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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182778
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】多剤式染毛料組成物及び染毛方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/02 20060101AFI20221201BHJP
   A61Q 5/10 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 8/31 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 8/41 20060101ALI20221201BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q5/10
A61K8/37
A61K8/31
A61K8/34
A61K8/41
A61K8/49
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090505
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000113274
【氏名又は名称】ホーユー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】山口 真吾
(72)【発明者】
【氏名】岩月 みなみ
(72)【発明者】
【氏名】小林 爽季
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC011
4C083AC012
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC082
4C083AC091
4C083AC092
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC331
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC482
4C083AC552
4C083AC692
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD152
4C083AD162
4C083AD412
4C083AD512
4C083BB12
4C083BB13
4C083BB21
4C083CC36
4C083DD06
4C083DD23
4C083DD27
4C083EE07
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、毛髪上での延びの良さ、タレ落ち抑制、混合性が向上した多剤式染毛料組成物を提供することにある。
【解決手段】本発明は、(A)直接染料、(B)25℃でペースト状又は液状の油性成分、及び(C)25℃で固形の油性成分を含有する染毛料組成物と、(B)~(C) 成分を含有する毛髪用組成物と、を含んで構成される多剤式染毛料組成物、およびこれらの組成物を用いた多剤式染毛方法に関するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)直接染料、(B)25℃でペースト状又は液状の油性成分、及び(C)25℃で固形の油性成分を含有する染毛料組成物と、(B)~(C) 成分を含有する毛髪用組成物と、を含んで構成される多剤式染毛料組成物。
【請求項2】
(B)成分としてエステル油、炭化水素油、分岐鎖を持つ高級アルコールから選ばれる1以上の成分、(C)成分として25℃で固形の高級アルコールが含まれる、請求項1に記載の多剤式染毛料組成物。
【請求項3】
(B)成分の含有量が使用時に0.1~5質量%であり、前記(C)成分の含有量が使用時に0.1~10質量%である請求項1又は請求項2に記載の多剤式染毛料組成物。
【請求項4】
(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/〔(B)+(C)〕が使用時に0.00005~5の範囲内である請求項1~請求項3のいずれかに記載の多剤式染毛料組成物。
【請求項5】
(C)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比(B)/(C)が使用時に0.01~1の範囲内である請求項1~請求項4のいずれかに記載の多剤式染毛料組成物。
【請求項6】
以下の工程(S1)~(S2)のいずれかの工程を含んで染毛を行う方法を選択肢に含む多剤式染毛方法。
(S1)前記(A)~(C)成分を含有する染毛料組成物を、前記(A)~(C)成分を含有し、前記染毛料組成物とは異なる色調を呈する染毛料組成物と混合して毛髪に適用する工程。
(S2)前記(A)~(C)成分を含有する染毛料組成物を、前記(A)成分を含有せず(B)~(C)成分を含有する毛髪用組成物と混合して毛髪に適用する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多剤式染毛料組成物及び染毛方法に関する。
【0002】
