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特開2022-182862自車位置推定装置及び自車位置推定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182862
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】自車位置推定装置及び自車位置推定方法
(51)【国際特許分類】
   G01C 21/28 20060101AFI20221201BHJP
   B60W 40/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01C21/28
B60W40/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090617
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】509186579
【氏名又は名称】日立Astemo株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 正人
(72)【発明者】
【氏名】大久保 智
【テーマコード(参考)】
2F129
3D241
【Fターム(参考)】
2F129AA03
2F129BB03
2F129BB07
2F129BB08
2F129BB09
2F129BB19
2F129BB20
2F129BB33
2F129BB34
2F129BB35
2F129BB36
2F129BB65
2F129BB66
2F129EE02
2F129EE43
2F129EE70
2F129EE78
2F129EE91
2F129EE92
2F129FF02
2F129FF09
2F129FF19
2F129GG17
2F129GG18
2F129GG28
2F129HH02
2F129HH12
3D241BA50
3D241CD29
3D241CE02
3D241CE04
3D241CE05
3D241CE08
3D241DA54Z
3D241DB01Z
3D241DB02Z
3D241DB12Z
3D241DB32Z
3D241DB44Z
3D241DC25Z
3D241DC30Z
3D241DC31Z
3D241DC33Z
3D241DC34Z
3D241DC39Z
3D241DC49Z
3D241DC50Z
(57)【要約】
【課題】1次元の移動距離のみではなく、2次元の旋回方向を含めて高精度に自車位置を推定することができる自車位置推定装置及び自車位置推定方法を提供する。
【解決手段】車両の挙動を検知するセンサの出力に基づいて前記車両の位置を算出する車両位置推定部2と、任意の位置に設置された無線機101と通信して前記車両と前記無線機101の相対位置を算出する無線位置推定部1と、前記車両位置推定部2で少なくとも前記車両の位置および旋回の角度情報の演算に用いるパラメータを補正する位置推定パラメータ補正部3と、を備え、前記位置推定パラメータ補正部3は、前記無線位置推定部1により算出した前記車両の移動量と前記車両位置推定部2により算出した前記車両の移動量とを比較して前記パラメータを補正する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の挙動を検知するセンサの出力に基づいて前記車両の位置を算出する車両位置推定部を有する自車位置推定装置において、
任意の位置に設置された無線機と通信して前記車両と前記無線機の相対位置を算出する無線位置推定部と、前記車両位置推定部で少なくとも前記車両の位置および旋回の角度情報の演算に用いるパラメータを補正する位置推定パラメータ補正部と、をさらに備え、
前記位置推定パラメータ補正部は、前記無線位置推定部により算出した前記車両の移動量と前記車両位置推定部により算出した前記車両の移動量とを比較して前記パラメータを補正することを特徴とする自車位置推定装置。
【請求項2】
前記無線位置推定部は、前記車両に設置されて前記無線機と通信可能な複数の車両側無線機からの方位情報から前記車両と前記無線機の相対位置を算出することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項3】
前記パラメータは、前記車両位置推定部で演算する走行距離を補正するための距離係数、旋回量を補正する旋回係数、前記車両の車輪速パルスを補正する1パルス距離係数、前記車両のタイヤ半径もしくはタイヤ直径を補正するタイヤ径係数、前記車両のトレッド長を補正するトレッド長係数、前記車両の舵角に対する旋回曲率を補正する旋回曲率係数、前記車両の車輪速パルスの1パルス距離、前記車両のタイヤ半径もしくはタイヤ直径、前記車両のトレッド長、前記車両の舵角に対する旋回曲率、のうちの少なくとも一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項4】
前記位置推定パラメータ補正部は、前記無線位置推定部により算出した前記車両の移動量と前記車両位置推定部により算出した前記車両の移動量との差分を算出し、該差分が小さくなるように前記パラメータを補正することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項5】
前記位置推定パラメータ補正部は、補正前のパラメータに対して所定の重みを付けて前記パラメータを補正することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項6】
前記位置推定パラメータ補正部は、前記車両の車速が所定の車速以下で前記パラメータを補正することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項7】
前記位置推定パラメータ補正部は、前記車両の車速が低いほど補正前のパラメータに対して付ける重みを重くして前記パラメータを補正することを特徴とする請求項6に記載の自車位置推定装置。
【請求項8】
前記位置推定パラメータ補正部は、前記無線位置推定部により算出した前記車両の移動量が所定の範囲内で前記パラメータを補正することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項9】
前記位置推定パラメータ補正部は、前記無線位置推定部により算出した前記車両の移動量が長いほど補正前のパラメータに対して付ける重みを重くして前記パラメータを補正することを特徴とする請求項8に記載の自車位置推定装置。
【請求項10】
