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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182811
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電動アシスト自転車
(51)【国際特許分類】
   B62J 9/22 20200101AFI20221201BHJP
   B62M 6/55 20100101ALI20221201BHJP
   B62J 43/20 20200101ALI20221201BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20221201BHJP
【FI】
B62J9/22
B62M6/55
B62J43/20
B62J45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090549
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】521232027
【氏名又は名称】ハロースペース株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】岩下 卓利
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル ジョジョ サイモン
(57)【要約】
【課題】通常の自転車への取付けが比較的容易であるとともに、モータの修理、点検も容易であり、さらに前後輪の重量バランスを均等に保持することが容易で、しかも特に走行開始時の足による踏込力を軽減できる、電動アシスト自転車を提供する。
【解決手段】クランク軸100Aに軸装された主スプロケットS1と後輪側の後スプロケットS2との間に張架されるチェーンCHに噛合する発電用のスプロケットSを、発電用の回転軸に軸装し、前後輪の間の自転車のフレームFの一部に固設された発電機1と、発電機1から生成される電力の蓄電を行う蓄電器2と、発電機1から供給される電力で駆動され、クランク軸100Aに回動力を付与する回生機能付きモータ3と、自転車100の走行速度を検知する速度検知手段と、速度検知手段4で検知した自転車100の走行速度に応じて、蓄電器2からモータ3への給電量を制御する制御部51と、前後輪の間の自転車のフレーム間の空間に設置され、蓄電器2及び制御手段を収容する収容ボックス6と、を備えた。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自転車の走行速度を検出する速度検出手段と、
前後輪の間のフレームの一部に固設され、ペダルを設けたクランク軸に軸装された主スプロケットと後輪ハブ軸に軸装された後スプロケットとの間に張設されるチェーンに噛合する発電用のスプロケットを備えた発電機と、
前記発電機から生成される電力を取り込んで蓄電を行う蓄電手段と、
前後輪の間のフレームの一部に固設されるとともに、前記発電機又は前記蓄電手段から供給される電力で駆動され、前記速度検知手段で検知した前記自転車の走行速度に応じた回動力を前記クランク軸に付与するモータと、
前記自転車の走行速度に応じて前記蓄電手段から前記モータへの給電量を制御する制御手段と、
前後輪の間のフレームどうしの隙間を利用して設置され、少なくとも前記蓄電手段と前記制御手段とを収容する収容ボックスと、
を備えた、
ことを特徴とする電動アシスト自転車。
【請求項2】
前記ペダルへの足踏力が前記主スプロケットのクランク軸に作用するときに発生するトルクを検出するトルク検出器を備え、
前記トルクの変化を検出した前記制御手段は、前記トルクの変化量に応じて、前記蓄電手段への制御を行い、前記蓄電手段からモータへの給電量を増減させるように構成した
ことを特徴とする請求項1に記載の電動アシスト自転車。
【請求項3】
前記モータ及び前記発電機は、前記モータの出力軸と前記発電機の回転軸とが近接配置されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電動アシスト自転車。
【請求項4】
前記モータの出力軸と前記主スプロケットのクランク軸との間に前記モータからの回転力を断接する電磁クラッチを備え、
前記主スプロケットのクランク軸の回転数又は自転車の速度が一定値を超えると、前記制御手段による制御によって、前記クラッチが作動して前記モータからの回転力が前記主スプロケットの前記クランク軸へ伝達するのを遮断するように構成した、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車。
【請求項5】
前記モータは、回生機能付きであって、
前記制御手段は、前記速度検知手段から入力する前記自転車の速度が一定値を超えると、前記発電機又は前記蓄電手段から前記モータへの給電を停止するとともに、
前記主スプロケットの回転力が前記モータへ伝達されることで発生する前記モータの回生電力が、前記蓄電手段へ出力されるように構成した、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車。
【請求項6】
前記発電機及び/又はモータは、内部に備えた永久磁石の固有配置・配列による磁気回路の形成により、固有の磁束分布が形成されている、
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車。
【請求項7】
前記発電機及び/又はモータの永久磁石の配置・配列は、ハルバッハ配列磁界を有するように構成された、
請求項6に記載の電動アシスト自転車。
【請求項8】
少なくとも、前記発電機は、ブラシレス及びコアレスの構造を有するものである、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車。
【請求項9】
自転車本体の前側に設置され、前記発電機から前記蓄電手段への電力の供給及び休止と、前記蓄電手段から前記モータへの電力の供給及び休止とを、前記自転車の使用状況に応じて切り替え可能とするスイッチを設けた操作パネルを備えた、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の電動アシスト自転車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、二輪車又は三輪車などの電動自転車に係り、特に、自転車の走行を利用した発電による起電力によって蓄電器へ充電を行うとともにこの蓄電器からの電力供給によりモータを駆動し、自転車ペダルによる漕ぎ力をモータの回転駆動力でアシストする電動アシスト自転車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電動アシスト自転車が多数開発され普及している。このような電動アシスト自転車は、通常、後輪又は前輪の回転軸と直結したモータによるダイレクトドライブ方式で構成したものが一般的である。このような構成の電動アシスト自転車にあっては、ペダルを漕ぐとき足の踏込力を、モータの回転駆動力でアシストすることで自転車の走行を容易にしたものである。
