(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182842
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】タイヤ用ゴム組成物、タイヤトレッド及びタイヤ
(51)【国際特許分類】
C08L 9/00 20060101AFI20221201BHJP
C08L 15/00 20060101ALI20221201BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20221201BHJP
C08K 3/04 20060101ALI20221201BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20221201BHJP
C08F 8/42 20060101ALI20221201BHJP
C08F 36/04 20060101ALI20221201BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L15/00
C08K3/013
C08K3/04
C08K3/36
C08F8/42
C08F36/04
B60C1/00 Z
B60C1/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090591
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 繁希
(72)【発明者】
【氏名】青木 光彩
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
4J100
【Fターム(参考)】
3D131AA01
3D131AA02
3D131BA05
3D131BA07
3D131BA08
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC15
3D131BC19
3D131BC33
4J002AC03W
4J002AC03X
4J002AC06W
4J002AC07W
4J002AC08W
4J002AC08X
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4J002AC11W
4J002AC11X
4J002BB15W
4J002BB24W
4J002DA036
4J002DJ017
4J002FD016
4J002FD017
4J002GN01
4J100AB02Q
4J100AS02P
4J100AS03P
4J100BA31H
4J100BA77H
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA27
4J100CA31
4J100HA35
4J100HA55
4J100HA61
4J100HC78
4J100HE14
4J100HG32
4J100JA29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスを向上したタイヤトレッド及びタイヤ、並びに該タイヤトレッド及び該タイヤが得られるタイヤ用ゴム組成物を提供する。
【解決手段】ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体A及び式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された共役ジエン系重合体Bを含むゴム成分と、充填剤とを含むタイヤ用ゴム組成物。
〔式(1)中、R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基;L
1及びL
2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基;nは2~4の整数。〕
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体A及び式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された共役ジエン系重合体Bを含むゴム成分と、
充填剤と
を含むタイヤ用ゴム組成物。
【化1】
〔式(1)中、R
1~R
8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L
1及びL
2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。〕
【請求項2】
前記ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体Aが、ポリブタジエンゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴムからなる群より選択される1つ以上の変性ゴムである請求項1に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体Aが、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの変性ゴムである請求項1又は2に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記充填剤が、カーボンブラックを含む請求項1~3のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記充填剤が、更にシリカを含み、前記シリカと前記カーボンブラックとの合計質量に対する前記シリカの割合が50質量%以上100質量%未満である請求項4に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤトレッド。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか1項に記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤ用ゴム組成物、タイヤトレッド及びタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車用タイヤの乾燥路面及び湿潤路面でのグリップ性を向上するために、天然ゴムを70質量%以上含むゴム成分(A)を配合してなり、ゴム成分100質量部に対して、C5系樹脂、C5~C9系樹脂、C9系樹脂、テルペン系樹脂、テルペン-芳香族化合物系樹脂、ロジン系樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、及びアルキルフェノール系樹脂の中から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)を5~50質量部、並びにシリカを含む充填剤(C)を20~120質量部配合してなり、前記充填剤(C)中のシリカ含有量が50~100質量%であるゴム組成物をトレッドの製造にもちいることが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のゴム組成物では、湿潤路面でのグリップ性を向上できるが、低転がり抵抗性及び耐摩耗性の高度なバランスについては改善の余地があった。
本発明は、ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスを向上したタイヤトレッド及びタイヤ、並びに該タイヤトレッド及び該タイヤが得られるタイヤ用ゴム組成物を提供することを目的とし、該目的を解決することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
<1> ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体A及び式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された共役ジエン系重合体Bを含むゴム成分と、充填剤とを含むタイヤ用ゴム組成物。
【0006】
【0007】
式(1)中、R1~R8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L1及びL2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。
【0008】
