分として、本発明による効果を毀損しない範囲で、必要に応じて適宜、他の樹脂を併用してもよい。
他の樹脂としては、ポリウレタンウレア樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体樹脂、塩素化オレフィン樹脂、アルキッド樹脂、酢酸ビニル樹脂、ケトン樹脂、ポリブチラール樹脂、環化ゴム系樹脂、塩化ゴム系樹脂、石油樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリ乳酸樹脂等が挙げられる。
なお、リン酸基を有するアクリル樹脂を含有しても良く、しなくても良い。
【0019】
(可塑剤)
可塑剤として、従来からグラビア印刷インキに使用されているセバチン酸ジオクチル、脂肪酸トリグリセリド、エチルトルエンスルホン酸アミド、アセチルクエン酸トリブチル、ステアリン酸2エチルヘキシルエステル、パルミチン酸2-エチルヘキシルエステル等とエポキシ化植物油を使用できる。これらの中でも、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)及びバイオマス度の点から、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等のエポキシ化植物油が好ましい。
可塑剤の含有量は特に限定されない。一例を挙げると、可塑剤の含有量は、シュリンク包装用印刷インキ組成物中、0.05質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、また、5.0質量%以下が好ましく、3.0質量%以下がより好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲内であることにより、得られるシュリンク包装用印刷インキ組成物は、耐内容物適性(耐界面活性剤性、耐アルカリ性)が向上する。
【0020】
(アマイド化合物)
さらに、シュリンク包装用印刷インキ組成物には、耐スクラッチ性、基材への接着性、耐擦傷性、耐内容物適性(耐界面活性剤性及び耐アルカリ性)をさらに向上させる点から、アマイド化合物を含有させることが好ましい。アマイド化合物としては、例えばパルチミン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、エチレンビスオレイン酸アマイド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アマイド等が挙げられ、これらを単独で使用しても良く、2種以上混合して使用してもよい。アマイド化合物を添加する場合は、シュリンク包装用印刷インキ組成物中に0.1~5.0質量%含有することが好ましい。中でも、耐スクラッチ性、基材への接着性、耐擦傷性、耐界面活性剤性及び耐アルカリ性が両立するために0.1~4.0質量%含有することが好ましく、0.3~2.5質量%で含有することが好ましい。
【0021】
(溶剤成分)
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物に使用する溶剤成分としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tert-ブタノール等のアルコール系溶剤、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤、ヘキサン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル等のエステル系溶剤、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール系溶剤及びこれらのエステル化物が挙げられ、エステル化物としては主にアセテート化したものが選ばれ、例えばエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらは、単独もしくは2種以上混合して使用することができる。
これらの溶剤成分のなかでも、環境面からは、アルコール系溶剤及び/又はエステル系溶剤を使用することが好ましく、より好ましくは炭素数1~4のアルコール系溶剤及び/又はエステル系溶剤である。さらに、炭素数1~4のアルコール系溶剤とエステル系溶剤を、質量比でアルコール系/エステル系溶剤=60/40~80/20となるようにすることが好ましく、63/37~75/25となるように使用することが好ましい。エステル系溶剤が40より多いと収縮OPS(収縮性未処理ポリスチレンフィルム)へアタックする可能性がある。また、エステル系溶剤が、20より少ないと樹脂成分の溶解性が低下する傾向にある。
【0022】
(その他成分)
本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物には、その他に、必要に応じて、耐摩擦強化剤、ブロッキング防止剤、顔料分散剤、静電防止剤、滑剤、架橋剤、消泡剤、乾燥調整剤、その他の可塑剤、粘着付与剤、密着向上剤、レベリング剤、酸化防止剤等を添加することができる。なかでもバイオマス由来の添加剤であればなおよい。
滑剤としては、ポリエチレン(PE)ワックス、ポリプロピレンワックスや、PTFE系ワックス、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプシュワックス、モンタンワックス、カルナバワックス、シェラックワックス、アマイドワックス、有機ポリマー、蜜蝋、これらの混合ワックス等が好ましく、なかでも、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスがより好ましい。