前記位置推定パラメータ補正部は、前記無線位置推定部により算出した前記車両の移動量と前記車両位置推定部により算出した前記車両の移動量との差分および/または前記パラメータの補正量を記憶し、該差分および/または該パラメータの補正量の記憶回数が所定回数を超えた場合に所定回数分の該差分および/または該パラメータの補正量に基づいて前記パラメータを補正することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項11】
前記無線位置推定部が通信を行っている対象の無線機が1つの場合、前記無線機は前記車両の方位を推定し、前記無線位置推定部は該方位の情報を受信して前記車両の移動量を算出することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項12】
前記無線位置推定部が通信を行っている対象の無線機が2つ以上の場合、前記無線位置推定部は前記無線機の各々の相対位置を算出し、前記無線機間の相対的な位置関係を用いて前記車両の移動量を算出することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項13】
前記無線機は、複数個で構成され、各々の無線機が他の無線機との相対的な位置関係の情報を発信し、前記位置推定パラメータ補正部は、前記無線位置推定部が前記各々の無線機から受信した該情報を用いて前記車両の移動量を算出することで、前記パラメータを補正することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項14】
前記位置推定パラメータ補正部は、補正前のパラメータと補正後のパラメータとの差分が所定値以上の場合、前記パラメータを補正せず、
前記位置推定パラメータ補正部は、補正前のパラメータと補正後のパラメータとの差分が所定値以上で前記パラメータを補正しない場合、前記車両の乗員に前記パラメータを補正しない情報を報知することを特徴とする請求項1に記載の自車位置推定装置。
【請求項15】
車両に搭載される自車位置推定装置が実行する自車位置推定方法であって、
前記車両の挙動を検知するセンサの出力に基づいて前記車両の位置を算出する車両位置推定手順と、任意の位置に設置された無線機と通信して前記車両と前記無線機の相対位置を算出する無線位置推定手順と、前記車両位置推定手順で少なくとも前記車両の位置および旋回の角度情報の演算に用いるパラメータを補正する位置推定パラメータ補正手順と、を有し、
前記位置推定パラメータ補正手順は、前記無線位置推定手順により算出した前記車両の移動量と前記車両位置推定手順により算出した前記車両の移動量とを比較して前記パラメータを補正することを特徴とする自車位置推定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両などの移動体において、センサ情報などから自車位置を推定する自車位置推定装置及び自車位置推定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両などの移動体の自車位置を推定する技術として、車輪速や舵角、ヨーレートなどの内界センサを利用して自車位置を推定するデッドレコニングや、カメラなどの映像信号を用いたビジュアルオドメトリ、GPSなどの測位衛星を利用した衛星測位、またこれらの技術を組み合わせて自車位置を推定する技術など、種々提案されている。さらに、これらの技術を用いて移動体を制御し、運転者の運転操作をアシストするものや、目的地まで自動で移動体を走行させる自動運転技術が開発されている。
【0003】
このような自動運転技術を実現するためには、地図や特定のマップ上で高精度に自車位置を推定する必要があり、精度が足りない場合には自動運転や運転アシストなどが実行できなくなる。例えば、デッドレコニングは車輪速や舵角、ヨーレートなどの内界センサの情報を利用して相対的な移動量の積算にて自車位置を推定する技術であるが、その計算にタイヤ半径やトレッド長、舵角/曲率テーブルなどの車両諸元を用いているため、タイヤの状態(すり減り具合や空気圧の大小など)や製造バラつきなどによって車両諸元が実際の値と異なり自車位置の計算に誤差が生じてしまう。
【0004】
このようなデッドレコニングの課題を解決する技術として、以下の先行技術がある。特許文献1には、車両の速度を検知する車速センサの出力と距離係数とに基づき前記車両の移動距離を算出する車両移動距離算出装置において、前記車両の走行通路上の所定領域に信号を照射するビーコン送信機と、前記車両に搭載されたビーコン受信機が前記所定領域を通過することによって得られる前記所定領域に対応した推定距離と、前記所定領域に対応した実際の距離とに基づき、前記距離係数を修正する距離係数修正手段と、を備えることを特徴とする車両移動距離算出装置が記載されている(請求項1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-28665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示されている技術により、2つのビーコン間の正確な距離と推定距離を比較することで移動距離を算出することが可能となる。これにより、移動距離の精度は向上可能である。しかし、旋回方向の移動量は考慮されていないため、例えば地図などの平面上の自車位置を高精度に推定することが困難であった。
【0007】
本発明は、前述した事情を鑑みてなされたもので、1次元の移動距離のみではなく、2次元の旋回方向を含めて高精度に自車位置を推定することができる自車位置推定装置及び自車位置推定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明の代表的な一例を示せば以下の通りである。すなわち、車両の挙動を検知するセンサの出力に基づいて前記車両の位置を算出する車両位置推定部を有する自車位置推定装置において、任意の位置に設置された無線機と通信して前記車両と前記無線機の相対位置を算出する無線位置推定部と、前記車両位置推定部で少なくとも前記車両の位置および旋回の角度情報の演算に用いるパラメータを補正する位置推定パラメータ補正部と、をさらに備え、前記位置推定パラメータ補正部は、前記無線位置推定部により算出した前記車両の移動量と前記車両位置推定部により算出した前記車両の移動量とを比較して前記パラメータを補正することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、車両の位置および旋回の角度情報の演算が高精度に行えるようになるため、内界センサのみで2次元の旋回方向を含めて高精度に自車位置を推定することが可能となる。また、カメラや測位衛星などの外界センサが利用できないシーンにおいても自車位置推定精度を担保できるようになる。
