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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182786
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】蓄電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20221201BHJP
   H01M 50/627 20210101ALI20221201BHJP
   H01M 10/0585 20100101ALI20221201BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20221201BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20221201BHJP
【FI】
H01M10/04 Z
H01M50/627
H01M10/0585
H01M10/0566
H01M10/052
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090517
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】福田 敬志
(72)【発明者】
【氏名】村田 卓也
【テーマコード(参考)】
5H023
5H028
5H029
【Fターム(参考)】
5H023AA00
5H023AS02
5H023BB05
5H023BB10
5H023CC05
5H028AA07
5H028BB03
5H028CC07
5H028CC08
5H029AJ14
5H029BJ04
5H029CJ13
5H029DJ02
(57)【要約】
【課題】電解液の蓄電セルの外部への漏れが抑制される蓄電装置の製造方法を提供すること。
【解決手段】蓄電装置の製造方法は、枠状のスペーサ50の一部に筒状の連通部60が配置された蓄電セル10を準備する準備工程と、電解液を吐出する注液部材80が連通部60に挿入され、連通部60の外側から複数のクランプ部材90によって連通部60とともに注液部材80を把持し、連通部60の内周面と注液部材80の外周面との間を液密に封止した状態で、注液部材80から蓄電セル10の内部に電解液を注入する注液工程とを含む。注液工程では、注液部材80が、連通部60を介して、クランプ部材90の凹部92の内面にて保持され、注液部材80をその挿入方向に付勢することで、クランプ部材90の凹部92の内面と注液部材80の外周面とで連通部60を挟持して注液部材80から電解液を吐出させる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1集電体の片面に配置された第1活物質層を有する第1電極と、第2集電体の片面に配置された第2活物質層を有する第2電極とが、前記第1活物質層と前記第2活物質層とを対向させた状態で積層された電極積層体と、
前記電極積層体の前記第1集電体と前記第2集電体との間に、前記第1活物質層と前記第2活物質層の対向方向から見て前記第1活物質層及び前記第2活物質層を囲むように設けられた枠状のスペーサと、を備える蓄電セルを有する蓄電装置の製造方法であって、
前記スペーサの一部に筒状の連通部が配置された前記蓄電セルを準備する準備工程と、
電解液を吐出する注液部材が前記連通部に挿入され、前記連通部の外側から複数のクランプ部材によって前記連通部とともに前記注液部材を把持し、前記連通部の内周面と前記注液部材の外周面との間を液密に封止した状態で、前記注液部材から前記蓄電セルの内部に前記電解液を注入する注液工程と、を含み、
前記複数のクランプ部材の各々は、他の前記クランプ部材との対向面に合わせ部を有し、
前記複数のクランプ部材の少なくとも一つは、前記合わせ部から凹む凹部を有し、
全ての前記クランプ部材の前記対向面同士を近接させた状態で前記凹部によって形成されるクランプ用空間は、前記連通部に挿入された前記注液部材を保持可能な形状であり、
前記凹部は、前記クランプ部材の一面に開口する開口端を有するとともに、前記開口端側から前記開口端が設けられた前記一面と反対側の他面に向けて、前記クランプ用空間の断面積を漸減させる断面積漸減部位を含み、
前記準備工程では、前記連通部の軸線方向の第1端が前記蓄電セルの外部で開口し、かつ前記第1端と反対側の第2端が前記蓄電セルの内部で開口するように、前記対向方向から見て前記連通部が前記第1端側の一部を前記蓄電セルから外部に突出させた状態で前記スペーサに配置され、
前記注液工程では、前記蓄電セルが横置きされた状態で配置され、
全ての前記クランプ部材の互いの前記対向面を近接させることで、前記第1端の開口から前記連通部に挿入された前記注液部材が、前記連通部を介して、前記クランプ部材の前記断面積漸減部位にて保持され、
前記注液部材をその挿入方向に付勢することで、前記クランプ部材の前記断面積漸減部位の内面と前記注液部材の外周面とで前記連通部を挟持した状態で前記注液部材から前記電解液を吐出させる、ことを特徴とする蓄電装置の製造方法。
【請求項2】
前記クランプ用空間の軸線方向に直交する2つの方向に沿う寸法のうち、前記対向方向に沿う一方向の寸法を第1寸法、前記対向方向及び前記一方向に直交する他方向の寸法を第2寸法とした場合、
前記クランプ用空間は、前記クランプ部材の前記一面から前記他面に向かうに従い、前記第1寸法及び前記第2寸法の少なくとも1つが漸減している、請求項1に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項3】
前記クランプ用空間は、前記クランプ部材の前記一面から前記他面に向かうに従い、前記第1寸法及び前記第2寸法の両方が漸減している、請求項2に記載の蓄電装置の製造方法。
【請求項4】
前記注液部材は、前記電解液の吐出口が形成された先端に向けて先細りとなる筒状部を有しており、前記断面積漸減部位は、前記注液部材の前記筒状部の外周面に倣う形状に形成されている、請求項1に記載の蓄電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
蓄電装置として、例えば、特許文献1にリチウムイオン電池が記載されている。リチウムイオン電池は、2枚のアルミシートの外周部分を貼り合わせた構成の電池容器に電極板が収容されるとともに電解液が充填されて構成されている。また、電池容器は、2枚の電極と、2枚の電極の間に設けられたセパレータとから構成された電極板を収容する本体部と、該本体部より上方に突出するとともに開口部の形成された突出部とから構成されている。突出部の開口部にはキャップが装着されている。
【0003】
