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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182783
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】多管式熱交換器
(51)【国際特許分類】
   F28F 9/02 20060101AFI20221201BHJP
   F28D 7/16 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F28F9/02 Z
F28D7/16 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090513
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000127237
【氏名又は名称】株式会社イズミフードマシナリ
(74)【代理人】
【識別番号】100179969
【弁理士】
【氏名又は名称】駒井 慎二
(72)【発明者】
【氏名】福谷 隆伸
(72)【発明者】
【氏名】小田切 輝
(72)【発明者】
【氏名】入江 創太
(72)【発明者】
【氏名】田村 健太
【テーマコード(参考)】
3L103
【Fターム(参考)】
3L103AA19
(57)【要約】
【課題】大型化やコストアップを招くことなく、簡単な構成で被処理流体に含まれる固形物の管板への付着による堆積を防ぐことができる多管式熱交換器を提供すること。
【解決手段】シェル(缶胴)2と該シェル2の軸方向両端開口部を覆う管板3,4とによって前記シェル2の内部に画成された密閉空間S内に、複数のチューブ(伝熱管)5を前記管板3,4間に架設し、複数のチューブ5内を流れる被処理流体と密閉空間S内を流れる熱媒体との間の熱交換によって被処理流体を加熱または冷却する多管式熱交換器1において、隣接する2つのチューブ5の間に凸部3Cを形成し、該凸部3Cの周長Wを被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも長く設定する(W>M)。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶胴と該缶胴の軸方向両端開口部を覆う管板とによって前記缶胴の内部に画成された密閉空間内に、複数の伝熱管を架設し、複数の前記伝熱管内を流れる被処理流体と前記密閉空間内を流れる熱媒体との間の熱交換によって前記被処理流体を加熱または冷却する多管式熱交換器であって、
隣接する2つの前記伝熱管の間に凸部を形成し、該凸部の周長を前記被処理流体に含まれる固形物の長さよりも長く設定したことを特徴とする多管式熱交換器。
【請求項2】
前記凸部を介して隣り合う2つの前記伝熱管間の間隔寸法を、前記固形物の長さよりも短く設定したことを特徴とする請求項1に記載の多管式熱交換器。
【請求項3】
前記伝熱管は、その軸方向両端部が前記管板に形成された孔に差し込まれて接続されており、前記凸部は、前記被処理流体が流入する側の前記管板に形成された前記孔の開口部周縁に突設された突起で構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の多管式熱交換器。
【請求項4】
前記突起は、その内周面が前記被処理流体の反流入方向に向かって拡径するテーパ平面またはテーパ曲面を形成していることを特徴とする請求項3に記載の多管式熱交換器。
【請求項5】
前記伝熱管は、その軸方向両端部が前記管板に形成された孔に差し込まれて接続されており、前記凸部は、前記被処理流体が流入する側の前記管板に形成された前記孔の開口部周縁に沿って座ぐり孔を形成することによって構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の多管式熱交換器。
【請求項6】
前記座ぐり孔の内周面は、前記被処理流体の反流入方向に向かって拡径するテーパ平面またはテーパ曲面を形成していることを特徴とする請求項5に記載の多管式熱交換器。
【請求項7】
前記被処理流体が流入する側の前記管板の外面から該管板への前記伝熱管の接続端までの距離を、前記固形物の長さよりも長く設定したことを特徴とする請求項3~6の何れかに記載の多管式熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、缶胴内に互いに平行に配された複数の伝熱管を収容して構成される多管式熱交換器、特に固形物を含有する飲料などを被処理流体としてこれを加熱または冷却するための多管式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の多管式熱交換器(シェルアンドチューブ式熱交換器)は、筒状の缶胴(シェル)と該缶胴の軸方向両端開口部を覆う一対の管板とによって缶胴の内部に画成された密閉空間内に、複数の伝熱管(チューブ)を一対の管板間に互いに平行に架設し、複数の伝熱管内を流れる被処理流体と密閉空間内を流れる冷媒または熱媒(以下、これらを「熱媒体」と総称する)との間の熱交換によって被処理流体を加熱または冷却するものである。
