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  • 特開-ニッケル水素二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182854
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ニッケル水素二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20221201BHJP
   H01M 4/24 20060101ALI20221201BHJP
   H01M 4/32 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01M4/62 C
H01M4/24 J
H01M4/32
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090604
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000237721
【氏名又は名称】FDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】佐口 明
(72)【発明者】
【氏名】大畠 昇太
(72)【発明者】
【氏名】石田 潤
(72)【発明者】
【氏名】江原 友樹
(72)【発明者】
【氏名】木原 勝
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA07
5H050BA14
5H050CA03
5H050CB16
5H050DA02
5H050DA03
5H050DA09
5H050EA08
5H050EA12
5H050EA15
5H050HA01
(57)【要約】
【課題】サイクル寿命特性に優れるニッケル水素二次電池を提供する。
【解決手段】ニッケル水素二次電池2は、外装缶10と、外装缶10内にアルカリ電解液とともに収容された電極群22とを備え、電極群22は、正極合剤を含む正極24と、負極合剤を含む負極26とがセパレータ28を介して重ね合わされてなり、前記正極合剤は、正極活物質としての、亜鉛を固溶した水酸化ニッケルと、正極添加剤としての酸化亜鉛と、を含み、前記負極合剤は、水素吸蔵合金粒子と、負極添加剤と、を含み、前記負極添加剤は、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体であり、前記複合体は、前記水素吸蔵合金粒子の表面の一部を被覆している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器と、前記容器内にアルカリ電解液とともに収容された電極群とを備え、
前記電極群は、正極合剤を含む正極と、負極合剤を含む負極とがセパレータを介して重ね合わされてなり、
前記正極合剤は、正極活物質としての、亜鉛を固溶した水酸化ニッケルと、正極添加剤としての酸化亜鉛と、を含み、
前記負極合剤は、水素吸蔵合金粒子と、負極添加剤と、を含み、
前記負極添加剤は、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体であり、
前記複合体は、前記水素吸蔵合金粒子の表面の一部を被覆している、ニッケル水素二次電池。
【請求項2】
前記亜鉛は、前記水酸化ニッケル100質量部に対して3.5質量部以上、4.5質量部以下で固溶されており、
前記酸化亜鉛は、前記正極活物質100質量部に対して0.5質量部以上1.0質量部以下で添加されており、
前記フッ化イットリウムは、前記水素吸蔵合金100質量部に対して0.1質量部以上0.2質量部以下である、請求項1に記載のニッケル水素二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ニッケル水素二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
アルカリ二次電池の一種としてニッケル水素二次電池が知られている。このニッケル水素二次電池は、ニッケルカドミウム二次電池に比べて高容量で、且つ、環境安全性にも優れているという点から、各種のポータブル機器やハイブリッド電気自動車等の各種機器に使用されるようになっており、その用途は益々拡大している。このような用途の拡大にともない、ニッケル水素二次電池においては、より高性能化が望まれている。このようなニッケル水素二次電池における高度化すべき性能の一つとしてサイクル寿命特性が挙げられる。サイクル寿命特性が改善され電池の充放電を繰り返すことができる回数がより多くなれば、ニッケル水素二次電池の利便性が向上する。
【0003】
ニッケル水素二次電池においてサイクル寿命が尽きる主な原因は、電池の充放電を繰り返しているうちに、アルカリ電解液が電池内で偏在するようになる、あるいは枯渇することにより、アルカリ電解液と、正極及び負極との接触が阻害され、電池反応が進行しなくなることにある。例えば、電池反応により正極の膨潤が起こり、セパレータが圧迫されるとセパレータからアルカリ電解液が奪われる。その結果、電池内でアルカリ電解液がセパレータではない部分に偏在し、セパレータが乾く、いわゆるドライアウトが起こる。そうなると、放電が不能となり、電池の寿命が尽きてしまう。
【0004】
