(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182781
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】製造ラインの洗浄装置及び製造ラインの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
B08B 3/02 20060101AFI20221201BHJP
B05B 15/70 20180101ALI20221201BHJP
B05B 13/04 20060101ALI20221201BHJP
B05B 12/00 20180101ALI20221201BHJP
【FI】
B08B3/02 F
B05B15/70
B05B13/04
B05B12/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090508
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000128131
【氏名又は名称】株式会社エヌテック
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】吉田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】絹川 浩平
【テーマコード(参考)】
3B201
4D073
4F035
【Fターム(参考)】
3B201AA47
3B201AB54
3B201BB22
3B201BB46
3B201BB62
3B201BB88
3B201BB93
3B201BB94
3B201BB98
3B201CB11
3B201CC01
3B201CC12
3B201CD43
4D073AA09
4D073BB03
4D073CB03
4D073CB12
4D073CB15
4D073CB20
4D073CB21
4D073CB22
4D073CB23
4D073CB24
4F035AA04
4F035BC02
4F035CD06
4F035CD12
4F035CD18
(57)【要約】
【課題】製造ラインを洗浄する際に、作業者の労力を軽減でき、かつ高い洗浄効果を得ることができる製造ラインの洗浄装置及び製造ラインの洗浄方法を提供する。
【解決手段】洗浄装置20は、複数の噴射部30を有するロボットアーム23と、ロボットアーム23を搭載する台車22とを備える。さらに、洗浄装置20は、制御部と、制御部が複数の噴射部30及びロボットアーム23を制御して清掃を行うときの制御内容をティーチングするティーチング部とを備える。複数の噴射部30は、洗浄液を噴射する第1噴射部31と、すすぎ液を噴射する第2噴射部32とを含む。ティーチング部は、複数の噴射部30のうち第1噴射部31及び第2噴射部32を含む二以上の噴射部を選択させる。また、ティーチング部は、ロボットアーム23を動かすことで選択された噴射部を移動させた移動経路と、噴射部30が噴射を行う噴射区間と、噴射向きとを、噴射部ごとに教え込む。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造ラインの洗浄装置であって、
異なる種類の流体をそれぞれ噴射する複数の噴射部と、
前記複数の噴射部を有するロボットアームと、
前記ロボットアームを搭載する台車と、
複数の前記噴射部及び前記ロボットアームを制御する制御部と、
前記制御部が複数の前記噴射部及び前記ロボットアームを制御して清掃を行うときの制御内容をティーチングするティーチング部と
を備え、
複数の前記噴射部は、洗浄液を噴射する第1噴射部と、すすぎ液を噴射する第2噴射部とを含み、
前記ティーチング部は、
前記複数の噴射部のうち前記第1噴射部及び前記第2噴射部を含む二以上の噴射部を選択させる選択機能と、
前記ロボットアームを動かすことで前記選択された噴射部を移動させた移動経路と、前記移動経路のうち当該噴射部が噴射を行う噴射区間と、前記噴射区間で噴射を行うときの噴射向きとを、選択された前記噴射部ごとに教え込むティーチング機能とを備えることを特徴とする製造ラインの洗浄装置。
【請求項2】
複数の前記噴射部は、前記第2噴射部がすすぎ液を噴射して行われるすすぎ動作の後、ガスを噴射して前記すすぎ液を乾燥させる第3噴射部を含み、
前記ティーチング部は、前記第1噴射部、前記第2噴射部及び前記第3噴射部を含む三以上の噴射部が選択された場合、当該三以上の噴射部ごとに前記移動経路と前記噴射区間と前記噴射向きとを教え込むことを特徴とする請求項1に記載の製造ラインの洗浄装置。
【請求項3】
複数の前記噴射部のうち少なくとも前記第1噴射部は、噴射形状を変更可能に構成され、
前記ティーチング部は、少なくとも前記第1噴射部の前記噴射区間に対して選択された噴射形状を教え込むことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の製造ラインの洗浄装置。
【請求項4】
前記洗浄装置は、人が手動で前記台車を移動させる協働ロボットであって、
前記ティーチング部を用いて行うティーチング時とティーチングされた前記制御内容で清掃を行う清掃実施時とにおいて、前記協働ロボットを前記製造ラインに対して同じ清掃位置に位置決め可能な位置決め機構を備えることを特徴とする請求項1~請求項3のいずれか一項に記載の製造ラインの洗浄装置。
【請求項5】
前記洗浄装置は、人が手動で前記台車を移動させる協働ロボットであって、
前記ティーチング部は、選択された前記噴射部が前記噴射区間を移動するときの移動速度を設定する設定機能を備えることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の製造ラインの洗浄装置。
【請求項6】
製造ラインの洗浄方法であって、
洗浄液を噴射する第1噴射部及びすすぎ液を噴射する第2噴射部を含む複数の噴射部を有するロボットアームを搭載する台車を、製造ラインに対する清掃位置に移動させた状態で、前記複数の噴射部のうち前記第1噴射部及び前記第2噴射部を含む二以上の噴射部を選択し、前記ロボットアームを動かすことで当該噴射部を移動させた移動経路と、前記移動経路のうち当該噴射部が噴射を行う噴射区間と、前記噴射区間で噴射を行うときの噴射向きとを、選択された前記噴射部ごとに教え込むティーチングステップと、
前記二以上の噴射部及び前記ロボットアームを前記ティーチングステップで教え込んだ制御内容で制御することで前記製造ラインを清掃する清掃ステップと
を含むことを特徴とする製造ラインの洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造ラインの洗浄装置及び製造ラインの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造ラインは、製造過程の物品が搬送されるコンベヤ等の搬送部を有する。製造ラインは、物品の製造終了時などの所定の清掃時期なると、製造中の物品が搬送される過程でコンベヤに原料や物品の一部が付着したことによる汚れを除去するため、作業者等によって清掃される。
【0003】
例えば、特許文献1、2には、洗浄液を噴射するノズル(噴射部)をアームの先端部に有するロボットが清掃対象を洗浄する洗浄装置が開示されている。
例えば、特許文献1には、洗浄液又は消毒液を噴射するノズルをアームの先端部に有するロボットが、バッテリ駆動で走行する車両本体に搭載された無人走行洗浄装置が開示されている。この無人走行洗浄装置は、遠隔操作されて畜舎を洗浄又は消毒する。
【0004】
例えば、特許文献2に記載されたロボットは、アームの先端部に洗浄用ノズルとエアブロー用ノズルとを備え、切り換えにより洗浄液とエアをそれぞれ噴射可能に構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第5303670号公報
【特許文献2】実開昭63-107758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献2に記載の洗浄装置を製造ラインの清掃に適用した場合、洗浄液のすすぎ作業及び水切り等の乾燥作業は作業者が手作業で行う必要がある。また、特許文献2に記載の洗浄装置を製造ラインの清掃に適用した場合、洗浄液を噴射する洗浄と、エアブローによる水切り等の乾燥作業は洗浄装置が行うので、洗浄液が水である場合、作業者の手作業の負担を大幅に軽減できる。しかし、製造ラインは、油汚れなどは水のみで洗浄するだけでは十分な洗浄効果が得られない。そのため、洗剤を含む洗浄液で洗浄する必要があるが、この場合、洗浄液のすすぎ作業は作業者が手作業で行う必要がある。このように従来の洗浄装置は、製造ラインの清掃に適用した場合、油汚れ等も十分落とせる高い洗浄効果と、洗剤を含む洗浄液を噴射して洗浄する場合でも作業者が手作業で行う作業負担の十分な軽減との両立が困難であるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する製造ラインの洗浄装置は、製造ラインの洗浄装置であって、異なる種類の流体をそれぞれ噴射する複数の噴射部と、前記複数の噴射部を有するロボットアームと、前記ロボットアームを搭載する台車と、複数の前記噴射部及び前記ロボットアームを制御する制御部と、前記制御部が複数の前記噴射部及び前記ロボットアームを制御して清掃を行うときの制御内容をティーチングするティーチング部とを備え、複数の前記噴射部は、洗浄液を噴射する第1噴射部と、すすぎ液を噴射する第2噴射部とを含み、前記ティーチング部は、前記複数の噴射部のうち前記第1噴射部及び前記第2噴射部を含む二以上の噴射部を選択させる選択機能と、前記ロボットアームを動かすことで前記選択された噴射部を移動させた移動経路と、前記移動経路のうち当該噴射部が噴射を行う噴射区間と、前記噴射区間で噴射を行うときの噴射向きとを、選択された前記噴射部ごとに教え込むティーチング機能とを備える。
