(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182845
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20221201BHJP
F28D 15/02 20060101ALI20221201BHJP
F28D 15/04 20060101ALI20221201BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20221201BHJP
H01L 23/427 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
F28D15/02 M
F28D15/04 E
F28D15/04 H
H05K7/20 Q
H01L23/46 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090594
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】月成 勇起
(72)【発明者】
【氏名】藤原 伸人
(72)【発明者】
【氏名】村上 満洋
(72)【発明者】
【氏名】市倉 優太
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
5H770
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA06
5E322AA11
5E322DA01
5E322DA02
5E322DB01
5E322DB06
5E322EA10
5E322FA01
5E322FA04
5F136CC35
5F136CC37
5F136DA27
5H770BA03
5H770PA02
5H770PA14
5H770PA16
5H770PA22
5H770PA42
5H770QA06
(57)【要約】
【課題】冷却システムのポンプ動力を低減できる、電力変換装置を提供すること。
【解決手段】電力変換装置は、受熱部と、リザーバタンクと、熱交換部と、逆止弁と、ポンプと、を備える。受熱部は、半導体モジュールを取り付ける伝熱ブロック、前記伝熱ブロック内に形成され、液相の作動冷媒が流れる第1流路、及び、前記伝熱ブロック内に形成され、気相の前記作動冷媒が流れる第2流路を有する。リザーバタンクは、前記作動冷媒を貯留する。熱交換部は、前記第2流路及び前記リザーバタンクに接続される。逆止弁は、前記熱交換部及び前記リザーバタンクの間に配置され、前記リザーバタンク側から前記熱交換部側への前記作動冷媒の移動を規制する。ポンプは、前記第1流路及び前記リザーバタンクに接続され、前記リザーバタンクの前記作動冷媒を前記第1流路に送出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュールを取り付ける伝熱ブロック、前記伝熱ブロック内に形成され、液相の作動冷媒が流れる第1流路、及び、前記伝熱ブロック内に形成され、気相の前記作動冷媒が流れる第2流路を有する受熱部と、
前記作動冷媒を貯留するリザーバタンクと、
前記第2流路及び前記リザーバタンクに接続される熱交換部と、
前記熱交換部及び前記リザーバタンクの間に配置され、前記リザーバタンク側から前記熱交換部側への前記作動冷媒の移動を規制する逆止弁と、
前記第1流路及び前記リザーバタンクに接続され、前記リザーバタンクの前記作動冷媒を前記第1流路に送出するポンプと、
を備える電力変換装置。
【請求項2】
前記受熱部は、前記第1流路及び前記第2流路を隔て、気液分離を行う多孔質体を有する、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記伝熱ブロックは、一対設けられ、
