(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182861
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】潤滑油系統のフラッシング方法、フラッシング装置及びフラッシングシステム
(51)【国際特許分類】
F01D 25/18 20060101AFI20221201BHJP
F01D 25/20 20060101ALI20221201BHJP
F01D 25/16 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
F01D25/18 D
F01D25/18 A
F01D25/20 A
F01D25/16 E
F01D25/16 K
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090616
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】土屋 陽平
(72)【発明者】
【氏名】羽石 俊
(57)【要約】
【課題】軸受箱内の異物を速やかに回収することができるとともに、最終オイルフラッシング工程を短縮する。
【解決手段】潤滑油系統のフラッシング方法は、軸受箱内に設けられ油供給配管から供給される油をタービンのロータと軸受との間に導く内部配管を迂回して、油供給配管と軸受箱に取り付けられるフラッシング装置とをバイパス配管により接続し、油供給配管からバイパス配管を通じてフラッシング装置に油を供給し、フラッシング装置から軸受箱内に油を噴射させることにより、軸受箱内のオイルフラッシングを行う軸受箱内先行オイルフラッシング工程と、軸受箱内先行オイルフラッシング工程の後に、油供給配管から内部配管に油を供給することにより、潤滑油系統内のオイルフラッシングを行う最終オイルフラッシング工程と、を含む。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電プラントにおけるタービンの潤滑油系統のフラッシング方法であって、
前記潤滑油系統は、油が貯えられている油タンクと、前記油タンク内の油を吸い込んで吐出する油ポンプと、前記タービンの軸受を収容する軸受箱と、前記油タンクと前記軸受箱に接続され前記油ポンプから吐出された油を前記軸受箱に供給する油供給配管と、前記軸受箱内に設けられ前記油供給配管から供給される油を前記タービンのロータと前記軸受との間に導く内部配管と、前記軸受箱と前記油タンクに接続され前記軸受箱から排出された油を前記油タンクに導く油排出配管と、前記油供給配管に設けられるストレーナと、を有し、
前記内部配管を迂回して、前記油供給配管と前記軸受箱に取り付けられるフラッシング装置とをバイパス配管により接続し、前記油供給配管から前記バイパス配管を通じて前記フラッシング装置に油を供給し、前記フラッシング装置から前記軸受箱内に油を噴射させることにより、前記軸受箱内のオイルフラッシングを行う軸受箱内先行オイルフラッシング工程と、
前記軸受箱内先行オイルフラッシング工程の後に、前記油供給配管から前記内部配管に油を供給することにより、前記潤滑油系統内のオイルフラッシングを行う最終オイルフラッシング工程と、を含む、
潤滑油系統のフラッシング方法。
【請求項2】
請求項1に記載の潤滑油系統のフラッシング方法において、
前記軸受箱内先行オイルフラッシング工程に先立って、前記軸受箱を迂回して前記油供給配管と前記油排出配管とを前記バイパス配管により接続し、前記油ポンプから吐出された油を前記油供給配管、前記バイパス配管及び前記油排出配管を通じて前記油タンクに戻すことにより、前記潤滑油系統内のオイルフラッシングを行う系統内先行オイルフラッシング工程をさらに含む、
潤滑油系統のフラッシング方法。
【請求項3】
請求項1に記載の潤滑油系統のフラッシング方法において、
前記軸受箱は、前記軸受を下側から支持する軸受台と、前記軸受台に設けられ前記軸受を覆うカバーと有し、
前記軸受箱内先行オイルフラッシング工程は、
前記フラッシング装置を前記カバーに取り付ける装置取付工程と、
前記カバーを前記軸受台に取り付けるカバー取付工程と、
前記フラッシング装置に前記バイパス配管を接続する配管接続工程と、
前記油供給配管から前記バイパス配管を通じて前記フラッシング装置に油を供給し、前記フラッシング装置の噴射ノズルから前記軸受箱の内壁面に向けて油を噴射させる噴射工程と、を含む、
潤滑油系統のフラッシング方法。
【請求項4】
請求項3に記載の潤滑油系統のフラッシング方法において、
前記フラッシング装置は、油が前記噴射ノズルから前記カバーの内壁面に向かって噴射されるように、前記カバーに取り付けられる
潤滑油系統のフラッシング方法。
【請求項5】
請求項3に記載の潤滑油系統のフラッシング方法において、
前記フラッシング装置は、油が前記噴射ノズルから前記軸受に向かって噴射されるように、前記カバーに取り付けられる
潤滑油系統のフラッシング方法。
【請求項6】
発電プラントにおけるタービンの軸受を下側から支持する軸受台及び前記軸受台に設けられ前記軸受を覆うカバーを有する軸受箱のフラッシング方法の実施に使用するフラッシング装置であって、
前記カバーに取り付けられる取付部と、
油が供給される油入口部と、
前記油入口部に供給された油を前記軸受箱内に噴射する噴射ノズルと、を備え、
前記噴射ノズルから前記軸受箱内に油を噴射することにより、前記軸受箱内のオイルフラッシングを行う
フラッシング装置。
【請求項7】
請求項6に記載のフラッシング装置において、
前記噴射ノズルから噴射された油が、前記軸受台の内側面に沿って流れ落ちるように、前記カバーに取り付けられる
フラッシング装置。
【請求項8】
請求項6に記載のフラッシング装置において、
油が前記噴射ノズルから前記カバーの内壁面に向かって噴射されるように、前記カバーに取り付けられる
フラッシング装置。
【請求項9】
請求項6に記載のフラッシング装置において、
油が前記噴射ノズルから前記軸受に向かって噴射されるように、前記カバーに取り付けられる
フラッシング装置。
【請求項10】
請求項6に記載のフラッシング装置において、
直線状の筒部を有し、
前記筒部の基端側に前記油入口部が設けられ、
前記筒部の先端側に前記噴射ノズルが設けられ、
前記取付部は、前記筒部から外側に張り出すように設けられる
フラッシング装置。
【請求項11】
請求項6に記載のフラッシング装置において、
先端部に前記噴射ノズルが設けられた可撓性を有する可撓性配管と、
前記可撓性配管が取り付けられる配管取付部と、をさらに備える
フラッシング装置。
【請求項12】
請求項6に記載のフラッシング装置と、
油が貯えられている油タンクと、
前記油タンク内の油を吸い込んで吐出する油ポンプと、
前記タービンの軸受を収容する前記軸受箱と、
前記油タンクと前記軸受箱に接続され前記油ポンプから吐出された油を前記軸受箱に供給する油供給配管と、
前記軸受箱と前記油タンクに接続され前記軸受箱から排出された油を前記油タンクに導く油排出配管と、
前記軸受箱から前記油タンクに戻る油内の異物を捕捉する異物捕捉部材と、
前記油供給配管から供給される油を前記タービンのロータと前記軸受との間に導く前記軸受箱内の内部配管を迂回して、前記油供給配管と前記フラッシング装置に接続されるバイパス配管と、を備える、
フラッシングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電プラントにおけるタービンの潤滑油系統のフラッシング方法、並びに、そのフラッシング方法の実施に使用するフラッシング装置及びフラッシングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
発電プラントでは定期的に検査が行われる。この定期検査が行われている間、発電プラントの運転は休止される。このため、定期検査に要する日数の短縮が要望されている。定期検査では、タービンの分解点検が行われる。分解点検の終了後には、タービンの軸受の潤滑油系統において油を循環させることにより、潤滑油系統内の異物を回収するオイルフラッシングが行われる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、油タンクから油をタービンの軸受に流して油タンクに戻す潤滑油系統のフラッシング方法が開示されている。特許文献1に記載のフラッシング方法では、潤滑油系統とは別に、油タンク内の油を油清浄フィルタを通して油タンクに戻す油タンクフラッシング系統が設けられ、タービンの分解点検中に、油タンクフラッシング系統による油タンクの先行オイルフラッシングが行われる。タービンの分解点検を終了してタービンを組み立てた後には、先行オイルフラッシングによって清浄化された油タンク内の油をタービンの軸受の潤滑油系統に流し、油を油清浄フィルタに通すことにより、タービンの軸受の潤滑油系統の最終オイルフラッシングが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のフラッシング方法では、潤滑油系統の最終オイルフラッシングに先立って、タービンの分解点検中に油タンクの先行オイルフラッシングが行われる。しかしながら、タービンの分解点検ではタービンの軸受を収容する軸受箱が開放されるので、軸受箱内に埃、砂塵等の異物が混入するおそれがある。このため、タービンの組み立て後に実施される潤滑油系統の最終オイルフラッシングにおいて、タービンの分解点検中に軸受箱内に混入した異物を短期間で十分に取り除くことが難しい。
【0006】
本発明は、軸受箱内の異物を速やかに回収し、最終オイルフラッシング工程を短縮することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様による潤滑油系統のフラッシング方法は、発電プラントにおけるタービンの潤滑油系統のフラッシング方法であって、前記潤滑油系統は、油が貯えられている油タンクと、前記油タンク内の油を吸い込んで吐出する油ポンプと、前記タービンの軸受を収容する軸受箱と、前記油タンクと前記軸受箱に接続され前記油ポンプから吐出された油を前記軸受箱に供給する油供給配管と、前記軸受箱内に設けられ前記油供給配管から供給される油を前記タービンのロータと前記軸受との間に導く内部配管と、前記軸受箱と前記油タンクに接続され前記軸受箱から排出された油を前記油タンクに導く油排出配管と、前記油供給配管に設けられるストレーナと、を有し、前記内部配管を迂回して、前記油供給配管と前記軸受箱に取り付けられるフラッシング装置とをバイパス配管により接続し、前記油供給配管から前記バイパス配管を通じて前記フラッシング装置に油を供給し、前記フラッシング装置から前記軸受箱内に油を噴射させることにより、前記軸受箱内のオイルフラッシングを行う軸受箱内先行オイルフラッシング工程と、前記軸受箱内先行オイルフラッシング工程の後に、前記油供給配管から前記内部配管に油を供給することにより、前記潤滑油系統内のオイルフラッシングを行う最終オイルフラッシング工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、軸受箱内の異物を速やかに回収することができるとともに、最終オイルフラッシング工程を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、発電プラントにおけるタービンの潤滑油系統の一例について示す系統図である。
【
図2】
図2は、先行オイルフラッシングの手法1について説明する図である。
【
図3A】
図3Aは、先行オイルフラッシングの手法2-1について説明する図である。
【
図3B】
図3Bは、先行オイルフラッシングの手法2-2について説明する図である。
【
図4】
図4は、軸受箱の開放中に軸受台に侵入する異物について説明する図である。
【
図5】
図5は、最終オイルフラッシング工程において、軸受箱内を流れる油の流れについて示す図である。
【
図6】
図6は、本実施形態に係るフラッシングシステムの構成について示す図である。
【
図7】
図7は、軸受箱の側面断面模式図であり、本実施形態に係るフラッシング装置の構成について示す。
【
図8】
図8は、本実施形態に係る潤滑油系統のフラッシング方法の実施手順(下図)と本実施形態の比較例に係る潤滑油系統のフラッシング方法の実施手順(上図)を説明する図である。
【
図9】
図9は、軸受箱内先行オイルフラッシング工程の実施手順の一例について示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、軸受箱の側面断面模式図であり、本実施形態の変形例1に係るフラッシング装置について示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図面を参照して、本発明の実施形態に係るフラッシングシステムについて説明する。本実施形態では、蒸気タービン設備のタービンを支持する軸受の潤滑油系統のフラッシングシステムを一例に説明する。
【0011】
図1は、発電プラントにおけるタービンの潤滑油系統1の一例について示す系統図である。タービンの潤滑油系統1は、油が貯えられている油タンク101と、油タンク101内の油を吸い込んで吐出する油ポンプ106と、タービン2のロータ4を回転可能に支持する軸受3を収容する軸受箱140と、油タンク101と軸受箱140に接続され油ポンプ106から吐出された油を軸受箱140に供給する油供給配管102と、軸受箱140内に設けられ油供給配管102から供給される油をタービン2のロータ4と軸受3との間に導く内部配管102iと、軸受箱140と油タンク101に接続され軸受箱140から排出された油を油タンク101に導く油排出配管105と、油供給配管102に設けられるストレーナ103と、を有する。
【0012】
油供給配管102は、軸受箱140内の内部配管102iに接続される(
図5参照)。内部配管102iは、油供給配管102から供給される油を軸受3及び軸受保持部材5に形成される内部通路を通じてタービン2のロータ4と軸受3との間に導く(
図5参照)。これにより、軸受3が潤滑される。このように、油タンク101内の油は、タービン2の軸受3の潤滑油として用いられる。軸受3に導かれた油は、軸受箱140で集められ、油排出配管105を通じて油タンク101内に戻る。
【0013】
なお、
図1では、タービン2を一つだけ図示しているが、蒸気タービン設備は、蒸気タービンとして、圧力レベルの異なる蒸気で駆動される高圧タービン及び低圧タービン等の複数のタービンを備えていてもよい。