【0008】
この構成によれば、製造ラインを清掃する場合、ティーチング部により、第1噴射部及び第2噴射部を含む二以上の噴射部の選択と、選択した噴射部の移動経路と噴射区間と噴射向きとを、選択した噴射部ごとに教え込むことができる。よって、製造ラインごとに適した噴射経路で洗浄液を噴射して洗浄できるうえ、洗浄後に洗浄液をすすぐことができる。したがって、製造ラインを清掃するときの人手による負担を軽減できるうえ、例えば水洗いに勝る高い清掃効果が得られる。よって、製造ラインを洗浄する際に、作業者の労力を軽減でき、かつ高い洗浄効果を得ることができる。
【0009】
上記製造ラインの洗浄装置において、複数の前記噴射部は、前記第2噴射部がすすぎ液を噴射して行われるすすぎ動作の後、ガスを噴射して前記すすぎ液を乾燥させる第3噴射部を含み、前記ティーチング部は、前記第1噴射部、前記第2噴射部及び前記第3噴射部を含む三以上の噴射部が選択された場合、当該三以上の噴射部ごとに前記移動経路と前記噴射区間と前記噴射向きとを教え込んでもよい。
【0010】
この構成によれば、洗浄液による洗浄と、洗浄後の洗浄液のすすぎと、すすぎ後のすすぎ液の乾燥とを行うことができる。洗浄経路とすすぎ経路と乾燥経路とを個別に教え込むことができるので、製造ラインの清掃効果を一層高めることができる。
【0011】
上記製造ラインの洗浄装置において、複数の前記噴射部のうち少なくとも前記第1噴射部は、噴射形状を変更可能に構成され、前記ティーチング部は、少なくとも前記第1噴射部の前記噴射区間に対して選択された噴射形状を教え込んでもよい。
【0012】
この構成によれば、少なくとも第1噴射部が噴射区間で洗浄液を噴射するときの噴射形状を選択して教え込むことができるので、製造ラインの洗浄効果を一層高めることができる。
【0013】
上記製造ラインの洗浄装置において、前記洗浄装置は、人が手動で前記台車を移動させる協働ロボットであって、前記ティーチング部を用いて行うティーチング時とティーチングされた前記制御内容で清掃を行う清掃実施時とにおいて、前記協働ロボットを前記製造ラインに対して同じ清掃位置に位置決め可能な位置決め機構を備えてもよい。
【0014】
この構成によれば、作業者は、ティーチング時と清掃実施時とで協働ロボットを同じ清掃位置に配置できる。例えば、ティーチング時と清掃実施時とで協働ロボットの配置位置がずれていると、洗浄液及びすすぎ液の噴射位置がティーチング時の位置からずれることが原因で、製造ラインの清掃効果が低下する。これに対して、位置決め機構によりティーチング時と清掃実施時とで協働ロボットを必要な位置精度で同じ清掃位置に配置できるので、製造ラインの清掃効果が高まる。
【0015】
上記製造ラインの洗浄装置において、前記洗浄装置は、人が手動で前記台車を移動させる協働ロボットであって、前記ティーチング部は、選択された前記噴射部が前記噴射区間を移動するときの移動速度を設定する設定機能を備えてもよい。
【0016】
この構成によれば、噴射部が噴射しながら噴射区間を移動するときの移動速度を設定できるので、噴射部の移動速度を清掃に適した値に設定することで、必要な清掃効果が得られる。また、ティーチング時に協働ロボットのロボットアームを手動で移動させても、清掃実施時に噴射部を噴射区間で適切な移動速度で移動させることができる。
【0017】
上記課題を解決する製造ラインの洗浄方法は、製造ラインの洗浄方法であって、洗浄液を噴射する第1噴射部及びすすぎ液を噴射する第2噴射部を含む複数の噴射部を有するロボットアームを搭載する台車を、製造ラインに対する清掃位置に移動させた状態で、前記複数の噴射部のうち前記第1噴射部及び前記第2噴射部を含む二以上の噴射部を選択し、前記ロボットアームを動かすことで当該噴射部を移動させた移動経路と、前記移動経路のうち当該噴射部が噴射を行う噴射区間と、前記噴射区間で噴射を行うときの噴射向きとを、選択された前記噴射部ごとに教え込むティーチングステップと、前記二以上の噴射部及び前記ロボットアームを前記ティーチングステップで教え込んだ制御内容で制御することで前記製造ラインを清掃する清掃ステップとを含む。この方法によれば、上記製造ラインの洗浄装置と同様の効果が得られる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、製造ラインを洗浄する際に、作業者の労力を軽減でき、かつ高い洗浄効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態における製造ラインと洗浄ロボットを示す模式平面図。
【
図2】洗浄ヘッドを一部破断した洗浄ロボットを示す側面図。
【
図3】洗浄ヘッドを一部破断した洗浄ロボットを示す平面図。
【
図4】複数の噴射部にそれぞれ個別の流体を供給する配管構造を示す図。
【
図6】洗浄ロボットを位置決めするための位置決め機構を示す側面図。
【
図7】洗浄ロボットの電気的構成を示すブロック図。
【
図9】ティーチング処理ルーチンを示すフローチャート。
【
図10】清掃制御処理ルーチンを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、製造ラインの洗浄装置に係る一実施形態を、図面を参照して説明する。なお、
図1において、洗浄装置20の清掃対象である製造ライン10が設置される床面FPを規定する2つの方向をそれぞれX方向、Y方向とし、X方向及びY方向と交差し重力方向と平行な方向を鉛直方向Zとする。本例では、製造ライン10において製造過程の物品Wが搬送される搬送方向がX方向と平行である。そのため、物品Wが搬送される方向を搬送方向Xともいう。また、水平面において搬送方向Xと交差(例えば直交)する方向を幅方向Yという。
【0021】
製造ライン10は、例えば、食品、医薬品などの製品又は半製品を製造するラインである。物品Wは、原料、原料から製品までの間の半製品、半加工品、中間生成物、及び最終的に製造される製品などのうち少なくとも1つである。
【0022】
製造ライン10は、本体フレーム11と、本体フレーム11の上部に支持された搬送機構12とを備える。搬送機構12は、コンベヤ13を備える。コンベヤ13は、例えば、ベルトコンベヤ、メッシュコンベヤ、ローラーコンベヤなどである。搬送機構12は、コンベヤ13の他、コンベヤ13が巻き掛けられた複数のローラ14と、ローラ14を駆動させるモータ等の駆動源15とを備える。製造ライン10は、コンベヤ13に対してその搬送方向Xの上流側端部に、コンベヤ13へ物品Wを供給する物品供給部16を有する。物品供給部16からコンベヤ13へ供給された物品Wは、コンベヤ13上を搬送方向Xに搬送される過程でその製造が進められる。
【0023】
なお、
図1に示す製造ライン10は、搬送経路が真っ直ぐ延びるストレートコンベヤをコンベヤ13として有する例であるが、搬送経路がカーブするカーブコンベヤをコンベヤ13として有する構成であってもよい。
【0024】
製造ライン10は、1つの品番の製造途中あるいは1つの品番の製造終了時などを清掃時期として、定期または不定期に洗浄装置20により清掃される。清掃時期は、例えば、1又は複数の製造ロットの終了毎、製造量の区切り毎、製造時間の区切り毎、作業者の作業時間終了時、作業者の交替時期などである。
【0025】
本実施形態の洗浄装置20は、作業者Pを補助する洗浄ロボット21である。本例の洗浄ロボット21は、作業者Pと共に清掃作業を行う協働ロボットである。作業者Pは、洗浄ロボット21の協働のもと製造ライン10の清掃を行う。
【0026】
洗浄ロボット21は、主にコンベヤ13および本体フレーム11のうちコンベヤ13の周辺に位置する部分を洗浄する。つまり、洗浄ロボット21は、製造ライン10のうちコンベヤ13の搬送面13Aとほぼ同じ高さに位置する上面部を清掃する。なお、洗浄ロボット21の清掃対象は、製造ライン10の上面部に限らず、上面部及び側面の一部であってもよい。
【0027】
洗浄ロボット21は走行式である。洗浄ロボット21は、台車22と、台車22に搭載されたロボットアーム23とを備える。台車22は、作業者Pが手動で走行させる手動走行式である。本実施形態の洗浄ロボット21は、協働ロボットであるので、安全柵がない状態で作業者Pが使用でき、作業者Pの清掃作業を補助する。
【0028】
ロボットアーム23は、その先端部に複数種の噴射部30(
