(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182953
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】鉄道車両用電力変換装置
(51)【国際特許分類】
B61C 17/00 20060101AFI20221201BHJP
H01L 23/467 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B61C17/00 E
H01L23/46 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021181949
(22)【出願日】2021-11-08
(31)【優先権主張番号】P 2021090558
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(74)【代理人】
【識別番号】100202728
【弁理士】
【氏名又は名称】三森 智裕
(72)【発明者】
【氏名】森 義郎
(72)【発明者】
【氏名】滝沢 将光
(72)【発明者】
【氏名】柴田 美里
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA04
5F136BA22
5F136BA32
5F136CC17
(57)【要約】
【課題】電力変換装置用筐体の凹状部に配置される冷却フィンに走行風を流入させやすくすることが可能な鉄道車両用電力変換装置を提供する。
【解決手段】この電力変換装置100は、鉄道車両本体101aの下部101bに取り付けられるとともに内部に電力変換部1を収容し、内側に窪む凹状部2が設けられている筐体10と、凹状部2に、鉄道車両本体101aの走行方向(冷却風の流れ方向)に沿って延びるとともに互いに間隔を隔てて配置され、鉄道車両本体101aの走行風により電力変換部1を冷却する複数の板状の冷却フィン3と、を備える。また、電力変換装置100は、凹状部2近傍の筐体10の表面21aで、かつ、冷却フィン3の走行風の上流側に設けられ、凹状部2が窪む方向とは反対側に突出する突起部4を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両本体の下部に取り付けられるとともに内部に電力変換部を収容し、内側に窪む凹状部が設けられている電力変換部用筐体と、
前記凹状部に、前記鉄道車両本体の走行方向に沿って延びるとともに互いに間隔を隔てて配置され、前記鉄道車両本体の走行風により前記電力変換部を冷却する複数の板状の冷却フィンと、
前記凹状部近傍の前記電力変換部用筐体の表面で、かつ、前記冷却フィンの走行風の上流側に設けられ、前記凹状部が窪む方向とは反対側に突出する突起部と、を備える、鉄道車両用電力変換装置。
【請求項2】
前記突起部は、前記突起部の下流側に旋回流を発生させる形状を有している、請求項1に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項3】
前記突起部は、前記凹状部近傍の前記電力変換部用筐体の前記表面と交差するように延びる一対の第1面と、前記一対の第1面同士を接続するように設けられる第2面とを有し、かつ、前記走行方向に沿って延びるとともに走行風の下流に向かって先細る形状を有している第1突起を含む、請求項2に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項4】
前記一対の第1面は、走行風の下流に向かって徐々に互いに近づくように設けられており、
前記第2面は、前記一対の第1面同士を接続するとともに平坦面形状を有する、請求項3に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項5】
前記凹状部は、前記電力変換部用筐体の底面に設けられており、
前記突起部は、前記電力変換部用筐体が前記鉄道車両本体の前記下部に取り付けられた状態で、前記凹状部近傍の前記電力変換部用筐体の前記底面から下方に突出するように設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項6】
前記凹状部は、前記電力変換部用筐体の側面に設けられており、
前記突起部は、前記電力変換部用筐体が前記鉄道車両本体の前記下部に取り付けられた状態で、前記凹状部近傍の前記電力変換部用筐体の前記側面から側方に突出するように設けられている、請求項1~4のいずれか1項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項7】
前記突起部は、前記冷却フィンに対して、前記凹状部の前記走行方向の両側に設けられている、請求項1~6のいずれか1項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項8】
前記凹状部は、前記鉄道車両本体の前記走行方向において前記凹状部の中央に設けられ、前記冷却フィンが配置される平坦部と、前記平坦部の走行風の上流側および下流側の両方に隣接して配置される一対の傾斜面部とを含み、
前記突起部は、前記一対の傾斜面部近傍の各々に設けられている、請求項7に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項9】
前記突起部の少なくとも一部は、前記平坦部とは反対側の前記傾斜面部の端部近傍に設けられている、請求項8に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項10】
前記突起部は、前記突起部の少なくとも一部が前記傾斜面部の表面に設けられているとともに、前記走行方向に延び、かつ、前記走行方向の下流に行くにしたがって、前記傾斜面部の表面に設けられる前記突起部の部分の高さが大きくなる形状を有している、請求項8または9に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項11】
前記突起部は、前記複数の冷却フィンが設けられている第1領域と隣り合う第2領域において、前記複数の冷却フィンが並ぶ方向に沿って複数並んで配置されている、請求項1~10のいずれか1項に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項12】
前記突起部は、前記複数の突起部が並ぶ方向における前記第2領域の端部に設けられ、かつ、前記走行方向に沿って延びるとともに走行風の下流に向かって先細る形状を有している第2突起を含む、請求項11に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項13】
前記突起部は、鋭角な角部が設けられていない曲面形状を有している、請求項2に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項14】
前記突起部は、半球面形状を有する、請求項13に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【請求項15】