【0014】
このように、潤滑油系統1は、油タンク101内の油を油ポンプ106の動力で油供給配管102を通じて軸受箱140内の軸受3に供給し、軸受箱140から排出される油を油排出配管105を通じて油タンク101に戻す循環系統を構成する。
【0015】
潤滑油系統1における油ポンプ106とタービン2の軸受3との間にはストレーナ103が設けられる。ストレーナ103内には、パンチングプレート等により形成された常設用の異物捕捉部材131が設けられている。ストレーナ103は、発電プラントの運転中、潤滑油系統1内の油に含まれる異物を捕捉する。潤滑油系統1内に含まれる異物とは、例えば、油タンク101内の滞留物、潤滑油系統1内で発生したスラッジと呼ばれる酸化生成物、摩耗粉、工事期間中及び点検期間中に開放状態となる軸受箱140内に侵入した埃、砂塵などである。
【0016】
発電プラントの定期点検において、タービン2の分解点検が完了すると、運転に入る前に潤滑油系統1のオイルフラッシングが行われる。分解点検後の潤滑油系統1のオイルフラッシングでは、ストレーナ103内に、常設用の異物捕捉部材131に代えて、あるいは常設用の異物捕捉部材131に加え、さらに目の細かい(メッシュ数が大きい)網等の仮設用の異物捕捉部材(不図示)を取り付け、油ポンプ106を駆動して油を潤滑油系統1内で循環させる。これにより、ストレーナ103において異物が回収され、潤滑油系統1内の油が清浄化される。
【0017】
上記オイルフラッシングは、タービン2の組立作業が完了し、潤滑油系統1が復旧された後に開始されるため、次のステップである試運転までの間の工程上のクリティカルパスとなることがある。このため、上記オイルフラッシングに先立って、タービン2の組立作業が完了する前(例えば、タービン2の分解点検中)に、潤滑油系統1の一部についてオイルフラッシングを実施することにより、タービン2の組立作業後のオイルフラッシングに要する時間の短縮を図ることが好ましい。以下、タービン2の組立作業が完了する前に実施されるオイルフラッシングを「先行オイルフラッシング」と記し、タービン2の組立作業が完了した後に実施される最終的なオイルフラッシングを「最終オイルフラッシング」と記す。
【0018】
先行オイルフラッシングには、例えば、以下の手法1及び手法2を採用することができる。
【0019】
<手法1>タンク内先行オイルフラッシング
図2を参照して、先行オイルフラッシングの手法1について説明する。
図2に示すように、手法1は、タービン2の分解点検中、フラッシング能力の高い浄油機190を油タンク101に仮接続し、先行して油タンク101内の異物を除去する手法である。手法1は、油タンク101内と浄油機190との間で油が循環する手法であるため、タービン2の分解点検中に実施することができる。
【0020】
<手法2>系統内先行オイルフラッシング
図3A及び
図3Bを参照して、先行オイルフラッシングの手法2について説明する。
図3A及び
図3Bに示すように、手法2は、タービン2の分解点検中に軸受箱140を迂回して油供給配管102と油排出配管105とを可撓性を有する仮設のバイパス配管121で接続し、軸受箱140の内部及びそのまわりを除いた潤滑油系統1内の異物を除去する手法である。手法2は、油供給配管102から軸受箱140を迂回して油排出配管105に油が流れる手法であるため、タービン2の分解点検中に実施することができる。この手法2には、例えば、以下の手法2-1(
図3A参照)、及び、手法2-2(
図3B参照)がある。
【0021】
<手法2-1>
手法2-1では、
図3Aに示すように、発電プラントの運転中にストレーナ103の油出口となる開口部に閉止板132が取り付けられる。これにより、ストレーナ103と軸受箱140内の内部配管102iとを接続する油供給配管102である給油配管102aに油が供給されなくなる。ストレーナ103は、バイパス配管121が接続される接続部を有している。バイパス配管121は、ストレーナ103の接続部と、油排出配管105に取り付けられる。油ポンプ106から吐出された油は、油供給配管102及びストレーナ103を通じてバイパス配管121に導かれる。バイパス配管121に導かれた油は、油排出配管105を通じて油タンク101に戻る。油は、油タンク101→油供給配管102→ストレーナ103→バイパス配管121→油排出配管105→油タンク101の経路で循環する。これにより、ストレーナ103によって異物を捕捉し、回収することができる。この手法2-1では、最終オイルフラッシングと同様、常設のストレーナ103により異物が回収される。
【0022】
<手法2-2>
手法2-2は、手法2-1と同様の手法であるが、バイパス配管121に仮設のストレーナ122が設けられている点が異なる。仮設のストレーナ122は、常設のストレーナ103と同様、異物を捕捉する異物捕捉部材を備えている。手法2-2では、仮設のストレーナ122をバイパス配管121に追設することにより、フラッシング能力が増強される。このため、手法2-2では、手法2-1よりも先行オイルフラッシングに要する時間を短縮することができる。
【0023】
このように、潤滑油系統1の一部に対して先行オイルフラッシングを実施することにより、最終オイルフラッシングの時間を短縮することができる。
【0024】
しかしながら、手法1及び手法2による先行オイルフラッシングでは、軸受箱140内の異物を除去することはできない。軸受箱140は、
図4に示すように、タービン2の分解点検の際に開放される。このため、タービン2の分解点検中に、埃、砂塵等の異物109が軸受箱140内に侵入するおそれがある。これらの異物109は、手法1及び手法2による先行オイルフラッシングでは回収することができない。
【0025】
手法1及び手法2による先行オイルフラッシングは、その対象が未開放部分であり、開放部分である軸受箱140が対象に含まれていない。このため、最終オイルフラッシングにおいて、軸受箱140内の異物109を十分に回収するためには、多くの時間を要する。
【0026】
また、最終オイルフラッシングにおいて、常設設備を用いる場合、
図5に示すように、軸受箱140内において、内部配管102iから軸受3とロータ4の間に供給された油(矢印F1参照)は、重力にしたがって軸受3の真下に流れ落ち(矢印F2参照)、軸受箱140の底板142に設けられた油出口箱143から油排出配管105に導かれる。また、この油の流れは勢いが弱い。したがって、最終オイルフラッシングでは、軸受箱140の側板141の内面(以下、内側面とも記す)141iに付着した異物、及び、底板142の上面(以下、底面とも記す)142iの隅部等に溜まった異物を取り除くことが難しい。その結果、最終オイルフラッシングにおいて、軸受箱140内の異物を十分に取り除くためには多くの時間を要することになるため、この点に改善の余地がある。
【0027】
そこで、本実施形態では、軸受箱140内の異物を短時間で取り除くために、以下で説明するフラッシング装置150を備えたフラッシングシステム10を採用する。
【0028】
図6及び
図7を参照して、本実施形態に係るフラッシング装置150を備えたフラッシングシステム10について、詳しく説明する。