【0023】
(本発明のシュリンク包装用印刷インキ組成物の製造方法)
次に、上記したインキ組成物の製造方法の一例について説明する。本実施形態のシュリンク包装用印刷インキ組成物の製造方法は、顔料、バインダー樹脂、有機溶剤、及び必要に応じて任意成分(顔料分散剤、界面活性剤等)を撹拌混合した後、各種練肉機、たとえば、ビーズミル、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、パールミル等を用いて練肉し、さらに所定の添加剤等の材料の残りを添加混合する方法が例示される。
【0024】
(シュリンク包装用印刷物)
次に、本発明の一実施形態のシュリンク包装用印刷物(以下、単に印刷物ともいう)について説明する。本発明の印刷物は、上記したインキ組成物が、基材である収縮性フィルムに印刷された印刷物である。印刷物は、好ましくはグラビア印刷機もしくはフレキソ印刷機を用いることにより、インキ組成物を、基材である収縮性フィルム等に印刷することによって得られる。印刷条件は、公知の条件が適宜採用される。印刷物は、印刷後にインキ中の有機溶剤を飛散させるために乾燥されてもよい。乾燥条件は、公知の条件が適宜採用される。
収縮性フィルムとしては、延伸処理等して得られた収縮性ポリプロピレンフィルム、収縮性ポリ塩化ビニルフィルム、収縮性ポリエチレンフタレートフィルム、収縮性ポリスチレンフィルム(特に収縮性未処理ポリスチレンフィルム)であることが好ましい。
得られる印刷物は、シュリンクラベルやラップ用フィルム印刷物等の各種シュリンク包装用途に利用される。シュリンクラベルに利用される場合、印刷物は、溶断シール等の手段によりチュービングされ、PET容器あるいはガラス容器等に装着された後、所定の収縮温度に加熱されることにより熱収縮され、容器に密着させられる。ラップ用フィルム印刷物に利用される場合、印刷物は、異形物の包装、商品の結束ならびに保証包装等に利用される。
【実施例0025】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する(表に記載の数値は質量部)。
使用された原料及びその調製方法を以下に示す。
(カルボキシル基含有アクリル樹脂)
カルボキシル基含有アクリル樹脂1:MAA/MMA/BMA
理論酸価3mgKOH/g、質量平均分子量60,000
カルボキシル基含有アクリル樹脂2:MAA/MMA/BMA
理論酸価7mgKOH/g、質量平均分子量60,000
カルボキシル基含有アクリル樹脂3:MAA/MMA/BMA
理論酸価13mgKOH/g、質量平均分子量60,000
カルボキシル基含有アクリル樹脂4:MAA/MMA/BMA
理論酸価3mgKOH/g、質量平均分子量40,000
カルボキシル基含有アクリル樹脂5:MAA/MMA/BMA
理論酸価3mgKOH/g、質量平均分子量80,000
【0026】
(リン酸基含有アクリル樹脂)
リン酸基含有アクリル樹脂溶液
樹脂100質量%中に、リン酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル0.01質量%と、メチルメタクリレート35質量%と、ブチルメタクリレート64.99質量%含有する常法により合成された樹脂の、イソプロピルアルコール/酢酸エチル=4/6の混合溶剤の、固形分40%の溶液。該樹脂は、重量平均分子量60,000、酸価0.1mgKOH/gであった。
【0027】
(顔料)
酸化チタン:シリカアルミナで表面処理したルチル型酸化チタン顔料
ピグメントブルー15:4(PB15:4)
【0028】
(セルロース樹脂)
セルロースアセテートブチレート(CAB-381-0.5、Eastman社製、数平均分子量30,000)
セルロースアセテートブチレート(CAB-381-0.1、Eastman社製、数平均分子量20,000)
セルロースアセテートプロピオネート(CAP-482-0.5、Eastman社製、数平均分子量25,000)
ニトロセルロース:(LIG1/8、エスエヌピーイージャパン社製)
【0029】
(ロジン樹脂及びその誘導体)
ロジンエステル(酸価7mgKOH/g)
ロジンエステル(酸価15mgKOH/g)
マレイン酸変性ロジン樹脂(酸価40mgKOH/g)
二量化ロジン(140mgKOH/g)
マレイン酸変性ロジン樹脂(酸価300mgKOH/g)
【0030】
(可塑剤)
エポキシ化大豆油
エポキシ化アマニ油
セバシン酸ジオクチル
【0031】
(アマイド化合物)
ステアリン酸アミド
(PEワックス)
Spray 30(Sasol社製)
(消泡剤)
BYK-094(BYK社製)
【0032】
<実施例1~18、比較例2~5のシュリンク包装用印刷白色インキ組成物>
顔料(酸化チタン)45質量部とカルボキシル基含有アクリル樹脂9質量部(比較例6の場合は、7.5質量部)、イソプロピルアルコール10質量部、酢酸エチル15質量部を、ペイントコンデショナーを用いて混練し、さらに表1の配合になるように、カルボキシル基含有アクリル樹脂、ロジン樹脂、可塑剤、残余の材料及び溶剤を添加混合し、シュリンク包装用印刷白色インキ組成物を調製した。
<実施例19~28シュリンク包装用印刷色インキ組成物>
白色以外の色顔料10質量部とカルボキシル基含有アクリル樹脂9質量部、イソプロピルアルコール10質量部、酢酸エチル15質量部を、ペイントコンデショナーを用いて混練し、さらに表1の配合になるように、カルボキシル基含有アクリル樹脂、ロジン樹脂、セルロース樹脂、可塑剤、残余の材料及び溶剤を添加混合し、シュリンク包装用印刷色インキ組成物を調製した。