【0003】
ところで、斯かる多管式熱交換器において、加熱または冷却される被処理流体が例えば果実ジュースのような場合、果実ジュースには「さのう」と称される所定長さの固形物(繊維)が含まれているため、複数の伝熱管が固形物の長さよりも短い間隔寸法で配置されている場合には、次のような問題が発生する。すなわち、各伝熱管に被処理流体である例えば果実ジュースが送り込まれる際、この果実ジュースに含まれる固形物(さのう)の両端が隣接する2つの伝熱管の内部に跨ってしまい、この固形物が流入側の管板に流体圧によって押し付けられて堆積するという問題が発生する。
【0004】
上述のように管板に固形物が付着して堆積すると、この堆積した固形物を清掃によって除去する必要があるが、その清掃作業が面倒で多くの時間と労力を要するという問題がある。
【0005】
そこで、例えば、特許文献1には、管板から突出した伝熱管の流入側端部を着脱可能なガイド板で覆い、伝熱管の管板から突出した部分への異物の付着を防止するようにした熱交換器が提案されている。
【0006】
また、特許文献2には、伝熱管(液体流通管)を、被処理流体に含まれる固形物の長さ寸法よりも大きな間隔寸法で配置するようにした多管式熱交換器が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実開平6-055076号公報
【特許文献2】特開2005-291624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1において提案された熱交換器においては、管板にガイド板を複数のボルトによって取り付ける必要があり、その取り付け/取り外しが面倒である他、別部品であるガイド板やボルトなどの部品が必要であるために部品点数が増え、構造の複雑化とコストアップを招くという問題がある。そして、この熱交換器においては、伝熱管の配列間隔については言及していないため、被処理流体に含まれる固形物のガイド板への付着を招く可能性がある。
【0009】
また、特許文献2において提案された多管式熱交換器においては、伝熱管(液体流通管)が被処理流体に含まれる固形物の長さ寸法よりも大きな間隔寸法で配置されているため、伝熱管を収容する缶胴(シェル)の径が大きくなって当該多管式熱交換器が大型化するという問題が発生する。
【0010】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、大型化やコストアップを招くことなく、簡単な構成で被処理流体に含まれる固形物の管板への付着による堆積を防ぐことができる多管式熱交換器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、缶胴と該缶胴の軸方向両端開口部を覆う管板とによって前記缶胴の内部に画成された密閉空間内に、複数の伝熱管を架設し、複数の前記伝熱管内を流れる被処理流体と前記密閉空間内を流れる熱媒体との間の熱交換によって前記被処理流体を加熱または冷却する多管式熱交換器であって、
隣接する2つの前記伝熱管の間に凸部を形成し、該凸部の周長を前記被処理流体に含まれる固形物の長さよりも長く設定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、隣接する2つの伝熱管の間に形成された凸部の周長を被処理流体に含まれる固形物の長さよりも長く設定したため、伝熱管を、被処理流体に含まれる固形物の長さ寸法よりも大きな間隔寸法で配置することなく、被処理流体に含まれる固形物の両端が、隣接する2つの伝熱管内に跨る現象の発生を防ぐことができる。このため、多管式熱交換器の大型化やコストアップを招くことなく、簡単な構成で被処理流体に含まれる固形物の管板への付着による堆積を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態1に係る多管式熱交換器の縦断面図である。
図2図1のA部拡大詳細図である。
図3図2のB-B線断面図である。
図4】(a)は伝熱管の管板への接続構造を示す部分縦断面図、(b)は伝熱管の管板への別の接続構造を示す部分縦断面図である。
図5図2のC部拡大詳細図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る多管式熱交換器要部の縦断面図である。
図7図6のD部拡大詳細図である。
図8】本発明の実施の形態2に係る多管式熱交換器の変形例を示す要部縦断面図(図7と同様の図)である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0015】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る多管式熱交換器の縦断面図、図2図1のA部拡大詳細図、図3図2のB-B線断面図、図4(a)は伝熱管の管板への接続構造を示す部分縦断面図、図4(b)は伝熱管の管板への別の接続構造を示す部分縦断面図、図5図2のC部拡大詳細図である。