更に詳しくは、本発明は、(1)直接染料である(A)成分及びそれぞれ所定の油性成分である(B)、(C)成分を含有する染毛料組成物(以下、これを「染毛料1」ともいう)と、(B)、(C)成分を含有する毛髪用組成物と、を含んで構成される多剤式染毛料組成物に関する。
【0003】
また本発明は、(2)以下の工程(S1)~(S2)のいずれかの工程を含んで染毛を行う方法を選択肢に含む多剤式染毛方法。
(S1)染毛料1を、前記(A)~(C)成分を含有し、前記染毛料組成物とは異なる色調を呈する染毛料組成物(以下、これを「染毛料2」ともいう)と混合して毛髪に適用する工程。
(S2)染毛料1を、前記(A)成分を含有せず(B)~(C)成分を含有する毛髪用組成物(以下、これを「うすめ液」ともいう)と混合して毛髪に適用する工程。
【背景技術】
【0004】
直接染料を含有する染毛料は、毛髪適用時の毛髪上での延びの良さ、毛髪からのタレ落ち防止等の観点から、通常、一定の好適な粘度に設計されている。
また、このような染毛料の使用に当たり、染毛料の色調が過度に濃い場合にはうすめ液(thinner)を用いたり、染毛料の色彩を変えるために異なる色調を示す染毛料と混合して中間色に調整したりする場合が考えられる。
単独でも使用でき、うすめ液(thinner)や異なる色調を示す染毛料と混合しても使用できる染毛料は、単剤時のみならず、混合時においても毛髪適用時の毛髪上での延びの良さ、毛髪からのタレ落ちがないことと同時に、混合性の良さも求められる。そのため、どちらかの用法のみで用いられる染毛料に比べ、より細かな粘度や粘性の調整が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-210231号公報
【0006】
上記の特許文献1はケラチン繊維を染色するための方法及びキットに関し、少なくとも1つの直接染料及び水を含む第1の組成物と、少なくとも1つの油及び少なくとも1つのペースト状又は固体状非極性炭化水素系脂肪物質を含む第2の組成物とを用いる。そして段落0030で述べるように、第1の組成物と第2の組成物との混合物で毛髪を処理すれば、良好な染毛効果を得る一方で皮膚染色を低減できるとしている。
【0007】
なお、このケラチン繊維染色キットにおける第1の組成物と第2の組成物とは、段落0433以下の実施例及び比較例の説明から分かるように、毛髪への適用の直前に混合されるものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、直接染料を含有する染毛料においては、その商品の保管・流通中に染毛料の粘度が不安定化することがある。その結果、単独でも使用でき、うすめ液(thinner)や異なる色調を呈する染毛料と混合しても使用できる染毛料に求められる絶妙な粘度や粘性を保つことが難しく、毛髪への適用時に延びが悪くなったり、毛髪からタレ落ちたりする場合がある。更に、うすめ液(thinner)や異なる色調を呈する染毛料等の他種毛髪化粧料と混合する場合には、染毛時に色ムラが生じないような混合性能が求められるが、毛髪上での延びや毛髪からのタレ落ち抑制の向上と混合性能の両立は困難であった。
そこで本発明は、直接染料を含有する染毛料の不安定化の原因を特定し、その原因を解消又は少なくとも抑制することで、毛髪上での延びの良さ、タレ落ち抑制、混合性に満足のいく、うすめ液(thinner)や異なる色調を呈する染毛料と混合して使用できる多剤式染毛料組成物を提供することを、解決すべき技術的課題とする。
【0009】
本願発明者は、上記課題の解決手段を究明する過程で、直接染料を含有する染毛料の粘度不安定化が直接染料自体に起因することを突き止めた。そして、直接染料と共に特定の2種類の油性成分を含有させると粘度の不安定化を解消又は抑制することで、毛髪上での延びの良さ、タレ落ち抑制、混合性に満足のいく多剤式染毛料組成物を提供できることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(第1発明)
上記課題を解決するための本願第1発明は、(A)直接染料、(B)25℃でペースト状又は液状の油性成分、及び(C)25℃で固形の油性成分を含有する染毛料組成物と、(B)~(C) 成分を含有する毛髪用組成物と、を含んで構成される多剤式染毛料組成物に関する。
【0011】
なお、上記「(A)直接染料、(B)25℃でペースト状又は液状の油性成分、及び(C)25℃で固形の油性成分を含有する染毛料組成物」は、前記した染毛料1であり、「(B)~(C) 成分を含有する毛髪用組成物」は、前記した染毛料2またはうすめ液である。
(B)~(C) 成分を含有する毛髪用組成物が(A)成分を有する場合は染毛料2、(B)~(C) 成分を含有する毛髪用組成物が(A)成分を有しない場合はうすめ液となる。
また、(B)成分の1種である「25℃でペースト状の油性成分」とは、具体的には当該成分が、一定の体積を有するもとで、25℃において形状を自在に変えてその変えた形状を保持することができる状態であればペースト状と判断することができる。25℃でペースト状とは、具体的には当該成分が、一定の体積を有するもとで、室温において形状を自在に変えてその変えた形状を保持することができる状態であればペースト状と判断することができる。対して、「25℃で固形の油性成分」とは、25℃で重力に抗して自らの空間形状を維持できるものを言う。従って、(B)成分と(C)成分は区別できる。
【0012】
(第2発明)
