(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182802
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】直流コンデンサおよび直流コンデンサの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/228 20060101AFI20221201BHJP
H01G 4/38 20060101ALI20221201BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20221201BHJP
【FI】
H01G4/228 B
H01G4/38 A
H01G13/00 307E
H01G4/228 S
H01G4/228 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090536
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】安川 英明
(72)【発明者】
【氏名】高 暢也
【テーマコード(参考)】
5E082
【Fターム(参考)】
5E082AA11
5E082AB04
5E082BC23
5E082BC32
5E082CC06
5E082GG04
5E082GG08
5E082GG21
5E082HH03
5E082JJ27
(57)【要約】
【課題】金属板と導電体との接続における固定強度を持続的に維持する。
【解決手段】直流コンデンサは、電極端子に電気的に接続される金属板(1)と、コンデンサ素子(3)と、コンデンサ素子(3)の一方の電極と金属板(1)とを電気的に接続する導電体(2)と、スリーブ及び舌部を有する圧着端子(6)と、圧着端子(6)の舌部を、金属板(1)に締結固定する締結部材(5)と、を備え、導電体(2)の端部は、圧着端子(6)のスリーブに圧着接続されており、圧着端子(6)の舌部の外周部は、金属板(1)にはんだ付けされている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極端子と、
前記電極端子に電気的に接続される金属板と、
コンデンサ素子と、
前記コンデンサ素子の一方の電極と前記金属板とを電気的に接続する導電体と、
スリーブ及び舌部を有する圧着端子と、
前記圧着端子の前記舌部を、前記金属板に締結固定する締結部材と、を備え、
前記導電体の端部は、前記圧着端子の前記スリーブに圧着接続されており、
前記圧着端子の前記舌部の外周部は、前記金属板にはんだ付けされている、直流コンデンサ。
【請求項2】
前記導電体は、編組線である、請求項1に記載の直流コンデンサ。
【請求項3】
前記締結部材は、ボルトとナットである、請求項1または2に記載の直流コンデンサ。
【請求項4】
前記締結部材は、リベットである、請求項1または2に記載の直流コンデンサ。
【請求項5】
導電体の端部に圧着端子のスリーブを圧着接続する工程と、
前記導電体に接続された前記圧着端子の舌部を、締結部材によって、電極端子に電気的に接続される金属板に締結固定する工程と、
前記金属板に締結固定された前記圧着端子の前記舌部の外周部を、前記金属板にはんだ付けする工程と、
コンデンサ素子の一方の電極に前記導電体を接続する工程と、を含む直流コンデンサの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流コンデンサおよび直流コンデンサの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の直流コンデンサが開発されている。これに関連する技術として、下記の特許文献1に開示された発明がある。
【0003】
特許文献1は、直流送電用高圧コンデンサに関する。直流送電用高圧コンデンサは、絶縁ハウジングと、導電体と、第1バスバーと、第2バスバーと、少なくとも1層のコア行列であって幾つかのコアを含むコア行列とを備える。
【0004】
絶縁ハウジング内にコア行列、第1バスバーおよび第2バスバーが格納されており、絶縁ハウジングの一端に第1バスバーおよび第2バスバーが設けられており、第1バスバーとコア行列との間に第2バスバーが設けられており、第1バスバーおよび第2バスバーが平行且つ互いに絶縁するように設置される。
【0005】
コアの一方の電極が導電体を介して第1バスバーと電気的に接続されており、コアの他方の電極が導電体を介して第2バスバーと電気的に接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】中国公開番号CN109979753号(2019年7月5日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の特許文献1においては、第1バスバーまたは第2バスバーと、導電体とが電気的に接続されているが、どのように接続されているのかが明確に記載されていない。また、直流コンデンサにおいて、バスバーと導電体との接続は、半田によって行われるのが一般的である。