電池容器に電解液を充填するため、電池容器に負圧を供給する際、及び電池容器に電解液を充填する際、電池容器の開口部は気密状態とされる。具体的には、電池容器の開口部に電解液充填装置のノズルを挿入し、ノズルごと電池容器を両側から挟持手段で挟持することで電池容器が気密状態とされる。そして、電解液充填装置によって電池容器の内部が真空状態にされた後、電池容器の内部に電解液が供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-134631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リチウムイオン電池の高容量化を目的として、特許文献1に記載のリチウムイオン電池を大型化するような場合、その製造時においては、ハンドリングのし易さから、横置き、例えば、セパレータ、2枚の電極が略鉛直方向に積層された状態に配置することがある。このように横置き配置されたリチウムイオン電池に対して、特許文献1のように、電池容器の側面に配置された開口部にノズルを挿入して電解液を注入することがある。この場合、開口部とノズルとの間の液密が確保できていないと電池容器の内部に注入された電解液が開口部とノズルとの間から電池容器の外部に漏れる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する蓄電装置の製造方法は、第1集電体の片面に配置された第1活物質層を有する第1電極と、第2集電体の片面に配置された第2活物質層を有する第2電極とが、前記第1活物質層と前記第2活物質層とを対向させた状態で積層された電極積層体と、前記電極積層体の前記第1集電体と前記第2集電体との間に、前記第1活物質層と前記第2活物質層の対向方向から見て前記第1活物質層及び前記第2活物質層を囲むように設けられた枠状のスペーサと、を備える蓄電セルを有する蓄電装置の製造方法であって、前記スペーサの一部に筒状の連通部が配置された前記蓄電セルを準備する準備工程と、電解液を吐出する注液部材が前記連通部に挿入され、前記連通部の外側から複数のクランプ部材によって前記連通部とともに前記注液部材を把持し、前記連通部の内周面と前記注液部材の外周面との間を液密に封止した状態で、前記注液部材から前記蓄電セルの内部に前記電解液を注入する注液工程と、を含み、前記複数のクランプ部材の各々は、他の前記クランプ部材との対向面に合わせ部を有し、前記複数のクランプ部材の少なくとも一つは、前記合わせ部から凹む凹部を有し、全ての前記クランプ部材の前記対向面同士を近接させた状態で前記凹部によって形成されるクランプ用空間は、前記連通部に挿入された前記注液部材を保持可能な形状であり、前記凹部は、前記クランプ部材の一面に開口する開口端を有するとともに、前記開口端側から前記開口端が設けられた前記一面と反対側の他面に向けて、前記クランプ用空間の断面積を漸減させる断面積漸減部位を含み、前記準備工程では、前記連通部の軸線方向の第1端が前記蓄電セルの外部で開口し、かつ前記第1端と反対側の第2端が前記蓄電セルの内部で開口するように、前記対向方向から見て前記連通部が前記第1端側の一部を前記蓄電セルから外部に突出させた状態で前記スペーサに配置され、前記注液工程では、前記蓄電セルが横置きされた状態で配置され、全ての前記クランプ部材の互いの前記対向面を近接させることで、前記第1端の開口から前記連通部に挿入された前記注液部材が、前記連通部を介して、前記クランプ部材の前記断面積漸減部位にて保持され、前記注液部材をその挿入方向に付勢することで、前記クランプ部材の前記断面積漸減部位の内面と前記注液部材の外周面とで前記連通部を挟持した状態で前記注液部材から前記電解液を吐出させる、ことを要旨とする。
【0007】
これによれば、注液工程において、連通部を介して断面積漸減部位によって注液部材が保持されると、連通部には、連通部をクランプ部材と注液部材で挟みこむ力が発生する。このため、注液部材と連通部の液密性が向上し、横置きされた蓄電セルからの電解液の漏れが抑制される。
【0008】
蓄電装置の製造方法について、クランプ用空間の軸線方向に直交する2つの方向に沿う寸法のうち、対向方向に沿う一方向の寸法を第1寸法、対向方向及び一方向に直交する他方向の寸法を第2寸法とした場合、クランプ用空間は、クランプ部材の一面から他面に向かうに従い、第1寸法及び第2寸法の少なくとも1つが漸減している。
【0009】
これによれば、断面積漸減部位での内面を、連通部を介して注液部材の外周面に押し当てることができる。よって、注液部材と連通部の液密性が向上し、電解液の漏れが抑制される。
【0010】
蓄電装置の製造方法について、クランプ用空間は、クランプ部材の一面から他面に向かうに従い、第1寸法及び第2寸法の両方が漸減している。
これによれば、断面積漸減部位での内面を、連通部を介して注液部材の外周面に的確に押し当てることができる。よって、注液部材と連通部の液密性が向上し、電解液の漏れが抑制される。
【0011】
蓄電装置の製造方法について、注液部材は、電解液の吐出口が形成された先端に向けて先細りとなる筒状部を有しており、断面積漸減部位は、注液部材の筒状部の外周面に倣う形状に形成されている。
【0012】
これによれば、断面積漸減部位での内面を、連通部を介して注液部材の外周面に押し当てたとき、断面積漸減部位での内面を、連通部を介して注液部材の外周面に面接触させることができる。よって、注液部材と連通部の液密性が向上し、電解液の漏れが抑制される。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、電解液の蓄電セルの外部への漏れが抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】蓄電装置を示す断面図。
図2】積層工程における蓄電セルを示す断面図。
図3】連通部積層工程を示す分解斜視図。
図4】連通部積層工程を示す斜視図。
図5】注液工程を示す斜視図。
図6】注液工程を示す斜視図。
図7】注液工程を示す断面図。
図8】注液工程を示す断面図。
図9】変形例におけるクランプ部材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、蓄電装置の製造方法を具体化した一実施形態を図1図8にしたがって説明する。
図1に示すように、蓄電装置1は、セルスタック2と、セルスタック2を挟む第1通電板120及び第2通電板130と、を備えている。セルスタック2は、複数の蓄電セル10を積層して構成されている。したがって、蓄電装置1は複数の蓄電セル10を有する。セルスタック2では、複数の蓄電セル10は、鉛直方向Aに積層されている。鉛直方向Aにおいて蓄電セル10を外側から見ることを平面視と呼ぶ。
【0016】
蓄電セル10は、電極積層体110と、スペーサ50と、図示しない電解液と、を備えている。電極積層体110は、第1電極20と、第2電極30と、セパレータ40と、を備えている。第1電極20は正極であり、第2電極30は負極である。
【0017】
第1電極20は、第1集電体21と、第1集電体21の片面に配置された第1活物質層22と、を有する。第1電極20は、平面視で例えば矩形状である。第1集電体21は、平面視で例えば矩形状である。第1集電体21は、第1活物質層22を有する第1面21aと、第1面21aとは反対側に位置する第2面21bとを有している。第1集電体21は、外周端面21cを有する。第1集電体21は、平面視において、第1面21aにおける外周端面21c寄りに位置する外周縁部21dを有する。第1活物質層22は、平面視で例えば矩形状である。第1集電体21の第2面21bには、第1活物質層22は設けられていない。
