(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182844
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電波異常検知システム、電波異常検知方法、及び、電波異常検知プログラム
(51)【国際特許分類】
H04B 17/391 20150101AFI20221201BHJP
H04B 17/373 20150101ALI20221201BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20221201BHJP
【FI】
H04B17/391
H04B17/373
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090593
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004237
【氏名又は名称】日本電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】竹内 俊樹
(57)【要約】
【課題】受信データに含まれる電波異常を精度良く検出することが可能な電波異常検知システム、電波異常検知方法、及び、電波異常検知プログラムを提供すること。
【解決手段】電波異常検知システムは、受信データの第1所定期間毎の特徴量を前記第1特徴量として抽出する第1特徴量抽出部と、受信データの、第1所定期間よりも長い第2所定期間毎の特徴量を第2特徴量として抽出する第2特徴量抽出部と、第1特徴量抽出部によって抽出された第1特徴量と、第2特徴量抽出部によって抽出された第2特徴量と、を用いて、受信データに含まれる電波異常を検知する異常検知部と、を備える。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
受信データから第1所定期間毎に抽出された特徴量である第1特徴量と、前記受信データから前記第1所定期間よりも長い第2所定期間毎に抽出された特徴量である第2特徴量と、を用いて検知された、前記受信データに含まれる電波異常についての検知結果を出力する、
電波異常検知システム。
【請求項2】
前記受信データから前記第1所定期間毎に抽出された前記第1特徴量を用いて検知された、前記受信データに含まれる電波異常の一部である第1電波異常についての検知結果を出力し、且つ、前記受信データから前記第2所定期間毎に抽出された前記第2特徴量を用いて検知された、前記受信データに含まれる電波異常の他の一部である第2電波異常についての検知結果を出力する、
請求項1に記載の電波異常検知システム。
【請求項3】
前記受信データの前記第1所定期間毎の特徴量を前記第1特徴量として抽出する第1特徴量抽出部と、
前記受信データの、前記第1所定期間よりも長い前記第2所定期間毎の特徴量を前記第2特徴量として抽出する第2特徴量抽出部と、
前記第1特徴量抽出部によって抽出された前記第1特徴量と、前記第2特徴量抽出部によって抽出された前記第2特徴量と、を用いて、前記受信データに含まれる電波異常を検知する異常検知部と、
を備えた、
請求項1に記載の電波異常検知システム。
【請求項4】
前記第2特徴量抽出部は、前記第2所定期間毎の複数の前記第1特徴量を合算することにより、前記第2所定期間毎の前記第2特徴量を抽出するように構成されている、
請求項3に記載の電波異常検知システム。
【請求項5】
前記第1特徴量抽出部によって抽出された複数の前記第1特徴量から前記受信データに含まれる送信信号の最大継続送信時間を推定し、推定された前記最大継続送信時間に応じた前記第2所定期間を決定する抽出期間決定部をさらに備えた、
請求項3又は4に記載の電波異常検知システム。
【請求項6】
前記抽出期間決定部は、
前記第1特徴量抽出部によって抽出された複数の前記第1特徴量から前記受信データに含まれる前記送信信号の信号レベルを推定する信号レベル推定部と、
複数の前記第1特徴量のそれぞれにおける前記信号レベルの発生状況に基づいて、前記信号レベルが維持された時間の最大値である前記最大継続送信時間を推定する最大継続送信時間推定部と、
を有する、
請求項5に記載の電波異常検知システム。
【請求項7】
前記異常検知部は、前記第1特徴量抽出部によって抽出された前記第1特徴量を用いて、前記受信データに含まれる電波異常の一部である第1の電波異常を検知し、且つ、前記第2特徴量抽出部によって抽出された前記第2特徴量から検出される、前記受信データに含まれる送信信号の送信継続時間と、前記最大継続送信時間と、の比較によって、前記受信データに含まれる電波異常の他の一部である第2の電波異常を検知する、
請求項5又は6に記載の電波異常検知システム。
【請求項8】
前記異常検知部は、前記第1特徴量抽出部によって抽出された前記第1特徴量を用いて、前記受信データに含まれる電波異常の一部である第1電波異常を検知し、且つ、前記第2特徴量抽出部によって抽出された前記第2特徴量を用いて、前記受信データに含まれる電波異常の他の一部である第2電波異常を検知する、
請求項3~6の何れか一項に記載の電波異常検知システム。
【請求項9】
学習部をさらに備え、
前記第1特徴量抽出部は、サンプルデータの前記第1所定期間毎の特徴量を第1サンプル特徴量として抽出するように構成され、
前記第2特徴量抽出部は、前記サンプルデータの前記第2所定期間毎の特徴量を第2サンプル特徴量として抽出するように構成され、
前記学習部は、前記第1特徴量抽出部によって抽出された複数の前記第1サンプル特徴量と、前記第2特徴量抽出部によって抽出された複数の前記第2サンプル特徴量と、を用いて、前記受信データに電波異常が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行うように構成され、
前記異常検知部は、複数の前記第1特徴量と、複数の前記第2特徴量と、前記学習部の機械学習により生成された学習済みモデルと、に基づいて、前記受信データに含まれる電波異常を検知するように構成されている、
請求項3~8の何れか一項に記載の電波異常検知システム。
【請求項10】
前記第1特徴量は、前記受信データの、前記第1所定期間における周波数方向及び時間方向の両方の情報を含む統計的な情報であって、
前記第2特徴量は、前記受信データの、前記第2所定期間における周波数方向及び時間方向の両方の情報を含む統計的な情報である、
請求項1~9の何れか一項に記載の電波異常検知システム。
【請求項11】
受信データの第1所定期間毎の特徴量を第1特徴量として抽出する第1特徴量抽出ステップと、
前記受信データの、前記第1所定期間よりも長い前記第2所定期間毎の特徴量を第2特徴量として抽出する第2特徴量抽出ステップと、
前記第1特徴量と、前記第2特徴量と、を用いて、前記受信データに含まれる電波異常を検知する異常検知ステップと、
を備えた、電波異常検知方法。
【請求項12】
受信データの第1所定期間毎の特徴量を第1特徴量として抽出する第1特徴量抽出処理と、
前記受信データの、前記第1所定期間よりも長い前記第2所定期間毎の特徴量を第2特徴量として抽出する第2特徴量抽出処理と、
前記第1特徴量と、前記第2特徴量と、を用いて、前記受信データに含まれる電波異常を検知する異常検知処理と、
をコンピュータに実行させる電波異常検知プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波異常検知システム、電波異常検知方法、及び、電波異常検知プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電波を用いた無線通信は、様々な分野で活用されているが、その中でも特に重要とされる警察無線、消防無線、航空無線や鉄道無線等の通信は重要無線通信と呼ばれる。重要無線通信に対して妨害が生じた場合、人命にもかかわる事態に発展する可能性があるため、これらの通信に用いられる電波の発射状況に対して電波干渉や障害の検知(監視)を行うことは非常に重要である。
【0003】
また、近年、自営無線の一種として、携帯電話用の通信規格である4G/5G(第4世代/第5世代移動通信システム)を発展させたプライベートLTE(Long Term Evolution)やローカル5G等も注目されている。ローカル5G等では、自営のエリアや事業者ごとに免許の交付や無線通信システムの構築が実施される可能性がある。そのため、上記の重要無線通信と同様に、ローカル5G等の無線通信システムに対する隣接エリア等からの電波干渉や、自システムにおける障害等を自動で検知(監視)することで、当該システムの無線性能劣化の防止や劣化原因の解析を高効率化することも期待されている。ここで、障害とは、電波障害、システムや機器等の故障や障害を含む(以下、単に障害と示す)。
【0004】
通常、電波の発射状況や無線通信システムに対する電波干渉や障害の検知を行う際には、ある電波の受信レベルに対してしきい値を設定し、受信レベルがしきい値を超えた電波を異常と判定する手法が考えられる。電波の周波数ごとに定められた受信レベルのしきい値をスペクトラムマスクと呼ぶ。この場合、受信レベルがスペクトラムマスクの値を超えた場合のみを異常と判定しているため、受信レベルが低い場合や受信レベル以外の特徴量に異常が生じた場合には、異常と判定されないという課題がある。
【0005】
電波環境の異常や障害要因を特定する方法は、例えば特許文献1にも開示されている。
【0006】
特許文献1では、受信したサンプリングデータから所定時刻ごとの振幅特徴量を抽出し、抽出した振幅特徴量と複数の教師データとの類似度を算出することで、電波干渉発生の有無とその要因を判定する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、所定の時刻ごとに振幅特徴量を抽出しているため、当該所定時刻を超えるような周期を持つ電波干渉の発生を検出することができない、という課題があった。即ち、特許文献1では、受信データに含まれる電波異常を精度良く検出することができない、という課題があった。
【0009】
本開示の目的の一つは、上述した課題を解決する電波異常検知システム、電波異常検知方法、及び、電波異常検知プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施の形態によれば、電波異常検知システムは、受信データから第1所定期間毎に抽出された特徴量である第1特徴量と、前記受信データから前記第1所定期間よりも長い第2所定期間毎に抽出された特徴量である第2特徴量と、を用いて検知された、前記受信データに含まれる電波異常についての検知結果を出力する。
【0011】