上記課題を解決するための本願第2発明では、前記第1発明の多剤式染毛料組成物における(B)成分としてエステル油、炭化水素油、分岐鎖を持つ高級アルコールから選ばれる1以上の成分が含まれ、(C)成分として25℃で固形の高級アルコールが含まれる。
【0013】
(第3発明)
上記課題を解決するための本願第3発明では、前記第1発明又は第2発明の多剤式染毛料組成物における(B)成分の含有量が使用時に0.1~5質量%であり、(C)成分の含有量が使用時に0.1~10質量%である。
【0014】
(第4発明)
上記課題を解決するための本願第4発明では、前記第1発明~第3発明の多剤式染毛料組成物における(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/〔(B)+(C)〕が使用時に0.00005~5の範囲内である。
【0015】
(第5発明)
上記課題を解決するための本願第5発明では、前記第1発明~第4発明のいずれかに係る染毛料組成物における(C)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比使用時に(B)/(C)が0.01~1の範囲内である。
【0016】
(第6発明)
上記課題を解決するための本願第6発明は、以下の工程(S1)~(S2)のいずれかの工程を含んで染毛を行う方法を選択肢に含む多剤式染毛方法に関する。
(S1)前記(A)~(C)成分を含有する染毛料組成物(染毛料1)を、前記(A)~(C)成分を含有し、前記染毛料組成物とは異なる色調を呈する染毛料組成物(染毛料2)と混合して毛髪に適用する工程。
(S2)前記(A)~(C)成分を含有する染毛料組成物(染毛料1)を、前記(A)成分を含有せず(B)~(C)成分を含有する毛髪用組成物(うすめ液)と混合して毛髪に適用する工程。
ここで、「異なる色調を呈する」とは、染毛料組成物における直接染料の配合種や配合量が異なることに起因する。
【発明の効果】
【0017】
(第1発明の効果)
第1発明の多剤式染毛料組成物によれば、(A)成分である直接染料に加えて、(B)成分である25℃でペースト状又は液状の油性成分と、(C)成分である25℃で固形の油性成分を含有するので、その染毛料組成物商品の保管・流通中に染毛料の粘度が不安定化しない。その結果、染毛料2やうすめ液との混合使用時においても毛髪への適用時に延びが悪くなったり、毛髪からタレ落ちたりする不具合が起こらず、混合時の混合性も良好である。
【0018】
(第2発明の効果)
本発明の多剤式染毛料組成物における(B)成分は、必ずしも限定されないが、好ましくはエステル油、炭化水素油、分岐鎖を持つ高級アルコールから選ばれる1以上の成分であり、本発明の多剤式染毛料組成物における(C)成分は、必ずしも限定されないが、好ましくは25℃で固形の高級アルコールである。その結果、毛髪への適用時に延びが悪くなったり、毛髪からタレ落ちたりする不具合がさらに抑制され、混合時の混合性もさらに良好である。
【0019】
(第3発明の効果)
本発明の多剤式染毛料組成物における(B)成分と(C)成分の含有量は、必ずしも限定されないが、好ましくは、前者が使用時に0.1~5質量%の範囲内、後者が使用時に0.1~10質量%の範囲内である。その結果、毛髪への適用時に延びが悪くなったり、毛髪からタレ落ちたりする不具合がさらに抑制され、混合時の混合性もさらに良好である。
【0020】
(第4発明の効果)
本発明の多剤式染毛料組成物における(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/〔(B)+(C)〕は、必ずしも限定されないが、好ましくは、使用時に0.00005~5の範囲内である。特にこの質量比が上限値5を超えないことが好ましい。その結果、毛髪への適用時に延びが悪くなったり、毛髪からタレ落ちたりする不具合がさらに抑制され、混合時の混合性もさらに良好である。
【0021】
(第5発明の効果)
本発明の多剤式染毛料組成物における(C)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比(B)/(C)は、必ずしも限定されないが、好ましくは、使用時に0.01~1の範囲内である。その結果、毛髪への適用時に延びが悪くなったり、毛髪からタレ落ちたりする不具合がさらに抑制され、混合時の混合性もさらに良好である。
【0022】
(第6発明の効果)
本発明の多剤式染毛料組成物は、染毛料1、染毛料2及び/又はうすめ液を含んで構成されるので、染毛料1と染毛料2の混合物を用いる中間色の染毛方法、染毛料1とうすめ液との混合物を用いて色味を薄める染毛方法、染毛料1と染毛料2及びうすめ液の混合物を用いて中間色の色味を薄める染毛方法を、任意に選択して行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明を実施するための形態を、その最良の形態を含めて説明する。本発明の技術的範囲は、以下の実施形態によって限定されるものではない。
【0024】
〔染毛料及びうすめ液〕
本発明の多剤式染毛料組成物を構成する染毛料組成物(染毛料1、染毛料2)は、(A)成分である直接染料と、(B)成分である25℃でペースト状又は液状の油性成分と、(C)成分である25℃で固形の油性成分を含有する。染毛料組成物(染毛料1、染毛料2)は単独で販売及び使用されても良いし、多剤式染毛料組成物の構成要素として販売及び使用されても良い。
【0025】