<2> 前記ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体Aが、ポリブタジエンゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴムからなる群より選択される1つ以上の変性ゴムである<1>に記載のタイヤ用ゴム組成物。
<3> 前記ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体Aが、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの変性ゴムである<1>または<2>に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【0009】
<4> 前記充填剤が、カーボンブラックを含む<1>~<3>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物。
<5> 前記充填剤が、更にシリカを含み、前記シリカと前記カーボンブラックとの合計質量に対する前記シリカの割合が50質量%以上100質量%未満である<4>に記載のタイヤ用ゴム組成物。
【0010】
<6> <1>~<5>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤトレッド。
<7> <1>~<5>のいずれか1つに記載のタイヤ用ゴム組成物を用いたタイヤ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスを向上したタイヤトレッド及びタイヤ、並びに該タイヤトレッド及び該タイヤが得られるタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<タイヤ用ゴム組成物>
本発明のタイヤ用ゴム組成物は、ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体A及び式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された共役ジエン系重合体Bを含むゴム成分と、充填剤とを含む。
【0013】
【0014】
式(1)中、R1~R8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L1及びL2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。
【0015】
以下、「ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体A」を「変性重合体A」と称することがある。また、「式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された共役ジエン系重合体B」を「変性重合体B」と称することがある。「タイヤ用ゴム組成物」を、単に「ゴム組成物」と称することがある。
【0016】
変性重合体Aはカーボンブラックのゴム組成物中の分散性を向上する作用を有し、変性重合体Bはシリカのゴム組成物中の分散性を向上する作用を有する。本発明のタイヤ用ゴム組成物が含有する充填剤の種類は特に制限されないものであるが、ゴム組成物から得られる加硫ゴムを補強する充填剤として、一般に、カーボンブラックとシリカが用いられる。本発明のタイヤ用ゴム組成物は、種々の充填剤の分散性を向上する2種の変性共重合体を含むことで、タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスを向上することができると考えられる。
以下、本発明のゴム組成物及び空気入りタイヤについて詳細に説明する。
【0017】
〔ゴム成分〕
ゴム成分は、ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体A及び式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された共役ジエン系重合体Bを含む。
ゴム成分は、更に、未変性の共役ジエン系重合体を含んでもよい。
【0018】
(変性重合体A)
ゴム成分は、ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体A(変性重合体A)を含む。
ゴム成分が変性重合体Aを含有することで、充填剤、特にカーボンブラックに対して高い親和性を有し、タイヤ用ゴム組成物中の充填剤の分散性を向上し、タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスを向上することができる。
「ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された」とは、共役ジエン系重合体が、ヘキサメチレンイミン骨格を有する化合物により変性されたことを意味する。変性箇所は、共役ジエン系重合体の分子鎖の片末端であってもよいし、両末端であってもよいし、分子鎖の側鎖であってもよい。
ヘキサメチレンイミン骨格を有する化合物は、例えば、ヘキサメチレンイミン、N-トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン-2-イル)プロピル(メチル)ジメトキシシラン、N-トリメチルシリル(ヘキサメチレンイミン-2-イル)プロピル(メチル)ジエトキシシラン等が挙げられ、中でも、ヘキサメチレンイミン(HMI)が好ましい。
【0019】
ヘキサメチレンイミン骨格を有する化合物により変性される共役ジエン系重合体(未変性の共役ジエン系重合体)は、特に制限されず、例えば、天然ゴム(NR)の他、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、ハロゲン化ブチルゴム、アクリロニリトル-ブタジエンゴム(NBR)等の合成ゴムを使用することができる。
【0020】
また、未変性の共役ジエン系重合体は、更に、スチレン系熱可塑性エラストマーを含んでもよい。
スチレン系熱可塑性エラストマーは、単一のジエン可撓性セグメントに結合された単一のスチレン剛性セグメントから形成されるジブロックを含み得る。
単一のジエン可撓性セグメントに結合された単一のスチレン剛性セグメントから構成されるジブロックは、スチレン/ブタジエン(SB)ブロックコポリマー、スチレン/イソプレン(SI)ブロックコポリマー、スチレン/ブタジエン/イソプレン(SBI)ブロックコポリマーおよびこれらのコポリマーの混合物を含むかまたはこれらからなる群から選択され得る。この指示において、ジエン可撓性ブロックはランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0021】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくとも2つのスチレン剛性セグメントを含むスチレン系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましいか、またはそれからなることが好ましい。好ましくはさらにまた、上記スチレン系熱可塑性エラストマーは、少なくとも2つのスチレン剛性セグメントを含むスチレン系熱可塑性エラストマーを主に含む。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーが少なくとも2つのスチレン剛性セグメントを含むスチレン系熱可塑性エラストマーを含む場合、一般に上記スチレン系熱可塑性エラストマーの少なくとも2つの鎖末端に各々スチレン剛性セグメントを備え、上記スチレン剛性セグメントは上記ジエン可撓性セグメント(1個または複数個)を介して結合される。好ましくは、少なくとも2個のスチレン剛性セグメントを含む上記スチレン系熱可塑性エラストマーはトリブロックである。その場合、トリブロックは2つのスチレン剛性セグメントと1つのジエン可撓性セグメントから構成される。
【0022】
2つの剛性スチレンセグメントと1つのジエン可撓性セグメントとから構成されるトリブロックは、スチレン/ブタジエン/スチレン(SBS)ブロックコポリマー、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマー、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)ブロックコポリマーおよびこれらのコポリマーの混合物を含むかまたはこれらからなる群から選択され得る。この指示において、上記ジエン可撓性ブロックはランダムコポリマーまたはブロックコポリマーであり得る。好ましくは、2つのスチレン剛性セグメントと1つのジエン可撓性セグメントから構成されるトリブロックは、スチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマー、スチレン/ブタジエン/イソプレン/スチレン(SBIS)ブロックコポリマーおよびこれらのコポリマーの混合物を含むかまたはこれらからなる群から選択される;より好ましくは、2つの剛性スチレンセグメントとジエン可撓性セグメントとから構成されるトリブロックはスチレン/イソプレン/スチレン(SIS)ブロックコポリマーである。
