(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182896
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】薄膜密着強度評価方法、薄膜密着強度評価装置及び試験用基板
(51)【国際特許分類】
G01N 19/04 20060101AFI20221201BHJP
【FI】
G01N19/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090683
(22)【出願日】2021-05-28
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100097238
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 治
(74)【代理人】
【識別番号】100213436
【弁理士】
【氏名又は名称】木下 直俊
(72)【発明者】
【氏名】米津 明生
(72)【発明者】
【氏名】保田 昇太郎
(57)【要約】
【課題】密着強度の評価を適切に行える薄膜密着強度評価方法、薄膜密着強度評価装置及び試験用基板を提供する。
【解決手段】薄膜密着強度評価方法は、圧力伝播層23の面上に、レーザー光を受光して衝撃波を発生するエネルギー吸収層22を形成する吸収層形成工程、圧力伝播層23における、エネルギー吸収層22の反対側の面上に接着層24を形成する接着層形成工程、接着層24における圧力伝播層23の反対側の面上に、薄膜形成基板1における薄膜11の表面を接着する接着工程、エネルギー吸収層22にレーザー光を照射する照射工程、及び、照射工程で生じた衝撃波を圧力伝播層23及び接着層24を介して薄膜形成基板1に伝播させる伝播工程を含み、伝播工程では、基板10における薄膜11の反対側の面で衝撃波Wを反射させて膨張波を生じさせ、膨張波を薄膜11に作用させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に薄膜が形成された薄膜形成基板における当該薄膜と当該基板との密着強度を評価する薄膜密着強度評価方法であって、
圧力伝播層の面上に、レーザー光を受光して衝撃波を発生するエネルギー吸収層を形成する吸収層形成工程、
前記圧力伝播層における、前記エネルギー吸収層の反対側の面上に接着層を形成する接着層形成工程、
前記接着層における前記圧力伝播層の反対側の面上に、前記薄膜形成基板における前記薄膜の表面を接着する接着工程、
前記エネルギー吸収層にレーザー光を照射する照射工程、及び、
前記照射工程で生じた衝撃波を前記圧力伝播層及び前記接着層を介して前記薄膜形成基板に伝播させる伝播工程を含み、
前記伝播工程では、前記基板における前記薄膜の反対側の面で前記衝撃波を反射させて膨張波を生じさせ、当該膨張波を前記薄膜に作用させる薄膜密着強度評価方法。
【請求項2】
アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されたアルミニウム基板を前記圧力伝播層として用いる請求項1に記載の薄膜密着強度評価方法。
【請求項3】
黒鉛を含む粘性流体で前記エネルギー吸収層を形成する請求項1又は2に記載の薄膜密着強度評価方法。
【請求項4】
前記粘性流体が順次置き換えられる請求項3に記載の薄膜密着強度評価方法。
【請求項5】
透明基板を前記基板として用い、前記基板における前記薄膜の反対側の面を介して前記薄膜と前記基板との界面を光学的に観察する請求項1から4のいずれか一項に記載の薄膜密着強度評価方法。
【請求項6】
レーザー光を照射するレーザー光源、及び、
基板上に薄膜が形成された薄膜形成基板が装着される試験用基板を備え、
前記試験用基板は、
前記レーザー光を受光して衝撃波を発生するエネルギー吸収層、
前記エネルギー吸収層の片面上に配置された圧力伝播層、及び、
前記圧力伝播層における、前記エネルギー吸収層の反対側の面上に配置された接着層を有し、
前記接着層における前記圧力伝播層の反対側の面上に、前記薄膜形成基板における前記薄膜の表面を接着されて、前記薄膜形成基板を装着される薄膜密着強度評価装置。
【請求項7】
前記圧力伝播層は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されたアルミニウム基板を含む請求項6に記載の薄膜密着強度評価装置。
【請求項8】
前記エネルギー吸収層は、黒鉛を含む粘性流体で形成されている請求項6又は7に記載の薄膜密着強度評価装置。
【請求項9】
前記粘性流体を順次置き換えるポンプを更に備えた請求項8に記載の薄膜密着強度評価装置。
【請求項10】
前記基板における前記薄膜の反対側の面を介して前記薄膜と前記基板との界面を撮像する撮像装置を更に備えた請求項6から9のいずれか一項に記載の薄膜密着強度評価装置。