曲面形状を有する前記突起部は、プレス加工により前記凹状部の近傍の前記電力変換部用筐体の前記表面と一体的に形成されている、請求項13または14に記載の鉄道車両用電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄道車両用電力変換装置に関し、特に、走行風により電力変換部を冷却する冷却フィンを備える鉄道車両用電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行風により電力変換部を冷却する冷却フィンを備える鉄道車両用電力変換装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の鉄道車両用電力変換装置は、電力変換装置本体の外周面から外部に、かつ、下向きに突出するように設けられる冷却器の放熱部を備える。冷却器は、電力変換装置本体の凹状部に取り付けられている。放熱部は、鉄道車両の走行方向と略平行に延びる複数の放熱フィンを含む。凹状部は、電力変換装置本体の底面において上方に窪むように設けられている。鉄道車両が走行することによって生じる走行風が冷却風として凹状部に配置される冷却フィンに流入することで、電力変換装置で発生する熱が大気に放熱される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1に記載されている鉄道車両用電力変換装置では、電力変換装置本体(電力変換装置用筐体)の底面において上方に窪むように設けられている凹状部に放熱フィン(冷却フィン)が取り付けられている。この場合、凹状部が上方に窪むことによって地面と鉄道車両との間の走行風が流れる流路が急激に拡大されることに起因して、走行風が凹状部に入りにくく、凹状部(放熱フィン)の下方を通過するように流れると考えられる。この場合、凹状部の内側と外側(地面側)とにおいて風速差が生じることに起因して、中心軸が枕木方向に沿って延びるように形成され、空気の淀み(滞留)の要因となる空気の渦が凹状部に生じる。凹状部に渦が生じた場合、走行風が放熱フィンに流入することが妨げられる。したがって、電力変換装置用筐体の凹状部に配置される放熱フィン(冷却フィン)に走行風を流入させやすくすることが可能な鉄道車両用電力変換装置が望まれている。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、電力変換装置用筐体の凹状部に配置される冷却フィンに走行風を流入させやすくすることが可能な鉄道車両用電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の一の局面による鉄道車両用電力変換装置は、鉄道車両本体の下部に取り付けられるとともに内部に電力変換部を収容し、内側に窪む凹状部が設けられている電力変換部用筐体と、凹状部に、鉄道車両本体の走行方向に沿って延びるとともに互いに間隔を隔てて配置され、鉄道車両本体の走行風により電力変換部を冷却する複数の板状の冷却フィンと、凹状部近傍の電力変換部用筐体の表面で、かつ、冷却フィンの走行風の上流側に設けられ、凹状部が窪む方向とは反対側に突出する突起部と、を備える。なお、凹状部近傍とは、凹状部そのものと凹状部の付近の部分との両方を含む意味である。
【0008】
この発明の一の局面による鉄道車両用電力変換装置では、上記のように、凹状部近傍の電力変換部用筐体の表面で、かつ、冷却フィンの走行風の上流側に設けられ、凹状部が窪む方向とは反対側に突出する突起部が備えられる。これにより、走行風の流れの方向が突起部により変えられることによって、走行風の流れに乱れを生じさせることができる。その結果、走行風の流れが乱れることによって、凹状部に生じる空気の淀み(滞留)の要因となる空気の渦を小さくすることができる。これにより、凹状部に生じる空気の渦により走行風が冷却フィンに流入することが妨げられるのを抑制することができる。その結果、鉄道車両本体の下部の凹状部に配置される冷却フィンに走行風を流入させやすくすることができる。また、冷却フィンに走行風が流入されやすくなることによって、冷却フィンによる電力変換部の冷却効率を向上させることができる。
【0009】
また、電力変換部用筐体に突起部が設けられていることによって、電力変換部用筐体を鉄道車両本体から取り外して突起部のメンテナンスを行うことができる。これにより、鉄道車両本体に電力変換部用筐体が取り付けられた状態で突起部のメンテナンスを行う場合に比べて、突起部のメンテナンスを容易化することができる。
【0010】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、突起部は、突起部の下流側に旋回流を発生させる形状を有している。このように構成すれば、凹状部に旋回流を発生させることによって、凹状部内の空気が旋回流により攪拌されるように流れに乱れを生じさせることができるので、凹状部に生じる空気の渦を効果的に小さくすることができる。その結果、冷却フィンに走行風をより流入させやすくすることができる。これにより、冷却フィンによる電力変換部の冷却効率をより向上させることができる。
【0011】
この場合、好ましくは、突起部は、凹状部近傍の電力変換部用筐体の表面と交差するように延びる一対の第1面と、一対の第1面同士を接続するように設けられる第2面とを有し、かつ、走行方向に沿って延びるとともに走行風の下流に向かって先細る形状を有している第1突起を含む。このように構成すれば、第1突起の先細る形状により、第1突起の一対の第1面に沿って流れる走行風が一対の第1面の先端側で互いに交差しやすくなるので、旋回流を容易に発生させることができる。
【0012】
上記突起部が一対の第1面と第2面とを有する鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、一対の第1面は、走行風の下流に向かって徐々に互いに近づくように設けられており、第2面は、一対の第1面同士を接続するとともに平坦面形状を有する。このように構成すれば、第2面に沿って流れる走行風と一対の第1面に沿って流れる走行風との速度差、および、一対の第1面の一方に沿って流れる走行風と一対の第1面の他方に沿って流れる走行風と第2面に沿って流れる走行風との角度差の両方により、より容易に旋回流を発生させることができる。
【0013】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、凹状部は、電力変換部用筐体の底面に設けられており、突起部は、電力変換部用筐体が鉄道車両本体の下部に取り付けられた状態で、凹状部近傍の電力変換部用筐体の底面から下方に突出するように設けられている。このように構成すれば、電力変換部用筐体の底面側を流れる走行風を、突起部により、凹状部に配置される冷却フィンに流入させやすくすることができる。
【0014】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、凹状部は、電力変換部用筐体の側面に設けられており、突起部は、電力変換部用筐体が鉄道車両本体の下部に取り付けられた状態で、凹状部近傍の電力変換部用筐体の側面から側方に突出するように設けられている。このように構成すれば、電力変換部用筐体の側面側を流れる走行風を凹状部に配置される冷却フィンに流入させやすくすることができる。また、電力変換部用筐体の側面側は、電力変換部用筐体の底面側に比べて作業者がメンテナンス作業を行いやすいので、作業者が突起部のメンテナンスを行うのを容易化することができる。
【0015】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、突起部は、冷却フィンに対して、凹状部の走行方向の両側に設けられている。このように構成すれば、鉄道車両本体の走行方向によらず、突起部を冷却フィンの上流側に配置することができる。
【0016】
この場合、好ましくは、凹状部は、鉄道車両本体の走行方向において凹状部の中央に設けられ、冷却フィンが配置される平坦部と、平坦部の走行風の上流側および下流側の両方に隣接して配置される一対の傾斜面部とを含み、突起部は、一対の傾斜面部近傍の各々に設けられている。このように構成すれば、一対の傾斜面部近傍の各々において突起部により走行風の流れを乱れさせることができる。なお、傾斜面部近傍とは、傾斜面部そのものと傾斜面部の付近の部分との両方を含む意味である。
【0017】
