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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182850
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】固定子
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/04 20060101AFI20221201BHJP
   H02K 15/04 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H02K3/04 J
H02K15/04 E
H02K15/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090600
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100125575
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100175134
【弁理士】
【氏名又は名称】北 裕介
(72)【発明者】
【氏名】武井 俊博
【テーマコード(参考)】
5H603
5H615
【Fターム(参考)】
5H603AA09
5H603BB01
5H603BB07
5H603BB09
5H603BB12
5H603CA01
5H603CA05
5H603CA10
5H603CB04
5H603CB18
5H603CE02
5H603CE09
5H603EE01
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP15
5H615QQ03
5H615QQ06
5H615SS03
5H615SS17
(57)【要約】
【課題】コイルエンド部とバスバとのレーザ溶接を適正に行わせることができる固定子を提供する。
【解決手段】固定子は、固定子コアと、固定子コアに設けられた固定子巻線と、固定子巻線のコイルエンド部に接続されたバスバと、を備える。バスバは、平角導体よりなり、周方向に延びる本体部41と、その本体部41から径方向に延びる突出部42とを有し、突出部42がコイルエンド部に対してレーザ溶接により接合されている。突出部42において、レーザ溶接時にレーザ照射される方向の厚さ寸法は、本体部41の板厚よりも厚くなっている。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定子コア(11)と、前記固定子コアに設けられた固定子巻線(12)と、前記固定子巻線のコイルエンド部(CE2)に接続されたバスバ(14)と、を備え、
前記バスバは、平角導体よりなり、周方向に延びる本体部(41)と、その本体部から径方向に延びる突出部(42)とを有し、前記突出部が前記コイルエンド部に対してレーザ溶接により接合されており、
前記突出部において、レーザ溶接時にレーザ照射される方向の厚さ寸法が、前記本体部の板厚よりも厚くなっている、固定子(10)。
【請求項2】
前記突出部において、前記本体部から延びる延出方向の全長範囲のうち径方向の先端面(42a)を含む一部範囲で、前記厚さ寸法が前記本体部の板厚よりも厚くなっている、請求項1に記載の固定子。
【請求項3】
前記突出部において、レーザ溶接時のレーザ照射方向に交差する面が外側に膨出する凸形状となっている、請求項1又は2に記載の固定子。
【請求項4】
前記突出部の先端面において、レーザ溶接時のレーザ照射方向に交差する方向の中央位置では、前記厚さ寸法が前記本体部の板厚よりも厚く、当該方向の端部位置では、前記厚さ寸法が前記本体部の板厚よりも薄くなっている、請求項3に記載の固定子。
【請求項5】
前記固定子コアは、周方向に所定間隔で形成された複数のスロット(23)を有し、
前記固定子巻線の相ごとの相巻線は、スロット内コイル部(CS)において周方向に所定のコイルピッチで導体(33)が前記スロット内に配置されるとともに、前記コイルエンド部において、前記導体が軸方向に対して傾斜する向きで延びかつ所定の頂部位置で折り返された構成となっており、
前記相巻線における巻線端部側の導体は、前記コイルエンド部において当該相巻線の中間部分と同様に軸方向に傾斜する向きで延びており、
前記突出部においてレーザ溶接時にレーザ照射される照射面(42c)が、前記相巻線の巻線端部における軸方向外側面(33a)と同じ面形状となっている、請求項1~4のいずれか1項に記載の固定子。
【請求項6】
前記固定子巻線は、前記導体として複数の導体セグメント(30)を用い、それら各導体セグメントが互いに接続されることで構成され、
前記コイルエンド部は、前記固定子コアの軸方向外側において周方向の一定方向に延びる前記導体セグメントの先端部と、周方向の前記一定方向とは逆向き方向に延びる他の前記導体セグメントの先端部とが互いに接合されて構成されており、
前記導体セグメントの先端部において軸方向外側面(33a)が曲面形状となっており、
前記突出部は、前記導体セグメントの先端部に対してレーザ溶接により接合されており、
前記突出部における前記照射面が、前記導体セグメントの先端部における前記軸方向外側面と同じ面形状となっている、請求項5に記載の固定子。