【0008】
半田は、高温下で長期的に使用することによって強度が低下する。例えば、直流コンデンサのリップル電流による表皮効果によって発熱が大きくなるため、バスバーと導電体とを接続する半田が80℃位の温度に上がる。これによって、半田による固定が甘くなったり、極端な場合にはバスバーから導電体が外れたりする。
【0009】
また、半田の強度低下によって接触抵抗が大きくなり、接触抵抗によるさらなる発熱が発生し、半田の劣化を促進させる。
【0010】
本発明の一態様は、高温下おいても、金属板(バスバー)と導電体との接続における固定強度を持続的に維持することが可能な直流コンデンサおよび直流コンデンサの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る直流コンデンサは、電極端子と、電極端子に電気的に接続される金属板と、コンデンサ素子と、コンデンサ素子の一方の電極と金属板とを電気的に接続する導電体と、スリーブ及び舌部を有する圧着端子と、圧着端子の舌部を、金属板に締結固定する締結部材と、を備え、導電体の端部は、圧着端子のスリーブに圧着接続されており、圧着端子の舌部の外周部は、金属板にはんだ付けされている。
【0012】
また、上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る直流コンデンサの製造方法は、導電体の端部に圧着端子のスリーブを圧着接続する工程と、導電体に接続された圧着端子の舌部を、締結部材によって、電極端子に電気的に接続される金属板に締結固定する工程と、金属板に締結固定された圧着端子の舌部の外周部を、金属板にはんだ付けする工程と、コンデンサ素子の一方の電極に導電体を接続する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、高温化においても、金属板(バスバー)と導電体との接続における固定強度を持続的に維持することが可能な直流コンデンサおよび直流コンデンサの製造法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】一般的な直流コンデンサにおける金属板(バスバー)と導電体との接続方法を説明するための図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る直流コンデンサの外観例を示す斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る直流コンデンサの内部構成を示す斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る直流コンデンサにおける電極端子とコンデンサ素子との接続を説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る直流コンデンサにおける金属板と編組線との接続を説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る直流コンデンサにおける第1金属板と編組線との接続をさらに詳細に説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る直流コンデンサの製造方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(一般的な直流コンデンサにおける金属板と導電体との接続方法)
まず、
図1を参照して、一般的な直流コンデンサにおける金属板(バスバー)と導電体との接続方法について説明する。
図1に示すように、複数のコンデンサ素子103がマトリクス状に配置されている。コンデンサ素子103の一方の電極と、導電体102とが半田によって接続される。図示しないが、同様に、コンデンサ素子103の他方の電極と、別の導電体とが半田によって接続される。なお、導電体102には、多数のコンデンサ素子103の電極が半田によって接続されているものとする。
【0016】
また、コンデンサ素子103の一方の電極に接続された導電体102の他端は、金属板(バスバー)101に半田104によって接続される。図示しないが、同様に、コンデンサ素子103の他方の電極に接続された別の導電体の他端は、別の金属板に半田によって接続される。
【0017】
