IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ホシデン株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-スピーカ用振動板およびスピーカ 図1
  • 特開-スピーカ用振動板およびスピーカ 図2
  • 特開-スピーカ用振動板およびスピーカ 図3
  • 特開-スピーカ用振動板およびスピーカ 図4
  • 特開-スピーカ用振動板およびスピーカ 図5
  • 特開-スピーカ用振動板およびスピーカ 図6
  • 特開-スピーカ用振動板およびスピーカ 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182800
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】スピーカ用振動板およびスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/14 20060101AFI20221201BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20221201BHJP
   H04R 7/04 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
H04R7/14
H04R9/02 101B
H04R7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090534
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000194918
【氏名又は名称】ホシデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087653
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 正二
(72)【発明者】
【氏名】長岡 聡史
(72)【発明者】
【氏名】深田 真仁
【テーマコード(参考)】
5D012
5D016
【Fターム(参考)】
5D012BB01
5D012BB02
5D012CA08
5D016AA04
5D016AA13
5D016AA14
5D016BA02
5D016EC02
(57)【要約】
【課題】エッジの角ロール部での応力集中を緩和できるスピーカ用振動板を提供する。
【解決手段】振動板1は、角丸長方形の振動板本体2と、振動板本体2の外周部に設けた周方向の断面形状が略半円ロール状のエッジ3と、を備える。エッジ3の角ロール部33には、ロール頂点から内周側と外周側へ向けてロール表面に沿って延伸する溝38を、周方向に間隔を設けて複数設けるとともに、周方向の頂点から離れていくにつれて徐々に溝38の長さを短くする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4つの角部を略90度円弧状に丸くした角丸長方形の振動板本体と、
前記振動板本体の外周部に設けた周方向の断面形状が略半円ロール状のエッジであって、前記振動板本体の1組の長辺に沿って形成される長辺ロール部と、前記振動板本体の一組の短辺に沿って形成される短辺ロール部と、前記振動板本体の4つの略90度円弧状の角部に沿って形成される角ロール部とを有するエッジと、を備え、
前記角ロール部には、前記角ロール部のロール頂点から前記角ロール部の内周側と外周側へ向けて前記角ロール部のロール表面に沿って延伸する溝を、前記角ロール部の周方向に間隔を設けて複数設けるとともに、前記角ロール部の周方向の頂点から離れていくにつれて徐々に前記溝の長さを短くするスピーカ用振動板。
【請求項2】
前記溝の深さは、前記角ロール部のロール頂点で最も深く、前記角ロール部のロール頂点から前記角ロール部の内周側と外周側へいくにつれて徐々に浅くなる請求項1に記載のスピーカ用振動板。
【請求項3】
前記溝は、前記角ロール部の周方向の中心線に対して平行、かつ、前記角ロール部の周方向の前記中心線を対称軸として線対称に形成され、前記角ロール部は、前記角ロール部の周方向の前記中心線を対称軸として線対称に形成する請求項1又は2に記載のスピーカ用振動板。
【請求項4】
前記溝は、直線状の溝底辺と、前記溝底辺の両端から傾斜状に立ち上がる直線状の溝側辺とを含み、前記溝底辺の中点を通って前記溝底辺と直角に交わる溝中心線を対称軸とする線対称の台形の断面形状を有する請求項1から3のいずれか1つに記載のスピーカ用振動板。
【請求項5】
前記溝は、直線状の前記溝側辺に代えて、前記溝の内側に向かって凸となる略円弧状の溝側辺を含む断面形状を有する請求項4に記載のスピーカ用振動板。