【請求項7】
前記固定子巻線の前記スロット内コイル部において、前記スロット内に前記導体が径方向に所定数並べて配置され、前記導体と前記突出部とが軸方向に重複しており、
前記突出部において、軸方向で前記固定子コア側となる面には、軸方向に斜めとなる向きで面取り部(45)が形成されている、請求項5又は6に記載の固定子。
【請求項8】
前記バスバは、平板材のプレス成型により成型された平板状をなし、前記プレス成型により生じたダレを有しており、
前記バスバは、板厚方向におけるダレ側及び反ダレ側のうちダレ側の面を前記固定子コア側とし、かつ反ダレ側の面を前記固定子コアの反対側として前記コイルエンド部に対して接合されている、請求項1~7のいずれか1項に記載の固定子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書における開示は、回転電機の固定子に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機の固定子として、固定子コアに設けられた固定子巻線のコイルエンド部に対して、中性点用のバスバや相ごとの電力供給用のバスバが接続されている構成が知られている。また、コイルエンド部とバスバとをレーザ溶接により接合する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-140839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、コイルエンド部とバスバとをレーザ溶接により接合する場合には、一般に固定子巻線が固定子コアに組み付けられた状態でレーザ溶接が行われる。この場合、コイルエンド部とバスバとの接合部にレーザが照射される際に、レーザの貫通によりコイルエンド部での絶縁被膜の損傷が生じることが懸念される。特に、固定子の軸方向外側からレーザを照射する場合には、絶縁被膜の損傷の懸念が強くなると考えられる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、コイルエンド部とバスバとのレーザ溶接を適正に行わせることができる固定子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段、及びその作用効果について説明する。
【0007】
手段1は、
固定子コアと、前記固定子コアに設けられた固定子巻線と、前記固定子巻線のコイルエンド部に接続されたバスバと、を備え、
前記バスバは、平角導体よりなり、周方向に延びる本体部と、その本体部から径方向に延びる突出部とを有し、前記突出部が前記コイルエンド部に対してレーザ溶接により接合されており、
前記突出部において、レーザ溶接時にレーザ照射される方向の厚さ寸法が、前記本体部の板厚よりも厚くなっている、ことを特徴とする。
【0008】
固定子コアに設けられた固定子巻線において、コイルエンド部にはバスバが接続されている。バスバは、周方向に延びる本体部と、その本体部から径方向に延び、レーザ溶接によりコイルエンド部に接合される突出部とを有している。この場合、バスバの突出部が本体部から径方向に延び、コイルエンド部に対してレーザ溶接により接合されている構成では、バスバの突出部でのレーザ溶接の実施に際し、レーザが被溶接部を貫通することでコイルエンド部の絶縁部材が損傷することが懸念される。なお、バスバは、一般に平板の打ち抜きにより形成され、本体部及び突出部はそれぞれ平板厚さとなっている。
【0009】
この点、バスバの突出部において、レーザ溶接時にレーザ照射される方向の厚さ寸法を本体部の板厚よりも厚くしたため、突出部でのレーザ溶接時において、レーザが被溶接部を貫通することを抑制できる。その結果、固定子巻線のコイルエンド部に対してレーザ溶接によりバスバが接続される構成を好適に実現することができる。
【0010】
手段2は、前記突出部において、前記本体部から延びる延出方向の全長範囲のうち径方向の先端面を含む一部範囲で、前記厚さ寸法が前記本体部の板厚よりも厚くなっている、ことを特徴とする。
【0011】
上記構成によれば、バスバの突出部において、本体部から延びる延出方向で必要な範囲に限って、レーザ照射される向きの厚さ寸法が厚くなっている。そのため、突出部の径方向先端部(被溶接部)において熱容量の増大を最小限に抑えることができ、溶接性を阻害せずにレーザの貫通を抑止することができる。
【0012】
手段3は、前記突出部において、レーザ溶接時のレーザ照射方向に交差する面が外側に膨出する凸形状となっている、ことを特徴とする。
【0013】
突出部において、レーザ溶接時のレーザ照射方向に交差する面が外側に膨出する凸形状となっている。これにより、突出部においてレーザ溶接が行なわれる部分だけ板厚を大きくすることができ、コストアップを抑制しつつ、レーザ溶接時においてレーザが被溶接部を貫通することを抑制できる。
【0014】
手段4は、前記突出部の先端面において、レーザ溶接時のレーザ照射方向に交差する方向の中央位置では、前記厚さ寸法が前記本体部の板厚よりも厚く、当該方向の端部位置では、前記厚さ寸法が前記本体部の板厚よりも薄くなっている、ことを特徴とする。
【0015】