図2参照)を有する洗浄ヘッド24を備える。洗浄ロボット21は、ロボットアーム23を制御することで、噴射部30を洗浄対象と所定の距離を隔てて対向する所定の洗浄経路に沿って移動させる。そして、洗浄ロボット21は、洗浄経路の移動途中で噴射部30から洗浄に必要な液体を含む流体を噴射させることで、製造ライン10に対する清掃作業を行う。
【0029】
洗浄ロボット21は、作業者Pが制御内容(清掃作業内容)をティーチングできるティーチング機能を備える。ロボットアーム23の作業範囲は、例えば、半径1~3メートルの範囲である。製造ライン10における清掃対象範囲は、ロボットアーム23の作業範囲よりも広い。このため、作業者Pは、洗浄ロボット21の台車22を手動で移動させながら、洗浄ロボット21を製造ライン10と対向する複数の清掃開始位置SPに順番に移動させる。
【0030】
図1に実線で示す洗浄ロボット21は、1番目の清掃開始位置SPにあり、
図1に二点鎖線で示す洗浄ロボット21は、2番目の清掃開始位置SPにある。作業者Pは、洗浄ロボット21を、1番目からN番目までの清掃開始位置SPを順番に移動させ、各清掃開始位置SPで洗浄ロボット21に清掃作業を行わせる。なお、
図1では、3番目以降の清掃開始位置SPにあるときの洗浄ロボット21は省略している。
【0031】
作業者Pは、1番目からN番目までの清掃開始位置SPごとに洗浄ロボット21に個別のティーチングを行うか、又は1つの清掃開始位置SPで洗浄ロボット21に共通のティーチングを行う。前者は、清掃開始位置SPごとに清掃内容が異なる場合であり、後者は、複数の清掃開始位置SP間で清掃内容が共通する場合である。通常は、清掃内容が共通する清掃開始位置SPが複数あるので、作業者は、洗浄ロボット21に対して1又はN未満の数の清掃開始位置SPでティーチング作業を行う。
【0032】
床面FPには、洗浄ロボット21を清掃開始位置SPに位置決めするための位置決め部18が設けられている。これは、洗浄ロボット21にティーチング内容の清掃作業を行わせるとき、作業者は、ティーチング時と同じ清掃開始位置SPに所定以上の位置精度で洗浄ロボット21を配置する必要があるからである。洗浄ロボット21がティーチング時の清掃開始位置SPからずれた位置に配置された状態で、ティーチング内容の清掃作業を開始すると、噴射部30の洗浄経路がティーチング時の洗浄経路からずれてしまい清掃効果が低下する可能性がある。このため、作業者Pは、位置決め部18に対して洗浄ロボット21を位置決めすることで、洗浄ロボット21を清掃時とティーチング時とで同じ清掃開始位置SPに配置する。
【0033】
コンベヤ13の種類や物品Wの種類などの違いによって、洗浄の難易が異なる。軽い汚れであれば、軽い洗浄でよいが、コンベヤ13にゴミ、油、原料の一部、半加工品などの一部が、こびりついている場合は高い洗浄力が必要である。高い洗浄力を得るためには、洗浄経路、洗浄圧力、洗浄時間、洗浄方向などの洗浄ファクターを細かく設定することが望ましい。また、洗浄効果を高めるためには水よりも洗浄液を使用する方が好ましい。洗浄液を使用する場合、洗浄液をすすぐ必要がある。また、洗浄液やすすぎ液(リンス液)を使用して洗浄した場合、洗浄後の生産は、すすぎ液が乾いた後で再開される。そのため、生産の合間に洗浄する場合、洗浄時間を短く済ませるためには自然乾燥ではなく強制乾燥が必要である。これらを踏まえて、洗浄ロボット21は、ロボットアーム23が先端部に有する洗浄ヘッド24から、洗浄液およびすすぎ液を含む2種類の液体を噴射することで洗浄効果を高め、空気を噴射することですすぎ液の乾燥時間を短くする。
【0034】
<洗浄ロボットの構成>
図2、
図3に示すように、洗浄ロボット21は、異なる種類の流体をそれぞれ噴射する複数の噴射部30と、複数の噴射部30を有するロボットアーム23と、ロボットアーム23を搭載する台車22とを備える。
【0035】
ロボットアーム23は、台車22の上面に設置された台部25に対して鉛直軸を中心に回転可能な回転部26と、回転部26に支持された多関節式のアーム27と、アーム27の先端部に装着された洗浄ヘッド24とを備える。
【0036】
ロボットアーム23は、台部25の側部に配設された駆動源28の動力により、回転部26が軸回転する。また、アーム27は、角度変更可能に連結された複数のアーム部27A~27Cを有する。駆動源28は、例えば、電動モータ又は電動シリンダ等である。複数のアーム部27A~27Cは、駆動源28が駆動されることにより不図示のリンク機構を介して角度調整される。洗浄ヘッド24は、アーム27の先端部に対して、例えばユニバーサルジョイント等の自由継手(図示略)を介して姿勢変更可能な状態で連結されている。すなわち、ロボットアーム23の先端部には、軸回転可能かつ姿勢角変更可能な状態で、洗浄ヘッド24が支持されている。洗浄ヘッド24は、前述した複数種の噴射部30を有している。
【0037】
図2に示すように、洗浄ロボット21の台車22は、その下部に車輪40(キャスタ)とレベルボルト41A,41Bとを備える。車輪40は、例えば前後左右に4つ設けられている。レベルボルト41A,41Bのうち例えば前側の2つのレベルボルト41Aは、位置決め機能を有する(
図6参照)。
【0038】
図2に示すように、レベルボルト41A,41Bは、作業者により操作されるレバー42を有する。レベルボルト41Bは、レバー42の操作により車輪40を床面FPに接地させた接地位置と、車輪40を床面FPから離間させるとともに固定部43が床面FPに接地する固定位置とに動作する。なお、位置決め機能付きのレベルボルト41Aは、固定部43に替えて位置決めロッド44を有する。レベルボルト41Aは、床面FPに固定された位置決め部18に対して位置決めロッド44が係合することで、洗浄ロボット21を清掃開始位置SPに位置決めする位置決め機構45を構成する。なお、位置決め機構45の詳細については後述する。
【0039】
洗浄ロボット21は、複数の噴射部30及びロボットアーム23を制御するコントローラ50を備える。台車22は、箱型の筐体22Aを有する。筐体22A内には制御ボックス51が収容されている。コントローラ50は、例えば、電源回路等と共に制御ボックス51内に収容されている。
【0040】
複数の噴射部30は、洗浄液を噴射する第1噴射部31と、すすぎ液(リンス液)を噴射する第2噴射部32とを含む。本実施形態では、複数の噴射部30は、第2噴射部32が噴射したすすぎ液の乾燥を促進するガスを噴射する第3噴射部33を含む。
【0041】
ここで、第1噴射部31は、第1管路34と接続されている。第2噴射部32は、第2管路35と接続されている。第3噴射部33は、第3管路36と接続されている。第1管路34、第2管路35及び第3管路36はアーム27に沿って配管されることで台車22の筐体22A内に引き回されている。筐体22A内には、第1管路34の途中に介在する第1電磁弁61と、第2管路35の途中に介在する第2電磁弁62と、第3管路36の途中に介在する第3電磁弁63とが配置されている。
【0042】
図3に示すように、台車22の筐体22Aの側面から延出した支持部22Bにはタンク60が支持されている。タンク60には洗浄液が貯留されている。タンク60から延出した管路64の先端部は被接続部65となっている。この被接続部65には、エアホース77の接続部77Aが接続される。接続部77Aと被接続部65とが接続されることで、エアホース77からの空気圧がタンク60に供給される。管路64の途中に設けられた加圧弁66はタンク60内の空気圧が所定圧に達すると閉弁する。このため、タンク60内は所定圧力に保たれる。管路64において加圧弁66よりもタンク60側の分岐部67からは管路68が分岐して延出している。また、タンク60からは洗浄液を供給する管路69が延出している。
【0043】
図3に示すように、台車22は、筐体22Aの側面に、複数の配管接続部71~76を有する。複数の配管接続部71~76は、3つの入口用の配管接続部71~73と、3つの出口用の配管接続部74~76とを含む。入口用の配管接続部71には洗浄液を供給する管路69が接続されている。入口用の配管接続部72には、水供給用ホース78の接続部78Aが接続される。さらに、入口用の配管接続部73には、空気供給用の管路68の一端部が接続されている。
【0044】
第1噴射部31と接続された管路34は、出口用の配管接続部74と接続されている。この出口用の配管接続部74は、入口用の配管接続部71と洗浄液の流動が可能に接続されている。
【0045】
第2噴射部32と接続された管路35は、出口用の配管接続部75と接続されている。この出口用の配管接続部75は、入口用の配管接続部72とすすぎ液の流動が可能に接続されている。
【0046】
第3噴射部33と接続された管路36は、出口用の配管接続部76と接続されている。この出口用の配管接続部76は、入口用の配管接続部73と空気の流動が可能に接続されている。
【0047】