【請求項6】
前記溝は、直線状の前記溝底辺に代えて、前記溝の外側に向かって凸となる略円弧状の溝底辺を含む断面形状を有する請求項5に記載のスピーカ用振動板。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載のスピーカ用振動板と、前記振動板に接続されるボイスコイルと、前記ボイスコイルが挿入される磁気ギャップを有する磁気回路と、前記振動板が前記エッジを介して支持されるとともに、前記磁気回路が取り付けられるフレームとを備えるスピーカ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ用振動板およびそれを備えたスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカ用振動板に関し、4つの角部を略90度円弧状に丸くした角丸長方形の振動板本体と、振動板本体の外周部に設けた周方向の断面形状が略半円ロール状のエッジであって、振動板本体の1組の長辺に沿って形成される長辺ロール部と、振動板本体の一組の短辺に沿って形成される短辺ロール部と、振動板本体の4つの略90度円弧状の角部に沿って形成される角ロール部とを有するエッジと、を備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このスピーカ振動板では、振動板の振幅に際してエッジはロール形状を変形しながら追従するが、この際角ロール部は周方向に伸縮する必要がある。このため、角ロール部には複数の溝を設け、振動板の振幅に際して溝を変形(溝幅が広がるあるいは狭くなる)することで角ロール部の周方向の伸縮を実現する。角ロール部に溝を設けない場合、エッジ材料の伸縮はほとんどないため、角ロール部に応力が集中し、振動板の大振幅時にエッジが突っ張り、それに起因する異音を発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-119933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
角ロール部は、振動板の振幅に際して周方向の頂点部分で最も伸縮量が多くなり、周方向の頂点から離れていくにつれて(換言すると、直線ロール部、すなわち長辺ロール部と短辺ロール部に近付くにつれて)伸縮量は少なくなる。従来、溝はどの配置位置においても角ロール部の内周部がら外周部までに設けられ、角ロール部の周方向の頂点から離れていくにつれて、角ロール部の周方向の伸縮を実現する溝の役目よりも角ロール部の補強のための溝(リブ)として役目が出てくる。このため、溝によって角ロール部に応力集中を発生するという問題があった。
【0005】
本発明は、エッジの角ロール部での応力集中を緩和できるスピーカ用振動板およびそれを備えたスピーカを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するため、本発明に係るスピーカ用振動板は、4つの角部を略90度円弧状に丸くした角丸長方形の振動板本体と、前記振動板本体の外周部に設けた周方向の断面形状が略半円ロール状のエッジであって、前記振動板本体の1組の長辺に沿って形成される長辺ロール部と、前記振動板本体の一組の短辺に沿って形成される短辺ロール部と、前記振動板本体の4つの略90度円弧状の角部に沿って形成される角ロール部とを有するエッジと、を備え、前記角ロール部には、前記角ロール部のロール頂点から前記角ロール部の内周側と外周側へ向けて前記角ロール部のロール表面に沿って延伸する溝を、前記角ロール部の周方向に間隔を設けて複数設けるとともに、前記角ロール部の周方向の頂点から離れていくにつれて徐々に前記溝の長さを短くするものである。
【0007】
本発明に係るスピーカは、本発明に係る前記スピーカ用振動板と、前記振動板に接続されるボイスコイルと、前記ボイスコイルが挿入される磁気ギャップを有する磁気回路と、前記振動板が前記エッジを介して支持されるとともに、前記磁気回路が取り付けられるフレームとを備えるものである。
【0008】
本発明に係るスピーカ用振動板およびそれを備えた本発明に係るスピーカによれば、角ロール部には、角ロール部のロール頂点から角ロール部の内周側と外周側へ向けて角ロール部のロール表面に沿って延伸する溝を、角ロール部の周方向に間隔を設けて複数設けるとともに、角ロール部の周方向の頂点から離れていくにつれて徐々に溝の長さを短くすることにより、溝によって角ロール部に必要な周方向の伸縮を実現しつつ、溝が角ロール部の補強溝(リブ)とならないようにする。これにより、角ロール部で発生する応力集中が緩和され、エッジの突っ張りがなくなり、エッジの突っ張りに起因する異音の発生をなくすことができる。また、エッジの突っ張りがなくなるため、エッジのスチフネスS0を下げることができ、それに伴ってスピーカの最低共振周波数f0を下げることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、エッジの角ロール部での応力集中を緩和できるスピーカ用振動板およびそれを備えたスピーカを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係るスピーカの分解斜視図である。