このように、金属板101と導電体102とが半田104によって固定されている。導電体102が金属板101に接続される箇所には、多数のコンデンサ素子103の電流が集約されるため、発熱が大きくなる。これによって、半田104による固定が甘くなったり、極端な場合には金属板101から導電体が外れたりする。また、半田104の強度低下によって接触抵抗が大きくなり、接触抵抗によるさらなる発熱が発生し、半田104の劣化を促進させる。このような問題を解決するために、本発明に係る直流コンデンサは、以下のような構成を有する。
【0018】
以下、本発明の一実施形態について、詳細に説明する。なお、説明の便宜上、同一の部材には同一の符号を付し、それらの名称および機能も同一である。したがって、それらの詳細な説明は繰り返さない。
【0019】
(直流コンデンサ100の外観例)
図2は、本発明の一実施形態に係る直流コンデンサ100の外観例を示す斜視図である。直流コンデンサ100は、筐体13を有しており、内部に複数のコンデンサ素子が収納されている。筐体13の上部には、コンデンサ素子の一方の電極と電気的に接続される第1電極端子11と、コンデンサ素子の他方の電極と電気的に接続される第2電極端子12とが配置されている。
【0020】
図3は、本発明の一実施形態に係る直流コンデンサ100の内部構成を示す斜視図である。
図3に示すように、多数のコンデンサ素子3がマトリクス状に配置されている。コンデンサ素子3の一方の電極と、導電体2とが半田によって接続される。図示しないが、同様に、コンデンサ素子3の他方の電極と、別の導電体とが半田によって接続される。半田は、鉛フリーの半田材を使用しており、具体的には、Sn(錫)93.4wt%、Ag(銀)2.9%、Cu(銅)0.48%、その他の成分を含む。コンデンサ素子3は、直径85mm程度、奥行き102mm程度の円柱形状を有している。なお、コンデンサ素子3の数は、直流コンデンサ100の容量によって様々である。
【0021】
導電体2は、編組線、金属板等によって構成される。編組線は、細い金属性のワイヤが編み込まれたものであり、主に銅によって構成されている。編組線の断面は平たい形状を有しており、1.5mm程度の厚み(14mmスクエアとも呼ぶ。)を有している。編組線は、細いワイヤが編み込まれたものであるため、表面積が大きくなる。そのため、リップル電流による発熱が、金属板と比較して小さくなるので、導電体として好適である。以下、導電体2を編組線として説明する。
【0022】
図4は、本発明の一実施形態に係る直流コンデンサ100における電極端子とコンデンサ素子との接続を説明するための図である。コンデンサ素子3の一方の電極に接続された編組線2は、第1金属板1に接続される。また、第1金属板1は第1電極端子11と接続されている。そのため、第1電極端子11がコンデンサ素子3の一方の電極と電気的に接続されることになる。
【0023】
コンデンサ素子3の他方の電極に接続された編組線は、第2金属板7に接続される。また、第2金属板7は第2電極端子12と接続されている。そのため、第2電極端子12がコンデンサ素子3の他方の電極と電気的に接続されることになる。第1金属板1および第2金属板7は、厚さ1mm程度の銅板(無酸素銅、純銅)によって構成され、それぞれが絶縁されている。
【0024】
図5は、本発明の一実施形態に係る直流コンデンサ100における金属板と編組線との接続を説明するための図である。編組線2の端部に圧着端子6のスリーブをかしめることによって、編組線2と圧着端子6とが圧着接続されている。圧着端子6は、主に銅で構成され、表面がメッキにより覆われている。
【0025】
圧着端子6の舌部は、丸い輪の形状を有している。圧着端子6の舌部を、締結部材5によって第1金属板1に締結固定することにより、圧着端子6が第1金属板1に固定される。圧着端子6の舌部の形状を丸い輪としているのは、作業者が締結部材5を輪に通すことによって位置決めが行えるため、作業効率が向上するためである。なお、圧着端子6の舌部の形状は丸い輪の形状以外であってもよく、形状は特に限定されるものではない。
【0026】
さらに、圧着端子6の舌部の外周部が半田4によってはんだ付けされる。第1電極端子11と第1金属板1とが電気的に接続されているため、第1電極端子11とコンデンサ素子3の一方の電極とが電気的に接続される。なお、締結部材5は、ボルトとナット、リベット等であるが、圧着端子6を第1金属板1に締結固定できる部材であればよい。したがって、これらに限定されるものではない。
【0027】
コンデンサ素子3の他方の電極と、第2金属板7との電気的な接続についても同様である。圧着端子6の舌部を、締結部材5によって第2金属板7に締結固定することにより、圧着端子6が第2金属板7に固定される。さらに、圧着端子6の舌部の外周部が半田4によってはんだ付けされる。第2電極端子12と第2金属板7とが電気的に接続されているため、第2電極端子12とコンデンサ素子3の他方の電極とが電気的に接続される。
【0028】
(直流コンデンサ100における第1金属板1と編組線2との接続)