【0018】
第2電極30は、第2集電体31と、第2集電体31の片面に配置された第2活物質層32と、を有する。第2電極30は、平面視で例えば矩形状である。第2集電体31は、平面視で例えば矩形状である。第2集電体31は、第2活物質層32を有する第1面31aと、第1面31aとは反対側に位置する第2面31bとを有している。第2集電体31は、外周端面31cを有する。第2集電体31は、平面視において、第1面31aにおける外周端面31c寄りに位置する外周縁部31dを有する。第2活物質層32は、平面視で例えば矩形状である。第2集電体31の第2面31bには、第2活物質層32は設けられていない。
【0019】
セパレータ40は、第1活物質層22と第2活物質層32との間に配置される。セパレータ40は、平面視で第1活物質層22及び第2活物質層32よりも大きい。セパレータ40は、第1活物質層22と第2活物質層32の接触による短絡を防止する。第1活物質層22と第2活物質層32は、セパレータ40を介して対向する。よって、電極積層体110では、第1電極20と第2電極30とが、セパレータ40を介して第1活物質層22と第2活物質層32とを対向させた状態で積層されている。本実施形態では、第1活物質層22と第2活物質層32とが対向する対向方向は鉛直方向Aに一致する。したがって、蓄電セル10の平面視は、蓄電セル10を対向方向に沿って見ることでもある。
【0020】
スペーサ50は、第1集電体21の外周縁部21dと第2集電体31の外周縁部31dとの間に位置する。スペーサ50は、絶縁材料を含み、第1集電体21と第2集電体31とを絶縁することにより第1集電体21と第2集電体31との短絡を防止する。本実施形態では、スペーサ50の材料は、酸変性ポリエチレンである。なお、スペーサ50の材料としては、酸変性ポリエチレン以外にも、例えば、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、変性ポリプロピレン、ABS樹脂、及びAS樹脂等の種々の樹脂材料を用いることができる。
【0021】
スペーサ50は、電極積層体110の第1集電体21と第2集電体31との間に介在している。スペーサ50は、第1活物質層22と第2活物質層32の対向方向から見て、つまり、平面視において第1活物質層22及び第2活物質層32を取り囲むように設けられている。スペーサ50は、第1活物質層22及び第2活物質層32を囲む枠状をなしている。スペーサ50は、平面視で矩形枠状をなしている。
【0022】
スペーサ50は、第1集電体21の外周縁部21dと第2集電体31の外周縁部31dとの間に挟まれている部分と、第1集電体21の外周端面21c及び第2集電体31の外周端面31cよりも外側に位置する部分とを有している。
【0023】
蓄電セル10の内部には、第1集電体21、第2集電体31、及びスペーサ50により区画された空間Fが形成されている。空間Fには電解液が収容される。スペーサ50によって、第1電極20と第2電極30との間に電解液が封入される。なお、セパレータ40は、平面視において、セパレータ40の周縁が矩形枠状のスペーサ50に重複するように配置されている。そして、セパレータ40は、その周縁が、スペーサ50に保持されている。
【0024】
スペーサ50は、第1集電体21及び第2集電体31とともに空間F内に電解液を封止しており、空間Fに収容された電解液の空間Fの外部への漏出を抑制する。また、スペーサ50は、蓄電セル10の外部から空間F内への水分の侵入を抑制する。
【0025】
セルスタック2において、複数の蓄電セル10は、鉛直方向Aに隣り合う一方の蓄電セル10の第1集電体21の第2面21bと、他方の蓄電セル10の第2集電体31の第2面31bとが互いに接触するように積層されている。セルスタック2では、鉛直方向Aに隣り合う一方の蓄電セル10の第1集電体21の第2面21bと、他方の蓄電セル10の第2集電体31の第2面31bとの接触により、鉛直方向Aに隣り合う蓄電セル10同士が電気的に接続されている。
【0026】
セルスタック2は、バイポーラ電極13を備えている。セルスタック2においては、鉛直方向Aに隣り合う2つの蓄電セル10の互いに接触する第1集電体21及び第2集電体31により、その第1集電体21及び第2集電体31を一つの集電体とみなした疑似的なバイポーラ電極13が形成されている。擬似的なバイポーラ電極13は、第1集電体21、第2集電体31、第1活物質層22、及び第2活物質層32を含む。
【0027】
スペーサ50において、平面視で第1集電体21の外周端面21c及び第2集電体31の外周端面31cよりも外側に位置する部分は、互いに接合されて一体化している。これにより、蓄電装置1として、バイポーラ電極13を構成している第1集電体21の第2面21bと第2集電体31の第2面31bとの間のシール性が確保される。
【0028】
セルスタック2における鉛直方向Aの第1端部11には、終端電極として第1集電体21と第1活物質層22が配置される。セルスタック2における鉛直方向Aの第2端部12には、終端電極として第2集電体31と第2活物質層32が配置される。第1通電板120及び第2通電板130は、それぞれ導電性材料で構成される。
【0029】
第1通電板120は、第1端部11に配置された終端電極の第1集電体21の第2面21bに電気的に接続されている。第2通電板130は、第2端部12に配置された終端電極の第2集電体31の第2面31bに電気的に接続されている。第1通電板120及び第2通電板130に設けられた図示しない端子を通じて蓄電装置1の充放電が行われる。
【0030】
次に、蓄電装置1の製造方法を説明する。
蓄電装置1の製造方法は、電解液を注入する前の蓄電セル10の空間Fへ電解液を注入して蓄電セル10を有する蓄電装置1を製造する方法である。
【0031】
図5に示すように、蓄電セル10は、第1電極20と、第2電極30と、図5に図示しないセパレータ40と、スペーサ50と、図5に図示しない空間Fとを備えている。後述する準備工程S10後で注液工程S20前の状態において、蓄電セル10の内部である空間Fには、電解液が注入されていない。蓄電装置1の製造方法は、スペーサ50の一部に筒状の連通部60が配置された蓄電セル10を準備する準備工程S10と、蓄電セル10の内部である空間Fに電解液を注入する注液工程S20と、を含む。
【0032】
準備工程S10は、積層工程S11と、連通部積層工程S12とを有する。
まず、積層工程S11を説明する。
図2に示すように、積層工程S11は、第1電極20と、第1スペーサ構成体501と、セパレータ40と、第2スペーサ構成体502とを積層する工程である。
【0033】
積層工程S11では、作業台Dの載置面Daに、第1集電体21の第2面21bが接触するように第1電極20を積層する。次に、平面視で第1集電体21の外周縁部21dに重複するように第1スペーサ構成体501を第1集電体21に積層する。平面視で、第1スペーサ構成体501は第1活物質層22を囲む枠状をなしている。
