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特開2022-182988エミッタ、通信システム、および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022182988
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】エミッタ、通信システム、および方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/516 20130101AFI20221201BHJP
   H04L 9/12 20060101ALI20221201BHJP
   H04B 10/70 20130101ALI20221201BHJP
【FI】
H04B10/516
H04L9/12
H04B10/70
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022036265
(22)【出願日】2022-03-09
(31)【優先権主張番号】2107712.8
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】ロバート イアン ウッドワード
(72)【発明者】
【氏名】ジリアン ユアン
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー ジェームス シールズ
【テーマコード(参考)】
5K102
【Fターム(参考)】
5K102AA15
5K102AH01
5K102AH27
5K102PA12
5K102PB11
5K102PH22
5K102PH24
5K102PH33
5K102PH41
5K102PH49
5K102RB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】多くのQKDシステムにおいて使用することができる、小型、低コスト、かつ、低消費電力の光エミッタ、通信システム及び方法提供する。
【解決手段】異なる偏光を有する周期的な光パルスのシーケンスを出力するように構成されたエミッタであって、第1のパルスのシーケンスのパルスを、第1の経路3と第2の経路5に分割するビームスプリッタ1と、第1の経路3のパルスの偏光状態を、第2の経路5におけるパルスの偏光状態に対して回転させる偏光回転子7と、第1の経路3に対し第2の経路5における第1のパルスのシーケンスを1周期遅延する時間遅延ユニット9と、パルスの出力シーケンスを生成するように第1の経路3からの第1のパルスのシーケンスを第2の経路5からの第1のパルスのシーケンスと合成する偏光ビームスプリッタ11と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる偏光を有する周期的な光パルスのシーケンスを出力するように構成されたエミッタであって、
第1のパルスのシーケンスのパルスを、各パルスが第1の経路と第2の経路とで分離されるように、分割するように構成されたビームスプリッタと、前記第1のパルスのシーケンスは、異なった位相および第1の偏光を有し、
前記第1の経路または前記第2の経路のうちの一方におけるパルスの偏光状態を、他方の経路におけるパルスの偏光状態に対して回転させるように構成された偏光回転子と、
前記第1の経路における前記第1のパルスのシーケンスが前記第2の経路における前記第1のパルスのシーケンスに対して1周期遅延するように時間遅延を提供するように構成された時間遅延コンポーネントと、
パルスの出力シーケンスを生成するように前記第1の経路からの遅延した前記第1のパルスのシーケンスを前記第2の経路からの前記第1のパルスのシーケンスと合成するように構成された光合成コンポーネントと、ここで、前記出力シーケンスにおける各パルスは、前記第2の経路からのパルスと前記第1の経路からの遅延パルスとを合成したものであり、合成されたパルス間の位相差と前記第1の経路および前記第2の経路の偏光とから決定された偏光を有する、
を備える、エミッタ。
【請求項2】
前記エミッタは、異なった位相および第1の偏光を有する前記第1の光パルスのシーケンスを生成するように構成された第1の光源をさらに備える、請求項1に記載のエミッタ。
【請求項3】
前記第1の光源用のコントローラをさらに備え、前記コントローラは、前記第1の光源にパルスを出力させるように構成されており、パルスのペアは、設定数の位相差のうちの1つをランダムに選択することを可能にする位相差を有する、請求項2に記載のエミッタ。
【請求項4】
前記コントローラは、前記第1の光源に、0、π/2、-π/2、およびπのうちの1つからランダムに選択された設定された位相差を有するパルスのペアを出力させるように構成されている、請求項3に記載のエミッタ。
【請求項5】
前記コントローラは、前記第1の光源に前記設定された位相差を有するパルスのペアを出力させ、ランダムな位相差が、1つのペアのうちの後のパルスと後続するペアのうちの第1のパルスとの間に提供されるように構成される、請求項3または4に記載のエミッタ。
【請求項6】
前記第1の光源は利得スイッチレーザであり、前記コントローラは、前記第1の光源に適用された利得を修正するように構成されている、請求項3乃至5のいずれか一項に記載のエミッタ。
【請求項7】
二次レーザとして構成され、かつ前記第1の光源からシーディングパルスを受信する少なくとも1つのさらなる利得スイッチレーザをさらに備える、請求項6に記載のエミッタ。
【請求項8】
前記二次レーザによって出力された前記パルスのシーケンスが前記ビームスプリッタによって分割されるように、前記ビームスプリッタより前に前記二次レーザが設けられる、請求項7に記載のエミッタ。
【請求項9】