このような不具合を抑制してサイクル寿命を延ばすために、正極に亜鉛化合物を添加する対応がとられている(例えば、特許文献1参照)。このように亜鉛化合物が添加されると、正極が膨潤してセパレータからアルカリ電解液を奪うことが抑制され、電池のサイクル寿命の向上が図られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平04-137368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記したような亜鉛化合物の添加による正極の膨潤の抑制だけでは、昨今の電池のサイクル寿命特性向上の要望には十分に応えられていないのが現状である。そのため、上記したような電池内でのアルカリ電解液の偏在を抑制するためにアルカリ電解液の注入量を増やし、サイクル寿命特性の向上が図られている。
【0007】
ところで、ニッケル水素二次電池は、過充電状態となると正極から酸素ガスが発生する反応が起こり、電池の内圧が上昇する。そのまま電池の内圧が上昇すると、電池の安全弁が作動し、酸素ガスを放出するとともにアルカリ電解液も外部に放出してしまい、アルカリ電解液が枯渇して電池の寿命が尽きてしまう。ただし、ニッケル水素二次電池においては、負極にて、過充電時に発生した酸素ガスを吸収する反応も並行して起こる。つまり、ニッケル水素二次電池は、酸素ガスによる電池の内圧の上昇を抑制することができる機能を備えている。このように、通常のニッケル水素二次電池は、電池の内圧の上昇を抑えることができるので、安全弁の作動にともないアルカリ電解液が放出されて枯渇することによる電池の寿命特性の低下は抑制することができる。
【0008】
ここで、負極における酸素ガスの吸収反応は、固相、気相及び液相が存在する三相界面で進行する。良好な三相界面を形成するには、電池内においてある程度の余剰空間が必要である。しかし、上記のようにアルカリ電解液の偏在によるサイクル寿命特性の低下を抑制するために電池内に多めにアルカリ電解液を注入すると、余剰空間が不足し、良好な三相界面が形成されなくなる。そうすると、酸素ガスの吸収反応がスムーズに進行しなくなり酸素ガスは十分に吸収されず、電池の内圧は上昇してしまう。その結果、電池の安全弁が作動してアルカリ電解液が外部に放出され、いわゆる漏液が起こる。漏液が起こると電池内でアルカリ電解液が枯渇するので、電池の寿命が早期に尽きてしまう不具合が生じる。つまり、アルカリ電解液をより多く注入してもサイクル寿命特性を低下させてしまう場合がある。特に、充放電サイクルの初期は、漏液が起こりやすい。詳しくは、充放電サイクルの初期は、電極群、特にセパレータに浸透しきれなかったアルカリ電解液が電極群の上部等に残存していることがあるとともに、電池の活性化処理が十分ではなく、酸素ガスの吸収反応がスムーズに進行しない場合がある。このため、電池の内圧が上昇しやすく、安全弁が作動して電極群の上部に残存したアルカリ電解液が放出され、漏液が起こる。
【0009】
よって、アルカリ電解液を多めに注入しても、漏液の発生、特に充放電サイクルの初期段階での漏液の発生を抑制できるニッケル水素二次電池の開発が望まれている。
【0010】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その目的とするところは、サイクル寿命特性に優れるニッケル水素二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によれば、容器と、前記容器内にアルカリ電解液とともに収容された電極群とを備え、前記電極群は、正極合剤を含む正極と、負極合剤を含む負極とがセパレータを介して重ね合わされてなり、前記正極合剤は、正極活物質としての、亜鉛を固溶した水酸化ニッケルと、正極添加剤としての酸化亜鉛と、を含み、前記負極合剤は、水素吸蔵合金粒子と、負極添加剤と、を含み、前記負極添加剤は、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体であり、前記複合体は、前記水素吸蔵合金粒子の表面の一部を被覆している、ニッケル水素二次電池が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のニッケル水素二次電池は、容器と、前記容器内にアルカリ電解液とともに収容された電極群とを備え、前記電極群は、正極合剤を含む正極と、負極合剤を含む負極とがセパレータを介して重ね合わされてなり、前記正極合剤は、正極活物質としての、亜鉛を固溶した水酸化ニッケルと、正極添加剤としての酸化亜鉛と、を含み、前記負極合剤は、水素吸蔵合金粒子と、負極添加剤と、を含み、前記負極添加剤は、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体であり、前記複合体は、前記水素吸蔵合金粒子の表面の一部を被覆している。この構成により、本発明のニッケル水素二次電池は、電池内圧の上昇を抑制でき、充放電サイクルの初期段階の漏液を防止できるので、サイクル寿命特性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】一実施形態に係るニッケル水素二次電池を部分的に破断して示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、一実施形態に係るニッケル水素二次電池(以下、電池という)2を、図面を参照して説明する。
【0015】
電池2は、例えば、AAサイズの円筒型電池である。詳しくは、図1に示すように、電池2は、上端が開口した有底円筒形状をなす容器としての外装缶10を備えている。外装缶10は導電性を有し、その底壁35は負極端子として機能する。外装缶10の開口には封口体11が固定されている。この封口体11は、蓋板14及び正極端子20を含み、外装缶10を封口するとともに正極端子20を提供する。蓋板14は、導電性を有する円板形状の部材である。外装缶10の開口内には、蓋板14及びこの蓋板14を囲むリング形状の絶縁パッキン12が配置され、絶縁パッキン12は外装缶10の開口縁37をかしめ加工することにより外装缶10の開口縁37に固定されている。すなわち、蓋板14及び絶縁パッキン12は互いに協働して外装缶10の開口を気密に閉塞している。