前記多孔質体は、前記一対の伝熱ブロックの間に設けられるとともに、前記第1流路を内部に形成し、前記第2流路を前記一対の伝熱ブロックとの間に形成する、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記多孔質体は、前記伝熱ブロックと対向する面に、前記伝熱ブロックとの間に前記第2流路の一部を形成する、一方向に延びる複数のスリットが形成される、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記多孔質体は、前記第1流路及び複数のスリットが形成される第1多孔質体と、前記第1多孔質体と接合され、前記伝熱ブロック側に配置される、前記第1多孔質体と異なる材質又は空隙率である第2多孔質体を有する、請求項2乃至請求項4のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記一対の伝熱ブロックの対向面とは反対の主面にそれぞれ実装される複数の前記半導体モジュールを備える、請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項7】
前記受熱部の温度を検出する温度センサと、
前記第2流路、又は、前記第2流路及び前記熱交換部を接続する流路の圧力を検出する圧力センサと、
前記温度センサで検出した温度情報及び前記圧力センサで検出した圧力情報に基づいて前記作動冷媒の流量を制御する制御部を備える、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【請求項8】
前記熱交換部に送風する送風機を備える、請求項1乃至請求項7のいずれか一項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両等に電力変換装置を用いる技術が知られている。このような電力変換装置は、半導体モジュールを含むシステムの冷却方式に循環方式である循環水冷システムを適用している。この電力変換装置の循環水冷システムは、例えば、受熱部と、熱交換器と、リザーバタンクと、ポンプと、を備える循環水冷システムを有する。受熱部は、半導体モジュールを実装し、そして冷却するヒートシンクブロックを有する。ポンプは、内部流体をリザーバタンクから受熱部、熱交換器に供給し、そして、熱交換器からリザーバタンクへ戻す。
【0003】
このような循環水冷システムは、流量を一定として作動冷媒を循環させるため、安定的な冷却性能を保持できる。しかし、パワーエレクトロニクス装置の中でも、負荷変動が大きくなるアプリケーションでは、流量を一定に循環させると、半導体素子を過冷却する状態が生じ、半導体素子の温度変化が大きくなる虞がある。また、冷却水冷システムは、電力変換装置のシステムの負荷変動に対する温度変動が増大する。また、循環水冷システムは、高熱流束化が求められている。しかし、循環水冷システムを高熱流束化するために高流量化が必要となり、圧力損失によるポンプ動力増大が課題となる。
【0004】
例えば、高熱流束に対応する冷却システムとして、作動冷媒等の相変化による蒸発潜熱を利用した沸騰冷却方式も知られている。しかし、沸騰冷却方式の冷却システムは、急峻な負荷に対する冷却即応性(安定性)が課題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6407542号公報
【特許文献2】特許第6693476号公報
【特許文献3】特許第6760214号公報
【特許文献4】特許第6461361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、冷却システムのポンプ動力を低減できる、電力変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態の電力変換装置は、受熱部と、リザーバタンクと、熱交換部と、逆止弁と、ポンプと、を備える。受熱部は、半導体モジュールを取り付ける伝熱ブロック、前記伝熱ブロック内に形成され、液相の作動冷媒が流れる第1流路、及び、前記伝熱ブロック内に形成され、気相の前記作動冷媒が流れる第2流路を有する。リザーバタンクは、前記作動冷媒を貯留する。熱交換部は、前記第2流路及び前記リザーバタンクに接続される。逆止弁は、前記熱交換部及び前記リザーバタンクの間に配置され、前記リザーバタンク側から前記熱交換部側への前記作動冷媒の移動を規制する。ポンプは、前記第1流路及び前記リザーバタンクに接続され、前記リザーバタンクの前記作動冷媒を前記第1流路に送出する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電力変換装置の構成を模式的に示す説明図。
