(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182804
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】中間転写ベルト、当該中間転写ベルトを用いる画像形成方法および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20221201BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20221201BHJP
G03G 15/16 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
B41J2/01 101
B41J2/01 129
B41M5/00 100
B41M5/00 120
G03G15/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090538
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 崇之
(72)【発明者】
【氏名】安川 裕之
(72)【発明者】
【氏名】氏原 淳二
(72)【発明者】
【氏名】下田 剛士
(72)【発明者】
【氏名】小賀 浩史
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
2H200
【Fターム(参考)】
2C056EA04
2C056EA13
2C056EC14
2C056FA14
2C056FD13
2C056FD20
2C056HA44
2H186AB11
2H186AB17
2H186AB23
2H186BA08
2H186DA08
2H186DA19
2H186FB04
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB55
2H200FA02
2H200JC04
2H200JC13
2H200JC15
2H200JC17
2H200MA04
2H200MA13
2H200MA17
2H200MA20
2H200MC01
2H200MC20
(57)【要約】
【課題】長期使用時の転写率の低下が生じにくい中間転写ベルトを提供すること
【解決手段】本発明の中間転写ベルトは、表面に形成された中間画像の裏面から前記中間画像に活性線を照射することができる中間転写ベルトであって、前記中間転写ベルトは、少なくとも基材層を含み、前記基材層は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の少なくとも一方を含む樹脂成分とコロイダルシリカとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に形成された中間画像の裏面から前記中間画像に活性線を照射することができる中間転写ベルトであって、
前記中間転写ベルトは、少なくとも基材層を含み、
前記基材層は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の少なくとも一方を含む樹脂成分とコロイダルシリカとを含む、中間転写ベルト。
【請求項2】
前記基材層における前記コロイダルシリカの含有量は、前記樹脂成分および前記コロイダルシリカの合計重量に対して、5wt%以上60wt%以下である、請求項1に記載の中間転写ベルト。
【請求項3】
前記コロイダルシリカの一次粒子径は、10nm以上50nm以下である、請求項1または請求項2に記載の中間転写ベルト。
【請求項4】
前記コロイダルシリカは鎖状である、請求項1~3のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
【請求項5】
前記基材層は、波長395nmの光の透過率が50%以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
【請求項6】
前記基材層の引張弾性率に前記基材層の膜厚を乗じた値は、400[GPa・μm]以上である、請求項1~5のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
【請求項7】
前記基材層は、紫外線吸収剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
【請求項8】
前記基材層における前記紫外線吸収剤の含有量は、前記樹脂成分の全質量に対して、0.01wt%以上3.00wt%以下である、請求項7に記載の中間転写ベルト。
【請求項9】
無端状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の中間転写ベルト。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の中間転写ベルトの表面に活性線硬化型インクを付与して中間画像を形成する画像形成部と、
前記付与された前記活性線硬化型インクに、前記中間転写ベルトの裏面から活性線を照射する活性線照射部と、
前記中間画像を前記中間転写ベルトから記録媒体に転写する転写部と、
を有する画像形成装置。
【請求項11】
前記転写された前記中間画像を硬化させる硬化部をさらに有する、
請求項10に記載の画像形成装置。
【請求項12】
前記活性線照射部は、前記活性線を、前記中間転写ベルトを透過させて前記活性線硬化型インクに照射する、請求項10または11に記載の画像形成装置。
【請求項13】
前記活性線照射部は、前記画像形成部の下流側、かつ前記転写部の上流側において、活性線硬化型インクに前記活性線を照射する、請求項10~12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項14】
前記活性線照射部は、前記転写部により転写されている前記活性線硬化型インクに前記活性線を照射する、請求項10~12のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前記画像形成部は、インクジェット法により前記中間転写ベルトの表面に前記活性線硬化型インクを付与して前記中間画像を形成する、請求項10~14のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項16】
請求項1~9のいずれか一項に記載の中間転写ベルトの表面に活性線硬化型インクを付与して中間画像を形成する画像形成工程と、
前記付与された前記活性線硬化型インクに、前記中間転写ベルトの裏面から活性線を照射する活性線照射工程と、
前記中間画像を前記中間転写ベルトから記録媒体に転写する転写工程と、
を有する画像形成方法。
【請求項17】
前記転写された前記中間画像を硬化させる硬化工程をさらに有する、
請求項16に記載の画像形成方法。
【請求項18】
前記活性線照射工程において、前記活性線を、前記中間転写ベルトを透過させて前記活性線硬化型インクに照射する、請求項16または17に記載の画像形成方法。
【請求項19】
前記活性線照射工程において、画像形成工程後、かつ転写工程前に、前記活性線を照射して前記活性線硬化型インクを増粘させる、請求項16~18のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【請求項20】
前記画像形成工程において、インクジェット法により前記中間転写ベルトの表面に活性線硬化型インクを付与して前記中間画像を形成する、請求項16~19のいずれか一項に記載の画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中間転写ベルト、当該中間転写ベルトを用いる画像形成方法および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式またはインクジェット方式の画像形成装置において、トナー画像またはインク画像を記録媒体に転写するために中間転写ベルトが用いられている。
【0003】