突出部の先端面においてレーザ照射方向に交差する面を外側に膨出する凸形状とし、さらに、レーザ照射方向に交差する方向の中央位置では、厚さ寸法を本体部の板厚よりも厚くし、当該方向の端部位置では、厚さ寸法を本体部の板厚よりも薄くした。これにより、被溶接部における熱容量を小さくすることができる。したがって、レーザが貫通しにくく、かつ小さなエネルギでの溶接が可能になる。
【0016】
手段5は、前記固定子コアは、周方向に所定間隔で形成された複数のスロットを有し、前記固定子巻線の相ごとの相巻線は、スロット内コイル部において周方向に所定のコイルピッチで導体が前記スロット内に配置されるとともに、前記コイルエンド部において、前記導体が軸方向に対して傾斜する向きで延びかつ所定の頂部位置で折り返された構成となっており、前記相巻線における巻線端部側の導体は、前記コイルエンド部において当該相巻線の中間部分と同様に軸方向に傾斜する向きで延びており、前記突出部においてレーザ溶接時にレーザ照射される照射面が、前記相巻線の巻線端部における軸方向外側面と同じ面形状となっている、ことを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、相巻線における巻線端部側の導体は、コイルエンド部において相巻線の中間部分と同様に軸方向に傾斜する向きで延びており、バスバの突出部においてレーザ溶接時にレーザ照射される照射面が、相巻線の巻線端部における軸方向外側面と同じ面形状となっている。この場合、突出部におけるレーザ照射面の面形状と、その突出部の接合相手である相巻線の導体先端部における軸方向外側面の面形状とが一致していることで、レーザの乱反射を抑止し、良好な溶接ビードを得ることができる。
【0018】
手段6は、前記固定子巻線は、前記導体として複数の導体セグメントを用い、それら各導体セグメントが互いに接続されることで構成され、前記コイルエンド部は、前記固定子コアの軸方向外側において周方向の一定方向に延びる前記導体セグメントの先端部と、周方向の前記一定方向とは逆向き方向に延びる他の前記導体セグメントの先端部とが互いに接合されて構成されており、前記導体セグメントの先端部において軸方向外側面が曲面形状となっており、前記突出部は、前記導体セグメントの先端部に対してレーザ溶接により接合されており、前記突出部における前記照射面が、前記導体セグメントの先端部における前記軸方向外側面と同じ面形状となっている、ことを特徴とする。
【0019】
上記構成によれば、導体セグメントの先端部は軸方向外側面(軸方向において固定子コアの反対側の面)が曲面形状となっており、突出部が、導体セグメントの先端部に対してレーザ溶接により接合されている。この場合、突出部におけるレーザ照射面の面形状と、導体セグメントの先端部における軸方向外側面の面形状とが一致していることで、レーザの乱反射を抑止し、良好な溶接ビードを得ることができる。
【0020】
手段7は、前記固定子巻線の前記スロット内コイル部において、前記スロット内に前記導体が径方向に所定数並べて配置され、前記導体と前記突出部とが軸方向に重複しており、前記突出部において、軸方向で前記固定子コア側となる面には、軸方向に斜めとなる向きで面取り部が形成されている、ことを特徴とする。
【0021】
固定子巻線のスロット内コイル部において、スロット内に導体が径方向に所定数並べて配置され、導体と突出部とが軸方向に重複している構成では、バスバの本体部から径方向に延びる突出部と、導体との干渉することが懸念される。この点、バスバの突出部において、軸方向で固定子コア側となる面に、軸方向に斜めとなる向きで面取り部を形成したため、バスバの突出部と導体との干渉を抑制することができる。
【0022】
手段8は、前記バスバは、平板材のプレス成型により成型された平板状をなし、前記プレス成型により生じたダレを有しており、前記バスバは、板厚方向におけるダレ側及び反ダレ側のうちダレ側の面を前記固定子コア側とし、かつ反ダレ側の面を前記固定子コアの反対側として前記コイルエンド部に対して接合されている、ことを特徴とする。
【0023】
バスバの径方向先端部でのレーザ溶接に際し、レーザ照射を行う面を反ダレ側(ダレ側の反対側)の面にすることでレーザの乱反射を抑制することができ、溶け込みが浅くなるといった不都合を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】固定子の斜視図。
図2】固定子の正面図。
図3】固定子コアの平面図。
図4】導体セグメントと固定子コアの一部とを示す斜視図。
図5】スロット内に収容された状態の一部の導体セグメントを示す図。
図6】導体セグメントどうしの接続に関する構成を示す図。
図7】中性点バスバの斜視図。
図8】中性点バスバに対する温度センサモジュールの組み付け状態を示す斜視図。
図9】中性点バスバの突出部の構成を示す図。
図10】中性点バスバにおける突出部の成形の手順を説明するための図。
図11】固定子巻線に対する中性点バスバの接続状態を示す斜視図。
図12】導体セグメントの導体露出部においてバスバ突出部が接合される領域を示す図。
図13】固定子巻線に対する中性点バスバの接続状態を示す斜視図。
図14】レーザ溶接される中性点バスバと導体セグメントとを示す図。
図15】固定子の斜視図。
図16】固定子の正面図。