【0034】
平面視において、第1スペーサ構成体501の内周縁と外周縁の最短距離を、第1スペーサ構成体501の幅W1とする。第1スペーサ構成体501の幅W1は、第1スペーサ構成体501の四つの辺で全て同じである。
【0035】
第1スペーサ構成体501の下面501bは、第1集電体21の外周縁部21dに接触する。次に、平面視で、セパレータ40を、第1活物質層22の全体を覆うとともに、セパレータ40の周縁が第1スペーサ構成体501の上面501aに重複するように配置する。セパレータ40は、当該セパレータ40の周縁の下面が第1スペーサ構成体501の上面501aに接触するように積層される。
【0036】
次に、セパレータ40の上面に第2スペーサ構成体502を積層する。平面視で、第2スペーサ構成体502の周縁がセパレータ40に重複するように配置する。第2スペーサ構成体502は、当該第2スペーサ構成体502の下面502bがセパレータ40の上面の周縁に接触するように、第2スペーサ構成体502をセパレータ40の上面に積層する。
【0037】
図3又は図4に示すように、連通部積層工程S12では、第2スペーサ構成体502の上面502aに連通部60を積層するとともに、連通部60の上面にシール部材70を積層する。平面視において、第2スペーサ構成体502の内周縁と外周縁の最短距離を、第2スペーサ構成体502の幅W2とする。本実施形態において、第2スペーサ構成体502の幅W2は、第2スペーサ構成体502の四つの辺で全て同じである。
【0038】
連通部60は、2枚の長四角状のフィルムシート601a,601bを接合して筒状に形成されている。フィルムシート601a,601bは、絶縁材料であればよく、本実施形態では酸変性ポリエチレンによって形成されている。連通部60は、重ね合わせた2枚のフィルムシート601a,601bの長縁部同士を接合して形成されている。フィルムシート601a,601b同士の接合は、熱溶着されていることが好ましいが、接着剤による接着でもよい。
【0039】
連通部60の長縁部の長さは、第2スペーサ構成体502の幅W2より長い。連通部60の短縁部同士は接合されず、連通部60の長縁部が延びる方向である長辺方向の両端に、連通部60は開口している。連通部60の中心軸線Mの延びる方向を連通部60の軸線方向Qとする。連通部60は、軸線方向Qの第1端及び第2端に開口する。連通部60の軸線方向Qの一端である第1端を第1開口部62とする。連通部60の軸線方向Qの他端である第2端を第2開口部63とする。
【0040】
シール部材70は、長四角状のフィルムから構成される。シール部材70は、絶縁材料であればよく、本実施形態では酸変性ポリエチレンによって形成されている。シール部材70の長縁部の長さは、連通部60の短縁部の長さより長い。また、シール部材70の短縁部の長さは、第2スペーサ構成体502の幅W2と同じである。
【0041】
連通部積層工程S12では、連通部60の軸線方向Qが第2スペーサ構成体502の幅方向に平行となるように、連通部60を第2スペーサ構成体502の上面502aに積層する。このとき、連通部60の第2開口部63側の短縁部が第2スペーサ構成体502の内周縁に沿うように、連通部60を第2スペーサ構成体502の上面502aに積層する。
【0042】
連通部60の長縁部の長さは、第2スペーサ構成体502の幅W2より長い。このため、平面視で、連通部60は第2スペーサ構成体502の外周縁よりも外側に突出する部分を有する。また、平面視で、連通部60の第2開口部63は第2スペーサ構成体502の内周縁より内側又は揃うように開口し、第1開口部62は第2スペーサ構成体502の外周縁より外側で開口する。
【0043】
シール部材70は、連通部60を上面から覆い、かつ第2スペーサ構成体502の上面502aにも接触するようにして、連通部60の上面に配置される。
図4に示すように、シール部材70は、連通部60を介さずに第2スペーサ構成体502の上面502aと接触する接触部Bを有する。この接触部Bは、平面視で、連通部60を短辺方向の両側に挟んで存在する。また、平面視で、連通部60及び第2スペーサ構成体502と重複する領域において、シール部材70は、連通部60と接触しており、第2スペーサ構成体502の上面502aは連通部60の下面に接触している。平面視で、第2スペーサ構成体502の外周縁よりも外側に位置する連通部60において、シール部材70は存在しない。
【0044】
連通部60とシール部材70は予め接合されていてもよい。連通部60とシール部材70が接合されている場合、連通部60とシール部材70は熱溶着されていることが好ましいが、接着剤によって接着されていてもよい。連通部60とシール部材70を熱溶着する場合、連通部60の第1開口部62と第2開口部63との連通を維持するため、連通部60の内部に図示しない治具を挿入した状態で熱溶着を行う。治具の材料は、熱溶着の温度では溶融しない材料であればよい。治具は、平面視において連通部60の第1開口部62から第2開口部63に渡って連通部60の内部を貫通して挿入されている。熱溶着後、治具は連通部60の内部から除去される。
【0045】
図5に示すように、連通部積層工程S12の後、連通部60及びシール部材70の上方に第2電極30を積層する。詳細には、第2スペーサ構成体502の上面502a及びシール部材70の上面に、第2集電体31の外周縁部31dが重複するよう第2電極30を積層する。第2電極30は、第2集電体31の外周縁部31dの下面が第2スペーサ構成体502の上面502a及びシール部材70の上面に接触するように積層する。すると、第1スペーサ構成体501と第2スペーサ構成体502の枠内に、第1活物質層22と第2活物質層32とがセパレータ40を介して対向配置される。
【0046】
そして、第1集電体21、第1スペーサ構成体501、セパレータ40、第2スペーサ構成体502、及び第2集電体31の4つの縁部のうち、連通部60を設けた1つの縁部は、連通部60に治具を挿入したまま加熱される。具体的には、それら第1集電体21、第1スペーサ構成体501、セパレータ40、第2スペーサ構成体502、及び第2集電体31が全て鉛直方向Aから加熱される。
【0047】
第1集電体21、第1スペーサ構成体501、セパレータ40、第2スペーサ構成体502、及び第2集電体31の4つの縁部のうち、連通部60を設けていない3つの縁部においては治具を用いずにそのまま加熱される。具体的には、それら第1集電体21、第1スペーサ構成体501、セパレータ40、第2スペーサ構成体502、及び第2集電体31が全て鉛直方向Aから加熱される。すると、第1集電体21の外周縁部21dと第1スペーサ構成体501とが接合されるとともに、第2集電体31の外周縁部31dと第2スペーサ構成体502とが接合される。また、第1スペーサ構成体501と、第2スペーサ構成体502も接合され、スペーサ50が形成される。更に、セパレータ40と第1スペーサ構成体501、及びセパレータ40と第2スペーサ構成体502も接合され、蓄電セル10が製造される。