台車22内に収容されている制御ボックス51は、コントローラ50を有する。台車22の筐体22Aの上面には、作業者Pが洗浄ロボット21に対してティーチングを行うときに、そのティーチング内容が紐付けされる登録番号を入力(選択)するために操作されるティーチング操作部52(以下、単に「操作部52」ともいう。)が設けられている。操作部52は、複数の登録番号を入力可能である。操作部52は、例えば、「0」から「99」までの登録番号を選択可能である。また、台車22の筐体22Aの後面には、作業者Pが台車22を移動させるときに把持可能な複数のグリップ部22Cが設けられている。なお、操作部52で選択可能な登録番号の数は適宜変更できる。
【0048】
第1噴射部31が噴射する洗浄液は、水と洗剤とを含む。洗剤は、水と洗剤液とを混合したものでもよいし、水に洗剤粉末を溶解させたものでもよい。このように第1噴射部31が洗剤成分を含む洗浄液を噴射することで、水単体を噴射する場合に比べ洗浄の効果を高めている。
【0049】
製造ライン10が食品製造ラインである場合、コンベヤ13及びその搬送面13Aの周辺のフレーム部には、肉や魚の油脂や植物油などの油、果汁や野菜の色素、原料粉末や香味粉末などの粉末、これらの粉末と水を含む調味液等の液体とが混合された粘着物などが付着する。これらの油脂や色素などは水だけでは落ちにくいため、洗浄液を噴射することで油や色素などを洗浄成分で分解することで洗い落とす。また、コンベヤ13及びフレーム部にこびり付いた粘着物は、第1噴射部31の噴射圧で洗い落とす。
【0050】
製造ライン10が医薬品などの医療用品の製造ラインである場合、コンベヤ13及びフレーム部に、薬液や薬品の色素、油脂などが付着する場合がある。これらの薬液、色素や油脂などは、水だけでは落ちにくいため、第1噴射部31から洗浄液を噴射してその洗浄成分で分解することで洗い落とす。
【0051】
第2噴射部32が噴射するすすぎ液は、水を含む。すすぎ液に含まれる水は、室温以下の温度である水に限らず、湯であってもよい。本例のすすぎ液は、水又は湯である。第1噴射部31で洗浄液を噴射して行われる洗浄の後、洗浄箇所に残る洗浄液を除去するためにすすぎ液が噴射される。そのため、すすぎ液は、洗浄液中の洗剤成分を除去できる液体であればよい。水と同等又はそれ以上に気化し易い液体と水との混合液であってもよい。すすぎ液は、例えば、水とエチルアルコールとの混合液でもよい。例えば、すすぎ液が、水よりも気化し易い液体と水との混合液である場合、すすぎ動作後におけるすすぎ液の乾燥が促進され易い。
【0052】
第3噴射部33は、第2噴射部32がすすぎ液を噴射して行われるすすぎ動作の後、ガスを噴射してすすぎ液を乾燥させる機能を有する。ガスは、例えば空気である。本例の第3噴射部33は、空気を噴射することですすぎ液を乾燥させる。すなわち、第3噴射部33は、すすぎ液で洗浄液をすすぐすすぎ動作が行われた箇所に空気を噴射することで、その空気流(空気の噴流)によって洗浄箇所に残るすすぎ液を除去及び乾燥させる。なお、ガスは、空気以外でもよく、例えば、窒素、酸素、二酸化炭素などであってもよい。ガスは、単体のガスでもよいし、混合ガスでもよい。
【0053】
また、洗浄ロボット21は、制御部81が複数の噴射部30及びロボットアーム23を制御して清掃を行うときの制御内容をティーチングするティーチング部82を備える。
<複数の噴射部および流体供給回路>
次に、
図4を参照して複数の噴射部30に液体を含む流体を供給する流体供給回路について説明する。
図4に示すように、タンク60には、洗浄液WLが貯留されている。管路64からタンク60内に供給された空気圧APによりタンク60の洗浄液WLは加圧されている。タンク60内は、加圧弁66により所定の設定圧に加圧されている。タンク60内の洗浄液WLに挿入された管路69は、入口用の配管接続部71に接続されている。この入口用の配管接続部71は管路37を通じて出力用の配管接続部74に接続されている。管路37の途中には第1電磁弁61が設けられている。出力用の配管接続部74は、管路34を通じて洗浄液ノズルである第1噴射部31に接続されている。
【0054】
また、水供給用ホース78の接続部78Aは、入口用の配管接続部72に接続されている。この入口用の配管接続部72は管路38を通じて出力用の配管接続部75に接続されている。管路38の途中には第2電磁弁62が設けられている。出力用の配管接続部75は、管路35を通じてすすぎ液ノズルである第2噴射部32に接続されている。第2電磁弁62と第2噴射部32との間における管路35,38の途中には手動式開閉弁79が設けられている。
【0055】
また、管路64から分岐した管路68は、入口用の配管接続部73に接続されている。この入口用の配管接続部73は管路39を通じて出力用の配管接続部76に接続されている。管路39の途中には第3電磁弁63が設けられている。出力用の配管接続部76は、管路36を通じてエアブローノズルである第3噴射部33に接続されている。なお、第1電磁弁61と第1噴射部31との間における管路34,37の途中に手動式開閉弁(図示略)が設けられてもよい。第3電磁弁63と第3噴射部33との間における管路36,39の途中に手動式開閉弁(図示略)が設けられてもよい。
【0056】
図4に示す3つの電磁弁61~63は、コントローラ50(
図3参照)により制御される。第1電磁弁61が開弁すると、タンク60内からの加圧された洗浄液WLが第1噴射部31から噴射される。第2電磁弁62が開弁すると、第2噴射部32からすすぎ液が噴射される。さらに、手動式開閉弁79が開弁する状態で、第3電磁弁63が開弁すると、第3噴射部33からエアブロー用の空気が噴射される。
【0057】
噴射部31~33は、複数種の噴射パターンのうち1つを選択可能に交換可能な構成としてもよい。噴射パターンとしては、縦長型、丸型、直噴型の各噴射パターンなどが挙げられる。第1噴射部31は、噴射パターンの異なるノズルよりなる他の第1噴射部31と交換可能である。噴射パターンの異なる複数種の第1噴射部31のうち1つが洗浄ヘッド24に装着される。また、第2噴射部32は、噴射パターンの異なるノズルよりなる他の第2噴射部32と交換可能である。噴射パターンの異なる複数種の第2噴射部32のうち1つが洗浄ヘッド24に装着される。さらに、第3噴射部33は、噴射パターンの異なるノズルよりなる他の第3噴射部33と交換可能である。噴射パターンの異なる複数種の第3噴射部33のうち1つが洗浄ヘッド24に装着される。
【0058】
3つの噴射部31~33は、交換作業を行うハンドをアームの先端部に有するロボットよりなる自動交換装置によって、自動で交換される構成でもよい。また、噴射パターンの異なる複数の第1噴射部31と、複数の第1噴射部31のうち洗浄液WLを噴射する1つを選択可能に切り換える切換機構(図示略)とが洗浄ヘッド24に組み付けられた構成とすることもできる。この場合、コントローラ50が切換機構を制御することで、作業者Pが操作タブレット29の操作でコントローラ50に対して指定した噴射パターンに対応する第1噴射部31が洗浄液WLを噴射する1つとして選択される。
【0059】
図5に示すように、洗浄ヘッド24を正面から見た場合、3つの噴射部31~33は、洗浄ヘッド24の中心軸の周りに所定の角度間隔(例えば120度の等間隔)を隔てた3つの位置に配置されている。また、洗浄ヘッド24には、
図5に示す正面から見て、3つの噴射部31~33の位置と異なる位置で所定の角度間隔を隔てた3つの位置にグリップ24Aが取り付けられている。作業者Pは、ティーチング時にグリップ24Aを握って洗浄ヘッド24を手動で移動させることで、噴射部31~33の噴射開始位置および噴射終了位置をそれぞれ個別に洗浄ロボット21に教え込む。
【0060】
<位置決め機構>
次に、
図6を参照して位置決め機構45について説明する。本実施形態の洗浄ロボット21は、ティーチング時とティーチング内容で清掃を実施する清掃実施時とにおいて、洗浄ロボット21を製造ライン10に対して同じ清掃開始位置SPに位置決め可能な位置決め機構45を備える。
【0061】
図6に示すように、位置決め機能付きのレベルボルト41Aである位置決め機構45は、レバー42と、レバー42の操作により動作するトグル機構46と、トグル機構46を介して鉛直方向Zに昇降する位置決めロッド44とを有する。床面FPには、洗浄ロボット21を清掃開始位置SPに位置決めするための位置決め部18(
図1も参照)が固定されている。位置決め部18は、凹部18Aを有する。作業者Pは、洗浄ロボット21を清掃開始位置SPに配置する際、位置決め機構45の位置決めロッド44と凹部18Aとが鉛直方向Zに対向する位置に洗浄ロボット21を位置決めする。この位置決め状態の下で作業者Pはレバー42を走行可能位置から固定位置へ操作する。このレバー42の操作によりトグル機構46を介して位置決めロッド44が、位置決め部18の凹部18Aに挿入される位置まで下降する。この位置決めロッド44と凹部18Aとの係合により、洗浄ロボット21は清掃開始位置SPに位置決めされる。
【0062】
位置決め機構45は、
図6における紙面と直交する方向に2つ(
図6では一方のみ図示)設けられている。床面FPに固定された位置決め部18には、一方の位置決め機構45の位置決めロッド44が挿入される丸穴よりなる凹部18Aと、他方の位置決め機構45の位置決めロッド44が挿入される長孔よりなる凹部18Aとが形成されている。これにより、2つの位置決め機構45が並ぶ方向において2つの位置決めロッド44の位置がばらついていても、2つの位置決めロッド44が共に2つの凹部18Aに挿入されることで、洗浄ロボット21を清掃開始位置SPに確実に位置決めできる。
