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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182956
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】配線回路基板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/46 20060101AFI20221201BHJP
   H05K 1/02 20060101ALI20221201BHJP
   H01P 3/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H05K3/46 Z
H05K3/46 N
H05K3/46 T
H05K1/02 J
H05K1/02 N
H01P3/00 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021184613
(22)【出願日】2021-11-12
(31)【優先権主張番号】P 2021089752
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】松富 亮人
(72)【発明者】
【氏名】澤岻 佳菜代
【テーマコード(参考)】
5E316
5E338
5J014
【Fターム(参考)】
5E316AA12
5E316AA32
5E316AA35
5E316AA43
5E316BB02
5E316BB04
5E316BB06
5E316BB13
5E316CC08
5E316CC09
5E316CC10
5E316CC13
5E316CC14
5E316CC31
5E316CC32
5E316CC34
5E316CC37
5E316CC38
5E316CC39
5E316DD02
5E316DD22
5E316EE01
5E316FF04
5E316GG15
5E316GG17
5E316GG28
5E316HH03
5E338AA03
5E338AA16
5E338BB13
5E338BB72
5E338CC02
5E338CC06
5E338CD02
5E338CD13
5E338EE11
5J014AA01
(57)【要約】
【課題】第1配線部の電気特性の変動を、第2配線部の電気特性の変動よりも、抑制できる配線回路基板およびその製造方法を提供すること。
【解決手段】配線回路基板1は、多孔質絶縁層2と、第1導体層31とを厚み方向の一方側に向かって順に備える。第1導体層31は、第1信号線34と、第1グランド線35とを有する。第1グランド線35は、第1信号線34より厚い。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質絶縁層と、導体層とを厚み方向の一方側に向かって順に備え、
前記導体層は、第1配線部と、前記第1配線部より厚い第2配線部とを有する、配線回路基板。
【請求項2】
前記第2配線部は、前記厚み方向に直交する方向に互いに間隔を隔てて2つ配置され、
前記第1配線部は、2つの前記第2配線部の間に配置されている、請求項1に記載の配線回路基板。
【請求項3】
前記多孔質絶縁層の厚み方向の他方面に配置されるグランド層をさらに備え、
前記グランド層は、厚み方向に投影したときに、前記第1配線部に重なる第3配線部と、前記第2配線部に重なる第4配線部とを有し、
前記第4配線部は、前記第3配線部より厚い、請求項1または請求項2に記載の配線回路基板。
【請求項4】
前記多孔質絶縁層は、前記多孔質絶縁層を厚み方向に貫通する貫通孔を有し、
前記貫通孔に充填される導体接続部であって、前記導体層と前記グランド層とに接触する前記導体接続部をさらに備える、請求項3に記載の配線回路基板。
【請求項5】
接着層と、カバー絶縁層とをさらに備え、
前記カバー絶縁層は、前記接着層を介して、前記導体層と前記多孔質絶縁層とを厚み方向の一方側から被覆する、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の配線回路基板。
【請求項6】
第1配線部と、前記第1配線部より厚い第2配線部とを有する導体層を多孔質絶縁層の厚み方向の一方面に配置する第1工程と、
カバー絶縁層を、接着層を介して、前記導体層と前記多孔質絶縁層とにプレスする第2工程と
を備える、配線回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多孔質絶縁樹脂フィルムと、導電層とを備える配線回路基板が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。特許文献1に記載の配線回路基板では、導電層は、複数の配線を有する。特許文献1では、複数の配線部の厚みは、同一である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-123851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
用途および目的に応じて、配線回路基板を厚み方向にプレスする場合がある。その場合には、多孔質絶縁樹脂フィルムにおいて複数の配線部と重なる複数の部分は、プレスにより厚みが画一的に変動する。そうすると、複数の配線のそれぞれの電気特性が画一的に変動するという不具合がある。
【0005】
本発明は、第1配線部の電気特性の変動を、第2配線部の電気特性の変動よりも、抑制できる配線回路基板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明(1)は、多孔質絶縁層と、導体層とを厚み方向の一方側に向かって順に備え、前記導体層は、第1配線部と、前記第1配線部より厚い第2配線部とを有する、配線回路基板を含む。
【0007】
この配線回路基板では、第2配線部が第1配線部より厚い。換言すれば、第1配線部が第2配線部より薄い。
【0008】
そのため、配線回路基板を厚み方向にプレスすると、厚み方向において第1配線部と重なる多孔質絶縁層は、厚み方向において第2配線部と重なる多孔質絶縁層に比べて、小さなプレス圧を受ける。そのため、厚み方向において第1配線部と重なる多孔質絶縁層の厚みの変動を、厚み方向において第2配線部と重なる多孔質絶縁層の厚みの変動に比べて、抑制できる。
【0009】
その結果、第1配線部の電気特性の変動を、第2配線部の電気特性の変動よりも、抑制できる。
【0010】
本発明(2)は、前記第2配線部は、前記厚み方向に直交する方向に互いに間隔を隔てて2つ配置され、前記第1配線部は、2つの前記第2配線部の間に配置されている、(1)に記載の配線回路基板を含む。
【0011】
この配線回路基板では、プレス時に、厚み方向において2つの第2配線部と重なる多孔質絶縁層が、大きなプレス圧をバランスよく引き受けることができる。そのため、2つの第2配線部の間に配置される第1配線部と重なる多孔質絶縁層は、より一層小さいプレス圧を受ける。そのため、厚み方向において第1配線部と重なる多孔質絶縁層の厚みの変動を、厚み方向において第2配線部と重なる多孔質絶縁層の厚みの変動に比べて、より一層抑制できる。