上記凹状部が平坦部と一対の傾斜面部とを含む鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、突起部の少なくとも一部は、平坦部とは反対側の傾斜面部の端部近傍に設けられている。このように構成すれば、傾斜面部の端部近傍において突起部の少なくとも一部により走行風の流れを乱れさせることができる。また、傾斜面部の端部近傍は、電力変換部用筐体の形状が変化する部分であるので、走行風の流れが変化しやすい。これにより、走行風の流れが変化しやすい上記端部に突起部の少なくとも一部が設けられていることによって、走行風の流れをより効果的に変化させることができる。これらの結果、走行風の流れをより効果的に乱れさせることができる。なお、傾斜面部の端部近傍とは、傾斜面部の端部そのものと傾斜面部の端部の付近の部分との両方を含む意味である。
【0018】
上記凹状部が平坦部と一対の傾斜面部とを含む鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、突起部は、突起部の少なくとも一部が傾斜面部の表面に設けられているとともに、走行方向に延び、かつ、走行方向の下流に行くにしたがって、傾斜面部の表面に設けられる突起部の部分の高さが大きくなる形状を有している。このように構成すれば、突起部のうちの下流側の部分が凹状部の下方側に近い位置に配置されるので、凹状部の下方側を流れる走行風の流れを容易に乱れさせることができる。
【0019】
上記一の局面による鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、突起部は、複数の冷却フィンが設けられている第1領域と隣り合う第2領域において、複数の冷却フィンが並ぶ方向に沿って複数並んで配置されている。このように構成すれば、突起部が1つのみ設けられている場合に比べて、複数の冷却フィンが並ぶ方向において、冷却フィンに流入する走行風量に偏りが生じるのを抑制することができる。
【0020】
この場合、好ましくは、突起部は、複数の突起部が並ぶ方向における第2領域の端部に設けられ、かつ、走行方向に沿って延びるとともに走行風の下流に向かって先細る形状を有している第2突起を含む。このように構成すれば、複数の突起部が並ぶ方向における第2領域の端部側において、第2突起により、走行風の流れを変化させることができる。
【0021】
上記突起部が旋回流を発生させる形状を有する鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、突起部は、鋭角な角部が設けられていない曲面形状を有している。このように構成すれば、曲面形状は鋭角な角部に比べて応力が集中しにくいので、突起部において応力が局所的に集中するのを抑制することができる。
【0022】
この場合、好ましくは、突起部は、半球面形状を有する。このように構成すれば、突起部の全体が曲面形状になるので、突起部において応力が局所的に集中するのをより抑制することができる。
【0023】
上記突起部が曲面形状を有する鉄道車両用電力変換装置において、好ましくは、曲面形状を有する突起部は、プレス加工により凹状部の近傍の電力変換部用筐体の表面と一体的に形成されている。このように構成すれば、突起部において応力が局所的に集中するのが抑制されていることによって、上記表面と突起部とを一体的に形成する際に、突起部が応力に起因して破損するのを抑制することができる。また、上記表面と突起部とが一体的に形成されているので、突起部が上記表面から脱落するのを抑制することができる。また、突起部が上記表面と別個に設けられている場合に比べて、鉄道車両用電力変換装置の部品点数を低減することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上記のように、電力変換装置用筐体の凹状部に配置される冷却フィンに走行風を流入させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】第1実施形態による鉄道車両を示した概略側面図である。
【
図2】第1実施形態による電力変換装置の走行方向に沿った断面図である。
【
図3】第1実施形態による電力変換装置を下方側から見た斜視図である。
【
図4】第1実施形態による電力変換装置の下面図である。
【
図5】第1実施形態による突起部を下方側から見た拡大斜視図である。
【
図6】第1実施形態による第1突起の拡大下面図である。
【
図7】第1実施形態による第2突起の拡大下面図である。
【
図8】
図2の900―900線に沿った断面図である。
【
図9】第2実施形態による電力変換装置の枕木方向に沿った断面図である。
【
図10】
図9の910―910線に沿った断面図である。
【
図11】第2実施形態による凹状部を側方から見た図である。
【
図12】第3実施形態による電力変換装置の枕木方向に沿った断面図である。
【
図13】第4実施形態による凹状部近傍の拡大図である。
【
図14】第4実施形態による突起部を下方側から見た拡大斜視図である。
【
図16】第2実施形態の第1変形例による電力変換装置の枕木方向に沿った断面図である。
【
図17】第2実施形態の第2変形例による電力変換装置の枕木方向に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
[第1実施形態]
図1~
図8を参照して、第1実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。なお、電力変換装置100は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。
【0028】
図1に示すように、電力変換装置100は、インバータ等の電力変換部1を備える。また、電力変換装置100は、鉄道車両101の鉄道車両本体101aの下部101bに取り付けられるとともに内部に電力変換部1を収容し、内側に窪む凹状部2(
図2参照)が設けられている筐体10を備える。筐体10は、複数の金具102(
図2参照)により鉄道車両本体101aの下部101bに取り付けられている。また、凹状部2は、筐体10の底面11に設けられている。なお、筐体10は、特許請求の範囲の「電力変換部用筐体」の一例である。
【0029】
なお、鉄道車両101は、複数の車両が編成された状態で走行する鉄道車両である。鉄道車両101は、
図1に示すように、交流電源または直流電源としての架線103から供給される電力により走行するように構成されている。たとえば、鉄道車両101は、在来線の電車や高速鉄道車両である。以下では、鉄道車両101を交流電気車としての高速鉄道車両を例にして説明する。また、鉄道車両101には、パンタグラフ101cと、変圧器、誘導電動機および空調機器などの図示しない電気機器とが設けられている。パンタグラフ101cは、架線103から電力を受け取る役割を有する。電力変換部1は、変圧器により変圧されたパンタグラフ101cからの交流電圧を、所望の3相交流電圧および周波数に変換して誘導電動機、空調機器などに出力する役割を有する。
【0030】
筐体10は、鉄道車両本体101aのY方向(枕木方向)の一方側の端部101e(
図8参照)近傍から他方側の端部101f(
図8参照)近傍まで延びるように設けられている。
【0031】
図2に示すように、電力変換装置100は、凹状部2に配置される複数の板状の冷却フィン3を備える。冷却フィン3が凹状部2に配置されることにより、冷却フィン3が鉄道車両101の艤装限界を超えるのを防止することが可能である。複数の冷却フィン3は、鉄道車両本体101aの走行方向(X方向)に沿って延びるとともに互いに枕木方向(Y方向)に間隔を隔てて配置されている。また、複数の冷却フィン3は、鉄道車両本体101aの走行風により電力変換部1を冷却する。複数の冷却フィン3の各々は、鉄道車両本体101aの下部101bから鉄道車両本体101aの外部(大気側)に突出するように設けられている。なお、枕木方向(Y方向)は、走行方向(X方向)と直交する方向である。