【0023】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーがジブロックである場合、「少なくとも1つの剛性セグメント」という指示は、上記スチレン系熱可塑性エラストマー中に存在する剛性セグメントを意味する。ジブロック以外の場合、例えばトリブロックの場合、「少なくとも1つの剛性セグメント」という指示は、上記スチレン系熱可塑性エラストマー中に存在する剛性セグメントを意味する。
上記スチレン系熱可塑性エラストマーがジブロックまたはトリブロックである場合、「少なくとも1つの可撓性セグメント」という指示は、上記スチレン系熱可塑性エラストマー中に存在する可撓性セグメントを意味する。上記スチレン系熱可塑性エラストマーがジブロックでもトリブロックでもない場合、「少なくとも1つの可撓性セグメント」という指示は、上記熱可塑性スチレンエラストマー中に存在する可撓性セグメントを意味する。
上記ジエン可撓性セグメントのジエン単位の一部は水素化され得る。あるいは、上記ジエン可撓性セグメントのジエン単位の全てが水素化され得る。上記ジエン可撓性セグメントのジエン単位の一部の二重結合が水素化以外の方法によって単結合に還元されているスチレン系熱可塑性エラストマーを同等に使用し得ることは当業者には理解されるであろう。ジエン単位の二重結合を単結合に還元することを可能にする方法の中で、例えば、水素化アルミニウムまたはジイミンによる還元を挙げることができる。
【0024】
上記熱可塑性エラストマーのジエン可撓性セグメントのジエン単位の全てが水素化されるとき、単一のジエン可撓性セグメントに結合された単一のスチレン剛性セグメントから構成されるジブロックはスチレン/エチレン/ブチレン(SEB)ブロックコポリマー、スチレン/エチレン/プロピレン(SEP)ブロックコポリマー、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン(SEEP)ブロックコポリマーおよびこれらのコポリマーの混合物を含むかまたはこれらからなる群から選択され得る。この指示において、可撓性水素化ジエンブロックはランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。
上記熱可塑性エラストマーのジエン可撓性セグメントのジエン単位の全てが水素化されるとき、2つのスチレン剛性セグメントと1つのジエン可撓性セグメントとからなるトリブロックは、スチレン/エチレン/ブチレン/スチレン(SEBS)ブロックコポリマー、スチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEPS)ブロックコポリマー、スチレン/エチレン/エチレン/プロピレン/スチレン(SEEPS)ブロックコポリマーおよびこれらのコポリマーの混合物を含むかまたはそれらからなる群から選択され得る。この指示において、可撓性水素化ジエンブロックはランダムコポリマーまたはブロックコポリマーである。
【0025】
変性重合体Aの製造に用いる未変性共役ジエン系重合体は、1種を用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。例えば、変性重合体Aは未変性天然ゴム由来の変性ゴムと未変性合成ゴム由来の変性ゴムとの混合体であってもよい。
【0026】
中でも、タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスをより向上する観点から、ポリブタジエンゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴムが好ましく、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムがより好ましい。換言すると、ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体Aは、ポリブタジエンゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴムからなる群より選択される1つ以上の変性ゴムであることが好ましく、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの変性ゴムであることがより好ましい。
【0027】
また、変性重合体Aが、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの変性ゴムである場合、結合スチレン量は、20~50質量%であることが好ましく、25~45質量%であることがより好ましく、30~40質量%であることが更に好ましい。
【0028】
変性重合体Aの結合スチレン量は次のようにして測定することができる。
試料(変性重合体A)100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとする。分光光度計を用いて、スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定する。
後述する変性重合体Bの結合スチレン量も同様に測定すればよい。
【0029】
(変性重合体B)
ゴム成分は、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された共役ジエン系重合体B(変性重合体B)を含む。
ゴム成分が変性重合体Bを含有することで、充填剤、特にシリカに対して高い親和性を有し、タイヤ用ゴム組成物中の充填剤の分散性を向上し、タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスを向上することができる。
変性箇所は、共役ジエン系重合体の分子鎖の片末端であってもよいし、両末端であってもよいし、分子鎖の側鎖であってもよい。
変性重合体Bにおける共役ジエン系重合体の変性方法としては、例えば、国際公開第2003/046020号、特開2007-217562号公報に記載の方法に従って、活性末端を有する共役ジエン系重合体の末端に、種々の変性剤を反応させることで製造できる。
【0030】
式(1)で表される化合物を含む変性剤により変性される共役ジエン系重合体(未変性の共役ジエン系重合体)は、特に制限されず、変性重合体Aの製造に用いる未変性共役ジエン系重合体と同じものを用いることができる。具体的には、天然ゴムの他;ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等の合成ゴム;スチレン系熱可塑性エラストマー等を使用することができる。
中でも、タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスをより向上する観点から、ポリブタジエンゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴムが好ましく、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムがより好ましい。換言すると、式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された共役ジエン系重合体Bは、ポリブタジエンゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴムからなる群より選択される1つ以上の変性ゴムであることが好ましく、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの変性ゴムであることがより好ましい。
式(1)は下記構造である。
【0031】
【0032】
式(1)中、R1~R8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり;L1及びL2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基であり;nは2~4の整数である。
【0033】