【0012】
本発明(3)は、前記多孔質絶縁層の厚み方向の他方面に配置されるグランド層をさらに備え、前記グランド層は、厚み方向に投影したときに、前記第1配線部に重なる第3配線部と、前記第2配線部に重なる第4配線部とを有し、前記第4配線部は、前記第3配線部より厚い、(1)または(2)に記載の配線回路基板を含む。
【0013】
この配線回路基板では、グランド層が、第1配線部に重なる第3配線部と、第2配線部に重なり、第3配線部より厚い第4配線部とを備えるので、配線回路基板を厚み方向にプレスすると、厚み方向において第1配線部と重なる多孔質絶縁層は、厚み方向において第2配線部と重なる多孔質絶縁層に比べて、より一層小さなプレス圧を受ける。そのため、厚み方向において第1配線部と重なる多孔質絶縁層の厚みの変動を、厚み方向において第2配線部と重なる多孔質絶縁層の厚みの変動に比べて、より一層抑制できる。
【0014】
本発明(4)は、前記多孔質絶縁層は、前記多孔質絶縁層を厚み方向に貫通する貫通孔を有し、前記貫通孔に充填される導体接続部であって、前記導体層と前記グランド層とに接触する前記導体接続部をさらに備える、(3)に記載の配線回路基板を含む。
【0015】
本発明(5)は、接着層と、カバー絶縁層とをさらに備え、前記カバー絶縁層は、前記接着層を介して、前記導体層と前記多孔質絶縁層とを厚み方向の一方側から被覆する、(1)から(4)のいずれか一項に記載の配線回路基板を含む。
【0016】
本発明(6)は、第1配線部と、前記第1配線部より厚い第2配線部とを有する導体層を多孔質絶縁層の厚み方向の一方面に配置する第1工程と、カバー絶縁層を、接着層を介して、前記導体層と前記多孔質絶縁層とにプレスする第2工程とを備える、配線回路基板の製造方法を含む。
【0017】
この製造方法において、第2工程で、カバー絶縁層を、接着層を介して、前記導体層と前記多孔質絶縁層とにプレスして、多孔質絶縁層に大きなプレス圧がかかっても、厚み方向において第1導体部と重なる多孔質絶縁層の厚みの変動を、厚み方向において第2導体部と重なる多孔質絶縁層の厚みの変 動に比べて、抑制できる。その結果、第1導体部の電気特性の変動を、第2導体部の電気特性の変動よりも、抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の配線回路基板およびその製造方法によれば、第1配線部の電気特性の変動を、第2配線部の電気特性の変動よりも、抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の一実施形態の断面図を示す。
図2図2Aから図2Dは、図1に示す配線回路基板の製造工程図である。図2Aが、第1多孔質積層体を準備する工程である。図2Bが、第1ビアを形成する工程である。図2Cが、第1めっき層を形成する工程である。図2Dが、第2導体層をパターニングする工程である。
図3図3Aから図3Cは、図2Dに引き続き、配線回路基板の製造工程図である。図3Aが、第1めっき層を形成する工程である。図3Bが、第2の多孔質積層体を第2導体層に貼り合わせる工程である。図3Cが、第2ビアおよび第3ビアを形成する工程である。
図4図4Aから図4Bは、図3Cに引き続き、配線回路基板の製造工程図である。図4Aが、第1めっき層および第1下地層をパターニングする工程である。図4Bは、第1カバー積層体および第2カバー積層体を貼り合わせる工程である。
図5図5は、配線回路基板の変形例の断面図である。
図6図6は、配線回路基板の変形例の断面図である。
図7図7は、配線回路基板の変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1. 配線回路基板の一実施形態
本発明の配線回路基板の一実施形態を、図1を参照して説明する。
【0021】
配線回路基板1は、厚みを有する。配線回路基板1は、面方向に延びる。面方向は、厚み方向に直交する。配線回路基板1は、略平板形状を有する。
【0022】
配線回路基板1は、多孔質絶縁層2と、導体層3とを厚み方向に順に備える。多孔質絶縁層2は、第1多孔質絶縁層21と、第2多孔質絶縁層22とを、厚み方向に順に備える。導体層3は、第1導体層31と、第2導体層32と、第3導体層33とを厚み方向に順に備える。具体的には、配線回路基板1は、第3導体層33と、第2多孔質絶縁層22と、第2導体層32と、第1多孔質絶縁層21と、第1導体層31とを厚み方向の一方側に向かって順に備える。また、配線回路基板1は、導体接続部4と、カバー絶縁層5と、接着層6とをさらに備える。
【0023】
2. 多孔質絶縁層2
多孔質絶縁層2は、第1多孔質絶縁層21と、第2多孔質絶縁層22とを厚み方向の他方側に向かって順に備える。
【0024】
2.1 第1多孔質絶縁層21
第1多孔質絶縁層21は、厚みを有する。第1多孔質絶縁層21は、面方向に延びる。第1多孔質絶縁層21は、略平板形状を有する。第1多孔質絶縁層21は、第1貫通孔23と、2つの第2貫通孔24とを有する。
【0025】
第1貫通孔23は、第1方向における第1多孔質絶縁層21の中間部に配置される。第1方向は、面方向に含まれる。
【0026】
一の第2貫通孔24は、第1方向において第1貫通孔23の一方側に間隔を隔てて配置される。他の第2貫通孔24は、第1方向において第1貫通孔23の他方側に間隔を隔てて配置される。他の第2貫通孔24は、第1方向において、第1貫通孔23に対して一の第2貫通孔24の反対側に配置される。これにより、一の第2貫通孔24と、第1貫通孔23と、他の第2貫通孔24とは、第1方向に順に並ぶ。つまり、第1貫通孔23は、2つの第2貫通孔24の間に配置される。
【0027】
第1貫通孔23と2つの第2貫通孔24とのそれぞれは、第1多孔質絶縁層21を厚み方向に貫通する。第1多孔質絶縁層21において第1貫通孔23と2つの第2貫通孔24とのそれぞれを区画する内周面は、厚み方向に沿う。上記した内周面は、厚み方向の一方側に向かって断面積が次第に増大するテーパ形状を有してもよい。
【0028】
2.2 第2多孔質絶縁層22
第2多孔質絶縁層22は、厚み方向において第1多孔質絶縁層21の他方側に配置される。第2多孔質絶縁層22は、厚み方向において第1多孔質絶縁層21と間隔を隔てる。
なお、第2多孔質絶縁層22は、後述する第2接着層62を介して第1多孔質絶縁層21に接着されている。
【0029】
第2多孔質絶縁層22は、厚みを有する。第2多孔質絶縁層22は、面方向に延びる。第2多孔質絶縁層22は、略平板形状を有する。第2多孔質絶縁層22は、2つの第3貫通孔25を有する。
【0030】
2つの第3貫通孔25のそれぞれは、厚み方向に投影したときに、2つの第2貫通孔24のそれぞれと重なる。2つの第3貫通孔25は、第1方向に互いに間隔を隔てて並ぶ。
【0031】