図2図1のスピーカの平面図である。
図3図1のX-X断面図である。
図4図1のY-Y断面図である。
図5図5(A)はスピーカ用振動板の一つの角ロール部を示す図2のA部拡大底面図、図5(B)は溝の断面形状を示す図である。
図6】溝の長さを示す図である。
図7図7は溝の変形例を示す図であり、図7(A)は変形例1に係る溝の断面形状を示す図、図7(B)は変形例2に係る溝の断面形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態に係るスピーカを図1から図6を参照して説明する。図1から図4において、1はスピーカ用振動板(以下、単に「振動板」という。)であり、4つの角部を略90度円弧状に丸くした角丸長方形の振動板本体2と、振動板本体2の外周部に設けた周方向の断面形状が略半円ロール状のエッジ3であって、振動板本体2の1組の長辺21に沿って形成される長辺ロール部31と、振動板本体2の一組の短辺22に沿って形成される短辺ロール部32と、振動板本体2の4つの略90度円弧状の角部23に沿って形成される角ロール部33とを有するエッジ3と、を備えている。
【0012】
スピーカは動電型スピーカであり、振動板1と、振動板1に接続されるボイスコイル4と、ボイスコイル4が挿入される磁気ギャップ5a、5bを有する磁気回路5と、振動板1がエッジ3を介して支持されるとともに、磁気回路5が取り付けられるフレーム6と、を備え、ボイスコイル4に駆動電流を流すことにより、振動板1がこの厚み方向となる上下方向(図2では紙面垂直方向、図3図4では紙面左右方向)に振動し、上方向(図2では紙面垂直上方向、図3図4では紙面左方向)へ音を放射するものである。
【0013】
振動板1はPEN(ポリエチレンナフタレート)やPI(ポリイミド)等の樹脂材料によって振動板本体2とエッジ3とを一体成形することより形成され、振動板本体2の材料の延長部からなるエッジ3の外周部が樹脂材料を成形することにより上下方向を軸方向とした長方形短筒状に形成されたフレーム6の上端に固着され、エッジ3を介してフレーム6の上面開口部に上下方向に振動可能に支持される。エッジ3は振動板本体2の材料の延長部からなるフィックスドエッジであるが、振動板本体2と別材料で形成し、エッジ内周部が振動板本体2の外周部に固着されるフリーエッジとすることもできる。エッジ3はフレーム6の内側(下方)に向かって凸となるダウンロールエッジとしているが、フレーム6の外側(上方)に向かって凸となるアップロールエッジとすることもできる。振動板1は振動板本体2が平板状の平面型であるが、振動板本体2が上方あるいは下方に凸となるドーム状のドーム型とすることもできる。ボイスコイル4は上下方向を軸方向とした長方形短筒状に形成され、振動板本体2の外周部の下面に接続されている。磁気回路5は、フレーム6の下面開口部に固着され、一組の短辺に沿って立ち上がるヨーク側壁51aを有する長方形平板状のヨーク51と、ヨーク51の上面の中央部に固着される第1磁石52と、第1磁石52の上面に固着される第1ポールピース53とを備え、ヨーク側壁51aと第1ポールピース53との間にボイスコイル4の短辺部を挿入する第1磁気ギャップ5aを形成するとともに、ヨーク51の上面の前部と後部とに固着される第2磁石54と、第2磁石54の上面に固着される第2ポールピース55とを備え、第1ポールピース53と第2ポールピース55との間にボイスコイル4の長辺部を挿入する第2磁気ギャップ5bを形成するものであるが、第2磁石54と第2ポールピース55に代えてヨーク側壁51aの一組の長辺に沿って立ち上がるヨーク側壁を設け、このヨーク側壁と第1ポールピース53との間に第2磁気ギャップ5bを形成することもできる。
【0014】
振動板1は、振幅に際してエッジ3がロール形状を変形しながら追従するが、この際角ロール部33は周方向に伸縮する必要があるため、図1に示すように、角ロール部33には複数の溝を設け、振動板1の振幅に際して溝を変形(溝幅が広がるあるいは狭くなる)することで角ロール部33の周方向の伸縮を実現する。本実施の形態では一つの角ロール部33に対して溝を8本ずつ設けており、便宜上、最も内側に配置する2本の溝を第1溝34、第1溝34の外側に配置する2本の溝を第2溝35、第2溝35の外側に配置する2本の溝を第3溝36、第3溝35の外側、つまり最も外側に配置する2本の溝を第4溝37とし、これらを総称して溝38として説明する。