染毛料2は、染毛料1とは異なる色調を呈する点を除いては、染毛料1と用途が同一である。うすめ液は染毛料組成物を薄めるために用いられる。染毛料1、染毛料2及びうすめ液は本発明の多剤式染毛料組成物を構成する。
【0026】
染毛料1、染毛料2及びうすめ液の剤型は限定されないが、乳化系の剤が好ましい。染毛料1、染毛料2及びうすめ液のpHは、(A)成分である直接染料の種類等を考慮して、適宜に設定されるが、それぞれ2~7の間が好ましい。
【0027】
〔本発明の組成物の利用方法〕
染毛料1、染毛料2は、それぞれ単独で毛髪に適用することができる。また、染毛色調を変更したい場合には、染毛料1を予め異なる適宜な色調の染毛料2と混合しておいて、毛髪に適用することができる。更に、上記の染毛料1、染毛料2を単独で適用する場合と、染毛料1/染毛料2の染毛料を混合しておいて適用する場合のいずれにおいても、染毛色が濃すぎると考える場合は、これらを予めうすめ液と混合しておいて、毛髪に適用することができる。
【0028】
〔本発明の組成物の必須成分〕
((A)成分)
(A)成分である直接染料として、酸性染料、塩基性染料、天然染料、HC染料、分散染料等が挙げられる。好ましくは酸性染料、塩基性染料、HC染料、特に好ましくは塩基性染料が挙げられる。
【0029】
酸性染料としては、赤色2号、赤色3号、赤色102号、赤色104号の(1)、赤色105号の(1)、赤色106号、赤色230号の(1)、黄色4号、黄色202号の(1)、黄色202号の(2)、黄色203号、橙色205号、橙色207号、橙色402号、緑色3号、緑色204号、緑色401号、紫色401号、青色1号、青色2号、青色202号、褐色201号、黒色401号が例示される。
【0030】
塩基性染料としては、Basic Blue 3、Basic Blue 6、Basic Blue 7、Basic Blue 41、Basic Blue 99、Basic Blue 124、Basic Brown 4、Basic Brown 16、Basic Green 1、Basic Green 4、Basic Orange 1、Basic Orange 2、Basic Red 1、Basic Red 2、Basic Red 22、Basic Red 51、Basic Red 76、Basic Violet 1、Basic Violet 2、Basic Violet 4、Basic Violet 10、Basic Violet 14、Basic Yellow 11、Basic Yellow 28、Basic Yellow 87が例示される。好ましくはBasic Blue 124(塩基性青124)、Basic Violet 2(塩基性紫2)、Basic Yellow 87(塩基性黄87)、Basic Red 51(塩基性赤51)が選ばれる。
【0031】
天然染料としては、クチナシ色素、ウコン色素、アナトー色素、銅クロロフィリンナトリウム、パプリカ色素、ラック色素、ベニバナ色素、ヘナ等が例示される。
ニトロ染料としては、4-ニトロ-o-フェニレンジアミン、2-ニトロ-p-フェニレンジアミン、2-アミノ-4-ニトロフェノール、2-アミノ-5-ニトロフェノール、ピクラミン酸、ピクリン酸、それらの塩が例示される。
【0032】
HC染料としては、HC Blue No.2、HC Blue No.5、HC Blue No.9、HC Blue No.10、HC Blue No.11、HC Blue No.12、HC Blue No.16、HC Orange No.1、HC Orange No.2、HC Red No.1、HC Red No.3、HC Red No.10、HC Violet No.1、HC Violet No.2、HC Yellow No.2、HC Yellow No.4、HC Yellow No.10、HC Yellow No.11、HC Yellow No.12が例示される。
【0033】
分散染料としては、Disperse Black 9、Disperse Blue 1、Disperse Blue 3、Disperse Brown 4、Disperse Orange 3、Disperse Red 11、Disperse Red 15、Disperse Red 17、Disperse Violet 1、Disperse Violet 4、Disperse Violet 15が例示される。
なお、染毛料1と染毛料2は直接染料の配合種や配合量が異なることから異なる色調を呈する。毛髪適用時の延び向上、毛髪からのタレ落ち抑制、混合時の混合性向上の観点から、染毛料1と染毛料2の両方に塩基性染料が含まれることが好ましい。毛髪適用時の延び向上、毛髪からのタレ落ち抑制、混合時の混合性向上の観点から、染毛料1及び染毛料2に配合される好ましい(A)成分としては、塩基性黄87、塩基性赤51、塩基性青124、塩基性紫2である。毛髪適用時の延び向上、毛髪からのタレ落ち抑制、混合時の混合性向上の観点から、染毛料1の好ましい(A)成分の配合量として、2質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下、更に好ましくは1質量%以下、染毛力の観点から0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.01質量%以上が好ましい。
【0034】
((B)成分)