【請求項11】
レーザー光を受光して衝撃波を発生するエネルギー吸収層、
前記エネルギー吸収層の片面上に配置された圧力伝播層、及び、
前記圧力伝播層における、前記エネルギー吸収層の反対側の面上に配置された接着層を備え、
前記圧力伝播層は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されたアルミニウム基板を含み、
前記エネルギー吸収層は、黒鉛を含む粘性流体で形成されている試験用基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄膜密着強度評価方法、薄膜密着強度評価装置及び試験用基板に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜形成基板における当該薄膜と当該基板との密着強度を適切に評価したいニーズがある。例えば、半導体デバイスでは、サブミクロンからナノレベルの薄膜材料が用いられるが、当該薄膜は、シリコンや二酸化ケイの基板上に形成(成膜)されて利用される。このような薄膜は、基板との剥離により所望の機能を発揮できなくなる場合がある。そこで、例えば残留応力や、摩擦、振動などの衝撃力との関係における、薄膜と基板との密着強度の評価が行われる。
【0003】
特許文献1には、超薄膜界面及び設計基板上に堆積された多重層の引っ張り強度を測定する装置及び方法が記載されている。この装置及び方法では、ガラス改質応力波を使用することで半導体及び設計基板から薄膜ライン又はその完全構造の分離及び剥離を実現するとされている。この装置及び方法で評価される試料集合体は、固体水ガラスの固定層、アルミニウム層であるエネルギー吸収層、ガラス基板、シリコン基板素子及び自由表面を有するコーティングを備えた多重層である。
【0004】
特許文献1に記載の装置及び方法では、試料集合体にNd-YAGレーザーパルスが作用される。レーザーパルスは、固定層を交差する方向に進行する。レーザーパルスは固定層を通過して、エネルギーを吸収するエネルギー吸収層に作用し、加熱する。それに引き続いて起こるエネルギー吸収層の膨張により圧縮性衝撃波又はパルス波が発生する。圧縮性衝撃波又はパルス波は、ガラス基板及びシリコン基板を通り抜けてコーティングまで伝搬する。そして、パルス波等はコーティングを透過して、コーティングの自由表面へ到達して反射し、引っ張りパルスを生成する。これにより、シリコン基板とコーティングとの間に引っ張り応力が生じて基板からコーティングを剥離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されたような方法では、基板(特許文献1ではシリコン基板)側から伝播された圧縮応力波を薄膜(特許文献1ではコーティング膜)表面で自由端反射させて引張応力波を生じさせている。そして、当該引張応力波による引張応力を当該薄膜と当該基板との界面に作用させている。しかし、このような方法では、薄膜の表面から基板との界面までの距離が短いため、当該界面において作用する引張応力が十分に大きくならず、当該界面に剥離が生じる程度の強さの引張応力を作用させることができない場合があった。そのため、密着強度の評価を適切に行えない場合があった。また、界面に剥離が生じる程度の強さの引張応力を作用させるべく、基板側から強い圧縮応力波を伝播させようとすると、基板を破損してしまい、密着強度の評価を適切に行えない場合があった。
【0007】
本発明は、かかる実状に鑑みて為されたものであって、その目的は、密着強度の評価を適切に行える薄膜密着強度評価方法、薄膜密着強度評価装置及び試験用基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る薄膜密着強度評価方法は、
基板上に薄膜が形成された薄膜形成基板における当該薄膜と当該基板との密着強度を評価する薄膜密着強度評価方法であって、
圧力伝播層の面上に、レーザー光を受光して衝撃波を発生するエネルギー吸収層を形成する吸収層形成工程、
前記圧力伝播層における、前記エネルギー吸収層の反対側の面上に接着層を形成する接着層形成工程、
前記接着層における前記圧力伝播層の反対側の面上に、前記薄膜形成基板における前記薄膜の表面を接着する接着工程、
前記エネルギー吸収層にレーザー光を照射する照射工程、及び、
前記照射工程で生じた衝撃波を前記圧力伝播層及び前記接着層を介して前記薄膜形成基板に伝播させる伝播工程を含み、
前記伝播工程では、前記基板における前記薄膜の反対側の面で前記衝撃波を反射させて膨張波を生じさせ、当該膨張波を前記薄膜に作用させる。
【0009】
本発明に係る薄膜密着強度評価方法では、更に、
アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されたアルミニウム基板を前記圧力伝播層として用いてもよい。
【0010】