【0010】
前述した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施例の説明によって明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例における自車位置推定装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施例における車両制御装置の概略構成図である。
図3】無線機による相対位置算出方法の一例を示し、(a)は車両側の無線機が1つの場合、(b)は車両側の無線機が2つの場合を示す図である。
図4】本発明の一実施例における無線ビーコンの構造の一例を示す図である。
図5】本発明の一実施例における車両位置推定処理の一例のフローチャートである。
図6】本発明の一実施例における車両位置推定処理の他例のフローチャートである。
図7】本発明の一実施例における運転支援処理の一例のフローチャートである。
図8】無線機による自車両の方向算出方法の一例を示し、(a)は車両が直進する場合、(b)は車両が旋回する場合を示す図である。
図9】無線機による自車両の方向算出方法の他例を示し、(a)は車両が直進する場合、(b)は車両が旋回する場合を示す図である。
図10】本発明の適用事例の一例を示す図である。
図11】本発明の適用事例の他例を示す図である。
図12】複数の無線ビーコンを利用する方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
【0013】
図1及び図2は、本発明の一実施例による自車位置推定装置及び当該自車位置推定装置による自車位置推定機能を搭載した車両制御装置の概略構成図である。図1及び図2に例示される自車位置推定装置(以降、推定装置と記載する場合がある)100a及び車両制御装置(以降、制御装置と記載する場合がある)200aは、たとえば車両(自車両)に搭載され、自車両の位置を推定及び制御するコンピュータであり、不図示の記憶媒体に記憶されたプログラムを実行することによって、無線位置推定部1、車両位置推定部2、位置推定パラメータ補正部3、周辺環境認識部4、自車位置推定部5、地図情報記憶部6、ユーザ設定入力部9、HMI制御部10、走行軌道生成部7、及び車両制御部8として機能する。なお、図1及び図2の両方に記載のある無線位置推定部1、車両位置推定部2、位置推定パラメータ補正部3はそれぞれ同等の機能を有するものである。
【0014】
推定装置100aは、自車両に設けられた車両側無線機102に接続されており、車両側無線機102は、自車外に設置された無線機101と無線通信により情報授受が可能である。また、推定装置100aは、自車両のCAN(不図示)や専用線などの伝送路に接続されており、これらの伝送路を経由して自車両の車速、車輪速、舵角、ヨーレートなどの車両情報が入力され、演算した車両位置情報を出力する。
【0015】
制御装置200aは、自車両の操舵装置111、駆動装置112、制動装置113、及び変速装置114と、自車両に設けられた外環境認識装置103、絶対位置計測装置104、音発生装置115、表示装置116とに接続されている。また、制御装置200aは、自車両のCAN(不図示)や専用線などの伝送路に接続されており、これらの伝送路を経由して自車両の車速、車輪速、舵角、ヨーレート、シフト位置などの車両情報及びスイッチ入力、タッチパネル入力などのユーザ操作情報が入力される。
【0016】
無線機101は、自車外の任意の位置に設置された無線を用いて情報の授受が可能な装置であって、例えば、Bluetooth(登録商標)ビーコン、光ビーコン、電波ビーコンなどがある。それぞれのビーコンと自車の車両側無線機102が無線通信により情報の授受が可能であり、位置に関する情報や周辺の環境情報などをやり取りする。
【0017】
車両側無線機102は、自車外に設置された無線機101と無線通信により情報の授受が可能な装置であって、無線機101の通信規格に合わせて自車両に設置される。車両側無線機102により取得された情報は、専用線などの伝送路を経由して推定装置100a(制御装置200a)に出力される。
【0018】
なお、無線機101及び車両側無線機102の無線通信(無線方式)にBluetooth(登録商標)規格を用いる場合、Bluetooth(登録商標)コア仕様バージョン5.1に追加された方向検知機能:Angle of Arrival(AoA)/Angle of Departure(AoD)を利用することで高精度な位置推定が可能である。
【0019】
外環境認識装置103は、自車両の周囲環境に関する情報を取得する装置であって、例えば、自車両の前方、後方、右側方、左側方の周囲環境をそれぞれ撮影する4個の車載カメラである。車載カメラにより得られた画像は、アナログデータのまま、又はA/D変換して、専用線などの伝送路を経由して制御装置200aに出力される。また、他の車載カメラとしてステレオカメラを用いることができ、車載カメラ以外にもミリ波やレーザー光を用いて物体との距離を計測するレーダ、超音波を用いて物体との距離を計測するソナー等を用いることができる。車載カメラなどのこれらの装置は、検出した物体との距離とその方角(方向)等の情報を専用線などの伝送路を経由して制御装置200aに出力する。
【0020】
絶対位置計測装置104は、自車両の地図上の絶対位置情報を取得する装置であって、例えば、GPS、GLONASSなどのGNSS(衛星測位システム)である。GNSSにより得られた位置情報は、CANや専用線などの伝送路を経由して制御装置200aに出力される。また、GNSS以外にも路車間通信などを利用して自車両の位置情報を取得してもよい。
【0021】
操舵装置111は、外部からの駆動指令により電動や油圧のアクチュエータなどによって舵角を制御できる電動パワーステアリング、油圧パワーステアリング等で構成される。
【0022】
駆動装置112は、外部からの駆動指令により電動のスロットルなどでエンジントルクを制御できるエンジンシステムや、外部からの駆動指令によりモータなどの駆動力を制御できる電動パワートレインシステム等で構成される。
【0023】
制動装置113は、外部からの制動指令により電動や油圧のアクチュエータなどで制動力を制御できる電動ブレーキや油圧ブレーキ等で構成される。
【0024】
変速装置114は、外部からの変速指令により電動や油圧のアクチュエータなどで前進や後退を切り替え可能なトランスミッション等で構成される。