【
図2】実施形態に係る電力変換装置の冷却システムの構成を模式的に示す説明図。
【
図3】実施形態に係る電力変換装置の冷却システムの構成を模式的に示す説明図。
【
図4】実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を模式的に示す説明図。
【
図5】実施形態に係る受熱部の構成を分解して示す斜視図。
【
図7】実施形態に係る受熱部の一部構成を示す断面図。
【
図8】実施形態に係る受熱部の気液分離条件の説明図。
【
図9】他の実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を示す断面図。
【
図10】他の実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を示す断面図。
【
図11】他の実施形態に係る電力変換装置の受熱部の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態に係る電力変換装置1について、
図1乃至
図8を用いて説明する。なお、各図において、説明の便宜上、各構成の縮尺を適宜変更するとともに、一部省略又は簡略化して説明する。
【0010】
図1は、実施形態に係る電力変換装置1の構成を模式的に示す説明図である。
図2は、電力変換装置1の冷却システム2の構成であって、作動冷媒の沸騰発生時の作動冷媒の流れを模式的に示す説明図であり、
図3は、電力変換装置1の冷却システム2の構成であって、作動冷媒の非沸騰時の作動冷媒の流れを模式的に示す説明図である。
【0011】
図4乃至
図6は、電力変換装置1の受熱部12の構成を模式的に示しており、
図4は受熱部12の説明図であり、
図5は受熱部12の分解斜視図であり、
図6は受熱部12の断面図である。
図7は、受熱部12の多孔質体32に形成される第1流路35、並びに、第1流路35に設けられる受熱部流入口37及び受熱部流出口38の構成を示す断面図である。
図8は、受熱部12の気液分離条件の説明図である。
【0012】
電力変換装置1は、例えば、電気機関車等の鉄道車両に設けられる。電力変換装置1は、例えば、パンタグラフを介して架線から供給される直流電力を交流電力に変換する。
【0013】
図1に示すように、電力変換装置1は、半導体モジュール11と、受熱部12と、熱交換部13と、リザーバタンク14と、ポンプ15と、送風機16と、逆止弁17と、配管18と、温度センサ19と、圧力センサ20と、制御部21と、を備える。
図2及び
図3に示すように、電力変換装置1の受熱部12、熱交換部13、リザーバタンク14、ポンプ15及び逆止弁17は、配管18により接続され、冷却システム2を構成する。
【0014】
このような電力変換装置1は、配管18により、流体的に、受熱部12、熱交換部13、リザーバタンク14及びポンプ15が接続される。具体例として、受熱部12は、熱交換部13、リザーバタンク14及びポンプ15と配管18を介して流体的に接続される。熱交換部13は、逆止弁17を介してリザーバタンク14に流体的に接続される。リザーバタンク14は、ポンプ15と配管18を介して流体的に接続される。ポンプ15は、受熱部12と流体的に接続される。
【0015】
そして、
図2及び
図3に示すように、リザーバタンク14に貯留される液相の作動冷媒は、ポンプ15により送出されて、受熱部12、熱交換部13及びリザーバタンク14を循環する。また、
図2に示すように、受熱部12の温度により液相から相変化して気相となった作動冷媒は、受熱部12で液相の作動冷媒から気液分離され、熱交換部13へ移動し、熱交換部13において凝縮されて気相から液相へと相変化し、リザーバタンク14へ送出される。なお、作動冷媒は、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の不凍液他、電力変換装置に適用した飽和温度動作範囲のもの、かつオゾン層破壊係数、地球温暖化係数が極めて小さい対環境性に配慮したものが望ましいが、適宜設定可能である。
【0016】