一実施の形態によれば、電波異常検知方法は、受信データの第1所定期間毎の特徴量を第1特徴量として抽出する第1特徴量抽出ステップと、前記受信データの、前記第1所定期間よりも長い前記第2所定期間毎の特徴量を第2特徴量として抽出する第2特徴量抽出ステップと、前記第1特徴量と、前記第2特徴量と、を用いて、前記受信データに含まれる電波異常を検知する異常検知ステップと、を備える。
【0012】
一実施の形態によれば、電波異常検知プログラムは、受信データの第1所定期間毎の特徴量を第1特徴量として抽出する第1特徴量抽出処理と、前記受信データの、前記第1所定期間よりも長い前記第2所定期間毎の特徴量を第2特徴量として抽出する第2特徴量抽出処理と、前記第1特徴量と、前記第2特徴量と、を用いて、前記受信データに含まれる電波異常を検知する異常検知処理と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0013】
前記一実施の形態によれば、受信データに含まれる電波異常を精度良く検出することが可能な電波異常検知システム、電波異常検知方法、及び、電波異常検知プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施の形態1に係る電波異常検知システムの全体構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態1に係る電波異常検知システムの第1変形例を示すブロック図である。
【
図3】実施の形態1に係る電波異常検知システムによる全体的な処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【
図4A】実施の形態1に係る電波異常検知システムによる学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4B】実施の形態1に係る電波異常検知システムによる学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4C】実施の形態1に係る電波異常検知システムによる学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】実施の形態1に係る電波異常検知システムによる判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6A】統計的な特徴量の一例を示す概略図である。
【
図6B】統計的な特徴量の一例を示す概略図である。
【
図6C】統計的な特徴量の一例を示す概略図である。
【
図6D】統計的な特徴量の一例を示す概略図である。
【
図7】実施の形態1に係る電波異常検知システムによって抽出された第1特徴量、及び、それを用いた電波異常の検知方法を説明するための図である。
【
図8】実施の形態1に係る電波異常検知システムによって抽出された第2特徴量、及び、それを用いた電波異常の検知方法を説明するための図である。
【
図9】実施の形態1に係る電波異常検知システムによって抽出される第2特徴量の抽出期間の決定方法を説明するための図である。
【
図10】実施の形態1に係る電波異常検知システムの第2変形例を示すブロック図である。
【
図11】
図10に示す電波異常検知システムの変形例を示すブロック図である。
【
図12】実施の形態2に係る電波異常検知システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図13A】実施の形態2に係る電波異常検知システムによる学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13B】実施の形態2に係る電波異常検知システムによる学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13C】実施の形態2に係る電波異常検知システムによる学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】実施の形態2に係る電波異常検知システムによる判定処理の流れを示すフローチャートである。
【
図15】実施の形態3に係る電波異常検知システムの全体構成を示すブロック図である。
【
図16】実施の形態3に係る電波異常検知システムによる全体的な処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【
図17A】実施の形態3に係る電波異常検知システムによる学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17B】実施の形態3に係る電波異常検知システムによる学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図17C】実施の形態3に係る電波異常検知システムによる学習処理の流れを示すフローチャートである。
【
図18】実施の形態3に係る電波異常検知システムによる判定処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について説明する。なお、図面は簡略的なものであるから、この図面の記載を根拠として実施の形態の技術的範囲を狭く解釈してはならない。また、同一の要素には、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0016】
また、以下の実施の形態においては、便宜上その必要があるときは、複数のセクションまたは実施の形態に分割して説明する。ただし、特に明示した場合を除き、それらはお互いに無関係なものではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、応用例、詳細説明、補足説明等の関係にある。また、以下の実施の形態において、要素の数等(個数、数値、量、範囲等を含む)に言及する場合、特に明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でもよい。
【0017】
さらに、以下の実施の形態において、その構成要素(動作ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではない。同様に、以下の実施の形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含むものとする。このことは、上記数等(個数、数値、量、範囲等を含む)についても同様である。
【0018】
<実施の形態の概要>
以下では、
図1~
図18を参照して、実施の形態1~3に係る電波異常検知システムの詳細について説明する。
【0019】
まず、実施の形態1では、電波異常検知システムに設けられた、短期的な特徴量である第1特徴量を抽出する第1特徴量抽出部と、第1特徴量抽出部によって抽出された複数の第1特徴量を用いて再特徴量化を行って長期的な特徴量である第2特徴量を抽出する第2特徴量抽出部と、第2特徴量抽出部による第2特徴量の抽出期間を決定する抽出期間決定部と、第1特徴量及び第2特徴量を用いて、受信データにおける電波異常の有無を表すモデルの学習、及び、受信データにおける電波異常の有無の判定を行う検知処理部と、のそれぞれの基本構成、特徴、及び、動作について詳細に説明する。なお、特徴量の詳細については後述する。
【0020】
また、実施の形態2では、電波異常検知システムに設けられた検知処理部が、第1特徴量抽出部によって抽出された第1特徴量(短期的な特徴量)を用いて学習及び判定する機能と、第2特徴量抽出部によって抽出された第2特徴量(長期的な特徴量)を用いて学習及び判定する機能と、をそれぞれ備えた場合の例について説明する。
【0021】
さらに、実施の形態3では、電波異常検知システムに設けられた検知処理部が、第2特徴量(長期的な特徴量)を用いた検知判定において、学習済みモデルを用いて電波異常の有無を判定する代わりに、学習時に決定した最大継続送信時間と、受信データに含まれる送信信号の送信継続時間と、の比較によって、電波異常の有無を判定する場合の例について説明する。ここで、受信データに含まれる送信信号とは、例えば受信機以外の無線機や電波干渉源から送信される信号のことである。
【0022】
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1に係る電波異常検知システム100の全体構成の一例を示すブロック図である。また、
図2は、電波異常検知システム100の変形例を電波異常検知システム101として示すブロック図である。
図1では、学習処理及び判定処理のそれぞれの処理の一部が共通の処理回路を用いて実現されているのに対し、
図2では、学習処理と判定処理とがそれぞれ別々の処理回路を用いて実現されている。
図1及び
図2に示す何れの構成も同等の効果を奏することができるため、以下では、主に、
図1に示す構成について説明する。
【0023】
電波異常検知システム100は、一例として、短期的な特徴量である第1特徴量を抽出する特徴量抽出部(第1特徴量抽出部)20と、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量を用いて再特徴量化を行って長期的な特徴量である第2特徴量を抽出する再特徴量化部(第2特徴量抽出部)30と、再特徴量化部30による第2特徴量の抽出期間を決定する抽出期間決定部40と、第1特徴量及び第2特徴量を用いて、受信データにおける電波異常の有無を表すモデルの学習、及び、受信データにおける電波異常の有無の判定を行う検知処理部(異常検知部)50と、を少なくとも備える。
【0024】
特徴量抽出部20は、スペクトログラム化部26と、信号抽出部27と、特徴量化部28と、を少なくとも備える。スペクトログラム化部26は、受信データからスペクトラム化及びスペクトログラム化の少なくとも何れかを行う。信号抽出部27は、スペクトログラム化部26から出力されたスペクトログラム等から、ノイズレベルの閾値等を用いて、受信データに含まれる送信信号の信号領域や、当該送信信号の受信レベルを抽出する。特徴量化部28は、信号抽出部27の抽出結果を用いて短期の抽出期間(所定期間)T1毎の特徴量化を行う。それにより、特徴量抽出部20では、短期の抽出期間T1毎に、短期的な特徴量である第1特徴量が複数抽出される。
【0025】
再特徴量化部30は、特徴量加算部37と、特徴量化部38と、を備える。特徴量加算部37は、長期的な抽出期間(所定期間)T2分の複数の第1特徴量を加算(合算)する。特徴量化部38は、長期的な抽出期間T2毎に、複数の第1特徴量を加算した結果を用いて再特徴量化を行う。
【0026】
抽出期間決定部40は、信号レベル推定部46と、最大継続送信時間推定部47と、を備える。信号レベル推定部46は、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量を用いて、受信データに含まれる送信信号の信号レベル(受信データの受信レベルのうち、ノイズフロアレベルと推定される受信レベル超の受信レベル)を推定(又は設定)する。最大継続送信時間推定部47は、信号レベル推定部46によって推定された信号レベルと、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量と、を用いて最大継続送信時間(信号レベルが維持された時間の最大値など)を推定する。なお、推定された最大継続送信時間から長期的な抽出期間T2が決定され、再特徴量化部30へ出力される。