【0016】
ここで、蓋板14は中央に中央貫通孔16を有し、蓋板14の外面上には中央貫通孔16を塞ぐゴム製の弁体18が配置されている。更に、蓋板14の外面上には、弁体18を覆うようにしてフランジ付き円筒形状をなす金属製の正極端子20が電気的に接続されている。この正極端子20は弁体18を蓋板14に向けて押圧している。なお、正極端子20には、図示しないガス抜き孔が開口されている。
【0017】
通常時、中央貫通孔16は弁体18によって気密に閉じられている。一方、外装缶10内にガスが発生し、その内圧が高まれば、弁体18は内圧によって圧縮され、中央貫通孔16を開き、その結果、外装缶10内から中央貫通孔16及び正極端子20のガス抜き孔(図示せず)を介して外部にガスが放出される。つまり、中央貫通孔16、弁体18及び正極端子20は電池のための安全弁を形成している。
【0018】
外装缶10には、電極群22が収容されている。この電極群22は、それぞれ帯状の正極24、負極26及びセパレータ28を含んでいる。詳しくは、これら正極24及び負極26は、セパレータ28を間に挟み込んだ状態で渦巻状に巻回されている。すなわち、セパレータ28を介して正極24及び負極26が互いに重ね合わされている。電極群22の最外周は負極26の一部(最外周部)により形成され、外装缶10の内周壁と接触している。すなわち、負極26と外装缶10とは互いに電気的に接続されている。
【0019】
外装缶10内には、電極群22の一端と蓋板14との間に正極リード30が配置されている。詳しくは、正極リード30は、その一端が正極24に接続され、その他端が蓋板14に接続されている。従って、正極端子20と正極24とは、正極リード30及び蓋板14を介して互いに電気的に接続されている。なお、蓋板14と電極群22との間には円形の上部絶縁部材32が配置され、正極リード30は上部絶縁部材32に設けられたスリット39内を通って延びている。また、電極群22と外装缶10の底部との間にも円形の下部絶縁部材34が配置されている。
【0020】
更に、外装缶10内には、所定量のアルカリ電解液(図示せず)が注入されている。アルカリ電解液は、電極群22に含浸されており、主にセパレータ28に保持されている。このアルカリ電解液は、正極24と負極26との間での充放電の際の電気化学反応(充放電反応)を進行させる。このアルカリ電解液としては、KOH、NaOH及びLiOHのうちの少なくとも一種を溶質として含む水溶液を用いることが好ましい。
【0021】
セパレータ28の材料としては、例えば、ポリアミド繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィン繊維製不織布に親水性官能基を付与したもの等を用いることができる。具体的には、スルホン化処理が施されてスルホン基が付与されたポリオレフィン繊維を主体とする不織布を用いることが好ましい。ここで、スルホン基は、硫酸又は発煙硫酸等の硫酸基を含む酸を用いて不織布を処理することにより付与される。このようなスルホン基を有する繊維を含むセパレータを用いた電池は、優れた自己放電特性を発揮する。
【0022】
正極24は、多孔質構造を有する導電性の正極芯材と、この正極芯材の空孔内に保持された正極合剤とを含んでいる。上記したような正極芯材としては、例えば、発泡ニッケルを用いることができる。
【0023】
正極合剤は、正極活物質、正極添加剤及び結着剤を含む。この結着剤は、正極活物質、及び正極添加剤を互いに結着させるとともに正極活物質、及び正極添加剤を正極芯材に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、例えば、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ディスパージョン、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)ディスパージョンなどを用いることができる。
【0024】
正極活物質としては、水酸化ニッケルが用いられる。この水酸化ニッケルの形態としては、粉末状のものが用いられる。つまり、水酸化ニッケル粒子の集合体である水酸化ニッケル粉末が用いられる。この水酸化ニッケル粒子は、高次化されている水酸化ニッケル粒子を採用することが好ましい。
【0025】
上記した水酸化ニッケル粒子は、Znを固溶しているものを用いる。この固溶成分としてのZnは、正極の膨化の抑制に寄与する。
【0026】
水酸化ニッケル粒子に固溶されるZnの含有量は、水酸化ニッケル100質量部に対して、3.5質量部以上、4.5質量部以下とすることが好ましい。
【0027】
上記した水酸化ニッケル粒子は、更にCoを固溶しているものを用いることが好ましい。この固溶成分としてのCoは、正極活物質粒子間の導電性の向上に寄与し、充電受け入れ性を改善する。ここで、水酸化ニッケル粒子中に固溶されているCoの含有量は、少ないと充電受け入れ性を改善する効果が小さく、逆に多すぎると水酸化ニッケル粒子の粒成長を阻害するようになる。このため、水酸化ニッケル粒子は、固溶成分としてのCoを0.5質量%以上、5.0質量%以下含んでいる態様のものを用いることが好ましい。
【0028】
また、上記した水酸化ニッケル粒子は、表面がコバルト化合物を含む表面層で覆われている態様とすることが好ましい。この表面層としては、3価以上に高次化されたコバルト化合物を含む高次コバルト化合物層を採用することが好ましい。
【0029】