【0016】
本実施の形態に係る多管式熱交換器1は、図1に示すように、横置きされた円筒状の缶胴(以下、「シェル」と称する)2を備えており、このシェル2の軸方向両端(図1の左右両端)の開口部は、一対(図1の左右一対)の円板状の管板3,4によって覆われている。そして、シェル2内には、左右一対の管板3,4によって密閉空間Sが画成されており、この密閉空間Sには、複数の伝熱管(以下、「チューブ」と称する)5が一対の管板3,4間に水平且つ互いに平行に架設された状態で収容されている。具体的には、図3に示すように、密閉空間S内には、計19本のチューブ5が等ピッチ(軸心間距離)Pで整然と配列された状態で収容されている。なお、本実施の形態では、シェル2の材質には、SUS304が使用され、管板3,4とチューブ5にはSUS316Lが使用されている。また、図示しないが、シェル2は、長手方向中間部において2分割されており、両分割片は、当該シェル2の熱膨張または熱収縮を吸収するための伸縮継手によって連結されている。
【0017】
また、図1及び図2に示すように、一方(図1及び図2の左側)の管板3の横には、円筒容器状のヘッダ6が取り付けられており、このヘッダ6の底部には、円孔状の被処理流体流入口6aが形成されている。ヘッダ6と管板3との合わせ面間には、Oリングなどのシールリング7が介装されており(図2参照)、このシールリング7のシール作用によってヘッダ6と管板3との間には高いシール性が確保されている。そして、ヘッダ6の被処理流体流入口6aには、被処理流体流入ノズル8が接続されている。なお、本実施の形態では、被処理流体としては、果実飲料、野菜ジュースなどの飲料が使用され、これらの飲料に含まれる固形物としては、食物繊維、さのう、ナタデココなどが挙げられる。そして、本実施の形態に係る多管式熱交換器1においては、後述のように、被処理流体は、各チューブ5内に図1の左方から流入し、各チューブ5内を左方から右方に向かって流れるが、以下、図1の左側を「流入側」、右側を「流出側」とそれぞれ称する。
【0018】
さらに、図1に示すように、シェル2の流出側の管板4に近い箇所の上部には円孔状の熱媒体流入口2aが開口しており、この熱媒体流入口2aには熱媒体流入ノズル9が接続されている。また、シェル2の流入側の管板3に近い箇所の下部には円孔状の熱媒体流出口2bが開口しており、この熱媒体流出口2bには熱媒体流出ノズル10が接続されている。
【0019】
ここで、各チューブ5の流入側の端部の管板3への接続構造を図4(a)に示すが、管板3には計19個の円孔3a(図4(a)には1つのみ図示)が形成されており、各円孔3aには、各チューブ5の流入側の一端部が管板3の内側からそれぞれ差し込まれる。具体的には、管板3に形成された円孔3aには、大小異径の小径部3a1と大径部3a2が形成されており、この円孔3aの大径部3a2にチューブ5の流入側の一端部が密閉空間S側(図4(a)の右側)から差し込まれ、この差し込まれたチューブ5の端部内周部が溶接されることによって、各チューブ5の流入側の端部が管板3にそれぞれ接続される。このように、チューブ5が管板3の円孔3aの大径部3a2に差し込まれて溶接によって接続されることによって、円孔3aの小径部3a1とチューブ5の内周面とが段差なくストレートに繋がる。なお、図4(a)において、aは溶接ビードを示している。
【0020】
そして、本実施の形態では、図4(a)に示すように、流入側の管板3の外面から溶接ビードaの流入側の端部までの距離Lは、被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも長く設定されている(L>M)。なお、各チューブ5の管板3への接続構造の他の例を図4(b)に示すが、この接続構造においては、管板3の内面の各円孔3aの一端開口部周縁に円筒状のリップ部3bを一体に形成し、このリップ部3bに形成された円孔3aの大径部3a2にチューブ5の流入側の一端部を差し込み、その突き当て部の内周を溶接することによって、各チューブ5の流入側の一端部を管板3に接続するようにしている。この場合においても、管板3の外面から溶接ビードaの流入側の端部までの距離Lは、固形物mの長さMよりも長く設定されている(L>M)。図4(b)に示すような接続構造を採用することによって、図4(a)に示す接続構造に対して、必要な距離Lを確保するために必要な管板3の厚さを薄くすることができる。
【0021】