【0027】
検知処理部50は、学習部60と、データベース70と、判定部80と、を備える。学習部60は、学習処理時において、サンプルデータから抽出された第1特徴量(第1サンプル特徴量)及び第2特徴量(第2サンプル特徴量)を用いて、受信データに電波異常(電波干渉や障害)が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行う。データベース70には、学習部60の機械学習により生成された学習済みモデル(以下、学習済みモデル70とも称す)等が格納されている。判定部80は、判定処理時において、特徴量抽出部20から出力された第1特徴量及び再特徴量化部30から出力された第2特徴量と、学習済みモデル70と、を用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かの判定を行う。なお、学習処理時とは、事前にサンプルデータを用いて、その後に行う実際の受信データに電波異常が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行う工程のことであり、判定処理時とは、実際の受信データを用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かの判定を行う工程のことである。
【0028】
なお、特徴量は、受信データの、所定の抽出期間における周波数方向及び時間方向の両方の情報を含む統計的な情報である。例えば、特徴量は、頻度分布(ヒストグラム)、確率密度関数(PDF;Probability Density Function)、累積分布関数(CDF;Cumulative Distribution Function)、振幅確率分布(APD;Amplitude Probability Density)など、所定の期間ごとに抽出する統計的な特徴量を想定している。なお、特徴量は、時間軸の受信データから直接抽出されてもよいし、スペクトラム化やスペクトログラム化によって周波数軸のデータに変換したうえで周波数ごとに抽出されてもよい。
【0029】
なお、
図2に示す電波異常検知システム101は、
図1に示す電波異常検知システム100と比較して、特徴量抽出部20の代わりに、学習処理用の特徴量抽出部20_1と、判定処理用の特徴量抽出部20_2と、を個別に備え、再特徴量化部30の代わりに、学習処理用の再特徴量化部30_1と、判定処理用の再特徴量化部30_2と、を個別に備える。各特徴量抽出部20_1,20_2は、特徴量抽出部20と同じ機能を有し、各再特徴量化部30_1,30_2は、再特徴量化部30と同じ機能を有する。また、
図2に示す電波異常検知システム101は、
図1に示す電波異常検知システム100と比較して、検知処理部50の代わりに、学習処理用の検知処理部50_1と、判定処理用の検知処理部50_2と、を備える。検知処理部50_1は、学習部60及びデータベース70を有し、検知処理部50_2は、判定部80を有する。電波異常検知システム101のその他の構成及び動作については、電波異常検知システム100と同様であるため、その説明を省略する。なお、データベース70は、検知処理部50_2内に設けられてもよいし、独立して設けられてもよい。
【0030】
(電波異常検知システム100の動作)
続いて、実施の形態1に係る電波異常検知システム100の動作について説明する。
図3は、電波異常検知システム100による全体的な処理の流れの概要を示すフローチャートである。
【0031】
図3に示すように、電波異常検知システム100による処理は、事前または定期的に行う学習処理のステップと、運用時に逐次的に行う判定処理のステップと、に分けられる。そして、学習処理は、主に、短期的な特徴量である第1特徴量を抽出する処理(ステップS11~S14)と、長期的な特徴量である第2特徴量を抽出する抽出期間を決定する処理(ステップS21~S23)と、第2特徴量を抽出する(再特徴量化する)処理(ステップS31~S33)と、学習処理(ステップS41)と、によって構成されている。判定処理は、主に、逐次的に、第1特徴量及び第2特徴量を抽出する処理(ステップS61~S67)と、抽出した第1及び第2特徴量と学習済みモデルとを用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かの判定を行う処理(ステップS68)と、によって構成されている。
【0032】
(電波異常検知システム100による学習処理の詳細)
図4A~
図4Cは、実施の形態1に係る電波異常検知システム100による学習処理の流れを示すフローチャートである。
【0033】
図4A~
図4Cに示す学習処理は、通常状態(正常時)の受信データをサンプルデータとして収集して行うことを想定する。学習に用いる受信データ(サンプルデータ)の収集期間は、通常状態(正常時)に想定される通信状況が概ね含まれていれば良いため、任意の1日の数秒から数十秒間のデータであっても、数日間や1週間のうちのランダムや一定時間ごとに抽出した、合わせて数十秒間や数時間分のデータであっても何ら問題はない。
【0034】
まず、学習処理のうち、特徴量抽出部20における、短期的な特徴量である第1特徴量(第1サンプル特徴量)を抽出する処理(ステップS11~S14)について説明する。
【0035】
まず、スペクトログラム化部26は、学習用に収集した受信データに対してスペクトラム化またはスペクトログラム化を行い、時間ごと又は周波数ごとの受信レベルを示すデータに変換する(ステップS11)。その後、特徴量化部28は、スペクトログラム化部26によって変換されたデータから、監視する無線通信システムの無線規格や多重化周期等によって決定された抽出期間T1(例えば5ms等)毎に(ステップS12)、短期的な特徴量である第1特徴量を抽出する(ステップS13→S14)。なお、このとき、ノイズレベルではなく、信号レベルにおける電波状態を監視し、信号レベルにおける干渉や障害を検知するため、信号抽出部27において、ノイズフロア未満の信号を一定レベルに縮退させて信号レベルを抽出し(ステップS13)、特徴量化部28に渡しても良い。但し、ノイズフロアレベルの信号(ノイズ)の一部は、一定レベルに縮退させずに意図的に抽出されるようにしておく。その後、特徴量化部28は、第1特徴量として、所定の抽出期間T1ごとに、受信レベルに対する、頻度分布(ヒストグラム)、確率密度関数(PDF)、累積分布関数(CDF)、又は、振幅確率分布(APD)などの統計的な特徴量を抽出する(ステップS14)。
【0036】
次に、学習処理のうち、抽出期間決定部40における、長期的な特徴量である第2特徴量(第2サンプル特徴量)の抽出期間T2を決定する処理(ステップS21~S23)について説明する。
【0037】
まず、信号レベル推定部46は、特徴量抽出部20によって抽出期間T1ごとに抽出された短期的な特徴量である第1特徴量を用いて、信号レベル(ノイズフロアレベル)を推定する(ステップS21)。そして、最大継続送信時間推定部47は、抽出された複数の第1特徴量と、推定した信号レベルの情報と、に基づいて、受信データに含まれる送信信号の送信継続時間(信号レベルが維持された時間)を逐次的に抽出する(ステップS22)。その後、最大継続送信時間推定部47は、抽出した各々の送信継続時間の分布等に基づいて、最大継続送信時間を推定し(ステップS23)、当該最大継続送信時間に対応する抽出期間T2を決定する。なお、抽出期間決定部40の動作の詳細については後述する。
【0038】
次に、学習処理のうち、再特徴量化部30における、長期的な特徴量である第2特徴量(第2サンプル特徴量)を抽出する処理(ステップS31~S33)について説明する。
【0039】
まず、特徴量加算部37は、長期的な抽出期間T2毎の複数の第1特徴量を加算(合算)する(ステップS31→S32)。その後、特徴量化部38は、長期的な抽出期間T2毎の複数の第1特徴量の加算結果を、第2特徴量として抽出する(再特徴量化する)(ステップS33)。
【0040】
最後に、学習処理のうち、機械学習処理(ステップS41)について説明する。
【0041】
学習部60は、第1特徴量と第2特徴量とを連結することで形成される高次元(多次元)の特徴量ベクトルを用いて、受信データに電波異常(電波干渉や障害)が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行う(ステップS41)。
【0042】
本実施の形態では、学習部60で採用されている機械学習が、事前に教師データとして定義が困難な未知の干渉や障害を検知するために、教師無し学習である場合を想定しており、一例として、One-class SVM(One-class Support Vector Machine)である場合を想定している。但し、学習部60で採用される機械学習は、One-class SVMに限られず、例えば、深層学習等を用いた異常検知モデル(Deep Anomaly Detection)等のモデルの機械学習であっても良い。或いは、学習部60で採用される機械学習は、上述のような高次元(多次元)の特徴量ベクトルの分布から、マハラノビス距離や分散(標準偏差)等を用いて統計的に異常検知するための閾値を学習する方法や、カルマンフィルタやパーティクルフィルタ等の状態フィルタを用いて変化傾向を予測して、その変化傾向から逸脱しないかを検知する方法などが用いられても何ら問題はない。さらに、学習部60で採用される機械学習は、教師無し学習に限られず、教師有り学習であってもよい。なお、教師無し学習では、入力に対する出力(正解)が与えられずに機械学習が行われるのに対し、教師有り学習では、入力に対する出力(正解)が与えられた状態で機械学習が行われる。
【0043】
学習部60の機械学習により生成された学習済みモデル、異常検知するための閾値、変化傾向を示す係数などは、データベース70に格納される。
【0044】
(電波異常検知システム100による判定処理の詳細)
図5は、実施の形態1に係る電波異常検知システム100による判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
図5に示す判定処理は、実運用時に、監視する電波環境から受信データを取得して、逐次的に電波干渉や障害の検知判定を行う処理である。
【0046】