本発明に係る薄膜密着強度評価方法では、更に、
黒鉛を含む粘性流体で前記エネルギー吸収層を形成してもよい。
【0011】
前記粘性流体が順次置き換えられてもよい。
【0012】
本発明に係る薄膜密着強度評価方法では、更に、
透明基板を前記基板として用い、前記基板における前記薄膜の反対側の面を介して前記薄膜と前記基板との界面を光学的に観察してもよい。
【0013】
上記目的を達成するための本発明に係る薄膜密着強度評価装置は、
レーザー光を照射するレーザー光源、及び、
基板上に薄膜が形成された薄膜形成基板が装着される試験用基板を備え、
前記試験用基板は、
前記レーザー光を受光して衝撃波を発生するエネルギー吸収層、
前記エネルギー吸収層の片面上に配置された圧力伝播層、及び、
前記圧力伝播層における、前記エネルギー吸収層の反対側の面上に配置された接着層を有し、
前記接着層における前記圧力伝播層の反対側の面上に、前記薄膜形成基板における前記薄膜の表面を接着されて、前記薄膜形成基板を装着される。
【0014】
本発明に係る薄膜密着強度評価装置では、更に、
前記圧力伝播層は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されたアルミニウム基板を含んでもよい。
【0015】
本発明に係る薄膜密着強度評価装置では、更に、
前記エネルギー吸収層は、黒鉛を含む粘性流体で形成されていてもよい。
【0016】
本発明に係る薄膜密着強度評価装置では、更に、
前記粘性流体を順次置き換えるポンプを更に備えてもよい。
【0017】
本発明に係る薄膜密着強度評価装置では、更に、
前記基板における前記薄膜の反対側の面を介して前記薄膜と前記基板との界面を撮像する撮像装置を更に備えてもよい。
【0018】
上記目的を達成するための本発明に係る試験用基板は、
レーザー光を受光して衝撃波を発生するエネルギー吸収層、
前記エネルギー吸収層の片面上に配置された圧力伝播層、及び、
前記圧力伝播層における、前記エネルギー吸収層の反対側の面上に配置された接着層を備え、
前記圧力伝播層は、アルミニウム又はアルミニウム合金で形成されたアルミニウム基板を含み、
前記エネルギー吸収層は、黒鉛を含む粘性流体で形成されている。
【発明の効果】
【0019】
密着強度の評価を適切に行える薄膜密着強度評価方法、薄膜密着強度評価装置及び試験用基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】薄膜密着強度評価装置の全体構成を説明する図である。
【
図3】衝撃波の発生から界面の剥離までの状態の変化を説明する図である。
【
図6】従来技術との比較において引張応力の大きさを示すグラフである。
【
図7】実施例1の薄膜密着強度評価結果を示す図である。
【
図8】実施例2の薄膜密着強度評価結果を示す図である。
【
図9】二酸化ケイ素基板の破損状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図面に基づいて、本発明の実施形態に係る薄膜密着強度評価方法、薄膜密着強度評価装置及び試験用基板について説明する。
【0022】
(全体構成の説明)
図1に、本実施形態に係る薄膜密着強度評価装置100(以下、評価装置100と記載する)を示す。評価装置100は、基板10上に薄膜11が形成された薄膜形成基板1における、薄膜11と基板10との密着強度の評価、すなわち、薄膜密着強度評価方法を実現する装置である。
【0023】
評価装置100は、レーザー光Lを照射するレーザー光源91、及び、薄膜形成基板1が装着される試験用基板2を備えている。
【0024】
図1では、一例として、評価装置100が薄膜形成基板1及び試験用基板2の保持容器C及び撮像装置92を更に備えている場合を示している。また、一例として、レーザー光源91が、レーザー光Lを集光(フォーカス)するレンズ91aを備えている場合を示している。
【0025】
試験用基板2は、
図2に示すように、レーザー光Lを受光して衝撃波を発生するエネルギー吸収層22、エネルギー吸収層22の片面上に配置された圧力伝播層23、及び、圧力伝播層23における、エネルギー吸収層22の反対側の面上に配置された接着層24を有している。試験用基板2は、接着層24における圧力伝播層23の反対側の面上に、薄膜形成基板1における薄膜11の表面を接着される。このように接着層24に薄膜11を接着されることにより、試験用基板2は薄膜形成基板1を装着される。
【0026】
本実施形態に係る薄膜形成基板1における薄膜11と基板10との密着強度を評価する薄膜密着強度評価方法は、圧力伝播層23の面上に、エネルギー吸収層22を形成する吸収層形成工程、圧力伝播層23における、エネルギー吸収層22の反対側の面上に接着層24を形成する接着層形成工程、接着層24における圧力伝播層23の反対側の面上に、薄膜形成基板1における薄膜11の表面を接着する接着工程、エネルギー吸収層22にレーザー光Lを照射する照射工程、及び、照射工程で生じた衝撃波を圧力伝播層23及び接着層24を介して薄膜形成基板1に伝播させる伝播工程を含む。