【0003】
また、このような電動アシスト自転車の中には、例えば特許文献1に記載のように、自転車に、永久磁石どうしの磁力に基づいて回転する増幅回路装置を用いたものも提案されている。この特許文献1に記載のものは、ペダル側に発電装置を設けているとともに、この発電装置の内部に発電部を備えており、この発電部で発電された電力を発電装置の内部に別に設けてある二次電池に蓄電するようになっている。
【0004】
しかしながら、この特許文献1に記載のものにあっては、二次電池からの電力でペダル軸を回転させる構成となっているが、ペダル軸が回転してもクランク軸への回転力を与えるための回転伝達機構若しくは回転力連動機構を備えていない。そのため、どんなにペダル軸を回転させても、クランク軸の回転、延いてはこのクランク軸と同軸に設けたスプロケットを介して後輪側のスプロケットへ回転力を伝達することができない。即ち、自転車に対して電動のアシスト機能を備えている訳ではない。
【0005】
さらに、特許文献2に記載の磁石自転車も開示されている。この磁石自転車は、前輪側の発電機と後輪側のモータとを有している。この磁石自転車は、タイミングべルトで全誘導磁石回転車が回るようにし、モータが回ると、中央の大径電磁石車が永久磁石に近づいたときに同極面同士が対向する形で強い反発力を生じることを利用し、この力をそのまま後輪を回す力として使用し、初動のペダル漕ぎ数秒後には漕ぐ必要なく走行可能とすることを目的としたものである。
【0006】
また、さらに、特許文献3のような電動アシスト自転車も開示されている。この電動アシスト自転車では、クランク軸の回転力を受けて発電するオルタネータと、このオルタネータから出力される直流電流を蓄電する二次電池と、前輪に設けた駆動ハブモータなどと、を有する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-128265号公報
【特許文献2】特開2011-160644号公報
【特許文献3】特願2020-30079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2に記載の電動アシスト自転車は、主磁石が後輪の回転軸である主軸と一体となるような複雑な状態で主軸に固設されている。また、モータも主軸側と機構的に一体化された状態で介装されている。このため、例えば主磁石の組付けや取外しなどが簡単には行えず、また、モータの修理や点検なども面倒である。しかも、このような構成の電動アシスト自転車は、重量が後部側に集中しているので、前輪側と後輪側の重量配分が極端にアンバランスで、例えば坂道を下るような場合の安全性や走行安定性の点などで好ましくない。
【0009】
また、特許文献3に記載の電動アシスト自転車については、モータが前輪の回転軸と一体化されているので、例えばモータの修理のための取り外しや点検などを行うのが面倒で、厄介である。
【0010】
さらに、この特許文献3では、オルタネータがフレームに直接取り付けてあるのではなく、ペダルを取り付けているクランク軸の近傍でフレームから外側に突出している配置構成である。このため、自転車の乗車者は、足でペダルを漕ぐ際に、足の脹脛などがこのオルタネータに触れたり邪魔になったりするので、操作が煩わしい。また、自転車の左右一方側にオルタネータが飛び出している分、左右のバランスが悪くなり走行安全性が阻害される虞がある。
【0011】
また、特許文献3に記載の電動アシスト自転車にあっては、重量が前方側に偏重しているので、前後輪の重量バランスが悪く、走行安定性の点でも好ましくない。
【0012】
この発明では、通常の自転車への取付けが比較的容易であるとともに、モータの修理、点検も容易であり、さらに前後輪の重量バランスを均等に構成することが容易で、しかも特に走行開始時の足による踏込力を軽減できる電動アシスト自転車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明の電動アシスト自転車は、自転車の走行速度を検出する速度検出手段と、前後輪の間のフレームの一部に固設され、ペダルを設けたクランク軸に軸装された主スプロケットと後輪ハブ軸に軸装された後スプロケットとの間に張設されるチェーンに噛合する発電用のスプロケットを備えた発電機と、前記発電機から生成される電力を取り込んで蓄電を行う蓄電手段と、前後輪の間のフレームの一部に固設されるとともに、前記発電機又は前記蓄電手段から供給される電力で駆動され、前記速度検知手段で検知した前記自転車の走行速度に応じた回動力を前記クランク軸に付与するモータと、前記自転車の走行速度に応じて前記蓄電手段から前記モータへの給電量を制御する制御手段と、前後輪の間のフレームどうしの隙間を利用して設置され、少なくとも前記蓄電手段と前記制御手段とを収容する収容ボックスと、を備えたことを特徴とするものである。
【0014】
また、この発明の電動アシスト自転車は、前記ペダルへの足踏力が前記主スプロケットのクランク軸に作用するときに発生するトルクを検出するトルク検出器を備え、前記トルクの変化を検出した前記制御手段は、前記トルクの変化量に応じて、前記蓄電器への制御を行い、前記蓄電器からモータへの給電量を増減させるように構成したものである。
【0015】
また、この発明の電動アシスト自転車は、前記モータ及び前記発電機は、前記モータの出力軸と前記発電機の回転軸とが近接配置されているものである。
【0016】
また、この発明の電動アシスト自転車は、前記モータの出力軸と前記主スプロケットのクランク軸との間に前記モータからの回転力を断接する電磁クラッチを備え、前記主スプロケットのクランク軸の回転数又は自転車の速度が一定値を超えると、前記制御手段による制御によって、前記クラッチが作動して前記モータからの回転力が前記主スプロケットの前記クランク軸へ伝達するのを遮断するように構成したものである。
【0017】
また、この発明の電動アシスト自転車は、前記モータは、回生機能付きであって、前記制御手段は、前記速度検知手段から入力する前記自転車の速度が一定値を超えると、前記発電機又は前記蓄電手段から前記モータへの給電を停止するとともに、前記主スプロケットの回転力が前記モータへ伝達されることで発生する前記モータの回生電力が、前記蓄電手段へ出力されるように構成したものである。
【0018】