【0048】
この時、シール部材70の上面と第2集電体31の外周縁部31dとが接合される。また、シール部材70の下面は、接触部Bにおいて、第2スペーサ構成体502の上面502aと接合される。シール部材70の下面は、接触部B以外において、連通部60の上面と接合される。
【0049】
これにより、シール部材70の上面と第2集電体31の外周縁部31dとの間が液密に封止される。また、シール部材70の下面と第2スペーサ構成体502の上面502a及び連通部60の上面との間が液密に封止される。これにより、蓄電セル10の内部からの液漏れが防止できる。各接合は、熱溶着が好ましいが、接着剤による接着でもよい。
【0050】
この時、蓄電セル10に連通部60が積層され、スペーサ50の一部に連通部60が配置された蓄電セル10が準備されるとともに、準備工程S10が完了する。したがって、準備工程S10では、連通部60の第1開口部62が蓄電セル10の外部で開口し、かつ第1開口部62と反対側の第2開口部63が蓄電セル10の内部で開口するように連通部60がスペーサ50に配置される。詳細には、鉛直方向Aから見て、連通部60が第1開口部62側の一部を蓄電セル10から外部に突出させた状態で連通部60が配置される。準備工程S10が完了すると、蓄電セル10は、電極積層体110の対向方向が鉛直方向Aと一致するように作業台Dの載置面Daに横置きされる。
【0051】
図5に示すように、後述する注液工程S20において、注液部材80が連通部60の内部に挿入されることとなる。注液部材80は、平面視で連通部60のスペーサ50から外側へ突出している部分に挿入されることとなる。
【0052】
注液部材80は、先端に向けて先細りとなる筒状部81を有する形状である。注液部材80の先端面82は、吐出口83を囲む環状面である。注液部材80を先端面82から見て、筒状部81は楕円筒状である。筒状部81は、短軸方向に沿う第1寸法及び長軸方向に沿う第2寸法の両方が筒状部81の先端に向かうに従い漸減する形状である。注液部材80の材料は、電解液に対する耐液性と、後述する注液部材80をクランプ部材90で把持する際の耐圧性を担保できる材料であればよい。注液部材80の材料は、例えばSUSが挙げられる。
【0053】
注液部材80の筒状部81の短軸方向の厚みは、蓄電セル10の対向方向への寸法と同等であると好ましい。
注液部材80は、筒状部81が連通部60の第1開口部62から連通部60の内部に挿入され、吐出口83は、連通部60の内部に配置されることとなる。吐出口83が、蓄電セル10の空間Fに向けて開口するように連通部60の内部に配置されることとなる。
【0054】
また、図6に示すように、後述する注液工程S20において、連通部60が2つのクランプ部材90によって把持されることとなる。2つのクランプ部材90は、平面視で、連通部60のスペーサ50から突出している部分を把持することとなる。クランプ部材90は、略直方体状である。また、クランプ部材90は、平面視で例えば矩形状である。クランプ部材90は、クランプ部材90の一つの面である第1面90aに合わせ部91を有する。合わせ部91は、2つのクランプ部材90によって連通部60を把持した時に、他のクランプ部材90との対向面に設けられている。即ち、第1面90aが対向面となる。凹部92は、合わせ部91から凹むように設けられる。
【0055】
凹部92の形状は、図6において、半楕円錐台である。クランプ部材90は、第1面90aに直交する四つの側面のうちの一つに第2面90bを有する。第2面90bには、楕円に近い円弧状の第1開口端93が形成されている。また、クランプ部材90は、第1面90aに直交する四つの側面のうち第2面90bと反対側の面に第3面90cを有する。クランプ部材90において、第2面90bと第3面90cを最短距離で結ぶ軸線Nの延びる方向を軸線方向Pとする。第3面90cには、楕円に近い円弧状の第2開口端94が形成されている。したがって、凹部92は、クランプ部材90の一面としての第2面90bに開口する第1開口端93を有するとともに、他面としての第3面90cに開口する第2開口端94を有する。第1開口端93の円弧の長さは、第2開口端94の円弧の長さより長い。凹部92は、第1開口端93の円弧と第2開口端94の円弧を軸線方向Pに結ぶことで区画される空間である。
【0056】
クランプ部材90の軸線方向P及び第1面90aに直交する面での凹部92の断面積は、第1開口端93から第2開口端94に向かうに従い漸減している。即ち、クランプ部材90の軸線方向P及び第1面90aに直交する面での凹部92の断面積は、第2面90bから第3面90cに向けて漸減している。凹部92の全体が断面積漸減部位である。
【0057】
クランプ部材90の材料は、注液部材80を把持する際の圧力を一定に担保できる材料であればよい。クランプ部材90の材料は、例えばSUSが挙げられる。
図7に示すように、一対のクランプ部材90は鉛直方向Aに沿って連通部60を把持する。この時、図8に示すように、クランプ部材90同士は、連通部60を介して対向面である第1面90a同士が対向させられる。
【0058】
また、クランプ部材90は、連通部60の第1開口部62側にクランプ部材90の第2面90bが位置するように蓄電セル10に向けて配置される。クランプ部材90は、連通部60の第2開口部63側にクランプ部材90の第3面90cが位置するように配置される。即ち、連通部60の第1開口部62側では、クランプ部材90の第2面90bに設けられた第1開口端93同士が連通部60を挟んで向き合わせられる。
【0059】
また、連通部60の第2開口部63側では、クランプ部材90の第3面90cに設けられた第2開口端94同士が連通部60を挟んで向き合わせられる。クランプ部材90同士が連通部60を介して向き合わせられることで、互いの凹部92によりクランプ用空間Uが形成される。クランプ用空間Uは、2つのクランプ部材90の第1面90a同士を近接させた状態で凹部92によって形成される。クランプ用空間Uの軸線方向は、クランプ部材90の軸線方向Pと一致する。
【0060】
クランプ用空間Uは、軸線方向の一端に第1空間端100を有し、他端に第2空間端101を有する。第1空間端100は、クランプ部材90の第1開口端93同士の間に形成される。第2空間端101は、クランプ部材90の第2開口端94同士の間に形成される。
【0061】
クランプ用空間Uにおいて、クランプ用空間Uの軸線方向に直交する2つ方向に沿う寸法のうち、鉛直方向Aに沿う一方向の寸法を第1寸法Sとする。クランプ用空間Uの軸線方向に直交する2つ方向に沿う寸法のうち、鉛直方向A及び一方向に直交する他方向の寸法を第2寸法Tとする。第1寸法S及び第2寸法Tは、共に第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。
【0062】