まず、判定処理では、学習処理と同様に、特徴量抽出部20及び再特徴量化部30を用いて、短期的な特徴量である第1特徴量及び長期的な特徴量である第2特徴量をそれぞれ抽出する処理を行う(S61~S67)。判定処理における第1特徴量及び第2特徴量の抽出処理については、学習処理における第1特徴量(第1サンプル特徴量)及び第2特徴量(第2サンプル特徴量)の抽出処理と同様であるため、その説明を省略する。
【0047】
なお、判定処理時における短期的な抽出期間や長期的な抽出期間には、学習処理時と同じ短期的な抽出期間T1や長期的な抽出期間T2の値が使用される。具体的には、判定処理時における短期的な抽出期間には、監視する無線通信システムの無線規格や多重化周期などに基づいて設定した抽出期間の値が使用され、判定処理時における長期的な抽出期間には、学習処理時に抽出期間決定部40の処理によって決定された抽出期間の値が使用される
【0048】
次に、判定処理のうち、検知判定処理(ステップS68)について説明する。
判定部80は、受信データから逐次的に抽出された第1特徴量及び第2特徴量と、学習処理時において機械学習により生成された学習済みモデル70と、を用いて、検知判定処理を行う(ステップS68)。
【0049】
例えば、学習済みモデル70が、教師無し学習の一種であるOne-class SVM等の機械学習によって生成されたものである場合、判定部80は、第1特徴量と第2特徴量とを連結することで形成される高次元(多次元)の特徴量ベクトルが入力されると、学習済みモデル70内に構成されている識別境界に対する当該特徴量ベクトルの位置関係及びその距離を、正常度(或いは異常度)に換算して出力する。そして、判定部80は、その算出結果に基づいて受信データに電波異常が含まれるか否かの判定結果を出力する。
【0050】
なお、マハラノビス距離や分散(標準偏差)等を用いて統計的に異常検知する場合には、判定部80は、学習処理時に学習した学習済みの閾値からの前記特徴量ベクトルの距離を算出して当該距離を判定結果として出力しても良い。或いは、カルマンフィルタやパーティクルフィルタ等の状態フィルタを用いて変化傾向を予測する場合には、判定部80は、その変化傾向を示す係数からの前記特徴量ベクトルの逸脱度を算出して判定結果として出力しても良い。
【0051】
(特徴量抽出部20、再特徴量化部30、及び、抽出期間決定部40の動作の詳細)
続いて、特徴量抽出部20、再特徴量化部30、及び、抽出期間決定部40のそれぞれの動作の詳細について、説明する。
【0052】
図6A~
図6Dは、電波異常検知システム100によって受信データから抽出される統計的な特徴量の一例を示す概略図である。既に説明したように、本実施の形態では、特徴量抽出部20が、短期的な抽出期間T1ごとに第1特徴量を抽出し、再特徴量化部30が、長期的な抽出期間T2ごとに第2特徴量を抽出する。
【0053】
特徴量抽出部20では、まず、スペクトログラム化部26が、時間軸IQ信号などの受信データを、FFT(高速フーリエ変換)処理等によって周波数ごとの信号に変換する(ステップS11)。その後、信号抽出部27は、スペクトログラム化部26によって変換されたデータから、抽出期間T1ごとに(ステップS12)、ノイズフロアの閾値に基づいた周波数ごとの信号レベルを抽出する(ステップS13)。その後、特徴量化部28は、信号抽出部27によって抽出された周波数ごとの信号レベルから第1特徴量を抽出する(ステップS14)。
【0054】
ここで、特徴量(第1及び第2特徴量の何れも含む)は、例えば、
図6Aに示すように、抽出期間ごとに抽出した受信レベルごとの度数分布(ヒストグラム)でも良いし、
図6Bに示すように、度数の単位を度数の絶対値ではなく確率密度として関数化した確率密度関数(PDF)でも良い。ただし、特徴量としてPDFが用いられる場合、当該特徴量は、確率密度関数そのものではなく、一定の受信レベルごとに積分した離散値となり、度数分布を確率密度として正規化した値にほぼ等しい。或いは、特徴量は、例えば、
図6C及び
図6Dに示すように、
図6Aの頻度分布を累積確率化した累積分布関数(CDF)や振幅確率分布(APD)であっても良い。CDFは、受信レベルごとに当該受信レベル以下の信号が発生する確率を示し、APDは、受信レベルごとに当該受信レベル以上の信号が発生する確率を示す。なお、特徴量としてCDFが用いられる場合、当該特徴量は、分布関数そのものではなく、一定の受信レベルごとに積分した離散値、すなわち、度数分布を累積した上で正規化した値にほぼ等しい。同様にして、特徴量としてAPDが用いられる場合、当該特徴量は、分布関数そのものではなく、一定の受信レベルごとに積分した離散値、すなわち、度数分布を累積した上で正規化した値にほぼ等しい。
【0055】
なお、特徴量抽出部20によって抽出された第1特徴量が、
図6A~
図6Dに示す何れの形式(種類)の特徴量であったとしても、後段の処理では、原理的には、第1特徴量を、
図6A~
図6Dに示す他の何れの形式の特徴量にも変換して使用することが可能である。そのため、第1特徴量及び第2特徴量には、互いに異なる形式(種類)の特徴量が用いられても良い。
【0056】
さらに、特徴量は、スペクトログラム化した周波数(FFT処理のサブキャリア)ごとに抽出された、
図6A~
図6Dに示すような受信レベルごとの発生確率等、によって構成されても良いし、いくつかの周波数(サブキャリア)ごとに抽出された、
図6A~
図6Dに示すような受信レベルごとの発生確率等の積分値、によって構成されても良い。すなわち、特徴量は、抽出期間ごとに、周波数の次元と受信レベルの次元とのマトリックスによって構成される高次元(多次元)の特徴量ベクトルであって良い。
【0057】
図7は、電波異常検知システム100によって抽出された第1特徴量、及び、それを用いた電波異常の検知方法を説明するための図である。
図7には、監視する無線通信システムの無線規格や多重化周期などに基づいて設定された抽出期間T1(例えば5ms等)ごとに抽出された、任意の周波数における第1特徴量の例が示されている。なお、
図7の例では、第1特徴量として、
図6Bに示した確率密度分布(PDF)が用いられている。
【0058】
ここで、電波発射状況を監視する重要無線や、監視する無線通信システムによっては、例えばローカル5Gや無線LAN(Local Area Network)のように、オンデマンドで電波送信する場合がある。この場合、(電波干渉や障害のない)“通常状態における第1特徴量”としては、例えば
図7の(a)~(d)に示すような様々な形をした特徴量が抽出される。
【0059】
具体的には、“通常状態における第1特徴量”としては、(a)送信なし(抽出期間T1の受信データのうち全ての期間の受信データに送信信号が含まれない)、(b)一部時間のみ送信(抽出期間T1の受信データのうち一部の期間の受信データに送信信号が含まれない)、(c)継続送信(抽出期間T1の受信データのうち全ての期間の受信データに低い受信レベルの送信信号が含まれる)、(d)継続送信(抽出期間T1の受信データのうち全ての期間の受信データに高い受信レベルの送信信号が含まれる)、のような様々な形をした特徴量が抽出される。
【0060】
例えば、学習処理時において、学習部60が、
図7の(a)~(d)に示すような4つの第1特徴量のみを用いて機械学習を行って学習済みモデル70を生成した場合、判定処理時において、判定部80は、当該学習済みモデル70を用いることにより、上述の4つの第1特徴量と同様の第1特徴量に対しては正常と判定し、上述の4つの第1特徴量から逸脱する第1特徴量に対しては異常と判定することになる。
【0061】
つまり、学習処理時において、
図7の(a)~(d)に示すような4つの第1特徴量のみを用いて機械学習が行われた場合、判定処理時において、判定部80は、通常状態である上述の4つの第1特徴量と同様の第1特徴量に対しては期待通り“正常”と判定する。
【0062】
次に、干渉発生時に抽出された第1特徴量について説明する。“干渉が発生している場合の第1特徴量”としては、例えば
図7の(e)に示すような、電力の大きな干渉が継続的に発生している場合の特徴量や、
図7の(f)に示すような、電力の小さな干渉が継続的に発生している場合の特徴量が抽出される。なお、
図7の(e)や(f)では、継続的に干渉が発生しているため、見かけ上、送信無しの受信レベルが発生していない。
【0063】
例えば、
図7の(e)に示すような電力の大きな干渉が継続的に発生している場合の第1特徴量については、
図7の(a)~(d)等に示した第1特徴量の何れとも異なるため、判定部80は、期待通り“異常”と判定する。それに対し、
図7の(f)に示すような電力の小さな干渉が継続的に発生している場合の第1特徴量については、
図7の(a)~(d)等に示した第1特徴量のうち
図7の(c)に示した第1特徴量とほぼ同じであるため、判定部80は、期待と異なり“正常”と判定してしまう可能性がある。
【0064】
そこで、本実施の形態では、短期的な特徴量である第1特徴量だけでなく、長期的な特徴量である第2特徴量を用いて、学習処理及び判定処理を行うことにより、判定部80による異常検知精度を向上させている。
【0065】
図8は、電波異常検知システム100によって抽出された第2特徴量、及び、それを用いた電波異常の検知方法を説明するための図である。
図8には、抽出期間決定部40によって決定された抽出期間T2(例えば5秒)ごとに再抽出された、任意の周波数における第2特徴量の例が示されている。なお、
図8の例では、第2特徴量として、
図6Bに示した確率密度分布(PDF)が用いられている。
【0066】
再特徴量化部30は、特徴量抽出部20によって抽出期間T1(例えば5ms)ごとに抽出された複数の第1特徴量を、抽出期間T2(例えば5秒)分ごとに纏めて、抽出期間T2分ごとに纏められた複数の第1特徴量について、受信レベルごとに頻度や確率を加算する処理を行う(ステップS31)。そして、再特徴量化部30は、抽出期間T2ごとに(ステップS32)、加算処理された結果を、第2特徴量として出力する(ステップS33)。
【0067】
ここで、オンデマンドで電波送信する無線通信システムは、常時電波を出力し続ける訳ではない。そこで、抽出期間決定部40は、通常状態における最大継続送信時間(信号レベルが維持された時間)を超える抽出期間を算出して、抽出期間T2として設定する。それにより、再特徴量化部30では、(電波干渉や障害のない)“通常状態における第2特徴量”として、例えば
図8の(g)に示すような形をした特徴量が抽出される。即ち、“通常状態における第2特徴量”として、例えば
図8の(g)に示すような“送信無しの受信レベルが必ず発生している特徴量(換言すると、抽出期間T2のうち受信データに送信信号が含まれていない期間が存在する特徴量)”が抽出される。これは、
図8の(g)に示すような第2特徴量が、
図7の(a)又は
図7の(b)に示すような第1特徴量を含むように累積加算された結果だからである。
【0068】