2つの第3貫通孔25のそれぞれは、第2多孔質絶縁層22を厚み方向に貫通する。第2多孔質絶縁層22において2つの第3貫通孔25のそれぞれを区画する内周面は、厚み方向に沿う。上記した内周面は、厚み方向の他方側に向かって断面積が次第に増大するテーパ形状を有してもよい。
【0032】
2.3 多孔質絶縁層2の材料
多孔質絶縁層2の材料としては、樹脂が挙げられる。樹脂は、限定されない。樹脂としては、例えば、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、フッ化ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、シリコーン樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂、フッ素樹脂、および、液晶ポリマーが挙げられる。好ましくは、ポリイミド樹脂、および、液晶ポリマーが挙げられる。
【0033】
2.4 多孔質絶縁層2の物性
多孔質絶縁層2は、多孔質である。多孔質絶縁層2は、独立気泡および/または連続気泡を有する。
【0034】
多孔質絶縁層2における空孔率は、例えば、50%以上、好ましくは、60%以上、より好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上である。なお、多孔質絶縁層2の空孔率は、例えば、100%未満、さらには、99%以下である。多孔質絶縁層2の空孔率は、多孔質絶縁層2の材料がポリイミド樹脂である場合には、下記式に基づく計算により求められる。
【0035】
多孔質絶縁層2の誘電率=空気の誘電率×空孔率+ポリイミドの誘電率×(1-空孔率)
ここで、空気の誘電率は1、ポリイミド樹脂の誘電率は3.5であるため、
多孔質絶縁層2の誘電率=空孔率+3.5(1-空孔率)
空孔率(%)=[(3.5-多孔質絶縁層2の誘電率)/2.5]×100
【0036】
多孔質絶縁層2の周波数60GHzにおける誘電率は、例えば、2.5以下、好ましくは、1.9以下、より好ましくは、1.6以下であり、また、例えば、1.0超過である。多孔質絶縁層2の誘電率は、周波数の60GHzを用いる共振器法により、実測される。
【0037】
多孔質絶縁層2の周波数60GHzにおける誘電正接は、例えば、0.006以下であり、また、例えば、0超過である。多孔質絶縁層2の誘電正接は、周波数の60GHzを用いる共振器法により、実測される。
【0038】
3. 導体層3
導体層3は、第2方向に延びる。第2方向は、厚み方向および第1方向に交差する。具体的には、第2方向は、厚み方向および第1方向に直交する。
【0039】
導体層3は、第1導体層31と、第2導体層32と、第3導体層33とを厚み方向の他方側に向かって順に備える。
【0040】
3.1 第1導体層31
第1導体層31は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方側に配置される。具体的には、第1導体層31は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面に配置される。第1導体層31は、第1配線部の一例としての第1信号線34と、2つの第2配線部の一例としての2つの第1グランド線35とを有する。
【0041】
3.1.1 第1信号線34
第1信号線34は、信号を第2方向に伝送する。信号としては、例えば、差動信号が挙げられる。信号は、例えば、1A未満、さらには、0.1A未満の小電流を含む。第1信号線34は、第1導体層31における第1方向の中間部に配置される。第1信号線34は、第1貫通孔23の厚み方向の一方側に配置される。第1信号線34は、第1貫通孔23の厚み方向の一端部を塞ぐ。第1信号線34は、第1多孔質絶縁層21において第1貫通孔23の周囲の厚み方向の一方面に接触する。第1信号線34は、信号端子341を含む。信号端子341は、第1信号線34の第2方向の端部に配置される。信号端子341には、図示しない外部基板の電極が接続される。
【0042】
第1信号線34は、次に説明する第1グランド線35より薄い。具体的には、第1信号線34の厚みT1は、例えば、50μm以下、好ましくは、35μm以下、より好ましくは、18μm以下であり、また、例えば、4μm以上である。なお、第1信号線34の厚みT1は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面と、第1信号線34の厚み方向の一方面との、厚み方向の長さである。
【0043】
3.1.2 2つの第1グランド線35
2つの第1グランド線35のそれぞれは、第1信号線34に影響を及ぼす微弱電流をアースする。微弱電流は、例えば、1A未満、さらには、0.1A未満の電流を含む。2つの第1グランド線35のそれぞれは、2つの第2貫通孔24のそれぞれの厚み方向の一方側に配置される。2つの第1グランド線35のそれぞれは、2つの第2貫通孔24のそれぞれの厚み方向の一端部を塞ぐ。2つの第1グランド線35のそれぞれは、第1多孔質絶縁層21において2つの第2貫通孔24の周囲の厚み方向の一方面に接触する。
【0044】
2つの第1グランド線35は、第1方向に互いに間隔を隔てて配置される。一の第1グランド線35は、第1方向において第1信号線34の一方側に間隔を隔てて配置される。
他の第1グランド線35は、第1方向において第1信号線34の他方側に間隔を隔てて配置される。他の第1グランド線35は、第1方向において、第1信号線34に対して一の第1グランド線35の反対側に配置される。これにより、一の第1グランド線35と、第1信号線34と、他の第1グランド線35とは、第1方向に順に間隔を隔てて並ぶ。つまり、第1信号線34は、2つの第1グランド線35の間に配置されている。
【0045】
2つの第1グランド線35の少なくともいずれかは、グランド端子351を含む。グランド端子351は、当該第1グランド線35の第2方向の端部に配置される。グランド端子351には、図示しないアース部材が接続される。
【0046】
2つの第1グランド線35のそれぞれは、第1信号線34より厚い。
【0047】
他方、2つの第1グランド線35のそれぞれが、第1信号線34と同じ厚みであれば、後述するプレスによって、厚み方向において第1信号線34および第1グランド線35と重なる多孔質絶縁層2の厚みが大きく変動し、第1信号線34の電気特性が大きく変動する。具体的には、第1信号線34の特性インピーダンスのミスマッチを生じる。
【0048】
2つの第1グランド線35の厚みT2は、例えば、6μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、40μm以上であり、また、例えば、52μm以下である。なお、第1グランド線35の厚みT2は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面と、第1グランド線35の厚み方向の一方面との、厚み方向の長さである。
【0049】