上記した高次コバルト化合物層は、導電性に優れており、導電性ネットワークを形成する。この高次コバルト化合物層としては、3価以上に高次化されたオキシ水酸化コバルト(CoOOH)などのコバルト化合物を含む層を採用することが好ましい。
【0030】
正極活物質は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、所定組成となるように硫酸ニッケル及び硫酸亜鉛を計量し、これらの混合水溶液を調製する。この混合水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加して反応させることにより水酸化ニッケルを主体とし、亜鉛を固溶した水酸化ニッケル粒子を析出させる。ここで、更にコバルトを固溶させる場合は、所定組成となるよう硫酸ニッケル、硫酸亜鉛、及び硫酸コバルトを計量し、これらの混合水溶液を調製する。得られた混合水溶液を攪拌しながら、この混合水溶液に水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加して反応させることにより水酸化ニッケルを主体とし、亜鉛、及びコバルトを固溶した水酸化ニッケル粒子を析出させる。
【0031】
上記のようにして得られた水酸化ニッケル粒子の表面に導電層を形成する場合は、例えば、以下に示すような手順により導電層を形成する。
【0032】
まず、上記のようにして得られた亜鉛を固溶した水酸化ニッケル粒子、又は亜鉛及びコバルトを固溶した水酸化ニッケル粒子をアンモニア水溶液中に投入し、この水溶液中に硫酸コバルト水溶液を加える。これにより、水酸化ニッケル粒子を核として、この核の表面に水酸化コバルトが析出し、水酸化コバルトの層を備えた中間体粒子が形成される。得られた中間体粒子は、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液に投入される。ここで、水酸化コバルトの層を備えた中間体粒子の集合体である中間体粉末の質量をPとし、水酸化ナトリウム水溶液の質量をQとしたとき、これらの質量比がP:Q=1:10となるようにする。そして、この中間体粉末が加えられた水酸化ナトリウム水溶液を温度が80℃~100℃になるように保持した状態で5時間~10時間撹拌しながら加熱処理する。
【0033】
その後、上記した加熱処理を経た中間体粉末を水洗し、50℃~80℃で乾燥させることにより、水酸化ニッケル粒子の表面が高次コバルト酸化物で被覆されたニッケル正極活物質粒子の集合体である正極活物質粉末を得る。上記した加熱処理により、前記中間体粒子の表面の水酸化コバルトは、価数が3価を超える導電性の高い高次コバルト化合物(オキシ水酸化コバルト等)となる。
【0034】
次に、正極添加剤としては、酸化亜鉛が用いられる。この酸化亜鉛の形態としては、粉末状のものが用いられる。つまり、酸化亜鉛粒子の集合体である酸化亜鉛粉末が用いられる。この酸化亜鉛粉末の添加量は、正極活物質粉末100質量部に対して0.5質量部以上1.0質量部以下とすることが好ましい。
【0035】
また、正極添加剤には、必要に応じて酸化イットリウムや酸化ニオブを追加することが好ましい。
【0036】
次に、正極24は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、上記したようにして得られた正極活物質粒子の集合体である正極活物質粉末に、正極添加剤、水及び結着剤を添加して混練し、正極合剤スラリーを調製する。得られた正極合剤スラリーは、例えば、発泡ニッケルに充填され、乾燥処理が施される。乾燥処理後、水酸化ニッケル粒子等が充填された発泡ニッケルは、ロール圧延されてから裁断される。これにより、正極合剤を含む正極24が得られる。
【0037】
次に、負極26について説明する。
負極26は、帯状をなす導電性の負極芯体を有し、この負極芯体に負極合剤が保持されている。
【0038】
負極芯体は、貫通孔が分布されたシート状の金属材であり、例えば、パンチングメタルシートを用いることができる。負極合剤は、負極芯体の貫通孔内に充填されるばかりでなく、負極芯体の両面上にも層状にして保持されている。
【0039】
負極合剤は、負極活物質としての水素を吸蔵及び放出可能な水素吸蔵合金粒子、負極添加剤、結着剤、及び負極補助剤を含む。
【0040】
上記した結着剤は水素吸蔵合金粒子、負極添加剤等を互いに結着させると同時に水素吸蔵合金粒子、負極添加剤等を負極芯体に結着させる働きをする。ここで、結着剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、親水性若しくは疎水性のポリマー、カルボキシメチルセルロースなどの、ニッケル水素二次電池用として一般的に用いられている結着剤を用いることができる。
【0041】
また、負極補助剤としては、スチレンブタジエンゴム、ポリアクリル酸ナトリウム等を用いることができる。
【0042】
水素吸蔵合金粒子における水素吸蔵合金の種類としては、特に限定はされないが、希土類元素、Mg及びNiを含む希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金を用いるのが好ましい。より好ましくは、以下に示す一般式(I)で表される組成を有する水素吸蔵合金を用いる。
【0043】
Ln1-xMgNiy-zAl・・・(I)
ただし、一般式(I)中、Lnは、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Sc、Y、Ti及びZrから選ばれる少なくとも1種の元素を表し、添字x、y、zは、それぞれ、0.05≦x≦0.30、2.8≦y≦3.8、0.05≦z≦0.30で示される関係を満たしている。
【0044】