即ち、第1寸法S及び第2寸法Tは、クランプ部材90の第2面90bからクランプ部材90の第3面90cに向けて漸減している。クランプ用空間Uの断面積も第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。即ち、クランプ用空間Uの断面積は、クランプ部材90の第2面90bからクランプ部材90の第3面90cに向けて漸減している。したがって、凹部92は、第1開口端93側の第2面90bから第3面90cに向けて、クランプ用空間Uを漸減させるといえる。クランプ用空間Uの形状は、楕円錐台となる。クランプ用空間Uは、連通部60に挿入された注液部材80を保持可能な形状である。
【0063】
次に、図7を参照して、注液工程S20について説明する。
注液工程S20は、注液部材80の先端面82に開口する吐出口83から電解液を吐出させて蓄電セル10に注入する工程である。なお、注液部材80は、図示しない吐出装置を備え、吐出装置によって吐出された電解液が注液部材80から吐出される。
【0064】
注液工程S20では、注液部材80を連通部60の第1開口部62から連通部60に挿入し、注液部材80をその挿入方向に付勢した状態で、2つのクランプ部材90の第1面90aを近接させる。2つのクランプ部材90の互いの第1面90aを近接させることで、第1開口部62から連通部60に挿入された注液部材80が、連通部60を介して、クランプ部材90の断面積漸減部位である凹部92にて保持される。
【0065】
詳細には、連通部60の外側から2つのクランプ部材90によって連通部60とともに注液部材80を把持する。すると、2つの凹部92によって連通部60を介して注液部材80が保持される。これにより連通部60の内周面と注液部材80の外周面との間が液密に封止された状態となる。
【0066】
したがって、注液工程S20では、注液部材80が連通部60に挿入され、連通部60の外側から2つのクランプ部材90によって連通部60とともに注液部材80を把持する。そして、注液工程S20では、連通部60の内周面と注液部材80の外周面との間を液密に封止した状態で、注液部材80から蓄電セル10の内部に電解液が注入される。つまり、注液部材80をその挿入方向に付勢することで、クランプ部材90の凹部92の内面と注液部材80の外周面とで連通部60を挟持した状態とし、注液部材80から電解液を吐出させる。
【0067】
なお、本実施形態の注液工程S20において、注液部材80が連通部60に挿入されるタイミングと、連通部60が外側からクランプ部材90によって把持されるタイミングは同時である。なお、少なくとも注液部材80が連通部60に挿入される前に、連通部60を外側からクランプ部材90によって支持しているのが好ましい。
【0068】
図8に示すように、クランプ用空間Uの内周面、つまり凹部92の内面に連通部60の外周面が接触した状態となる。かつ、連通部60の内周面に注液部材80の外周面が接触した状態となる。つまり、第1開口部62から連通部60に挿入された注液部材80が、連通部60を介してクランプ用空間Uにて収容されるとともに連通部60を介して2つのクランプ部材90に保持される。
【0069】
即ち、連通部60は、クランプ部材90と注液部材80に挟持された状態となる。一対のクランプ部材90によって連通部60が保持される時、クランプ用空間Uは、軸線方向における断面図において連通部60を囲む。クランプ用空間Uは、第1空間端100から第2空間端101に向けて断面積が漸減している。また、注液部材80は、クランプ用空間Uの第1空間端100から第2空間端101に向けて挿入されるため、クランプ用空間Uの断面積が漸減する方向に沿って挿入されることとなる。
【0070】
注液工程S20において、注液部材80が連通部60に挿入された状態で、2つのクランプ部材90の第1面90aを近接させると、連通部60及び注液部材80には、保持に伴うクランプ部材90の鉛直方向Aへの押付荷重が発生する。また、連通部60とクランプ部材90には、注液部材80の挿入方向への付勢力が作用する。
【0071】
クランプ部材90の鉛直方向Aへの押付荷重は、クランプ部材90と注液部材80とで連通部60を挟み込む力と、連通部60を、連通部60とクランプ部材90との接触方向に押し込む力に分解される。
【0072】
注液部材80の挿入方向への付勢力は、注液部材80とクランプ部材90とで連通部60を挟み込む力と、連通部60を、連通部60と注液部材80との接触方向に押し込む力に分解される。そして、規定量の電解液が蓄電セル10の空間Fに注入されると、第1活物質層22及び第2活物質層32に電解液が含浸され、蓄電セル10が製造される。
【0073】
蓄電装置1の製造方法は、連通部60を封止する封止工程S30を有していてもよい。
封止工程S30について説明する。連通部60の第1開口部62を封止することで封止工程S30が完了する。具体的には、第1開口部62における2枚のフィルムシート601a,601bを接合して封止する。接合は、熱溶着されていることが好ましいが、接着剤によって接着されていてもよい。
【0074】
上記の工程を経て製造された蓄電セル10の複数が、鉛直方向Aに積層されることで、セルスタック2が構成される。セルスタック2における鉛直方向Aの第1端部11には、終端電極として第1集電体21と第1活物質層22が配置される。蓄電装置1における鉛直方向Aの第2端部12には、終端電極として第2集電体31と第2活物質層32が配置される。更に、鉛直方向Aにおいて、セルスタック2を挟むように第1通電板120及び第2通電板130が配置される。即ち、第1通電板120は、第1端部11において最も外側に配置された第1集電体21の第2面21bに電気的に接続される。第2通電板130は、第2端部12において最も外側に配置された第2集電体31の第2面31bに電気的に接続される。これにより蓄電装置1が構成される。
【0075】
本実施形態の効果を説明する。
(1)蓄電装置1の製造方法において、注液工程S20で注液部材80が連通部60に挿入された状態で、2つのクランプ部材90の第1面90aを近接させ、連通部60を介して凹部92の内面によって注液部材80を保持した。すると、クランプ部材90の鉛直方向Aへの押付荷重の力と注液部材80の挿入方向への付勢力は、それぞれ分解され、注液部材80とクランプ部材90が連通部60を挟み込む力が発生する。この力により、注液部材80と連通部60の液密性が向上し、蓄電セル10からの電解液の漏れが抑制される。
【0076】
(2)蓄電装置1の製造方法において、第1寸法S及び第2寸法Tが、第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。これにより、クランプ用空間Uの断面積も第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。このため、凹部92の内面を、連通部60を介して注液部材80の外周面に押し当てることができる。よって、注液部材80と連通部60の液密性が向上し、電解液の漏れが抑制される。
【0077】
(3)蓄電装置1の製造方法において、第1寸法S及び第2寸法Tの両方が、第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。これにより、クランプ用空間Uの断面積も第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。これにより、凹部92の内面を、連通部60を介して注液部材80の外周面に的確に押し当てることができる。よって、注液部材80と連通部60の液密性が向上し、電解液の漏れが抑制される。