第1信号線34の厚みT1に対する第1グランド線35の厚みT2の比(T2/T1)は、1超過、好ましくは、1.2以上、より好ましくは、1.4以上、さらに好ましくは、1.6以上である。第1信号線34の厚みT1に対する第1グランド線35の厚みT2の比(T2/T1)の上限は、限定されない。比(T2/T1)の上限は、例えば、13である。
【0050】
3.2 第2導体層32
第2導体層32は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の他方側に配置される。第2導体層32は、厚み方向において、第1多孔質絶縁層21に対して第1導体層31の反対側に配置される。第2導体層32は、厚み方向において第1多孔質絶縁層21と第2多孔質絶縁層22との間に配置される。第2導体層32は、第1導体層31と電気的に接続される。第2導体層32は、第2信号線36と、2つの第2グランド線37とを備える。
【0051】
3.2.1 第2信号線36
第2信号線36は、第1信号線34とともに上記した信号を第2方向に伝送する。第2信号線36は、厚み方向に投影したときに、第1信号線34と重なる。第2信号線36は、厚み方向において第1信号線34と電気的に接続される。
【0052】
3.2.2 2つの第2グランド線37
2つの第2グランド線37は、2つの第1グランド線35とともに、第1信号線34および第2信号線36に影響を及ぼす微弱電流をアースする。2つの第2グランド線37のそれぞれは、第2信号線36の第1方向の一方側および他方側のそれぞれにおいて、間隔を隔てて配置される。第2グランド線37は、厚み方向に投影したときに、第1グランド線35に重なる。
【0053】
2つの第2グランド線37のそれぞれは、第2信号線36と同一厚みを有する。
【0054】
3.3 第3導体層33
第3導体層33は、グランド層の一例である。つまり、第3導体層33は、第1信号線34および第2信号線36に影響を及ぼす微弱電流を、上記した第1グランド線35および第2グランド線37とともにアースする。
【0055】
第3導体層33は、第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方側に配置される。具体的には、第3導体層33は、第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面に配置される。第3導体層33は、厚み方向において、第2多孔質絶縁層22に対して第2導体層32の反対側に配置されている。第3導体層33は、第3配線部の一例としての第3グランド部38と、第4配線部の一例としての第4グランド部39とを有する。
【0056】
3.3.1 第3グランド部38
第3グランド部38は、2つの第3貫通孔25の間の第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面に配置される。第3グランド部38は、第1方向に延びる。第3グランド部38は、厚み方向に投影したときに、第1信号線34と重なる。第3グランド部38は、厚み方向に投影したときに、第1信号線34を包含する。具体的には、第3グランド部38は、重なり部分381と、非重なり部分382とを含む。重なり部分381は、第1信号線34と重なる。非重なり部分382は、第1信号線34と重ならない。本実施形態では、重なり部分381は、第3グランド部38における第1方向の中間部である。非重なり部分382は、重なり部分381の第1方向の一端部および他端部のそれぞれから外側に延びる。第3グランド部38は、平板形状を有する。
【0057】
第3グランド部38は、次に説明する第4グランド部39より薄い。具体的には、第3グランド部38の厚みT3は、例えば、50μm以下、好ましくは、35μm以下、より好ましくは、18μm以下であり、また、例えば、4μm以上である。なお、第3グランド部38の厚みT3は、第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面と、第3グランド部38の厚み方向の他方面との、厚み方向の長さである。
【0058】
3.3.2 第4グランド部39
2つの第4グランド部39のそれぞれは、2つの第3貫通孔25のそれぞれの厚み方向の他方側に配置される。2つの第4グランド部39のそれぞれは、2つの第3貫通孔25のそれぞれの厚み方向の他端部を塞ぐ。2つの第4グランド部39のそれぞれは、第2多孔質絶縁層22において2つの第3貫通孔25の周囲の厚み方向の他方面に接触する。
【0059】
2つの第4グランド部39は、第1方向に互いに間隔を隔てて配置される。2つの第4グランド部39のそれぞれは、平板形状を有する。第4グランド部39は、厚み方向に投影したときに、第1グランド線35と重なる。一の第4グランド部39の厚み方向の一方側部分は、第3グランド部38の第1方向の一端部(重なり部分382)に連結する。他の第4グランド部39の厚み方向の一方側部分は、第3グランド部38の第1方向の他端部(重なり部分382)に連結する。これにより、2つの第4グランド部39は、第3グランド部38を介して互いに電気的に接続される。
【0060】
2つの第4グランド部39のそれぞれは、第3グランド部38より厚い。2つの第4グランド部39のそれぞれが、第3グランド部38より厚いと、後述するプレスによって、厚み方向において第3グランド部38および第4グランド部39と重なる多孔質絶縁層2の厚みが大きく変動することを抑制し、第1信号線34および第2信号線36の電気特性が大きく変動することを抑制できる。
【0061】
2つの第4グランド部39の厚みT4は、例えば、6μm以上、好ましくは、20μm以上、より好ましくは、40μm以上であり、また、例えば、52μm以下である。第4グランド部39の厚みT4は、第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面と、第4グランド部39の厚み方向の他方面との、厚み方向の長さである。
【0062】
第3グランド部38の厚みT3に対する第4グランド部39の厚みT4の比(T4/T3)は、1超過、好ましくは、1.2以上、より好ましくは、1.4以上、さらに好ましくは、1.6以上である。第3グランド部38の厚みT3に対する第4グランド部39の厚みT4の比(T4/T3)の上限は、限定されない。比(T4/T3)の上限は、例えば、13である。
【0063】
3.4 導体層3の材料
導体層3の材料は、限定されない。導体層3の材料として、例えば、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、ニッケル、および、それらの合金(ステンレス、および、青銅)が挙げられる。導体層3の材料として、好ましくは、銅が挙げられる。
【0064】
4. 導体接続部4
導体接続部4は、厚み方向において第1導体層31および第2導体層32の間と、第2導体層32および第3導体層33の間とに配置される。導体接続部4は、第1貫通孔23、第2貫通孔24、および、第3貫通孔25に配置される。導体接続部4は、第1導体接続部41と、2つの第2導体接続部42と、2つの第3導体接続部43とを有する。