【0027】
図3には、照射工程から伝播工程における、衝撃波の発生から界面の剥離までの状態の変化(状態(a)から(d))を示している。伝播工程では、
図3(c)に示すように、基板10における薄膜11の反対側の面で衝撃波Wを自由端反射させて膨張波W2を生じさせ、この膨張波W2を薄膜11に作用させる。
【0028】
すなわち、
図1に示すように、評価装置100は、薄膜形成基板1が装着された試験用基板2に対して、レーザー光源91からレーザー光Lを照射し、薄膜形成基板1における薄膜11と基板10との界面に衝撃波W(膨張波W2、
図3参照)を作用させて、薄膜11と基板10との界面の変化の観察、すなわち、薄膜密着強度評価を実現する。薄膜11と基板10との界面の変化の観察は、例えば撮像装置92を用いて行う。
【0029】
(各部の説明)
図4には、薄膜形成基板1の構造を模式的に示している。薄膜形成基板1は、薄膜密着強度評価における評価対象の試料である。薄膜形成基板1は基板10と、基板10上に形成された薄膜11とを備えている。薄膜形成基板1は、例えば半導体デバイスやその前駆体である。
【0030】
基板10は、薄膜11を形成するための板状の基材である。基板10の一例は、シリコンや二酸化ケイ素などの板状の基材であり、例えば半導体デバイス製造用のウエハである。基板10は、光学的に透明であることが好ましい。基板10の厚みは、例えば100μm以上3mm以下である。本実施形態では一例として基板10の厚みを0.5mmとすることができる。本実施形態では、基板10が二酸化ケイ素で形成された可視光において透明基板である場合を例示して説明する。
【0031】
薄膜11は、例えばCVD法やスパッタリング法などのエピタキシャル成長により形成される薄膜ないし厚みの薄い層である。本実施形態において、薄膜11の成膜方法は限定されない。薄膜11は、例えば金属や半導体の膜や層である。薄膜11の厚みは、例えば10nm以上500nm以下である。本実施形態では一例として薄膜11の厚みを200nmとすることができる。以下では、膜及び層の概念を包括して、単に薄膜と記載する。
【0032】
図1に示すように、評価装置100は、レーザー光源91、薄膜形成基板1が装着される試験用基板2、薄膜形成基板1が装着された試験用基板2(後述する試験片T)を固定保持する保持容器C、及び試験片Tを光学的に観察する撮像装置92を備えている。
【0033】
図5には、試験用基板2の構造を模式的に示している。試験用基板2は、薄膜形成基板1の薄膜密着強度評価を行うための補助基板である。
図2に示すように、試験用基板2には、接着などにより薄膜形成基板1が装着される。試験用基板2に薄膜形成基板1が装着されたものを、以下では試験片Tと記載する場合がある。
【0034】
図5に示すように、試験用基板2は、上述のごとく、エネルギー吸収層22、圧力伝播層23、及び、接着層24を有している。本実施形態では、試験用基板2は、エネルギー吸収層22における、圧力伝播層23の反対側の面上に配置された固定層21を更に有している。すなわち、試験用基板2は、固定層21、エネルギー吸収層22、圧力伝播層23及び接着層24がこの順に積層された構造を有している。固定層21、エネルギー吸収層22、圧力伝播層23及び接着層24はそれぞれ隣接する層と密に接している。
【0035】
圧力伝播層23は、エネルギー吸収層22で生じた衝撃波を薄膜形成基板1に向けて伝播させるための層である。圧力伝播層23は、衝撃波の減衰が生じにくく、且つ、エネルギー吸収層22や接着層24と音響インピーダンスの値が近い材料が選択させることが好ましい。また、衝撃波の伝播によって破損しにくい、延性を有する材料が選択されることが好ましい。また、熱伝導率が高い材料であることが好ましい。好ましい材料の一例は、金属材料、特にアルミニウムやアルミニウム合金である。すなわち、圧力伝播層23はアルミニウムやアルミニウム合金で形成されたアルミニウム基板を含んでよい。本実施形態では、圧力伝播層23がアルミニウム合金(A2017)で形成されたアルミニウム基板で形成されている場合を例示して説明する。
【0036】
圧力伝播層23は、1mm以上9mm程度の厚みに形成されるとよい。本実施形態では一例として圧力伝播層23の厚みを3mmとすることができる。圧力伝播層23が1mmよりも薄くなると、エネルギー吸収層22で生じた衝撃波が適切に薄膜形成基板1に伝播しない場合がある。また、圧力伝播層23が変形してしまう場合がある。圧力伝播層23が10mmよりも厚くなると、衝撃波が圧力伝播層23で減衰し、適切な強度の衝撃波が適切に薄膜形成基板1に伝播しない場合がある。
【0037】