図6は、本実施形態に係るフラッシングシステム10の構成について示す図である。
図6に示すように、フラッシングシステム10は、油が貯えられている油タンク101と、油タンク101内の油を吸い込んで吐出する油ポンプ106と、タービン2の軸受3を収容する軸受箱140と、油タンク101と軸受箱140に接続され油ポンプ106から吐出された油を軸受箱140に供給する油供給配管102と、軸受箱140と油タンク101に接続され軸受箱140から排出された油を油タンク101に導く油排出配管105と、油供給配管102に設けられるストレーナ103と、軸受箱140に取り付けられるフラッシング装置150と、油供給配管102から供給される油をタービン2のロータ4と軸受3との間に導く軸受箱140内の内部配管102iを迂回して、油供給配管102に設けられるストレーナ103とフラッシング装置150に接続されるバイパス配管121と、を備える。
【0029】
図7を参照して、軸受箱140及びフラッシング装置150について説明する。
図7は、軸受箱140の側面断面模式図であり、本実施形態に係るフラッシング装置150の構成について示す。なお、本実施形態では、1つ軸受箱140に2つのフラッシング装置150が設けられる例について説明するが、1つの軸受箱140にフラッシング装置150を1つだけ設けてもよいし、3つ以上設けてもよい。
【0030】
図7に示すように、軸受箱140は、発電プラントにおけるタービン2の軸受3を下側から支持する軸受台140bと、軸受台140bの上側に設けられ軸受3を覆う軸受カバー140aとを有する。軸受台140bは、例えば、上部が開放された矩形箱状であり、底板142と、底板142の端部から立ち上がる複数の側板141とを有する。また、軸受台140bには、軸受3を支持する支持板144が複数配置されている。
【0031】
軸受カバー140aは、例えば、半円筒状であり、下端部にフランジ部(不図示)が設けられる。軸受カバー140aのフランジ部がボルト等の締結部材(不図示)によって軸受台140bの上端部に締結されることにより、軸受カバー140aが軸受台140bに固定される。
【0032】
軸受3は、上部軸受3aと下部軸受3bとに分割された分割構造となっている。軸受3は、軸受保持部材5によって保持され、軸受保持部材5を介して軸受台140bによって支持される。軸受保持部材5は、軸受3と同様、上部保持部5aと下部保持部5bとに分割された分割構造となっている。上部保持部5aは、ボルト等の締結部材(不図示)により軸受台140bに固定される。
【0033】
フラッシング装置150は、直線状に延在する円筒状の筒部155と、筒部155の基端側に設けられる油入口部157と、筒部155の先端側に設けられる噴射ノズル152と、筒部155から外側に張り出すように設けられる円環状の取付部154と、を有する。筒部155は、軸受カバー140aの開口部149に挿通可能な大きさに形成される。
【0034】
取付部154は、軸受カバー140aに取り付けられる部分であり、ボルト等の締結部材156によって軸受カバー140aに設けられた開口部149の周縁部に締結される。本実施形態では、予備の配管接続用の管台(座)145に取付部154が取り付けられる。取付部154が開口部149の周縁部に取り付けられることにより、噴射ノズル152が軸受カバー140aの開口部149の中心軸上に配置される。油入口部157は、油が供給される部分であり、可撓性を有する接続用ホース151が装着される。接続用ホース151は、分岐管(不図示)を介してバイパス配管121に接続される(
図6参照)。これにより、バイパス配管121に供給される油を各フラッシング装置150に分配することができる。
【0035】
噴射ノズル152は、油入口部157に供給された油を軸受箱140内に噴射する噴射孔153を複数有している。複数の噴射孔153には、噴射ノズル152の外表面の開口面が、軸受3に向くように形成された噴射孔が含まれる。また、複数の噴射孔153には、噴射ノズル152の外表面の開口面が、軸受カバー140aの内壁面に向くように形成された噴射孔が含まれる。換言すれば、複数の噴射孔153には、その中心軸の延長上に軸受3が位置する噴射孔、及び、その中心軸の延長上に軸受カバー140aが位置する噴射孔が含まれる。噴射ノズル152は、ロータ4の中心軸よりも上側に配置される。本実施形態において、噴射ノズル152は、軸受3よりも上側に配置される。後述するように、フラッシング装置150は、噴射ノズル152の噴射孔153から軸受箱140内に油を噴射することにより、軸受箱140内のオイルフラッシングを行う。
【0036】
次に、
図7~
図9を参照して、本実施形態に係る潤滑油系統のフラッシング方法の一例について説明する。上述したフラッシング装置150を含むフラッシングシステム10は、以下で説明するフラッシング方法の実施に使用される。
図8は、本実施形態に係る潤滑油系統のフラッシング方法の実施手順(下図)と、本実施形態の比較例に係る潤滑油系統のフラッシング方法の実施手順(上図)を説明する図である。なお、
図8では、定期検査の工程の概略についても合わせて図示している。定期検査は、解列工程、ターニング停止工程、分解工程、手入れ・検査工程、組立工程、最終オイルフラッシング工程、給電工程の順に行われる。
【0037】
図8の下図に示すように、本実施形態に係る潤滑油系統のフラッシング方法では、タンク内先行オイルフラッシング工程(工程1)、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)、最終オイルフラッシング工程(工程4)が、この順番で行われる。なお、
図8の上図に示すように、本実施形態の比較例に係る潤滑油系統のフラッシング方法では、本実施形態に係る潤滑油系統のフラッシング方法のうち、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)が省略されている。工程1~4は、一人以上の作業者により実施される。
【0038】
-タンク内先行オイルフラッシング工程-
タンク内先行オイルフラッシング工程(工程1)は、上述した手法1による先行オイルフラッシング(
図2参照)が行われる工程、すなわち、浄油機190により油タンク101内の異物を回収する工程である。タンク内先行オイルフラッシング工程(工程1)は、定期検査における手入れ・検査工程が行われている間に開始され、所定期間実施される。例えば、タンク内先行オイルフラッシング工程(工程1)は、最終オイルフラッシング工程(工程4)が開始される前まで行われる。
【0039】
-系統内先行オイルフラッシング工程-
系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)は、タンク内先行オイルフラッシング工程(工程1)が開始されてから所定期間経過後に開始される。例えば、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)は、定期検査における組立工程が行われている間に開始され、所定期間実施される。
【0040】
系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)は、上述した手法2による先行オイルフラッシング(