【0065】
4.1 第1導体接続部41
第1導体接続部41の一部(主要部)は、第1貫通孔23に充填され、第2導体接続部42の残部(厚み方向の他端部)は、第1貫通孔23から厚み方向の他方側に向かって突出する。第1導体接続部41の厚み方向の一端部は、第1信号線34と接触(連続)する。第1導体接続部41の厚み方向の他端部は、第2信号線36と接触する。これによって、第1信号線34と第2信号線36とは、第1導体接続部41を介して電気的に接続される。従って、第1信号線34と第2信号線36と第1導体接続部41とは、断面視において略I字形状の信号パスを形成する。信号パスは、厚み方向および第2方向に延びる。
【0066】
4.2 第2導体接続部42
第2導体接続部42の一部(主要部)は、第2貫通孔24に充填され、第2導体接続部42の残部(厚み方向の他端部)は、第2貫通孔24から厚み方向の他方側に向かって突出する。第2導体接続部42の厚み方向の一端部は、第1グランド線35と接触(連続)する。第2導体接続部42の厚み方向の他端部は、第2グランド線37と接触する。これにより、第1グランド線35と第2グランド線37とは、第2導体接続部42を介して電気的に接続される。
【0067】
4.3 第3導体接続部43
第3導体接続部43の一部(主要部)は、第3貫通孔25に充填され、第3導体接続部43の残部(厚み方向の一端部)は、第3貫通孔25から厚み方向の一方側に向かって突出する。第3導体接続部43の厚み方向の他端部は、第4グランド部39と接触(連続)する。第3導体接続部43の厚み方向の一端部は、第2グランド線37と接触する。これにより、第2グランド線37と第3導体層33とは、第3導体接続部43を介して電気的に接続される。
【0068】
以上より、第1グランド線35と第2グランド線37と第3導体層33と第2導体接続部42と第3導体接続部43とは、断面視において、略U字形状のグランドパスを形成する。グランドパスは、断面視において、厚み方向の一方側に向かって開放される。
【0069】
4.4 導体接続部4の材料
導体接続部4の材料は、上記した導体層3の材料と同様である。
【0070】
5. カバー絶縁層5
カバー絶縁層5は、導体層3の厚み方向の一方側および他方側に配置される。カバー絶縁層5は、第1カバー絶縁層51と、第2カバー絶縁層52とを有する。
【0071】
5.1 第1カバー絶縁層51
第1カバー絶縁層51は、厚み方向において第1導体層31の一方側に配置される。第1カバー絶縁層51は、配線回路基板1の厚み方向の一方面を形成する。第1カバー絶縁層51は、上記した信号端子341およびグランド端子351を露出する。第1カバー絶縁層51は、信号端子341およびグランド端子351以外の第1導体層31を被覆する。
【0072】
5.2 第2カバー絶縁層52
第2カバー絶縁層52は、厚み方向において第3導体層33の他方側に配置される。第2カバー絶縁層52は、配線回路基板1の厚み方向の他方面を形成する。第2カバー絶縁層52は、第3導体層33を被覆する。
【0073】
5.3 カバー絶縁層5の材料
カバー絶縁層5の材料としては、例えば、上記した樹脂が挙げられる。
【0074】
6. 接着層6
接着層6は、上記した各層間に配置される。接着層6の材料(または原料)は、限定されない。接着層6は、第1接着層61と、第2接着層62と、第3接着層63とを厚み方向の他方側に向かって順に備える。
【0075】
6.1 第1接着層61
第1接着層61は、第1導体層31および第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面と、第1カバー絶縁層51の厚み方向の他方面とに配置されている。第1接着層61は、第1導体層31および第1多孔質絶縁層21と、第1カバー絶縁層51とを接着する。第1接着層61は、第1導体層31の厚み方向の一方面および側面と、第1導体層31の周囲の第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面とに接触する。第1接着層61は、第1カバー絶縁層51の厚み方向の他方面に接触する。
【0076】
6.2 第2接着層62
第2接着層62は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の他方面と、第2多孔質絶縁層22の厚み方向の一方面とに配置されている。つまり、第2接着層62は、第1多孔質絶縁層21と第2多孔質絶縁層22との間に配置されている。第2接着層62は、第2導体層32を厚み方向に埋設する。具体的には、第2接着層62は、第2導体層32の厚み方向の両方面および側面に接触する。また、第2接着層62は、上記した導体接続部4の残部の側面に接触する。具体的には、第2接着層62は、第1導体接続部41の厚み方向の他端部の周側面と、第2導体接続部42の厚み方向の他端部の周側面と、第3導体接続部43の厚み方向の一端部の周側面とに接触する。
【0077】
6.3 第3接着層63
第3接着層63は、第3導体層33および第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面と、第2カバー絶縁層52の厚み方向の一方面とに配置されている。なお、図1において、第3接着層63が第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面に配置される態様は、図示されていない。第3接着層63は、第3導体層33および第2多孔質絶縁層22と、第2カバー絶縁層52とを接着する。第3接着層63は、第3導体層33の厚み方向の他方面おおよび側面と、第3導体層33の周囲の第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面とに接触する。
【0078】
7.第4接着層64および補強層7
また、配線回路基板1は、仮想線で示す第4接着層64および補強層7をさらに備えてもよい。
【0079】
第4接着層64は、第2カバー絶縁層52の厚み方向の他方面に配置される。第4接着層64は、第2カバー絶縁層52と、次に説明する補強層7とを接着する。
【0080】
補強層7は、第1信号線34および第3グランド部38を補強する。補強層7は、第2カバー絶縁層52の厚み方向の他方側に配置される。具体的には、補強層7は、第4接着層64を介して、第2カバー絶縁層52の厚み方向の他方面に接着される。補強層7は、厚み方向に投影したときに第1信号線34および第3グランド部38と重なる。補強層7は、平板形状を有する。補強層7の材料は、限定されない。補強層7の材料としては、例えば、金属、および、硬質樹脂が挙げられる。補強層7の材料としては、好ましくは、金属、具体的には、ステンレス、銅、鉄、および、アルミニウムが挙げられる。補強層7の厚みは、限定されない。
【0081】
8. 配線回路基板1の製造方法
次に、配線回路基板1の製造方法を図1から図4Bを参照して説明する。
【0082】