【0025】
音発生装置115は、スピーカー等で構成され、運転者に対する警報や音声ガイダンス等を出力する情報報知部として機能する。
【0026】
表示装置116は、ナビゲーション装置等のディスプレイ、メーターパネル、警告灯等で構成される。表示装置116は、制御装置200aの操作画面や、自車両が障害物に衝突する危険があることなどを運転者に視覚的に伝える警告画面等の情報を報知する情報報知部として機能する。
【0027】
<制御装置200a(推定装置100a)の機能説明>
無線位置推定部1は、車両側無線機102から入力された無線機101と車両側無線機102との相対的な位置関係(方位や距離など)に基づいて、自車両の移動量(移動距離や走行経路など)を算出する。
【0028】
車両位置推定部2は、自車両の車速、車輪速、舵角、ヨーレートなどの車両の挙動を検知するセンサの情報を用いて、オドメトリーやデッドレコニングなどと呼ばれる自車位置推定手法により車両位置を算出する。なお、ここで用いる自車位置推定手法は、微小時間での車両の移動量及び角度変化を算出して、これらを積算していくことにより任意の点を基準とした車両位置を算出することで、自車両の移動量(移動距離や走行経路など)を算出する。
【0029】
位置推定パラメータ補正部3は、無線位置推定部1で算出した移動量と車両位置推定部2で算出した移動量を比較して、両者の差分が小さくなるように車両位置推定部2で演算に使用するパラメータを補正する。ここでのパラメータとしては、車両位置推定部2で車両位置および旋回の角度情報の演算に用いるパラメータであり、例えば、走行距離を補正する距離係数、旋回量を補正する旋回係数、車輪速パルスの1パルス当たりの距離を補正する1パルス距離係数、タイヤ半径もしくはタイヤ直径を補正するタイヤ径係数、トレッド長を補正するトレッド長係数、舵角に対する旋回曲率を補正する旋回曲率係数があり、また、車両諸元そのものである車輪速パルスの1パルス距離、タイヤ半径、タイヤ直径、トレッド長、舵角に対する旋回曲率をパラメータとして扱うことも可能である。
【0030】
周辺環境認識部4は、外環境認識装置103から入力された自車両の周囲を撮像した画像データや測距情報を用いて、自車両周辺の静止立体物、移動体、車線境界線(区画線)等の路面ペイント、標識等の物体の形状や位置を検出し、さらに、路面の凹凸等を検出して自車両が走行可能な路面であるか否かを判定する判定機能を有する。静止立体物とは、例えば、ガードレール、壁、ポール、パイロン、縁石、車止めなどの構造物や、停車車両である。また、移動体とは、例えば、歩行者、自転車、バイク、車両などである。以降、静止立体物と移動体の二つをまとめて障害物と称する。物体の形状や位置は、公知のパターンマッチングによって検出するとよいが、他の技術を用いて検出してもよい。
【0031】
また、周辺環境認識部4は、検出した物体の形状や位置に関する情報と自車両が走行可能な路面であるか否かの判定結果に基づいて、例えば一般道を走行する場合であれば、走行可能な車線位置や交差点の旋回可能スペース等を検出する。また、停車場の場合であれば、自車両を停車させることができる空間である停車可能空間や、停車可能空間に停車するために転回などが可能な空間である走行可能空間等を検出する。なお、この走行可能空間は、通路幅、自車両前方の障害物までの距離、停車可能空間に隣接する障害物(停車車両)の位置などを用いて定義する。
【0032】
自車位置推定部5は、絶対位置計測装置104から入力された絶対位置の情報や車両位置推定部2により入力された自車両の移動量などを用いて地図情報記憶部6に記憶された地図上の自車位置を推定する。また、ここで地図上の自車位置を推定する手法は、利用可能な地図により異なる。従来のナビゲーション装置の地図のように高精度地図ではない場合は、例えば公知技術であるマップマッチング手法を用いて自車位置を推定する。高精度地図の場合は、周辺環境認識部4により検出した車線境界線などの路面ペイントや標識、その他高精度地図上に記憶している障害物やランドマークの情報に基づいて自車両の高精度地図上での自車位置を推定する。
【0033】
地図情報記憶部6は、各種のアプリケーションに対応するための地図データを記憶する。例えば、従来のナビゲーション装置の用途であれば、経路探索や経路誘導に必要な道路情報やコンビニやガソリンスタンド、各種施設などの情報が記憶される。また、自動運転用途であれば、ポリゴンやポリライン等で表現される実際の道路形状に近い形状データと、通行規制情報(制限速度、通行可能車両種別等)、車線区分(本線、追越車線、登坂車線、直進車線、左折車線、右折車線等)、信号機や標識等の有無(有の場合はその位置情報)等の詳細な情報が記憶される。
【0034】
ユーザ設定入力部9は、スイッチ入力やタッチパネル入力などでのユーザ操作情報を入力し、目的地の設定、ルート設定などを受け付ける。
【0035】
HMI制御部10は、ユーザに報知するための情報を状況に応じて適宜生成し、音発生装置115および表示装置116に出力する。また、ユーザからルート探索指示があった場合には設定された目的地に対してルート探索条件に合ったルートを演算(探索)してユーザに報知する。ここでのルート探索の具体的な手法に関しては公知の手法を用いることができる。
【0036】
走行軌道生成部7は、現在の自車位置から目標位置に自車両を移動するための軌道を生成する。さらに、生成した軌道を走行する目標速度を地図情報の制限速度や軌道の曲率、信号機、一時停止位置、先行車の速度等の情報を用いて演算する。例えば、一般道を走行する場合には、ナビゲーション装置などを利用して目的地を設定し、目的地に向かって走行する際の自車両と障害物との位置関係や車線位置等の情報から軌道を生成する。また、停車場の場合では、自車両と障害物との位置関係から自車両を停車する目標停車位置を停車可能空間内に設定し、そこまでの軌道を生成する。
【0037】
車両制御部8は、走行軌道生成部7で生成した目標軌道に沿って自車両の走行を制御する。車両制御部8は、目標軌道に基づいて目標舵角と目標速度を演算する。なお、自車両と障害物との衝突が予測される場合には、自車両が障害物に衝突しないように目標舵角と目標速度を演算する。そして、車両制御部8は、その目標舵角を実現するための目標操舵トルクを操舵装置111へ出力する。また、車両制御部8は、目標速度を実現するための目標エンジントルクや目標ブレーキ圧を駆動装置112や制動装置113へ出力する。さらに、自車両の進行方向を変更する必要がある場合、車両制御部8は、変速指令を変速装置114に出力する。
【0038】
次に、図3(a)及び(b)を用いて車外の無線機の相対位置を算出する方法について説明する。