図3A、
図3B)が行われる工程である。
図3A及び
図3Bに示すように、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)において、作業者は、軸受箱140を迂回して油供給配管102と油排出配管105とをバイパス配管121により接続する。作業者は、油ポンプ106を起動させ、油ポンプ106から吐出された油を油供給配管102、バイパス配管121及び油排出配管105を通じて油タンク101に戻すことにより、潤滑油系統1内のオイルフラッシングを行う。なお、系統内先行オイルフラッシング(工程2)では、手法2-1及び手法2-2のいずれかの先行オイルフラッシングが実施される。
図8に示すように、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)が完了すると、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)が開始される。
【0041】
-軸受箱内先行オイルフラッシング工程-
軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)は、定期検査における組立工程が行われている間に開始され、所定期間実施される。具体的には、発電プラントにおける複数の軸受箱140のうち検査及び組み立てが完了した軸受箱140から順次、軸受箱内先行オイルフラッシング工程が実施される。
【0042】
軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)は、フラッシング装置150による軸受箱140内のオイルフラッシングが行われる工程である(
図6、
図7参照)。
図6に示すように、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)において、作業者は、内部配管102iを迂回して、油供給配管102に設けられるストレーナ103と、軸受箱140に取り付けられるフラッシング装置150とをバイパス配管121により接続する。本実施形態では、作業者は、接続用ホース151によってバイパス配管121とフラッシング装置150とを接続する。作業者は、油ポンプ106を起動させ、油ポンプ106から吐出された油を油供給配管102、バイパス配管121及び接続用ホース151を通じてフラッシング装置150に供給し、フラッシング装置150から軸受箱140内に油を噴射させることにより、軸受箱140内のオイルフラッシングを行う。軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)の詳細については、後述する。
図8に示すように、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)が完了すると、最終オイルフラッシング工程(工程4)へ進む。
【0043】
-最終オイルフラッシング工程-
最終オイルフラッシング工程(工程4)は、上述した最終オイルフラッシング(
図1、
図5参照)が行われる工程である。最終オイルフラッシング工程(工程4)は、定期検査における組立工程が完了した後に開始される。
図1及び
図5に示すように、最終オイルフラッシング工程(工程4)において、作業者は、油ポンプ106を起動させ、油ポンプ106から吐出された油を油供給配管102から内部配管102iに供給することにより、潤滑油系統1内のオイルフラッシングを行う。
【0044】
図9を参照して、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)について詳しく説明する。
図9は、軸受箱内先行オイルフラッシング工程の実施手順の一例について示すフローチャートである。
【0045】
図9に示すように、軸受箱内先行オイルフラッシング工程では、装置取付工程S110、カバー取付工程S120、配管接続工程S130、ポンプ運転工程S140、配管取外し工程S150が、この順番で行われる。工程S110~S150は、一人以上の作業者により実施される。
【0046】
-装置取付工程-
装置取付工程S110は、軸受カバー140aが軸受台140bから取り外されている状態で行われる。装置取付工程S110において、作業者は、フラッシング装置150を軸受カバー140aに取り付ける。具体的には、作業者は、フラッシング装置150の先端部を軸受カバー140aの開口部149に挿入し、この開口部149の周縁部に取付部154を締結部材156によって締結する。なお、取付部154と、開口部149の周縁部との隙間には、この隙間をシールするパッキン(不図示)が設けられる。装置取付工程S110が完了すると、カバー取付工程S120へ進む。
【0047】
-カバー取付工程-
カバー取付工程S120は、上部軸受3aが下部軸受3bに取り付けられ、上部保持部5aが下部保持部5bに取り付けられた状態で行われる。カバー取付工程S120において、作業者は、軸受カバー140aのフランジ部(不図示)を締結部材により軸受台140bの上端部に締結することにより、軸受カバー140aを軸受台140bに取り付ける。これにより、軸受箱140が密閉状態となる。カバー取付工程S120が完了すると、配管接続工程S130へ進む。
【0048】
-配管接続工程-
配管接続工程S130において、作業者は、フラッシング装置150に接続用ホース151を介してバイパス配管121を接続する。具体的には、作業者は、
図3A及び
図3Bに示すバイパス配管121の一端を油排出配管105から取外し、
図6に示すように、そのバイパス配管121の一端を分岐管を介して接続用ホース151の一端に接続する。また、作業者は、
図7に示すように、接続用ホース151の他端をフラッシング装置150の筒部155の基端部に接続する。つまり、
図9に示す配管接続工程S130は、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)において使用したバイパス配管121を、油排出配管105からフラッシング装置150に付け替える配管付替工程ともいえる。
【0049】
また、配管接続工程S130において、作業者は、軸受箱140から油タンク101に戻る油内の異物を捕捉する異物捕捉部材135を油タンク101の油入口部に取り付ける(
図6参照)。なお、異物捕捉部材135は、油の戻りライン上に取り付けられていればよい。異物捕捉部材135は、上述した異物捕捉部材131と同様、パンチングプレート、網等により形成される。配管接続工程S130が完了すると、ポンプ運転工程S140へ進む。
【0050】
-ポンプ運転工程-
ポンプ運転工程S140は、潤滑油系統1が密閉状態となった後に行われる。ポンプ運転工程S140において、作業者は、油ポンプ106を起動し、
図6に示すように、油ポンプ106の動力によってフラッシングシステム10内で油を循環させる。油ポンプ106が駆動すると、油ポンプ106によって油タンク101内の油が吸い込まれて油供給配管102に吐出される。
【0051】
油ポンプ106から吐出された油は、油供給配管102を通じてストレーナ103に供給される。ストレーナ103は、供給された油に含まれる異物を捕捉する。ストレーナ103に供給された油は、異物捕捉部材131を通ってバイパス配管121に流れ、分岐管(不図示)を介して接続用ホース151に導かれる。接続用ホース151に供給された油はフラッシング装置150に導かれ、