エネルギー吸収層22は、レーザー光Lを受光して衝撃波を発生する層である。エネルギー吸収層22は、圧力伝播層23の面上に塗布などにより形成される。エネルギー吸収層22は、一例として、レーザー光Lによって供給されたエネルギーを熱に変換し、当該熱により自己を急激に蒸散させて急激な膨張をすることにより衝撃波を発生する。
【0038】
本実施形態のエネルギー吸収層22は、黒鉛と油成分(グリス)とを含む粘性流体で形成されている。エネルギー吸収層22が黒鉛を含むことにより、レーザー光Lを効率よく熱エネルギーに変換できる。エネルギー吸収層22が油成分を含むことにより、エネルギー吸収層22を流動可能な粘性流体とすることができる。
【0039】
本実施形態において、エネルギー吸収層22は、試験用基板2の内外を循環する粘性流体で形成されている。
図1には、評価装置100が、粘性流体を貯留するタンク93と、粘性流体を試験用基板2の内外に循環させるポンプ94とを備える場合を示している。ポンプ94により、供給路F1を経て粘性流体が試験用基板2に供給され、エネルギー吸収層22(
図2参照)としての粘性流体を順次置き換える。置き換えられた粘性流体は、排出路F2を経て試験用基板2から排出される。試験用基板2では、このようにして、エネルギー吸収層22の粘性流体を循環させて良い。
【0040】
図5に示すエネルギー吸収層22は、50μm以上200μm以下に形成されるとよい。エネルギー吸収層22が50μmよりも薄い場合は、十分な強度の衝撃波を生じさせることができない場合がある。特にポンプ94(
図1参照)で試験用基板2の内外に粘性流体を循環させる場合において、エネルギー吸収層22が50μmよりも薄い場合は、粘性流体を循環させる際の圧力が増大し、ポンプ94の動力が不足して適切な粘性流体の循環を確保できない場合がある。エネルギー吸収層22が200μmよりも厚い場合は、エネルギー吸収層22が衝撃波を吸収してしまい、十分な強度の衝撃波を圧力伝播層23へ伝播できない場合がある。
【0041】
エネルギー吸収層22が粘性流体であることで、レーザー光Lを繰り返し受光しても、エネルギー吸収層22は、繰り返し衝撃波を生ずることができる。すなわち、エネルギー吸収層22は、レーザー光Lの受光によりその一部が蒸散して穴状ないし空隙状などの受光痕を形成される。しかし、エネルギー吸収層22が流体であることにより、その受光痕を埋める自己再生(以下、単に自己再生と記載する)が可能となる。これにより、エネルギー吸収層22による繰り返しの衝撃波の発生が可能となる。この自己再生は、特にポンプ94(
図1参照)で試験用基板2の内外に粘性流体を循環させる場合に、効率よく(短時間、かつ確実に)行われる。
【0042】
固定層21は、ガラスなどのレーザー光Lを透過可能で固形状の層である。固定層21は、エネルギー吸収層22における、圧力伝播層23の反対側の面上に配置される。本実施形態では、固定層21として板状のサファイアガラスを用いた場合を例示して説明する。固定層21は、圧力伝播層23との間にエネルギー吸収層22を挟み込んで、エネルギー吸収層22を固定層21と圧力伝播層23との間に保持する。固定層21の厚みは、3mm以上10mm以下に形成されるとよい。固定層21の厚みは、4mm以上6mm以下とすると好ましい。例えば、固定層21の厚みを5mmとしてよい。固定層21が3mmよりも薄すぎると固定層21が脆弱となりハンドリング性が悪くなる場合がある。固定層21の厚みが厚くなりすぎると、レーザー光源91が照射し、レンズ91aで集光されたレーザー光L(以上、
図1参照)が歪められ(例えば、集光されていたレーザー光Lが拡散し)てしまう場合がある。レーザー光Lが歪められると、固定層21に対して適切にエネルギーを供給できない恐れが生ずる場合がある。
【0043】
接着層24は、薄膜形成基板1を試験用基板2に接着するための層である。接着層24は、圧力伝播層23における、エネルギー吸収層22の反対側の面上に配置される。接着層24は、圧力伝播層23や薄膜形成基板1と音響インピーダンスの値が近く、薄膜形成基板1を接着する機能を有する材料を用いる。本実施形態では、接着層24がエポキシ樹脂である場合を例示して説明する。
【0044】
接着層24は、圧力伝播層23の面上に塗布などにより形成される。接着層24は、薄膜形成基板1を試験用基板2に接着する直前に、圧力伝播層23の面上に形成するとよい。試験用基板2は、接着層24の表面に薄膜形成基板1における薄膜11の表面を接着されて、薄膜形成基板1を装着される。
【0045】
図1に示すように、保持容器Cは、薄試験片Tを固定して保持する保持具である。なお、
図1では、保持容器C及びこれに保持された試験片Tを模式的に斜視図で示し、中央部分を縦方向の断面図として示している。保持容器Cは、一例として、試験片Tの外周部を囲うようにして試験片Tを保持して良い。保持容器Cは、試験片Tを厚み方向に挟み込んで保持可能なものであることが好ましい。保持容器Cは、試験片Tの中央部分の両面を外部に開放している。これにより、試験片Tはレーザー光源91から照射されたレーザー光Lを受光可能となる。また、試験片Tを撮像装置92により観察可能となる。