上記中間転写ベルトを用いた画像形成方法として、中間転写ベルトの裏面から活性線を照射して、画像を形成する方法が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、中間転写媒体の、重合性化合物を含むインクが付与された面とは反対側の面から、紫外線を照射して、上記重合性化合物を部分的に重合させる工程と、紫外線が照射された上記インクを記録媒体に転写する工程と、を有する、記録物の製造方法が開示されている。特許文献1によれば、上記方法により、上記インクのうち、中間転写媒体側の領域における重合性化合物が、優先的に重合するため、転写時における上記インクの離型性が向上し、転写率が向上したとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、本発明者らが検討したところ、特許文献1に記載の方法を用いても、特許文献1で用いられている中間転写体では、長期間使用した時に記録媒体への転写率が低下していくという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、かかる点に鑑みてなされたものであり、長期使用時の転写率の低下が生じにくい中間転写ベルトを提供することである。また、本発明の別の目的は、当該中間転写ベルトを用いる画像形成方法および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施の形態に係る中間転写ベルトは、表面に形成された中間画像の裏面から前記中間画像に活性線を照射することができる中間転写ベルトであって、前記中間転写ベルトは、少なくとも基材層を含み、前記基材層は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の少なくとも一方を含む樹脂成分とコロイダルシリカとを含む。
【0009】
本発明の一実施の形態に係る画像形成装置は、上記中間転写ベルトの表面に活性線硬化型インクを付与して中間画像を形成する画像形成部と、前記付与された前記活性線硬化型インクに、前記中間転写ベルトの裏面から活性線を照射する活性線照射部と、前記中間画像を前記中間転写ベルトから記録媒体に転写する転写部と、を有する。
【0010】
本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、上記中間転写ベルトの表面に活性線硬化型インクを付与して中間画像を形成する画像形成工程と、前記付与された前記活性線硬化型インクに、前記中間転写ベルトの裏面から活性線を照射する活性線照射工程と、前記中間画像を前記中間転写ベルトから記録媒体に転写する転写工程と、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、長期使用時の転写率の低下が生じにくい中間転写ベルトを提供することができる。また、本発明によれば、当該中間転写ベルトを用いる画像形成方法および画像形成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の一実施の形態に係る中間転写ベルトを作製するための装置を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本発明の一実施の形態に係る画像形成装置の例示的な構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施の形態に係る中間転写ベルト、当該中間転写ベルトを用いる画像形成方法および画像形成装置について順番に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
特許文献1に記載の発明で用いられているような、従来のポリイミド樹脂やポリアミドイミド樹脂を含む中間転写ベルトでは、長期使用時に転写率の低下がみられた。本発明者らが、詳しく検討したところ、中間転写ベルトの全面にわたって均一に転写率が低下しているわけではなく、転写率が低い箇所が局所的に発生していることがわかった。このことから、本発明者らは、中間転写ベルトに存在するごく僅かな膜厚ムラ、および高速運転を長期にわたって行うことにより生じる僅かなシワより、によって局所的な応力が生じていると考えた。そして、本発明者らは、上記ごく僅かな膜厚ムラおよび僅かなシワよりにより、中間転写ベルト表面の同じ箇所に、上記箇所に局所的な微小変化が一時的に生じた結果、裏面から活性線を照射しても、局所的に活性線の透過率が低下したり、転写時の押圧力が低下するといった現象が起こるため、上記転写率が低下すると考えた。また、本発明者らは、長期にわたって上記局所的な応力が中間転写ベルトにかかることにより、上記箇所に局所的な微小変化が恒久的に生じた結果、上記転写率が低下する、とも考えた。
【0015】
本発明者らは、フィラーを添加して中間転写ベルトの基材層の引張弾性率を高めることで、高速運転時に生じる上記僅かなシワよりの発生を抑制できると考えた。そこで、光散乱を抑制してポリイミドやポリアミドイミドの特性である透明性を維持するため、ポリイミドに屈折率が近いシリカ(粉体シリカ)をフィラーとして添加したところ、中間転写ベルトの活性線の透過率は予測した以上に低下し、また引張破断伸び(靭性)が低下して中間転写ベルトに割れが生じやすくなっていた。さらには、シリカの添加量を多くするほど、中間転写ベルトの引張破断伸びが低下していた。この原因を探求したところ、基材層の製造時にシリカが凝集してしまい、製造された基材層の中でもシリカが凝集してしまっていることがわかった。
【0016】
そこで、本発明者らは、有機溶媒中での安定性が高いコロイダルシリカを用いれば、上記製造時のシリカの凝集を抑制して、基材層の引張弾性率を高めつつ、透明性の低下および靭性の低下を抑制できると考え、上記知見に基づいて種々検討および研究を進めて、本発明を完成させた。
【0017】
上記知見に基づく本発明の一実施形態は、表面に形成された中間画像の裏面から前記中間画像に活性線を照射することができる中間転写ベルトであって、前記中間転写ベルトは、少なくとも基材層を含み、前記基材層は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の少なくとも一方を含む樹脂成分とコロイダルシリカとを含む、中間転写ベルトに関する。
【0018】
1.中間転写ベルト
本発明の一実施の形態に係る中間転写ベルトは、少なくとも基材層を含む。上記中間転写ベルトは、無端状のベルトであることが好ましい。ここで、「無端状」とは、例えば、概念的(幾何学的)には一枚の長尺のシート状物の両端部を繋ぎ合わせて形成されるようなループ状の形状を意味する。
【0019】
上記中間転写ベルトは、後述する転写ローラ、駆動ローラおよび従動ローラによって張架される。また、駆動ローラおよび従動ローラに張架された部分は、例えば、インクジェットヘッドから吐出されるインクの着弾面となる。
【0020】
1-1.基材層
本発明の一実施の形態に係る中間転写ベルトは、基材層を含む。
【0021】
基材層は、無端状のベルトであり、ポリイミドおよびポリアミドイミドの少なくとも一方を含む樹脂成分と、コロイダルシリカとを含む。
【0022】
(樹脂成分)
上記樹脂成分は、ポリイミドおよびポリアミドイミドの少なくとも一方を含む。これらの樹脂は、耐熱性、耐屈曲性、柔軟性、寸法安定性等に優れる。上記観点から、上記樹脂成分は、ポリイミドを含むことが好ましい。
【0023】
上記ポリイミドは、酸無水物とジアミン化合物を重合させてポリアミック酸(ポリイミド前駆体)を合成し、次いで上記ポリアミック酸を熱や触媒によってイミド化する方法などで製造され得る。
【0024】
上記酸無水物の例には、ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ターフェニルテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、無水ピロメリット酸、オキシジフタル酸二無水物、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物などが含まれる。
【0025】