図7に示すように、噴射ノズル152の噴射孔153から軸受箱140内に噴射される。
【0052】
つまり、
図9に示すポンプ運転工程S140は、油ポンプ106の動力によって、油供給配管102からバイパス配管121を通じてフラッシング装置150に油を供給し、フラッシング装置150の噴射ノズル152から軸受箱140の内壁面に向けて油を噴射させる噴射工程ともいえる。
【0053】
図7に示すように、フラッシング装置150は、油が噴射ノズル152から軸受カバー140aの内壁面及び軸受3に向かって噴射されるように、軸受カバー140aに取り付けられる。噴射ノズル152に供給された油は、複数の噴射孔153から噴射される(矢印F11参照)。噴射ノズル152から噴射された油は、直接、軸受カバー140aの内壁面、軸受台140bの内側面(内壁面)141i、及び軸受保持部材5に当たる。
【0054】
噴射ノズル152から軸受カバー140aの内壁面に向かって噴射された油は、内壁面に沿って流れ落ち(矢印F12参照)、軸受台140bの内側面141iに沿って流れ落ちる(矢印F13参照)。内側面141iに沿って流れ落ちた油は、落下の勢いによって底面142iに沿って流れ(矢印F14参照)、油出口箱143を通じて油排出配管105に流れる(矢印F15参照)。したがって、噴射ノズル152から軸受箱140の内壁面に向かって噴射された油は、軸受箱140の内壁面に付着している異物を流れ落とす。さらに、底面142iに沿って流れる油が、底面142iに溜まっている異物を油出口箱143に向けて押し流す。また、噴射ノズル152から軸受3に向かって噴射された油は、軸受保持部材5に付着している異物を流れ落とす。
【0055】
噴射ノズル152は、様々な方向に油を噴射する。このため、軸受箱140内の全体の異物を効率よく、油出口箱143に導くことができる。油出口箱143から油排出配管105に流入した油は、油タンク101に導かれる。
図6に示すように、油タンク101の油入口部には、異物捕捉部材135が設けられているため、油タンク101への戻り油に含まれる異物が、異物捕捉部材135によって捕捉される。
【0056】
ポンプ運転工程S140において、作業者は、油タンク101の油入口部の異物捕捉部材135及びストレーナ103の異物捕捉部材131によって回収される異物の量に基づいて、フラッシングシステム10内の異物が十分に回収されたか否かを判断する。例えば、所定期間の間に回収された異物が所定量以上である場合には、フラッシングシステム10内の異物は十分に回収されていないと判断し、ポンプ運転工程S140を続行する。所定期間の間に回収された異物が所定量未満である場合には、異物が十分に回収されたと判断し、
図9に示すポンプ運転工程S140を終了して配管取外し工程S150へ進む。
【0057】
-配管取外し工程-
配管取外し工程S150において、作業者は、
図6に示すバイパス配管121をストレーナ103の接続部から取り外す。作業者は、ストレーナ103におけるバイパス配管121の接続部を閉止部材で閉止する。作業者は、ストレーナ103に取り付けられていた閉止板132を取り外して給油配管102aとストレーナ103とを連通させる。また、配管取外し工程S150において、作業者は、フラッシング装置150を軸受カバー140aから取り外す。作業者は、軸受カバー140aの開口部149を閉止板によって閉止する。これにより、配管取外し工程S150が完了し、
図9に示す軸受箱先行オイルフラッシング工程が終了し、
図8に示す最終オイルフラッシング工程(工程4)へ進む。
【0058】
なお、軸受箱内先行オイルフラッシングの各工程S110~S150は、
図9に示す順序に限定されない。例えば、カバー取付工程S120を完了した後に装置取付工程S110を実施してもよい。
【0059】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0060】
(1)本実施形態に係る潤滑油系統のフラッシング方法は、内部配管102iを迂回して、油供給配管102と軸受箱140に取り付けられるフラッシング装置150とをバイパス配管121により接続し、油供給配管102からバイパス配管121を通じてフラッシング装置150に油を供給し、フラッシング装置150から軸受箱140内に油を噴射させることにより、軸受箱140内のオイルフラッシングを行う軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)と、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)の後に、油供給配管102から内部配管102iに油を供給することにより、潤滑油系統1内のオイルフラッシングを行う最終オイルフラッシング工程(工程4)と、を含む。
【0061】
軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)は、
図8の下図に示すように、定期検査における組立工程と並行して実施することができる。軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)におけるポンプ運転工程S140は、少なくとも、軸受箱140が組み立てられ、潤滑油系統1が密閉状態となれば、実施することができる。したがって、軸受箱140内の点検が終了し、組み立てが完了した軸受箱140から順次、オイルフラッシングを行うことができる。
【0062】
ポンプ運転工程S140が実施されている間、例えば、複数のタービン2のロータ4同士(例えば、低圧タービンと高圧タービンのロータ同士)、あるいは、タービン2のロータ4と発電機のロータとを接続するカップリングの組立作業等、別の部品の組立作業を行うことができる。定期検査における組立工程が完了した時点で、各軸受箱140に対する軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)が完了するように工程を調整することにより、スムーズに最終オイルフラッシング工程(工程4)へ移行することができる。
【0063】
図8の上図に示す比較例では、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)が実施されない。このため、軸受箱140内の異物を最終オイルフラッシング工程(工程4)により回収する必要があるため、最終オイルフラッシング工程に要する時間が長くなる。これに対して、本実施形態では、最終オイルフラッシング工程(工程4)に先立って、フラッシング装置150から軸受箱140内に油を噴射させる軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)が実施される。これにより、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)において軸受箱140内の異物を速やかに回収することができるとともに、最終オイルフラッシング工程(工程4)を比較例に比べて0.5日程度短縮することができる。その結果、定期検査を0.5日程度短縮することができる。