前記発電機及び/又はモータは、内部に備えた永久磁石の固有配置・配列による磁気回路の形成により、固有の磁束分布が形成されているものである。
【0019】
前記発電機及び/又はモータの永久磁石の配置・配列は、ハルバッハ配列磁界を有するように構成されたものである。
【0020】
また、この発明の電動アシスト自転車は、少なくとも、前記発電機が、ブラシレス及びコアレスの構造を有するものである。
【0021】
また、この発明の電動アシスト自転車は、自転車本体の前側に設置され、前記発電機から前記蓄電手段への電力の供給及び休止と、前記蓄電手段から前記モータへの電力の供給及び休止とを、前記自転車の使用状況に応じて切り替え可能とするスイッチを設けた操作パネルを備えたものである。
【発明の効果】
【0022】
この発明の電動アシスト自転車によれば、自転車の走行速度を検出する速度検出手段と、前後輪の間のフレームの一部に固設され、ペダルを設けたクランク軸に軸装された主スプロケットと後輪ハブ軸に軸装された後スプロケットとの間に張設されるチェーンに噛合する発電用のスプロケットを備えた発電機と、前記発電機から生成される電力を取り込んで蓄電を行う蓄電手段と、前後輪の間のフレームの一部に固設されるとともに、前記発電機又は前記蓄電手段から供給される電力で駆動され、前記速度検知手段で検知した前記自転車の走行速度に応じた回動力を前記クランク軸に付与するモータと、前記自転車の走行速度に応じて前記蓄電手段から前記モータへの給電量を制御する制御手段と、前後輪の間のフレームどうしの隙間を利用して設置され、少なくとも前記蓄電手段と前記制御手段とを収容する収容ボックスと、を備えた。このように、本発明の電動アシスト自転車は、発電機、蓄電手段、モータなどの重量の大きな部品を自転車本体の中央部分に配置したので、前後輪の重量バランスを均等に保持することが可能である。また、本発明の電動アシスト自転車は、発電機、蓄電手段、モータなどの故障やメンテナンスの必要頻度の高い部品を、前後輪の回転する軸部分に軸装させる構成をとなっていないので、修理、点検、交換などの際の着脱が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車(二輪車又は三輪車)を示す正面図。
図2図1におけるII-II線矢視断面図。
図3図1のAに示す発電機、モータなどの配置状態を示す要部拡大図。
図4】(A)は本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車に用いる発電機及びその取付け状態を示す説明図、(B)はIVB-IVB線矢視断面図である。
図5】本発明の一実施形態に係るモータの自転車フレームへの取付け方法を示す説明図である。
図6】(A)は本発明の一実施形態に係る速度検出器の取付け部位を示す
図7】本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車の構成の一例を示すブロック図。
図8】本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車のモータの制御を示すフローチャート。
図9】本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車の発電機の制御を示すフローチャート。
図10】本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車の設定モードである選択メニューを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この発明の要旨は、ペダルを設けたクランク軸に軸装された主スプロケットと後輪ハブ軸に軸装された後スプロケットとの間に張設されるチェーンに噛合する発電用のスプロケットを、発電用の回転軸と同軸に軸装し、前後輪の間のフレームの一部に固設した発電機と、発電機から生成される電力を取り込んで蓄電を行う蓄電手段と、前後輪の間のフレームの一部に固設し、発電機から供給される電力で駆動され、自転車の走行速度に応じてクランク軸に回動力を付与するモータと、自転車の走行速度を検知する速度検知手段と、速度検知手段で検知した自転車の走行速度に応じて蓄電手段からモータへの給電量を制御する制御手段と、前後輪の間のフレーム間の隙間を利用して設置され、少なくとも、蓄電手段を収容する収容ボックスと、を備えた電動アシスト自転車に関する。
【0025】
次に、この発明の実施例について、添付図面に基づき詳細に説明する。
<本発明の実施形態に係る電動アシスト自転車>
(電動アシスト自転車の構成)
図1は、本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車100(以下、「自転車100」と略す)を示す正面図である。本実施形態の電動アシスト自転車は、通常一般の自転車に備えているものと同様の基本構成要素、即ち、自転車100の骨格を構成するフレームFと、前輪W1及び後輪W2と、後輪W2側のスプロケット(以下、これを「後スプロケットS2」とよぶ)及びクランク軸100Aと同軸に固設した主スプロケットS1の間に張架されたチェーンCHと、サドルSD及びハンドルHと、ランプL及び図示外のブレーキとの他に、さらに、図6に示すように、発電機1と、蓄電手段2(以下、「蓄電器2」とよぶ)と、回生機能付きモータ3と、速度検知手段4と、制御手段5と、蓄電器2及び制御手段5を収容する収容ボックス6と、トルク検出器7と、電磁クラッチ8と、操作パネル9と、第1電磁スイッチSW1~第3電磁スイッチSW3と、を備えている。
【0026】
本実施形態のフレームFは、図1において、前輪W1及びハンドルHを取付け支持する前チューブF1と、サドルSDを支持するとともにペダルPを設けたクランクの回転中心となるクランク軸100Aを設けたシートチューブF2と、前チューブF1とシートチューブF2との間をつなぐトップチューブF3及びダウンチューブF4と、後輪W2を支持するとともにシートチューブF2と連結する後トップチューブF5及び後ダウンチューブチューブF6と、を備えている。
【0027】
発電機1は、ペダルPを設けたクランクCの主軸であるクランク軸100Aに軸装された主スプロケットS1と後輪W1のハブ軸100C(以下、「後ハブ軸100C」とよぶ)に軸装された後スプロケットS2との間に張設されるチェーンCHに噛合する、発電機専用のスプロケットSを、発電機1の回転軸1Aと同軸的に一体に取付けたフランジ付き大軸体1Eにおいて、これに固設した状態で軸装されている。本実施形態の発電機1は、図2乃至図4に示すように、自転車本体のフレームFの一部を構成するシートチューブF2において、これに螺着した取付プレート1Bのブラケット1Cに固設する、固定軸体1Dに片持ち状態で固定されており、シートチューブF2側に一体に固定されている。