【0063】
なお、位置決めロッド44と凹部18Aとの位置がずれていると、レバー42を走行可能位置から固定位置へ操作する途中でそれ以上の操作ができなくなる。これにより、作業者Pは、洗浄ロボット21の位置が清掃開始位置SPからずれていることを把握できる。そのため、作業者Pは、洗浄ロボット21の位置をずらすことで洗浄ロボット21を正しい清掃開始位置SPに位置決めし直すことができる。
【0064】
<物品移載装置の電気的構成>
次に、
図7を参照して、洗浄ロボット21の電気的構成を説明する。
図7に示すように、洗浄ロボット21は、洗浄ロボット21を統括的に制御するコントローラ50を備える。コントローラ50は、コンピュータ80(マイクロプロセッサ)を内蔵している。コンピュータ80は、制御部81とティーチング部82と記憶部83とを備える。コントローラ50は、例えば、プログラマブルロジックコントローラ(PLC)により構成される。プログラマブルコントローラは、マイクロプロセッサにより構成されるコンピュータ80を有する。
【0065】
図7に示すように、コントローラ50には、入力系として、作業者Pにより操作される操作タブレット29と、台車22に設けられたティーチング操作部52とが電気的に接続されている。また、コントローラ50には、出力系として、ロボットアーム23、第1電磁弁61、第2電磁弁62、第3電磁弁63及び加圧弁66が電気的に接続されている。
【0066】
操作タブレット29は、表示部29Aと入力部29Bとを備える。操作タブレット29は、コントローラ50と無線による通信が可能である。
操作タブレット29とティーチング操作部52のうち少なくとも一方がティーチング時に使用される。作業者Pは操作タブレット29の入力部29Bの操作によって、洗浄ロボット21に対してティーチングを行う。このとき、ティーチング操作部52で登録番号を選択する。ティーチング部82は、作業者Pが清掃開始位置SPに洗浄ロボット21を配置した状態で、ロボットアーム23を手動で動かして行うティーチング内容(制御内容)を登録番号ごとに登録する。ティーチング部82は、ティーチング内容を、登録番号と紐付けされた教示データTDとして記憶部83に記憶する。
【0067】
記憶部83には、プログラムPR及び前述の教示データTDが記憶されている。プログラムPRは、例えば、
図9にフローチャートで示されるティーチング処理ルーチンのプログラムと、
図10にフローチャートで示される清掃制御処理ルーチンのプログラムとを含む。
【0068】
制御部81は、コンピュータ80が清掃制御用のプログラムを教示データTDに従って実行することにより、洗浄ロボット21に登録番号ごとの清掃作業を行わせる。
ティーチング部82は、複数の噴射部30のうち第1噴射部31及び第2噴射部32を含む二以上の噴射部30を選択させる選択機能と、ティーチング機能とを備える。ティーチング機能は、ティーチングモードでロボットアーム23を動かすことで、選択された噴射部30を移動させた移動経路(噴射区間)と、その移動経路で噴射させる噴射部30と、噴射を行うときの噴射向きとを、選択された噴射部ごとに教え込む機能である。
【0069】
なお、
図7に示すように、洗浄ロボット21は、台車22を電動で走行させる駆動源として走行モータ55を備えてもよい。この場合、ユーザーが、リモコン操作で台車22を走行させる構成でもよいし、操作タブレット29の操作で台車22を走行させる構成でもよい。台車22が操舵機構を有し、ユーザーが遠隔操作で操舵機構を制御することにより、台車22を操舵できる構成でもよい。また、床面FPに誘導線を敷設し、台車22がセンサで誘導線を検知しながら誘導線に沿って移動する構成でもよい。この構成の場合、誘導線上の所定位置(清掃開始位置)に位置決めマークを配置し、センサで位置決めマークを検知すると、台車22を停止させる構成とする場合は、位置決め部18及び位置決め機構45を廃止してもよい。
【0070】
<ティーチング設定画面>
次に、
図8を参照して作業者Pがティーチングを行うときに使用する操作タブレット29の表示部29Aに表示されるティーチング設定画面85(以下、単に「設定画面85ともいう。」)について説明する。
【0071】
図8に示すように、設定画面85には、作業者Pがティーチング操作部52を操作して選択した番号である登録番号(
図8の例では「11」)が表示される。また、設定画面85には、噴射開始位置を設定するときに操作される設定ボタン86、噴射終了位置を設定するときに操作される設定ボタン87がある。
【0072】
作業者Pがグリップ24Aを握って洗浄ヘッド24を噴射開始位置まで手動で動かすと、ロボットアーム23のセンサ(図示略)がそのときの洗浄ヘッド24の位置座標と姿勢角を検出する。作業者Pが設定画面85で設定ボタン86を操作すると、そのときの洗浄ヘッド24の位置座標および姿勢角の情報が噴射開始位置として設定される。また、作業者Pがグリップ24Aを握って洗浄ヘッド24を噴射終了位置まで手動で動かすと、ロボットアーム23のセンサがそのときの洗浄ヘッド24の位置座標と姿勢角を検出する。作業者Pが設定画面85で設定ボタン87を操作すると、そのときの洗浄ヘッド24の位置座標および姿勢角の情報が噴射終了位置として設定される。
【0073】
また、ティーチング部82は、選択された噴射部30が噴射区間を移動するときの移動速度を設定する設定機能を備える。設定画面85には、選択された噴射部30が噴射開始位置から噴射終了位置まで移送するときの移動速度を設定する選択ボタン又は操作可能なスライダー(いずれも図示略)を備える。選択ボタンでは、予め用意された複数の移動速度のうちから1つを選択可能である。スライダーは速度目盛りに沿ってスライド操作可能であり、スライダーをスライド操作した位置の目盛りで示される移動速度を設定可能である。
【0074】
また、設定画面85には、ティーチング対象の噴射部30を選択するときに操作される3つのボタン91がある。すなわち、「噴射部選択」項目の選択肢として、第1噴射部31を選択するときに操作されるボタン91と、第2噴射部32を選択するときに操作されるボタン92と、第3噴射部33を選択するときに操作されるボタン93とがある。
【0075】
また、設定画面85には、「噴射パターン選択」項目に3つのボタン94~96がある。「噴射パターン選択」項目では、3つのボタン94~96のうち1つを選択することで、「噴射部選択」項目で選択した1つの噴射部30が噴射するときの噴射パターンを選択する。すなわち、「噴射パターン選択」項目の選択肢として、第1噴射パターンを選択するときに操作されるボタン94と、第2噴射パターンを選択するときに操作されるボタン95と、第3噴射パターンを選択するときに操作されるボタン96とがある。ここで、噴射パターンとは、噴射部30から噴射されるときのスプレー形状のパターンを指す。
【0076】
本実施形態では、第1~第3噴射部31~33は、それぞれ噴射パターンの異なるものが複数(例えば3つ)ずつ用意されている。第1~第3噴射パターンは、例えば、縦型の噴射パターン、丸型の噴射パターン、直噴型の噴射パターンである。
【0077】
本実施形態では、複数の噴射部31~33のうち少なくとも第1噴射部31は、噴射パターン(噴射形状)を変更可能に構成される。ティーチング部82は、少なくとも第1噴射部31の噴射区間に対して選択された噴射パターンを教え込む。
【0078】
第1~第3噴射部31~33は、それぞれ噴射パターンの異なるものが複数ずつ用意されたうち、指定された噴射パターンで噴射可能な1つがそれぞれ選択される。自動交換装置または切換機構を備える構成では、コントローラ50(又は制御部81)が、教示データTDに基づいて、第1~第3噴射部31~33ごとに、それぞれ複数ずつ用意されたうち、選択された噴射パターンに対応する1つの噴射部にそれぞれ切り換える。
【0079】
また、
図8に示す設定画面85には、設定内容を確定するときに操作されるOKボタン97と、設定内容をキャンセルするときに操作されるキャンセルボタン98とがある。ティーチング部82は、OKボタン97の操作を受け付けると、設定画面85の設定内容に基づいて教示データTDを作成する。教示データTDには、設定画面85で、選択された噴射部、選択された噴射パターン、噴射開始位置および噴射終了位置に関する複数の情報が含まれる。
【0080】
<実施形態の作用>
次に、
図1~
図10を参照して洗浄ロボット21の作用を説明する。
まず、作業者Pは、洗浄ロボット21に対して清掃内容を教え込むティーチングを行う。作業者Pは、グリップ部22Cを握って台車22を移動させることで、洗浄ロボット21を清掃開始位置SPに配置する。位置決め機構45の位置決めロッド44と位置決め部18の凹部18Aとが対向する位置に台車22を配置することで、洗浄ロボット21は作業開始位置に配置される。車輪40が床面FPに接地しているとき、レバー42は斜めに上昇している。作業者Pは、洗浄ロボット21を清掃開始位置SPに配置すると、レバー42を押し下げる。レバー42が押し下げられることで、トグル機構46を介して車輪40が上昇しかつ位置決めロッド44が下降する。位置決めロッド44が位置決め部18の凹部18Aに挿入されることで、洗浄ロボット21は