【0046】
レーザー光源91は、上述のごとく、試験片Tに向けてレーザー光Lを照射する光源である。レーザー光源91は、所定の強度のレーザー光Lを所定時間照射できるものであれればよい。本実施形態では、レーザー光源91がNd-Yagレーザーの光源であり、所定強度及び所定時間のレーザー光Lとしてのレーザーパルスを照射可能な光源である場合を例示して説明する。レーザー光源91は、レーザー光Lとして、パルスのエネルギーが50mJ以上の出力が可能であり、パルス幅が5nm以上7nm以下の範囲で調整可能であるとよい。
【0047】
レーザー光源91は、レーザー光Lを、試験片Tにおける試験用基板2の側(固定層21)の側に向けて照射する。レーザー光Lは、試験片Tに対して例えば垂直に照射してもよいし、斜めに照射してもよい。
【0048】
撮像装置92は、試験片Tを撮像して光学的な観察を実現する装置である。撮像装置92として、いわゆるカメラを用いてよい。撮像装置92は、光学系として、顕微鏡又は顕微鏡に対応する拡大レンズシステムを備えてよい。撮像装置92は、試験片Tにおける薄膜形成基板1(基板10)の側を撮像する。本実施形態では、基板10が透明基板であるため、撮像装置92は、基板10における薄膜11の反対側の面を介して薄膜11と基板10との界面を撮像することにより、薄膜11と基板10との界面を光学的に観察可能である。
【0049】
評価装置100による薄膜密着強度評価について、
図1及び
図3を参照しつつ説明する。
【0050】
図1に示すように、試験片Tを保持容器Cに装着する。そして、
図3に示すように、レーザー光源91からレーザー光Lをエネルギー吸収層22に向けて照射する(
図3(a)参照)。レーザー光Lの照射により、エネルギー吸収層22の一部が急激に蒸散して気泡Bを生ずる(いわゆる、レーザーアブレーション)。そして、この気泡Bが生ずる際に衝撃波Wとしての圧縮波W1が生ずる(
図3(b)参照)。圧縮波W1は、圧力伝播層23、接着層24を介して薄膜形成基板1に伝播する。すなわち、レーザー光Lのエネルギーが気泡Bの生成を介して衝撃波Wのエネルギーに変換される。
【0051】
圧縮波W1の伝播の際、圧力伝播層23はアルミニウム基板といった延性を有する材料で形成されているため、圧縮波W1の伝播の際、圧力伝播層23は破損を免れる(破損を防止されている)。また、圧力伝播層23は衝撃波の減衰が生じにくく、且つ、エネルギー吸収層22や接着層24と音響インピーダンスの値が近い材料であるため、圧縮波W1の減衰(衝撃波Wのエネルギーの損失)を抑制できる。また、圧力伝播層23の熱伝導率が高いため、エネルギー吸収層22や圧力伝播層23の冷却が速やかに進行し、繰り返しのレーザー光源91からレーザー光Lの照射(衝撃波Wの発生の繰り返し)が可能となる。
【0052】
圧縮波W1が基板10に到達し、さらに基板10における薄膜11の反対側の表面まで達すると、圧縮波W1は基板10の表面で自由端反射する。圧縮波W1は、この反射により、衝撃波Wとしての膨張波W2となって、基板10から薄膜11へ向けて伝播する(
図3(c)参照)。なお、基板10はエネルギー吸収層22と直接接しておらず、圧力伝播層23及び接着層24を介して圧縮波W1を伝播されるため、局所的に大きなエネルギーを受けることがない。そのため、基板10の圧縮波W1による破損は抑制される。
【0053】
基板10から薄膜11へ向けて膨張波W2が伝播し、膨張波W2が基板10と薄膜11との界面に達すると、膨張波W2のエネルギーにより、基板10と薄膜11との界面に、当該界面を剥離させる力としての引張応力が生ずる。基板10と薄膜11との界面は、膨張波W2が反射した基板10の表面から十分な距離だけ離れているため、膨張波W2が基板10と薄膜11との界面に達した状態では、上記引張応力が十分に励起される。そのため、本実施形態に係る薄膜密着強度評価方法では、衝撃波Wのエネルギー(レーザー光Lのエネルギー)を過剰に大きくする必要がなくなる。
【0054】
図6には、本実施形態のごとく、基板10と薄膜11との界面が、膨張波W2が反射する基板10の表面から十分な距離だけ離れている場合における引張応力(図中の「本実施形態」)と、特許文献1に記載された従来技術のごとく、基板と薄膜との界面が、衝撃波が反射する面から十分な距離だけ離れていない場合(特許文献1では薄膜の表面から基板との界面までの距離が短い場合に対応、図中の従来技術)における引張応力と、の大きさの違いをグラフで示している。