【0039】
図3(a)は、車両側の無線機が1つの場合を示しており、車外の無線機(これ以降、無線ビーコンと呼ぶ)と通信している状況である。自車両30に搭載された車両側無線機32は、無線ビーコン31と通信している。ここで、使用している無線規格がBluetooth(登録商標)の場合、前述したBluetooth(登録商標)の方向検知機能を活用することで、車両側無線機32から見た無線ビーコン31の方向33を検出することができる。また、Bluetooth(登録商標)で従来から利用されている電波強度情報を用いることで距離を推定できるため、自車両30からの無線ビーコン31の相対位置を求めることができる。
【0040】
図3(b)は、車両側の無線機が2つの場合を示しており、無線ビーコンと通信している状況である。自車両30に搭載された車両側無線機34及び35はそれぞれ離れた位置に搭載され、それぞれが無線ビーコン31と通信している。図3(a)と同様に、使用している無線規格がBluetooth(登録商標)の場合、車両側無線機34から見た無線ビーコン31の方向36及び車両側無線機35から見た無線ビーコン31の方向37を検出することができる。車両側無線機34及び35の設置位置が既知であり、方向36及び37が検出されると、三角法を用いて自車両30からの無線ビーコン31の相対位置を求めることができる。
【0041】
なお、図3(a)及び(b)において、無線ビーコン31から見た自車両30の無線機32,34,35の方向も検出することができ、この方向の情報を無線ビーコン31から自車両30の車両側無線機32,34,35のそれぞれに送信することで、自車両30の方位変化を演算することも可能である。
【0042】
次に、図4を用いて無線ビーコンの構造に関して説明する。
【0043】
図4は、無線ビーコンの一例であり、無線モジュール40が樹脂41によりモールドされており、樹脂42によりふたができる構造となっている。また、無線モジュール40は、内蔵された電池などの電源で駆動可能となっており、例えば樹脂42のふたに光電池モジュールを設置して外部からの電源供給なしで駆動できるようにすることや、電源線を引き出して外部から電源を供給できるようにしても良い。
【0044】
<推定装置100aの処理内容説明>
次に、フローチャートを用いて推定装置100aの処理手順を説明する。
【0045】
図5及び図6は、推定装置100aの処理手順(車両位置推定処理)の一例を示すフローチャートであり、ここでは2つの手法を説明する。
【0046】
図5の処理S501では、自車両の車速、車輪速、舵角、ヨーレートなどの車両情報を入力し、処理S502でこれらの車両情報を用いて車両位置推定部2で車両位置及び移動量を算出する。
【0047】
処理S503では、無線ビーコンとの無線通信を受信したか否かを判定し、無線通信を受信した場合は処理S504に進み、受信していない場合は一連の処理を終了する。
【0048】
処理S504では、車両側無線機102で受信・演算した自車両と無線ビーコンの相対位置の情報を用いて無線位置推定部1で自車両の移動量を算出し、処理S505に進む。
【0049】
処理S505では、位置推定パラメータ補正部3で、処理S502で算出した自車両の移動量と処理S504で算出した自車両の移動量とを比較して車両位置推定部2で用いるパラメータを補正し、一連の処理を終了する。
【0050】
ここでのパラメータの補正方法としては例えば以下の方法がある。ここでのパラメータは、車両位置推定部2で少なくとも車両位置および旋回の角度情報の演算に用いるパラメータである。
【0051】
■走行距離を補正するための距離係数
自車両が直進時の処理S502で算出した走行距離がX1で、処理S504で算出した走行距離がX2であった場合、距離係数Kx=X2/X1として、処理S502で算出する走行距離にKxを乗じて算出する。
【0052】
■旋回量を補正する旋回係数
自車両が旋回時の処理S502で算出した旋回角度がC1で、処理S504で算出した旋回角度がC2であった場合、旋回係数Kc=C2/C1として、処理S502で算出する旋回角度にKcを乗じて算出する。
【0053】
■車輪速パルスの1パルス当たりの距離を補正する1パルス距離係数
自車両が直進時の処理S502で算出した各車輪(4輪)の走行距離がX11,X12,X13,X14で、処理S504で算出した走行距離がX2であった場合、各車輪の1パルス距離係数はKx1=X2/X11,Kx2=X2/X12,Kx3=X2/X13,Kx4=X2/X14として、処理S502で算出する各車輪の走行距離にKx1,Kx2,Kx3,Kx4をそれぞれ乗じて算出する。
【0054】
■タイヤ半径もしくはタイヤ直径を補正するタイヤ径係数
自車両が直進時の処理S502で算出した各車輪(4輪)の走行距離がX11,X12,X13,X14で、処理S504で算出した走行距離がX2であった場合、各車輪のタイヤ径係数はKd1=X2/X11,Kd2=X2/X12,Kd3=X2/X13,Kd4=X2/X14として、処理S502で利用する各車輪のタイヤ半径もしくはタイヤ直径にKd1,Kd2,Kd3,Kd4をそれぞれ乗じて算出する。
【0055】
■トレッド長を補正するトレッド長係数
自車両が旋回時の処理S502で算出した旋回角度がC1で、処理S504で算出した旋回角度がC2であった場合、トレッド長係数Kt=C1/C2として、処理S502で利用するトレッド長にKtを乗じて算出する。
【0056】
■舵角に対する旋回曲率を補正する旋回曲率係数
自車両が旋回時の処理S502で算出した旋回角度がC1で、処理S504で算出した旋回角度がC2であった場合、旋回曲率係数Kr=C2/C1として、処理S502で利用する舵角に対する旋回曲率にKrを乗じて算出する。
【0057】
■車輪速パルスの1パルス距離
自車両が直進時の処理S502で算出した各車輪(4輪)のパルス数がP1,P2,P3,P4で、処理S504で算出した走行距離がX2であった場合、各車輪の1パルス距離をそれぞれX2/P1,X2/P2,X2/P3,X2/P4として処理S502で利用する。
【0058】
■タイヤ半径
自車両が直進時の処理S502で算出した各車輪(4輪)のパルス数がP1,P2,P3,P4で、処理S504で算出した走行距離がX2であった場合、タイヤ一回転当たりのパルス数をPIとすると、各車輪のタイヤ半径をそれぞれPI×X2/2/π/P1,PI×X2/2/π/P2,PI×X2/2/π/P3,PI×X2/2/π/P4として処理S502で利用する。
【0059】