【0032】
凹状部2は、冷却フィン3が配置される平坦部20を含む。平坦部20は、鉄道車両本体101aの走行方向(X方向)において凹状部2(および筐体10)の中央に設けられている。また、凹状部2は、平坦部20の走行風の上流側および下流側の両方に隣接して配置される一対の傾斜面部21を含む。すなわち、筐体10の底面11(
図1参照)は、平坦部20と一対の傾斜面部21とを含む。
【0033】
ここで、第1実施形態では、電力変換装置100は、凹状部2近傍の筐体10の表面で、かつ、冷却フィン3の走行風の上流側に設けられ、凹状部2が窪む方向とは反対側に突出する突起部4を備える。具体的には、凹状部2は上方(Z1側)に窪んでいる。すなわち、突起部4は、筐体10が鉄道車両本体101aの下部101bに取り付けられた状態で、凹状部2近傍の筐体10の底面11から下方(Z2側)に突出するように設けられている。また、突起部4は、凹状部2の外部にはみ出さずに、突起部4の全体が凹状部2の内側に収容されるように設けられている。また、突起部4は、筐体10と一体的に形成されている。なお、突起部4は、金属製である。
【0034】
また、第1実施形態では、
図3に示すように、突起部4は、複数の冷却フィン3が設けられている領域S1と隣り合う領域S2において、複数の冷却フィン3が並ぶ方向(Y方向)に沿って複数並んで配置されている。具体的には、冷却フィン3が設けられている領域S1は、突起部4が設けられる領域S2とX方向に沿って並ぶように設けられている。なお、複数の冷却フィン3が並ぶ方向とは、枕木方向である。また、領域S1および領域S2は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1領域」および「第2領域」の一例である。
【0035】
詳細には、複数の冷却フィン3が設けられている領域S1は、Y方向(枕木方向)に沿って2つ並んで設けられている。2つの領域S1の各々は、X方向(走行方向)において領域S2に挟まれるように設けられている。なお、複数の突起部4は、領域S2において互いに間隔を隔てて並んで設けられている。
【0036】
Y方向に並ぶ2つの領域S1は、領域S1同士の間に設けられる第1凸部50によって隔てられている。また、領域S1に対してX方向の両側において、Y方向に並ぶ2つの領域S2は、領域S2同士の間に設けられる第2凸部51によって隔てられている。
【0037】
突起部4は、第1突起40と、第2突起41とを含む。複数の領域S2の各々には、複数の第1突起40と複数の第2突起41とが設けられている。具体的には、複数の領域S2の各々には、複数の第1突起40がY方向に並んで設けられているとともに、Y方向に並んで設けられる複数の第1突起40をY方向の両側から挟むように2つの第2突起41が設けられている。なお、以下の説明で突起部4と記載されている場合は、第1突起40および第2突起41に共通する特徴であるとする。
【0038】
また、第1実施形態では、突起部4は、一対の傾斜面部21の各々に設けられている。すなわち、突起部4が配置される筐体10の表面とは、傾斜面部21に設けられる表面21aである。具体的には、第1突起40の全体が傾斜面部21の表面21aに設けられている。第2突起41は、傾斜面部21と平坦部20とに跨る(
図4参照)ように設けられている。なお、突起部4は、傾斜面部21に直接的に設けられている。
【0039】
また、第1実施形態では、突起部4の少なくとも一部は、平坦部20とは反対側の傾斜面部21の端部21b近傍に設けられている。具体的には、第1突起40は、平坦部20とは反対側の第1突起40の端部40aを含むとともに、端部40aが傾斜面部21の端部21bに設けられるように、傾斜面部21に配置されている。また、第2突起41は、平坦部20とは反対側の第2突起41の端部41aを含むとともに、端部41aが傾斜面部21の端部21bに設けられるように、傾斜面部21と平坦部20とに跨るように配置されている。なお、
図2では傾斜面部21の端部21bが角張っているように図示されているが、傾斜面部21の端部21bがR形状を有していてもよい。
【0040】
また、第1実施形態では、突起部4は、冷却フィン3に対して、凹状部2の走行方向の両側に設けられている。言い換えると、突起部4は、冷却フィン3に対して、走行風の上流側および下流側の各々に設けられている。なお、突起部4の配置および構成(個数等)は、下方側(Z2側)から見て、冷却フィン3(領域S1)を中心にX1側とX2側とで左右対称の関係になっている。
【0041】
また、第1実施形態では、突起部4は、突起部4の少なくとも一部が傾斜面部21の表面21aに設けられているとともに、走行方向に延び、かつ、走行方向の下流に行くにしたがって、傾斜面部21の表面21aに設けられる突起部4の部分の高さ(h1、h2)が大きくなる形状を有している。具体的には、第1突起40の高さh1は、第1突起40の端部40aにおいて0で、かつ、下流側に行くにしたがって徐々に大きくなる。また、第2突起41の高さh2は、第2突起41の端部41aにおいて0である。また、第2突起41のうち傾斜面部21に設けられる部分410(
図4参照)の高さh2は、下流側に行くにしたがって徐々に大きくなる。また、第2突起41のうち平坦部20に設けられる部分411(
図4参照)の高さh2は、一定である。
【0042】
また、第1実施形態では、第1突起40は、一対の面40bと面40cとを有し、かつ、走行方向に沿って延びるとともに走行風の下流に向かって先細る形状を有している。一対の面40bは、凹状部2近傍の筐体10の表面21aと交差するように延びる。また、面40cは、一対の面40b同士を接続するように設けられている。具体的には、
図4に示すように、面40cは、下面視において(Z2方向側から見て)、走行風の下流側の第1突起40の先端部40dを頂点とする略2等辺三角形形状を有している。また、面40bは、側方から見て、走行風の上流に向かって先細る直角三角形形状(
図5参照)を有している。なお、面40bおよび面40cは、それぞれ、第1突起40の側面および下面である。また、面40bおよび面40cは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1面」および「第2面」の一例である。
【0043】
詳細には、一対の面40bは、走行風の下流に向かって徐々に互いに近づくように設けられている。また、面40cは、一対の面40bを接続するとともに平坦面形状を有する。具体的には、一対の面40b同士は、第1突起40の先端部40dにより接続されている。先端部40dは、ピン角状に形成されておらず、所定の面積を有する平面状に形成されている。すなわち、先端部40dは、面取り加工されている。また、面40bと面40cとの間の角部40e(
図5参照)も、ピン角状に形成されておらず、所定の面積を有する平面状に形成されて(面取り加工されて)いる。また、面40cは、水平方向に沿った方向に延びる平坦な面(地面に平行に延びる面)である。
【0044】
具体的には、
図3に示すように、第1突起40の一対の面40bの各々は、傾斜面部21の表面21aから下方(Z2方向側)に延びるように設けられている。すなわち、一対の面40bの各々は、水平方向に延びる第1突起40の面40cと直交するように設けられている。なお、X方向において、第1突起40の先端部40dが設けられる位置と、冷却フィン3が配置される平坦部20とは互いに離間している。
【0045】