また、上記ジアミン化合物の例には、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-ジアミノトルエン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、3,7-ジアミノ-ジメチルジベンゾチオフェン-5,5’-ジオキシド、4,4’-ジアミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(4-アミノフェニル)スルフィド、4,4’-ジアミノベンズアニリド、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレンビス(4-シクロヘキシルアミン)、1,4-ジアミノシクロヘキサンなどが含まれる。
【0026】
上記ポリアミドイミドは、上記ポリイミドの原料のうち酸無水物に代えて、あるいは酸無水物に加えて、トリメリット酸などの三官能の酸の無水物を用いる方法などで、製造することができる。
【0027】
また、ポリイミドの市販品の例には、TORMED-S、X(株式会社IST製、「TORMED」は同社の登録商標)、スピクセリアHR003、GR003(いずれもソマール株式会社製、「スピクセリア」は同社の登録商標)、タイプHM(東洋紡株式会社製)、Type-C(三井化学株式会社製)、Q-VR-X-1655(株式会社ピーアイ技研製)、KPI-MX300F(河村産業株式会社製)などが含まれる。
【0028】
また、基材層は、本発明の効果を阻害しない範囲で上記ポリイミドおよびポリアミドイミド以外の樹脂を含んでいてもよい。そのような樹脂の例には、ポリアミド(PA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、トリアセチルセルロース(TAC)、シクロオレフィンポリマー(COP)、ユニアミド(ユニチカ株式会社製、「ユニアミド」は同社の登録商標)、ルミラーT60(東レ株式会社製、「ルミラー」は同社の登録商標)、Zeonex(日本ゼオン株式会社製、「Zeonex」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0029】
ただし、上記基材層は、ポリイミドおよびポリアミドイミドが主成分であることが好ましい。主成分であるとは、基材層を構成する樹脂の全質量に対して、ポリイミドおよびポリアミドイミドの質量が占める割合が、50質量%以上であることを意味する。
【0030】
基材層において、波長が350nm以上450nm以下である光の透過性を、より向上させる観点から、上記ポリイミドおよび上記ポリアミドイミドは、例えば、酸二無水物またはジアミン化合物のどちらか一方にフッ素が導入されたものを用いて合成されることが好ましく、もしくは、酸二無水物またはジアミン化合物のどちらか一方が非平面構造を有するものを用いて合成されることが好ましく、もしくは、酸二無水物またはジアミン化合物のどちらか一方が脂環式構造を有するものを用いて合成されることが好ましい。これにより短波長領域の分光吸収をより抑制することができるポリイミドおよびポリアミドイミドを基材層に含ませることができる。また、中間転写ベルト基材層にこれらのポリイミドおよびポリアミドイミドを含ませることで、活性線硬化型インクを用いた画像形成に上記中間転写ベルトを用いるときは、中間転写ベルト上の上記インクに、中間転写ベルトを透過した紫外線などの活性線を照射して、中間転写ベルト上でインクを仮硬化させる画像形成方法を行うことができる。
【0031】
具体的には、これらの材料を基材層に用いることで、中間転写ベルトの表面に付与された活性線硬化型インクに対して、中間転写ベルトの裏面(本実施形態では、中間転写ベルトのインクが着弾する表面を「表面」、上記表側の表面とは反対側の表面を「裏面」とする。)から活性線を照射し、上記インクを中間転写体の表面で仮硬化させることができる。上記仮硬化により、転写時のインクを所定の硬度とすることにより、記録媒体へのインクの転写率を向上させることができる。このとき、上記表面に付与された活性線硬化型インクのうち、裏面側(基材層と接触している側)の硬度が高くなり、表面側の硬度が低くなるように増粘させることで、上記インクを中間転写ベルトから剥離しやすくして、中間転写ベルトの表面における中間画像の残存(転写もれ)をより効果的に抑制して転写性を向上させることもできる。
【0032】
また、このとき、これらの材料を基材層に用いることで、基材層が波長395nmの光を過剰に吸収することによる、基材層の光劣化を抑制することができる。
【0033】
上記観点から、上記基材層の、波長395nmの光の透過率は50%以上が好ましい。波長395nmの光の透過率が50%以上であると、上記光が、基材層を透過したとき、十分な量の光が中間転写ベルト上の活性線硬化型インクに到達する。
【0034】
なお、中間転写ベルトの使用法は上記態様には限定されず、たとえば活性線を照射しない画像形成方法において本実施形態に係る中間転写ベルトを用いてもよい。
【0035】
上記透過率は、例えば、分光光度計「U-3310」(株式会社日立ハイテクノロジーズ)を用いて測定することができる。上記透過率は、測定対象となる中間転写ベルトの膜厚を光路長としたときの、395nmが含まれる分光波長領域(たとえばU-3310ならば190~900nm)の透過率を測定し、測定された透過率のうち、395nmの透過率を算出する方法で、測定することができる。
【0036】
また、上記基材層の引張弾性率は、4GPa以上が好ましく、5GPa以上がより好ましく、6GPa以上がさらに好ましい。基材層の引張弾性率が4GPa以上であると、高速運転時に生じる僅かなシワの発生を抑制して、長期使用時の転写率の低下を十分に抑制することができる。基材層の引張弾性率の上限値は特に限定されないものの、10GPa以下とすることができる。
【0037】
また、上記基材層の引張弾性率に基材層の膜厚を乗じた値は、340GPa・μm以上が好ましく、400GPa・μm以上がより好ましい。上記高速運転時に生じる上記僅かなシワは、基材層が薄いときに、より発生しやすい。そのため、基材層が薄いときには引張弾性率をより高くすることで、基材層の厚みにかかわらず、長期使用時の転写率の低下を十分に抑制することができる。
【0038】
なお、基材層の引張弾性率はJIS K7161に準拠して求めることができる。また、基材層の膜厚は、例えば、渦電流式膜厚計MMS(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定できる。
【0039】
(コロイダルシリカ)
本発明の一実施の形態に係る基材層は、コロイダルシリカを含む。コロイダルシリカを含む基材層を用いることにより、乾式シリカを含む基材層を用いた場合と比較して、製造時のシリカの分散性が向上し、シリカの凝集による基材層の引張破断伸び、透明性および靭性の低下を抑制することができる。
【0040】
コロイダルシリカとは、表面改質等により水または有機溶媒への分散性を高められた、シリカ粒子である。シリカ粒子がコロイダルシリカであるか否かは、表面状態の観測により判別することができる。
【0041】
コロイダルシリカの形状の例には、球状、鎖状、数珠状(パールネックレス状)などが含まれる。球状のコロイダルシリカとは、シリカ粒子の一次粒子が単独で存在している状態をいう。鎖状のコロイダルシリカとは、シリカ粒子の一次粒子が鎖状に結合した環状構造を有しない二次粒子をいう。また、数珠状(パールネックレス状)のコロイダルシリカとは、シリカ粒子の一次粒子が環状に結合した二次粒子をいう。
【0042】
これらの中では、鎖状または数珠状のコロイダルシリカが好ましく、鎖状のコロイダルシリカがより好ましい。これらの形状のコロイダルシリカを用いることにより、コロイダルシリカ粒子同士の凝集をより十分に抑制できるので、コロイダルシリカを用いた際の基材層の光透過率の低下をより十分に抑制でき、基材層の靭性が向上して、基材層の耐クリープ性をより高いレベルで維持することができる。
【0043】