図6では、これら界面に作用する引張応力を界面負荷応力として縦軸に、レーザー光Lを照射した時点を時間0(ゼロ)として経過した時間を横軸に示している。本実施形態では、レーザー光Lを照射後、所定時間を経て、マイナス側からプラス側に渡る大きな振幅の界面負荷応力が検出されている。これに対し、従来技術では、ごく小さな振幅が検出されたに過ぎない。このように、本実施形態においては、従来技術とは比較にならないほどの大きな引張応力(
図6では界面負荷応力)を界面に作用させることができるのである。
【0055】
基板10と薄膜11との界面が膨張波W2のエネルギーで剥離する程度の密着強度であれば、当該界面が剥離し、剥離痕Pが形成される(
図3(d)参照)。剥離痕Pは、撮像装置92により光学的に観察できる。基板10と薄膜11との界面が、膨張波W2のエネルギーで剥離しない密着強度であれば、当該界面に変化が生じない。
【0056】
このようにして評価装置100は、基板10と薄膜11との界面が膨張波W2のエネルギーで剥離する程度の密着強度であるか否かの評価を実現する。なお、この密着強度評価においては、圧力伝播層23や基板10の破損が防止ないし抑制されているため密着強度の評価を適切に行える。
【0057】
なお、膨張波W2のエネルギーは、衝撃波Wのエネルギーと相関する。すなわち、膨張波W2のエネルギーは、レーザー光Lのエネルギーに相関する。したがって、評価装置100では、レーザー光Lのエネルギーの総量(例えば、レーザー光Lのパルスの長さ)や単位時間当たりのエネルギーの大きさ(例えば、レーザー光Lの強度)を変更することにより、基板10と薄膜11との界面に加えるエネルギーの大きさを変更して、密着強度を評価することができる。すなわち、レーザー光Lのエネルギーを変化させることにより膨張波W2のエネルギーを変化させて評価を行えば、基板10と薄膜11との界面がどの程度のエネルギーで剥離する程度の密着強度であるか、すなわち、密着強度の強さを推し量る評価を実現できる。このようにして評価装置100は、基板10と薄膜11との界面の密着強度の強さを推し量る評価も実現できる。
【0058】
上記密着強度の評価に際し、撮像装置92を用いると、基板10と薄膜11との界面の剥離状態を光学的に、例えば画像として把握できるため好ましい。例えば、基板10と薄膜11との界面の剥離部分の面積に基づいて密着強度を評価したり、薄膜11との界面の剥離部分の形状に基づいて、密着強度の一例として密着状態や剥離時の特性を評価したりすることができる。
【0059】
(実施例)
図7、
図8を参照しつつ、評価装置100による密着評価の実施例を説明する。
【0060】
(実施例1)
図7には、二酸化ケイ素基板上に銅の膜を蒸着により形成した薄膜形成基板の薄膜密着強度評価結果を示している。
図7(a)は、剥離前の薄膜形成基板を、二酸化ケイ素基板の側から界面の状態を撮像した画像である。
図7(b)は、初回のレーザー光Lのパルスのエネルギーを200mJとし、レーザー光Lのパルスのエネルギーを200mJから10mJずつ上昇させつつ界面に剥離が生じるまで複数回の照射を繰り返し、260mJのレーザー光Lのパルスを照射した際に生じた(レーザー光Lのパルスの照射後の)界面の剥離状態を撮像した画像である。すなわち、
図7(a)は、レーザー光Lの照射前から250mJのレーザー光Lのパルスを照射した時点までの界面の状態を示している。
【0061】
図7(a)の画像では、画像全体にわたり濃淡が均一である。これに対し、
図7(b)の画像では、画像の中央部分において、外周部分に比べて色調が薄くなっている部分として剥離痕を把握できる。すなわち、画像の中央部分において界面の剥離が生じていることがわかる。これにより、実施例1の薄膜形成基板は、250mJを超え、少なくとも260mJのエネルギーを供給すると界面に剥離が生ずる程度の密着強度である、と評価できる。
【0062】
(実施例2)
図8には、二酸化ケイ素基板上に銅の膜とチタンの膜とを蒸着により形成した薄膜形成基板の薄膜密着強度評価結果を示している。
図8(a)は、剥離前の薄膜形成基板を、二酸化ケイ素基板の側から界面の状態を撮像した画像である。
図8(b)は、実施例1の場合と同様に、レーザー光Lのパルスのエネルギーを200mJから10mJずつ上昇させつつ界面に剥離が生じるまで複数回の照射を繰り返し、360mJのレーザー光Lのパルスを照射した際に生じた(レーザー光Lの照射後)界面の剥離状態を撮像した画像である。すなわち、
図8(a)は、レーザー光Lの照射前から350mJのレーザー光Lのパルスを照射した時点までの界面の状態を示している。
【0063】
図8(a)の画像では、画像全体にわたり濃淡が均一である。これに対し、
図8(b)の画像の中央部分には、まだら状の剥離痕が観察できる。これにより、実施例2の薄膜形成基板は、350mJを超え、少なくとも360mJのエネルギーを供給すると界面に剥離が生ずる程度の密着強度である、と評価できる。
【0064】