図17】コイルエンド部における樹脂封止部の成形を説明するための図。
図18】変形例において中性点バスバの突出部の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る回転電機の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態及び変形例相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、図中、同一符号を付しており、同一符号の部分についてはその説明を援用する。この実施形態の回転電機としてのモータは、例えば車両用の電動機や、飛行体用の電動機として用いられる。
【0026】
本実施形態の回転電機は、永久磁石同期電動機をはじめ、巻線界磁型や誘導機に適用できるものであり、3相巻線を有する回転電機である。回転電機は、図1に示す円筒形状の固定子10や、固定子10の径方向内側に配置される回転子(図示略)など、を備える。回転子は、固定子10に対して、回転軸を中心にして回転可能に配置されている。以下、軸方向とは、固定子10の軸方向、すなわち回転子の回転軸の軸方向のことを示し、径方向とは、固定子10の径方向、すなわち回転子の回転軸に直交する方向のことを示し、周方向とは、固定子10の周方向、すなわち回転子の回転軸を中心とする周回方向のことを示す。
【0027】
図1及び図2に示すように、固定子10は、円環状をなす固定子コア11と、その固定子コア11に巻装された固定子巻線12とを備えている。本実施形態の回転電機は、インナロータ型の回転電機であり、固定子10の径方向内側に、回転子が回転可能な状態で配置されるようになっている。固定子巻線12は、相ごとの相巻線としてU相巻線、V相巻線及びW相巻線を有する3相巻線であり、各相の相巻線の一方の端部に動力線バスバ13が接続されるとともに、他方の端部に中性点バスバ14が接続されている。固定子巻線12において、軸方向に固定子コア11に重複する範囲がスロット内コイル部CSであり、軸方向両側で固定子コア11よりも軸方向外側となる部分がコイルエンド部CE1,CE2である。
【0028】
図3に示すように、固定子コア11は、円環状のバックヨーク21と、バックヨーク21から径方向内側へ突出し周方向に所定距離を隔てて配列された複数のティース22とを有し、隣り合うティース22の間にスロット23が形成されている。スロット23は、径方向を長手として延びる開口形状をなし、固定子コア11において周方向に等間隔に設けられている。そして、そのスロット23に巻装された状態で固定子巻線12が設けられている。固定子コア11は、例えば磁性体である電磁鋼板からなるコアシートが軸方向に積層されたコアシート積層体として構成されている。
【0029】
固定子巻線12は、3相巻線がY結線(星形結線)により接続されることにより構成されている。固定子巻線12は、不図示のインバータを介して電源から電力(交流電力)が供給されることで磁束を発生する。固定子巻線12は、略矩形断面(平角断面)の一定太さの電気導体を略U字状に成形した分割導体としての複数の導体セグメント30を用いて構成されている。以下、固定子巻線12のセグメント構造について詳しく説明する。
【0030】
図4は、導体セグメント30と固定子コア11の一部とを示す斜視図である。図4に示すように、導体セグメント30は、略U字状をなし、直線状をなす一対の直線部31と、一対の直線部31どうしを繋ぐように屈曲形成されたターン部32とを有している。一対の直線部31は、固定子コア11の軸方向の厚さよりも長い長さを有している。導体セグメント30は、横断面が矩形状をなす導体(対向する一対の平面部を有する導体)を絶縁被膜により被覆した平角導線を用いて構成されており、各直線部31の先端部は、絶縁被膜が切除されることで、導体が露出した導体露出部33となっている。
【0031】
固定子コア11のスロット23には、複数の導体セグメント30が径方向に一列に並べられた状態で挿入される。本実施形態では、スロット23内に、導体セグメント30の各直線部31を6層に積層した状態で収容する構成としている。導体セグメント30において、一対の直線部31は所定のコイルピッチを隔てた2つのスロット23にそれぞれ収容される。直線部31のうち、スロット23内に収容された部分が、固定子巻線12のうちスロット内コイル部CSに相当する。なお、スロット23内には、固定子コア11と固定子巻線12(導体セグメント30)との間を電気絶縁する絶縁シート24が設けられている。絶縁シート24は、スロット23内に挿入される複数の導体セグメント30をまとめて囲むように折り曲げられ、スロット23内において固定子コア11の内周面(内壁面)と導体セグメント30との間に挟まれた状態で設けられている。
【0032】
導体セグメント30の一対の直線部31は、2つのスロット23において径方向位置を1つずらしてそれぞれ収容されている。例えば一方の直線部31が径方向奥側(バックヨーク側)からn番目の位置に収容される場合、他方の直線部31は径方向奥側からn+1番目の位置に収容されるようになっている。
【0033】