半導体モジュール11は、例えば、1つの受熱部12に単数又は複数取り付けられる。半導体モジュール11は、例えば、複数の半導体素子を1つのパッケージに収めたモジュールや、半導体素子に加えて制御回路、駆動回路及び保護回路等を含むモジュールであってもよい。また、半導体モジュール11は、半導体素子が直接的に受熱部12に取り付けられる構成であってもよく、また、半導体素子が他の部材を介して受熱部12に取り付けられる構成であってもよい。
【0017】
受熱部12は、液相の作動冷媒を通過させる。受熱部12は、液相の作動冷媒と、取り付けられた半導体モジュール11の熱によって液相の作動冷媒の一部が相変化して気相となった作動冷媒とを気液分離する。受熱部12は、液相の作動冷媒をリザーバタンク14に送出するとともに、気相の作動冷媒を熱交換部13に送出する。例えば、
図1に示すように、受熱部12は、複数設けられる。
【0018】
図4乃至
図7に示すように、受熱部12は、例えば、一対の伝熱ブロック31と、多孔質体32と、ヘッダー部材33と、を備える。また、受熱部12は、多孔質体32内に設けられ、液相の作動冷媒が単相流で流通する第1流路35と、一対の伝熱ブロック31及び多孔質体32の間の隙間からヘッダー部材33内を気相の作動冷媒が単相流で流通する第2流路36と、を有する。また、受熱部12は、第1流路35を配管18に接続する受熱部流入口37及び受熱部流出口38を有する。
【0019】
伝熱ブロック31は、平板状に形成される。伝熱ブロック31は、アルミニウム等の熱伝導率が高い材料により形成される。一対の伝熱ブロック31の対向する主面間に多孔質体32が設けられる。また、一対の伝熱ブロック31は、互いに対向する主面と反対側の主面である外面に半導体モジュール11が取り付けられる。具体例として、一対の伝熱ブロック31は、それぞれの主面(外面)に半導体モジュール11が取り付けられる。
【0020】
多孔質体32は、一対の伝熱ブロック31の間に設けられる。多孔質体32は、内部に液相の作動冷媒が流れる第1流路35が形成される。また、多孔質体32は、伝熱ブロック31との間に、第2流路36の一部を構成する気相領域36aを形成する。また、多孔質体32は、第1流路35を流れる液相の作動冷媒の一部を通過させるとともに、多孔質体32を挟む液相及び気相の差圧レベルが多孔質体32の内部の最大毛細管力を下回る範囲となる複数の孔が形成される。これにより、
図6に示すように、多孔質体32は、第1流路35において液相の作動冷媒100を通過させるとともに、内部に一部の液相の作動冷媒100を通過させる。また、多孔質体32は、気相領域36aへの液相の作動冷媒100の移動を防止するとともに、作動媒体の気液分離を行い、第2流路36(気相領域36a)において気相の作動冷媒101を通過させる。
【0021】
なお、このような、多孔質体32における気液分離成立条件は、以下となる。気相側の圧力(気圧)をPv、液相側の圧力をPl、作動媒体の表面張力をσ[N/m]、多孔質体32の平均細孔半径をr[m]とする。このとき、気液分離成立条件は、
Pv-Pl<2σ/r
となる。なお、この気液分離成立条件を満たすように、例えば、多孔質体32の空隙率や孔の形状に加えて、半導体モジュール11の発熱量、ポンプ15からの流量、作動媒体の種類等に基づいて、冷却システムが設定される。また、気液分離成立条件を満たすように、制御部21によってポンプ15が駆動制御される。
【0022】
多孔質体32は、例えば、樹脂あるいは金属の繊維・粒子等の焼結体、フォーム体又はロータス型等であり、適切な熱伝導率及び適切な空隙率を有する。
【0023】
また、多孔質体32は、一対の伝熱ブロック31と一体に成形されるか、または、一対の伝熱ブロック31と別体に形成され、そして、一部が一対の伝熱ブロック31と接触して一体に組み立てられるか、又は、接合される。
【0024】
具体例として、多孔質体32は、例えば、板状に形成される。また、多孔質体32は、一対の伝熱ブロック31と対向する両主面に、一対の伝熱ブロック31の対向する主面とともに複数の気相領域36aを形成する、一方向に延びる複数のスリット32aが形成される。
【0025】
換言すると、多孔質体32は、板状に形成されるとともに、両主面に、一方向に延びるフィン状の複数の突起部32bが形成される多孔質フィンである。そして、多孔質体32のこれら複数の突起部32bの間の隙間(スリット32a)が、気相領域36aをそれぞれ形成する。