水素吸蔵合金の粒子は、例えば、以下のようにして得られる。
まず、所定の組成となるよう金属原材料を計量して混合し、この混合物を、例えば、高周波誘導溶解炉で溶解してインゴットにする。得られたインゴットに、900~1200℃の不活性ガス雰囲気下にて5~24時間加熱する熱処理を施す。この後、インゴットを不活性ガス雰囲気下で機械的に粉砕し、篩分けを行うことにより所望粒径の水素吸蔵合金の粒子を得る。
【0045】
ここで、水素吸蔵合金の粒子としては、その粒径は特に限定されるものではないが、好ましくは、平均粒径が55.0~70.0μmのものを用いる。なお、本明細書において、平均粒径とは、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径を意味し、粒子径分布測定装置を用いてレーザー回折・散乱法により求められる。
【0046】
負極添加剤は、フッ化イットリウムと導電材としてのカーボンブラックとの複合体である。詳しくは、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体である。
【0047】
フッ化イットリウムの形態としては、粉末状のものが用いられる。つまり、フッ化イットリウムの粒子の集合体であるフッ化イットリウム粉末が用いられる。フッ化イットリウムの粒子としては、その平均粒径が1μm~7μmのものを用いることが好ましい。
【0048】
カーボンブラックの形態としては、一次粒子の凝集体が集合した粉末状のものが用いられる。ここで、カーボンブラックの一次粒子の平均粒径は20~50nmであり、その凝集体の長さは、10μm~100μmである。
【0049】
また、カーボンブラックとしては、一次粒子が中空シェル状の構造を持つ中空カーボンブラックを用いることが好ましい。この中空カーボンブラックは、通常のカーボンブラックに比べ導電性に優れている。
【0050】
負極添加剤としてのフッ化イットリウムとカーボンブラックとの複合体は、例えば、以下のようにして製造することができる。
【0051】
フッ化イットリウムの粉末、カーボンブラックの粉末、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロース、及び水を混錬し、ペーストを調製する。得られたペースト内においては、カーボンブラックにフッ化イットリウムが担持された複合体が形成される。
【0052】
次に、負極26は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、上記のようにして得られた水素吸蔵合金粒子の集合体である水素吸蔵合金粉末を、カーボンブラックにフッ化イットリウムが担持された複合体が含まれているペーストに加え、混錬する。これにより、水素吸蔵合金の粒子の表面に上記した複合体が部分的に被覆される。その後、かかるペーストに更にスチレンブタジエンゴムの粉末、及び水を添加し、これらを混錬することにより、負極合剤ペーストを調製する。得られた負極合剤ペーストは負極芯体に塗着され、乾燥処理が施される。乾燥後、水素吸蔵合金粉末、負極添加剤等を保持した負極芯体は、全体的に圧延されて水素吸蔵合金の充填密度を高められ、これにより負極の中間製品が得られる。そして、この負極の中間製品は所定形状に裁断される。これにより負極26が製造される。
【0053】
以上のようにして製造された正極24及び負極26は、セパレータ28を介在させた状態で、渦巻き状に巻回され、これにより電極群22が形成される。
【0054】
このようにして得られた電極群22は、外装缶10内に収容される。引き続き、当該外装缶10内には所定量のアルカリ電解液が注入される。その後、電極群22及びアルカリ電解液を収容した外装缶10は、正極端子20を備えた封口体11により封口され、本発明に係る電池2が得られる。得られた電池2は、初期活性化処理が施され、使用可能状態とされる。
【0055】
[実施例]
1.電池の製造
(実施例1)
(1)正極の製造
水酸化ニッケル100質量部に対して、亜鉛が4.0質量部、コバルトが1.0質量部となるように、硫酸ニッケル、硫酸亜鉛及び硫酸コバルトを計量し、これらを、アンモニウムイオンを含む1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液に加え、混合水溶液を調製した。得られた混合水溶液を攪拌しながら、この混合水溶液に1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に添加して反応させ、ここでの反応中のpHを11に安定させて、水酸化ニッケルを主体とし、Zn及びCoを固溶したベース粒子を生成させた。
【0056】
得られたベース粒子を10倍の量の純水で3回洗浄した後、脱水及び乾燥処理を行った。なお、得られたベース粒子につき、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置を用いて粒径を測定した結果、斯かるベース粒子の質量基準による積算が50%にあたる平均粒径は8μmであった。
【0057】
次に、得られたベース粒子を硫酸コバルト水溶液中に投入し、この硫酸コバルト水溶液を撹拌しながら、1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液を徐々に滴下して反応させ、ここでの反応中のpHを11に維持しながら沈殿物を生成させた。ついで、生成した沈殿物を濾別して、純水で洗浄したのち、真空乾燥させた。これにより、ベース粒子の表面に5質量%の水酸化コバルトの層を備えた中間生成物粒子を得た。なお、水酸化コバルトの層の厚さは約0.1μmであった。
【0058】