固定子コア11のスロット23に対する各導体セグメント30の挿入に際し、各導体セグメント30の直線部31は、固定子コア11の軸方向両端の第1端側及び第2端側のうち第1端側から挿入され、その直線部31の先端部が第2端側から突出する。この場合、固定子コア11の第1端側では、導体セグメント30のターン部32により一方のコイルエンド部CE1が形成される。また、固定子コア11の第2端側では、各直線部31の反ターン部側が周方向に屈曲され、かつ互いに異なる導体セグメント30の直線部31どうしが接続されることにより、他方のコイルエンド部CE2が形成される。各コイルエンド部CE1,CE2の概要は図2に示すとおりである。
【0034】
次に、コイルエンド部CE2における導体セグメント30の接続についてより詳しく説明する。ここではまず、導体セグメント30どうしの接続について説明する。
【0035】
図5は、スロット23内に収容された状態の一部の導体セグメント30を示す図である。なお、図5では、便宜上、導体セグメント30の積層数を4とする構成を示すとともに、固定子コア11を仮想線で示している。導体セグメント30において、一対の直線部31の反ターン部側は、固定子コア11の軸方向端面(図の上端面)から突出し、コア端面に対して所定の角度をもって斜行するように周方向へ屈曲されている。そして、異なる導体セグメント30の先端部の導体露出部33どうしが溶接により接合されることで、複数の導体セグメント30が接続されるようになっている。
【0036】
コイルエンド部CE2では、固定子コア11の軸方向外側において周方向の一定方向に延びる導体セグメント30の先端部と、周方向の一定方向とは逆向き方向に延びる他の導体セグメント30の先端部とが互いに接合されている。これにより、固定子巻線12は、コイルエンド部CE2において、導体セグメント30の直線部31が軸方向に対して傾斜する向きで延び、かつ所定の頂部位置で折り返された状態となっている。導体セグメント30は、各直線部31の反ターン部側が周方向でターン部32と同じ側に屈曲されるものと、各直線部31の反ターン部側が周方向にターン部32とは逆側に屈曲されるものとを含む。
【0037】
導体セグメント30どうしの接続に関する構成を、図6を用いて説明する。図6(a)は、導体セグメント30の直線部31における導体露出部33を拡大して示す図であり、図6(b)は、導体セグメント30の導体露出部33どうしを接続した状態を示す図である。
【0038】
導体セグメント30の導体露出部33において、軸方向に外側となる軸方向外側面33a、すなわち図の上面は、軸方向外側に凸となる円弧面となっている。また、導体露出部33において軸方向外側面33a以外の各面、すなわち軸方向内側面、径方向外側面、径方向内側面の3面は、いずれも平坦面となっている。そして、異なる導体セグメント30の導体露出部33どうしを径方向に重ね合わせた状態で、それらが接合されるようになっている。この場合、各導体露出部33は、平坦面どうしが当接され、例えばレーザ溶接により接合される。
【0039】
上記のとおり導体セグメント30の導体露出部33は、軸方向外側面33aが外側に凸の円弧面となっている。そして、導体露出部33どうしは、各々の軸方向外側面33aが略面一となる状態で互いに接合されている。この場合、各導体露出部33は、軸方向外側面33aの円弧の中心軸が一致するようにその厚み方向に重ねて接合されている。軸方向外側面33aの円弧の半径は、導体セグメント30の幅よりも大きいとよい。
【0040】
各相の相巻線では、その中間部分において導体セグメント30どうしの接合により導体の接続がなされている一方、巻線端部において、導体露出部33に対して各相の動力線バスバ13や中性点バスバ14が接続されている。ここでは特に、相巻線の巻線端部における中性点バスバ14の接続に関する構成を詳しく説明する。
【0041】
図7は、中性点バスバ14の斜視図である。中性点バスバ14は、平角導体よりなり、長尺状の本体部41と、その本体部41から突出する3つの突出部42とを有している。中性点バスバ14は、平板から打ち抜かれた打ち抜き材よりなる。本体部41は、平面視において円弧状に延びるようにして長尺に形成されている。固定子巻線12に対する組み付け状態で言えば、中性点バスバ14は、周方向に延びる本体部41と、本体部41から径方向内側に延びる突出部42とを有するものとなっている(図1参照)。3つの突出部42は、U相、V相及びW相の各相巻線の巻線端部にそれぞれ接合される部位である。本実施形態では、突出部42の径方向先端部が、コイルエンド部CE2における各相巻線の巻線端部に対してレーザ溶接により接合されるようになっている。
【0042】
また、本体部41には、平角導体の一部を固定子10の径方向及び軸方向に折り返して形成された折り返し部43が設けられている。折り返し部43は、固定子10の温度を検出する温度センサモジュール51を取り付けるためのセンサ取付部である。具体的には、図8に示すように、中性点バスバ14には、折り返し部43に挟まれた状態で温度センサモジュール51が取り付けられるようになっている。なお、温度センサモジュール51の一部は本体部41よりもコア側に突出しており、その突出部分に信号線52が接続されている。
【0043】