また、第1実施形態では、第2突起41は、複数の突起部4が並ぶ方向(Y方向)における領域S2の端部に設けられ、かつ、走行方向に沿って延びるとともに走行風の下流に向かって先細る形状を有している。具体的には、第2突起41は、領域S2におけるY方向の両端に設けられている。
【0046】
第2突起41は、面41bと面41cとを有する。面41bは、傾斜面部21の表面21aと交差するように延びる。また、面41cは、面41bと接続されているとともに、水平方向に沿った方向に延びる平坦な面(地面に平行に延びる面)である。具体的には、
図4に示すように、面41cは、下面視において(Z2方向側から見て)、走行風の下流側の突起部4の先端部41dを頂点とする略直角三角形形状を有している。先端部41dは、ピン角状に形成されておらず、所定の面積を有する平面状に形成されて(面取り加工されて)いる。また、面41bと面41cとの間の角部41e(
図3参照)も、ピン角状に形成されておらず、所定の面積を有する平面状に形成されて(面取り加工されて)いる。
【0047】
また、面41bは、側方から見て、走行風の上流に向かって先細る直角三角形形状(
図3参照)を有している。なお、面41bおよび面41cは、それぞれ、第2突起41の側面および下面である。
【0048】
また、
図4に示すように、第1突起40のX方向における長さL11は、第2突起41のX方向における長さL12よりも小さい。すなわち、第2突起41の先端部41dは、第1突起40の先端部40dよりも冷却フィン3に近い位置に設けられている。なお、第2突起41の先端部41dのY方向における位置は、冷却フィン3のY方向における位置とずれている。
【0049】
また、
図5および
図6に示すように、突起部4は、突起部4の下流側に旋回流を発生させる形状を有している。具体的には、第1突起40において、一対の面40bの一方に沿って流れる走行風f1と、一対の面40bの他方に沿って流れる走行風f2と、面40cに沿って流れる走行風f3とが、第1突起40の下流側(先端部40d側)において互いに交差する(
図6参照)ことにより、旋回流F1が形成される。なお、旋回流F1は、回転軸がX方向に沿って延びる旋回流である。
【0050】
また、
図7に示すように、第2突起41において、面41bに沿って流れる走行風f4と、面41cに沿って流れる走行風f5とが、第2突起41の下流側(先端部41d側)において互いに交差することにより、旋回流F2が形成される。なお、旋回流F2は、回転軸がX方向に沿って延びる旋回流である。
【0051】
(第1実施形態の効果)
第1実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0052】
第1実施形態では、上記のように、突起部4が、凹状部2近傍の筐体10の表面21aで、かつ、冷却フィン3の走行風の上流側に設けられ、凹状部2が窪む方向とは反対側に突出するように、電力変換装置100を構成する。これにより、走行風の流れの方向が突起部4により変えられることによって、走行風の流れに乱れを生じさせることができる。その結果、走行風の流れが乱れることによって、凹状部2に生じる空気の淀み(滞留)の要因となる空気の渦を小さくすることができる。これにより、凹状部2に生じる空気の渦により走行風が冷却フィン3に流入することが妨げられるのを抑制することができる。その結果、鉄道車両本体101aの下部101bの凹状部2に配置される冷却フィン3に走行風を流入させやすくすることができる。また、冷却フィン3に走行風が流入されやすくなることによって、冷却フィン3による電力変換部1の冷却効率を向上させることができる。
【0053】
また、筐体10に突起部4が設けられていることによって、筐体10を鉄道車両本体101aから取り外して突起部4のメンテナンスを行うことができる。これにより、鉄道車両本体101aに筐体10が取り付けられた状態で突起部4のメンテナンスを行う場合に比べて、突起部4のメンテナンスを容易化することができる。
【0054】
また、第1実施形態では、上記のように、突起部4が、突起部4の下流側に旋回流(F1、F2)を発生させる形状を有しているように、電力変換装置100を構成する。これにより、凹状部2に旋回流(F1、F2)を発生させることによって、凹状部2内の空気が旋回流(F1、F2)により攪拌されるように流れに乱れを生じさせることができるので、凹状部2に生じる空気の渦を効果的に小さくすることができる。その結果、冷却フィン3に走行風をより流入させやすくすることができる。これにより、冷却フィン3による電力変換部1の冷却効率をより向上させることができる。
【0055】
また、第1実施形態では、上記のように、突起部4は、凹状部2近傍の筐体10の表面21aと交差するように延びる一対の面40bと、一対の面40b同士を接続するように設けられる面40cとを有し、かつ、走行方向に沿って延びるとともに走行風の下流に向かって先細る形状を有している第1突起40を含むように、電力変換装置100を構成する。これにより、第1突起40の先細る形状により、第1突起40の一対の面40bに沿って流れる走行風(f1、f2)が一対の面40bの先端側で互いに交差しやすくなるので、旋回流F1を容易に発生させることができる。
【0056】
また、第1実施形態では、上記のように、一対の面40bが、走行風の下流に向かって徐々に互いに近づくように設けられており、面40cが、一対の面40b同士を接続するとともに平坦面形状を有するように、電力変換装置100を構成する。これにより、面40cに沿って流れる走行風f3と一対の面40bに沿って流れる走行風(f1、f2)との速度差、および、一対の面40bの一方に沿って流れる走行風f1と一対の面40bの他方に沿って流れる走行風f2と面40cに沿って流れる走行風f3との角度差の両方により、より容易に旋回流F1を発生させることができる。
【0057】
また、第1実施形態では、上記のように、筐体10が鉄道車両本体101aの下部101bに取り付けられた状態で、突起部4が、凹状部2近傍の筐体10の底面11から下方に突出するように、電力変換装置100を構成する。これにより、筐体10の底面11側を流れる走行風を、突起部4により、凹状部2に配置される冷却フィン3に流入させやすくすることができる。
【0058】
また、第1実施形態では、上記のように、突起部4が、冷却フィン3に対して、凹状部2の走行方向の両側に設けられるように、電力変換装置100を構成する。これにより、鉄道車両本体101aの走行方向によらず、突起部4を冷却フィン3の上流側に配置することができる。
【0059】
また、第1実施形態では、上記のように、突起部4が、一対の傾斜面部21の各々に設けられるように、電力変換装置100を構成する。これにより、一対の傾斜面部21の各々において突起部4により走行風の流れを乱れさせることができる。
【0060】
また、第1実施形態では、上記のように、突起部4の少なくとも一部が、平坦部20とは反対側の傾斜面部21の端部21bに設けられるように、電力変換装置100を構成する。これにより、傾斜面部21の端部21bにおいて突起部4の少なくとも一部により走行風の流れを乱れさせることができる。また、傾斜面部21の端部21bは、筐体10の形状が変化する部分であるので、走行風の流れが変化しやすい。これにより、走行風の流れが変化しやすい上記端部21bに突起部4の少なくとも一部が設けられていることによって、走行風の流れをより効果的に変化させることができる。これらの結果、走行風の流れをより効果的に乱れさせることができる。
【0061】
また、第1実施形態では、上記のように、突起部4が、走行方向に延び、かつ、走行方向の下流に行くにしたがって、傾斜面部21の表面21aに設けられる突起部4の部分の高さ(h1、h2)が大きくなる形状を有するように、電力変換装置100を構成する。これにより、突起部4のうちの下流側の部分が凹状部2の下方側に近い位置に配置されるので、凹状部2の下方側を流れる走行風の流れを容易に乱れさせることができる。