ついで、この中間生成物粒子を、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液中に投入した。ここで、中間生成物粒子の集合体である粉末の質量をPとし、水酸化ナトリウム水溶液の質量をQとした場合、これらの質量比が、P:Q=1:10となるように設定した。そして、この中間生成物の粉末が加えられた水酸化ナトリウム水溶液を撹拌しながら温度が85℃で一定のまま8時間保持する加熱処理を施した。
【0059】
上記した加熱処理を経た中間生成物の粉末を純水で洗浄し、65℃の温風を当てて乾燥させた。これにより、Zn及びCoを固溶したベース粒子の表面に高次化されたコバルト酸化物を含む表面層を有した正極活物質粒子の集合体である正極活物質粉末を得た。
【0060】
次に、上記したようにして得られた正極活物質粉末100質量部に、酸化イットリウムの粉末0.5質量部、酸化ニオブの粉末0.3質量部、酸化亜鉛の粉末0.5質量部と、結着剤としてのヒドロキシプロピルセルロースの粉末を0.2質量%含む水50.0質量部とを添加して混練し、正極合剤のスラリーを調製した。
【0061】
ついで、この正極合剤のスラリーを正極芯材としてのシート状のニッケル発泡体に充填した。ここで、ニッケル発泡体としては、面密度(目付)が約350g/m、多孔度が95%、厚みが1.3mmであるものを用いた。
【0062】
正極合剤のスラリーが充填されたニッケル発泡体を乾燥後、正極合剤が充填されたニッケル発泡体を、以下の式(II)で計算される正極活物質の充填密度が3.0g/cmとなるように調整して圧延した後、所定の寸法に切断して、AAサイズ用の正極24を得た。
【0063】
正極活物質の充填密度[g/cm]=正極合剤質量[g]÷(電極高さ[cm]×電極長さ[cm]×電極厚み[cm]-ニッケル発泡体の質量[g]÷ニッケルの密度[g/cm])・・・(II)
【0064】
(2)負極の製造
La、Sm、Mg、Ni、Alの各金属材料を所定のモル比となるように混合した後、高周波誘導溶解炉に投入して溶解させ、これを冷却してインゴットを製造した。
【0065】
ついで、このインゴットに対し、温度1000℃のアルゴンガス雰囲気下にて10時間加熱する熱処理を施して均質化した後、アルゴンガス雰囲気下で機械的に粉砕して、希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金粉末を得た。得られた希土類-Mg-Ni系水素吸蔵合金粉末について、レーザー回折・散乱式粒径分布測定装置(装置名:Microtrac社製SRA-150)により粒径分布を測定した。その結果、質量基準による積算が50%にあたる平均粒径は65μmであった。
【0066】
この水素吸蔵合金粉末の組成を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP-AES)によって分析したところ、組成は、La0.27Sm0.63Mg0.10Ni3.33Al0.17であった。また、この水素吸蔵合金粉末についてX線回折測定(XRD測定)を行ったところ、結晶構造は、いわゆる超格子構造のA型(CeNi型)であった。
【0067】
次に、負極合剤を製造した。まず、第1段階の工程として、平均粒径が1μmのフッ化イットリウムの粒子の集合体であるフッ化イットリウム粉末を0.1質量部、中空シェル状の構造を持つ中空カーボンブラック(具体的にはライオンスペシャリティケミカルズ社製のケッチェンブラック(登録商標)を用いた。この中空カーボンブラックの物性値としては、BET法による比表面積が1270m/g、空隙率が80%、一次粒子の平均粒径が34.0nm、凝集体の長さが10μmである。)の粉末を0.50質量部、ポリアクリル酸ナトリウムの粉末を0.30質量部、カルボキシメチルセルロースの粉末を0.05質量部及び水を20質量部準備し、これらを25℃の環境下において混練した。このようにして第1のペーストを調製した。得られた第1のペースト内においては、カーボンブラックにフッ化イットリウムが担持された負極添加剤の複合体が形成されている。
【0068】
次に、第2段階の工程として、第1のペーストに、上記のようにして得られた水素吸蔵合金の粉末100質量部を加えて混錬した。この作業により、水素吸蔵合金粒子の表面の一部がカーボンブラックにフッ化イットリウムが担持された複合体により被覆された。
【0069】
更に、この第1のペーストにスチレンブタジエンゴムの粉末0.5質量部、水15質量部を添加し、25℃の環境下で混錬し、負極合剤ペーストを調製した。
【0070】
この負極合剤ペーストを負極芯体としてのパンチングメタルシートの両面に均等、且つ、厚さが一定となるように塗布した。また、貫通孔内にも負極合剤ペーストは充填されている。なお、このパンチングメタルシートは、厚さ方向に穿設された貫通孔が多数分布した鉄製の帯状体であり、厚さが50μmであり、その表面にはニッケルめっきが施されている。
【0071】
負極合剤ペーストの乾燥後、水素吸蔵合金等を保持したパンチングメタルシートを、以下の式(III)で計算される水素吸蔵合金の充填密度が6.4g/cmとなるように調整して圧延し、負極の中間製品を得た。
【0072】
水素吸蔵合金の充填密度[g/cm]=水素吸蔵合金質量[g]÷(電極高さ[cm]×電極長さ[cm]×電極厚み[cm]-パンチングメタルシートの質量[g]÷鉄の密度[g/cm])・・・(III)
【0073】
その後、当該負極の中間製品を所定の寸法に切断してAAサイズ用の負極26を得た。また、負極の中間製品よりサンプルを別途採取し、得られたサンプルについて走査型電子顕微鏡により観察を行った。その結果、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0074】