ところで、中性点バスバ14の突出部42を巻線端部に対してレーザ溶接により接合する場合には、固定子コア11に対して固定子巻線12を組み付けた状態で、コイルエンド部CE2の軸方向外側から被溶接部に対してレーザが照射される。この場合、レーザ溶接の実施に際し、レーザが被溶接部を貫通することでコイルエンド部CE2の導線被膜(絶縁部材)が損傷することが懸念される。そこで、本実施形態では、被溶接部におけるレーザの貫通を抑制すべく、中性点バスバ14における突出部42において、レーザ溶接時にレーザ照射される方向の厚さ寸法を本体部41の板厚よりも厚くしている。
【0044】
図9(a)は、中性点バスバ14の突出部42を図7のA方向から見た図であり、図9(b)は、突出部42を図7のB方向から見た図である。図9(a),(b)に示すように、中性点バスバ14の突出部42では、その延出方向において先端面42aを含む所定範囲を径方向先端部42bとしており、その径方向先端部42bの上下方向の厚さ寸法T1、すなわちレーザ溶接時にレーザ照射される方向の厚さ寸法を、本体部41の板厚T2よりも厚くしている。なお、本体部41の板厚T2は、打ち抜き加工される平板の板厚である。
【0045】
より詳しくは、突出部42において、本体部41から延びる延出方向の全長範囲のうち先端面42aを含む一部範囲で、厚さ寸法T1を本体部41の板厚T2よりも厚くしている(図9(b)参照)。また、突出部42の径方向先端部42bでは、図の上面及び下面、すなわちレーザ溶接時のレーザ照射方向に交差する面が外側に凸の円弧形状となっている(図9(a)参照)。この場合特に、突出部42の先端面42aにおいて、レーザ溶接時のレーザ照射方向に交差する方向の中央位置では、厚さ寸法T1が本体部41の板厚T2よりも厚く、当該方向の端部位置では、厚さ寸法T3が本体部41の板厚T2よりも薄くなっている。
【0046】
中性点バスバ14における突出部42の成形の手順を、図10を用いて説明する。なお、図10(a)~(c)において、上段は平面視での突出部42を示し、下段はC方向から見た突出部42を示す。
【0047】
図10(a)は、平板を打ち抜いた直後の状態(成型前の状態)の突出部42を示しており、突出部42において径方向先端部42bに相当する部位の幅寸法が成型後よりも幅広となっている。その後、図10(b)に示すように、塑性加工により突出部42が成型される。このとき、所定の押圧治具を用い、突出部42における余剰な幅広部分を幅方向に押し潰すことにより、厚さ方向に膨出する膨出部分を成型する。この塑性加工によれば、接合面近傍を加工硬化させ、被溶接部での機械強度を向上させることができる。
【0048】
その後、図10(c)に示すように、厚さ方向に膨出した部分を所定寸法に仕上げ加工する。これにより、所望の形状及び寸法を有する突出部42が形成される。なお、仕上げ加工では切削や研磨により突出部42の寸法調整が行われるが、その作業を省略し、成型により図10(c)の構成を得るようにすることも可能である。
【0049】
図11(a),(b)は、固定子巻線12に対する中性点バスバ14の接続状態を示す図である。図11(a),(b)は、固定子巻線12に対する中性点バスバ14の接続状態としてそれぞれ同じ構成を示すが、図11(b)では、多数の導体セグメント30のうち、各相巻線の巻線端部となる導体セグメント30のみを示している。これら各図では、便宜上、中性点バスバ14の接続対象となる導体セグメント30について網掛けを付している。
【0050】
図11(a),(b)に示すように、導体セグメント30における直線部31の反ターン部側、すなわち相巻線において巻線端部を含む部分は、固定子コア11の周方向に延びており、その巻線端部に中性点バスバ14が接続されている。つまり、コイルエンド部CE2では、相巻線の中間部分、すなわち導体セグメント30どうしが接続される部位と同様に、導体セグメント30における直線部31の反ターン部側が軸方向に傾斜する向きで周方向に延びており、各直線部31の導体露出部33に対して、中性点バスバ14の突出部42がそれぞれ接合されている。
【0051】
上述したとおり、導体セグメント30の導体露出部33において軸方向外側面33aは、軸方向外側に凸となる円弧面となっている(図6(a)参照)。また、中性点バスバ14において突出部42の径方向先端部42bでは、レーザ溶接時のレーザ照射側であるレーザ照射面42cが外側に凸の円弧形状となっている(図9(a)参照)。この場合、突出部42におけるレーザ照射面42cの面形状と、導体セグメント30の先端部における軸方向外側面33aの面形状とが一致している。そのため、導体セグメント30の導体露出部33と中性点バスバ14の突出部42との接合部では、各々で軸方向外側となる面が略面一となっている。
【0052】
図12は、導体セグメント30の導体露出部33において中性点バスバ14の突出部42が接合される領域を示す図である。同図では、導体セグメント30の導体露出部33において突出部42が接合される部分に網掛けを付している。この場合、導体露出部33の軸方向外側面33aと突出部42のレーザ照射面42cと各々の面形状が一致するものとなっている。
【0053】