なお、試験用基板2に二酸化ケイ素基板のみを張り付けて実施例1,2と同様にレーザー光Lを照射した場合、400mJのレーザー光Lのパルスを照射するまで二酸化ケイ素基板に破損が生じなかった。
図9に、390mJのレーザー光Lのパルスを照射した時点までの二酸化ケイ素基板の状態を撮像した画像(
図9(a)参照)と、400mJのレーザー光Lのパルスを照射した結果破損した二酸化ケイ素基板の状態を撮像した画像(
図9(b)参照)とを示す。400mJのレーザー光Lのパルスを照射するまで二酸化ケイ素基板に破損が生じなかった点を考慮すると、実施例1,2で説明した剥離痕が、二酸化ケイ素基板の破損ではないことは明らかである。
【0065】
以上のようにして、薄膜密着強度評価方法及びこれを実現する薄膜密着強度評価装置を提供することができる。
【0066】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、実施例において、レーザー光Lのパルスのエネルギーを少しずつ(10mJずつ)上昇させつつ界面に剥離が生じるまで複数回の照射を繰り返し、界面に剥離が生じた際の界面の剥離状態を撮像しておこなった薄膜密着強度評価結果を説明した。しかし、薄膜密着強度評価はこのような態様に限られない。例えば、同じエネルギーのレーザー光Lのパルスを繰り返し照射して剥離が生じるまでの照射回数を比較するような疲労試験を薄膜密着強度評価として行うこともできる。また、薄膜密着強度評価に際しては、レーザー光Lのパルスの照射の繰り返しを行わず、所定のエネルギーのレーザー光Lのパルスを一回だけ照射して剥離が生じるか否かを評価してもよい。
【0067】
(2)上記実施形態では、剥離痕Pを撮像装置92により光学的に観察する場合を例示して説明した。しかし、撮像装置92は必須ではない。例えば、レーザー光Lの照射毎に保持容器Cから試験片Tを取り出して、顕微鏡観察を行ってもよい。また、剥離痕Pの観察は、光学的な観察(目視を含む)に限られず、超音波エコーやX線による透過観察を排除しない。
【0068】
(3)上記実施形態では、基板10が光学的に透明である場合を例示して説明した。しかし、基板10が透明であることは必須ではない。基板10が不透明であっても、試験片Tから薄膜形成基板1を剥離すれば薄膜11側から界面を観察することができる場合があるし、超音波エコーやX線による透過観察により界面やその剥離痕Pを観察してもよい。
【0069】
(4)上記実施形態では、圧力伝播層23がアルミニウム基板を含む場合を例示して説明した。しかし、圧力伝播層23はアルミニウム基板に限られない。圧力伝播層23は、シリコンや二酸化ケイ素であってもよい。この場合であっても、基板10と薄膜11との界面が、膨張波W2が反射する基板10の表面から十分な距離だけ離れていることには変りなく、圧力伝播層23に伝播させる衝撃波Wのエネルギーを大きくしなくても、膨張波W2が基板10と薄膜11との界面に達した状態では、界面に十分な引張応力を励起することができる。これにより、従来技術の問題点である圧力伝播層23の破損は抑制することができる。
【0070】
(5)上記実施形態では、エネルギー吸収層22が粘性流体で形成されている場合を説明した。しかし、エネルギー吸収層22が粘性流体で形成されることは必須ではない。エネルギー吸収層22は、固体層、例えば、厚みの薄いアルミニウム層で合ってあってもよい。
【0071】
(6)上記実施形態では、ポンプ94により、供給路F1を経て粘性流体が試験用基板2に供給され、エネルギー吸収層22としての粘性流体を順次置き換えられること、また、置き換えられた粘性流体は、排出路F2を経て試験用基板2から排出されることを説明した。しかし、ポンプ94や試験用基板2のエネルギー吸収層22における粘性流体の置き換えは必須ではない。自己再生は、ポンプ94やエネルギー吸収層22における粘性流体の置き換えが行われなくても機能する。
【0072】
なお、上記実施形態(別実施形態を含む、以下同じ)で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することが可能であり、また、本明細書において開示された実施形態は例示であって、本発明の実施形態はこれに限定されず、本発明の目的を逸脱しない範囲内で適宜改変することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、薄膜密着強度評価方法、薄膜密着強度評価装置及び試験用基板に適用できる。
【符号の説明】
【0074】
1 薄膜形成基板
2 試験用基板
10 基板
11 薄膜
21 固定層
22 エネルギー吸収層
23 圧力伝播層
24 接着層
91 レーザー光源
91a レンズ
92 撮像装置
93 タンク
94 ポンプ
100 評価装置(薄膜密着強度評価装置)
B 気泡
C 保持容器
L レーザー光
P 剥離痕
T 試験片
W 衝撃波
W1 圧縮波
W2 膨張波