(3)ニッケル水素二次電池の組み立て
上記のようにして得られた正極24及び負極26をこれらの間にセパレータ28を挟んだ状態で渦巻状に巻回し、電極群22を製造した。ここでの電極群22の製造に使用したセパレータ28はスルホン化処理が施されたポリプロピレン繊維製不織布であり、その厚みは0.1mm(目付量40g/m)であった。
【0075】
一方、KOH、NaOH及びLiOHを溶質として含む水溶液であるアルカリ電解液を準備した。このアルカリ電解液は、KOH、NaOH及びLiOHの質量混合比が、KOH:NaOH:LiOH=4:5:1であり、比重が1.31である。
【0076】
ついで、有底円筒形状の外装缶10内に上記した電極群22を収容するとともに、準備したアルカリ電解液を2.0g注入した。その後、封口体11で外装缶10の開口を塞ぎ、公称容量2000mAhのAAサイズの電池2を組み立てた。
【0077】
(4)初期活性化処理
得られた電池2に対し、温度25℃の環境下にて、1.0Itの充電電流で16時間の充電を行った後、1.0Itの放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電させる充放電作業を1サイクルとする充放電サイクルを3回繰り返した。このようにして初期活性化処理を行い、電池2を使用可能状態とした。
【0078】
(実施例2)
フッ化イットリウム粉末を0.2質量部添加して負極添加剤の複合体を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例2に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0079】
(実施例3)
亜鉛の固溶量が3.5質量部となるようにして正極活物質粉末を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例3に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0080】
(実施例4)
亜鉛の固溶量が4.5質量部となるようにして正極活物質粉末を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例4に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0081】
(実施例5)
酸化亜鉛の添加量を0.75質量部として正極合剤を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例5に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0082】
(実施例6)
酸化亜鉛の添加量を1.0質量部として正極活物質粉末を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例6に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0083】
(実施例7)
フッ化イットリウム粉末を0.3質量部添加して負極添加剤の複合体を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例7に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0084】
(実施例8)
フッ化イットリウム粉末を0.05質量部添加して負極添加剤の複合体を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例8に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0085】
(実施例9)
亜鉛の固溶量が3.0質量部となるようにして正極活物質粉末を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例9に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0086】
(実施例10)
亜鉛の固溶量が5.0質量部となるようにして正極活物質粉末を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例10に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0087】
(実施例11)
酸化亜鉛の添加量を0.25質量部として正極合剤を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例11に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0088】
(実施例12)
亜鉛の固溶量が3.0質量部となるようにして正極活物質粉末を製造したこと、及び酸化亜鉛の添加量を1.25質量部として正極合剤を製造したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、実施例12に係る負極においても、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0089】
(比較例1)
負極添加剤の複合体の製造に際しフッ化イットリウム粉末を添加しなかったこと、正極活物質粉末の製造に際し亜鉛を固溶させなかったこと、及び正極合剤の製造に際し酸化亜鉛を添加しなかったことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、比較例1に係る負極においては、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面は被覆されていないことを確認した。