(B)成分である25℃でペースト状又は液状の油性成分として、ワセリン、ラノリン、イソステアリン酸、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、デシルテトラデカノール、オレイルアルコール、2-ヘキシルデカノール、ラウリルアルコール、ステアリン酸水添ヒマシ油、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ビスジグリセリルポリアシルソルベート-1、ビスジグリセリルポリアシルソルベート-2、アジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソステアリル、ミリスチン酸イソトリデシル、ミリスチン酸イソプロピル、トリオレイン酸グリセリル、トリステアリン酸グリセリル、トリパルミチン酸グリセリル、オリーブ油、ツバキ油、茶実油、ホホバ油、ミンク油、卵黄油、α-オレフィンオリゴマー、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、が例示される。好ましくはエステル油、炭化水素油、分岐鎖を持つ高級アルコールが挙げられ、特に好ましくはワセリン、炭化水素、イソステアリン酸水添ヒマシ油、ビスジグリセリルポリアシルソルベート-2、2-オクチルドデカノール、オレイルアルコールが挙げられる。
【0035】
染毛料1、染毛料2あるいはうすめ液における(B)成分の含有量は限定されないが、混合時の混合性向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.15質量%以上、さらに好ましくは0.2質量%以上であり、毛髪適用時の延び向上、毛髪からのタレ落ち抑制の観点から、好ましくは5質量%以下、より好ましくは3質量%以下、さらに好ましくは2質量%以下である。
【0036】
((C)成分)
(C)成分である25℃で固形の油性成分として、セテアリルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸セチル、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ラノリンロウ、コメヌカロウ、サトウキビロウ、パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、シア脂、シア脂、牛脂が例示される。好ましくは25℃で固形の高級アルコールが挙げられ、特に好ましくはセタノール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコールが挙げられる。
【0037】
染毛料1、染毛料2の染毛料あるいはうすめ液における(C)成分の含有量は限定されないが、混合時の混合性向上の観点から、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、最も好ましくは2質量%以上であり、毛髪適用時の延び向上、毛髪からのタレ落ち抑制の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
【0038】
(質量比(A)/〔(B)+(C)〕)
本発明の染毛料1、染毛料2あるいはうすめ液において、(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(A)成分の含有量の質量比(A)/〔(B)+(C)〕は限定されないが、毛髪適用時の延び向上、毛髪からのタレ落ち抑制、混合時の混合性向上の観点から、好ましくは0.0003以上、より好ましくは0.0004以上、さらに好ましくは0.0005以上であり、好ましくは0.5以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。
【0039】
(質量比(B)/(C))
本発明の染毛料1、染毛料2あるいはうすめ液において、(C)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比(B)/(C)は限定されないが、毛髪適用時の延び向上、毛髪からのタレ落ち抑制、混合時の混合性向上の観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.03以上、さらに好ましくは0.05以上であり、好ましくは1以下である。
【0040】
〔本発明の組成物におけるその他の成分〕
本発明の染毛料1、染毛料2あるいはうすめ液は、上記した成分以外に、可溶化剤、界面活性剤、水溶性ポリマー、多価アルコール、pH調整剤、糖、防腐剤、安定剤、動植物又は微生物の抽出物、酸化防止剤、キレート化剤、アミノ酸、冷感剤、生薬抽出物、ビタミン、香料、紫外線吸収剤等の任意成分を、本発明の効果に有効であり、又は本発明の効果を阻害しない量的範囲において含有できる。これらの任意成分の幾つかについて、以下に具体的に述べる。
【0041】
(可溶化剤)
可溶化剤として水及び有機溶媒(溶剤)が代表的に挙げられる。有機溶媒としては、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ-フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、α-フェニルエタノール、N-アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等が挙げられる。