その後、学習部60において、第1特徴量だけでなく第2特徴量も合わせて(例えば高次元化または連結させて)学習させることで、第2特徴量の次元については、
図8の(g)に示すような“送信無しの受信レベルが必ず発生している特徴量(換言すると、抽出期間T2のうち受信データに送信信号が含まれていない期間が存在する特徴量)”を通常状態の第2特徴量として学習した学習済みモデル70が構築される。
【0069】
ここで、電力の小さな干渉が継続的に発生している受信データを取得した場合、第2特徴量として、例えば
図8の(h)に示すような、“送信無しの受信レベルが発生していない特徴量(換言すると、抽出期間T2のうち受信データに送信信号が含まれていない期間が存在しない特徴量)”が抽出される。それにより、
図8の(h)に示すような、電力の小さな干渉が継続的に発生している受信データから抽出された第2特徴量については、送信無しの受信レベルの発生の有無に関して、
図8の(g)に示した第2特徴量と異なるため、判定部80は、期待通り“異常”と判定する。つまり、判定部80は、第1特徴量のみを用いた判定処理では“正常”と誤判定してしまうような受信データについて、第1特徴量及び第2特徴量を用いて判定処理を行うことにより、期待通り“異常”と判定することができる。
【0070】
最後に、抽出期間決定部40による抽出期間T2の決定方法の詳細について説明する。
図9は、抽出期間決定部40による長期的な抽出期間T2の決定方法を説明するための図である。
【0071】
本実施の形態では、上述したように、抽出期間T2に対して通常状態における最大継続送信時間を超える抽出期間を設定して、抽出期間T2ごとに抽出された第2特徴量を用いて判定処理を行うことで、継続的な干渉を検知できるようにすることを目的とする。ここで、抽出期間T2は、継続的な干渉を検知できる長期間のうち、可能な限り短期間であることが望ましい。
【0072】
まず、抽出期間決定部40において、信号レベル推定部46は、受信レベルのうち、送信信号が含まれない受信レベルである「送信無し」の受信レベルと、送信信号が含まれる受信レベルである「送信有り」の受信レベルと、の境界を推定する。そして、信号レベル推定部46は、受信レベルのうち境界以上の受信レベルを、送信信号が含まれる受信レベル(信号レベル)として推定する(ステップS21)。なお、抽出期間決定部40は、信号レベル推定部46を備える代わりに、外部に設けられた信号レベル推定機能によって推定された信号レベルの情報を受け取って設定しても良い。
【0073】
より詳細には、まず、
図9の(a)、(b)に示すように、学習用に収集された数秒~数十秒以上の受信データから抽出された各第1特徴量を用いて、任意の周波数ごとに受信レベルの分布を作成する。その後、受信レベルの分布のうちノイズレベルと信号レベルとの境界を推定する。境界の推定では、例えば、いくつかの分布の山(クラスタ)のうち、最も受信レベルが低い側の分布の山(クラスタ)のみがノイズレベルであると仮定して、受信レベルの低い側から見て最初の極小値(下に凸)になる点を境界として算出する。なお、極小値としては、受信レベルが低い側から見て、発生回数が単調減少から単調増加に変わる点でも良いし、1回微分して傾きが負から正に変わる点でも良い。または、分布全体をクラスタリングして、最も受信レベルが低い分布クラスタと、次に受信レベルが低い分布クラスタと、の間を境界として推定しても良い。そして、受信レベルのうち推定した境界以上の受信レベルを、送信信号が含まれる受信レベル(信号レベル)として推定する。
【0074】
次に、抽出期間決定部40において、最大継続送信時間推定部47は、通常状態における各送信信号の送信継続時間を抽出する(ステップS22)。例えば、最大継続送信時間推定部47は、
図9の(c)に示すように、数秒~数十秒以上分の複数の第1特徴量を用いて、任意の周波数ごとに、「送信無し」の受信レベルが発生する第1特徴量から「送信有り」の受信レベルのみが発生する第1特徴量に切り替わってから、再び「送信無し」の受信レベルが発生する第1特徴量に切り替わるまで、の時間(抽出期間T1×n(nは0以上の整数))を抽出して度数分布化する。換言すると、最大継続送信時間推定部47は、未送信時間帯(信号レベル未満のノイズレベルの受信レベルの分布)が有る第1特徴量から未送信時間帯が無い第1特徴量に切り替わってから、再び未送信時間帯が有る第1特徴量に切り替わるまで、の時間を抽出して度数分布化する。さらに換言すると、最大継続送信時間推定部47は、任意の周波数ごとに、受信データに送信信号が含まれるようになってから含まれないようになるまでの時間を抽出して度数分布化する。そして、最大継続送信時間推定部47は、送信継続期間の度数分布を基に、最大継続送信時間を推定する(ステップS23)。
【0075】
例えば、
図9の(d)に示すように、度数分布上の最大値をそのまま最大継続送信時間として推定しても良いし、度数分布上の最大値にマージンを加えた値を最大継続送信時間として推定しても良い。ここでのマージンは、例えば、度数分布上の最大値の5~10%の値である。或いは、度数分布から統計的または確率的に最大継続送信時間を推定しても良い。例えば、度数分布がガウス分布や正規分布に従うと仮定して、その平均や分散を算出(回帰分析)した上で、確率95.5%(2σ)、99.7%(3σ)、又は99.99%(4σ)の点などを基に最大継続送信時間を推定しても良い。例えば、この推定値が、度数分布上の最大値よりも大きければ、当該推定値を最大継続送信時間として採用する。
【0076】
このように、本実施の形態にかかる電波異常検知システム100(101)は、特徴量抽出部20において短期的な抽出期間T1毎に抽出された第1特徴量と、再特徴量化部30において長期的な抽出期間T2毎に抽出された第2特徴量と、の両方を用いて、検知処理部50において学習及び判定を行う。そして、本実施の形態にかかる電波異常検知システム100(101)は、電力の小さな干渉が継続的に発生している受信データから干渉(異常)を検知するために、抽出期間決定部40において、通常状態における最大継続送信時間を推定して、その最大継続送信時間に応じた長期的な抽出期間T2を決定する。それにより、本実施の形態にかかる電波異常検知システム100は、短期的な特徴量である第1特徴量のみを用いた判定処理では“異常”と判定することができない“電力の小さな干渉が継続的に発生している場合の受信データ”についても、第1特徴量だけでなく第2特徴量を用いて学習及び判定を行うことにより、期待通り“異常”と判定することができる。
【0077】
即ち、本実施の形態にかかる電波異常検知システム100(101)は、短期間の抽出期間T1ごとに抽出された第1特徴量だけでは異常検知できない、抽出期間T1と異なる周期(例えば抽出期間T1より長い周期)で特徴を持つような電波干渉や障害についても検知することができる。また、本実施の形態にかかる電波異常検知システム100(101)は、教師無し学習により生成された学習済みモデルを用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かの判定処理を行っているため、例えば、受信レベルが低く、且つ、教師データに含まれないような、未知の電波干渉や障害を検出することもできる。
【0078】
なお、長期的な特徴量である第2特徴量のみを用いた判定処理では、
図7の(e)に示したような、瞬間的に発生した電波干渉や障害を検知することができない可能性がある。その理由は、瞬間的に発生した電波干渉や障害を含む受信データから、5ms等の短期的な抽出期間T1毎に抽出された第1特徴量は、
図7の(e)に示すように、通常状態には発生していない特異な形をした特徴量となるが、5秒など長期的な抽出期間T2毎に抽出された第2特徴量は、瞬間的に発生した電波干渉等による影響が平均化された特徴量となってしまうからである。
【0079】
そこで、本実施の形態にかかる電波異常検知システム100(101)は、無線通信システムの無線規格や多重化周期等を考慮した短期的な特徴量である第1特徴量と、最大継続送信時間を考慮した長期的な特徴量である第2特徴量と、の両方を用いて、学習及び判定を行うことにより、電力の小さな干渉が継続的に発生している場合の受信データや、電波干渉や障害が瞬間的に発生した場合の受信データの何れについても、期待通り“異常”と判定することができる(即ち、精度良く異常を検知することができる)。
【0080】
なお、本実施の形態では、電波異常検知システム100(101)が、学習処理機能及び判定処理機能の両方を備えた場合を例に説明したが、これに限られず、判定処理機能のみを備えていても良い。以下、
図10を用いて簡単に説明する。
【0081】
図10は、電波異常検知システム100の変形例を電波異常検知システム102として示すブロック図である。電波異常検知システム102は、電波異常検知システム100と比較して、学習処理機能を持たず、判定処理機能のみを備える。電波異常検知システム102のその他の構成については、電波異常検知システム100の場合と同様であるため、その説明を省略する。なお、電波異常検知システム102は、予め準備された学習済みモデル70を用いて判定処理機能を実現する。なお、電波異常検知システム102は、
図10のように抽出期間決定部40を備えても良いし、別に設けられた抽出期間決定部40などによって決定された抽出期間T2の情報を取得し、再特徴量化部30において第2特徴量を抽出しても良い。
図11は、電波異常検知システム102の変形例を電波異常検知システム102aとして示すブロック図である。電波異常検知システム102aは、電波異常検知システム102と比較して、抽出期間決定部40を備えず、別に設けられた抽出期間決定部40(不図示)などによって決定された抽出期間T2の情報を取得し、再特徴量化部30において第2特徴量を抽出している。
【0082】
また、本実施の形態では、再特徴量化部30が、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量を用いて再特徴量化して第2特徴量を生成する場合を例に説明したが、これに限られない。再特徴量化部30は、同様の第2特徴量を生成できるのであれば、受信データから直接第2特徴量を抽出しても良い。さらに、本実施の形態では、第2特徴量を用いて、電力の小さな干渉が継続的に発生していることを検出する場合を例に説明したが、当然ながら、電力の大きさに関わらず、干渉が継続的に発生していることを検出することができる。
【0083】
<実施の形態2>
図12は、実施の形態2にかかる電波異常検知システム103の構成例を示すブロック図である。電波異常検知システム103では、検知処理部が、短期的な特徴量である第1特徴量を用いて学習及び判定する機能と、長期的な特徴量である第2特徴量を用いて学習及び判定する機能と、をそれぞれ別に備えている。なお、電波異常検知システム103では、学習処理及び判定処理のそれぞれの処理の一部が共通の処理回路を用いて実現されているが、学習処理と判定処理とがそれぞれ別々の処理回路を用いて実現されても良い。