【0028】
また、特に本実施形態の発電機1は、図4(B)に示すような磁石発電機、即ち、ロータ1R側が、後述するハルバッハ配列の永久磁石MGで、ステータ1S側が不図示のコイル巻線を用いた構成のブラシレス及びコア(鉄心)レスの同期発電機で構成している。このように、発電機1は、シンプルなブラシレスの構造であるので、故障が少なく、メンテナンスが容易である。なお、この発電機1は、その出力が、図7に示す制御手段5の基板に設けた整流器11に接続されており、ステータ1S側のコイル巻線からの交番電力(交番電流)が、図7に示す整流器11へ送り出される。
【0029】
また、本発明に使用する発電機としては、例えば特許第4782303号に記載のような、コギングトルクと称する抵抗を受けることが殆どなく、安定した起電力を効率よく発生するので、低速での自転車走行開始時の動力源を用いて発電する場合にも、十分な発電能力を発揮することができる。
【0030】
蓄電器2は、発電機1から生成される電力を取り込んで蓄電を行うものであり、図7に示すように、入力が第3電磁スイッチSW3を介して整流器11の出力に接続されているとともに、出力が第1電磁スイッチSW1を介してモータ3の入力に接続されている。
【0031】
また、この蓄電器2は、この蓄電器2での蓄電量を制御手段5で常時検知することができるようにするため、制御手段5にも接続されている。従って、制御手段5からの制御信号による第1電磁スイッチSW1の開閉動作により、蓄電器2からモータ3への給電及び給電停止を適宜に切り替えることができるように構成されている。なお、本実施形態の蓄電器2には、リチウムイオン電池を用いているが、これ以外に、例えばキャパシタ、スーパーキャパシタ、その他の適宜の蓄電手段が使用可能である。
【0032】
モータ3は、ペダルPへの足漕ぎ力で発生する自転車への推進力の他に、必要なタイミングで付加的に推進力を補充・補填するものである。本実施形態のモータ3は、発電機1のロータ1Rと同様、図示外のロータには、ハルバッハ配列磁界を有するように構成されており、大きなトルクを生成可能となっている。
【0033】
ここで、このハルバッハ配列について、簡単に説明する。一般に、モータや発電機のエネルギー変換効率については、磁力の強さ(磁界の強さ)に大きく依存することが知られていることから、これに着目した特有の磁極配列をなす磁石群(即ち、ハルバッハ配列)が、既に見出されている。つまり、このハルバッハ配列とは、隣接する磁石どうしのN極とS極とが90度ずつ向きを変えたもので組み合わせるとともに、これらの組み合わせた磁石群を、連続的に、サイクリック複数群、配設した構成のものである。特に、磁石の片側に磁界を集中させ、磁力を強めることができることに大きな特徴を有する。本実施形態のモータ3には、このハルバッハ配列を有する磁石群を設けたロータを備えている。
【0034】
また、本実施形態のモータ3には、制御手段5による制御によって発電機1から適宜に供給される電力で回転駆動される出力軸3Aを備えている。即ち、このモータ3では、図2及び図3に示すように、出力軸3Aに取付けたモータギア3Bの回転力を、電磁クラッチ8を介して後述するアシストギア3Cに伝達させることにより、自転車100の走行速度に応じた回転力をクランク軸100Aに付与するように構成されている。
【0035】
このアシストギア3Cは、図2及び図3に示すように、主スプロケットS1の裏面側に固着された全体略星形形状を有する多足プレートLFPを介して、主スプロケット3C側に固定されており、主スプロケットS1と一体になり、同一角速度で回転する。多足プレートLFPは、等角的に放射状に突出する各足部が略ドーナッツ状の主スプロケットS1の内周縁近傍と重畳するような配置及び大きさを有しており、この足部において主スプロケットS1へ螺着されている。また、このアシストギア3Cは、多足プレートLFPの外形よりは小さいが、モータ3の出力軸3Aに同軸的に固設されているモータギア3Bにちょうど噛合する外形寸法を有するギアであって、常時、主スプロケットS1と同一方向に回転するが、このアシストギア3Cに噛合するモータギア3Bは、常時アシストギア3Cとは逆方向に回転する。
【0036】
なお、ペダルPは、これに足を載せて漕ぐためのものであるが、図2に示すペダルPを設けているクランクCは、通常、一般に、クランク軸100Aと一体になっている。従って、主スプロケットS1が回転するときには、そのペダルPも同一角速度で回転を行う構成となるので、自転車速度が次第に増大すると、そのクランクCもこれに比例して角速度が増大する。その結果、例えば下り坂などでは、自転車速度が過大になると、これに追従するようにクランクCも過大な角速度で回転する。その結果、ペダルPに載せている足及び下肢も忙しく上下に揺動させて追従させることが避けられない。
【0037】
そこで、このクランク軸100Aと一体のクランクCでは、例えばクランク軸100Aとの接続部に変速ギア機構を介在させ、例えばクランク1回転でクランク軸100Aが2回転するような構成とすれば、ペダルPを踏む足や下肢の動きの動作が緩和され、便宜である。さらに、所定の回転速度を超えて主スプロケットS1が回転するような場合には、例えば主スプロケットの回転角速度が一定値ω(rad/sec)を超え出すと、制御部がこれを検出してクランク軸とクランクとの接続を断つとともに、一定値ωまで回転角速度が低下したところで、再び双方の間を機械的に接続させるような電磁クラッチ機構を双方の間に介装させてもよい。
【0038】
従って、このような構成の自転車100であれば、自転車100の使用者が坂を下るような危険な状況下での使用であっても、ペダルPに載せている足及び下肢も忙しく上下に揺動させて追従させることが回避でき、安全な自転車走行が可能となる。さらに、急坂などでの主スプロケットS1に過度な回転速度になると、クランク軸100Aの回転動作を電磁クラッチ機構が遮断することができ、従来のようなペダルから足を離して浮かせるような無理な動作を強いることもなく、さらに安全性が確保できる。
【0039】
なお、本実施形態のモータ3は、薄型で略瓢箪形などの固有形状を有する固定具30を用いることで、このモータ3の筐体両面側を左右から挟持・挟着してシートチューブF2に固定してある。なお、このモータ3は、シートチューブF2に固定してあるが、トップチューブF3又はダウンチューブF4、あるいはこれらのチューブの間に固設させてもよい。
【0040】
また、本実施形態のモータ3は、回生機能付きタイプのモータであり、例えばブレーキを掛けて自転車速度を減速させる際には、速度検出器4からの急激な速度低下情報が制御手段5へ出力されると、この速度の急激な低下情報を受けた制御部51は、蓄電器2からモータ3への給電を停止させるための制御信号を第1電磁スイッチSW1へ出力し、直ちにモータ3への給電が停止する。さらに、本実施形態のモータ3は、ブラシレスで、しかも、鉄心と永久磁石の作用によって生じる抵抗(コギングトルク)が発生しないコアレスタイプのものを使用しているので、滑らか回転動作も実現できる。