また、トレッド長や舵角に対する旋回曲率に関しても処理S504で算出した旋回角度の情報から車両運動方程式などを用いて算出可能である。
【0060】
以上説明したパラメータの補正方法は、無線位置推定部1で算出した自車両の移動量と車両位置推定部2で算出した自車両の移動量との差分が小さくなるように各パラメータを補正することを基本的な考え方としている。ただし、上述した方法の場合、パラメータが急変する可能性があるため、補正前のパラメータに対して所定の重み(例えば20%)を付けて補正することで急変を防ぐことが可能となるとともに、センサの誤差などで誤ってパラメータを演算してしまった際も影響が小さくなる。
【0061】
また、補正の条件に車速条件を加えても良い。具体的には、自車両の車速が所定の車速以下(例えば100km/h以下)の条件でパラメータの補正を実施する。さらに、自車両の車速が低いほど単位時間当たりの走行距離も小さくなり、自車両の移動量を算出する際の距離分解能も小さくなることから、自車両の車速が低いほど補正前のパラメータに対して付ける重みを重くすることで効率的に補正が可能となる。なお、車速の条件は、使用する無線機の通信規格や実際の測定精度により柔軟に変更できるようにしておくことも重要である。
【0062】
また、補正の条件に移動量条件を加えてもよい。具体的には、無線位置推定部1で算出した自車両の移動量が所定の範囲内(例えば、5m以上100m未満)の条件でパラメータの補正を実施する。さらに、自車両の移動量が長いほど補正に優位に働くため、自車両の移動量が長いほど補正前のパラメータに対して付ける重みを重くすることで効率的に補正が可能となる。なお、移動量の条件は、使用する無線機の通信規格や実際の測定精度により柔軟に変更できるようにしておくことも重要である。
【0063】
また、補正前のパラメータと補正後のパラメータを比較して変化量(差分)が大きい場合(例えば変化量が50%以上の場合)は補正を実施しないことも考えられる。この場合は、無線通信や車両側に何らかの異常、もしくは、センサの誤検知などが発生している可能性があり、自車両の運転者(乗員)にその情報(補正を実施しない旨)を通知することも必要である。
【0064】
次に、図6のフローチャートを説明する。
【0065】
図6のフローチャートは、図5のフローチャートの処理S504までは同じ処理を実施する。
【0066】
処理S605では、無線位置推定部1で算出した自車両の移動量と車両位置推定部2で算出した自車両の移動量から算出した各パラメータの補正値(補正用データ)を記憶し、処理S606に進み、記憶した補正用データが所定量以上であるか否か(換言すれば、補正用データの記憶回数が所定回数を超えたか否か)を判定し、所定量以上であれば処理S607に進み、所定量に満たなければ一連の処理を終了する。
【0067】
処理S607では、記憶してある複数の補正用データに統計的処理などを施して、図5の処理S505と同様のパラメータ補正処理を実施し、一連の処理を終了する。ここでの統計的処理とは、例えば、単純な平均化や外れ値除去、標準偏差や分散を用いる手法などがあり、これらを行うことで、安定した補正結果を得ることが可能となる。
【0068】
ここでは、記憶対象として各パラメータの補正値を用いているが、各パラメータの補正値の演算に用いる、無線位置推定部1で算出した自車両の移動量と車両位置推定部2で算出した自車両の移動量との差分を記憶し、その差分の記憶回数が所定回数を超えた場合に記憶してある所定回数分の差分に統計的処理などを施して、パラメータ補正処理を実施してもよい。
【0069】
<制御装置200aの処理内容説明>
次に、図7のフローチャートを用いて制御装置200aの処理手順(運転支援処理)の一例を説明する。
【0070】
図7の処理S701では、制御装置200aは、外環境認識装置103から外界環境の認識結果を取得する。
【0071】
処理S702では、制御装置200aは、絶対位置計測装置104から絶対位置の計測結果を取得する。
【0072】
処理S703では、周辺環境認識部4は、処理S701で取得した外界環境認識結果に基づいて、自車両周辺の車線境界線などの路面ペイント、標識、障害物、ランドマークなどを検出する。
【0073】
処理S704では、自車位置推定部5は、処理S702で取得した絶対位置計測結果に基づいて、周辺環境認識部4の検出結果と地図情報記憶部6の地図情報及び車両位置推定部2の車両位置情報を用いて自車位置を推定する。
【0074】
処理S705では、走行軌道生成部7は、現在の自車位置から目標位置に自車両を移動するための軌道を生成する。
【0075】
処理S706では、車両制御部8は、処理S705で生成された目標軌道(走行軌道)を走行するための目標舵角、目標速度、適正シフト位置を演算する。
【0076】
処理S707では、車両制御部8は、処理S706で演算された目標舵角、目標速度、及び適正シフト位置を操舵装置111、駆動装置112、制動装置113、及び変速装置114のそれぞれに出力するための制御パラメータを演算する。例えば、操舵装置111に出力する制御パラメータは、目標操舵角を実現するための目標操舵トルクがあるが、操舵装置111の構成によっては直接目標操舵角を出力してもよい。また、駆動装置112及び制動装置113に出力する制御パラメータは、目標速度を実現するための目標エンジントルクや目標ブレーキ圧等があるが、駆動装置112と制動装置113の構成によっては直接目標速度を出力してもよい。
【0077】
処理S708では、車両制御部8は、処理S707で演算された制御パラメータを車両制御信号として操舵装置111、駆動装置112、制動装置113、及び変速装置114のそれぞれに出力する。
【0078】
処理S709では、制御装置200aは、目標位置に到達したか否かを判定する。
【0079】
処理S710では、処理S709で目標位置に到達した場合は運転支援を終了する案内を、目標位置に到達していない場合は運転支援中の案内を、HMI制御部10で音発生装置115又は表示装置116を用いてユーザに報知し、処理を終了する。
【0080】
以上説明したように、自車位置推定装置100aの基本機能を車両制御装置200aに組み込むことで、運転支援機能を実現することが可能となる。具体的には、絶対位置計測装置104からの信号が途絶えてしまうような屋内の環境などで、車両位置推定部2の精度が長時間にわたって担保できるようになるため、このような環境でも運転支援を続けることができるようになる。
【0081】
次に、図8(a)及び(b)及び図9(a)及び(b)を用いて無線ビーコンとの通信により自車両の旋回角度を演算するための具体的な手法を説明する。
【0082】