【0026】
例えば、多孔質体32が複数のスリット32aを有し、そして、多孔質体32は、一対の伝熱ブロック31に複数の突起部32bが接合される。なお、この例のような多孔質体32を用いる場合には、例えば、伝熱ブロック31は、複数の突起部32bの先端部が挿入される一方向に長い複数の溝31aを有する構成としてもよい。また、このような多孔質体32は、1つの部材によって構成されていてもよく、また、例えば、2つの部材を一体に接合することで構成されていてもよい。
【0027】
ヘッダー部材33は、受熱部12を鉄道車両等に配置した姿勢で、受熱部12の上部に配置される。ヘッダー部材33は、複数の気相領域36aの上端を覆い、複数の気相領域36aとともに、第2流路36を構成する。ヘッダー部材33は、配管18が接続される開口33aを有する。
【0028】
第1流路35は、例えば、多孔質体32の平板状の部位に配置される。第1流路35は、液相の作動冷媒が単相で流れる流路である。
図7に示すように、第1流路35は、一端が受熱部流入口37に接続され、他端が受熱部流出口38に接続される。第1流路35は、例えば、所定の流路長を得る為に、所定の流路幅に設定されるとともに、複数箇所で曲折する流路形状である。なお、第1流路35は、複数箇所で曲折せずに、受熱部流入口37及び受熱部流出口38と流体的に連続する室であってもよい。
【0029】
第2流路36は、気相の冷媒が単相で流れる流路である。第2流路36は、多孔質体32の複数のスリット32a及びヘッダー部材33の内部空間によって形成される。第2流路36は、多孔質体32から気液分離された気相の作動冷媒が複数の気相領域36aから上方のヘッダー部材33の内部空間へと流れる流路である。なお、第2流路36において、気相の作動冷媒が気相領域36aからヘッダー部材33の内部空間以外へと流れることがないよう、多孔質体32の各側面や気相領域36aの下端はカバー等によって閉塞される。
【0030】
熱交換部13は、気相の作動冷媒が内部を通過し、気相の作動冷媒を熱交換することで、気相の作動冷媒を凝縮し、液相の作動冷媒に相変化させる。
【0031】
リザーバタンク14は、液相の作動冷媒を貯留する。リザーバタンク14は、受熱部12に液相の作動冷媒を送出するとともに、受熱部12を通過した液相の作動冷媒及び熱交換部13で凝縮した液相の作動冷媒を回収する。
【0032】
ポンプ15は、リザーバタンク14の液相の作動冷媒を所定の圧力に増圧し、受熱部12に圧送する。また、ポンプ15は、吐出する作動冷媒の流量(圧力)を調整できる。
【0033】
送風機16は、熱交換部13に電力変換装置1の外部空気を送風する。例えば、送風機16は、風洞ダクト16aから外気を取り入れる。送風機16は、熱交換部13に送風することで、外部空気と熱交換部13を流れる気相の作動冷媒との熱交換を行う。
【0034】
逆止弁17は、リザーバタンク14から熱交換部13へ作動冷媒が流れる作動冷媒の逆流を防止する。
【0035】
配管18は、冷却システムの各構成品を接続し、作動冷媒の流路を構成する。具体例として、
図1乃至
図3に示すように、配管18は、受熱部流入管18aと、受熱部流出管18bと、蒸気流通管18cと、液還流管18dと、を備える。
【0036】
受熱部流入管18aは、ポンプ15を介してリザーバタンク14及び複数の受熱部12の第1流路35の一次側を接続する。具体的には、受熱部流入管18aは、リザーバタンク14及びポンプ15、並びに、ポンプ15及び複数の受熱部12の受熱部流入口37を接続する。例えば、受熱部流入管18aは、ポンプ15の二次側で複数の受熱部流入口37に接続される分岐管である。
【0037】
受熱部流出管18bは、複数の受熱部12の第1流路35の二次側及びリザーバタンク14を接続する。具体的には、受熱部流出管18bは、複数の受熱部12の受熱部流出口38及びリザーバタンク14を接続する。受熱部流出管18bは、複数の受熱部流出口38の二次側で合流する合流管である。
【0038】
蒸気流通管18cは、複数の受熱部12の第2流路36と熱交換部13を接続する。例えば、蒸気流通管18cは、複数の受熱部12と同数設けられる。複数の蒸気流通管18cは、受熱部12のヘッダー部材33の開口33aにそれぞれ接続され、気相の作動冷媒を熱交換部13内への流路を形成する。なお、蒸気流通管18cは、複数設ける構成ではなく、1つの合流管としてもよいが、このような構成とする場合には、受熱部12の第2流路36から他の受熱部12の第2流路36への移動を防止可能に構成される。