8.1 第1多孔質積層体81の準備
図2Aに示すように、この方法では、まず、第1多孔質積層体81を準備する。
【0083】
第1多孔質積層体81は、第2導体層32と、一方側第2接着層62Aと、第1多孔質絶縁層21と、第1下地層311とを厚み方向の一方側に向かって順に備える。
【0084】
第1多孔質積層体81における第2導体層32は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の他方側に配置されている。第1多孔質積層体81における第2導体層32は、まだパターニングされる前であり、図1に示す配線回路基板1の第2導体層32ではない。
【0085】
一方側第2接着層62Aは、第2導体層32の厚み方向の一方面、および、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の他方面に配置されている。
【0086】
第1下地層311は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面に配置される。第1下地層311は、図1における配線回路基板1の第1導体層31に含まれる。
【0087】
第1多孔質積層体81の準備方法は、例えば、特開2019-123851号公報に記載される。
【0088】
8.2 第1ビア91の形成
図2Bに示すように、次いで、第1ビア91を、第1下地層311と、第1多孔質絶縁層21と、一方側第2接着層62Aとに形成する。なお、第1多孔質絶縁層21における第1ビア91は、上記した第1貫通孔23である。
【0089】
第1ビア91の形成方法としては、例えば、穿孔加工が挙げられる。穿孔加工としては、例えば、レーザー加工、ドリル加工およびブラスト法が挙げられる。好ましくは、レーザー加工が挙げられる。
【0090】
8.3 第1めっき層312の形成
図2Cに示すように、次いで、第1めっき層312を、第1ビア91の内周面と、第1下地層311の厚み方向の一方面とに形成する。第1ビア91の内周面に形成される第1めっき層312は、上記した第1導体接続部41である。
【0091】
8.4 第2導体層32のパターニング
図2Dに示すように、第2導体層32をパターニングして、第2信号線36と、2つの第2グランド線37とを形成する。第2導体層32のパターニングとしては、例えば、ウエットエッチングおよびドライエッチングが挙げられ、好ましくは、ウエットエッチングが挙げられる。
【0092】
8.5 第2の多孔質積層体82の第2導体層32への貼り合わせ
図2Dの下側図および図3Aに示すように、第2の多孔質積層体82を、第2導体層32に貼り合わせる。
【0093】
図2Dの下側図に示すように、まず、第2の多孔質積層体82を準備する。第2の多孔質積層体82は、他方側第2接着層62Bと、第2多孔質絶縁層22と、第2下地層331とを厚み方の他方側に向かって順に備える。
【0094】
他方側第2接着層62Bは、第2多孔質絶縁層22の厚み方向の一方面に配置される。
【0095】
第2下地層331は、第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面に配置される。第2下地層331は、上記した第3導体層33に含まれる。
【0096】
第2の多孔質積層体82の準備方法は、例えば、特開2019-123851号公報に記載される。
【0097】
次いで、図2Dの矢印および図3Aに示すように、第2の多孔質積層体82の他方側第2接着層62Bを、第2導体層32に貼り合わせる。この際、厚み方向にプレス可能なプレス機(図示せず)を用いる。プレスの圧力は、限定されない。プレスの圧力は、例えば、0.5MPa以上、好ましくは、3MPa以上であり、また、例えば、10MPa以下である。プレスの時間は、例えば、1分以上、好ましくは、10分以上であり、また、例えば、120分以下である。プレスは、熱プレスであってもよい。プレス温度は、例えば、80℃以上、好ましくは、120℃以上であり、また、例えば、300℃以下である。
【0098】
上記した他方側第2接着層62Bの貼り合わせにおいて、一方側第2接着層62Aおよび他方側第2接着層62Bは、変形して、隣接する第2信号線36および第2グランド線37の間に入り込む。これによって、一方側第2接着層62Aと他方側第2接着層62Bとは、第2接着層62を形成する。図3Aから図4Bにおいて、一方側第2接着層62Aと他方側第2接着層62Bとの界面を、仮想線で示しているが、この界面は、観察されなくてもよい。一方側第2接着層62Aと他方側第2接着層62Bとは、一体をなす。
【0099】
8.6 第2ビア92および第3ビア93の形成
図3Bに示すように、第2ビア92を、第1めっき層312と、第1下地層311と、一方側第2接着層62Aとに形成する。なお、第1多孔質絶縁層21における第2ビア92は、第2貫通孔24である。
【0100】
併せて、第3ビア93を、第2下地層331と、第2多孔質絶縁層22と、他方側第2接着層62Bとに、形成する。なお、第2多孔質絶縁層22における第3ビア93は、第3貫通孔25である。
【0101】
第2ビア92および第3ビア93の形成方法としては、第1ビア91で例示した形成方法が挙げられる。
【0102】
8.7 第2めっき層313および第3めっき層332の形成
次いで、図3Cに示すように、第2めっき層313を、第1めっき層312の厚み方向の一方面と、第2ビア92の内周面とに形成する。併せて、第3めっき層332を第2下地層331の厚み方向の他方面と、第3ビア93の内周面とに形成する。
【0103】
具体的には、第2めっき層313および第3めっき層332の形成の前に、図3Bに示すように、第1レジスト95と第2レジスト96とのそれぞれを、第1めっき層312の厚み方向の一方面と、第2下地層331の厚み方向の他方面とのそれぞれに配置する。第1レジスト95と第2レジスト96とは、いずれもめっきレジストである。第1レジスト95は、第2めっき層313の逆パターンを有する。第2レジスト96は、第3めっき層332の逆パターンを有する。
【0104】
その後、第1レジスト95が配置された第1めっき層312と、第2レジスト96が配置された第2下地層331とを備えるレジスト積層体83をめっき浴に浸漬して、めっき処理を実施する。
【0105】
第1レジスト95から露出する第1めっき層312の厚み方向の一方面と、第2ビア92の内周面とに、第2めっき層313が析出する。一方、第1レジスト95が配置された第1めっき層312の厚み方向の一方面には、第2めっき層313が析出しない。
【0106】
第2レジスト96から露出する第2下地層331の厚み方向の他方面と、第3ビア93の内周面とに、第3めっき層332が析出する。一方、第2レジスト96が配置された第2下地層331の厚み方向の他方面には、第3めっき層332が析出しない。
【0107】
これによって、第3グランド部38と第4グランド部39とを備える第3導体層33が形成される。
【0108】