ゴム成分として、充填剤親和性作用基であるオリゴシロキサン及び3級アミノ基を含んだ式(1)で表される化合物を含んだ変性剤によって変性させた共役ジエン系重合体を用いることによって、シリカ等の充填剤のゴム組成物中の分散性を高めることができる。その結果、タイヤ用ゴム組成物から得られるタイヤトレッド及びタイヤは、優れたウェットグリップ性能、優れた低転がり抵抗性、及び優れた耐摩耗性を高度なバランスで有する。
【0034】
式(1)において、R1~R4は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。アルキル基は、直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよい。
R1~R4は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。
置換基は、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数4~10のシクロアルコキシ基、炭素数6~12のアリール基、炭素数6~12のアリールオキシ基、炭素数2~12のアルカノイルオキシ基(alkanoyloxy、RaCOO-、この時、Raは炭素数1~9のアルキル基である)、炭素数7~13のアラルキルオキシ基、炭素数7~13のアリールアルキル基、及び、炭素数7~13のアルキルアリール基からなる群より選択される1つ以上の置換基が挙げられる。
【0035】
式(1)において、R5~R8は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキル基であり、アルキル基の炭素数は1~10であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。
R5~R8は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。R5~R8が有し得る置換基は、R1~R4が有し得る置換基と同じである。
R5~R8がアルキル基ではなく、加水分解可能な置換基の場合、N-R5R6及びN-R7R8の結合が水分存在下にN-Hに加水分解されて変性重合体Bの加工性、ひいてはタイヤ用ゴム組成物の加工性に悪影響を及ぼし得る。例えば、変性重合体Bの粘度が高まり、他の成分の粘性も高めてしまい、タイヤ用ゴム組成物中の成分が均一に混合しなくなる恐れがある。
【0036】
なお、R5~R8がアルキル基ではなく、R5~R8に、アミノ基を保護するための保護基であるか、又は、水素原子である場合には、式(1)で表される化合物による効果を具現することができない。R5~R8が水素原子である場合、変性過程で陰イオンが水素と反応して反応性を失うようになって変性反応自体が不可能となり、R5~R8が保護基である場合、変性反応が行われるが、重合体末端に結合した状態で後加工時に加水分解によって脱保護されて1次又は2次アミノ基になり、脱保護された1次又は2次アミノ基は、その後の配合時に配合物の高粘度化を引き起こし、加工性低下の原因になる。
【0037】
式(1)で表される化合物は、R1~R4が、それぞれ独立して、メチル基又はエチル基であり、R5~R8が、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキル基であることが好ましい。
【0038】
式(1)中のL1及びL2は、それぞれ独立して、炭素数1~20のアルキレン基である。アルキレン基は、直鎖状であっても、分岐状であっても、環状であってもよい。
L1及びL2は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。L1及びL2が有し得る置換基は、R1~R4が有し得る置換基と同じである。
L1及びL2は、それぞれ独立して、炭素数1~10のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~6のアルキレン基であることがより好ましい。
【0039】
式(1)中のL1及びL2については、分子内のSi原子とN原子との間の距離が近いほどより優れた効果を奏することから、L1及びL2の炭素数は小さいことが好ましい。ただし、Si原子がN原子と直接結合する場合、すなわち、L1及びL2が単結合であると、後の処理工程中にSi原子とN原子との間の結合が切れるおそれがある。この際に発生した2次アミノ基は後処理中に水により流失する可能性が高い。このような、Si原子がN原子と直接結合する化合物によって変性された変性重合体では、シリカ充填剤との結合を促進するアミノ基の部材によってシリカ充填剤との結合が難しく、その結果、充填剤の分散効果が得られない。このようにSi原子とN原子との間の結合の長さによる改善効果を考慮すると、L1及びL2は、それぞれ独立して、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基のような炭素数1~3のアルキレン基であることがさらに好ましく、プロピレン基であることがより更に好ましい。
【0040】
式(1)中、nは、2~4の整数である。nが2未満であると一分子内のアミノ基数が少ないことで十分に低転がり抵抗性を向上することができず、4を超えると一分子と反応するポリマー鎖数が増えることでポリマー鎖当たりの変性基数が減り十分に低転がり抵抗性を向上することができない。nは2~4であることが好ましい。
【0041】
式(1)で表される化合物は、例えば、下記式(1a)~(1e)で表される化合物のうちのいずれか1つであることが好ましい。これらの化合物で変性された変性重合体Bを用いることで、タイヤトレッド及びタイヤの低転がり抵抗性をより向上することができる。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
式(1)で表される化合物は、アルコキシシラン構造が共役ジエン系重合体活性化末端と結合する一方、Si-O-Si構造及び末端に結合した3つ以上のアミノ基が、シリカ等の充填剤に対して親和力を示すことによって、従来分子内一つのアミノ基を含む変性剤と比較して充填剤と変性重合体Bとの結合を促進させることができる。また、共役ジエン系重合体の活性化末端の結合程度が均一で、カップリング前後に分子量分布の変化を観察すると、カップリング後にも前に比べて分子量分布が大きくならずに一定である。そのため、変性重合体B自体の物性低下がなく、タイヤ用ゴム組成物内の充填剤の凝集を防ぎ、充填剤の分散性を高めることができるため、タイヤ用ゴム組成物の加工性を向上させることができる。その結果、タイヤトレッド及びタイヤについて、優れたウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスをより向上することができる。
【0048】
式(1)で表される化合物は、下記反応式1で表される縮合反応を通じて製造され得る。
【0049】
【0050】
反応式1において、R1~R8、L1、L2、及びnは、上述した式(1)中のR1~R8、L1、L2、及びnと同様であり、R’及びR’’は、前記縮合反応に影響を及ぼさない任意の置換基である。例えば、R’及びR’’は、それぞれ独立して、R1~R4のいずれか1つと同一のものとすることができる。
【0051】
反応式1の反応は、酸条件下で進められ、酸は一般に縮合反応に用いられるものであれば、制限なしに用いることができる。当業者は、前記反応が進められる反応器の種類、出発物質、反応温度などの多様な工程変数に合わせて最適な酸を選択することができる。
【0052】
なお、変性重合体Bが、両末端アルコキシシラン変性重合体、例えば、両末端アルコキシシラン変性SBRである場合、そのガラス転移点(Tg)は、-45℃~-15℃程度であることが好ましい。両末端アルコキシシラン変性SBRのTgが高いことで、充填剤との親和性が高くなり、より優れた充填剤の分散性を得ることができる。
また、変性重合体Bが、片末端アルコキシシラン変性重合体、例えば、片末端アルコキシシラン変性SBRである場合、そのガラス転移点(Tg)は、-60℃~-30℃程度であることが好ましい。片末端アルコキシシラン変性SBRが中程度であることで、ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスをより向上することができる。
【0053】
変性重合体Bのガラス転移点(Tg)は、次のように測定することができる。
TAインスツルメンツ社製DSC250を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、試料(変性重合体B)を-100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とする。