図1に示す清掃開始位置SPに位置決めされる。なお、洗浄ロボット21が清掃開始位置SPからずれていると、レバー42を押し下げようとしても位置決めロッド44が位置決め部18の凹部18A以外の部分に当たるため、レバー42をそれ以上押し下げ切ることができない。これにより、洗浄ロボット21が清掃開始位置SPからずれていることを作業者Pは把握できる。この場合、作業者Pは、洗浄ロボット21をずらして清掃開始位置SPへの位置決めをやり直す。
【0081】
以下、コンピュータ80のティーチング部82が実行するティーチング処理について、
図9にフローチャートを参照して説明する。
作業者Pは、台車22の上部に設けられた操作部52を操作して番号を選択する。選択した番号がこれから教示する教示内容の登録番号として設定される。
【0082】
洗浄ロボット21に対するティーチング作業では、噴射開始位置及び噴射終了位置を指定するとともに、噴射部及び噴射パターンを選択する。これらの設定内容を作業者Pは、操作タブレット29の表示部29Aに表示された
図8に示す設定画面85上で、噴射開始位置、噴射終了位置、噴射部選択、及び噴射パターン選択を行う。作業者Pは、洗浄ヘッド24のグリップ24Aを握り、洗浄ヘッド24を所望の位置へ移動させることで、ロボットアーム23を手動で動かして噴射部の移動経路を教え込む。
【0083】
作業者Pは、操作タブレット29の入力部29Bを操作してティーチングに必要な設定情報を入力する。作業者Pが入力した設定情報を受け付けたコンピュータ80のティーチング部82は、作業者Pが移動させる洗浄ヘッド24の位置情報と設定情報とに基づいて教示データTDを生成するティーチング処理を行う。
【0084】
ステップS11において、コンピュータ80は、番号を登録する。すなわち、コンピュータ80は、作業者Pが台車22のティーチング操作部52を操作することで選択した番号を受け付けると、その受け付けた番号を登録番号として登録する。
【0085】
次のステップS12において、コンピュータ80は、噴射開始位置を選択する。まず、作業者Pは、グリップ24Aを握って洗浄ヘッド24を噴射部30(例えば第1噴射部31)の噴射開始位置に移動させる。この状態で、作業者Pは操作タブレット29の設定画面85において噴射開始位置に対応する設定ボタン86を操作することで、現在の洗浄ヘッド24の位置座標および姿勢角を、噴射開始位置として設定する。
【0086】
ステップS13において、コンピュータ80は、噴射部を選択する。作業者Pは操作タブレット29の設定画面85における「噴射部選択」で「第1噴射部」のボタン91を選択する。
【0087】
ステップS14において、コンピュータ80は、噴射パターンを選択する。作業者Pは操作タブレット29の設定画面85における「噴射パターン選択」で「第1噴射パターン」のボタン94を選択する。
【0088】
ステップS15において、コンピュータ80は、噴射終了位置を選択する。作業者Pは、グリップ24Aを握って洗浄ヘッド24を噴射部30(例えば第1噴射部31)の噴射終了位置に移動させる。この状態で、作業者Pは、操作タブレット29の設定画面85において噴射終了位置に対応する設定ボタン87を操作することで、現在の洗浄ヘッド24の位置座標および姿勢角を、噴射終了位置として設定する。
【0089】
ステップS16において、コンピュータ80は、ティーチング終了であるか否かを判断する。作業者Pが操作タブレット29の設定画面85において設定を「OK」とするOKボタン97を操作すると、コンピュータ80は、設定画面85における設定内容に基づいて教示データTDを作成する。この教示データTDには、噴射開始位置(位置座標および姿勢角)、噴射終了位置、選択された「第1噴射部」の情報、選択された「第1噴射パターン」の情報が含まれる。この教示データTDは、登録番号と紐付けされて記憶部83に記憶される。こうして作業者Pは、第1噴射部31が洗浄液WLを噴射して行われる洗浄動作を洗浄ロボット21に教え込む。まだ、すすぎ動作と乾燥動作のティーチングが残っているので、ティーチングは終了ではない。コンピュータ80は、ティーチングが終了でないと判断すれば、ステップS11に戻る。
【0090】
次に、作業者Pは、洗浄動作後のすすぎ動作のティーチングを行う。このすすぎ動作のティーチングについても、作業者Pは洗浄動作のティーチングと同様の操作を行う。作業者Pはティーチング操作部52を操作して別の番号を登録する。さらに、作業者Pは、グリップ24Aを握って第2噴射部32の噴射開始位置および噴射終了位置に洗浄ヘッド24を順次移動させるとともに、操作タブレット29を用いた設定操作ですすぎ動作のティーチングを行う。このとき、コンピュータ80は、
図9に示すティーチング処理ルーチンを同様に実行する。
【0091】
このすすぎ動作のティーチングにより、噴射開始位置の選択(ステップS12)、第2噴射部32の選択(ステップS13)、噴射パターンの選択(ステップS14)および噴射終了位置の選択(ステップS15)が行われる。噴射開始位置と噴射終了位置は、洗浄ヘッド24の位置座標および姿勢角を含む。
【0092】
作業者Pが操作タブレット29の設定画面85においてOKボタン97を操作すると、コンピュータ80は設定画面85における設定内容に基づいて教示データTDを作成する。この教示データTDは、登録番号と紐付けされて記憶部83に記憶される。こうして作業者Pは、第2噴射部32がすすぎ液を噴射して行われるすすぎ動作を洗浄ロボット21に教え込む。まだ、乾燥動作のティーチングが残っているので、ティーチング終了ではない(ステップS16で否定判定)。
【0093】
次に、作業者Pは、すすぎ動作後の乾燥動作(水切り動作)のティーチングを行う。この乾燥動作のティーチングについても、作業者Pは洗浄動作のティーチングと同様の操作を行う。作業者Pはティーチング操作部52を操作して別の番号を登録する。さらに、作業者Pは、グリップ24Aを握って第3噴射部33の噴射開始位置および噴射終了位置に洗浄ヘッド24を順次移動させるとともに、操作タブレット29を用いた設定操作で乾燥動作のティーチングを行う。コンピュータ80は、
図9に示すティーチング処理ルーチンを同様に実行する。
【0094】
この乾燥動作のティーチングにより、噴射開始位置の選択(ステップS12)、第3噴射部33の選択(ステップS13)、噴射パターンの選択(ステップS14)および噴射終了位置の選択(ステップS15)が行われる。噴射開始位置と噴射終了位置は、洗浄ヘッド24の位置座標および姿勢角を含む。
【0095】
作業者Pが操作タブレット29の設定画面85においてOKボタン97を操作すると、コンピュータ80は設定画面85における設定内容に基づいて教示データTDを作成する。この教示データTDは、登録番号と紐付けされて記憶部83に記憶される。こうして作業者Pは、第3噴射部33が空気を噴射して行われる乾燥動作を洗浄ロボット21に教え込む。コンピュータ80は、操作タブレット29から作業者Pによるティーチング終了の操作を受け付けると、ティーチング終了と判断し(ステップS16で肯定判定)、当該ティーチング処理ルーチンを終了する。
【0096】
本実施形態では、ティーチング部82によるティーチング機能は、作業者Pがロボットアーム23を動かすことで、選択された噴射部30を移動させた移動経路と、移動経路のうち噴射部30が噴射を行う噴射区間と、噴射区間で噴射を行うときの噴射向きとを、選択された噴射部ごとに教え込む。本実施形態では、噴射開始位置から噴射終了位置までが移動経路となる。また、噴射開始位置から噴射終了位置までが噴射区間となる。つまり、本実施形態では、移動経路と噴射区間とは、それぞれの始点と終点が同じである。なお、移動経路の範囲のうちの一部が噴射区間であってもよい。この場合、設定画面85に、噴射部30の移動開始位置と移動終了位置とを設定できる構成としてもよい。
【0097】
また、噴射区間で噴射を行うときの噴射向きは、作業者Pがグリップ24Aを握って洗浄ヘッド24を噴射開始位置または噴射終了位置に移動させたときの洗浄ヘッド24の姿勢角の情報が、噴射部30の所望の噴射向きとして設定される。詳しくは、ロボットアーム23は各アーム部27A~27Cの角度および洗浄ヘッド24の姿勢角を検出可能な複数のセンサ(図示略)を備える。作業者Pがティーチング時に調整した洗浄ヘッド24の位置座標および姿勢角は、ロボットアーム23のセンサにより検出される。コンピュータ80は、センサが検出した洗浄ヘッド24の位置座標および姿勢角を、噴射開始位置および噴射終了位置の各情報とする。なお、位置座標は、ロボットアーム23の基準位置を原点とする座標系の座標値である。
【0098】