【0039】
液還流管18dは、熱交換部13及びリザーバタンク14を接続する。液還流管18dは、中途部に逆止弁17が配置される。
【0040】
温度センサ19は、例えば、受熱部12の温度を検出する。例えば、温度センサ19は、検出した温度に対応する電圧値である出力信号を制御部21に出力する。温度センサ19は、複数の受熱部12にそれぞれ設けられる構成であってもよく、いずれかの受熱部12に設けられる構成であってもよい。
【0041】
圧力センサ20は、気相の作動媒体が流れる流路の圧力を検出する。圧力センサ20は、例えば、蒸気流通管18cに設けられる。なお、圧力センサ20は、第2流路36に設けられる構成であってもよい。また、圧力センサ20は、各蒸気流通管18cに設けられる構成であってもよく、いずれかの蒸気流通管18cに設けられる構成であってもよい。
【0042】
制御部21は、例えば、温度センサ19で検出される温度、及び/又は、圧力センサ20で検出される気相の作動媒体の圧力に基づいて、多孔質体32における気液分離成立条件を満たすべく、ポンプ15を制御する。
【0043】
例えば、制御部21は、入力部41と、表示部42と、通信部43と、インターフェース44と、記憶部45と、プロセッサ46と、を備える。例えば、制御部21は、制御盤や処理端末等である。
【0044】
入力部41は、例えば、ボタンを含む操作パネル、タッチパネル、キーボード、マウス等のユーザ入力を受け付ける装置である。表示部42は、例えば、液晶ディスプレイ、または有機ELディスプレイなどの表示デバイスである。通信部43は、プロセッサ46により制御され、有線通信技術又は無線通信技術を用いて、パーソナルコンピュータ等の外部端末や、管理システムと通信可能な任意の通信インターフェースである。
【0045】
インターフェース44は、外部機器と接続可能な端子又は回路である。例えば、インターフェース44は、温度センサ19及び圧力センサ20と接続される。
【0046】
記憶部45は、メモリ及びストレージを含む。記憶部45は、種々のデータを格納する。例えば、記憶部45は、ポンプ15の制御プログラム及び制御データなどを記憶する。記憶部45は、例えば、温度センサ19及び圧力センサ20で検出した温度及び圧力の情報を記憶する。なお、記憶部45は、これら温度及び圧力の情報を、日付及び時間、並びに、受熱部12の識別番号と紐付けて記憶してもよい。
【0047】
このような記憶部45は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)(登録商標)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、NAND型フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)等を含む。
【0048】
プロセッサ46は、処理回路を含む。プロセッサ46は、例えば、CPU(Central Processing Unit)を含む。なお、プロセッサ46は、マイコン、FPGA(Field Programmable Gate Array)、DSP(Digital Signal Processor)、GPU(Graphics Processing Unit)、またはその他の汎用または専用のプロセッサなどであってもよい。また、プロセッサ46は、単数又は複数であり、例えば、マザーボード等の回路基板に実装される。
【0049】
プロセッサ46は、例えば、記憶部45に記憶された制御プログラムや制御データと、温度センサ19及び圧力センサ20で検出した温度及び圧力の情報に基づいて、ポンプ15を制御する。プロセッサ46は、ポンプ15を制御して、多孔質体32における気液分離成立条件を満たすように、ポンプ15を駆動制御する。
【0050】
次に、このように構成された電力変換装置1の作用について説明する。また、以下の説明において、電力変換装置1が鉄道車両に設けられる例を用いて説明する。