後述する変性重合体Bのガラス転移点(Tg)も同様に測定すればよい。
【0054】
また、変性重合体Bが、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムの変性ゴムである場合、結合スチレン量は、25~55質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましく、35~45質量%であることが更に好ましい。
【0055】
変性重合体Bは、1.1~3.0の狭い分子量分布:Mw/Mn(多分散指数(PDIまたはMWD)ともいう)を有するものとすることができる。変性重合体Bの分子量分布が1.1~3.0であることで、ゴム組成物へ適用時に引張特性及び粘弾性の低下を抑制することができる。変性重合体Bの分子量分布の制御による、重合体の引張特性及び粘弾性改善の効果の顕著性を考慮すると、変性重合体Bの分子量分布を、1.3~2.0とすることが好ましい。
【0056】
変性重合体Bの分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と対数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算され得る。このとき、数平均分子量(Mn)は、n個の重合体分子の分子量を測定し、これら分子量の総合を求めてnで割って計算した個別の重合体分子量の共通平均(commonaverage)であり、重量平均分子量(Mw)は高分子組成物の分子量分布を表す。全体分子量の平均は、モル当たりグラム(g/mol)で表すことができる。
また、本発明において、重量平均分子量及び数平均分子量は、それぞれゲル透過型クロマトグラフィ(GPC)で分析されるポリスチレン換算分子量である。
【0057】
また、変性重合体Bは、上記した分子量分布の条件を満たしていると同時に、数平均分子量(Mn)が50,000g/mol~2,000,000g/molであることが好ましく、200,000g/mol~800,000g/molであることがより好ましい。変性重合体Bは、重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol~4,000,000g/molであることが好ましく、300,000g/mol~1,500,000g/molであることがより好ましい。
【0058】
変性重合体Bの重量平均分子量(Mw)が100,000g/mol以上であり、又、数平均分子量(Mn)が50,000g/mol以上であることで、タイヤ用ゴム組成物から得られる加硫ゴムの引張特性の低下を抑制することができる。また、重量平均分子量(Mw)が4,000,000g/mol以下であり、又、数平均分子量(Mn)が2,000,000g/mol以下であることで、変性重合体Bの加工性の低下を抑制し、ゴム組成物の作業性の低下を抑制することができるので、ゴム組成物の物性を十分に向上させることができる。
変性重合体Bが、前記分子量分布とともに、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の条件を同時に満すことで、タイヤ用ゴム組成物からタイヤトレッド及びタイヤを製造した場合、タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスをより向上することができる。
【0059】
変性重合体Bは、100℃でのムーニー粘度(mooney viscosity,MV)が、40~140であることが好ましく、60~100であることがより好ましい。前記範囲のムーニー粘度を有することで、変性重合体Bがより優れた加工性を示す。
本発明において、ムーニー粘度は、ムーニー粘度計、例えば、Monsanto社のMV2000Eで、100℃でRotorSpeed20.02rpm、LargeRotorを使って測定することができる。このとき用いられた試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテンを作動させて測定することができる。
【0060】
また、変性重合体Bが片末端アルコキシシラン変性重合体の場合、一方の末端が式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性されるが、他方の末端が式(3)で表される化合物を含む変性剤によってさらに変性されることも可能である。ゴム組成物中の充填剤の分散性をさらに向上すうることができるため、ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスをより向上することができる。
【0061】
【0062】
式(3)において、R1~R3は、互いに独立して、水素原子;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基、炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;又は炭素数3~30の複素環基である。
R4は、単一結合;炭素数1~20のアルキレン基;又は炭素数5~20のアリーレン基である。
アルキレン基は直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいし、環状であってもよい。R4は、更に置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。
例えば、アルキレン基は炭素数6~20のアリール基を置換基として更に有していてもよいし、また、アリーレン基は置換基として炭素数1~10のアルキル基を置換基として更に有していてもよい。
R5は、炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基;又は下記式(3a)若しくは式(3b)で表される作用基である。
nは、1~5の整数である。
R5のうち少なくとも1つは式(3a)若しくは式(3b)で表される作用基であり、nが2~5の整数の場合、複数のR5は互いに同一であるか、異なってもよい。
【0063】
【0064】
式(3a)において、R6は、炭素数1~20のアルキレン基;又は炭素数5~20のアリーレン基である。アルキレン基は直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいし、環状であってもよい。R6は、更に置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。
例えば、アルキレン基は炭素数6~20のアリール基を置換基として更に有していてもよいし、また、アリーレン基は置換基として炭素数1~10のアルキル基を置換基として更に有していてもよい。
R7及びR8は、互いに独立に炭素数1~10のアルキル基、炭素数5~10のシクロアルキル基、又は炭素数6~20のアリール基に置換又は非置換の炭素数1~20のアルキレン基であり、R9は、水素;炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基であり、XはN原子、O原子又はS原子であり、XがO原子又はS原子である場合、R9は存在しない。
【0065】
【化12】
上記式(3b)において、R
10は、炭素数1~20のアルキレン基;又は炭素数5~20のアリーレン基である。アルキレン基は直鎖状であってもよいし、分岐状であってもよいし、環状であってもよい。R
10は、更に置換基を有していてもよいし、無置換であってもよい。
例えば、アルキレン基は炭素数6~20のアリール基を置換基として更に有していてもよいし、また、アリーレン基は置換基として炭素数1~10のアルキル基を置換基として更に有していてもよい。
R
11及びR
12は、互いに独立に炭素数1~30のアルキル基;炭素数2~30のアルケニル基;炭素数2~30のアルキニル基;炭素数1~30のヘテロアルキル基;炭素数2~30のヘテロアルケニル基;炭素数2~30のヘテロアルキニル基;炭素数5~30のシクロアルキル基;炭素数6~30のアリール基;炭素数3~30の複素環基である。
【0066】
また、上記式(3)で表される化合物では、
R1~R3は、互いに独立に水素原子;炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;又は炭素数2~10のアルキニル基であり、