図8(a)及び(b)は、自車両が(各地点で)通信する無線ビーコンが1つの場合を想定している。
【0083】
図8(a)は、自車両80が無線ビーコン82の脇を地点Aから地点Bまで直進した状況である。地点Aにおいて、自車両80に搭載された車両側無線機81と無線ビーコン82が双方向通信することで、車両側無線機81から見た無線ビーコン82の方向A1及び無線ビーコン82から見た車両側無線機81の方向A2が検出できる。また、図3(a)及び(b)で説明したように、車両側無線機81と無線ビーコン82の距離も検出できる。その後、地点Bにおいても同様に、方向B1,B2及び距離が検出できる。ここで、地点Aの自車両80の方向を基準にすると、地点Bにおける自車両80の方向は、(A1+B1)-(A2+B2)で表すことができ、自車両80が直進する場合はゼロに近い値となる。
【0084】
図8(b)は、自車両80が無線ビーコン82の脇を地点Cから地点Dまで旋回した状況である。地点Cにおいて、自車両80に搭載された車両側無線機81と無線ビーコン82が双方向通信することで、車両側無線機81から見た無線ビーコン82の方向C1及び無線ビーコン82から見た車両側無線機81の方向C2が検出できる。また、図3(a)及び(b)で説明したように、車両側無線機81と無線ビーコン82の距離も検出できる。その後、地点Dにおいても同様に、方向D1,D2及び距離が検出できる。ここで、地点Cの自車両80の方向を基準にすると、地点Dにおける自車両80の方向は、(C1+D1)-(C2+D2)で表すことができ、図8(b)のように自車両80が旋回する場合は90度前後の値となる。
【0085】
これにより、自車両(の無線位置推定部1)が(所定地点で所定時刻に)通信を行っている対象の無線ビーコンが1つの場合、無線ビーコン82は自車両80の方位を推定し、無線位置推定部1はその方位の情報を受信して自車両80の移動量を算出可能となる。
【0086】
図9(a)及び(b)は、自車両が(各地点で)通信する無線ビーコンが2つの場合を想定している。
【0087】
図9(a)は、自車両90が無線ビーコン92及び93の脇を地点Aから地点Bまで直進した状況である。地点Aにおいて、自車両90に搭載された車両側無線機91が無線ビーコン92及び93からの単方向通信を受信すると、図3(a)及び(b)で説明した内容で車両側無線機91から見た無線ビーコン92及び93の相対位置が算出でき(車両側無線機91から見た無線ビーコン92の方向A1)、2つの無線ビーコンを結んだ直線を基準方向として無線ビーコン92から見た車両側無線機91の方向A2が算出できる。その後、地点Bにおいても同様に、方向B1,B2及び距離が検出できる。ここで、地点Aの自車両90の方向を基準にすると、地点Bにおける自車両90の方向は、(A1+B1)-(A2+B2)で表すことができ、自車両90が直進する場合はゼロに近い値となる。
【0088】
図9(b)は、自車両90が無線ビーコン92及び93の脇を地点Cから地点Dまで旋回した状況である。地点Cにおいて、自車両90に搭載された車両側無線機91が無線ビーコン92及び93からの単方向通信を受信すると、図3(a)及び(b)で説明した内容で車両側無線機91から見た無線ビーコン92及び93の相対位置が算出でき(車両側無線機91から見た無線ビーコン92の方向C1)、2つの無線ビーコンを結んだ直線を基準方向として無線ビーコン92から見た車両側無線機91の方向C2が算出できる。その後、地点Dにおいても同様に、方向D1,D2及び距離が検出できる。ここで、地点Cの自車両90の方向を基準にすると、地点Dにおける自車両90の方向は、(C1+D1)-(C2+D2)で表すことができ、図9(b)のように自車両90が旋回する場合は90度前後の値となる。
【0089】
なお、図9(a)及び(b)の例では無線ビーコン92との方位を算出して自車両90の方向を算出しているが、無線ビーコン93との方位から算出してもよく、両者の方位を用いる方式としても良い。さらに、3つ以上の無線ビーコンと通信する方式でも良いことは言うまでもない。
【0090】
これにより、自車両(の無線位置推定部1)が(所定地点で所定時刻に)通信を行っている対象の無線ビーコンが2つ以上の場合、無線位置推定部1は無線ビーコン92及び93の各々の相対位置を算出し、無線ビーコン92及び93間の相対的な位置関係を用いて(ここでは、2つの無線ビーコンを結んだ直線を基準方向として)自車両90の移動量を算出可能となる。
【0091】
以上説明したように、無線ビーコンの設置方法(1つもしくは2つ以上)に基づいて通信方法(双方向もしくは単方向)を変更することで、様々なシーンで自車両と無線ビーコンとの相対位置を算出でき、自車両の移動量を算出可能となる。
【0092】
<適用事例説明>
次に、図10及び図11を用いて、実際のシーンにおける本発明の活用例を示す。
【0093】
図10は、自車両100が自宅151に帰ってくるシーンを想定しており、152は自宅151の停車スペース、153及び154は無線ビーコン、155は隣の家である。
【0094】
図10において、自車両100が地点Aに到達すると、自車両100に搭載された車両側無線機(図示なし)と無線ビーコン153及び154が通信を開始し、自車両100が地点Bに到達するまでに車両位置推定部2のパラメータが補正される。その後、制御装置200aを用いて停車スペース152に対して自動制御で自車両100を停車する場合には、自車位置推定部5の精度が上がるため、停車完了後の停車精度も向上可能となる。
【0095】
図11は、自車両100が施設160を利用するため、停車場161に進入してくるシーンを想定しており、162,163,164,165は無線ビーコンである。
【0096】
図11において、自車両100が地点Aに到達すると、自車両100に搭載された車両側無線機(図示なし)と無線ビーコン162及び163が通信を開始し、自車両100が地点Cに到達するまでに車両位置推定部2のパラメータが補正される。ここでは、地点Aから地点Bまでの直進区間、地点Bから地点Cまでの旋回区間を含むため、効率よくパラメータの補正が可能である。その後、制御装置200aを用いて停車場161内を自動運転し、所望の停車スペースに対して自動制御で自車両100を停車する場合には、自車位置推定部5の精度が上がるため、走行時の精度や停車完了後の停車精度も向上可能となる。なお、自車両100の進入経路は無線ビーコン164,165の間を通る場合でも同様の動作が期待できることは言うまでもない。また、自車両100が停車場161から出ていく場合にそれぞれの無線ビーコンと通信して車両位置推定部2のパラメータを補正することも可能である。