【0041】
なお、この場合には、緊急的かつ迅速な制御であるため、制御部51からは、電磁クラッチ8へ切状態となる制御信号を出力することがないが、給電が停止されているモータ3では強制的に回転してクランク軸100Aへのアシスト力を付加する虞がないので問題ない。それどころか、本実施形態では、このような速度の急速低下に関する情報を速度検出器4から入力した制御部51では、緊急な状況にあると判断し、モータ3への給電停止状態のまま、第2電磁スイッチSW2へ回路をつなぐための制御信号が出力され、モータ3と整流器11とが緊急的に接続される。その結果、下記のような4条件が同時に満たされることなる。即ち、
(i)電磁クラッチ8が作動したままの接続状態であるので、モータ3とアシストギア3Cとの間の回転力の伝達を可能な状態に保持したままであること、
(ii)第1電磁スイッチSW1が開いた状態であるので、蓄電器2からモータ3への給電が停止状態であること、
(iii)第2電磁スイッチSW2が閉じ状態でモータ3と整流器11との間が接続状態となっていること、
(iv)第3電磁スイッチSW3が閉じている状態を維持していること、
この4条件を満たしている状態のときには、給電が停止されているモータ3がアシストギア3Cからの回転力を受け、モータ3内のロータが強制的に回転され、この回転に伴って、ステータ側の巻線コイルに電磁誘導起電力が生じ、この起電力が整流器11を介して蓄電器2へ供給される。その結果、モータ3での回生電力を蓄電器2へ蓄電させることが可能となる(回生エネルギーによる蓄電)。
【0042】
即ち、本実施形態では、各部を適宜に電気的に接続することで、蓄電器2からの給電がなくなったモータ3は、自転車100の降下に伴う慣性力で回転中のクランク軸100Aからの回転力が、アシストギア3Cから逆にモータ3の不図示のロータへ伝達されてロータが回転駆動され、その結果、不図示のステータ側に設けたコイルへは誘導起電力が発生する。これにより、主たる発電機1からの起電力とともに、補助的なモータ3からの回生起電力も整流器11へ出力されるので、2系統から蓄電器2への充電がなされるようになる。
【0043】
さらにまた、この回生機能付きモータ3では、回生電力の蓄電器2への電力回収が行われるのと同時に、例えば制限速度を超えるような過剰な速度で走行する自転車100に対して、制動機能も発揮することができる。即ち、モータ3では、このモータ3のロータを駆動させるためにクランク軸100Aの回転力(エネルギー)が使用されるため、クランク軸100Aでは、ロータからの負荷がかかることにより、制動力が生じることになる。このため、モータ3は、発電作用と制動作用の2種の機能を発揮することができるようになる。なお、この場合、自転車100の運転者の漕ぐペダルPによる漕ぎ力は発生しておらず、単に惰性で自転車100が走行しているものとする。
【0044】
また、本発明に使用するモータとしては、前述した発電機の場合と同様、例えば特許第4782303号に記載のような、コギングトルクと称する抵抗を受けることが殆どなく、安定した回転駆動力を効率よく発生するので、低速での自転車走行開始時の動力源として用いる場合にも、十分なアシスト力を発揮することができる。
【0045】
なお、発電機1及びモータ3から送電される電力は、蓄電器2が満充電状態であることを制御部51で検出した場合には、制御部51から出力される制御信号で第3電磁スイッチSW3が開状態となるので、それ以上に蓄電器2への過剰な電力が供給されることがない。また、例えば蓄電器2としてリチウムイオン電池などを使用するような場合、リチウムイオン電池は電力密度が高く、過充電などにより発火・発煙が発生し、火災につながる恐れもあるので、電池への充電が満了した際に充電を停止する安全装置が組み込まれているものの場合には、上記のような構成、即ち、第3電磁スイッチSW3などを設ける必要はない。
【0046】
速度検知手段4は、自転車の走行速度を検知するものであり、本実施形態では、図6に示すように、前チューブF1の下部側の左右に分岐したフロントフォークFF部分に設けた磁気センサ41と、この磁気センサ41に近接した状態で、前輪W1のハブ軸100B(以下、「前ハブ軸100B」とよぶ)に軸装されてスポーク110Bを周設するハブ板110Aに、等間隔で設けたマグネット42と、で構成されている。なお、本実施形態では、前輪W1のハブ板110Aの外縁近傍に設けたマグネット42の単位時間当たりの通過回数を磁気センサ41でカウントして自転車の速度(以下、これを「自転車速度」と呼ぶことがある)を検出する構成としたが、特にこの構成のものに限定するものではない。また、この検出媒体としては、特にこの磁界に限定されるものではなく、例えば超音波や特定波長の光の受信回数などであってもよい。
【0047】
制御手段5は、図7に示すように、CPUを備えた処理部(以下、「制御部51」とよぶ)と、図示外のRAM及びROMなどを設けたメモリと、外部側の各種回路との接続を図る不図示のインターフェースなどとを備えている。本実施形態の制御部51は、蓄電器2と電気的に接続されている以外に、入力が後述する速度検出器4、トルク検出器7、操作パネル9の各設定スボタンC,D,Sにも接続されているとともに、出力が、蓄電器2とモータ3との間の接続配線に設けた第1電磁スイッチSW1、モータ3と整流器11との間の接続配線に設けた第2電磁スイッチSW2、モータ3とアシストギア3Cとを機械的に断接する電磁クラッチ8、操作パネル5、蓄電器2がフル充電であることを制御部51が検知したときに整流器11からの電力の供給を停止させる第3電磁スイッチSW3などにも接続されている。
【0048】
このような構成の制御部51は、速度検知手段4で検知した自転車100の走行速度に応じて、蓄電器2であるリチウムイオン電池からモータ3への給電量を制御するとともに、特に検知した自転車速度が所定の設定値を超え出す場合には、電磁クラッチ8を作動・制御してモータ3からの回転駆動力が付加されないようになっている。さらに、この制御手段5では、蓄電器2を構成するリチウムイオン電池の充電量を逐次検出・監視しており、フル充電になったときには、蓄電器2であるリチウムイオン電池への電力供給を停止させるため、充電手段2からモータ3への間の電気的な通電を図る接続配線間に設けた第1電磁スイッチS/W1に対して、その断接動作を制御するように構成されている。
【0049】