なお、コロイダルシリカは、形状または平均一次粒径の異なる2種類以上を含んでいてもよい。たとえば、鎖状のコロイダルシリカを用いる場合には、球状のコロイダルシリカを併用して含有してもよい。このような球状のコロイダルシリカの例には、鎖状のコロイダルシリカの製造上、排除が困難な球状コロイダルシリカなどが含まれる。
【0044】
コロイダルシリカの平均一次粒径は、10nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上50nm以下がより好ましく、10nm以上20nm以下がさらに好ましい。コロイダルシリカの平均一次粒径が10nm以上であると、基材層の引張破断伸びが高まりやすく、かつ印刷開始初期および長期使用時における転写性が良好となる。100nm以下であると、基材層の光透過性を、長期使用後においても向上させやすくすることができる。そのため、活性線を裏面から照射した際に、印刷開始初期および長期使用時において、インクの裏面側(基材層と接触している側)の硬度が高くなり、インクを中間転写ベルトから剥離しやすることができ、印刷開始初期および長期使用時において良好な転写性を得ることができる。また、100nm以下であると、中間転写ベルトの靱性の低下をより抑制することができる。なお、上記平均一次粒径は個数基準によるものである。
【0045】
コロイダルシリカの平均一次粒径は、基材層の断面を電子顕微鏡で観察することで測定できる。具体的には、基材層の断面を、例えば、走査型電位顕微鏡(日本電子株式会社製)で20000倍の拡大写真を撮影して、凝集粒子以外の100個のコロイダルシリカを無作為にスキャナに取り込む。スキャナに取り込んだ写真画像を、自動画像処理解析装置「LUZEXAP」(株式会社ニレコ製)を用いて、それぞれ粒径を(長径+短径)/2として解析し求め、平均することで計測することができる。なお、長径とは粒子における最大長さをいい、短径とは長径に直交する方向における最大長さをいう。
【0046】
なお、上述したように、コロイダルシリカは、シリカ粒子を水または有機溶媒に分散させたコロイド溶液であるため、基材層に含まれるコロイダルシリカの分散状態は、シリカコロイド溶液中のコロイダルシリカの分散状態と略一致する。したがって、製造時に測定される、シリカコロイド溶液中のコロイダルシリカの平均一次粒径を、基材層におけるコロイダルシリカの平均一次粒径としてもよい。シリカコロイド溶液中におけるコロイダルシリカの平均一次粒径は、例えば、動的光散乱法で測定できる。
【0047】
また、基材層に含まれるコロイダルシリカの含有量は、樹脂成分およびコロイダルシリカの合計重量に対して、5wt%以上60wt%以下が好ましく、10wt%以上60wt%以下がより好ましく、10wt%以上40wt%以下がさらに好ましい。基材層に含まれるコロイダルシリカの含有量が5wt%以上であると、基材層の引張破断伸びが高まりやすく、かつ印刷開始初期および長期使用時において良好な耐久性を得ることができる。60wt%以下であると、コロイダルシリカがより凝集しにくくなるため、分散性をより高めることができる。そのため、基材層の引張破断伸びおよび靭性の低下をより抑制することができる。
【0048】
(紫外線吸収剤)
本発明の一実施の形態に係る基材層は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。紫外線吸収剤は、活性線の照射による基材層の劣化を抑制し、長期使用時における転写性をより高めることができる。
【0049】
紫外線吸収剤の例には、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤が含まれる。
【0050】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の市販品の例には、アデカスタブ1413(株式会社ADEKA製、「アデカスタブ」は同社の登録商標)、SEESORB100、101、101S、102、103、106、107(いずれもシプロ化成株式会社製、「SEESORB」は同社の登録商標)、Sumisorb130(住化ケムテックス株式会社製、「Sumisorb」は住友化学株式会社の登録商標)、KEMISORB10、11、11S、12(いずれもケミプロ化成株式会社製、「KEMISORB」は同社の登録商標)などが含まれる。
【0051】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の市販品の例には、Tinuvin109、171、234、326、327、329、360、928(いずれもBASFジャパン社製、「Tinuvin」はBASF社の登録商標)、SEESORB701、703、704、706、707、709(いずれもシプロ化成株式会社製)、Sumisorb200、250、300、340、350(いずれも住化ケムテックス株式会社製)、KEMISORB71、73、74、79、279(いずれもケミプロ化成株式会社製)などが含まれる。
【0052】
ベンゾエート系紫外線吸収剤の例には、Tinuvin120(BASFジャパン社製)、SEESORB712(シプロ化成株式会社製)、Sumisorb400(住化ケムテックス株式会社製)、KEMISORB112、113、113(いずれもケミプロ化成株式会社製)などが含まれる。
【0053】
トリアジン系紫外線吸収剤の市販品の例には、Tinuvin477(BASFジャパン社製)、KEMISORB102(ケミプロ化成株式会社製)などが含まれる。
【0054】
紫外線吸収剤の含有量は、樹脂成分の全質量に対して、0.01wt%以上3.0wt%以下であることが好ましい。紫外線吸収剤の含有量が、0.01wt%以上であると、紫外線による基材層の劣化をより抑制することができ、3.0wt%以下であると、紫外線透過性を保持しやすくなるとともに、紫外線による光劣化をより抑制できる。なお、紫外線吸収剤の含有量は、成分を特定した後、その物質で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の検量線を求めておき、その成分の面積%から計算できる。
【0055】
1-1-1.基材層形成用組成物(塗布液)
本発明の一実施の形態に係る基材層を作製するための、基材層形成用組成物は、少なくとも上述の基材層を形成する樹脂成分の前駆体、コロイダルシリカ、および上述の樹脂成分の前駆体を良好に溶解することが可能な有機極性溶媒を含むことが好ましく、上記成分および上記紫外線吸収剤を含むことがより好ましい。上記有機極性溶媒を含むことにより、基材層形成用組成物を塗布液としてそのまま使用できる。
【0056】
上記有機極性溶媒の例には、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、γ-ブチロラクトン(GBL)、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)が含まれる。これら有機極性溶媒は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0057】
この場合、コロイダルシリカは、例えば、シリカコロイド溶液の形態で基材層形成用組成物に添加される。樹脂の前駆体との相溶性の観点から、コロイダルシリカの原料分散液における分散媒は有機溶媒が好ましい。シリカコロイド溶液におけるコロイダルシリカの分散媒として有機溶媒を用いると、コロイダルシリカの表面の親溶媒性の官能基等に有機溶媒由来の有機基が結合した構造が分散媒中で形成され、樹脂の前駆体を含む基材層形成用組成物における分散性が確保される。
【0058】
コロイダルシリカの分散媒としての上記有機溶媒の例には、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PMA)、エチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル(NPC)、エチレングリコール(EG)、プロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロピルアルコール(IPA)、γ-ブチロラクトン(GBL)、メタノール、n-ブタノール、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン、キシレン、トルエン、酢酸エチルなどが含まれる。なお、有機溶媒は、1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0059】