また、固定子巻線12のスロット内コイル部CSでは、スロット23内に導体セグメント30が径方向に所定数並べて配置され、かつ2つのスロット23間で連続する同相の導体セグメント30が、スロット23内で径方向に1つずれた位置に収容されるようになっている。この場合、コイルエンド部CE2では、図13に示すように、中性点バスバ14の本体部41から径方向に延びる突出部42が、接続相手とは異なる別の導体セグメント30(網掛けの導体セグメント30)と軸方向に交差する。そのため、中性点バスバ14の突出部42が、導体セグメント30(すなわち、軸方向に傾斜する向きで延びる導体)に干渉することが懸念される。
【0054】
この点について本実施形態では、突出部42において、軸方向で固定子コア11側となる面(軸方向内側の面)に、軸方向に斜めとなる向きで面取り部45を設け、その面取り部45により、突出部42と導体セグメント30との軸方向の干渉を抑制するようにしている。
【0055】
図9(a),(b)には、突出部42に形成された面取り部45が示されている。突出部42において、面取り部45は、レーザ照射面42cの反対側に設けられている。また、図9(b)に示すように、面取り部45は、突出部42の延出方向において先端面42aから所定範囲で設けられており、先端面42aからの範囲で言えば、面取り部45が設けられた範囲が、径方向先端部42bが設けられた範囲よりも広い範囲となっている。ただし、面取り部45と径方向先端部42bとが同じ範囲で設けられていてもよい。
【0056】
中性点バスバ14は、平板材のプレス成型により打ち抜かれた平板状をなしている。そのため、中性点バスバ14は、プレス成型により生じたダレを有する。なお、中性点バスバ14のプレス打ち抜きが行われる際には、ダレの反対側である反ダレ側にバリが生じる。この場合、中性点バスバ14の突出部42においてダレ側にてレーザ照射が行われると、ダレにより減肉化された部位でレーザ乱反射が生じ、溶け込みが浅くなることが懸念される。
【0057】
そこで本実施形態では、図14に示すように、中性点バスバ14において、反ダレ側をレーザ照射面42cとし、そのレーザ照射面42cに対してレーザを照射することで突出部42のレーザ溶接を行うようにしている。図のDがダレ部分である。つまり、中性点バスバ14は、板厚方向におけるダレ側及び反ダレ側(バリ側)のうちダレ側の面を固定子コア11側とし、かつ反ダレ側の面を固定子コア11の反対側としてコイルエンド部CE2に対して接合されている。この場合、反ダレ側のエッジ線を通るように溶接ビードが形成されるとよい。
【0058】
固定子巻線12に対する動力線バスバ13の接続については以下に簡単に説明する。図1図11(a)に示すように、各相の相巻線において中性点とは逆側の巻線端部35は、コイルエンド部CE2から径方向外側に突出するように設けられ、その巻線端部35に各相の動力線バスバ13が接続されている。相巻線及び動力線バスバ13についてもレーザ溶接により接続されているとよい。
【0059】
また、コイルエンド部CE2は絶縁樹脂により樹脂封止されており、その構成を図15及び図16に示す。これら各図に示すように、コイルエンド部CE2には環状に樹脂封止部61が設けられている。樹脂封止部61は、各導体セグメント30の溶接部(導体の折り返し頂部)と、中性点バスバ14と、相巻線及び動力線バスバ13の溶接部とを覆うようにして円環状に形成されている。
【0060】
樹脂封止部61は、軸方向においてコイルエンド部CE2の一部の範囲で設けられており、その軸方向の範囲は、導体セグメント30どうしの溶接部を含み、かつ固定子コア11の軸方向端面から離れた位置までとなっている。この場合、樹脂封止部61とコア端面との間に、樹脂封止のない領域が設けられていることにより、その領域を、固定子巻線12を冷却するコイル冷却部として用いることが可能になっている。なお、固定子巻線12の冷却としては、冷媒として冷却油又は冷却水を用いる冷却(油冷、水冷)や、空気による冷却(空冷)などが想定される。
【0061】
中性点バスバ14に組み付けられた温度センサモジュール51も同様に、樹脂封止部61に覆われている。ただし、温度センサモジュール51において信号線52との接続部分(図8参照)を含む一部の部分は、樹脂封止部61の外に配置されるようになっている。
【0062】
図17は、コイルエンド部CE2における樹脂封止部61の成形を説明するための図である。樹脂封止部61の成形は、固定子巻線12のコイルエンド部CE2に対して各バスバ13,14が接続された後に行われる。その成形時には、液状の樹脂材料が入れられた金型70にコイルエンド部CE2が挿し入れられ、その状態で樹脂封止部61が成形される。
【0063】
上記実施形態によれば、以下の優れた効果を有する。
【0064】
中性点バスバ14の突出部42において、レーザ溶接時にレーザ照射される方向の厚さ寸法T1を本体部41の板厚T2よりも厚くしたため、突出部42でのレーザ溶接時において、レーザが被溶接部を貫通することを抑制できる。また、レーザ照射の強さを弱めたり、焦点をずらしたりすることが不要となるため、生産性の低下を抑制ことができる。その結果、固定子巻線12のコイルエンド部CE2に対してレーザ溶接により中性点バスバ14が接続される構成を好適に実現することができる。
【0065】