【0064】
(2)本実施形態に係る潤滑油系統のフラッシング方法は、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程S3)に先立って、軸受箱140を迂回して油供給配管102と油排出配管105とをバイパス配管121により接続し、油ポンプ106から吐出された油を油供給配管102、バイパス配管121及び油排出配管105を通じて油タンク101に戻すことにより、潤滑油系統1内のオイルフラッシングを行う系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)をさらに含む。軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)では、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)で使用したバイパス配管121をフラッシング装置150に取り付け、バイパス配管121を通じてフラッシング装置150に供給される油を噴射ノズル152から噴射する。
【0065】
この方法では、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)に先立って系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)が実施されることにより、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)が実施されない場合に比べて、最終オイルフラッシング工程(工程4)を短縮することができる。また、この方法では、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)と軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)において、同じバイパス配管121が用いられるため、フラッシング方法の実施に使用する部品の数を低減することができるとともに、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)から軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)へスムーズに移行することができる。さらに、この方法では、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)において、予め清浄化された油タンク101内の油をフラッシング装置150に供給することができる。このため、フラッシング装置150に異物が流入することを防止することができるので、フラッシング装置150から適切に油を噴射させることができる。
【0066】
(3)軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)は、フラッシング装置150を軸受カバー140aに取り付ける装置取付工程S110と、軸受カバー140aを軸受台140bに取り付けるカバー取付工程S120と、フラッシング装置150にバイパス配管121を接続する配管接続工程S130と、油供給配管102からバイパス配管121を通じてフラッシング装置150に油を供給し、フラッシング装置150の噴射ノズル152から軸受箱140の内壁面に向けて油を噴射させる噴射工程(ポンプ運転工程)S140と、を含む。カバー取付工程S120に先立って装置取付工程S110を実施する場合、軸受3の検査と並行して、フラッシング装置150を軸受カバー140aに取り付けることができる。また、フラッシング装置150が、軸受カバー140aに取り付けられているため、軸受3及び軸受台140bの上方から油を噴射させることができる。これにより、軸受3及び軸受台140bを効果的に洗浄することができる。
【0067】
(4)フラッシング装置150は、油が噴射ノズル152から軸受カバー140aの内壁面に向かって噴射されるように、軸受カバー140aに取り付けられる。軸受カバー140aの内壁面に噴射された油は、軸受台140bの内側面(内壁面)141iに沿って流れ落ちる。つまり、フラッシング装置150は、噴射ノズル152から噴射された油が、軸受台140bの内側面141iに沿って流れ落ちるように、軸受カバー140aに取り付けられている。これにより、軸受カバー140aの内壁面及び軸受台140bの内側面(内壁面)141iに付着した異物、並びに、軸受台140bの底面142iに溜まった異物を効率よく回収することができる。
【0068】
(5)フラッシング装置150は、油が噴射ノズル152から軸受3に向かって噴射されるように、軸受カバー140aに取り付けられる。これにより、軸受3を保持する軸受保持部材5に付着した異物を効率よく回収することができる。
【0069】
(6)フラッシング装置150は、直線状の筒部155を有し、筒部155の基端側に油入口部157が設けられ、筒部155の先端側に噴射ノズル152が設けられる。取付部154は、筒部155から外側に張り出すように設けられる。この構成では、取付部154を軸受カバー140aに取り付けることにより、噴射ノズル152が位置決めされる。したがって、噴射ノズル152の位置決めを容易に行うことができる。また、容易に、フラッシング装置150を軸受カバー140aに着脱できる。
【0070】
(7)フラッシングシステム10は、油が貯えられている油タンク101と、油タンク101内の油を吸い込んで吐出する油ポンプ106と、タービン2の軸受3を収容する軸受箱140と、油タンク101と軸受箱140に接続され油ポンプ106から吐出された油を軸受箱140に供給する油供給配管102と、軸受箱140と油タンク101に接続され軸受箱140から排出された油を油タンク101に導く油排出配管105と、軸受箱140から油タンク101に戻る油内の異物を捕捉する異物捕捉部材135と、油供給配管102から供給される油をタービン2のロータ4と軸受3との間に導く軸受箱140内の内部配管102iを迂回して、油供給配管102とフラッシング装置150に接続されるバイパス配管121と、を備える。このフラッシングシステム10によりオイルフラッシングを行うことにより、軸受箱140内の異物を速やかに回収することができ、次ステップの最終オイルフラッシング工程を短縮することができる。
【0071】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0072】
<変形例1>
上記実施形態では、フラッシング装置150が直線状の筒部155を有し、この筒部155の先端部に噴射ノズル152が設けられ、噴射ノズル152が軸受カバー140aの開口部149の中心軸上に配置される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。噴射ノズル152は、任意の位置に配置させることができる。
図10を参照して、上記実施形態の変形例1に係るフラッシング装置250について説明する。
【0073】
図10は、軸受箱140の側面断面模式図であり、本実施形態の変形例1に係るフラッシング装置250について示す図である。