【0084】
電波異常検知システム103は、一例として、短期的な特徴量である第1特徴量を抽出する特徴量抽出部20と、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量を用いて再特徴量化を行い長期的な特徴量である第2特徴量を抽出する再特徴量化部(第2特徴量抽出部)30と、再特徴量化部30による第2特徴量の抽出期間を決定する抽出期間決定部40と、第1特徴量及び第2特徴量を用いて、受信データにおける電波異常の有無を表すモデルの学習、及び、受信データにおける電波異常の有無の判定を行う検知処理部(異常検知部)52と、を少なくとも備える。
【0085】
ここで、特徴量抽出部20、再特徴量化部30、及び、抽出期間決定部40のそれぞれの構成については、電波異常検知システム100に設けられた特徴量抽出部20、再特徴量化部30、及び、抽出期間決定部40と同様であるため、その説明を省略する。以下では、主に、検知処理部52について説明する。
【0086】
検知処理部52は、学習部61と、学習部62と、データベース71と、データベース72と、判定部81と、判定部82と、を備える。
【0087】
学習部61は、学習処理時において、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量を用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行う。学習部62は、学習処理時において、再特徴量化部30によって抽出された複数の第2特徴量を用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行う。データベース71には、学習部61の機械学習により生成された学習済みモデル(以下、学習済みモデル71とも称す)等が格納されている。データベース72には、学習部62の機械学習により生成された学習済みモデル(以下、学習済みモデル72とも称す)等が格納されている。
【0088】
判定部81は、判定処理時において、受信データから抽出された第1特徴量と、学習済みモデル71と、を用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かの判定を行う。判定部82は、判定処理時において、受信データから抽出された第2特徴量と、学習済みモデル72と、を用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かの判定を行う。判定部81,82の判定結果は、それぞれ第1及び第2の判定結果として別々に検知処理部52から出力される。
【0089】
なお、特徴量は、例えば、頻度分布(ヒストグラム)、確率密度関数(PDF)、累積分布関数(CDF)、振幅確率分布(APD)など、所定の期間ごとに抽出する統計的な特徴量を想定している。なお、特徴量は、時間軸の受信データから直接抽出されてもよいし、スペクトラム化やスペクトログラム化によって周波数軸のデータに変換したうえで周波数ごとに抽出されてもよい。
【0090】
(電波異常検知システム103の動作)
続いて、実施の形態2に係る電波異常検知システム103の動作について説明する。なお、電波異常検知システム103による全体的な処理の流れは、
図3に示した電波異常検知システム100による全体的な処理の流れと同様である。
【0091】
(電波異常検知システム103による学習処理の詳細)
図13A~
図13Cは、実施の形態2に係る電波異常検知システム103による学習処理の流れを示すフローチャートである。
【0092】
図13A~
図13Cに示す学習処理は、通常状態(正常時)の受信データをサンプルデータとして収集して行うことを想定する。なお、学習処理のうち、特徴量抽出部20により第1特徴量を抽出する処理、抽出期間決定部40により第2特徴量の抽出期間T2を決定する処理、再特徴量化部30により第2特徴量を抽出する処理については、電波異常検知システム100の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0093】
以下では、学習処理のうち、電波異常検知システム103において特徴的な、機械学習処理(ステップS41a,S41b)について説明する。
【0094】
まず、学習部61は、短期的な抽出期間T1ごとに抽出された第1特徴量を高次元(多次元)で表した特徴量ベクトルを用いて、受信データに電波異常(電波干渉や障害)が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行う(ステップS41a)。また、学習部62は、長期的な抽出期間T2ごとに抽出された第2特徴量を高次元(多次元)で表した特徴量ベクトルを用いて、受信データに電波異常(電波干渉や障害)が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行う(ステップS41b)。
【0095】
本実施の形態では、学習部61,62で採用されている機械学習が、事前に教師データとして定義が困難な未知の干渉や障害を検知するために、教師無し学習である場合を想定しており、一例として、One-class SVMである場合を想定している。但し、学習部61,62で採用される機械学習は、One-class SVMに限られず、例えば、深層学習等を用いた異常検知モデル(Deep Anomaly Detection)等のモデルの機械学習であっても良い。或いは、学習部61,62で採用される機械学習は、上述のような高次元(多次元)の特徴量ベクトルの分布から、マハラノビス距離や分散(標準偏差)等を用いて統計的に異常検知するための閾値を学習する方法や、カルマンフィルタやパーティクルフィルタ等の状態フィルタを用いて変化傾向を予測して、その変化傾向から逸脱しないかを検知する方法などが用いられても何ら問題はない。さらに、学習部61,62で採用される機械学習は、教師無し学習に限られず、教師有り学習であってもよい。
【0096】
学習部61,62の機械学習により生成された学習済みモデル、異常検知するための閾値、変化傾向を示す係数などは、それぞれデータベース71,72に格納される。
【0097】
(電波異常検知システム103による判定処理の詳細)
図14は、実施の形態2に係る電波異常検知システム103による判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0098】
図14に示す判定処理は、実運用時に、監視する電波環境から受信データを取得して、逐次的に電波干渉や障害の検知判定を行う処理である。なお、判定処理のうち、特徴量抽出部20により第1特徴量を抽出する処理、再特徴量化部30により第2特徴量を抽出する処理については、電波異常検知システム100の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0099】
以下では、判定処理のうち、電波異常検知システム103において特徴的な、検知判定処理(ステップS68a,S68b)について説明する。
【0100】
まず、判定部81は、受信データから逐次的に抽出された第1特徴量と、学習処理時において学習部61の機械学習により生成された学習済みモデル71と、を用いて、第1の検知判定処理を行う(ステップS68a)。
【0101】
例えば、学習済みモデル71が、教師無し学習の一種であるOne-class SVM等の機械学習によって生成されたものである場合、判定部81は、第1特徴量を高次元(多次元)で表した特徴量ベクトルが入力されると、学習済みモデル71内に構成されている識別境界に対する当該特徴量ベクトルの位置関係及びその距離を、正常度(或いは異常度)に換算して出力する。そして、判定部81は、その算出結果に基づいて受信データに電波異常が含まれるか否かの第1の判定結果を出力する。
【0102】
また、判定部82は、抽出期間T2ごとに抽出された第2特徴量と、学習処理時において学習部62の機械学習により生成された学習済みモデル72と、を用いて、第2の検知判定処理を行う(ステップS68a)。
【0103】
例えば、学習済みモデル72が、教師無し学習の一種であるOne-class SVM等の機械学習によって生成されたものである場合、判定部82は、第2特徴量を高次元(多次元)で表した特徴量ベクトルが入力されると、学習済みモデル72内に構成されている識別境界に対する当該特徴量ベクトルの位置関係及びその距離を、正常度(或いは異常度)に換算して出力する。そして、判定部82は、その算出結果に基づいて受信データに電波異常が含まれるか否かの第2の判定結果を出力する。
【0104】
なお、マハラノビス距離や分散(標準偏差)等を用いて統計的に異常検知する場合には、各判定部81,82は、学習処理時に学習した学習済みの閾値からの特徴量ベクトルの距離を算出して当該距離を判定結果として出力しても良い。或いは、カルマンフィルタやパーティクルフィルタ等の状態フィルタを用いて変化傾向を予測する場合には、各判定部81,82は、その変化傾向を示す係数からの特徴量ベクトルの逸脱度を算出して判定結果として出力しても良い。
【0105】
このように、本実施の形態にかかる電波異常検知システム103は、電波異常検知システム100と同等程度の効果を奏することができる。また、電波異常検知システム103は、短期的な抽出期間T1毎に抽出された第1特徴量を用いて学習及び判定する処理と、長期的な抽出期間T2毎に抽出された第2特徴量を用いて学習及び判定する処理と、をそれぞれ別個に実施している。それにより、電波異常検知システム103は、短期的な特徴量である第1特徴量を用いて判定処理を行った第1の判定結果と、長期的な特徴量である第2特徴量を用いて判定処理を行った第2の判定結果と、をそれぞれ別個に出力することができるため、例えばユーザは、第1及び第2の判定結果の組み合わせから、電波干渉や障害の要因及び状態をより正確に特定することができる。
【0106】
具体的には、例えば、抽出期間T1として、監視する重要無線や無線通信システムの無線規格や多重化方式等に基づいて5ms等の短期間の抽出期間が設定された場合、第1の判定結果としては、抽出期間T1のオーダーで瞬間的に変動の大きな干渉や障害が発生した場合に“異常”を示す判定結果が出力される。一方、抽出期間T2として、推定された最大継続送信時間に基づいて5秒等の長期間の抽出期間が設定された場合、第2の判定結果としては、抽出期間T2に継続的に干渉や障害が発生している場合に“異常”を示す判定結果が出力される。ユーザは、これらの判定結果の組み合わせから、干渉や障害の変動の大きさや、干渉や障害が瞬間的なものなのか継続的なものなのか、などを容易に推定することが可能である。
【0107】