さらに、本実施形態では、モータ3が回生機能付きのもので構成されているので、制御手段5は、モータ3から蓄電器2であるリチウムイオン電池までの電気的な接続を図るため、前述したように、モータ3から整流器11への接続配線中に設けた第2電磁スイッチS/W2の断接動作も制御するように構成されている。
【0050】
収容ボックス6は、蓄電器2及び制御手段5を収容するものであり、トップチューブF3とダウンチューブF4との間の、略三角形若しくは略台形の隙間空間などに設置されている。なお、この設置空間は自転車100の使用者の両足の動きの邪魔にならないよう、左右方向の厚さについては、極薄な形状に形成してある。この収容ボックス6には、不図示の基板が収容されており、その基板には一面側に制御手段5を構成する制御部51の他に、いずれも不図示の、メモリ、インターフェースなどを実装している。また、この基板の裏面には、蓄電器2を構成するリチウムイオン電池が複数個設置されている。
【0051】
トルク検出器7は、ペダルPへの足の踏込力により、主スプロケットS1の主軸であるクランク軸100Aに作用するトルクを検出する。本実施形態のトルク検出器7は、例えば自転車100が登坂を上るときなどには、自転車100を漕ぐペダルPへの足の踏込力或いは漕ぎ力が増大して自転車100の使用者に過剰な負荷が足に作用した状態となるので、このような状況を感知することができる。本実施形態のトルク検出器7は、例えばクランク軸100Aの近傍に設けた公知のトルクセンサで構成されており、出力が制御部5の入力に接続されており、トルク値が所定レベルを上回ったり下回ったりしたときに、蓄電器2からモータ3への給電量を増減させるよう、蓄電器2を制御することができるように構成されている。
【0052】
電磁クラッチ8は、モータ3の出力軸3Aと主スプロケットS1の回転軸(即ち、クランク軸100A)との間において、モータ3からの回転力を断接するものである。即ち、主スプロケットS1の回転軸であるクランク軸100Aの回転数が一定値を超えると、制御手段5による制御によって、電磁クラッチ8が作動し、モータ3からの回転力が主スプロケットS1の回転軸であるクランク軸100Aへ伝達するのを遮断するようになっている。
【0053】
操作パネル9は、発電機1から蓄電器2への電力の供給及び休止と、蓄電器2からモータ3への電力の供給及び休止とを、自転車100の使用状況に応じて切り替える選択スイッチを自転車本体のハンドルH上部に設置してある。本実施形態の操作パネル9には、充電モードのON操作を行う充電操作スイッチCと、放電モードのON操作を行う、つまり蓄電器2からモータ3への給電などの際に行う放電操作スイッチDと、自転車の使用を終了するための停止スイッチSと、を備えている。なお、これらのスイッチC,D,Sは、一回押圧するとON状態となり、例えばスイッチ自体が青色に点灯する。また、もう1回押圧すると、OFF状態となり、例えばスイッチ自体が点灯から消灯に変わる。以下、このような操作を繰り返すことで、ON及びOFFを切り替えることができる。このような各スイッチのON,OFF操作の組み合わせによって、図10に示すような各種の使用態様に最適な4種類のモード、即ち、
1)第1モード:
これは初期モード状態であり、自転車100の使用者が、これから使用を開始する直前や運転を終了した直後の状態、或いは信号待ちなどの自転車100を一時的に停止させるときの状態である。なお、この第1モードについては、例えば充電操作スイッチC及び充電操作スイッチDの双方について、何も操作しないときや、停止スイッチSを操作した状態のときに、充電操作スイッチC及び放電操作スイッチDがリセットされて、それぞれOFFの状態に戻るように設定されている。
2)第2モード:
自転車100の走行開始時には、まだ自転車100自体の走行速度が遅く、加速もまだついていないので、使用者が踏んで操作するペダルPへの踏込力が大きい状態である。即ち、自転車走行の中でも最もアシストを必要とする状況(但し、急な登坂を除く。)にあるので、充電動作は一時中断して(継続しても可能)、蓄電器2からモータ3への電力供給のみが設定されている。なお、本実施形態では、発電機1の回転軸1Aと同軸で設け、チェーンCHと噛合させてある発電機側のスプロケットSに関しては、例えば、回転軸1Aとの間に図示外の電磁クラッチを介在させるようにし、制御出力5がこの電磁クラッチの断接制御を行うようにする構成としてもよい。このような構成とした場合には、走行開始状態での対応に好適な設定である第2モードでは、電磁クラッチによって回転軸1AとスプロケットSとの間の接続状態を断っておくことで、ペダルPへの踏込力を多少軽減することができ、便宜である。
3)第3モード:
このモードは、走行する自転車道路が坂道などである場合を除き、走行を開始してからある程度時間が経過すると、自転車100自体に加速度がついてくるので、使用者はペダルPに乗せた足での踏み込む力を強めなくても済む。従って、蓄電器2への蓄電モードをON状態にするのと同時に、蓄電器2からモータ3への給電を行う。そのため、自転車100に乗っている使用者は、操作パネル9の充電操作スイッチCをONにするとともに放電操作スイッチDもONにすれば、この第3モードが設定される。なお、第2モードからの移行の場合には、すでに放電スイッチDはON状態にあるので、放電スイッチDは操作しなくてもよい。
4)第4モード:
このモードは、例えば平坦路での使用者のペダルPによる足での踏込み力が過大になり、制限速度を上回りそうになったときに、蓄電器2からモータ3への給電操作を停止するような状態の場合である。また、さらに、特に運転中の自転車100が坂道などを下る際に、過剰な速度に陥りそうな状態のときにも、この第4モードを設定させることで、給電停止状態にあるモータ3は、それまでとは逆に、慣性力で降下中の自転車100のクランク軸100Aからの大きな回転力がモータ3のモータギア3Bに伝達されてそのモータギア3Bの回転と直結するロータへの回転動作として消費される。従って、その分、クランク軸100Aでは負荷が発生し、制動がかかることになる。これにより、過大な自転車速度での走行が抑えられるように設定される。
【0054】
従って、自転車100の運転者は、操作パネル9を用いて、4種類のモードの中から、いずれかのモードを自由に選択・設定することができるようになっている。
【0055】
(電動アシスト自転車の作用及び効果)