R4は、単一結合;又は無置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
R5は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数2~10のアルケニル基;炭素数2~10のアルキニル基;又は式(3a)又は式(3b)で表される作用基であり、
式(3a)において、
R6は、無置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
R7及びR8は、それぞれ独立に無置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
R9は、炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;又は炭素数3~20の複素環基であり、
式(3b)において、
R10は、無置換の炭素数1~10のアルキレン基であり、
R11及びR12は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基;炭素数5~20のシクロアルキル基;炭素数6~20のアリール基;又は炭素数3~20の複素環基
であってもよい。
【0067】
さらに、上記式(3)で表される化合物は、以下の式(3-1)~式(3-3)で表される化合物とすることができる。
【0068】
【0069】
なお、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムを、式(3)で表される化合物を含む変性剤によって変性させる場合には、式(3)で表される化合物を含む変性剤を、変性開始剤として用いる。
具体的には、例えば、炭化水素溶媒中で、式(3)で表される化合物を含む変性剤の存在下にて、ブタジエン単量体及びスチレン単量体を重合させることで、式(3)で表される化合物由来の変性基を、スチレン-ブタジエン共重合体ゴムに付与することができる。
【0070】
(他のゴム成分)
ゴム成分は、変性重合体A及び変性重合体B以外の他のゴム成分を更に含んでいてもよい。
他のゴム成分としては、特に制限されず、変性重合体Aの製造に用いる未変性共役ジエン系重合体と同じものを用いることができる。具体的には、天然ゴムの他;ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)等の合成ゴム;スチレン系熱可塑性エラストマー等を使用することができる。
中でも、タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスをより向上する観点から、他のゴム成分は、天然ゴムであることが好ましい。
ゴム成分は、変性重合体A、変性重合体B、及び他のゴム成分を、それぞれ独立に、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0071】
ゴム組成物中の変性重合体Aの含有量は、カーボンブラックのゴム組成物中の分散性を向上する観点から、20~70質量%であることが好ましく、30~60質量%であることがより好ましい。
ゴム組成物中の変性重合体Bの含有量は、シリカのゴム組成物中の分散性を向上する観点から、20~60質量%であることが好ましく、30~50質量%であることがより好ましい。
タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスをより向上する観点から、変性重合体A及び変性重合体Bの合計がゴム成分中の主成分(50質量%を超える量)となることが好ましい。具体的には、ゴム組成物中の変性重合体A及び変性重合体Bの合計含有量は、51~100質量%であることが好ましく、60~100質量%であることがより好ましい。
【0072】
また、変性重合体Aの質量aと変性重合体Bの質量bとの量比b/aは、用いる充填剤の種類により異なり、1<b/aであってもよいし、b/a=1であってもよいし、b/a<1であってもよい。b/aが5/95以上であってもよい。
【0073】
〔充填剤〕
本発明のタイヤ用ゴム組成物は充填剤を含有する。
タイヤ用ゴム組成物が充填剤を含有することで、タイヤ用ゴム組成物から得られる加硫ゴム、タイヤトレッド及びタイヤは、低転がり抵抗性及び耐摩耗性に優れる。
充填剤は、特に制限されず、例えば、タイヤ用ゴム組成物を補強する補強性充填剤が用いられる。補強性充填剤としては、例えば、シリカ、カーボンブラック等が挙げられ、シリカ及びカーボンブラックのいずれか一方を単独で用いてもよいし、シリカ及びカーボンブラックの両方を用いてもよい。
タイヤトレッド及びタイヤの低転がり抵抗性及び耐摩耗性をより向上する観点から、充填剤は、カーボンブラックを含むことが好ましい。
また、タイヤトレッド及びタイヤの低転がり抵抗性及び耐摩耗性をより向上する観点から、充填剤が、更にシリカを含み、シリカとカーボンブラックとの合計質量に対するシリカの割合が50質量%以上100質量%未満であることが好ましい。以下「シリカとカーボンブラックとの合計質量に対するシリカの割合」を「シリカ率」と称することがある。
シリカ率は、60~99質量%であることがより好ましく、70~99質量%であることが更に好ましい。
【0074】
(カーボンブラック)
カーボンブラックは、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができる。カーボンブラックは、例えば、FEF、SRF、HAF、ISAF、SAFグレードのものが好ましく、HAF、ISAF、SAFグレードのものがより好ましい。
【0075】
(シリカ)
シリカは特に限定されず、一般グレードのシリカ、シランカップリング剤などで表面処理を施した特殊シリカなど、用途に応じて使用することができる。シリカは、例えば、湿式シリカを用いることが好ましい。
充填剤がシリカを含む場合は、更にシランカップリング剤を含んでいてもよい。
【0076】
本発明のタイヤ用ゴム組成物中の充填剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、30~80質量部であることが好ましく、40~70質量部であることがより好ましい。
ゴム組成物中の充填剤の含有量がゴム成分100質量部に対して、30質量部以上であることで、得られる加硫ゴムの耐摩耗性に優れ、80質量部以下であることで、得られる加硫ゴムの柔軟性を損ないにくく、タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能に優れる。
【0077】
本発明のゴム組成物は、上記成分の他に、必要に応じて、ゴム工業界で通常使用される配合剤、例えば、加硫剤、ステアリン酸、老化防止剤、酸化亜鉛(亜鉛華)、加硫促進剤、軟化剤等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していてもよい。
【0078】
タイヤ用ゴム組成物が、軟化剤(オイル成分、樹脂)を含むと、タイヤトレッド及びタイヤのウェットグリップ性能をより向上することができる。
樹脂としては、C5系樹脂、C9系樹脂、C5C9系樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、ロジン系樹脂、アルキルフェノール系樹脂、又は、テルペンフェノール系樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は、水添されていてもよいし、変性されていてもよい。
これらの樹脂は、1種又は2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
[C5系樹脂、C9系樹脂、C5C9系樹脂]
C5系樹脂とは、C5系合成石油樹脂を指し、C5留分を、AlCl3、BF3等のフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。具体的には、イソプレン、シクロペンタジエン、1,3-ペンタジエン及び1-ペンテンなどを主成分とする共重合体、2-ペンテンとジシクロペンタジエンとの共重合体、1,3-ペンタジエンを主体とする重合体などが例示される。
C9系樹脂とは、C9系合成石油樹脂を指し、C9留分を、AlCl3、BF3等のフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。具体的には、インデン、メチルインデン、α-メチルスチレン、ビニルトルエンなどを主成分とする共重合体等が例示される。