なお、本実施の形態では、電波異常検知システム103が、学習処理機能及び判定処理機能の両方を備えた場合を例に説明したが、これに限られず、
図10に示す構成のように、判定処理機能のみを備えていても良い。
【0108】
また、本実施の形態では、再特徴量化部30が、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量を用いて再特徴量化して第2特徴量を生成する場合を例に説明したが、これに限られない。再特徴量化部30は、同様の第2特徴量を生成できるのであれば、受信データから直接第2特徴量を抽出しても良い。さらに、本実施の形態では、第2特徴量を用いて、電力の小さな干渉が継続的に発生していることを検出する場合を例に説明したが、当然ながら、電力の大きさに関わらず、干渉が継続的に発生していることを検出することができる。
【0109】
<実施の形態3>
図15は、実施の形態3にかかる電波異常検知システム104の構成例を示すブロック図である。電波異常検知システム104では、検知処理部が、長期的な特徴量である第2特徴量を用いてモデルを学習する機能を持たない。また、電波異常検知システム104では、検知処理部が、第2特徴量を用いて受信データに電波異常が含まれるか否か判定する機能の代わりに、学習処理時に推定された最大継続送信時間と、受信データに含まれる送信信号の送信継続時間と、を比較することによって、当該受信データに電波異常が含まれるか否かを判定する機能を備える。
【0110】
なお、電波異常検知システム104では、学習処理及び判定処理のそれぞれの処理の一部が共通の処理回路を用いて実現されているが、学習処理と判定処理とがそれぞれ別々の処理回路を用いて実現されても良い。
【0111】
電波異常検知システム103は、一例として、短期的な特徴量である第1特徴量を抽出する特徴量抽出部20と、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量を用いて再特徴量化を行い長期的な特徴量である第2特徴量を抽出する再特徴量化部(第2特徴量抽出部)30と、再特徴量化部30による第2特徴量の抽出期間を決定する抽出期間決定部40と、受信データにおける電波異常の有無を表すモデルの学習、及び、受信データにおける電波異常の有無の判定を行う検知処理部(異常検知部)53と、を少なくとも備える。
【0112】
ここで、特徴量抽出部20、再特徴量化部30、及び、抽出期間決定部40のそれぞれの構成については、電波異常検知システム100に設けられた特徴量抽出部20、再特徴量化部30、及び、抽出期間決定部40と同様であるため、その説明を省略する。但し、学習処理時において、抽出期間決定部40によって推定された最大継続送信時間(抽出期間T2)は、判定処理時において、再特徴量化部30及び後述する送信継続時間判定部83によって用いられる。以下では、主に、検知処理部53について説明する。
【0113】
検知処理部53は、学習部61と、データベース71と、判定部81と、送信継続時間判定部83と、を備える。
【0114】
学習部61は、学習処理時において、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量を用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行う。データベース71には、学習部61の機械学習により生成された学習済みモデル(以下、学習済みモデル71とも称す)等が格納されている。判定部81は、判定処理時において、受信データから抽出された第1及び第2特徴量と、学習済みモデル71と、を用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かの判定を行う。判定部81の判定結果は、第1の判定結果として検知処理部53から出力される。
【0115】
送信継続時間判定部83は、抽出期間決定部40によって推定された最大継続送信時間(抽出期間T2)と、再特徴量化部30によって抽出された複数の第2特徴量から得られる各送信信号の送信継続時間と、の比較判定を行う。送信継続時間判定部83の判定結果は、第1の判定結果とは別に、第2の判定結果として検知処理部53から出力される。
【0116】
(電波異常検知システム104の動作)
続いて、実施の形態3に係る電波異常検知システム104の動作について説明する。
図16は、電波異常検知システム104による全体的な処理の流れの概要を示すフローチャートである。なお、電波異常検知システム104による全体的な処理の流れは、
図3に示した電波異常検知システム100による全体的な処理の流れと大部分において同様である。但し、学習処理時においては、再特徴量化部30により第2特徴量を抽出する処理(ステップS31~S33)は、省略されてもよい。
【0117】
具体的には、電波異常検知システム100による処理は、事前または定期的に行う学習処理のステップと、運用時に逐次的に行う判定処理のステップと、に分けられる。そして、学習処理は、主に、短期的な特徴量である第1特徴量を抽出する処理(ステップS11~S14)と、長期的な特徴量である第2特徴量を抽出する抽出期間を決定する処理(ステップS21~S23)と、学習処理(ステップS41a)と、によって構成されている。判定処理は、主に、逐次的に、第1特徴量及び第2特徴量を抽出する処理(ステップS61~S66,S67c)と、受信データに電波異常が含まれるか否かの判定を行う処理(ステップS68a,S68c)と、によって構成されている。
【0118】
(電波異常検知システム104による学習処理の詳細)
図17A~
図17Cは、実施の形態3に係る電波異常検知システム104による学習処理の流れを示すフローチャートである。
【0119】
図17A~
図17Cに示す学習処理は、通常状態(正常時)の受信データをサンプルデータとして収集して行うことを想定する。なお、学習処理のうち、特徴量抽出部20により第1特徴量を抽出する処理、抽出期間決定部40により第2特徴量の抽出期間T2を決定する処理については、電波異常検知システム100の場合と同様であるため、その説明を省略する。但し、学習処理時において、抽出期間決定部40によって推定された信号レベルや最大継続送信時間(抽出期間T2)は、判定処理時において、再特徴量化部30及び後述する送信継続時間判定部83によって用いられる。
【0120】
以下では、学習処理のうち、電波異常検知システム103において特徴的な、機械学習処理(ステップS41a)について説明する。
【0121】
まず、学習部61は、短期的な抽出期間T1ごとに抽出された第1特徴量を高次元(多次元)で表した特徴量ベクトルを用いて、受信データに電波異常(電波干渉や障害)が含まれるか否かを表すモデルの機械学習を行う(ステップS41a)。
【0122】
本実施の形態では、学習部61で採用されている機械学習が、事前に教師データとして定義が困難な未知の干渉や障害を検知するために、教師無し学習である場合を想定しており、一例として、One-class SVMである場合を想定している。但し、学習部61で採用される機械学習は、One-class SVMに限られず、例えば、深層学習等を用いた異常検知モデル(Deep Anomaly Detection)等のモデルの機械学習であっても良い。或いは、学習部61で採用される機械学習は、上述のような高次元(多次元)の特徴量ベクトルの分布から、マハラノビス距離や分散(標準偏差)等を用いて統計的に異常検知するための閾値を学習する方法や、カルマンフィルタやパーティクルフィルタ等の状態フィルタを用いて変化傾向を予測して、その変化傾向から逸脱しないかを検知する方法などが用いられても何ら問題はない。さらに、学習部61で採用される機械学習は、教師無し学習に限られず、教師有り学習であってもよい。
【0123】
学習部61の機械学習により生成された学習済みモデル、異常検知するための閾値、変化傾向を示す係数などは、データベース71に格納される。
【0124】
なお、本実施の形態では、学習処理時において、第2特徴量を用いて機械学習する処理は省略されている。本実施の形態では、判定処理時において、第2特徴量を用いて機械学習された学習済みモデルの代わりに、抽出期間決定部40によって推定された信号レベルや最大継続送信時間が用いられる。
【0125】
(電波異常検知システム104による判定処理の詳細)
図18は、実施の形態3に係る電波異常検知システム104による判定処理の流れを示すフローチャートである。
【0126】
図18に示す判定処理は、実運用時に、監視する電波環境から受信データを取得して、逐次的に電波干渉や障害の検知判定を行う処理である。なお、判定処理のうち、特徴量抽出部20により第1特徴量を抽出する処理、再特徴量化部30により第2特徴量を抽出する処理については、電波異常検知システム100の場合と同様であるため、その説明を省略する。
【0127】
但し、再特徴量化部30によって抽出される第2特徴量は、送信継続時間判定部83による送信信号の送信継続時間の推定に必要な情報さえ含んでいればよいため、例えば、実施の形態1の場合と同様に、
図6A~
図6Dに示したような種々の統計的な特徴量であっても良いし、抽出期間T2ごとの未送信時間帯(信号レベル未満のノイズレベルの受信レベルの分布)の有無の情報のみを含んだものであっても良い。或いは、第2特徴量は、第1特徴量の情報をそのまま含んだものであっても良い。
【0128】
以下では、判定処理のうち、電波異常検知システム104において特徴的な、検知判定処理(ステップS68a,S68c)について説明する。
【0129】
まず、判定部81は、受信データから逐次的に抽出された第1特徴量と、学習処理時において学習部61の機械学習により生成された学習済みモデル71と、を用いて、第1の検知判定処理を行う(ステップS68a)。
【0130】
例えば、学習済みモデル71が、教師無し学習の一種であるOne-class SVM等の機械学習によって生成されたものである場合、判定部81は、第1特徴量を高次元(多次元)で表した特徴量ベクトルが入力されると、学習済みモデル71内に構成されている識別境界に対する当該特徴量ベクトルの位置関係及びその距離を、正常度(或いは異常度)に換算して出力する。そして、判定部81は、その算出結果に基づいて受信データに電波異常が含まれるか否かの第1の判定結果を出力する。
【0131】
なお、マハラノビス距離や分散(標準偏差)等を用いて統計的に異常検知する場合には、判定部81は、学習処理時に学習した学習済みの閾値からの特徴量ベクトルの距離を算出して当該距離を判定結果として出力しても良い。或いは、カルマンフィルタやパーティクルフィルタ等の状態フィルタを用いて変化傾向を予測する場合には、判定部81は、その変化傾向を示す係数からの特徴量ベクトルの逸脱度を算出して判定結果として出力しても良い。
【0132】