第3グランド部38は、第2下地層331から形成される。そのため、第3グランド部38の厚みT3は、第2下地層331の厚みと同一である。
【0109】
第4グランド部39は、第2下地層331と第3めっき層332とから形成される。そのため、第4グランド部39の厚みT4は、第2下地層331と第3めっき層332との合計厚みと同一である。
【0110】
その後、上記した第1レジスト95と第2レジスト96とを除去する。
【0111】
8.8 第1めっき層312および第1下地層311のパターニング
図4Aに示すように、第1めっき層312および第1下地層311をパターニングする。第1めっき層312および第1下地層311のパターニングとしては、例えば、ウエットエッチングおよびドライエッチングが挙げられ、好ましくは、ウエットエッチングが挙げられる。これによって、第1信号線34と、第1グランド線35とを備える31が形成される(第1工程の実施)。
【0112】
第1信号線34は、パターニングされた第1下地層311と、パターニングされた第1めっき層312とから形成される。そのため、第1信号線34の厚みT1は、第1下地層311と第1めっき層312との合計厚みである。
【0113】
第1グランド線35は、パターニングされた第1下地層311と、パターニングされた第1めっき層312と、第2めっき層313とから形成される。そのため、第1グランド線35の厚みT2は、第1下地層311と第1めっき層312と第2めっき層313との合計厚みである。
【0114】
8.9 第1カバー積層体85、および、第2カバー積層体86の貼り合わせ
図4Bに示すように、第1カバー積層体85を第1導体層31に貼り合わせる(第2工程の実施)。仮想線で示すように、第1カバー積層体85は、第1カバー絶縁層51と、第1接着層61とを厚み方向の他方側に向かって順に備える。
【0115】
併せて、第2カバー積層体86を第2導体層32に貼り合わせる。仮想線で示すように、第2カバー積層体86は、第2カバー絶縁層52と、第2接着層62とを厚み方向の一方側に向かって順に備える。
【0116】
上記した貼り合わせでは、上記したプレス機を用いる。プレスの条件は、上記と同様である。
【0117】
上記した第1カバー積層体85の貼り合わせにおいて、第1接着層61は、隣接する第1信号線34と第1グランド線35との間に入り込む。第1接着層61は、第1信号線34と第1グランド線35とから露出する第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面に接触する。
【0118】
上記した第2カバー積層体86の貼り合わせにおいて、第2接着層62は、第3導体層33の周囲の第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面に接触する。
【0119】
以上によって、多孔質絶縁層2と、導体層3と、導体接続部4と、カバー絶縁層5と、接着層6とを備える配線回路基板1が製造される。
【0120】
さらに、図1に示すように、配線回路基板1に補強層7を設ける場合には、補強層7を第4接着層64を介して第2カバー絶縁層52に貼り合わせる。補強層7の貼り合わせでは、上記したプレス機を用いる。プレスの条件は、上記と同様である。
【0121】
9. 一実施形態の作用効果
この配線回路基板1では、第1グランド線35が第1信号線34より厚い。換言すれば、第1信号線34が第1グランド線35より薄い。
【0122】
そのため、例えば、第2の多孔質積層体82(図2D参照)を第2導体層32に貼り合わせる際、さらには、補強層7を配線回路基板1に設ける際に、第1多孔質絶縁層21を厚み方向にプレスすると、厚み方向において第1信号線34と重なる第1多孔質絶縁層21は、厚み方向において第1グランド線35と重なる第1多孔質絶縁層21に比べて、小さなプレス圧を受ける。そのため、厚み方向において第1信号線34と重なる第1多孔質絶縁層21の厚みの変動を、厚み方向において第1グランド線(第2配線部)35と重なる21の厚みの変動に比べて、抑制できる。具体的には、第1信号線34の特性インピーダンスのミスマッチを抑制できる。
【0123】
その結果、第1信号線34の電気特性の変動を、第1グランド線35の電気特性の変動よりも、抑制できる。
【0124】
他方、第1グランド線35と重なる第1多孔質絶縁層21は、大きく変動するものの、第1グランド線35に流れる微弱電流はアースされることから、第1グランド線35の電気特性の大きな変動は許容される。
【0125】
この配線回路基板1では、グランド層である第3導体層33が、第1信号線34に重なる第3グランド部38と、第1グランド線35に重なり、第3グランド部38より厚い第4グランド部39とを備える。そのため、配線回路基板1を厚み方向にプレスすると、厚み方向において第1信号線34と重なる多孔質絶縁層2(第1多孔質絶縁層21および第2多孔質絶縁層22)は、厚み方向において第1グランド線35と重なる多孔質絶縁層2に比べて、より一層小さなプレス圧を受ける。そのため、厚み方向において第1信号線34と重なる多孔質絶縁層2の厚みの変動を、厚み方向において第1グランド線35と重なる多孔質絶縁層2の厚みの変動に比べて、より一層抑制できる。具体的には、第1信号線34の特性インピーダンスのミスマッチをより一層抑制できる。
【0126】
また、上記した製造方法において、図4Bに示すように、第1カバー積層体85を第1導体層31に貼り合わせる工程で、多孔質絶縁層2(第1多孔質絶縁層21および第2多孔質絶縁層22)に大きなプレス圧がかかっても、上記したように、厚み方向において第1信号線34と重なる多孔質絶縁層2の厚みの変動を、厚み方向において第1グランド線35と重なる多孔質絶縁層2の厚みの変動に比べて、抑制できる。その結果、第1信号線34の電気特性の変動を、第1グランド線35の電気特性の変動よりも、抑制できる。
【0127】
10. 変形例
変形例において、一実施形態と同様の部材および工程については、同一の参照符号を付し、その詳細な説明を省略する。また、変形例は、特記する以外、一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。さらに、一実施形態およびその変形例を適宜組み合わせることができる。
【0128】
第1グランド線35、第2グランド線37および第3導体層33のそれぞれは、第1電源線、第2電源線および電源層のそれぞれであってもよい。第1電源線、第2電源線および電源層は、第2導体接続部42と第3導体接続部43ととともに、電源パスを形成する。電源パスには、例えば、1A以上、さらには、10A以上の大電流が流れる。
【0129】
図1に示すように、第1信号線34は、2つの第1グランド線35の間に配置されている。図示しないが、変形例では、第1信号線34は、第1方向において一の第1グランド線35に対する他の第1グランド線35の反対側に配置されていてもよい。また、第1信号線34は、第1方向において他の第1グランド線35に対する一の第1グランド線35の反対側に配置されていてもよい。
【0130】