従って、本実施形態の電動アシスト自転車100によれば、自転車100の中央部側のシートチューブF2に固設された発電機1と、発電機1から生成される電力の蓄電を行う蓄電器2を構成するリチウムイオン電池と、発電機1からの電力で駆動され、自転車の走行速度に応じてクランク軸100Aに回動力を付与する、シートチューブF2に固設した回生機能付きモータ3と、自転車100の走行速度を検知する速度検知手段4と、速度検知手段4で検知した自転車の走行速度に応じて、蓄電器2からモータ3への給電量を制御する制御手段5と、自転車100の中央部側に設置され、蓄電器2及び制御手段5を収容する収容ボックス6と、を備えた。このように、本実施形態の電動アシスト自転車100は、発電機1、蓄電器2、モータ3などの重量の大きな部品を、自転車100の本体の中央部分に配置したので、前後輪の重量バランスを均等に保持することが可能である。また、本実施形態の電動アシスト自転車100は、同様に、発電機1、蓄電器2、モータ3などの故障やメンテナンスの必要頻度の高い部品を、前後輪の回転するハブ軸部分に軸装させる構成となっていないので、これらの修理、点検、交換などの際の着脱が容易である。
【0056】
(電動アシスト自転車の制御手段による各種の制御方法)
次に、本実施形態に係る電動アシスト自転車100に備える制御手段5によるモータ3の制御方法及び発電機1の制御方法について、それぞれ、図8及び図9のフローチャートを参照しながら詳細に説明する。
【0057】
(1)モータの制御方法:
図8は、本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車100の制御部5によるモータ3の制御方法を示すフローチャートであり、第1ステップSA1~第9ステップSA9で構成されている。
【0058】
第1ステップSA1では、自転車100の使用者が使用を開始する際に、例えばペダルPを漕ぐために足をペダルPに乗せた状態で、操作パネル9のスイッチのうち、図10に示す第2モードを設定することで、電動アシストが開始する。即ち、ここでの操作は、充電操作スイッチCをOFFにするとともに、放電操作スイッチDをONにすることで、この第3モードが設定される。従って、ペダルPに足を載せた状態でペダルPを踏み込むと、軽い踏込力で自転車100が走行を開始する。
【0059】
第2ステップSA2は、自転車100の走行中、自転車速度が規定の上限速度に達したか否かを、制御手段5に入力される速度検出器4からの速度信号に基づき、制御手段5の制御部51が算出するとともに、メモリに格納されている制限速度である上限速度まで達したか否かを、逐次所定の時間間隔で判断する。この第2ステップSA2にて制限速度に到達した場合には、第3ステップSA3に移行する。
【0060】
第3ステップSA3では、制御手段5が第1電磁スイッチSW1へ制御信号を出力し、この制御信号を入力した第1電磁スイッチSW1はOFF動作を行う。これにより、蓄電器2とモータ3との間の導通が切れるので、蓄電器2からモータ3への給電が停止する。
【0061】
第4ステップSA4では、これにより、モータ3によるアシスト力が消滅し、足でのペダルPの踏込力だけで自転車100は走行するので、意識的に踏込力を高めない限り、自転車100の走行速度が低下し、上限速度を超えないようにすることができる。以下、第2ステップSA2へ戻り、同様の動作を繰り返す。
【0062】
第5ステップSA5は、第2ステップSA2で制限速度に到達しなかったと制御手段5が判断すると、第1電磁スイッチSW1はON動作を継続するようにするため、このスイッチOFF用の制御信号の出力は行わない。これにより、蓄電器2とモータ3との間の導通状態が保持されるので、蓄電器2からモータ3への給電が引き続き行われる。
【0063】
第6ステップSA6は、自転車100の使用者が使用を終えて自転車100の走行を停止させるか否かを判断する。そして、引き続き使用する場合には、操作パネル9のスイッチ操作を行うことなく、そのまま自転車走行するとともに、元の第2ステップSA2へ戻り、同様の動作を繰り返す。即ち、引きつづき、一定時間間隔で、速度検出器4から制御手段5へ出力されてくる速度に関する情報に基づき、制御手段5が上限速度を超えたか否かの判断を毎回行う。一方、自転車100の使用者が使用を終えると判断したときには、その後、第7ステップSA7へ移行する。
【0064】
第7ステップSA7では、使用者は自転車100の使用を停止させるため、換言すれば、操作パネル9の停止スイッチSをONする。
【0065】
第8ステップSA8では、操作者が停止スイッチSをONしたことによる停止信号が操作パネル9から制御出力5の制御部51へ出力され、この停止信号を入力した制御部51では、第1電磁スイッチSW1に制御信号を出力してこれを設けている部分の接続を開状態とする。これにより、モータ3から自転車100のクランク軸100Aへのアシスト力の付与が停止する。
【0066】
第9ステップSA9は、走行中の自転車100は、モータ3からのアシスト力を失った分だけ速度が低下し、自転車100の操作者の足での踏込力だけで走行しているので、ブレーキをかければ、所望の場所で自転車100の走行を停止できる。
【0067】
(2)発電機の制御:
図9は、本発明の一実施形態に係る電動アシスト自転車100の制御部5による発電機1の制御方法を示すフローチャートであり、第1ステップSB1~第7ステップSB7で構成されている。
【0068】
第1ステップSB1は、自転車100の使用者が使用を開始する際に、例えばペダルPを漕ぐために足をペダルPに乗せた状態で、操作パネル9のスイッチのうち、図10に示す第2モードを設定することで、電動アシスト動作が開始する。即ち、ここでの操作は、充電操作スイッチCをOFFにするとともに、放電操作スイッチDをONにすることで、この第2モードが設定される。従って、ペダルPに足を載せた状態でペダルPを踏み込むと、軽い踏込力で自転車100が走行を開始する。
【0069】
第2ステップSB2は、操作パネル9でのCスイッチ操作によって、現在は充電モードがON状態であるか否か、つまり、図10における第2モード乃至第4モードのいずれであるか、さらに、充電モードであるか否かを制御部51が判断する。そして、
i)例えば通常の安定した平坦路を自転車走行するような第3モードの場合、充電モードであると判断された場合には、第3ステップSB3へ移行する。
ii)一方、例えば自転車100の走行速度がまだ遅く、使用者が使用を開始した直後の第2モードのような場合、つまり、速度が安定した充電モードではないと判断された場合には第1ステップSB1へ戻る。
iii)さらに、坂道などでの急激な自転車速度の上昇のような第4モードの場合には、モータ3への給電、つまりこれ以上の自転車速度の増大は避けなければならないが(同時にモータ3での制動動作を行うのが好ましいが)、蓄電器2への充電は特にこのモータ3での制動動作などには直接影響が少ないと制御部51が判断した場合、第3ステップSB3へ移行する。
【0070】
第3ステップSB3では、制御部51へ出力される速度検出器4からの速度情報から現在の自転車速度を検出し、この検出した自転車速度が制限速度を超えているか否かを、制御部51が判断する。そして、制限速度以下の通常の安全な速度であると判断した場合には、第5ステップSB5へ移行する。一方、制限速度を超えていると判断した場合には、第4ステップSB4へ移行する。