C5C9系樹脂とは、C5~C9系合成石油樹脂を指し、C5~C9留分を、AlCl3、BF3等のフリーデルクラフツ型触媒を用いて重合して得られる固体重合体を指す。例えば、スチレン、ビニルトルエン、α-メチルスチレン、インデンなどを主成分とする共重合体などが挙げられる。
【0080】
[ジシクロペンタジエン系樹脂、ロジン系樹脂]
ジシクロペンタジエン系樹脂とは、C5留分中のジシクロペンタジエンを主原料として用いた石油樹脂のことである。例えば、丸善石油化学(株)の商品名「マルカレッツM」シリーズ(M-890A、M-845A、M-990A等)が挙げられる。
ロジン系樹脂としては、天然樹脂ロジンとして、生松ヤニやトール油に含まれるガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどがある。また、変性ロジン、ロジン誘導体、変性ロジン誘導体として、例えば、重合ロジン、その部分水添ロジン;グリセリンエステルロジン、その部分水添ロジン及び完全水添ロジン;ペンタエリスリトールエステルロジン、その部分水添ロジン、及び重合ロジンなどがある。
【0081】
[アルキルフェノール系樹脂、テルペンフェノール系樹脂]
アルキルフェノール系樹脂とは、アルキル基を有するフェノール系樹脂を指す。
例えば、p-tert-ブチルフェノール-アセチレン樹脂などのアルキルフェノール-アセチレン樹脂、低重合度のアルキルフェノール-ホルムアルデヒド樹脂などが挙げられる。
テルペンフェノール系樹脂とは、テルペン類と種々のフェノール類とを、フリーデルクラフツ型触媒を用いて反応させたり、あるいはさらにホルマリンで縮合する方法で得ることができる樹脂である。原料のテルペン類としては特に制限はないが、α-ピネン、リモネン等のモノテルペン炭化水素が好ましく、α-ピネンを含むものがより好ましく、特にα-ピネンであることが好ましい。
【0082】
なお、タイヤ用ゴム組成物中の樹脂の含有量については特に限定はされないが、タイヤ用ゴム組成物の加工性、並びに、タイヤの制動性を向上させつつ、耐摩耗性及び補強性を悪化させない観点から、ゴム成分100質量部に対して、2~10質量部であることが好ましく、3~8質量部であることがより好ましい。
【0083】
ゴム組成物は、ゴム成分及び充填剤を含む各成分を配合して、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサー等の混練機を用いて混練することによって、製造することができる。
各成分の混練は、全1段階で行ってもよいし、2段階以上に分けて行ってもよい。混練を2段階以上に分ける場合は、最終段階よりも前の段階までに、ゴム成分の加硫または加硫促進に寄与しにくい成分、例えば、ゴム成分、充填剤、老化防止剤等を混練し、最終段階で、ゴム成分を加硫し、また加硫を促進する成分を更に配合して混練することが好ましい。ゴム成分の加硫または加硫促進に寄与しにくい成分の混練を、更に2段階以上に分けてもよい。
また、2段階で混練する場合、混練の第1段階の最高温度は、140~160℃とすることが好ましく、第2段階の最高温度は、90~120℃とすることが好ましい。
【0084】
<タイヤトレッド及びタイヤ>
本発明のタイヤトレッド及びタイヤは、本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いてなる。すなわち、本発明のタイヤ用ゴム組成物はタイヤトレッド用ゴム組成物として好適である。
本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いてタイヤトレッドを製造し、該タイヤトレッドを備えるタイヤを製造することが好ましい。
本発明のタイヤトレッド及びタイヤは、既述の構成の本発明のタイヤ用ゴム組成物を用いているため、優れたウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスに優れる。
タイヤは、適用するタイヤの種類や部材に応じ、未加硫のタイヤ用ゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよく、または予備加硫工程等を経て、一旦未加硫のタイヤ用ゴム組成物から半加硫ゴムを得た後、これを用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。
例えば、各種成分を含有させた本発明のタイヤ用ゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤトレッドに加工し、タイヤ成形機上で通常の方法により貼り付け成形し、生タイヤを成形する。この生タイヤを加硫機中で加熱及び加圧して、タイヤが得られる。
【実施例0085】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は、本発明の例示を目的とするものであり、本発明を何ら限定するものではない。
【0086】
<ゴム組成物の調製>
〔比較例1、実施例1~2〕
表1の配合に従って各成分を配合して混練し、比較例1及び実施例1~2のゴム組成物を得た。なお、表中、空欄は配合量が0質量部であることを意味する。
表中の成分の詳細は次のとおりである。
【0087】
(ゴム成分)
NR:天然ゴム
未変性SBR:未変性スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、JSR社製、商品名「JSR1500」、結合スチレン量=24質量%
変性重合体A:ヘキサメチレンイミン由来の骨格を有する官能基で変性された共役ジエン系重合体、特開2007-70642号公報に記載のポリマーKの製法をもとに、スチレンとブタジエンのモノマーの比率を変えたブレンド物を用いて製造された、結合スチレン量35質量%、ブタジエン部分のビニル結合量21%のヘキサメチレンイミン変性SBR
変性重合体B:下記製造例1で製造した式(1)で表される化合物を含む変性剤によって変性された共役ジエン系重合体、結合スチレン量=41質量%
【0088】
(充填剤等)
カーボンブラック:ISAF-HS級、旭カーボン社製、商品名「旭#78」
シリカ:東ソー・シリカ社製、「NipSil(登録商標) AQ」、CTAB比表面積=165m2/g、BET比表面積=195m2/g
シランカップリング剤:Evonik社製シランカップリング剤、商品名「Si363」
【0089】
(軟化剤等)
オイル:三共油化工業社製、商品名「A/Oミックス」
老化防止剤パッケージ:大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」を含む。
加硫系パッケージ:硫黄、酸化亜鉛、三新化学工業社製の商品名「サンセラーD」を含む。
【0090】
〔重合体の特性測定〕
変性重合体のガラス転移温度(Tg)、結合スチレン量、ビニル結合量、重量平均分子量及び分子量分布は次のようにして測定した。
【0091】
(1)ガラス転移温度(Tg)
TAインスツルメンツ社製DSC250を用い、ヘリウム50mL/分の流通下、試料を-100℃から20℃/分で昇温しながらDSC曲線を記録し、DSC微分曲線のピークトップ(Inflection point)をガラス転移温度とした。
【0092】
(2)結合スチレン量
試料100mgを、クロロホルムで100mLにメスアップし、溶解して測定サンプルとした。スチレンのフェニル基による紫外線吸収波長(254nm付近)の吸収量により、試料100質量%に対しての結合スチレン量(質量%)を測定した(島津製作所社製の分光光度計「UV-2450」)。
【0093】
未変性SBRの結合スチレン量は、メーカーカタログ値である。
【0094】
(3)ブタジエン部分のビニル結合量
試料50mgを、10mLの二硫化炭素に溶解して測定サンプルとした。
溶液セルを用いて、赤外線スペクトルを600~1000cm-1の範囲で測定して、所定の波数における吸光度によりハンプトンの方法(R.R.Hampton,Analytical Chemistry 21,923(1949)に記載の方法)の計算式に従い、ブタジエン部分のミクロ構造、すなわち、1,2-ビニル結合量を求めた(日本分光社製のフーリエ変換赤外分光光度計「FT-IR230」)。
【0095】
(4)分子量
ポリスチレン系ゲルを充填剤としたカラムを3本連結したGPC測定装置(東ソー社製の商品名「HLC-8320GPC」)を使用して、RI検出器(東ソー社製の商品名「HLC8020」)を用いてクロマトグラムを測定した。標準ポリスチレンを使用して得られる検量線に基づいて、重量平均分子量(Mw)と分子量分布(Mw/Mn)を求めた。