シリカコロイド溶液に含まれるコロイダルシリカの含有量は、分散状態を良好に保つ範囲であれば特に限定されない。5wt%以上60wt%以下が好ましく、10wt%以上40wt%以下がより好ましい。
【0060】
コロイダルシリカを含むシリカコロイド溶液としては、市販品を用いてもよい。シリカコロイド溶液の市販品の例には、日産化学工業株式会社製の、スノーテックス(水を分散媒とするコロイダルシリカ分散液、「スノーテックス」は同社の登録商標)、オルガノシリカゾル(有機溶媒を分散媒とするコロイダルシリカ分散液)などが含まれる。
【0061】
なお、基材層形成用組成物は、上述の成分を容器に入れ、ミキサーで十分に混合することにより得ることができる。
【0062】
1-2.弾性層・表面層
本発明の一実施の形態に係る中間転写ベルトは、弾性層を有していてもよいし、表面層を有していてもよいし、弾性層および表面層を有していてもよい。
【0063】
上記弾性層の材料の例には、天然ゴム、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム、クロロプレンゴム、ニトリルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、フロロシリコーンゴム、フッ素ゴム、液状フッ素エラストマーが含まれる。耐熱性ゴムは、紫外線透過性、耐熱性の観点から、シロキサン結合を主鎖とする弾性ゴムが好ましく、シリコーンゴムが好ましい。耐熱性ゴムは、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0064】
上記表面層は、樹脂などを含む塗布液の硬化物である。また、上記塗布液はさらに溶剤を含んでいてもよい。上記樹脂の例には、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニルおよびポリビニルアルコールが含まれる。
【0065】
なお、本発明の中間転写ベルトは基材層のみを含むことが好ましい。
【0066】
2.中間転写ベルトの作製方法
本発明の一実施の形態に係る中間転写ベルトの作製方法について説明する。
【0067】
図1は、本発明の一実施の形態に係る中間転写ベルトを作製するための装置を示す模式図である。
図1に示されるように、塗布装置100は、円筒状金型110と、ノズルを有する塗布手段120と、を有する。
【0068】
円筒状金型110の種類は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。上述の基材層形成用組成物(塗布液)を円筒状金型110の内周面に塗布する場合は、中空円筒状である必要があるが、塗布液を円筒状金型の外周面に塗布する場合は、金型は中空円筒状であっても、そうでなくてもよい。
【0069】
また、円筒状金型110の材質は、特に制限されず、公知のものを用いることができる。円筒状金型の材質の例には、炭素鋼、ステンレス、アルミニウム、鉄等が含まれる。これらの中では、ステンレスが好ましい。ステンレスの種類の例には、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレスが含まれる。
【0070】
なお、円筒状金型110の内径および外径は、所望の中間転写ベルトのサイズよって適宜選択できる。また、円筒状金型110の幅(回転軸方向の長さ)も、所望の中間転写ベルトのサイズによって適宜選択できる。
【0071】
なお、円筒状金型110の塗膜形成面111には、あらかじめ、剥離しやすいように離型剤を塗布しておくことが好ましい。
【0072】
塗布手段120は、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。塗膜を均一化させる観点から、円筒状金型110を回転させながら、塗布液130をノズル、ニードルノズル、スプレーやディスペンサーのような液供給装置(不図示)によって、内周面全体または外周面全体に塗布する方法が好ましい。塗膜をより均一化させる観点から、円筒状金型110を矢印A方向(時計回り)に所望の速度で回転させ、さらに矢印B方向(塗膜が形成されていない方向)に塗布手段120を移動させながら、ノズルから塗布液を流延させて、らせん状に塗布することが好ましい。これにより、より均一な塗膜を形成することができる。なお、塗布液を塗布した後、塗布時よりも高速で円筒状金型110を回転させて、塗膜を均一に広げてもよい。これにより、さらに、塗膜を均一化させることができる。
【0073】
塗布手段120によって、円筒状金型110の塗膜形成面111に塗布された塗膜を、加熱により乾燥および硬化させることで、基材層を形成することができる。
【0074】
上記塗膜を乾燥させる方法は、特に限定されない。上記塗膜の乾燥は、例えば、円筒状金型110上の塗膜140を回転させながら、加熱装置(不図示)で徐々に昇温させ、加熱温度50~150℃の低温で30~90分間加熱して、溶媒を除去することで行うことができる。なお、加熱時間は、基材層形成用組成物(塗布液)中の溶媒等の揮発成分の種類、含有量、および加熱温度等に応じて適宜設定できる。また、上記の低温加熱による乾燥は、低温加熱後の皮膜の状態が皮膜自身で支持できる状態、すなわち自己支持性を有する状態になるまで行うことが好ましい。この過程では、雰囲気の蒸気(揮発した溶媒等)を効率よく循環して取り除くことが好ましい。
【0075】
上記低温加熱による乾燥後に行う硬化のための加熱(焼成)方法は、特に限定されない。塗膜の硬化は、例えば、高温(例えば250~450℃)で、加熱して行うことができる。なお、加熱温度は、樹脂の前駆体の硬化反応の温度に応じて適宜設定できる。また、加熱時間は、樹脂の前駆体の種類、基材層の厚さおよび加熱温度等に応じて適宜設定できる。上記加熱処理に際しては、低温加熱および高温加熱のいずれの場合も、昇温は段階的に行うことが好ましい。
【0076】
このようにして、中間転写ベルト(基材層)を作製することができる。
【0077】
3.画像形成方法
本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、(1)上述の中間転写ベルトの表面に中間画像を形成する画像形成工程と、(2)中間画像を上記中間転写ベルトから記録媒体に転写する転写工程と、を有する。
【0078】
以下、各工程について説明する。
【0079】
3-1.画像形成工程
画像形成工程は、中間転写ベルトの表面に中間画像を形成する工程である。
【0080】
上記中間画像は、トナーにより形成された画像であってもよいし、インクにより形成された画像であってもよい。インクにより中間画像を形成するとき、水系、溶剤系および活性線硬化型のいずれのインクを用いてもよい。これらのトナーおよびインクは、公知のものを使用することができる。また、上記インクは、ゲル化剤を含有し、吐出後、中間転写ベルト上で相転移により流動性が低いゲル状態になるインクであってもよい。
【0081】
また、上記インクは、スプレー塗布、浸漬法、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、インクジェット法などの公知の方法で中間転写ベルトの表面に付与することができる。これらのうち、より高精細な画像を形成する観点からは、インクジェット法が好ましい。
【0082】
インクジェット法で使用するインクジェットヘッドは、オンデマンド方式およびコンティニュアス方式のいずれのインクジェットヘッドでもよい。オンデマンド方式のインクジェットヘッドの例には、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型およびシェアードウォール型を含む電気-機械変換方式、ならびにサーマルインクジェット型およびバブルジェット(「バブルジェット」はキヤノン株式会社の登録商標)型を含む電気-熱変換方式等が含まれる。