【0062】
また、第1実施形態では、上記のように、複数の冷却フィン3が設けられている領域S1と隣り合う領域S2において、複数の冷却フィンが並ぶ方向に沿って突起部4が複数並んで配置されるように、電力変換装置100を構成する。これにより、突起部4が1つのみ設けられている場合に比べて、複数の冷却フィン3が並ぶ方向において、冷却フィン3に流入する走行風量に偏りが生じるのを抑制することができる。
【0063】
また、第1実施形態では、上記のように、突起部4が、複数の突起部4が並ぶ方向における領域S2の端部に設けられ、かつ、走行方向に沿って延びるとともに走行風の下流に向かって先細る形状を有している第2突起41を含むように、電力変換装置100を構成する。これにより、複数の突起部4が並ぶ方向における領域S2の端部側において、第2突起41により、走行風の流れを変化させることができる。
【0064】
[第2実施形態]
図9~
図11を参照して、第2実施形態について説明する。この第2実施形態では、筐体10の底面11に凹状部2が設けられている上記第1実施形態と異なり、筐体110の側面111に凹状部12が設けられている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、図中において同じ符号を付して図示し、その説明を省略する。
【0065】
図9に示すように、電力変換装置200は、内側に窪む凹状部12が設けられている筐体110を備える。また、凹状部12は、筐体110の側面111に設けられている。なお、筐体110は、特許請求の範囲の「電力変換部用筐体」の一例である。また、電力変換装置200は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。
【0066】
筐体110は、鉄道車両本体101aのY方向(枕木方向)の一方側(たとえばY2側)の端部101eに寄って設けられている。また、筐体110の側面111は、筐体110のY2側の側面である。すなわち、鉄道車両本体101aを外側(Y2側)から見て、凹状部12は露出されている。
【0067】
図10に示すように、凹状部12は、冷却フィン3が配置される平坦部120を含む。また、凹状部12は、平坦部120の走行風の上流側および下流側の両方に隣接して配置される一対の傾斜面部121を含む。すなわち、筐体110の側面111は、平坦部120と一対の傾斜面部121とを含む。また、側面111(平坦部120および傾斜面部121)は、鉛直方向に沿って延びるように設けられている。すなわち、側面111は、地面に対して垂直に延びるように設けられている。なお、冷却フィン3は、水平方向に延びるように設けられている。
【0068】
電力変換装置200は、突起部14を備える。突起部14は、傾斜面部121の表面121aに設けられている。突起部14は、第1突起140と、第2突起141とを含む。第1突起140および第2突起141は、それぞれ、上記第1実施形態の第1突起40および第2突起41と同様の構成であるので、詳細な説明は省略する。なお、以下の説明で突起部14と記載されている場合は、第1突起140および第2突起141に共通する特徴であるとする。
【0069】
ここで、第2実施形態では、突起部14は、筐体110が鉄道車両本体101aの下部101b(
図9参照)に取り付けられた状態で、凹状部12近傍の筐体110の側面111から側方に突出するように設けられている。すなわち、突起部14は、枕木方向(Y方向)において鉄道車両本体101aの外側(Y2側)に向かって突出するように設けられている。
【0070】
また、第2実施形態では、
図11に示すように、突起部14は、複数の冷却フィン3が設けられている領域S11と隣り合う領域S12において、複数の冷却フィン3が並ぶ方向(Z方向)に沿って複数並んで配置されている。具体的には、冷却フィン3が設けられている領域S11は、突起部14が設けられる領域S12とX方向に沿って並ぶように設けられている。なお、領域S11および領域S12は、それぞれ、特許請求の範囲の「第1領域」および「第2領域」の一例である
【0071】
また、複数の領域S12の各々には、複数の第1突起140が並んで設けられているとともに、並んで設けられる複数の第1突起140をZ方向に挟むように2つの第2突起141が設けられている。
【0072】
また、第1突起140は、一対の面140bと面140cとを有する。一対の面140bは、凹状部12近傍の筐体110の表面121aと交差するように延びる。また、一対の面140bの一方は、上方側(Z1側)を向くように設けられている。また、一対の面140bの他方は、下方側(Z2側)を向くように設けられている。面140cは、枕木方向(Y方向)における鉄道車両本体101aの外側(Y2側)を向くように設けられている。なお、面140bおよび面140cは、それぞれ、特許請求の範囲の「第1面」および「第2面」の一例である。
【0073】
第2突起141は、面141bと面141cとを有する。面141bは、傾斜面部121の表面121aと交差するように延びる。また、面141bは、上方側(Z1側)または下方側(Z2側)を向くように設けられている。面141cは、枕木方向(Y方向)における鉄道車両本体101aの外側(Y2側)を向くように設けられている。
【0074】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0075】
(第2実施形態の効果)
第2実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0076】
第2実施形態では、筐体110が鉄道車両本体101aの下部101bに取り付けられた状態で、凹状部12近傍の筐体110の側面111から突起部14が側方に突出するように、電力変換装置200を構成する。これにより、筐体110の側面111側を流れる走行風を凹状部12に配置される冷却フィン3に流入させやすくすることができる。また、筐体110の側面111側は、筐体110の底面側に比べて作業者がメンテナンス作業を行いやすいので、作業者が突起部14のメンテナンスを行うのを容易化することができる。
【0077】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0078】
[第3実施形態]
図12を参照して、第3実施形態について説明する。この第3実施形態では、冷却フィン3自体が直接凹状部12に取り付けられている上記第2実施形態と異なり、冷却フィン13がヒートパイプ30に取り付けられている。なお、上記第2実施形態と同様の構成については、図中において同じ符号を付して図示し、その説明を省略する。
【0079】
図12に示すように、電力変換装置300は、冷却フィン13と、ヒートパイプ30と、を備える。なお、電力変換装置300は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。
【0080】
ヒートパイプ30は、凹状部12の側面111(凹状部12の平坦部120に対応する表面、上記第2実施形態の
図10参照)から、鉄道車両101の外側(Y2側)に向かって突出するように設けられている。また、ヒートパイプ30は、水平方向に対して上方側に傾斜するように設けられている。これにより、ヒートパイプ30内で気化した冷媒が、ヒートパイプ30の先端側(Y2側)に移動した後に液化して根本側(Y1側)に戻る。その結果、上記冷媒は、ヒートパイプ30内において循環される。なお、上記冷媒は、電力変換部1において生じた熱をヒートパイプ30内に輸送する役割を有する。
【0081】