<比較例1のシュリンク包装用印刷白インキ組成物>
顔料(酸化チタン)45質量部とリン酸基含有アクリル樹脂溶液22.5質量部、イソプロピルアルコール6.9質量部、酢酸エチル4.6質量部を、ペイントコンデショナーを用いて混練し、さらに表1の配合になるように、リン酸基含有アクリル樹脂溶液、ロジン樹脂、セルロース樹脂、可塑剤、残余の材料及び溶剤を添加混合し、シュリンク包装用印刷白色インキ組成物を調製した。
【0033】
<印刷方法>
実施例1~28、比較例1~6のシュリンク包装用印刷インキ組成物を、粘度が(株)離合社製ザーンカップ#3で15秒となるように、混合溶剤(イソプロピルアルコール:酢酸エチル=6:4の混合溶剤)で希釈した。
それらの希釈組成物を、彫刻版(印刷刷版、ヘリオ175線/inch)を備えたグラビア印刷機((株)東芝製作所製)にて、収縮性未処理ポリスチレンフィルム(BS-55S、厚さ50μm、タキロンシーアイ(株)社製)に、印刷速度150m/分で印刷を行い、各印刷物を得た。なお、耐ブロッキング性以外の評価をする印刷物は、全てこの方法により得た印刷物である。
【0034】
<印刷評価>
(接着性)
上記各印刷物の印刷面にセロハンテープ(登録商標)を貼り付け、急速に剥がしたときに印刷皮膜がフィルムから剥離する度合いにより接着性を以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
○:全く剥離しなかった。
△:わずかに一部が剥離したが、実用に耐え得る程度であった。
×:大部分が剥離したか、完全に剥離した。
【0035】
(耐スクラッチ性)
上記各印刷物を爪の背で強く擦り、インキの脱落を見て評価した。
<評価基準>
○:全く傷が入らなかった。
△:一部が剥離した。
×:大部分が剥離したか、完全に剥離した。
【0036】
(耐揉み性)
上記各印刷物を両手で強く10回手揉みした後の各印刷物の塗膜の割れの状態を、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
○:全く割れなかった。
△:部分的に割れた。
×:全体的に割れた。耐スクラッチ性
【0037】
(残留溶剤)
上記各印刷物について、残留溶剤の量を軟包装衛生協議会方式に準じ測定し、以下の評価基準にしたがって評価した。
<評価基準>
○:残留溶剤の量が、5mg/m 未満であった。
△:残留溶剤の量が、5~15mg/mであった。
×:残留溶剤の量が、15mg/mより多かった。
【0038】
(耐原反アタック性)
上記各印刷物のクラック(亀裂)発生度合を目視評価した。耐原反アタック性の評価基準を下記に示す。
<評価基準>
○:印刷物にクラックが全く生じていない。
△:印刷物に僅かにクラック状態が認められる。
×:印刷物にかなりのクラック状態が認められるか、又は印刷物が完全に裂けている。
【0039】
(耐ブロッキング性)
実施例1~28、比較例1~6のシュリンク包装用印刷インキ組成物を、線径0.1mmメアバーにて展色後、熱風で乾燥し、各印刷物を得た。その印刷物のインキ印刷面と非印刷面を合せて、29.4×10Pa(3kg/cm)の荷重下に40℃で24時間放置した後、手で剥がして剥離抵抗の強さとインキ皮膜の剥離程度を評価した。耐ブロッキング性の評価基準を下記に示す。
<評価基準>
○:インキの剥離が全くなく、剥離抵抗も感じられない。
△:インキの剥離が僅かにあり、剥離抵抗が感じられる。
×:インキがほとんど剥離し、剥離抵抗が強く感じられる。
【0040】
(エッジ割れ)
上記各印刷物に、当該フィルムを挟み込む形で、ガラス瓶に巻き、90℃熱水に10秒間浸漬させるた。乾燥後、エッジ部分での割れの程度を評価した。
<評価基準>
〇:インキの割れが全くなかった。
△:インキの割れが部分的にあった。
×:インキの割れが全体的にあった。
【0041】
<耐内容物性>
上記各印刷物を下記内容物に浸漬させ、40℃にて24時間放置した。放置後、水で内容物を洗い落とした後、インキの脱落の程度を評価した。
ボディソープ (クラシエホールディングス(株)製、ナイーブ(登録商標) ボディソープ)
ハンドソープ (クラシエホールディングス(株)製、ナイーブ(登録商標) ハンドソープ)
キッチンハイター (花王株式会社製)
<評価基準>
〇:インキの脱落が全くなかった。
△:インキの脱落が僅かにあった。
×:インキが完全に脱落した。
【0042】
【表1】







【0043】
各実施例によれば、十分に高いバイオマス度を達成できることに加えて、接着性、耐スクラッチ性、耐揉み性、耐原反アタック性、耐ブロッキング性、及び耐内容物性に優れ、残留溶剤が少ないという効果を達成できる。
しかしながら、カルボキシル基含有アクリル樹脂を含有せず、リン酸基含有アクリル樹脂を含有させた比較例1、及びロジン樹脂の酸価が高すぎる比較例2、ロジン樹脂の含有量が多すぎる比較例4によれば、耐内容物性に劣ることになった。
またロジン樹脂の含有量が少ない比較例3によれば、十分に高いバイオマス度にすることができなかった。
カルボキシル基含有アクリル樹脂の固形分質量とセルロース樹脂の固形分質量の比において、カルボキシル基含有アクリル樹脂が過剰である比較例5によれば、より重要な耐ブロッキング性が不十分であり、逆にカルボキシル基含有アクリル樹脂が過少である比較例6によれば、より重要な接着性が不十分、かつ残留溶剤があった。