例えば、鉄道車両を走行可能とすべく、パンタグラフから電力が供給されると、制御部21のプロセッサ46は、ポンプ15を駆動する。リザーバタンク14に貯留される液相の作動冷媒がポンプ15から送出された受熱部12の第1流路35を通過して、リザーバタンク14に回収される。また、第1流路35を流れる液相の作動冷媒の一部は、毛細管力により多孔質体32の内部に浸透する。また、受熱部12に取り付けられた半導体モジュール11が電力変換装置の動作により発熱する。
【0051】
このとき、鉄道車両が走行している場合等には、半導体モジュール11は、受熱部12内部において液相の作動冷媒が沸騰する温度まで上昇する。このため、半導体モジュール11の熱が受熱部12の一対の伝熱ブロック31から多孔質体32に伝熱する。そして、多孔質体32において、複数の気相領域36a近傍の、具体例として多孔質体32の複数の突起部32bと一対の伝熱ブロック31との接合部近傍の液相の作動冷媒が蒸気となる。即ち、液相の作動冷媒が気相の作動冷媒に相変化する。これにより、気相領域36aに蒸気が誘起される。
【0052】
このとき、気相領域36a内の気相の作動冷媒の圧力Pvと多孔質体32の第1流路35内に流通する液相の作動冷媒の圧力Plの差圧が、多孔質体32内における毛細管最大ヘッド(2σ/r)以下であれば、伝熱ブロック31と多孔質体32の接合部への作動冷媒の供給と蒸発の圧力バランスが保たれる。このとき、多孔質体32を隔てて、作動冷媒の気液が分離される。例えば、制御部21は、作動冷媒の供給と蒸発の圧力バランスが保たれるように、温度センサ19で検出される温度、及び、圧力センサ20で検出される圧力に基づいてポンプ15が駆動制御される。
【0053】
そして、
図2に示すように、気相領域36aで発生した蒸気(気相の作動冷媒)は、受熱部12の上部のヘッダー部材33に送られ、蒸気流通管18cを経由し、熱交換部13に送出される。熱交換部13に設置された送風機16によって外部空気を送風し、熱交換部13で気相の作動冷媒を熱交換させることで、熱交換部13内部の気相の作動冷媒を凝縮させ、放熱させる。凝縮された作動冷媒は気相から液相に相変化し、液還流管18dを経由してリザーバタンク14に送出される。
【0054】
なお、このとき、逆止弁17は、熱交換部13とリザーバタンク14の圧力変動から、リザーバタンク14内の液相の作動冷媒が熱交換部13に逆流することを防止する。また、多孔質体32を介して気液分離された液相の作動冷媒は、受熱部流出管18bを経由してリザーバタンク14内に送出される。
【0055】
受熱部流出管18b内を流通する液相の作動冷媒は、多孔質体32内の蒸発潜熱以外の顕熱による熱損失分を授受し熱輸送されるため、サブクール度が低い状態となりうる。なお、冷却システム2の熱バランスを保つためには、この熱損失分の配管とリザーバタンク14の熱容量が必要となる。
【0056】
このように、鉄道車両が走行している場合等の、半導体モジュール11の高熱負荷時には、
図2に示すように、受熱部12内で作動冷媒を液相と気相に分離し、それぞれを還流させて、作動冷媒を循環させることによって冷却システムを正常に機能するように維持する。
【0057】
また、鉄道車両が停止している場合等には、半導体モジュール11は、受熱部12内部において液相の作動冷媒が沸騰しない温度まで上昇する。このため、受熱部12において、液相の作動冷媒は、気相に相変化しない。よって、液相の作動冷媒は、多孔質体32の受熱部流出管18bを経由してリザーバタンク14内に送出される。このように、鉄道車両が停止している場合等の、半導体モジュール11の低熱負荷時には、
図3に示すように、受熱部12内を通過した液相の作動冷媒を還流させて、作動冷媒を循環させることによって冷却システムを正常に機能させる。
【0058】
以上説明したように、本実施形態の電力変換装置1は、ポンプ15により液相の作動冷媒を受熱部12に流通させるが、液相の作動冷媒を熱交換部13に流通させる必要がない。電力変換装置1は、熱交換部13における圧力損失が生じることがないことから、ポンプ動力を低減させることができる。よって、電力変換装置1は、ポンプ15の小型化及び省エネ化に寄与できる。また、液単相流で放熱させるよりも気相状態から作動冷媒を液化させたほうが温度差を小さくできるため、同一放熱条件で比較した場合、本実施形態の電力変換装置1は、熱交換部13の体積を、従来の循環水冷の熱交換部の体積よりも小さくすることができる。よって、電力変換装置1の小型化となることから、熱交換部13の設置の自由度の向上や、冷却システムの軽量化を図ることができる。