【0083】
また、インクジェットヘッドは、スキャン式およびライン式のいずれのインクジェットヘッドでもよい。
【0084】
3-2.活性線照射工程
本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、上述の画像形成工程において、活性線硬化型インクを用いて中間画像を形成するとき、中間転写ベルトの表面に付与されたインクに、中間転写ベルトの裏面から活性線を照射する活性線照射工程を有する。
【0085】
具体的に、活性線照射工程では、中間転写ベルトの表面に付与されたインクに活性線を、中間転写ベルトの裏面から照射して、中間転写ベルト上でインクを仮硬化させる。活性線が、中間転写ベルトを透過してインクに照射されることで、インクの裏面側(基材層と接触している側)の硬度が高くなり、表面側の硬度が低くなるように増粘させることができる。これにより、上記インクを中間転写ベルトから剥離しやすくして、中間転写ベルトの表面における中間画像の残存(転写もれ)をより効果的に抑制して転写性を向上させることができる。
【0086】
なお、上記活性線は、インクの付与後、転写までのどの時点でインクに照射してもよい。つまり、インクを転写する前に上記活性線を照射してもよいし、転写と同時に上記インクに上記活性線を照射してもよい。
【0087】
3-3.転写工程
本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、上述の中間転写ベルトの表面に形成された中間画像を上記中間転写ベルトから記録媒体に転写する転写工程を有する。
【0088】
具体的に、転写工程では、中間画像と、搬送路の表面に配置されて搬送されてきた記録媒体とを、転写部(中間転写ベルトと搬送路とが最接近した部分)において、転写ローラと搬送部とで押圧して、中間画像を中間転写ベルトから記録媒体に転写させる。
【0089】
これまで、画像形成方法として、インクジェット法を用いた画像形成方法を説明してきたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上述の画像形成工程において、中間転写ベルトの表面にトナーを付与して中間画像を形成し、上述の転写工程において、上記付与されたトナーを加熱および加圧して記録媒体に転写してもよい。
【0090】
3-4.硬化工程
本発明の一実施の形態に係る画像形成方法は、転写工程において記録媒体に転写された中間画像を硬化させる硬化工程を有してもよい。
【0091】
具体的に、硬化工程では、記録媒体に転写された中間画像に、例えば、活性線を照射することによって、中間画像を構成する活性線硬化型インクを硬化(本硬化)させる。これにより、記録媒体の表面に、目的とする高精細な画像を形成することができる。
【0092】
4.画像形成装置
図2は、本発明の実施の形態に係る画像形成装置200の例示的な構成を示す模式図である。
【0093】
本発明の一実施の形態に係る画像形成装置200は、中間転写ベルト210と、中間転写ベルト210の表面に、活性線硬化型インクを付与して中間画像を形成する画像形成部220と、中間転写ベルト210の表面に付与された活性線硬化型インクに活性線を照射する活性線照射部230と、中間画像を中間転写ベルト210から記録媒体Pに転写する転写部240と、記録媒体Pに転写された中間画像を硬化させる硬化部250を有する。
【0094】
また、画像形成装置200は、無端状のベルトの形状を有する中間転写ベルト210を張架するための転写ローラ260、駆動ローラ261および従動ローラ262と、記録媒体Pを搬送するための搬送路270と、記録媒体Pに転写されずに中間転写ベルト210の表面に残存した中間画像の一部を中間転写ベルト210の表面から除去するクリーニング部280と、を有する。
【0095】
中間転写ベルト210は、転写ローラ260、駆動ローラ261および従動ローラ262によって張架され、かつ回転移動し、画像形成部220によって中間転写ベルト210の表面に形成された中間画像を転写部240に搬送する。
【0096】
駆動ローラ261および従動ローラ262は、中間転写ベルト210をC方向(時計回り方向)に回転させる。
【0097】
中間転写ベルト210は、上述の中間転写ベルトである。
【0098】
中間転写ベルト210における、逆三角形状の左右の頂点部分に位置する駆動ローラ261および従動ローラ262に張架された部分は、画像形成部220から付与された活性線硬化型インクの着弾面となっている。中間転写ベルト210における、逆三角形状の下側の頂点部分に位置する転写ローラ260は、中間転写ベルト210を搬送路270に向けて所定のニップ圧により加圧する加圧ローラであり、画像形成部220から吐出された活性線硬化型インクが付与して形成された中間画像を記録媒体Pに転写する加圧部241として機能する。
【0099】
中間転写ベルト210は、395nmの波長の光の透過率が50%以上であることが好ましく、60%以上であることがより好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。395nmの波長の光の透過率が50%以上であると、活性線照射部230から照射された活性線が、中間転写ベルト210を透過しても十分な量の活性線を活性線硬化型インクに到達させることができる。また、中間転写ベルト210が活性線を過剰に吸収することによる、中間転写ベルト210の劣化を抑制することができる。
【0100】
画像形成部220は、本実施の形態ではインクジェット法により中間画像を形成するインク付与部であり、それぞれY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色の活性線硬化型組成物(インクジェット用インク)をノズルから吐出して中間転写ベルト210の表面に付与させる、インクジェットヘッド220Y、220M、220Cおよび220Kを有する。インクジェットヘッド220Y、220M、220Cおよび220Kは、上記各色の活性線硬化型インクを、中間転写ベルト210の表面のうち形成されるべき画像に応じた位置に付与して、中間画像を形成する。
【0101】
活性線照射部230は、活性線を、中間転写ベルト210の裏面から透過させて活性線硬化型インクに照射する。活性線照射部230は、画像形成部220の下流側、かつ転写部240の上流側において、活性線硬化型インクに活性線を照射する。
【0102】
中間転写ベルト210は、395nmの波長の光の透過率が50%以上であることから、活性線照射部230から照射される活性線を、中間転写ベルト210を透過させても十分な量の活性線を活性線硬化型インクに到達するので、裏面側の活性線硬化型インクの硬度を高くして、表面側の活性線硬化型インクの硬度が低くなるように増粘させることができる。これにより、上記中間画像が中間転写ベルトから剥離しやすくなるため、中間転写ベルトの表面への中間画像の残存(転写もれ)を抑制できる。
【0103】
転写部240は、中間転写ベルト210と搬送路270とが最接近した部分であって、逆三角形状の下側の頂点部分に位置する転写ローラ260および逆三角形状の左右の頂点部分に位置する駆動ローラ261および従動ローラ262によって中間転写ベルト210が、搬送路270の方向に付勢されることにより、中間転写ベルト210が接する搬送路270の表面を加圧する。
【0104】
そして、画像形成部220の下流側、かつ転写部240の上流側において、中間転写ベルト210の表面に形成され、搬送されてきた中間画像(活性線硬化型インク)に、活性線照射部230から、350nm以上450nm以下の波長の光を有する活性線(例えば紫外線)が照射される。照射された活性線は、中間転写ベルト210を透過して、中間画像の裏面側の活性線硬化型インクに到達する。活性線硬化型インクが増粘した状態で中間転写ベルト210から搬送路270側に加圧されることで、記録媒体Pに転写される。
【0105】