【0097】
また、上記では特定の位置に設置された無線ビーコンを用いるシーンを説明したが、任意の位置、例えば図10において隣の家155に無線ビーコンが設置されている場合にもこれを使ってもよい。特に無線ビーコンからの単方向の通信で実施する場合は、その利用に対しての制約条件はほとんどないと考えてよい。
【0098】
また、上記では停車場のシーンを取り上げて説明したが、例えば一般道路や高速道路の要所要所に無線ビーコンを設置して、適宜自車位置推定精度を担保できるようにしておくことで、自動運転や高度運転支援の稼働領域を広げることも可能である。
【0099】
また、上記で説明した車両には、建設機械や工場内のフォークリフト、ロボットなどの自身の位置を推定する必要がある移動体なども含まれる。
【0100】
次に、図12を用いて、複数個の無線ビーコンを有効に活用する方法に関して説明する。
【0101】
図12は、自車両100が無線ビーコン170,171,172の脇を通過するシーンを想定している。
【0102】
図12において、自車両100は地点A付近で無線ビーコン170と通信を始め、このとき無線ビーコン120から無線ビーコン171との位置関係(距離や方向など)を取得する。自車両100は地点Bから地点C付近に到達すると、無線ビーコン170と171の距離の情報を用いて車両位置推定部2のパラメータを補正することができる。同様に、通信を開始した無線ビーコン171からは無線ビーコン172との位置関係(距離や方向など)が取得できれば、無線ビーコン172に到達する地点Dで同様の処理が実施可能である。
【0103】
つまり、無線ビーコンは、複数個で構成され、各々の無線ビーコンが他の無線ビーコンとの相対的な位置関係の情報を発信する場合、自車両100(の位置推定パラメータ補正部3)は、無線位置推定部1が各々の無線ビーコンから受信したその情報を用いて自車両100の移動量を算出することで、車両位置推定部2のパラメータを補正可能となる。
【0104】
<作用効果説明>
以上説明したように、本実施例の自車位置推定装置100aは、車両の挙動を検知するセンサの出力に基づいて前記車両の位置を算出する車両位置推定部2を有する自車位置推定装置100aにおいて、任意の位置に設置された無線機101と通信して前記車両と前記無線機101の相対位置を算出する無線位置推定部1と、前記車両位置推定部2で少なくとも前記車両の位置および旋回の角度情報の演算に用いるパラメータを補正する位置推定パラメータ補正部3と、をさらに備え、前記位置推定パラメータ補正部3は、前記無線位置推定部1により算出した前記車両の移動量と前記車両位置推定部2により算出した前記車両の移動量とを比較して前記パラメータを補正する。
【0105】
また、本実施例の自車位置推定方法は、車両に搭載される自車位置推定装置100aが実行する自車位置推定方法であって、前記車両の挙動を検知するセンサの出力に基づいて前記車両の位置を算出する車両位置推定手順と、任意の位置に設置された無線機101と通信して前記車両と前記無線機101の相対位置を算出する無線位置推定手順と、前記車両位置推定手順で少なくとも前記車両の位置および旋回の角度情報の演算に用いるパラメータを補正する位置推定パラメータ補正手順と、を有し、前記位置推定パラメータ補正手順は、前記無線位置推定手順により算出した前記車両の移動量と前記車両位置推定手順により算出した前記車両の移動量とを比較して前記パラメータを補正する。
【0106】
詳細には、任意の位置の無線ビーコンと通信し、自車両の相対的な移動量を算出してデッドレコニングのパラメータを補正する。
【0107】
本実施例によれば、車両の位置および旋回の角度情報の演算が高精度に行えるようになるため、内界センサのみで2次元の旋回方向を含めて高精度に自車位置を推定することが可能となる。また、カメラや測位衛星などの外界センサが利用できないシーンにおいても自車位置推定精度を担保できるようになる。
【0108】
なお、本実施例はいくつかのパターンを例にとって説明したが、ほかのパターンおいても本発明は適用可能である。また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の様態で実施することができる。
【0109】
また、本発明は前述した実施例に限定されるものではなく、添付した特許請求の範囲の趣旨内における様々な変形例及び同等の構成が含まれる。例えば、前述した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに本発明は限定されない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えてもよい。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えてもよい。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をしてもよい。
【0110】
また、前述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により、ハードウェアで実現してもよく、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し実行することにより、ソフトウェアで実現してもよい。
【0111】
各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリ、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
【0112】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、実装上必要な全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えてよい。
【符号の説明】
【0113】
1 無線位置推定部
2 車両位置推定部
3 位置推定パラメータ補正部
4 周辺環境認識部
5 自車位置推定部
6 地図情報記憶部
7 走行軌道生成部
8 車両制御部
9 ユーザ設定入力部
10 HMI制御部
101 無線機(無線ビーコン)
102 車両側無線機
103 外環境認識装置
104 絶対位置計測装置
111 操舵装置
112 駆動装置
113 制動装置
114 変速装置
115 音発生装置
116 表示装置
100a 自車位置推定装置
200a 車両制御装置
30,80,90,100 自車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12