【0078】
(4)蓄電装置1の製造方法において、注液部材80は、電解液の吐出口83が形成された先端に向けて先細りとなる筒状部81を有する。筒状部81は第1寸法S及び第2寸法Tが先端に向けて漸減する。また、クランプ用空間Uは、第1空間端100から第2空間端101に向けて断面積が漸減している。したがって、凹部92の内面は筒状部81の外周面に倣う形状である。これによれば、凹部92での内面を、連通部60を介して注液部材80の外周面に押し当てたとき、凹部92での内面を、連通部60を介して注液部材80の外周面に面接触させることができる。よって、注液部材80と連通部60の液密性が向上し、電解液の漏れが抑制される。
【0079】
(5)連通部60の長縁部の長さは、第2スペーサ構成体502の幅W2より長い。このため、連通部60の第2開口部63側の短縁部が第2スペーサ構成体502の内周縁に沿うように連通部60を上面502aに配置したとき、平面視で、連通部60は第2スペーサ構成体502の外周縁よりも外側に突出する部分を有する。そして、クランプ部材90は、平面視で、連通部60のスペーサ50から突出している部分を把持する。このため、クランプ部材90の把持の影響を第2スペーサ構成体502が受けることを抑制できる。また、封止工程S30で連通部60の第1開口部62を熱溶着によって封止する際、第2スペーサ構成体502への熱影響を抑制できる。
【0080】
(6)シール部材70の短縁部の長さは、第2スペーサ構成体502の幅W2と同じである。これにより、シール部材70を第2スペーサ構成体502に配置する時、シール部材70の一方の長縁部と第2スペーサ構成体502の内周縁、及びシール部材70の他方の長縁部と第2スペーサ構成体502の外周縁を位置合わせできる。このため、シール部材70を第2スペーサ構成体502に配置する作業が行いやすい。
【0081】
なお、本実施形態は、以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
○本実施形態では、蓄電セル10の1つずつに電解液を注入して蓄電セル10を製造した後、複数の蓄電セル10を積層してセルスタック2としたが、これに限らない。準備工程S10が完了した後、複数の蓄電セル10を積層し、注液工程S20では、複数の蓄電セル10に対して同時に電解液を注入する。そして、複数の蓄電セル10を同時に製造しつつセルスタック2を製造してもよい。この場合、蓄電セル10の各連通部60は鉛直方向Aに重なる位置に配置されていてもよく、重ならない位置に配置されていてもよい。
【0082】
○注液部材80は、先細りとなる筒状部81を先端部だけに有していなくてもよい。注液部材80は、全体が先細りとなる筒状部81であってもよいし、注液部材80の軸線方向の途中の一部に筒状部81を有していてもよい。要は、クランプ部材90の凹部92で保持される部位に筒状部81を有していれば、注液部材80の軸線方向への形状は変更してもよい。
【0083】
○クランプ部材90の第2面90b及び第3面90cには、長方形状の第1開口端93及び第2開口端94が形成されていてもよい。第1開口端93の長方形の長辺の方向と第2開口端94の長方形の長辺の方向は一致する。また、第1開口端93の長方形の短辺の方向と第2開口端94の長方形の短辺の方向も一致する。凹部92は、第1開口端93の長方形と、第2開口端94の長方形とを軸線方向Pに結ぶことで区画される空間である。
【0084】
第1開口端93の長方形の長辺は、第2開口端94の長方形の長辺よりも長い。また、第1開口端93の長方形の短辺は、第2開口端94の長方形の短辺よりも長い。したがって、クランプ部材90の軸線方向P及び第1面90aに直交する面での凹部92の断面積は、第1開口端93から第2開口端94に向かうに従い漸減している。即ち、クランプ部材90の軸線方向P及び第1面90aに直交する面での凹部92の断面積は、第2面90bから第3面90cに向けて漸減している。凹部92の形状は、四角錐台となる。
【0085】
上記凹部92の形状を持った一対のクランプ部材90により、鉛直方向Aに沿って連通部60を把持する時、クランプ部材90の第1開口端93と第2開口端94の長方形の短辺は、鉛直方向Aと一致する。よって、一対のクランプ部材90の第1開口端93同士及び第2開口端94同士の間に形成されるクランプ用空間Uの第1空間端100及び第2空間端101において、第1開口端93と第2開口端94の長方形の短辺方向の寸法の和が第1寸法Sとなる。
【0086】
一対のクランプ部材90の第1開口端93同士及び第2開口端94同士の間に形成されるクランプ用空間Uの第1空間端100及び第2空間端101において、第1開口端93と第2開口端94の長方形の長辺方向の寸法が第2寸法Tとなる。
【0087】
第1寸法S及び第2寸法Tは、共に第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。即ち、第1寸法S及び第2寸法Tは、クランプ部材90の第2面90bからクランプ部材90の第3面90cに向けて漸減している。クランプ用空間Uの断面積も第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。即ち、クランプ用空間Uの断面積は、クランプ部材90の第2面90bから第3面90cに向けて漸減している。クランプ用空間Uの形状は、四角錐台となる。
【0088】
○上記の形態において、クランプ部材90の第3面90cには、第2開口端94が形成されていなくてもよい。即ち、一対のクランプ部材90の両方において、クランプ部材90の第3面90cには第2開口端94が形成されていなくてもいい。また、一対のクランプ部材90の片方において、クランプ部材90の第3面90cには第2開口端94が形成されていなくてもいい。
【0089】
○上記の形態において、第1開口端93の長方形の長辺のうち一辺は、第1面90aと第2面90bが共有する稜上に配置されていてもよい。第2開口端94の長方形の長辺のうち一辺は、第1面90aと第3面90cが共有する稜上に配置されていてもよい。第1開口端93の長方形の短辺のうち一辺は、第1面90aと第2面90bが共有する稜上に配置されていてもよい。第2開口端94の長方形の短辺のうち一辺は、第1面90aと第3面90cが共有する稜上に配置されていてもよい。
【0090】
○クランプ部材90は、図9の形態をとってもよい。クランプ部材90の第2面90bには、楕円に近い円弧状の第1開口端93が形成されている。また、クランプ部材90の第2面90bと反対側の面であるクランプ部材90の第3面90cには、楕円に近い円弧状の第2開口端94が形成されている。第1開口端93の円弧の長さは、第2開口端94の円弧の長さより長い。凹部92は、第1開口端93の円弧と、第2開口端94の円弧とをクランプ部材90の軸線方向Pに結ぶことで区画される空間である。