なお、活性線照射部230は、転写部240により転写されている活性線硬化型インクに活性線を照射する位置に配置されていてもよい。
【0106】
搬送路270は、例えば、金属ドラムで構成され、中間画像を転写される記録媒体Pを搬送する。搬送路270は、中間転写ベルト210の一部の表面に接して配置され、転写ローラ260(加圧部241)よって中間転写ベルト210の上記接する表面が加圧されることで、転写部240が形成される。搬送路270は、記録媒体Pの先端を固定する爪(不図示)を有してもよい。搬送路270は、当該爪に記録媒体Pの先端を固定し、
図1における反時計回り方向に回転することで、記録媒体Pを転写部に搬送する。
【0107】
硬化部250では、搬送路270による記録媒体Pの搬送方向における、転写部240より下流側に配置された活性線照射装置により、転写部240により転写された記録媒体P上の活性線硬化型インクに向けて活性線(例えば350nm以上450nm以下の波長の光)が照射される。これにより、硬化部250は、記録媒体Pに転写された中間画像を構成する活性線硬化型インクを硬化(本硬化)させる。これにより、記録媒体Pの表面に、目的とする高精細な画像が形成される。
【0108】
クリーニング部280は、ウェブローラやスポンジローラ等のクリーニングローラであり、転写部240の下流側で、中間転写ベルト210の表面に接触する。クリーニング部280は、上記クリーニングローラが駆動回転することで、転写部240において記録媒体Pに転写されずに中間転写ベルト210の表面に残存した残組成物(残塗布物)を除去する。
【0109】
これまで、インクジェット用インクを用いる画像形成装置について説明してきたが、本発明はこれに限定されない。たとえば、上述の画像形成部において、中間転写ベルトの表面にトナーを付与して中間画像を形成し、転写部において、付与されたトナーを加熱および加圧して記録媒体に転写する、トナーを用いる画像形成装置でもよい。
【実施例0110】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0111】
1.中間転写ベルトの作製
中間転写ベルト1~11を以下の手順で作製した。
【0112】
(中間転写ベルト1)
(塗布液の調製)
可溶性ポリイミド粉末(KPI-MX300F、河村産業株式会社製)をジメチルアセトアミドに溶解し、固形分15.0質量%のポリイミド溶液とした。コロイダルシリカの含有量が、樹脂成分およびコロイダルシリカの合計重量に対して5wt%となるように、ポリイミド溶液に、コロイダルシリカ(オルガノシリカゾルMEK-ST-ZL、球状、日産化学株式会社製)を添加し、ミキサーで十分に混合して塗布液を調製した。
【0113】
(中間転写ベルト1の作製)
次いで、外周に離型剤層を形成した、周長1,367mm、幅500mmの円筒状金型と、内径φ1mmのノズルを有して液体を定量吐出できるディスペンサーとを準備した。円筒状金型を、回転軸を中心に60rpmで回転させるとともに、ノズルを回転軸方向に移動させながら、ノズルから上記調製した塗布液を吐出して円筒状金型の外周面上にらせん状に塗布し、ウェット膜を形成した。なお、らせん状に塗布して塗膜部分同士がつながり、隙間が生じないようにした。
【0114】
次いで、円筒軸を中心に円筒状金型を60rpmで回転させながら、遠赤外線装置を用いて100℃で1.5時間加熱して上記膜を乾燥させ、円筒状金型の外周面に自己支持性のある膜を作製した。
【0115】
最後に、上記円筒状金型を加熱炉へ導入し、段階的に昇温して250℃に保持した状態で60分加熱処理(焼成)した。十分に冷却し、上記膜を円筒状金型から剥離することで、中間転写ベルト1を得た。
【0116】
(中間転写ベルト2~6)
表1に示されるように、塗布液に含まれるコロイダルシリカの平均一次粒径および含有量を変更した以外は、中間転写ベルト1と同様にして、中間転写ベルト2~6を得た。
【0117】
(中間転写ベルト7)
(塗布液の調製)
可溶性ポリイミド粉末(KPI-MX300F、河村産業株式会社製)をジメチルアセトアミドに溶解し、固形分15.0質量%のポリイミド溶液とした。コロイダルシリカの含有量が、樹脂成分およびコロイダルシリカの合計重量に対して30wt%となるように、ポリイミド溶液に、コロイダルシリカ(オルガノシリカゾルMEK-ST-UP、日産化学株式会社製)を添加した。さらに、樹脂成分の全重量に対して0.5wt%となるように、紫外線吸収剤(Tinuvin326、BASFジャパン株式会社製、「Tinuvin」は同社の登録商標)を添加し、ミキサーで十分に混合して塗布液を調製した。
【0118】
(中間転写ベルト7の作製)
上記塗布液を用いた以外は、中間転写ベルト1と同様にして、中間転写ベルト7を得た。
【0119】
(中間転写ベルト8の作製)
上記塗布液において、紫外線吸収剤の含有量を3.2wt%に変更した以外は、中間転写ベルト7と同様にして、中間転写ベルト8を得た。
【0120】
(中間転写ベルト9)
表1に示されるように、塗布液に含まれるコロイダルシリカの含有量を変更した以外は、中間転写ベルト4と同様にして、中間転写ベルト9を得た。
【0121】
(中間転写ベルト10)
(塗布液の調製)
可溶性ポリイミド粉末(KPI-MX300F、河村産業株式会社製)をジメチルアセトアミドに溶解し、固形分15.0質量%のポリイミド溶液とした。粉末状の乾式シリカ(NAX50、日本アエロジル株式会社製)をジメチルアセトアミドに超音波分散機で分散してシリカ分散液とし、乾式シリカの含有量が、樹脂成分および乾式シリカの合計重量に対して15wt%となるように、ポリイミド溶液にシリカ分散液を添加し、ミキサーで十分に混合して塗布液を調製した。
【0122】
(中間転写ベルト10の作製)
上記塗布液を用いた以外は、中間転写ベルト1と同様にして、中間転写ベルト10を得た。
【0123】
(中間転写ベルト11)
表1に示されるように、塗布液に含まれる乾式シリカの含有量を変更した以外は、中間転写ベルト10と同様にして、中間転写ベルト11を得た。
【0124】
(中間転写ベルト12)
塗布液に含まれるコロイダルシリカの含有量を0wt%に変更した以外は、中間転写ベルト1と同様にして、中間転写ベルト12を得た。
【0125】
表1に、中間転写ベルト1~12に含まれるコロイダルシリカ、または乾式シリカの種類、形状、粒子径、含有量および中間転写ベルト1~12の厚さを示す。
【0126】
なお、各シリカの平均一次粒子径は、中間転写ベルトの断面を走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製)により撮影し、100個コロイダルシリカを無作為にスキャナで取り込み、その画像を自動画像処理解析装置「LUZEXAP」(株式会社ニレコ製)を用いて、それぞれ粒径を(長径+短径)/2として求め、平均することで求めた。また、中間転写ベルト1~12の膜厚は、渦電流式膜厚計MMS(フィッシャー・インストルメンツ社製)を用いて測定した。
【0127】
表1に示される略号は次のとおりである。
【0128】
(コロイダルシリカ)
A-1 :MEK-ST-ZL(固形分30wt%、分散媒:メチルエチルケトン)
A-2 :MEK-ST-L (固形分30wt%、分散媒:メチルエチルケトン)
A-3 :MEK-ST-40(固形分40wt%、分散媒:メチルエチルケトン)
A-4 :MEK-ST-UP(固形分20wt%、分散媒:メチルエチルケトン)
(乾式シリカ)
A-5 :NAX50
【0129】
【0130】
3.評価
中間転写ベルト1~12について、透過率、引張弾性率、および引張破断伸びを測定した。
【0131】
(透過率)
中間転写ベルト1~12の初期および耐久試験後における、波長395nmの光の透過率を、Spectrophotometer U-3200(日立製作所製)を用いて分光吸収スペクトルを測定することによって、求めた。本実施例では、測定する中間転写ベルトの膜厚を光路長として測定した。なお、表2、3に示される初期の透過率は、後述する10枚目のハーフトーン画像を形成した直後の中間転写ベルトの透過率測定したものであり、耐久試験後の透過率は、20,000枚目のハーフトーン画像を形成した直後の中間転写ベルトの透過率測定したものである。