【0071】
第4ステップSB4では、蓄電器2からモータ3への給電を停止させるために、第1電磁スイッチSW1をOFFするように制御信号を出力する。また、このモータ3への給電停止の状況下で、第2電磁スイッチSW2をONとなるように制御信号を第2電磁スイッチSW2へ出力する。さらに、制御部51は、第3電磁スイッチSW3及び電磁クラッチ8に対しては、何らの制御を行う必要がないので、それぞれ、ON状態のままである。その結果、これにより、モータ3は、給電停止の状態のまま、逆に、ペダルPを取り付けているクランク軸100Aからの回転力がモータ3側のロータへ伝達され、ロータと対向・対峙するステータの巻き線に電磁誘導イ電力が発生するので、回生電力として蓄電器2への蓄電が可能となる。また、これと同時に、主スプロケットS1の回転力が、アシストギア3Cを介して伝達し、強制的にモータ3側のロータを回転させることとなるので、その回転負荷の分だけ主スプロケットS1に制動が掛かり、ガソリンエンジンでのエンジンブレーキと同様に機能するので、安全性が高まる。
【0072】
第5ステップSB5は、発電機1で発生した起電力が整流器11で整流され、さらに、制御部51の制御によって、第3電磁スイッチSW3がON状態となっていることにより整流器11と蓄電器2との間が接続状態にあることから、整流後の起電力が蓄電器2へ供給される。さらに、制御部51の制御によって、第1電磁スイッチSW1がON状態となっていることにより、蓄電器2とモータ3との間が接続状態にあることから、蓄電器2からモータ3へ給電がなされる。
【0073】
第6ステップSB6は、制限速度以下の通常の速度であると判断して第5ステップSB5へ移行していたところで、その後、制御部51は、自転車100に対して、一定時間間隔で走行停止するか否か(つまり、走行動作をまだ継続するのか否か)の判断を行う。そして、これからも、自転車走行を続ける場合には、第3ステップSB3へ移行し、再度同様の動作を繰り返していく。一方、自転車での走行をここで停止したいときには、第7ステップSB7へ移行する。
【0074】
第7ステップSB7は、自転車走行を停止して自転車から降りるのとほぼ同時に、操作パネル9のスイッチSを押圧させる。この自転車100の走行停止動作により、発電機1も発電が停止するとともに、蓄電器2からモータ3への給電も停止するので、モータ3も運転を停止する。
【0075】
従って、本実施形態の電動式アシスト自転車100によれば、重量が比較的嵩む発電機1が、自転車100のフレームFのなかで、特に自転車100の中央部側に配置されているシートチューブF2に固設されている。同じく重量が比較的嵩むモータ3を、フレームFにおける特に自転車100の中央部側に配置されているダウンチューブF4に固設させている。
【0076】
また、通常、最も重量が嵩むことが想定される蓄電器2を、本実施形態ではリチウムイオン電池で構成しているので、それほどの重量はないけれども、このリチウムイオン電池もフレームFにおける中間側に配置されているトップチューブF3とダウンチューブF4との間の隙間空間に取付けた薄型三角形状の収容ボックス6に収めてある。従って、自転車100全体の重心配置を自転車100の中央部側に設定してあるので、重量バランスがよく、安定した自転車走行が行える。
【0077】
また、本実施形態によれば、発電機1、蓄電器2、モータ3のいずれもが、フレームFのいずれかに取付けた構造であるので、定期点検、修理交換などの際には、態々タイヤを外すなどといった面倒な作業を行う必要がなく、比較的容易に作業を行うことができ、便宜である。また、本実施形態によれば、発電機1、蓄電器2、モータ3のいずれもが、フレームFのいずれかに取付けた構造であるので、通常一般の自転車などにおいて、フレームの一部にこれらを取り付けるとともに適宜の配線を施すだけで、容易に自転車の電動化が実現できる。
【0078】
なお、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0079】
即ち、本発明は上述した実施形態に限られず、上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成、公知発明並びに上述した実施形態の中で開示した各構成を相互に置換したり組合せを変更したりした構成等も含まれる。
【0080】
例えば、本発明に係るモータについては、本実施形態のような回生機能付きモータには特に限定されるものではなく、各種タイプのモータが適用可能である。また、本発明の電動アシスト自転車には、例えば二輪車だけではなく、例えば、三輪車、オート三輪などのような荷物車をなど牽引するものや、ツゥクツゥクなどの後部に乗車用のボディを牽引するものなど、各種のタイプのものが含まれる。
【0081】
また、本発明では、前述したように、クランクとクランク軸との接続部に変速ギア機構を介在させることで、クランクの回転数をクランク軸の回転に比べて減速させるような構成としてもよい。さらに、所定の回転速度を超えて主スプロケットが回転するような場合には、クランク軸とクランクとの接続を断つとともに、一定値まで回転角速度が低下したところで、再び双方の間を機械的に接続させるような電磁クラッチ機構を双方の間に介装させてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1 発電機
1B 取付プレート
1C ブラケット
1D 固定軸体
1E フランジ付き大軸体
1R ロータ
1S ステータ
2 蓄電手段(蓄電器)
3 回生機能付きモータ
3A 出力軸
3B モータギア
3C アシストギア
30 固定具
4 速度検知手段
41 磁気センサ
42 マグネット
5 制御手段
51 制御部
6 収容ボックス
7 トルク検出器
8 電磁クラッチ
9 操作パネル
100 電動アシスト自転車
100A クランク軸(スプロケットの回転軸、クランクの主軸)
100B ハブ軸(前ハブ軸)
100C ハブ軸(後ハブ軸)
110A ハブ板
110B スポーク
CH チェーン
F フレーム
F1 前チューブ
F2 シートチューブ
F3 トップチューブ
F4 ダウンチューブ
F5 後トップチューブ
F6 後ダウンチューブチューブ
FF フロントフォーク
H ハンドル
L ランプ
MG 永久磁石
S スプロケット(発電機側)
S1 主スプロケット
S2 後スプロケット(後輪側)
SD サドル
SW1 第1電磁スイッチ
SW2 第2電磁スイッチ
SW3 第3電磁スイッチ
W1 前輪
W2 後輪
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10