好ましくは、第1信号線34は、2つの第1グランド線35の間に配置されている。そうすれば、平板形状を有するプレス板を用いるプレス時に、厚み方向において2つの第1グランド線35と重なる多孔質絶縁層2が、大きなプレス圧をバランスよく受けることができるので、2つの第1グランド線35の間に配置される第1信号線34と重なる多孔質絶縁層2は、より一層小さいプレス圧を受ける。そのため、厚み方向において第1信号線34と重なる多孔質絶縁層2の厚みの変動を、厚み方向において第1グランド線35と重なる多孔質絶縁層2の厚みの変動に比べて、より一層抑制できる。
【0131】
図示しないが、第1グランド線(第2配線部)35は1つであってもよい。
【0132】
図5に示す配線回路基板1では、導体層3は、グランド層の一例としての第1導体層30を有する。第1導体層30は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面に配置されている。第1導体層30は、第1グランド部301と、第2グランド部302とを備える。
【0133】
第1グランド部301は、2つの第2貫通孔24の間の第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面に配置される。第1グランド部301は、第1方向に延びる。第1グランド部301は、厚み方向に投影したときに、第3グランド部38と重なる。第1グランド部301は、平板形状を有する。
【0134】
一の第2グランド部302の厚み方向の他方側部分は、第1グランド部301の第1方向の一端部に連結される。他の第2グランド部302の厚み方向の他方側部分は、第1グランド部301の第1方向の他端部に連結される。これにより、2つの第2グランド部302は、第1グランド部301を介して互いに電気的に接続される。
【0135】
従って、第1導体層30と、第2グランド線37と、第3導体層33と、導体接続部4とは、断面視において、略矩形枠形状のグランドパスを形成する。矩形枠は、断面視において、第2信号線36を囲む。
【0136】
図6に示すように、配線回路基板1は、1つの多孔質絶縁層2と、1つの導体層3と、2つの接着層6と、1つのカバー絶縁層5とを備える。
【0137】
多孔質絶縁層2は、第1多孔質絶縁層21である。第1多孔質絶縁層21は、第2貫通孔24を備えない。
【0138】
導体層3は、第1導体層31である。
【0139】
接着層6は、第1接着層61と、第2接着層62とを備える。
【0140】
カバー絶縁層5は、第1カバー絶縁層51である。
【0141】
図6に示す配線回路基板1では、第1多孔質絶縁層21と、第2接着層62と、第1導体層31と、第1接着層61と、第1カバー絶縁層51とが厚み方向の一方側に向かって順に配置される。
【0142】
図7に示す配線回路基板1では、導体層3は、上記した第1導体層31と、第3導体層40とを備える。
【0143】
第3導体層40は、第2信号線36と、2つの第4グランド部39とを備える。
【0144】
図示しないが、多孔質絶縁層2は、厚み方向の一端部および/または他端部に位置するスキン層を含む。スキン層は、面方向に延びる。スキン層は、平滑である。例えば、第1多孔質絶縁層21は、厚み方向の一端部および/または他端部に配置されるスキン層を含む。第2多孔質絶縁層22は、厚み方向の一端部および/または他端部にスキン層を含む。
【0145】
厚み方向における第1多孔質絶縁層21の一端部に位置するスキン層は、厚み方向における第1多孔質絶縁層21の一方面を形成する。厚み方向における第1多孔質絶縁層21の他端部に位置するスキン層は、厚み方向における第1多孔質絶縁層21の他方面を形成する。第1多孔質絶縁層21の厚みに対するスキン層の厚みの比は、例えば、0.1未満である。スキン層の厚みは、スキン層の第1下地層311に対する剥離強度を担保できるように適宜調整される。具体的には、スキン層の厚みは、例えば、1μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0146】
厚み方向における第2多孔質絶縁層22の一端部に位置するスキン層は、厚み方向における第2多孔質絶縁層22の一方面を形成する。厚み方向における第2多孔質絶縁層22の他端部に位置するスキン層は、厚み方向における第2多孔質絶縁層22の他方面を形成する。第2多孔質絶縁層22の厚みに対するスキン層の厚みの比は、例えば、0.1未満である。スキン層の厚みは、スキン層の一方側第2接着層62Aに対する剥離強度を担保できるように適宜調整される。具体的には、スキン層の厚みは、例えば、1μm以上であり、また、例えば、50μm以下、好ましくは、30μm以下である。
【0147】
図示しないが、接着層6は、図示しない第4接着層および第5接着層を備える。
【0148】
第4接着層は、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面に配置さる。第4接着層は、第1多孔質絶縁層21と、第1導体層31との間に介在する。第4接着層は、第1多孔質絶縁層21と、第1導体層31とを接着する。この変形例では、第1多孔質絶縁層21の厚み方向の一方面および両方面のそれぞれに、第4接着層および第2接着層62(一方側第2接着層62A、図3C参照)のそれぞれが配置される。
【0149】
第5接着層は、第2多孔質絶縁層22の厚み方向の他方面に配置される。第5接着層は、第2多孔質絶縁層22と、第3導体層33との間に介在する。第5接着層は、第2多孔質絶縁層22と、第3導体層33とを接着する。この変形例では、第2多孔質絶縁層22の厚み方向の一方面および他方面のそれぞれに、第2接着層62(他方側第2接着層62B、図3C参照)および第5接着層のそれぞれ4が配置される。
【0150】
この変形例の配線回路基板1を製造するには、図2Aが参照されるように、第2導体層32と、一方側第2接着層62Aと、第1多孔質絶縁層21と、図示しない第4接着層と、第1下地層311とを厚み方向の一方側に向かって順に備える第1多孔質積層体81を準備する。
【0151】
図2Dの下側図が参照されるように、他方側第2接着層62Bと、第2多孔質絶縁層22と、図示しない第5接着層と、第2下地層331とを厚み方の他方側に向かって順に備える第2の多孔質積層体82を用いる。
【符号の説明】
【0152】
1 配線回路基板
2 多孔質絶縁層
3 導体層
4 導体接続部
5 カバー絶縁層
21 第1多孔質絶縁層
22 第2多孔質絶縁層
23 第1貫通孔
24 第2貫通孔
25 第3貫通孔
30,31 第1導体層
32 第2導体層
33,40 第3導体層(グランド層)
34 第1信号線(第1配線部)
35 第1グランド線(第2配線部)
36 第2信号線
37 第2グランド線
38 第3グランド部(第3配線部)
39 第4グランド部(第4配線部)
51 第1カバー絶縁層
52 第2カバー絶縁層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7