【0090】
(比較例2)
負極添加剤の複合体の製造に際しフッ化イットリウム粉末を添加しなかったことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、比較例2に係る負極においては、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面は被覆されていないことを確認した。
【0091】
(比較例3)
正極活物質粉末の製造に際し亜鉛を固溶させなかったこと、及び正極合剤の製造に際し酸化亜鉛を添加しなかったことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。なお、比較例3に係る負極においては、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が部分的に被覆されていることを確認した。
【0092】
(比較例4)
負極合剤を製造する際に、第1段階の工程及び第2段階の工程を分けることは行わず、負極合剤の構成材料を全て混合して負極合剤ペーストを調製したことを除き、実施例1と同様にしてニッケル水素二次電池を製造した。つまり、比較例4では、カーボンブラックにフッ化イットリウムが担持された負極添加剤の複合体を形成していない。なお、比較例4に係る負極においては、フッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面は被覆されていないことを確認した。
【0093】
2.ニッケル水素二次電池の評価
(1)サイクル試験初期の漏液検査
初期活性化処理済みの実施例1~12、比較例1~4の電池に対し、25℃の環境下にて、1.0Itの充電電流で電池電圧が最大値に達した後、10mV低下するまで充電を行う、いわゆる―ΔV制御による充電を行った。充電が終了した後、各電池を25℃の環境下に30分間放置した。次いで、30分間放置した後の電池に対し、25℃の環境下にて、1.0Itの放電電流で電池電圧が1.0Vになるまで放電した後、30分間放置した。この充放電のサイクルを1サイクルとし、このサイクルを20回繰り返すサイクル試験を実施した。このサイクル試験の後、各電池について漏液の有無を確認し、漏液が発生していた電池の本数を数えた。その結果をサイクル試験初期漏液本数として表1に示した。なお、実施例1~12、比較例1~4の電池は、それぞれ100本準備し、100本のうちで漏液が発生した電池の本数を数えた。この漏液した本数が少ないほど漏液抑制効果に優れ、ひいてはサイクル寿命特性に優れていることを示す。
【0094】
【表1】
【0095】
(2)考察
(i)正極において、正極活物質に亜鉛が固溶されており、正極添加剤としての酸化亜鉛が含まれており、負極においてフッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体からなる負極添加剤が水素吸蔵合金の粒子の表面を部分的に被覆している態様の実施例1~12のニッケル水素二次電池は、正極において、正極活物質に亜鉛が固溶されていない、正極添加剤としての酸化亜鉛が含まれていない、又は負極において上記した複合体により水素吸蔵合金の粒子の表面が被覆されていない態様の比較例1~4のニッケル水素二次電池に比べ、漏液した電池の本数が少ない。このことから、正極において、正極活物質に亜鉛が固溶されており、正極添加剤としての酸化亜鉛が含まれており、負極においてフッ化イットリウムがカーボンブラックに担持された複合体からなる負極添加剤が水素吸蔵合金の粒子の表面を部分的に被覆していることにより、電池の内圧が上昇することを抑制し、充放電のサイクルの初期段階での漏液を防止することができるといえる。
【0096】
(ii)実施例1と比較例4とを比べると、実施例1の漏液本数が比較例4の漏液本数より少なく、実施例1が漏液抑制効果に優れていることがわかる。実施例1と比較例4とでは、正極活物質の組成、正極添加剤の構成材料の組成及び負極添加剤の構成材料の組成が同じであるが、実施例1は、負極添加剤がフッ化イットリウム及びカーボンブラックの複合体の形態をとり、水素吸蔵合金の粒子の表面を部分的に被覆しているのに対し、比較例4は、負極添加剤がフッ化イットリウム及びカーボンブラックの複合体の形態をとらず、水素吸蔵合金の粒子の表面が複合体により被覆されていない。このことから、負極添加剤がフッ化イットリウム及びカーボンブラックの複合体の形態をとり、この複合体が水素吸蔵合金の粒子の表面を部分的に被覆していることが、電池の内圧の上昇を抑制し、電池の漏液抑制に特に有効であるといえる。
【0097】
(iii)フッ化イットリウムの添加量を変化させた実施例1、2、7、8の結果から、実施例1、2の漏液抑制効果がより優れていることがわかるので、フッ化イットリウムの添加量は、水素吸蔵合金100質量部に対して0.1質量部以上0.2質量部以下とすることが好ましいといえる。
【0098】
(iv)亜鉛固溶量を変化させた実施例1、3、4、9、10の結果から、実施例1、3、4の漏液抑制効果がより優れていることがわかるので、亜鉛固溶量は、水酸化ニッケル100質量部に対して3.5質量部以上4.5質量部以下とすることが好ましいといえる。
【0099】
(v)酸化亜鉛の添加量を変化させた実施例1、5、6、11、12の結果から、実施例1、5、6の漏液抑制効果がより優れていることがわかるので、酸化亜鉛の添加量は、正極活物質100質量部に対して0.5質量部以上1.0質量部以下とすることが好ましいといえる。
【符号の説明】
【0100】
2 ニッケル水素二次電池
22 電極群
24 正極
26 負極
28 セパレータ
図1