【0015】
図5(A)は振動板1の一つの角ロール部33を示す図2のA部拡大底面図(A部拡大下面図)、図5(B)は溝38の断面形状を示す図、図6は溝38の長さを示す図であり、図2のA部に含まれる一つの角ロール部33に設ける溝38と、残り三つの角ロール部33に設ける溝38は同一構造であるから、図2のA部に含まれる一つの角ロール部33に設ける溝38を説明し、残り三つの角ロール部33に設ける溝38の説明は省略する。
【0016】
図2図5(A)、図6に示すように、溝38は、角ロール部33のロール頂点Pから角ロール部33の内周側と外周側へ向けて角ロール部33のロール表面に沿って延伸し、角ロール部33の周方向に間隔を設けた状態で設けるとともに、角ロール部33の周方向の頂点から離れていくにつれて徐々に溝38の長さDを短くしてある。具体的には、第1溝34の長さD1、第2溝35の長さD2、第3溝36の長さD3、第4溝37の長さD4の順に短くしてある(D1>D2>D3>D4)。角ロール部33は、角ロール部33の内周曲率を外周曲率よりも大きくし、角ロール部33でのエッジ幅は角ロール部33の周方向の頂部で最も広くなり、角ロール部33の周方向の頂点から離れていくにつれて徐々に狭くなり、長辺ロール部31につながる角ロール部33の周方向の一端と短辺ロール部32につながる角ロール部33の周方向の他端で最も狭くなる。溝38は第1溝34、第2溝35、第3溝36、第4溝37の順に角ロール部33の内周部と外周部との間隙を徐々に拡大していく。溝38は、ダウンロールエッジの場合、角ロール部33の下向き凸の表面(下面)を凹、上向きの凹の表面(上面)を凸とし、アップロールエッジの場合、角ロール部33の上向き凸の表面(上面)を凹、下向きの凹の表面(下面)を凸とする。
【0017】
図6に示すように、溝38の深さは角ロール部33のロール頂点Pで最も深く、角ロール部33のロール頂点Pから角ロール部33の内周側と外周側へいくにつれて徐々に浅くなる。
【0018】
図2図5(A)に示すように、溝38は、角ロール部33を角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成するように、角ロール部33の周方向の中心線CLに対して平行、かつ、角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成されている。具体的には、溝38は8本(偶数本)のため、第1溝34は角ロール部33の周方向の頂点部分に角ロール部33の周方向の中心線CLを挟む位置で角ロール部33の中心線CLに対して平行、かつ、角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成され、第2溝35は第1溝34の外側において角ロール部33の中心線CLに対して平行、かつ、角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成され、第3溝36は第2溝35の外側において角ロール部33の中心線CLに対して平行、かつ、角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成され、第4溝37は第3溝34の外側において角ロール部33の中心線CLに対して平行、かつ、角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成されている。溝38が例えば9本等の奇数本の場合、最も内側の中央の1本の溝はその溝の中心線が角ロール部33の周方向の中心線CLに一致する状態で角ロール部33の周方向の頂点部分に形成し、この中央の1本の溝を中心にしてこの外側に他の溝を順に形成することにより、溝38は奇数本でも、角ロール部33を角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成するように、角ロール部33の周方向の中心線CLに対して平行、かつ、角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成することができる。
【0019】
図5(B)に示すように、溝38は、直線状の溝底辺381と、溝底辺381の両端から傾斜状に立ち上がる直線状の溝側辺382とを含み、溝底辺381の中点P1を通って溝底辺381と直角に交わる溝中心線CL1を対称軸とする線対称の台形の断面形状を有している。両溝側辺382間の開き角度は45度以上、90度以下に設定されている。
【0020】