複数の冷却フィン13は、ヒートパイプ30に取り付けられている。具体的には、ヒートパイプ30が板状の冷却フィン13を貫通するように設けられることによって、冷却フィン13がヒートパイプ30に固定されている。複数の冷却フィン13の各々は、鉄道車両本体101aの走行方向(X方向)および上下方向(Z方向)の各々に沿って延びるように設けられている。また、複数の冷却フィン13は、互いに枕木方向(Y方向)に間隔を隔てて配置されている。
【0082】
これにより、突起部14(第2実施形態の
図10等参照)により凹状部12に配置される冷却フィン3に走行風を流入させやすくすることによって、ヒートパイプ30を効率的に冷却することが可能である。
【0083】
なお、第3実施形態のその他の構成は、上記第2実施形態と同様である。また、第3実施形態のその他の効果は、上記第2実施形態と同様である。
【0084】
[第4実施形態]
図13~
図15を参照して、第4実施形態について説明する。この第4実施形態では、先細り形状を有する突起部4が設けられている上記第1実施形態と異なり、曲面形状を有する突起部34が設けられている。なお、上記第1実施形態と同様の構成については、図中において同じ符号を付して図示し、その説明を省略する。
【0085】
図13~
図15を参照して、第4実施形態による電力変換装置600の構成について説明する。なお、電力変換装置600は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。
【0086】
図13に示すように、電力変換装置600は、内側に窪む凹状部2が設けられている筐体610を備える。なお、筐体610は、特許請求の範囲の「電力変換部用筐体」の一例である。
【0087】
電力変換装置600は、突起部34を備える。具体的には、突起部34は、傾斜面部21に配置されている。突起部34のうち平坦部20とは反対側の端部34aは、傾斜面部21の端部21bに設けられている。
【0088】
ここで、第4実施形態では、
図11に示すように、突起部34は、鋭角な角部が設けられていない曲面形状を有する。具体的には、突起部34の表面は、平坦部または角部を含まず、全体的に湾曲している。
【0089】
詳細には、突起部34は、半球面形状を含む。なお、半球面形状とは、球の1/2を切断した形状のみを意味するのではなく、球の1/2以外(たとえば球の2/3)を切断した形状をも含む広い意味である。
【0090】
また、突起部34は、突起部34の下流側に旋回流F3を発生させる形状を有している。具体的には、突起部34の表面に沿って流れる走行風f11同士が、突起部34の下流側において互いに交差することにより、旋回流F3が形成される。なお、旋回流F3は、回転軸がX方向に沿って延びる旋回流である。
【0091】
また、第4実施形態では、曲面形状を有する突起部34は、プレス加工により傾斜面部21の表面21aと一体的に形成されている。具体的には、
図15に示すように、突起部34は、突起部34のプレス加工の際に形成された外周縁34bを含む。外周縁34bは、R形状を有する。
【0092】
また、突起部34は、下端34cが凹状部2から突出するように設けられている。なお、突起部34の下端34cは、艤装限界P1よりも上方側(Z1側)に設けられている。
【0093】
なお、電力変換装置600とは異なる機器がX方向において筐体610に隣接している場合には、上記機器の下端は、突起部34の端部34aのZ方向における位置P2よりも鉄道車両本体101a側(第4実施形態ではZ1側)に設けられるのが好ましい。
【0094】
なお、第4実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0095】
(第4実施形態の効果)
第4実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0096】
第4実施形態では、上記のように、突起部34が鋭角な角部が設けられていない曲面形状を有するように、電力変換装置600を構成する。これにより、曲面形状は鋭角な角部に比べて応力が集中しにくいので、突起部34において応力が局所的に集中するのを抑制することができる。
【0097】
第4実施形態では、上記のように、突起部34が半球面形状を有するように、電力変換装置600を構成する。これにより、突起部34の全体が曲面形状になるので、突起部34において応力が局所的に集中するのをより抑制することができる。
【0098】
第4実施形態では、上記のように、曲面形状を有する突起部34が、プレス加工により凹状部2の近傍の表面21aと一体的に形成されるように、電力変換装置600を構成する。これにより、突起部34において応力が局所的に集中するのが抑制されていることによって、表面21aと突起部34とを一体的に形成する際に、突起部34が応力に起因して破損するのを抑制することができる。また、表面21aと突起部34とが一体的に形成されているので、突起部34が表面21aから脱落するのを抑制することができる。また、突起部34が表面21aと別個に設けられている場合に比べて、電力変換装置600の部品点数を低減することができる。
【0099】
なお、第4実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0100】
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0101】
たとえば、上記第2実施形態では、凹状部12が設けられる筐体110の側面111が鉛直方向に沿って延びるように設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。凹状部が設けられる筐体の側面が鉛直方向に対して傾斜していてもよい。
【0102】
具体的には、
図16に示すように、電力変換装置400の筐体210は、鉛直方向に対して傾斜し、かつ湾曲している側面211を含む。側面211には、凹状部22が設けられている。凹状部22は、冷却フィン23が配置される平坦部220と、平坦部220の走行風の上流側および下流側の両方に隣接して配置される一対の傾斜面部221と、を含む。平坦部220は、地面に対して垂直に延びるように設けられている。筐体210の側面211は、平坦部220と一対の傾斜面部221とを含む。なお、電力変換装置400は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。また、筐体210は、特許請求の範囲の「電力変換装置用筐体」の一例である。
【0103】
また、複数の冷却フィン23は、上方側(Z1側)の冷却フィン23ほどY方向の長さL1が大きくなる。すなわち、上方側(Z1側)の冷却フィン23ほどY2側に突出している。なお、第2実施形態においても、複数の冷却フィン13の各々の長さが
図16と同様であってもよい。
【0104】
また、凹状部22におけるX方向の両端には、第1突起240と第2突起241とを含む突起部24が設けられている。
【0105】
また、
図16では平坦部220が鉛直方向に沿って延びている例が示されているが、これに限られない。具体的には、
図17に示すように、電力変換装置500の筐体310は、鉛直方向に対して傾斜している平坦部320を含む。平坦部320は、筐体310の側面311に配置されている凹状部32に設けられている。また、凹状部32は、平坦部320の走行風の上流側および下流側の両方に隣接して配置される一対の傾斜面部321と、を含む。すなわち、筐体310の側面311は、平坦部320と一対の傾斜面部321とを含む。平坦部320は、上方側に向かってY2側に傾くように傾斜している。なお、