図6は、本発明の一実施形態に係る直流コンデンサ100における第1金属板1と編組線2との接続をさらに詳細に説明するための図である。コンデンサ素子3の一方の電極と、編組線2とが半田によって接続される。図示しないが、同様に、コンデンサ素子3の他方の電極と、別の編組線とが半田によって接続される。なお、編組線2には、多数のコンデンサ素子3の電極が半田によって接続されているものとする。
【0029】
コンデンサ素子3の一方の電極に接続された編組線2の他端は、圧着端子6のスリーブに接続される。上述のように、編組線2の他端を圧着端子6のスリーブにかしめることによって、編組線2と圧着端子6とが接続される。
【0030】
圧着端子6の舌部は丸い輪の形状を有しており、その輪に締結部材5、例えばボルトを挿入する。さらに、ボルトは第1金属板1に開けられた穴に挿入され、ナットによって圧着端子6が第1金属板1に締結される。このように、圧着端子6と締結部材5とによって、編組線2を第1金属板1に固定することにより、高温化でも持続的に固定強度を維持することができる。
【0031】
さらに、第1金属板1に締結された圧着端子6の舌部の周辺の境界部分(ボルトによって覆われていない、見えている部分)が、半田4によってはんだ付けされる。このように、半田4によって圧着端子6の舌部の周辺領域をはんだ付けすることによって、圧着端子6の舌部の接続部分における接触抵抗を小さくすることができ、発熱を抑えることができる。
【0032】
なお、編組線2とコンデンサ素子3との接続が半田のみによって行われるが、コンデンサ素子3単体の電流はそれほど大きくはなく、編組線2とコンデンサ素子3との接続部は、第1金属板1あるいは第2金属板7ほどは発熱しない。そのため、編組線2とコンデンサ素子3との接続部では、半田の強度の低下が発生しにくいため、特に問題とはならない。
【0033】
(直流コンデンサ100の製造方法)
図7は、本発明の一実施形態に係る直流コンデンサ100の製造方法を説明するためのフローチャートである。まず、編組線2の端部に圧着端子6のスリーブをかしめる(S1)。そして、圧着端子6の舌部を締結部材5で第1金属板1に締結固定する(S2)。
【0034】
次に、圧着端子6の舌部の周辺の境界部分をはんだ付けする(S3)。最後に、コンデンサ素子3の電極に編組線2をはんだ付けして(S4)、処理を終了する。
【0035】
(効果)
以上説明したように、本実施形態に係る直流コンデンサ100によれば、圧着端子6と締結部材5とによって、編組線2を第1金属板1または第2金属板7に固定することにより、高温化でも持続的に固定強度を維持することができる。
【0036】
また、半田4によって圧着端子6の舌部の周辺領域をはんだ付けすることによって、圧着端子6の舌部の接続部分における接触抵抗を小さくすることができ、発熱を抑えることができる。
【0037】
また、導電体2として編組線を用いることによって、金属板と比較して表面積を大きくすることができるため、多数のコンデンサ素子3のリップル電流による発熱を小さくすることができる。
【0038】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る直流コンデンサは、電極端子と、電極端子に電気的に接続される金属板と、コンデンサ素子と、コンデンサ素子の一方の電極と金属板とを電気的に接続する導電体と、スリーブ及び舌部を有する圧着端子と、圧着端子の舌部を、金属板に締結固定する締結部材と、を備え、導電体の端部は、圧着端子のスリーブに圧着接続されており、圧着端子の舌部の外周部は、金属板にはんだ付けされている。
【0039】
本発明の態様2に係る直流コンデンサは、態様1に記載の直流コンデンサであって、導電体は、編組線である。
【0040】
本発明の態様3に係る直流コンデンサは、態様1または2に記載の直流コンデンサであって、締結部材は、ボルトとナットである。
【0041】
本発明の態様4に係る直流コンデンサは、態様1または2に記載の直流コンデンサであって、締結部材は、リベットである。
【0042】
本発明の態様5に係る直流コンデンサの製造方法は、導電体の端部に圧着端子のスリーブを圧着接続する工程と、導電体に接続された圧着端子の舌部を、締結部材によって、電極端子に電気的に接続される金属板に締結固定する工程と、金属板に締結固定された圧着端子の舌部の外周部を、金属板にはんだ付けする工程と、コンデンサ素子の一方の電極に導電体を接続する工程と、を含む。
【0043】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
1 第1金属板
2 導電体(編組線)
3 コンデンサ素子
4 半田
5 締結部材(ボルトとナット、リベット)
6 圧着端子
7 第2金属板
11 第1電極端子
12 第2電極端子
13 筐体
100 直流コンデンサ