こうして1つの登録番号について1つのティーチング内容(清掃内容)が登録される。1台の製造ライン10の清掃に複数の清掃作業を登録する場合、番号と紐付けて複数の教示データTDを登録する。本実施形態では、通常、洗浄、すすぎ、乾燥の3種類の清掃が行われる。そのため、コンピュータ80は、ステップS11~S16の処理を、清掃の種類に等しい数だけ繰り返し実行する。なお、本実施形態では、
図9におけるステップS11~S16の処理が、ティーチングステップの一例に相当する。
【0099】
その後、作業者Pは、洗浄ロボット21を用いて製造ライン10の清掃作業を行う。作業者Pは、清掃作業を行うときは、ティーチング時に登録した登録番号を指定する。本実施形態では、ティーチング時に登録した3つの登録番号を指定する。作業者Pは複数の登録番号を指定するときは、制御部81が登録番号に紐付けされた教示データTDに基づき清掃動作を実行する順番を指定する。コンピュータ80は、教示データTDを参照しつつプログラムPRを実行することで、ティーチングされた清掃内容で製造ライン10を清掃する。
【0100】
以下、コンピュータ80の制御部81が実行する清掃制御処理について説明する。
ステップS21において、コンピュータ80は、登録番号が選択されたか否かを判断する。登録番号が選択されていない場合はこの判断を所定時間間隔毎に繰り返し、登録番号が選択されたと判断すればステップS22に進む。
【0101】
ステップS22において、コンピュータ80は、登録番号に対応する教示データTDを記憶部83から読み出す。コンピュータ80は、まず、記憶部83から指定の順番において最初に読み出すべき登録番号に紐付けられた教示データTDを読み出す。
【0102】
ステップS23において、コンピュータ80は、ロボットアーム23を教示データTDに基づく噴射開始位置へ移動させる。
ステップS24において、コンピュータ80は、教示データTDに基づき噴射部を決定する。例えば、洗浄、すすぎ、乾燥(水切り)の順番で製造ライン10を清掃する場合、最初の教示データTDから、噴射部としてまず第1噴射部31が決定される。
【0103】
ステップS25において、コンピュータ80は、教示データTDに基づき噴射パターンを決定する。例えば、第1噴射部31の噴射パターンが決定される。
ステップS26において、コンピュータ80は、清掃を開始する。すなわち、コンピュータ80は、噴射開始位置から噴射終了位置へ向かう所定の経路に沿って第1噴射部31を移動させるとともに、第1噴射部31から指定の噴射パターンで洗浄液WLを噴射する。例えば、コンベヤ13がメッシュコンベヤであれば、第1噴射部31から洗浄液WLが直噴パターンで噴射され、メッシュコンベヤに対して洗浄液WLがスポットで噴射される。コンベヤ13のメッシュに付着した頑固な油脂などの汚れを洗い落とすことができる。また、コンベヤ13がベルトコンベヤである場合、コンベヤ13を効率よく洗浄するために、第1噴射部31から拡がるフラットパターンや丸型パターンで洗浄液WLが噴射される。
【0104】
この洗浄動作はコンベヤ13を停止したまま行ってもよい。すなわち、停止するコンベヤ13に対して第1噴射部31の幅方向Yの移動と搬送方向Xの移動とを組み合わせた例えばジグザグ経路に沿って第1噴射部31を移動させることで、製造ライン10のコンベヤ13及びその両側のガイド面を洗浄液WLで洗浄する方法をとることができる。
【0105】
また、この洗浄動作はコンベヤ13を駆動させながら行ってもよい。すなわち、搬送方向Xに駆動するコンベヤ13に対して第1噴射部31をコンベヤ13の幅方向Yに往復移動させることで、製造ライン10のコンベヤ13及びその両側のガイド面を洗浄液WLで洗浄する方法をとることもできる。
【0106】
ステップS27において、コンピュータ80は、噴射終了位置に到達したか否かを判断する。例えば、第1噴射部31が噴射終了位置に到達していない場合は、第1噴射部31から洗浄液WLを噴射する清掃を継続する。そして、第1噴射部31が噴射終了位置に到達すると、ステップS28に進む。
【0107】
ステップS28において、コンピュータ80は、清掃を終了する。すなわち、コンピュータ80は、第1電磁弁61を閉弁させることで、第1噴射部31からの洗浄液WLの噴射を停止させる。
【0108】
ステップS29において、コンピュータ80は、次の登録番号があるか否かを判断する。洗浄液WLによる洗浄が終わった段階では、すすぎ動作と乾燥動作が残っているので、次の登録番号があると判定される。コンピュータ80は、次の登録番号がある場合(ステップS29で肯定判定)、ステップS22へ戻る。そして、次の登録番号に対応する教示データTDを読み出し、その読み出した教示データTDに基づいてステップS23~S28の処理を実行することで、次のすすぎ動作を行う。
【0109】
すなわち、コンピュータ80は、ロボットアーム23を制御することで、指定の噴射パターンで噴射可能な第2噴射部32を噴射開始位置に移動させる(ステップS23~S25)。次に、コンピュータ80は、ロボットアーム23を制御することで、第2噴射部32を噴射開始位置から噴射終了位置へ向かう所定の経路に沿って移動させるとともに、この移動過程で第2噴射部32からすすぎ液(リンス液)を指定の噴射パターンで噴射する。
【0110】
このすすぎ動作は、洗浄動作と同様に、コンベヤ13を停止したまま、第2噴射部32を例えばジグザグ経路に沿って移動させてもよいし、コンベヤ13を駆動させながら第2噴射部32をコンベヤ13の幅方向Yに往復移動させてもよい。
【0111】
第2噴射部32が噴射終了位置に到達すると(ステップS27で肯定判定)、すすぎ液の噴射を停止させる。こうして清掃としてのすすぎ動作を終了する(ステップS28)。すすぎ動作を終了すると、まだ乾燥動作が残っているので、次の登録番号がある。コンピュータ80は、次の登録番号がある場合(ステップS29で肯定判定)、ステップS22へ戻る。そして、次の登録番号に対応する教示データTDを読み出し、その読み出した教示データTDに基づいてステップS23~S28の処理を実行することで、次の乾燥動作を行う。
【0112】
すなわち、コンピュータ80は、ロボットアーム23を制御することで、指定の噴射パターンで噴射可能な第3噴射部33を噴射開始位置に移動させる(ステップS23~S25)。次に、コンピュータ80は、ロボットアーム23を制御することで、第3噴射部33を噴射開始位置から噴射終了位置へ向かう所定の経路に沿って移動させるとともに、この移動過程で第3噴射部33から空気を指定の噴射パターンで噴射する。つまり、第3噴射部33はエアブローによって水切りを行うことで、製造ライン10の清掃箇所を乾燥させる。
【0113】
この乾燥動作は、洗浄動作と同様に、コンベヤ13を停止したまま、第3噴射部33を例えばジグザグ経路に沿って移動させてもよいし、コンベヤ13を駆動させながら第3噴射部33をコンベヤ13の幅方向Yに往復移動させてもよい。
【0114】
第3噴射部33が噴射終了位置に到達すると(ステップS27で肯定判定)、第3噴射部33からの空気の噴射を停止させる。こうして清掃としての乾燥動作を終了する(ステップS28)。次の登録番号はないので、一連の清掃を終了する。なお、本実施形態では、
図10におけるステップS22~S28の処理が、清掃ステップの一例に相当する。
【0115】
作業者Pは、洗浄ロボット21を次の清掃開始位置SP(
図1では二点鎖線で描かれた位置)に移動させ、洗浄ロボット21に製造ライン10に対して同様の清掃を行わせる。こうして、作業者Pは洗浄ロボット21を複数の清掃開始位置SPに順番に移動させながら製造ライン10の全体を清掃する。
【0116】
洗浄ロボット21は、作業者Pの清掃負担を軽減するために作業者Pを支援する協働ロボットである。洗浄ロボット21による清掃では、清掃漏れや汚れ残りは避けられない。そのため、作業者Pは、洗浄ロボット21の清掃結果を確認し、清掃漏れや汚れ残りがある場合、その箇所については手作業で清掃する。洗浄ロボット21の清掃漏れや汚れ残りがある場合に限り、その箇所のみを手作業で清掃するだけで済むので、作業者Pの作業負担は大幅に軽減する。
【0117】
以上詳述したように本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)製造ライン10の洗浄装置20は、異なる種類の流体をそれぞれ噴射する複数の噴射部30と、複数の噴射部30を有するロボットアーム23と、ロボットアーム23を搭載する台車22とを備える。さらに、洗浄装置20は、複数の噴射部30及びロボットアーム23を制御する制御部81と、制御部81が複数の噴射部30及びロボットアーム23を制御して清掃を行うときの制御内容をティーチングするティーチング部82とを備える。複数の噴射部30は、洗浄液WLを噴射する第1噴射部31と、すすぎ液を噴射する第2噴射部32とを含む。ティーチング部82は、選択機能と、ティーチング機能とを備える。選択機能は、複数の噴射部30のうち第1噴射部31及び第2噴射部32を含む二以上の噴射部を選択させる機能である。また、ティーチング機能は、ロボットアーム23を動かすことで選択された噴射部を移動させた移動経路と、移動経路のうち噴射部30が噴射を行う噴射区間と、噴射区間で噴射を行うときの噴射向きとを、選択された噴射部ごとに教え込む機能である。この構成によれば、製造ライン10を清掃する場合、ティーチング部82により、第1噴射部31及び第2噴射部32を含む二以上の噴射部の選択と、選択した噴射部30の移動経路と噴射区間と噴射向きとを、選択した噴射部30ごとに教え込むことができる。よって、製造ライン10ごとに適した噴射経路で洗浄液WLを噴射して洗浄できるうえ、洗浄後に洗浄液WLをすすぐことができる。したがって、製造ライン10を清掃するときの人手による負担を軽減できるうえ、例えば水洗いに勝る高い清掃効果が得られる。よって、製造ライン10を洗浄する際に、作業者Pの労力を軽減でき、かつ高い洗浄効果を得ることができる。