また、送信継続時間判定部83は、長期的な抽出期間T2ごとに抽出された第2特徴量と、学習処理時に抽出期間決定部40によって推定された信号レベルや最大継続送信時間の情報と、に基づいて、受信データに含まれる各送信信号の送信継続時間の判定処理を行う(ステップS68C)。
【0133】
ここで、再特徴量化部30が、実施の形態1の場合と同様に、長期的な抽出期間T2ごとに第2特徴量を抽出している場合には、送信継続時間判定部83は、抽出期間T2における第2特徴量の中に、未送信時間帯(信号レベル未満のノイズレベルの受信レベルの分布)の有無を検知するだけで良い。例えば、送信継続時間判定部83は、未送信時間帯が存在する場合には、“正常”であることを表す判定結果(受信データに電波異常が含まれないことを表す判定結果)を出力し、未送信時間帯が存在しない場合には、“異常”であることを表す判定結果(受信データに電波異常が含まれることを表す判定結果)を出力する。
【0134】
或いは、送信継続時間判定部83は、第1特徴量及び第2特徴量の少なくとも何れかの特徴量を用いて、未送信時間帯が有る特徴量から未送信時間帯が無い特徴量に切り替わってから、再び未送信時間帯が有る特徴量に切り替わるまで、の時間を、送信信号の送信継続時間として抽出し、当該送信信号の送信継続時間と、抽出期間決定部40によって推定された最大継続送信時間と、を比較して、判定結果として出力してもよい。例えば、送信継続時間判定部83は、送信信号の送信継続時間が最大継続送信時間を超えていない場合には、“正常”であることを表す判定結果を出力し、最大継続送信時間を超えている場合には、“異常”であることを表す判定結果を出力する。なお、再特徴量化部30において、既に未送信時間帯の有無を検知判定処理済みであり、その判定結果のみが送信継続時間判定部83に入力されてくる場合には、送信継続時間判定部83は、その判定結果を基に、例えば未送信時間帯が存在する場合には、“正常”であることを表す判定結果を出力し、未送信時間帯が存在しない場合には、“異常”であることを表す判定結果を出力しても良い。
【0135】
送信継続時間判定部83による判定結果は、第1の判定部81による第1の判定結果とは別に、第2の判定結果として、検知処理部53から出力される。
【0136】
このように、本実施の形態にかかる電波異常検知システム104は、電波異常検知システム100と同等程度の効果を奏することができる。また、電波異常検知システム104は、短期的な抽出期間T1毎に抽出された第1特徴量を用いて学習及び判定する処理を行うと共に、長期的な抽出期間T2毎に抽出された第2特徴量については、学習を必要とせず、学習処理時に決定した最大継続送信時間と、第2特徴量から得られる送信信号の送信継続時間と、を比較することにより、受信データに電波異常が含まれるか否かを判定している。それにより、電波異常検知システム104は、電波異常検知システム103の場合と同様に、短期的な特徴量である第1特徴量を用いて判定処理を行った第1の判定結果と、長期的な特徴量である第2特徴量を用いて判定処理を行った第2の判定結果と、をそれぞれ別個に出力することができるため、例えばユーザは、第1及び第2の判定結果の組み合わせから、電波干渉や障害の要因及び状態をより正確に特定することができる。
【0137】
さらに、本実施の形態に係る電波異常検知システム104は、長期的な特徴量である第2特徴量を用いた機械学習を行う必要がないため、電波異常検知システム103の場合と比較して、システム全体を簡単化及び効率化することができる。これは、例えば、回路規模や学習時間の削減効果に繋がる。また、長期的な特徴量である第2特徴量を用いた第2の判定処理については、異常と判定された場合の異常の要因を“送信継続時間に起因する異常”と断定することができる。但し、実施の形態2に係る電波異常検知システム103では、長期的な抽出期間T2における第2特徴量を用いて検知可能であった干渉や障害について、実施の形態3に係る電波異常検知システム104では、検知できなくなる可能性もあるため、検知性能と効率化との間にはトレードオフがあると考えられる。
【0138】
なお、本実施の形態では、電波異常検知システム104が、学習処理機能及び判定処理機能の両方を備えた場合を例に説明したが、これに限られず、
図10に示す構成のように、判定処理機能のみを備えていても良い。
【0139】
また、本実施の形態では、再特徴量化部30が、特徴量抽出部20によって抽出された複数の第1特徴量を用いて再特徴量化して第2特徴量を生成する場合を例に説明したが、これに限られない。再特徴量化部30は、同様の第2特徴量を生成できるのであれば、受信データから直接第2特徴量を抽出しても良い。さらに、本実施の形態では、第2特徴量を用いて、電力の小さな干渉が継続的に発生していることを検出する場合を例に説明したが、当然ながら、電力の大きさに関わらず、干渉が継続的に発生していることを検出することができる。
【0140】
以上のように、本開示に係る電波異常検知システムは、以下のような効果を奏することができる。
【0141】
まず、本開示に係る電波異常検知システムは、特徴量抽出部において短期的な抽出期間T1毎に抽出された第1特徴量と、再特徴量化部において長期的な抽出期間T2毎に抽出された第2特徴量と、の両方を用いて、検知処理部において学習及び判定を行う。ここで、本開示に係る電波異常検知システムは、抽出期間決定部において、通常状態における最大継続送信時間を推定して、その最大継続送信時間に応じた長期的な抽出期間T2を決定する。それにより、本開示に係る電波異常検知システムは、短期的な特徴量である第1特徴量のみを用いた判定処理では“異常”と判定することができない“電力の小さな干渉が継続的に発生している場合の受信データ”についても、第1特徴量だけでなく第2特徴量を用いて学習及び判定を行うことにより、期待通り“異常”と判定することができる。
【0142】
また、本開示に係る電波異常検知システムは、教師無し学習により生成された学習済みモデルを用いて、受信データに電波異常が含まれるか否かの判定処理を行っているため、例えば、受信レベルが低く、且つ、教師データに含まれないような、未知の電波干渉や障害を検出することもできる。
【0143】
また、本開示に係る電波異常検知システムは、短期的な抽出期間T1毎に抽出された第1特徴量を用いて学習及び判定する処理と、長期的な抽出期間T2毎に抽出された第2特徴量を用いて学習及び判定する処理と、をそれぞれ別個に実施することにより、短期的な特徴量である第1特徴量を用いて判定処理を行った第1の判定結果と、長期的な特徴量である第2特徴量を用いて判定処理を行った第2の判定結果と、をそれぞれ別個に出力することが可能になるため、例えばユーザは、第1及び第2の判定結果の組み合わせから、電波干渉や障害の要因及び状態をより正確に特定することができる。
【0144】
例えば、ユーザは、第1及び第2の判定結果が何れも正常であれば、受信データに電波異常が含まれていないと判断することができる。また、第1の判定結果が異常で第2の判定結果が正常であれば、“瞬間的に変動の大きな干渉や障害が発生した”と推定することができる。また、第1の判定結果が正常で第2の判定結果が異常であれば、“変動の小さな干渉や障害が継続的に発生している”と推定することができる。さらに、第1及び第2の判定結果が何れも正常であれば、“瞬間的に見ても変動の大きな干渉や障害が継続的に発生している”などと推定することができる。
【0145】
また、本開示に係る電波異常検知システムは、特徴量抽出部によって抽出された短期的な特徴量である複数の第1特徴量を、再特徴量化部において長期的な抽出期間ごとに再特徴量化することにより、第2特徴量を生成している。それにより、第1及び第2の特徴量抽出部を並列に設けて第1及び第2特徴量を抽出する場合と比較して、周波数軸方向へのスペクトログラム化(スペクトラム化)や、時間ごとに受信レベルを抽出して頻度分布を作成する処理を共通化することができるため、再特徴量化部は、度数の加算を行うことのみで第2特徴量の抽出を実現することができる。スペクトログラム化(スペクトラム化、周波数変換)のためのFFT処理や頻度分布を作成する処理は、加算に比べて複雑な処理であるため、処理の共通化によってシステム構成の効率化及び簡単化が期待できる。
【0146】
さらに、本開示に係る電波異常検知システムは、長期的な抽出期間T2毎に抽出された第2特徴量を用いた判定処理では、学習済みモデルを用いた判定処理ではなく、学習処理時に決定した最大継続送信時間と、第2特徴量から得られる送信信号の送信継続時間と、を比較することにより、受信データに電波異常が含まれるか否かを判定することにより、第2特徴量を用いて機械学習を行う学習部及び学習済みモデルが不要になるため、システム全体を簡単化及び効率化することができる。これは、例えば、回路規模や学習時間の削減効果に繋がる。
【0147】
以上、図面を参照して、本開示の実施の形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等が可能である。また、実施の形態に記載された内容を、組み合わせて用いることも可能である。
【0148】
上述の実施の形態では、本開示をハードウェアの構成として説明したが、本開示は、これに限定されるものではない。本開示は、電波異常検知システムによる制御処理を、Central Processing Unit(CPU)にコンピュータプログラムを実行させることにより実現することも可能である。
【0149】
また、上述したプログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、Random-Access Memory(RAM)、Read-Only Memory(ROM)、フラッシュメモリ、Solid-State Drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、Digital Versatile Disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。
【符号の説明】
【0150】
20 特徴量抽出部
26 スペクトログラム化部
27 信号抽出部
28 特徴量化部
30 再特徴量化部
37 特徴量加算部
38 特徴量化部
40 抽出期間決定部
46 信号レベル推定部
47 最大継続送信時間推定部
50 検知処理部
52 検知処理部
53 検知処理部
60 学習部
61 学習部
62 学習部
70 学習済みモデル等のデータベース
71 学習済みモデル等のデータベース
72 学習済みモデル等のデータベース
80 判定部
81 判定部
82 判定部
83 送信継続時間判定部
100 電波異常検知システム
101 電波異常検知システム
102 電波異常検知システム
102a 電波異常検知システム
103 電波異常検知システム
104 電波異常検知システム