【0132】
(引張弾性率)
中間転写ベルト1~12の引張弾性率は、JIS K7161に準拠して測定を行った。
【0133】
測定機器:テンシロン万能材料試験機RTC-1250(株式会社A&D製)
測定条件:引張試験用試験片:JIS K7161に準拠した形状
引張速度:5mm/min
チャック間距離:115mm
標点間距離:50mm
【0134】
(引張破断伸び)
中間転写ベルト1~12の引張破断伸びは、ISO527・JIS K7161に準拠して、試験片を両側から引っ張り、中間転写ベルトが破断する際の伸び率(元の状態の長さに対する伸びた長さの比率)を測定した。
【0135】
測定機器:テンシロン万能材料試験機RTC-1250(株式会社A&D製)
測定条件:引張試験用試験片:ISO527・JIS K7161に準拠した形状
引張速度:5mm/min
チャック間距離:115mm
標点間距離:50mm
【0136】
次に、中間転写ベルト1~12の転写性および耐久枚数の評価を行った。
【0137】
[活性線硬化型インクの調製]
以下の手順で、転写性および耐久枚数の評価に用いるための活性線硬化型インクを調製した。
【0138】
(顔料分散液の調製)
以下の成分を、合計で100質量部となるように調合した。これを、0.5mmφのジルコニアビーズ120gと共に、200ccの蓋付ポリエチレン容器に入れた後、蓋を閉め、ペイントコンディショナーで3時間分散させた。その後、上記ビーズを分離して、顔料分散液を得た。
【0139】
(顔料)
C.I.Pigment Blue 15:3 20.0質量部
(光重合性化合物)
トリプロピレングリコールジアクリレート 71.9質量部
(高分子分散剤)
Solsperse 3000 8.0質量部
(重合禁止剤)
Irgastab UV-10 0.1質量部
【0140】
なお、C.I.Pigment Blue 15:3(Fastogen Blue TGR/表面処理なし)はDIC株式会社製であり、「Fastogen」は同社の登録商標である。Solsperse 3000はLubrizol社製であり、「Solsperse」は同社の登録商標である。Irgastab UV-10はBASF社製であり、「Irgastab」は同社の登録商標である。
【0141】
(インクの調製)
得られた顔料分散液を60℃に加熱しながら、以下の成分を以下の割合となるように加えて、インクを調製した。
【0142】
顔料分散液 20.0質量%
(光重合性化合物)
PO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート 34.8質量%
ポリエチレングリコール#400ジアクリレート 20.0質量%
4EO変性ペンタエリスリトールテトラアクリレート 20.0質量%
(光重合開始剤)
Irgacure 819 3.0質量%
(光重合禁止剤)
Irgastab UV-10 0.1質量%
(界面活性剤)
KF-352 0.1質量%
(ゲル化剤)
カオーワックスT-1 2.0質量%
【0143】
なお、Irgacure 819はBASF社製であり、「Irgacure」は同社の登録商標である。KF-352は信越化学工業株式会社製である。カオーワックスT-1は花王株式会社製である。
【0144】
(画像形成)
調製したインクを、中間転写ベルト1、転写ローラおよびピエゾ型インクジェットノズルを備えたインクジェット記録ヘッドを有する画像形成装置に導入し、ペルチェ冷却ユニットを用いて25℃とした中間転写ベルトに対し、印字速度600mm/sで、1ドットライン-1ドット印字なし-1ドットラインの繰り返しハーフトーン画像を印字(解像度1200×1200dpi,インク液滴サイズ10pL)した。なお、インクジェット記録装置において、上記作製した中間転写ベルトは、逆三角形状の左右の頂点部分に位置する駆動ローラおよび従動ローラ、および逆三角形状の下側の頂点部分に位置する上記作製した転写ローラにより張架されている。
【0145】
中間転写ベルト1を800m/sの速度で走行させて、画像が転写部を通過する前に中間転写ベルトに印字された画像に対し、中間転写ベルトの裏面側に配置されたUV光源装置「LS-80-V5」(HOYA株式会社製)から、紫外線(波長395nm、照射強度200mW/cm2)を100msで照射し、画像と記録媒体(レザック66、260kg、特種東海製紙株式会社製)とを当接させた状態で、転写部を通過させ、記録媒体に転写した。最後に、波長395nm、照射強度500mW/cm2のUV光源装置を用いて、本硬化を行い、印刷物を作製した。同様にして、上記ハーフトーン画像を20,000枚出力した。
【0146】
また、中間転写ベルト2~12を用いて、中間転写ベルト1を用いた方法と同様の方法で、ハーフトーン画像を20,000枚出力した。
【0147】
(転写率評価)
(評価方法)
10枚目のハーフトーン画像を作製したときの転写率を初期の転写率とし、20,000枚目のハーフトーン画像を作製したときの転写率を耐久試験後の転写率とした。
転写率は、転写工程後の中間転写体を光学顕微鏡にて観察し、各中間画像のインク残存面積率を下記の基準で評価した。全てのインクを記録媒体に転写し、中間画像が残っていない場合を転写率;100%とした。
なお、△以上を合格とする。
【0148】
(評価基準)
◎:転写率は95%以上である
〇:転写率は93%以上95%未満である
△:転写率は90%以上93%未満である
×:転写率は90%未満である
【0149】
(耐久枚数評価)
(評価方法)
中間転写ベルト1を用いて、中間転写ベルトのキズ、ワレなどによる画質異常が生じるか、またはベルトの破損や変形により印字が不可能なるまで印字した。このとき、最後に正常に印字できた際の枚数を耐久枚数とした。なお、△以上を合格とする。
【0150】
また、中間転写ベルト2~12を用いて、中間転写ベルト1を用いた方法と同様の方法で印字した。
【0151】
(評価基準)
◎:耐久枚数は100,000枚以上である
〇:耐久枚数は60,000枚以上100,000枚未満である
△:耐久枚数は40,000枚以上60,000枚未満である
×:耐久枚数は40,000枚未満である
【0152】
中間転写ベルト1~12の透過率、引張弾性率×膜厚、および引張破断伸びの値、中間転写ベルト1~12の転写性および耐久性の評価結果を表2、3に示す。
【0153】
【0154】
【0155】
ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂とコロイダルシリカとを含む中間転写ベルト1~9は、乾式シリカを含む中間転写ベルト10、11およびポリイミド樹脂のみを含む中間転写ベルト12と比較して長期間使用しても転写性が良好であることがわかった。とくに、鎖状のコロイダルシリカを用いることにより、顕著な効果を奏することがわかった。これは、鎖状につながったシリカ粒子は、中間転写ベルト内で均一に分布し得るため、ベルトの膜厚のムラを低減するとともに、ベルトに柔軟性を付与するためであると考えられる。
【0156】
また、紫外線吸収剤を含むことにより、耐久試験後の転写率を顕著に抑制できることがわかった。
【0157】
一方で、乾式シリカを含む中間転写ベルト10、11では、長期使用後の転写性が低下した。これは、シリカが凝集することによって、光の透過率が低下し、中間転写ベルト上でインクの硬化が進行しづらくなったため、中間転写ベルトからインクが剥離しにくくなったことによるものと考えられる。また、ポリイミド樹脂のみを含む中間転写ベルト12でも、長期使用後の転写性が低下した。これは、中間転写ベルトの膜厚ムラや、シワよりによって、中間転写ベルトに局所的な微少変化が生じるためであると考えられる。
本発明の画像形成方法を用いることにより、長期間にわたり良好な転写性を有する画像形成方法を提供することができる。そのため、本発明は、活性線硬化型インクを用いた中間転写方式の画像形成方法の適用の幅を広げ、同分野の技術の進展および普及に貢献することが期待される。