溶離液は5mmol/Lのトリエチルアミン入りTHF(テトラヒドロフラン)を使用した。カラムは、東ソー社製の商品名「TSKgel SuperMultiporeHZ-H」を3本接続し、その前段にガードカラムとして東ソー社製の商品名「TSKguardcolumn SuperMP(HZ)-H」を接続して使用した。測定用の試料10mgを10mLのTHFに溶解して測定溶液とし、測定溶液10μLをGPC測定装置に注入して、オーブン温度40℃、THF流量0.35mL/分の条件で測定した。
【0096】
2.製造例1(変性重合体Bの製造例)
(1)未変性SBRの作製
3基の反応器が直列に連結された連続反応器のうち、第1基反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60質量%で溶解したスチレン溶液を7.99kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60質量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を10.55kg/h、n-ヘキサン49.11kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0質量%で溶解した1,2-ブタジエン溶液を40g/h、極性添加剤としてn-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10質量%で溶解した溶液を51.0g/h、n-ヘキサンにn-ブチルリチウムが10質量%で溶解したn-ブチルリチウム溶液を59.0g/hの速度に注入する。この時、第1基反応器の温度は50℃になるように維持する。
次いで、第2反応器にn-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60質量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を0.95kg/hの速度で注入する。この時、第2基反応器の温度は65℃になるように維持する。
前記第2反応器で第3反応器に重合物を移送し、カップリング剤としてジクロロジメチルシラン溶解した溶液を第3反応器に投入する(カップリング剤:act. Li=1:1mol)。その後、第3反応器の温度は65℃になるように維持する。
そして、第3反応器から排出された重合溶液に酸化防止剤として30質量%で溶解したIR1520(BASF社)溶液を167g/hの速度で注入して攪拌する。その結果、得られる重合物をスチームで加熱された温水に入れて攪拌して溶媒を除去することで、未変性SBRを得る。
また、得られる未変性SBRのミクロ構造を測定した結果、スチレン含有量が41質量%、ブタジエン部分のビニル結合量が45%、重量平均分子量Mwが440,000、分子量分布MWDが1.6である。
【0097】
(2)変性開始剤の製造例
真空乾燥させた4Lステンレススチール圧力容器を2つ用意する。最初の圧力容器にシクロヘキサン944g、下記化学式2-1で表される化合物161g及びテトラメチルエチレンジアミン86gを投入し、第1反応溶液を製造する。これと同時に、2番目の圧力容器に液状の20質量%n-ブチルリチウム318g及びシクロヘキサン874gを投入し、第2反応溶液を製造する。この時、下記式(3-1)で表される化合物、n-ブチルリチウム及びテトラメチルエチレンジアミンのモル比は1:1:1である。各圧力容器の圧力は7barに維持させた状態で、質量流量計を用いて連続式反応器内に、第1連続式チャネルに第1反応溶液を1.0g/minの注入速度で、第2連続式チャネルに第2反応溶液を1.0g/minの注入速度でそれぞれ注入する。この時、連続式反応器の温度は-10℃を維持し、内部圧力はバックプレッシャレギュレータ(backpressure regulator)を用いて3barを維持し、反応器内の滞留時間は10分以内になるように調節する。反応を終了して変性開始剤を得る。
【0098】
【0099】
(3)変性重合体Bの製造例
3基の反応器が直列に連結された連続反応器のうち第1基反応器に、n-ヘキサンにスチレンが60質量%で溶解したスチレン溶液を7.99kg/h、n-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60質量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を10.55kg/h、n-ヘキサン47.66kg/h、n-ヘキサンに1,2-ブタジエンが2.0質量%で溶解した1,2-ブタジエン溶液を10g/h、極性添加剤としてn-ヘキサンに2,2-(ジ-2(テトラヒドロフリル)プロパンが10質量%で溶解した溶液を10.0g/h、上記製造例で製造された変性開始剤を292.50g/hの速度で注入する。この時、第1基反応器の温度は50℃となるように維持し、重合転換率が43%となった時、移送配管を通じて、第1反応器から第2反応器に重合物を移送する。
引き続き、第2反応器にn-ヘキサンに1,3-ブタジエンが60質量%で溶解した1,3-ブタジエン溶液を0.95kg/hの速度で注入する。この時、第2基反応器の温度は65℃となるように維持し、重合転換率が95%以上となった時、移送配管を通じて、第2反応器から第3反応器に重合物を移送する。
上記第2反応器から第3反応器に重合物を移送し、変性剤として下記式(1a)が溶解した溶液を第3反応器に投入する(変性剤:act. Li=1:1mol)。第3反応器の温度は65℃となるように維持する。
【0100】
【0101】
その後、第3反応器から排出された重合溶液に酸化防止剤として30質量%で溶解したIR1520(BASF社)溶液を、170g/hの速度で注入して攪拌する。その結果、得られる重合物をスチームで加熱された温水に入れて攪拌し、溶媒を除去することで、両末端が変性された変性重合体Bを得る。
【0102】
<評価>
比較例1及び実施例1~2の各ゴム組成物から加硫ゴムを得た。得られた加硫ゴムで次の各性能の評価を行なった。評価結果を表1に示す。
【0103】
(1)低転がり抵抗性
粘弾性測定装置[上島製作所社製]を用い、温度50℃、初期歪2%、動歪1%、周波数52Hzで、加硫ゴムの損失正接(tanδ)を測定した。比較例1の評価結果のtanδの逆数を100として相対評価した。指数が大きいほど、転がり抵抗が低く、加硫ゴムから得られるタイヤの低転がり抵抗性が良好であることを意味する。
【0104】
(2)ウェットグリップ性能(湿潤路面での制動性)
粘弾性測定装置[上島製作所社製]を用い、温度0℃、初期歪2%、動歪1%、周波数52Hzで、加硫ゴムの損失正接(tanδ)を測定した。比較例1の評価結果のtanδを100として相対評価した。指数が大きいほど、ウェットグリップ性に優れる。
【0105】
(3)耐摩耗性
加硫ゴムをJISダンベル状3号形試験片に加工し、JIS K 6251:2004に準拠して25℃で引張試験を行い、切断時伸び(Eb)及び切断時引張応力(TSb)を測定した。以下の式によりタフネス(TF)を求め、また、耐摩耗性指数を求めた。耐摩耗性指数が大きいほど、加硫ゴムは剛性に優れ、耐摩耗性が良好であることを示す。
タフネス(TF)=切断時伸び(Eb)×切断時引張応力(TSb)
耐摩耗性指数={(各試験片のTF)/(比較例1の試験片のTF)}×100
【0106】
【0107】
表1からわかるように、実施例では、低転がり抵抗性、ウェットグリップ性能及び耐摩耗性の指数が、いずれも100より大きい。これはすなわち、実施例のゴム組成物を用いてタイヤトレッド及びタイヤを製造すれば、優れたウェットグリップ性能、低転がり抵抗性及び耐摩耗性を有することを示す。
また、ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の各指数の平均値は100を超えており、実施例のゴム組成物から得られるタイヤトレッド及びタイヤは、ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性、及び耐摩耗性の高度なバランスを向上することができることがわかる。
本発明によれば、ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性及び耐摩耗性に優れたタイヤトレッド及びタイヤを製造可能なタイヤ用ゴム組成物を提供することができる。また、本発明によれば、ウェットグリップ性能、低転がり抵抗性及び耐摩耗性に優れたタイヤトレッド及びタイヤを提供することができる。