【0059】
また、電力変換装置1は、液相の作動冷媒が沸騰する通常動作では、沸騰冷却による蒸発潜熱を利用するため、高熱流束化が期待できるとともに、低流量時で液相の作動冷媒の沸騰状態が発生しない場合でも低いポンプ動力による熱輸送と放熱が可能となる。よって、電力変換装置1の冷却システムは、従来の循環水冷の冷却システムによって生じる過冷却や、従来の沸騰冷却の冷却システムによるオーバーシュート等による熱負荷の変動を小さくできる。このため、電力変換装置1は、温度変動抑制及び平準化が図れるため、半導体モジュール11に用いられる半導体素子の寿命を延ばすことができる。
【0060】
上述したように、本実施形態の電力変換装置1によれば、受熱部12で作動冷媒の気液分離を可能とし、且つ、作動冷媒の沸騰に液相及び気相の作動冷媒を還流させ、そして、作動冷媒の非沸騰において、液相の作動冷媒を還流させる。よって、電力変換装置1は、冷却システムのポンプ15のポンプ動力を低減できる。
【0061】
なお、実施形態は上述した例に限定されない。例えば、受熱部12の多孔質体32は、
図9に示すように、複数の突起部32bに多孔質体32の内部に形成される第1流路35と連続するスリット35aを形成する構成としてもよい。このような第1流路35と連続するスリット35aを施すことによって、液相の作動冷媒を、伝熱ブロック31と多孔質体32の複数の突起部32bの接合部へ供給すること促すことができる。このため、多孔質体32の複数の突起部32bでドライアウトが生じることを抑制できる。
【0062】
また、
図10に示すように、受熱部12は、一対の伝熱ブロック31の対向面に、多孔質体として、上述した多孔質体(第1多孔質体)32と、多孔質体32の突起部32bと当接する、多孔質体32と空隙率の異なる多孔質ブロック(第2多孔質体)32Aを一様に配置する構成としてもよい。なお、このような第1多孔質体32及び第2多孔質体32Aは、一体に成形される構成であってもよく、別体に成形し、一体に組み立てるか、又は、接合する構成であってもよい。このような受熱部12とすることで、多孔質体32の複数の突起部32bから供給された液相の作動冷媒を、伝熱ブロック31と多孔質ブロック32Aとの接合部に捕捉しやすくし、液相の作動冷媒のドライアウトを抑制することもできる。
【0063】
また、
図11に示すように、受熱部12は、多孔質体32の複数の突起部32bに、第1流路35と連続するスリット35aを形成するとともに、一対の伝熱ブロック31の対向面に、多孔質体(第1多孔質体)32の突起部32bと当接する、多孔質体32と空隙率の異なる多孔質ブロック(第2多孔質体)32Aを一様に配置する構成としてもよい。このような構成とすることで、受熱部12は、液供給をさらに促す構成となり、さらなる高熱流束化においてもドライアウトすることを抑制できる。
【0064】
以上のように構成されたいずれかの電力変換装置は、冷却システムのポンプ15のポンプ動力を低減できる。
【0065】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0066】
1…電力変換装置、2…冷却システム、11…半導体モジュール、12…受熱部、13…熱交換部、14…リザーバタンク、15…ポンプ、16…送風機、16a…風洞ダクト、17…逆止弁、18…配管、18a…受熱部流入管、18b…受熱部流出管、18c…蒸気流通管、18d…液還流管、19…温度センサ、20…圧力センサ、21…制御部、31…伝熱ブロック、31a…溝、32…多孔質体(第1多孔質体)、32a…スリット、32b…突起部、32A…多孔質ブロック(第2多孔質体)、33…ヘッダー部材、33a…開口、35…第1流路、35a…スリット、36…第2流路、36a…気相領域、37…受熱部流入口、38…受熱部流出口、41…入力部、42…表示部、43…通信部、44…インターフェース、45…記憶部、46…プロセッサ、100…作動冷媒(液相)、101…作動冷媒(気相)。