【0042】
(界面活性剤)
界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として、あるいは組成物の粘度調整、粘度安定性の向上等のために配合され得る。アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0043】
アニオン性界面活性剤として、アルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α-スルホン脂肪酸塩、N-アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N-アルキロイルメチルタウリン塩、及びそれらの誘導体が例示される。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミンが例示される。
【0044】
アルキルエーテル硫酸エステル塩としてはPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが例示される。POEは「ポリオキシエチレン」の略である(以下、同様)。アルキル硫酸塩としてはラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウムが例示される。スルホコハク酸エステルとしてスルホコハク酸ラウリル二ナトリウムが例示される。N-アルキロイルメチルタウリン塩としてN-ステアロイル-N-メチルタウリンナトリウムが例示される。
【0045】
カチオン性界面活性剤としては、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム等の塩化アルキルトリメチルアンモニウムの他、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウムサッカリン、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミトキシプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド等が挙げられる。これらの中でも塩化セチルトリメチルアンモニウム等に代表される4級アンモニウム塩、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミドに代表される3級アミンが、染毛力及び毛髪感触の向上効果に優れる観点から好ましい。
【0046】
両性界面活性剤としては、ココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
【0047】
非イオン性界面活性剤としては、エーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。
【0048】
エーテル型非イオン性界面活性剤として、POE(5.5)セチルエーテル等のPOEセチルエーテル(セテス)、POE(20)ステアリルエーテル等のPOEステアリルエーテル(ステアレス)、POE(10)ベヘニルエーテル等のPOEベヘニルエーテル(ベヘネス)、POE(7)オレイルエーテル等のPOEオレイルエーテル(オレス)、POE(4.2)ラウリルエーテル等のPOEラウリルエーテル(ラウレス)、;POE(2)ミリスチルエーテル等のPOEミリスチルエーテル、POE(2)オクチルドデシルエーテル等のPOEオクチルドデシルエーテルが例示される。
【0049】
エステル型非イオン性界面活性剤として、モノオレイン酸POEソルビタン等のPOEソルビタン脂肪酸エステル、モノステアリン酸POEグリセリン等のグリセリルモノ脂肪酸エステル、テトラオレイン酸POEソルビット等のPOEソルビトール脂肪酸エステルが挙げられる。また、これら以外にも、POE(6)POEソルビットミツロウ等のソルビットミツロウや、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリルが例示される。
【0050】
アルキルグルコシドとして、アルキル(C8~C16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が例示される。
【0051】
水溶性ポリマーは、組成物に適度な粘度を与える等の目的で配合されるものであり、天然高分子、半合成高分子、合成高分子、無機物系高分子が例示される。
【0052】
天然高分子としては、デンプン、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、加水分解コラーゲン、デキストリン、トリグルコ多糖(プルラン)が例示される。
【0053】
半合成高分子としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、カルボキシメチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩が例示される。
【0054】
合成高分子としては、ポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン-酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(ポリクオタニウム-6)が例示される。
【0055】