図10に示すように、この変形例に係るフラッシング装置250は、直線状の筒部255と、筒部255の先端部に設けられた配管取付部257と、筒部255から外側に張り出すように設けられた取付部154と、配管取付部257に取り付けられるホース等の可撓性を有する配管(以下、可撓性配管と記す)256a,256bと、可撓性配管256a,256bの先端部に設けられた噴射ノズル152とを有し、噴射ノズル152が開口部149の中心軸上とは異なる位置に配置されている。
【0074】
本変形例では、図示するように2本の可撓性配管256a,256bが、筒部255の先端部に設けられた配管取付部257に取り付けられている。配管取付部257は、油入口部157から筒部255に供給された油を一方の可撓性配管256aともう一方の可撓性配管256bに分配できるように、T字状の分岐部として構成されている。
【0075】
可撓性配管256bは、取付部材258により軸受カバー140aの内壁面に取り付けられる。この構成では、可撓性配管256a,256bによって噴射ノズル152を任意の位置に容易に設定することができる。このため、軸受台140bにおいて異物が溜まりやすい場所に油を噴射可能な位置、角度で噴射ノズル152を固定することができる。また、噴射ノズル152を自由に設置することができるので、軸受台140bの全体に油を流すことにより、効率よく異物を回収することができる。なお、
図10では、軸受カバー140aの周方向に沿って可撓性配管256a,256bが配置されている例について示すが、ロータ4の軸方向に沿うように可撓性配管256a,256bが配置されていてもよい。
【0076】
可撓性配管256a,256b、配管取付部257、及び噴射ノズル152は、軸受カバー140aの開口部149を通過できるように形成されている。配管取外し工程S150において、作業者は、取付部154を管台145から取り外し、筒部255を開口部149から引き抜くことにより、可撓性配管256a,256b、配管取付部257、及び噴射ノズル152を軸受箱140から取り出すことができる。なお、取付部材258は、筒部255が引っ張られることで軸受カバー140aの内壁面から取り外されるように構成される。
【0077】
<変形例2>
上記実施形態では、噴射ノズル152が、軸受カバー140aの内壁面及び軸受3に向かって油を噴射する例(
図7参照)について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、噴射ノズル152は、軸受カバー140aの内壁面及び軸受3のうちの一方に向けてのみ油を噴射する構成とすることができる。また、噴射ノズル152は、軸受台140bの内側面141iに向けてのみ油を噴射する構成とすることもできる。
【0078】
<変形例3>
上記実施形態では、蒸気タービンの軸受3の潤滑油系統1に本発明を適用する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。本発明は、ガスタービンの軸受の潤滑油系統に適用してもよい。本発明は、複数のタービン間に設けられる軸受、及び、タービンと発電機との間に設けられる軸受など、タービン2を支持する軸受3の潤滑油系統に適用することができる。
【0079】
<変形例4>
上記実施形態に係るフラッシング方法は、タンク内先行オイルフラッシング(工程1)と、系統内先行オイルフラッシング(工程2)と、軸受箱内先行オイルフラッシング(工程3)と、最終オイルフラッシング工程(工程4)とが含まれる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。タンク内先行オイルフラッシング工程(工程1)及び系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)のうちの一方または双方を省略してもよい。
【0080】
<変形例5>
上記実施形態では、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)で用いたバイパス配管121が、軸受箱140のフラッシング装置150に接続され、軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)においても用いられる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。軸受箱内先行オイルフラッシング工程(工程3)では、系統内先行オイルフラッシング工程(工程2)で用いたバイパス配管とは別のバイパス配管をストレーナ103と軸受箱140のフラッシング装置150に接続するようにしてもよい。
【0081】
<変形例6>
上記実施形態では、バイパス配管121がストレーナ103と軸受箱140のフラッシング装置150に接続される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。フラッシングシステム10は、ストレーナ103と軸受箱140を接続する給油配管102aと、軸受箱140のフラッシング装置150と、がバイパス配管121により接続される構成としてもよい。この場合、給油配管102aにおけるバイパス配管121の接続部と、内部配管102iとの間に、油の流れを遮断する閉止部材が取り付けられる。
【0082】
<変形例7>
上記実施形態では、噴射ノズル152に複数の噴射孔153が設けられる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。噴射ノズル152は、単一の噴射孔を有するものであってもよい。これにより、噴射ノズル152は、局所的に油を噴出することができる。
【0083】
<変形例8>
上記実施形態では、配管取外し工程S150において、フラッシング装置150が軸受カバー140aから取り外される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。フラッシング装置150は取り付けたままとしてもよい。この場合、配管取外し工程S150において、作業者は、接続用ホース151をフラッシング装置150から取り外し、筒部155の油入口部157を閉止部材によって閉止する。本変形例によれば、フラッシング装置150を、次回の定期検査のときにも利用することができる。
【0084】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0085】
1…潤滑油系統、2…タービン、3…軸受、4…ロータ、5…軸受保持部材、10…フラッシングシステム、101…油タンク、102…油供給配管、102i…内部配管、103…ストレーナ、105…油排出配管、106…油ポンプ、121…バイパス配管、122…ストレーナ、131…異物捕捉部材、132…閉止板、135…異物捕捉部材、140…軸受箱、140a…軸受カバー、140b…軸受台、141…側板、141i…内側面(内壁面)、142…底板、142i…底面、143…油出口箱、144…支持板、145…管台、149…開口部、150…フラッシング装置、151…接続用ホース、152…噴射ノズル、153…噴射孔、154…取付部、155…筒部、156…締結部材、157…油入口部、190…浄油機、250…フラッシング装置、255…筒部、256a,256b…可撓性配管、257…配管取付部、258…取付部材