ところで、本実施の形態に係る多管式熱交換器1においては、図2に示すように、隣接する2つのチューブ5の間に、凸部である突起3Aが形成されている。より詳細には、図5に詳細に示すように、流入側の管板3の外面の各円孔3aの開口部周縁には、反流入方向(図5の左方)に向かって突出するリング状の突起3Aがそれぞれ一体に突設されている。この突起3Aは、反流入方向(図5の左方)に向かって先細状となる三角形の縦断面形状を有しており、その内周面は、反流入方向に向かって拡径する(流入方向に向かって縮径する)テーパ平面を形成している。なお、各突起3Aは、金属板の削り出しによって製作される。
【0022】
そして、本実施の形態では、図5に詳細に示すように、突起3Aの周長W、つまり、突起3Aの斜面の長さbを合計した値W=2bは、被処理流体に含まれる固形物mの長さM(図4参照)よりも大きく設定されている(W>M)。
【0023】
また、突起3Aを介して隣り合う2つのチューブ5の間隔寸法Xは、被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも短く設定されている(X<M)。したがって、これらの長さWとM及びXとの間には次式にて表される大小関係が成立している。
【0024】
W>M>X …(1)
なお、本実施の形態では、突起3Aとして三角形の縦断面を有するものを採用したが、例えば、台形の縦断面を有する突起や、半円形の縦断面を有する突起などを採用することができる。因みに、縦断面が台形の突起を採用する場合には、該突起の内周面は、反流入方向に向かって拡径する(流入方向に向かって縮径する)漏斗状のテーパ平面を形成し、縦断面が半円形の突起を採用する場合には、該突起の内周面は、反流入方向に向かって拡径する(流入方向に向かって縮径する)ベルマウス状(R状)のテーパ曲面を形成する。
【0025】
ところで、本実施の形態に係る多管式熱交換器1の流出側の管板4やこれに接続されるチューブ5の接続構造などは、従来の多管式熱交換器のそれらと同じであるため、これについての説明は省略する。
【0026】
次に、以上のように構成された多管式熱交換器1の作用について説明する。
【0027】
固形物mを含有する飲料などの被処理流体は、図1に示す被処理流体流入ノズル8から被処理流体流入口6aを経てヘッダ6内に流入し、ヘッダ6内に流入した被処理流体は、管板3に開口する計19個の各円孔3a(図2参照)から計19本の各チューブ5(図3参照)内に流入する。これと同時に、熱媒体は、図1に示す熱媒体流入ノズル9から熱媒体流入口2aを経てシェル2内の密閉空間Sへと流入し、図1の左方に向かって流れるが、その過程において、各チューブ5を流れる被処理流体との間で熱交換を行って該被処理流体を加熱または冷却する。そして、被処理流体の加熱または冷却に供された熱媒体は、シェル2内の密閉空間Sから熱媒体流出口2bを経て熱媒体流出ノズル10からシェル2外へと排出される。
【0028】
他方、各チューブ5を図1の右方に向かって流れる過程で熱媒体によって加熱または冷却された被処理流体は、管板4に接続された不図示の配管を経てシェル2の外部へと排出される。以後は上記と同様の作用が繰り返されて被処理流体が熱媒体との熱交換によって連続的に加熱または冷却される。なお、被処理流体を加熱する場合には、熱媒体として温水やスチームなどの熱媒が使用され、被処理流体を冷却する場合には、熱媒体として冷水やブラインなどの冷媒が使用される。
【0029】
以上において、本実施の形態に係る多管式熱交換器1においては、隣接する2つのチューブ5の間に突起3Aを形成し、この突起3Aの周長Wを被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも長く設定したため(W>M)、チューブ5を、被処理流体に含まれる固形物mの長さ寸法Mより大きな間隔寸法で配置することなく、被処理流体に含まれる固形物mの両端が隣接する2つのチューブ5内に跨る現象の発生を防ぐことができる。この結果、被処理流体に含まれる固形物mが管板3の円孔3aの周囲に付着して堆積することがなく、堆積した固形物mを清掃によって取り除く必要がない。このため、当該多管式熱交換器1のメンテナンスが容易化するとともに、固形物mの堆積による被処理流体の流量低下が防がれる。
【0030】
そして、本実施の形態では、図5に示すように、突起3Aを介して隣り合う2つのチューブ5間の間隔寸法Xを被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも短く設定したため(X<M)、隣接する2つのチューブ5のピッチ(軸中心管距離)P(図3及び図5参照)を変えることなく、被処理流体に含まれる固形物mの両端が、隣接する2つのチューブ5内に跨る現象の発生を防ぐことができる。このため、多管式熱交換器1の大型化やコストアップを招くことなく、簡単な構成で被処理流体に含まれる固形物mの管板3への付着による堆積を防ぐことができる。
【0031】
また、本実施の形態では、管板3の外面の各円孔3aの開口部周縁に沿って突設された突起3Aの内周面が反流入方向に向かって拡径(流入方向に向かって縮径)するテーパ平面を形成しているため、ヘッダ6から各チューブ5へと向かう被処理流体は、図1及び図5に矢印にて示すように、突起3Aによって絞られながら縮流となって各チューブ5に流入する。このため、各チューブ5へと流入する被処理流体の圧力損失が低く抑えられ、被処理流体の流量が不足するなどの不具合の発生が防がれる。