【0091】
したがって、クランプ部材90の軸線方向P及び第1面90aに直交する面での凹部92の断面積は、第1開口端93から第2開口端94に向かうに従い漸減している。即ち、クランプ部材90の軸線方向P及び第1面90aに直交する面での凹部92の断面積は、第2面90bから第3面90cに向けて漸減している。凹部92の全体が断面積漸減部位である。
【0092】
クランプ部材90の互いの凹部92により形成されたクランプ用空間Uにおいて、第1寸法Sは第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。一方、第2寸法Tは、クランプ部材90の第2面90bからクランプ部材90の第3面90cに向けて漸減していない。クランプ用空間Uの断面積も第1空間端100から第2空間端101に向けて漸減している。即ち、クランプ用空間Uの断面積は、クランプ部材90の第2面90bからクランプ部材90の第3面90cに向けて漸減している。クランプ用空間Uの形状は、半楕円錐台となる。
【0093】
○第2スペーサ構成体502の上面502aに対して、連通部60とシール部材70が予め接合されていてもよい。この場合、準備工程S10では、連通部積層工程S12は省略され、準備工程S10は、積層工程S11のみを有する。
【0094】
なお、第2スペーサ構成体502の上面502aに対して、連通部60とシール部材70が接合されている場合、これらは熱溶着されていることが好ましいが、接着剤によって接着されていてもよい。第2スペーサ構成体502の上面502aに対して、連通部60とシール部材70を熱溶着する場合、連通部60の第1開口部62と第2開口部63の連通を維持するため、連通部60の内部に図示しない治具を挿入した状態で熱溶着を行う。
【0095】
このとき、第2スペーサ構成体502の上面502aと連通部60の下面とは接合によって液密に封止され、第2スペーサ構成体502の上面502aとシール部材70の下面とは接合によって液密に封止されている。また、シール部材70の下面と連通部60の上面とは接合によって液密に封止されている。
【0096】
○本実施形態において、連通部60は、2枚の長四角状のフィルムシート601a,601bから構成されていなくてもよく、例えば、二か所開口部を持つ筒状であってもよい。
【0097】
○本実施形態において、シール部材70はなくてもよい。この場合、連通部60の下面は第2スペーサ構成体502の上面502aに積層され、連通部60の上面に第2電極30が積層される。連通部60の材料は、酸変性ポリエチレンであることが好ましい。この時、連通部60の下面と第2スペーサ構成体502の上面502a、連通部60の上面と第2電極30は、予め接合されていてもよい。連通部60の下面と第2スペーサ構成体502の上面502a、及び連通部60の上面と第2電極30が予め接合されている場合、これらの接合は熱溶着が好ましいが、接着剤による接着でもよい。
【0098】
○複数の蓄電セル10が積層されるのは、注液工程S20の前であればよい。注液工程S20の前であれば、複数の蓄電セル10を積層する方向について鉛直方向Aであってもよいし、鉛直に対して垂直の方向でもよく、どの向きを向いていてもよい。これにより、準備工程S10において、蓄電セル10がハンドリングしやすくなる。
【0099】
○本実施形態において、スペーサ50は第1スペーサ構成体501と第2スペーサ構成体502の2部材によって構成されるが、1部材から構成されていてもよく、3部材から構成されていてもよい。
【0100】
○蓄電セル10を横置きしたとき、蓄電セル10の対向方向は鉛直方向Aと一致していなくてもよく、蓄電セル10の対向方向は鉛直方向Aに対し若干傾いていてもよい。この場合、第1スペーサ構成体501の上面501a、第2スペーサ構成体502の上面等の面は水平面に対し、若干傾いていてもよい。
【0101】
○平面視において、第1スペーサ構成体501の幅W1は、第1スペーサ構成体501の四つの辺で全て同じでなくてもよい。
○平面視において、第2スペーサ構成体502の幅W2は、第2スペーサ構成体502の四つの辺で全て同じでなくてもよい。
【0102】
○本実施形態において、クランプ部材90は一対であるが、クランプ部材90は複数であってもよい。例えば、3つ以上のクランプ部材90であってもよい。
○クランプ部材90の第3面90cは、第2開口端94を有さなくてもよい。
【0103】
○クランプ用空間Uは、クランプ部材90の互いの凹部92により形成されているが、互いの凹部92がずれた状態で向き合わせられてもよい。即ち、合わせ部91の一部が向き合っていない状態でもよい。
【0104】
○凹部92は、複数のクランプ部材90のうち、少なくとも一つのクランプ部材90に設けられていればよい。即ち、クランプ部材90が一対である場合、一方のクランプ部材90が合わせ部91と凹部92を有しており、他方のクランプ部材90が合わせ部91だけ有する形態でもよい。即ち、他方のクランプ部材90は凹部92を有していなくても良い。これにより、他方のクランプ部材90は凹部92を設ける工程が省ける。
【0105】
○クランプ部材90は、合わせ部91にゴム材料を備えていてもよい。
○注液部材80は、クランプ部材90に把持される領域において、ゴム材料を備えていてもよい。
【0106】
○注液部材80が連通部60の内部に挿入されるタイミングと、連通部60が外側からクランプ部材90によって把持されるタイミングは同時でなくてもよい。即ち、注液部材80が連通部60の内部に挿入された後、連通部60がクランプ部材90によって把持されてもよい。又は、連通部60がクランプ部材90によって把持された後、注液部材80が連通部60の内部に挿入されてもよい。
【0107】
○封止工程S30では、平面視において、第2スペーサ構成体502の外周縁に沿って突出している連通部60を切断してもよい。切断後、フィルムシート601a,601bを接合して封止する。接合は、熱溶着されていることが好ましいが、接着剤によって接着されていてもよい。これにより、第2スペーサ構成体502の外周縁から突出する部分がなくなるため、蓄電セル10が大型化しない。
【0108】
○蓄電装置1は、複数の蓄電セル10を積層したセルスタック2を有する構成としたが、蓄電装置1は、1つの蓄電セル10を有する構成でもよい。
【符号の説明】
【0109】
S…第1寸法、T…第2寸法、U…クランプ用空間、1…蓄電装置、10…蓄電セル、20…第1電極、21…第1集電体、22…第1活物質層、30…第2電極、31…第2集電体、32…第2活物質層、50…スペーサ、60…連通部、62…第1端としての第1開口部、63…第2端としての第2開口部、80…注液部材、81…筒状部、83…吐出口、90…クランプ部材、90a…第1面(対向面)、90b…第2面(一面)、90c…第3面(他面)、91…合わせ部、92…断面積漸減部位としての凹部、93…第1開口端、94…第2開口端、110…電極積層体。
図1
図2
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図6
図7
図8
図9