【0118】
(2)複数の噴射部30は、第2噴射部32がすすぎ液を噴射して行われるすすぎ動作の後、ガスを噴射してすすぎ液を乾燥させる第3噴射部33を含む。ティーチング部82は、第1噴射部31、第2噴射部32及び第3噴射部33を含む三以上の噴射部が選択された場合、三以上の噴射部31~33ごとに移動経路と噴射区間と噴射向きとを教え込む。この構成によれば、洗浄液WLによる洗浄と、洗浄後の洗浄液WLのすすぎと、すすぎ後のすすぎ液の乾燥とを行うことができる。洗浄経路とすすぎ経路と乾燥経路とを個別に教え込むことができるので、製造ライン10の清掃効果を一層高めることができる。
【0119】
(3)複数の噴射部30のうち少なくとも第1噴射部31は、噴射形状を変更可能に構成される。ティーチング部82は、少なくとも第1噴射部31の噴射区間に対して選択された噴射形状を教え込む。この構成によれば、少なくとも第1噴射部31が噴射区間で洗浄液WLを噴射するときの噴射形状を選択して教え込むことができるので、製造ライン10の洗浄効果を一層高めることができる。
【0120】
(4)洗浄装置20は、人が手動で台車22を移動させる協働ロボットである。ティーチング部82を用いて行うティーチング時とティーチングされた制御内容で清掃を行う清掃実施時とにおいて、協働ロボットを製造ライン10に対して同じ清掃位置に位置決め可能な位置決め機構45を備える。この構成によれば、作業者Pは、ティーチング時と清掃実施時とで協働ロボットを同じ清掃位置に配置できる。例えば、ティーチング時と清掃実施時とで協働ロボットの配置位置がずれていると、洗浄液WL及びすすぎ液の噴射位置がティーチング時の位置からずれることが原因で、製造ライン10の清掃効果が低下する。これに対して、位置決め機構45によりティーチング時と清掃実施時とで協働ロボットを必要な位置精度で同じ清掃位置に配置できるので、製造ライン10の清掃効果が高まる。
【0121】
(5)洗浄装置20は、人が手動で台車22を移動させる協働ロボットである。ティーチング部82は、選択された噴射部30が噴射区間を移動するときの移動速度を設定する設定機能を備える。この構成によれば、噴射部30が噴射しながら噴射区間を移動するときの移動速度を設定できるので、噴射部30の移動速度を清掃に適した値に設定することで、必要な清掃効果が得られる。また、ティーチング時に協働ロボットのロボットアーム23を手動で移動させても、清掃実施時に噴射部を噴射区間で適切な移動速度で移動させることができる。
【0122】
(6)製造ライン10の洗浄方法は、ティーチングステップと清掃ステップとを含む。ティーチングステップでは、洗浄液WLを噴射する第1噴射部31及びすすぎ液を噴射する第2噴射部32を含む複数の噴射部30を有するロボットアーム23を搭載する台車22を、製造ライン10に対する清掃開始位置SP(清掃位置)に移動させた状態で、複数の噴射部30のうち第1噴射部31及び第2噴射部32を含む二以上の噴射部30を選択し、ロボットアーム23を動かすことで噴射部30を移動させた移動経路と、移動経路のうち噴射部30が噴射を行う噴射区間と、噴射区間で噴射を行うときの噴射向きとを、選択された噴射部30ごとに教え込む。清掃ステップでは、二以上の噴射部31,32及びロボットアーム23をティーチングステップで教え込んだ制御内容で制御することで製造ライン10を清掃する。この洗浄方法によれば、製造ライン10の洗浄装置20と同様の効果が得られる。
【0123】
(7)移動経路の範囲のうちの一部を噴射区間として設定する構成とした場合、移動開始位置から移動終了位置までの間に入力された複数の位置座標のうち一部の位置座標が噴射開始位置と噴射終了位置とされる。この構成によれば、ロボットアーム23が待機位置から噴射開始位置までの直線経路上に製造ライン10の一部が障害物として存在する場合でも、その障害物を回避する経路を設定可能となる。そのため、障害物を回避しながら洗浄ヘッド24を待機位置から噴射開始位置に移動させることができる。
【0124】
前記実施形態は、上記に限定されず、以下のように変更してもよい。
・洗浄ロボット21は、噴射部30から流体(液体又はガス)を噴射するために必要な圧力を発生させるポンプを備えてもよい。すなわち、洗浄ロボット21は、ポンプで加圧した液体(洗浄液やすすぎ液)又はガスを噴射部から噴射させる構成でもよい。
【0125】
・洗浄ロボット21に製造ライン10を撮像可能なカメラを含む撮像装置を備えてもよい。制御部81がカメラにより撮像した画像を解析する画像解析処理を行うことで、洗浄ロボット21が製造ライン10に対して清掃開始位置SPに正しく位置決めされたか否かを判定する。この場合、カメラは、台車22に設けられてもよいし、ロボットアーム23に設けられてもよい。例えば、洗浄ロボット21は、正しい清掃開始位置SPへの方向および距離を、表示で案内する表示部または音声で案内するスピーカを備えてもよい。
【0126】
・洗浄ロボット21は、第3噴射部33から噴射する水切りのエアを加圧するコンプレッサを備えてもよい。
・洗浄装置20は、洗浄ロボット21に限定されない。洗浄装置20は、例えば、X軸移動機構とY軸移動機構とZ軸移動機構を含む移動機構を有し、複数の噴射部をX方向、Y方向及びZ方向の3方向に個別に移動させる構成でもよい。例えば、洗浄装置20は、ロボットアーム23に替え、XYZ各方向に移動可能なアームを備え、そのアームの先端部に第1噴射部31と第2噴射部32とを含む複数の噴射部30を有する構成でもよい。
【0127】
・洗浄ロボット21に3Dスキャナを設け、3Dスキャナの検出結果に基づいてティーチング時の洗浄ロボット21の位置を記憶し、清掃実施時に3Dスキャナの検出結果に基づいてティーチング時の位置に洗浄ロボット21を案内する構成としてもよい。
【0128】
・複数の噴射部30は、第1噴射部31と第2噴射部32との2種類だけでもよい。つまり、エアブロー用の第3噴射部33はなくてもよい。また、複数の噴射部30は、第1噴射部31及び第2噴射部32を含む二以上の噴射部であれば、洗浄液及びすすぎ液以外の他の液体を噴射する噴射部を含んでもよい。
【0129】
・噴射部30は、ノズルの噴射口部を切換えることで噴射パターンを切換可能な構成でもよい。この場合、制御部81がノズルの噴射口部を切り換えてもよい。
・作業者Pがティーチング時に洗浄ヘッド24を手動で移動させたときの移動速度を計測する計測機能を洗浄ロボット21が備え、その計測値に基づいて噴射区間を移動させるときの噴射部30の移動速度を設定する構成でもよい。この構成によれば、ティーチング時に噴射部30から所定の液体を噴射させたときの汚れの落ち具合を作業者Pが観察しながら洗浄ヘッド24を適切な移動速度で移動させたときの移動速度を設定できる。
【0130】
・洗浄装置20が清掃対象とする製造ライン10は、コンベヤ13を備えないものでもよい。
・洗浄装置20が清掃対象とする製造ライン10は、食品製造用の製造ラインに限らず、医薬品を製造する医薬品製造用の製造ラインでもよい。
【0131】
・洗浄装置20が清掃対象とする製造ライン10は、作業者Pが食品や医薬品等の製品を製造するための製造ラインに限らず、製造ロボットが製品又は半製品を製造する無人製造ラインでもよい。
【符号の説明】
【0132】
10…製造ライン、11…本体フレーム、12…搬送機構、13…コンベヤ、13A…搬送面、14…ローラ、15…駆動源、18…位置決め部、18A…凹部、20…洗浄装置、21…洗浄ロボット、22…台車、22A…筐体、22C…グリップ部、23…ロボットアーム、24…洗浄ヘッド、24A…グリップ、25…台部、26…回転部、27…アーム、27A~27C…アーム部、28…駆動源、29…操作タブレット、29A…表示部、29B…入力部、30…噴射部、31…第1噴射部、32…第2噴射部、33…第3噴射部、34…第1管路、35…第2管路、36…第3管路、40…車輪、41A,41B…レベルボルト、42…レバー、43…固定部、44…位置決めロッド、45…位置決め機構、46…トグル機構、50…コントローラ、51…制御ボックス、60…タンク、61…第1電磁弁、62…第2電磁弁、63…第3電磁弁、64…管路、65…被接続部、66…加圧弁、67…分岐部、71~73…入口用の配管接続部、74~76…出口用の配管接続部、80…コンピュータ、81…制御部、82…ティーチング部、83…記憶部、W…物品、FP…床面、P…作業者、WL…洗浄液、PR…プログラム、TD…教示データ、X…搬送方向、Y…幅方向、Z…鉛直方向。