中性点バスバ14の突出部42において、本体部41から延びる延出方向の全長範囲のうち径方向の先端面42aを含む一部範囲で、厚さ寸法T1を本体部41の板厚T2よりも厚くした。この場合、突出部42において、本体部41から延びる延出方向で必要な範囲に限って、レーザ照射される向きの厚さ寸法T1が厚くなっている。そのため、突出部42の径方向先端部42b(被溶接部)において熱容量の増大を最小限に抑えることができ、溶接性を阻害せずにレーザの貫通を抑止することができる。
【0066】
中性点バスバ14の突出部42において、レーザ溶接時のレーザ照射方向に交差する面が外側に膨出する凸形状となっている。これにより、突出部42においてレーザ溶接が行なわれる部分だけ板厚を大きくすることができ、コストアップを抑制しつつ、レーザ溶接時においてレーザが被溶接部を貫通することを抑制できる。
【0067】
突出部42の先端面42aにおいてレーザ照射方向に交差する面を外側に膨出する凸形状とし、さらに、レーザ照射方向に交差する方向の中央位置では、厚さ寸法T1を本体部41の板厚T2よりも厚くし、当該方向の端部位置では、厚さ寸法T3を本体部41の板厚T2よりも薄くした。これにより、被溶接部における熱容量を小さくすることができる。したがって、レーザが貫通しにくく、かつ小さなエネルギでの溶接が可能になる。
【0068】
相巻線の巻線端部側の導体セグメント30が、コイルエンド部CE2において相巻線の中間部分と同様に軸方向に傾斜する向きで延びており、中性点バスバ14の突出部42においてレーザ照射面42cが、導体セグメント30における導体露出部33の軸方向外側面33aと同じ面形状となっている。この場合、突出部42におけるレーザ照射面42cの面形状と、その突出部42の接合相手である導体セグメント30の導体露出部33における軸方向外側面33aの面形状とが一致していることで、レーザの乱反射を抑止し、良好な溶接ビードを得ることができる。
【0069】
中性点バスバ14の突出部42において、軸方向で固定子コア11側となる面に、軸方向に斜めとなる向きで面取り部45を形成した。そのため、中性点バスバ14の突出部42と導体セグメント30との干渉を抑制することができる。
【0070】
中性点バスバ14は、板厚方向におけるダレ側及び反ダレ側のうちダレ側の面を固定子コア11側とし、かつ反ダレ側の面を固定子コア11の反対側としてコイルエンド部CE2に対して接合されている。この場合、レーザ照射を行う面を反ダレ側の面にすることでレーザの乱反射を抑制することができ、溶け込みが浅くなるといった不都合を抑制することができる。また、接合部の合わせ面外観に明瞭な合わせ線が形成されるため、外観検査の精度を向上させることができる。
【0071】
(変形例)
上記実施形態において、その構成の一部を変更してもよい。以下、上記実施形態の変形例について説明する。
【0072】
・上記実施形態では、突出部42の径方向先端部42bにおいて、レーザ照射方向に交差する両面(コア側及び反コア側の2面)を、それぞれ外側に凸の円弧形状としたが、この構成を変更してもよい。例えば図18(a)に示すように、突出部42の径方向先端部42bにおいて、レーザ照射方向に交差する両面を、それぞれ外側に凸の三角形形状としてもよい。三角形形状以外の多角形形状にすることも可能である。
【0073】
また、図18(b)に示すように、突出部42の径方向先端部42bにおいて、レーザ照射方向に交差する両面のうちレーザ照射側の面(反コア側の面)のみを、外側に凸の円弧形状、若しくは三角形形状としてもよい。又は、突出部42の径方向先端部42bにおいて、レーザ照射方向に交差する両面のうちレーザ照射側とは反対側の面(コア側の面)のみを、外側に凸の円弧形状、若しくは三角形形状としてもよい。いずれにしろ、突出部42において、レーザ溶接時のレーザ照射方向に交差する面が外側に膨出する形状になっていればよい。
【0074】
・上記実施形態では、固定子巻線12を、導体セグメント30を用いたセグメント構造としたが、これを変更してもよい。例えば、固定子コア11の各スロット23に対して、連続線を波巻きにより巻装することで固定子巻線12を形成する構成であってもよい。
【0075】
・上記実施形態では、固定子巻線12の巻線端部に接続される中性点バスバ14について、レーザの貫通を抑制すべく、突出部42(巻線端部に対する接続部)におけるレーザ照射方向の厚さ寸法を本体部41の板厚よりも厚くしたが、動力線バスバ13について同様の構成を付加することも可能である。例えば、同相の相巻線を複数並列に接続する場合には、相ごとに、複数の巻線端部を接続する動力線バスバが設けられることが想定される。かかる場合において、その電力バスバについて、レーザの貫通を抑制すべく、各突出部(巻線端部に対する接続部)におけるレーザ照射方向の厚さ寸法をバスバ本体部の板厚よりも厚くするとよい。
【0076】
・上記実施形態では、本発明をインナロータ式の回転電機で具体化した構成を説明したが、これに代えて、本発明をアウタロータ式の回転電機で具体化することも可能である。この場合、固定子巻線12のコイルエンド部CE2の径方向内側に中性点バスバ14等が設けられるとよい。
【符号の説明】
【0077】
10…固定子、11…固定子コア、12…固定子巻線、14…中性点バスバ、41…本体部、42…突出部、CE2…コイルエンド部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18