【0032】
さらに、本実施の形態では、図4に示すように、流入側の管板3の外面から溶接ビードaの流入側の端部までの距離Lを、被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも長く設定したため(L>M)、各チューブ5内に流入した固形物mが溶接ビードa(図4参照)に引っ掛かって堆積することがなく、各チューブ5の流路面積の減少によって被処理流体の流量不足の問題が発生することもない。
【0033】
なお、前述のように、突起3Aの縦断面形状を台形とした場合には、該突起3Aの内周面が流入方向に向かって縮径する漏斗状のテーパ平面を形成し、突起3Aの縦断面を半円形とした場合には、該突起3Aの内周面が流入方向に向かって縮径するベルマウス状のテーパ曲面(R曲面)を形成するため、これらの何れの場合においても、各チューブ5に流入する被処理流体は、絞られて縮流となるため、被処理流体の圧力損失が低く抑えられる。
【0034】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図6及び図7に基づいて以下に説明する。
【0035】
図6は本実施の形態に係る多管式熱交換器要部の縦断面図、図7図6のD部拡大詳細図であり、これらの図においては図1図5において示したものと同一要素には同一符号を付しており、以下、それらについての再度の説明は省略する。
【0036】
本実施の形態に係る多管式熱交換器においては、流入側の管板3に形成された円孔3aの開口部周縁に沿ってテーパ円孔状の座ぐり孔3cを形成することによって、図7に詳細に示すように、管板3の外面の隣接する2つのチューブ5(円孔3a)の間に縦断面が台形状の凸部3Bがそれぞれ形成されている。そして、管板3の各円孔3aの開口部周縁に形成されたテーパ円孔状(漏斗状)の座ぐり孔3cの内周面は、反流入方向(図6及び図7の左方)に向かって拡径する(流入方向に向かって縮径する)テーパ平面を形成している。なお、凸部3Bは、管板3に形成された円孔3aの開口部周縁を工具を用いて座ぐり加工することによって形成される。
【0037】
ここで、本実施の形態においても、図7に詳細に示すように、突部3Bの周長W、つまり、突部3Bの斜面の長さc,d,eを合計した値W=c+d+eは、被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも大きく設定されている(W>M)。
【0038】
また、突部3Bを介して隣り合う2つのチューブ5の間隔寸法Xは、被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも短く設定されている(X<M)。したがって、これらの長さWとX及びMとの間には、前記(1)式で表される大小関係が成立している。
【0039】
なお、他の構成は前記実施の形態1の構成と同じであるため、これについての図示及び説明は省略する。
【0040】
前述のように、本実施の形態においても、隣接する2つのチューブ5の間に形成された突部3Bの周長Wを被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも長く設定したため(W>M)、チューブ5を、被処理流体に含まれる固形物mの長さ寸法Mよりも大きな間隔寸法で配置することなく、被処理流体に含まれる固形物mの両端が隣接する2つのチューブ5内に跨る現象の発生を防ぐことができる。この結果、被処理流体に含まれる固形物mが管板3の円孔3aの周囲に付着して堆積することがなく、堆積した固形物mを清掃によって取り除く必要がなく、当該多管式熱交換器1のメンテナンスが容易化するとともに、固形物mの堆積による被処理流体の流量低下が防がれる。
【0041】
そして、本実施の形態においても、突部3Bを介して隣り合う2つのチューブ5間の間隔寸法Xを被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも短く設定したため(X<M)、チューブ5を、被処理流体に含まれる固形物mの長さ寸法Mよりも大きな間隔寸法で配置することなく、被処理流体に含まれる固形物mの両端が、隣接する2つの伝熱管5内に跨る現象の発生を防ぐことができる。このため、多管式熱交換器1の大型化やコストアップを招くことなく、簡単な構成で被処理流体に含まれる固形物mの管板3への付着による堆積を防ぐことができる。
【0042】
また、本実施の形態では、管板3の外面の各円孔3aの開口部周縁に沿って突設された突部3Bの内周面が反流入方向に向かって拡径(流入方向に向かって縮径)する漏斗状のテーパ平面を形成しているため、ヘッダ6から各チューブ5へと向かう被処理流体は、図7に矢印にて示すように、突部3Bによって絞られながら縮流となって各チューブ5に流入する。このため、各チューブ5へと流入する被処理流体の圧力損失が低く抑えられ、被処理流体の流量が不足するなどの不具合の発生が防がれる。