溝38は、振動板1の振幅に際して変形(溝幅が広がるあるいは狭くなる)することで、角ロール部33の周方向の伸縮を実現するものであり、角ロール部33のロール頂点Pから角ロール部33の内周側と外周側へ向けて角ロール部33のロール表面に沿って延伸し、角ロール部33の周方向に間隔を設けた状態で設けるとともに、角ロール部33の周方向の頂点から離れていくにつれて徐々に溝38の長さDを短くすることにより、溝38によって角ロール部33に必要な周方向の伸縮を実現しつつ、溝38が角ロール部33の補強溝(リブ)とならないようにすることができる。これにより、角ロール部33で発生する応力集中が緩和され、エッジ3の突っ張りがなくなり、エッジ3の突っ張りに起因する異音の発生をなくすことができる。また、エッジ3の突っ張りがなくなるため、エッジ3のスチフネスS0を低下することができ、それに伴ってスピーカの最低共振周波数f0を低下することができる。
【0021】
溝38の深さは角ロール部33のロール頂点Pで最も深く、角ロール部33のロール頂点Pから角ロール部33の内周側と外周側へいくにつれて徐々に浅くすることにより、角ロール部33の応力を緩和することができる。
【0022】
溝38は、角ロール部33の周方向の中心線CLに対して平行、かつ、角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成され、角ロール部33は、角ロール部33の周方向の中心線CLを対称軸として線対称に形成することにより、角ロール部33では角ロール部33の周方向の中心線CLから長辺ロール部31側と短辺ロール部32側とで伸縮量が等しくなり、振動板1のローリング現象が発生しなくなる。
【0023】
溝38は、直線状の溝底辺381と、溝底辺381の両端から傾斜状に立ち上がる直線状の溝側辺382とを含み、溝底辺381の中点P1を通って溝底辺381と直角に交わる溝中心線CL1を対称軸とする線対称の台形の断面形状を有することにより、断面形状がV字状の溝にくべて、溝の深さを浅くしつつ、振動板1の振幅に際して変形(溝幅が広がるあるいは狭くなる)しやすくなり、角ロール部33の応力を緩和することができる。
【0024】
次に、溝38の変形例を図7を参照して説明する。図7(A)は変形例1に係る溝39の断面形状を示す図、図7(B)は変形例2に係る溝40の断面形状を示す図である。図7(A)に示すように、変形例1の溝39は、溝38の直線状の溝側辺382に代えて、溝39の内側に向かって凸となる(溝の外側に中心がある)略円弧状の溝側辺392を含む断面形状を有している。つまり溝39は、直線状の溝底辺391と、溝底辺391の両端から立ち上がる溝39の内側に向かって凸となる略円弧状の溝側辺392とを含み、溝底辺391の中点P2を通って溝底辺391と直角に交わる溝中心線CL2を対称軸とする線対称の断面形状を有している。図7(B)に示すように、変形例2の溝40は、溝39の直線状の溝底辺391に代えて、溝40の外側に向かって凸となる(溝40の内側に中心がある)略円弧状の溝底辺401を含む断面形状を有している。つまり溝40は、溝40の内側に向かって凸となる略円弧状の溝底辺401と、溝底辺401の両端から立ち上がる溝40の内側に向かって凸となる略円弧状の溝側辺402とを含み、溝底辺401の中点P3を通って溝底辺401と直角に交わる溝中心線CL3を対称軸とする線対称の断面形状を有している。溝39、40は断面形状が溝38と異なるだけで、その他の構造は溝38と同一であり、溝38に代えて振動板1におけるエッジ3の角ロール部33に設けることで、溝38と同様の機能を発揮するものである。溝39は溝側辺392が溝39の内側に向かって凸となる略円弧状とすることにより、溝側辺382が直線状の溝38と比べ、振動板1の振幅に際して変形(溝幅が広がるあるいは狭くなる)しやすくなり、角ロール部33の応力を緩和することができる。溝40はさらに溝底辺401が溝40の外側に向かって凸となる略円弧状とすることにより、溝底辺381、391が直線状の溝38、39と比べ、振動板1の振幅に際して変形(溝幅が広がるあるいは狭くなる)しやすくなり、角ロール部33の応力を緩和することができる。溝の断面形状のみを異ならせたスピーカのシミュレーションでの角ロール部33の応力の最大値は、溝38、溝39、溝40の順で小さくなる。この結果を考察すると、溝38、溝39、溝40の順にその断面形状の剛性が小さくなっているためと考えられる。
【符号の説明】
【0025】
1 振動板
2 振動板本体
3 エッジ
31 長辺ロール部
32 短辺ロール部
33 角ロール部
38、39、40 溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7