無機物系高分子としては、ベントナイト、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸が例示される。
【実施例0056】
以下に本発明の実施例を、対応する比較例と共に説明する。本発明の技術的範囲は、これらの実施例、比較例によって限定されない。
〔実施例、比較例に係る組成物の調製〕
末尾の表1~表3に記載する2剤式染毛料組成物の実施例及び比較例の第1剤(染毛料1)及び第2剤(染毛料2)を定法に従い調製した。これらの表において、「第1剤(染毛料1)」及び「第2剤(染毛料2)」の欄に示す数値は、第1剤又は第2剤中の当該成分の質量%単位の含有量を示す。本発明の(A)成分であるものは成分名の左側に共に「A」と表記し、本発明の(B)、(C)成分であるものは成分名の左側にそれぞれ「B」、「C」と表記した。
【0057】
なお、表1~表3に記載する実施例及び比較例の「第1剤(染毛料1)」及び「第2剤(染毛料2)」の欄に「ベース」と記載した成分は、全て共通して末尾の表4に記載する組成のベース液である。そして表4中の各成分の含有量を示す数値は、ベース液中の質量%単位の含有量ではなく、当該第1剤又は第2剤中の質量%単位の含有量を示す。また、「水」についての「残部」の表記も当該第1剤又は第2剤の各成分の合計含有量を「100%」とするために必要な含有量を表している。
【0058】
表3に示す実施例20~24、27~30及び比較例1、3、5、7は、共に第2剤が(A)成分を含有しないうすめ液であるから、本願第6発明の(S2)に規定する「染毛料組成物とうすめ液との混合物を用いて染毛を行う方法」を実施している。
【0059】
更に、表1~表3において、「混合使用時」の欄における「混合比」とは混合使用時における第1剤及び第2剤の質量%単位の混合比を示し、次に「A」、「B」、「C」の各欄は使用時の(A)成分、(B)成分、(C)成分の質量%単位の含有量を示しており、「A/(B+C)」の欄は使用時の(B)成分及び(C)成分の合計含有量に対する(A)成分の含有量の質量比を示し、「B/C」の欄は使用時の(C)成分の含有量に対する(B)成分の含有量の質量比を示す。
【0060】
〔実施例、比較例に係る組成物の評価:その1〕
以上の表1~表3に示す各実施例、比較例について、以下の評価方法により「剤の延ばしやすさ」、「垂れ落ち抑制」、「色の混合不良抑制」を評価し、以下の評価基準によりランク付けを行った。
【0061】
剤の延ばしやすさ
評価方法:第1剤と第2剤を染毛トレーに決められた混合比で出し、均一に混合後、専門のパネラー10名が混合液を5g手に取り、ウィッグに塗布する際の剤の延びと毛髪上での残り具合を下記基準にて評価した。
【0062】
評価基準:剤の延び及び毛髪への残り具合が非常に良いものを、優れる(5点)、剤の延び・毛髪への残り具合が良いものを、良好(4点)、剤の延びは良いが毛髪へ残りにくいものを、可(3点)、剤の延び・毛髪への残り具合がやや悪いものを、やや不良(2点)、剤の延び・毛髪への残り具合が非常に悪いものを、不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均点を算出した。平均点を以下の基準で評価した。
5:平均点が4.5点以上
4:平均点が3.5点以上4.5点未満
3:平均点が2.5点以上3.5点未満
2:平均点が1.5点以上2.5点未満
1:平均点が1.5点未満
【0063】
垂れ落ち抑制
評価方法:第1剤と第2剤の混合物15gを、評価用ウィッグに塗布し、混合物が垂れ落ちないかを目視観察した。
【0064】
評価基準:5:垂れ落ちず、流動性が殆どない
4:垂れ落ちはないが、やや流動性がある
3:垂れ落ちはないが、流動性がある
2:やや垂れ落ち、流動性が大きい
1:垂れ落ちる
【0065】
色の混合不良抑制
評価方法:第1剤と第2剤を染毛トレーに所定の混合比で総量30gを出し、専門のパネラー10名がマドラーで剤を混合する際の第1剤と第2剤の混合性を下記基準にて評価した。
【0066】
評価基準:第1剤と第2剤が非常に混ざりやすいものを、優れる(5点)、第1剤と第2剤が混ざりやすいもの、良好(4点)、第1剤と第2剤が問題なく混ざるものを、可(3点)、第1剤と第2剤が問題なく混ざりにくいを、やや不良(2点)、第1剤と第2剤が非常に混ざりにくいものを、不良(1点)の5段階で採点した。各パネラーの採点結果について平均点を算出した。平均点を以下の基準で評価した。
5:平均点が4.5点以上
4:平均点が3.5点以上4.5点未満
3:平均点が2.5点以上3.5点未満
2:平均点が1.5点以上2.5点未満
1:平均点が1.5点未満
【0067】
表には記載しないが、各実施例に係る第1剤のみを用いて同上の評価方法、評価基準により「剤の延ばしやすさ」、「垂れ落ち抑制」を評価したところ、それぞれ該当する表1~表3の実施例と同等の評価であった。
【0068】
表1~表3に示すとおり、実施例1~34の多剤式染毛料組成物は、単剤時のみならず、混合時においても優れた毛髪適用時の毛髪上での延びの良さ、毛髪からのタレ落ちがないことと同時に、混合性が認められた。
【0069】
【表1】
【0070】
【表2】
【0071】
【表3】
【0072】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、直接染料を含有する染毛料の不安定化の原因を特定し、その原因を解消又は少なくとも抑制する手段を見出すことができた。