【0043】
さらに、本実施の形態においても、図4に示す構成が採用されている。すなわち、流入側の管板3の外面から溶接ビードaの流入側の端部までの距離Lを、被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも長く設定したため(L>M)、各チューブ5内に流入した固形物mが溶接ビードaに引っ掛かって堆積することがなく、各チューブ5の流路面積の減少によって被処理流体の流量不足の問題が発生することもない。
【0044】
次に、本実施の形態の変形例を図8に基づいて以下に説明する。
【0045】
図8は本実施の形態に係る多管式熱交換器の変形例を示す要部縦断面図(図7と同様の図)であり、本変形例においては、凸部3Cとして半径rの半円形の縦断面を有するものを採用している。なお、隣接する2つのチューブ5の間に縦断面半円形の凸部3Cを形成するには、管板3に形成された円孔3aの開口部周縁に座ぐり加工によってテーパ凹曲面状(R曲面状)の座ぐり孔3dを形成すれば良い。ここで、管板3に形成された円孔3aに被処理流体が流入する形状、つまり、座ぐり孔3dの内周面の形状は、反流入方向に向かって拡径する(流入方向に向かって縮径する)ベルマウス状の円弧曲面(R曲面)を形成している。
【0046】
ここで、本変形例においても、突部3Cの周長W(=π・r)は、被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも大きく設定されている(W>M)。
【0047】
また、突部3Cを介して隣り合う2つのチューブ5の間隔寸法Xは、被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも短く設定されている(X<M)。したがって、これらの長さWとX及びMとの間には次式にて表される大小関係が成立している。
【0048】
W>M>X …(2)
前述のように、本変形例においても、隣接する2つのチューブ5の間に突部3Cを形成し、この凸部3Cの周長Wを被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも長く設定したため(W>M)、チューブ5を、被処理流体に含まれる固形物mの長さ寸法Mよりも大きな間隔寸法で配置することなく、被処理流体に含まれる固形物mの両端が隣接する2つのチューブ5内に跨る現象の発生を防ぐことができる。この結果、被処理流体に含まれる固形物mが管板3の円孔3aの周囲に付着して堆積することがなく、堆積した固形物を清掃によって取り除く必要がなく、当該多管式熱交換器1のメンテナンスが容易化するとともに、固形物mの堆積による被処理流体の流量低下が防がれる。
【0049】
そして、本変形例においても、前述のように、突部3Cを介して隣り合う2つのチューブ5間の間隔寸法Xを被処理流体に含まれる固形物mの長さMよりも短く設定したため(X<M)、チューブ5を、被処理流体に含まれる固形物mの長さ寸法Mよりも大きな間隔寸法で配置することなく、被処理流体に含まれる固形物mの両端が、隣接する2つのチューブ5内に跨る現象の発生を防ぐことができる。このため、多管式熱交換器1の大型化やコストアップを招くことなく、簡単な構成で被処理流体に含まれる固形物mの管板3への付着による堆積を防ぐことができる。
【0050】
また、本変形例においても、管板3の外面の各円孔3aの開口部周縁に沿形成された座ぐり穴3dによって形成された凸部3Cの内周面が反流入方向に向かって拡径(流入方向に向かって縮径)するベルマウス状のテーパ曲面(R曲面)を形成しているため、各チューブ5へと向かう被処理流体は、図8に矢印にて示すように、突部3Cによって絞られながら縮流となって各チューブ5に流入する。このため、各チューブ5へと流入する被処理流体の圧力損失が低く抑えられ、被処理流体の流量が不足するなどの不具合の発生が防がれる。
【0051】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、多管式熱交換器1の大型化やコストアップを招くことなく、簡単な構成で被処理流体に含まれる固形物mの管板3への付着による堆積を防ぐことができるという効果が得られる。
【0052】
なお、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
1 多管式熱交換器
2 シェル(缶胴)
3,4 管板
3A 突起(凸部)
3B,3C 凸部
3a 円孔
3c,3d 座ぐり孔
5 チューブ(伝熱管)
L 管板の外面から伝熱管の接続部までの距離
M 固形物の長さ
m 固形物
P チューブのピッチ
S 密閉空間
W 凸部の周長
X 隣り合うチューブ間の間隔寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8