図17では、複数の冷却フィン33の長さL2は互いに等しい例が図示されているが、複数の冷却フィン33の長さL2が互いに異なっていてもよい。また、電力変換装置500は、特許請求の範囲の「鉄道車両用電力変換装置」の一例である。また、筐体310は、特許請求の範囲の「電力変換装置用筐体」の一例である。
【0106】
また、上記第1~第4実施形態では、突起部4(14、34)は旋回流(F1、F2、F3)を発生させるような形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。突起部は、走行風の流れを乱す形状であれば、旋回流を発生させる形状を有していなくてもよい。
【0107】
また、上記第1~第4実施形態では、突起部4(14、34)は、走行方向に沿って延びるとともに走行風の下流に先細る形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、突起部は、下面視において半円形状を有していてもよい。また、突起部の一対の側面が湾曲形状を有していてもよい。
【0108】
また、上記第1実施形態では、第1突起40の面40c(第2面)は、水平方向に沿った方向に延びる平坦な面(地面に平行に延びる面)である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、面40cは、地面に対して上方側に傾斜する面であってもよい。
【0109】
また、上記第1実施形態では、面40c(第2面)は、下面視において(Z2方向側から見て)、略2等辺三角形形状を有している例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、面40cは2等辺三角形以外の三角形形状であってもよい。なお、第2および第3実施形態においても同様であってもよい。
【0110】
また、上記第1実施形態では、一対の面40b(第1面)の各々は、水平方向に延びる第1突起40の面40c(第2面)と直交するように設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、一対の面40bの各々と面40cとがなす角度は、鋭角であってもよく鈍角であってもよい。また、第2突起41の面41bと面41cとのなす角度は、鋭角であってもよく鈍角であってもよい。なお、第2および第3実施形態においても同様であってもよい。
【0111】
また、上記第1~第4実施形態では、突起部4(14、34)が、傾斜面部21(121)に直接的に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。傾斜面部に接続部を介して間接的に設けられる突起部が備えられていてもよい。
【0112】
また、上記第1~第4実施形態では、突起部4(14、34)が、冷却フィン3(13)に対して走行方向の両側に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。突起部4(14、34)が、冷却フィンに対して走行方向の一方側に設けられていてもよい。
【0113】
また、上記第1~第3実施形態では、突起部4(14)のうち傾斜面部21に設けられる部分が、走行方向の下流に行くにしたがって高さ(h1、h2)が大きくなる形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、突起部の高さが、下流に行くにしたがって小さくなってもよいし、走行方向のいずれの位置においても同じ大きさであってもよい。また、第2突起41(141)のうち平坦部20(120)に設けられる部分の高さが、走行風の下流側に行くにしたがって大きくなってもよい。
【0114】
また、上記第1実施形態では、突起部4が、領域S2(第2領域)において、枕木方向に沿って複数並んで配置される例を示したが、本発明はこれに限られない。領域S2において第1突起40または第2突起41のいずれか一方が1つのみ配置されていてもよい。なお、第2および第3実施形態においても同様であってもよい。
【0115】
また、上記第1~第4実施形態では、鉄道車両101が在来線の電車や高速鉄道車両である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、鉄道車両が気動車(エンジンを搭載した列車)であってもよい。
【0116】
また、上記第1~第4実施形態では、凹状部2(12)に一対の傾斜面部21(121)が設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。凹状部に傾斜面部が設けられていなくてもよい。
【0117】
また、上記第1~第4実施形態では、突起部4(14、34)が凹状部2(12)の表面21a(121a)に設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。突起部4(14、34)が、凹状部2(12)の近傍でかつ、凹状部2(12)の外側に設けられていてもよい。また、突起部4(14、34)が、凹状部2(12)の外側と内側とに跨るように設けられていてもよい。
【0118】
また、上記第1~第4実施形態では、突起部4(14、34)が筐体10(110、610)と一体的に形成されている例を示したが、本発明はこれに限られない。突起部4(14、34)が筐体10(110、610)と互いに別個に設けられており、互いにボルト締結または溶接により接続されていてもよい。
【0119】
また、上記第1~第3実施形態では、第2突起41(141)が、傾斜面部21(121)と平坦部20(120)とに跨るように設けられる例を示したが、本発明はこれに限られない。第2突起が、傾斜面部21(121)のみに設けられていてもよい。
【0120】
また、上記第3実施形態では、ヒートパイプ30は、筐体110(電力変換装置用筐体)の側面111に設けられた凹状部12に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、ヒートパイプが、上記第1実施形態における筐体10の底面11に設けられた凹状部2に配置されていてもよい。
【0121】
また、上記第4実施形態では、突起部34が、半球面形状を有する例を示したが、本発明はこれに限られない。突起部は、鋭角な角部が設けられない曲面形状を有していれば、半球面形状以外の形状(たとえば半楕円体形状)であってもよい。
【0122】
また、上記第1~第4実施形態では、複数の突起部4(14、34)が枕木方向に沿って一列に並んで設けられている例を示したが、本発明はこれに限られない。複数の突起部4(14、34)が、枕木方向に沿ってジグザグ(千鳥状)に配置されていてもよい。
【0123】
また、上記第4実施形態では、半球面形状を有する突起部34が、筐体10の底面11に設けられる凹状部2に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。突起部34が、第2および第3実施形態のように筐体110の側面111に設けられた凹状部12に配置されていてもよい。
【符号の説明】
【0124】
1 電力変換部
2 凹状部
3 冷却フィン
4、14、24、34 突起部
10、110、210、310、610 筐体(電力変換装置用筐体)
11 底面
20、120、220、320 平坦部
21、121、221、321 傾斜面部
21a、121a 表面
21b、121b 端部(傾斜面部の端部)
40、140、240 第1突起
41、141、241 第2突起
40b、140b 面(第1面)
40c、140c 面(第2面)
100、200、300、400、500、600 電力変換装置(鉄道車両用電力変換装置)
101a 鉄道車両本体
101b 下部
111 側面
411 部分
F1、F2、F3 旋回流
h1、h2 高さ
S1、S11 領域(第1領域)
S2、S12 領域(第2領域)