前記二次レーザは、第1の利得スイッチ二次レーザおよび第2の利得スイッチ二次レーザによって提供され、前記第1の二次レーザは、前記第1の経路内に設けられ、前記第2の二次レーザは、前記第2の経路内に設けられる、請求項7に記載のエミッタ。
【請求項10】
前記第1の二次レーザが前記設定された位相差を有するパルスのペアの第2のパルスを受信したときにパルスを放出しないように前記第1の二次レーザを制御し、前記第2の二次レーザが前記設定された位相差を有するパルスのペアの前記第1のパルスを受信したときにパルスを放出しないように前記第2の二次レーザを制御するために、二次レーザコントローラが設けられる、請求項9に記載のエミッタ。
【請求項11】
前記第1の経路および前記第2の経路は、偏光維持光ファイバを備え、前記偏光回転子は、一方の経路内のファイバ複屈折軸を回転させることによって設けられる、請求項1乃至10のいずれか一項に記載のエミッタ。
【請求項12】
前記光合成コンポーネントは、偏光ビームスプリッタである、請求項1乃至11のいずれか一項に記載のエミッタ。
【請求項13】
前記パルスの出力シーケンスの偏光を回転させるために設けられた波長板をさらに備える、請求項1乃至12のいずれか一項に記載のエミッタ。
【請求項14】
前記偏光回転子は、前記第1の経路または前記第2の経路のうちの一方におけるパルスの偏光状態を、一方の経路におけるパルスが他方の経路におけるパルスに対して直交偏光を有するようにパルスの偏光状態に対して回転させるように構成されている、請求項1乃至13のいずれか一項に記載のエミッタ。
【請求項15】
前記エミッタは、2つの偏光基底からランダムに選択されたパルスを出力するように構成されている、請求項1乃至14のいずれか一項に記載のエミッタ。
【請求項16】
前記エミッタは、4つの状態のうちの1つを出力するように構成されており、前記4つの状態は、各偏光基底における2つの直交状態から選択される、請求項15に記載のエミッタ。
【請求項17】
前記エミッタは、少なくとも1つの利得スイッチレーザを備え、前記4つの状態は、前記4つの状態の前記出力を可能にする値間で前記利得スイッチレーザの利得をランダムにスイッチすることによって選択される、請求項16に記載のエミッタ。
【請求項18】
請求項15乃至17のいずれか一項に記載のエミッタと受信機とを備える通信システムであって、前記受信機は、前記エミッタからパルスを受信し、前記パルスを第1または第2の偏光基底で測定するように構成されている、通信システム。
【請求項19】
異なる偏光を有する周期的な光パルスのシーケンスを放出する方法であって、
異なった位相および第1の偏光を有する第1の光パルスのシーケンスを受信することと、
前記第1のパルスのシーケンスのパルスを、各ビームからのパルスが第1の経路と第2の経路とで分離されるように分割することと、
前記第1の経路または前記第2の経路のうちの一方におけるパルスの偏光状態を、他方の経路におけるパルスの偏光状態に対して回転させることと、
前記第1の経路における前記第1のパルスのシーケンスを前記第2の経路における前記第1のパルスのシーケンスに対して1周期時間的に遅延させることと、
パルスの出力シーケンスを生成するように前記第1の経路からの遅延した前記第1のパルスのシーケンスを前記第2の経路からの前記第1のパルスのシーケンスと合成することと、ここで、前記出力シーケンスにおける各パルスは、前記第2の経路からのパルスと前記第1の経路からの遅延パルスとを合成したものであり、合成されたパルス間の位相差と前記第1の経路および前記第2の経路の偏光とから決定された偏光を有する、
を備える、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法にしたがって異なる偏光を有する周期的な光パルスのシーケンスを放出することと、ここにおいて、異なる偏光を有する前記周期的な光パルスのシーケンスにおけるパルスは、2つの偏光基底からランダムに選択された偏光を備え、
異なる偏光を有する前記周期的な光パルスのシーケンスを受信機において受信し、前記受信機において前記偏光基底を変化させることと、
を備える、量子通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に記載の実施形態は、光エミッタ、通信システム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子通信システムでは、情報は、単一光子など、符号化された単一量子によって送信機と受信機との間で送られる。各光子は、偏光などの光子の特性上に符号化され得る1ビットの情報を搬送する。
【0003】
量子鍵配送(QKD)は、多くの場合「アリス」と呼ばれる送信機と、多くの場合「ボブ」と呼ばれる受信機の二者間での暗号鍵の共有をもたらす技法である。この技法の魅力は、多くの場合「イブ」と呼ばれる承認されていない盗聴者に、鍵の一部が知られた可能性があるかどうかのテストを提供するということである。量子鍵配送の多くの形態で、アリスとボブは、ビット値を符号化するための2つ以上の非直交基底を使用する。量子力学の法則によれば、イブが各々の符号化基底を事前に知ることなく光子を測定すると、一部の光子の状態の変化を不可避的に引き起こすとされている。これらの光子の状態の変化により、アリスとボブとの間で送信されるビット値に誤りが生じることになる。したがって、それらの共通のビット列の一部を比較することによって、アリスとボブは、イブが情報を得たかどうかを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1Aは、一実施形態に係るエミッタの概略図である。図1Bは、図1Aのエミッタ内への入力のためのパルス列の概略図である。図1Cは、図1Aのエミッタによって出力されるパルス列の概略図である。
図2A図2Aは、一次レーザおよび二次レーザ配置の概略図である。
図2図2Bは、持続時間tの制御利得の微小摂動下での一次レーザの光周波数のプロットである。図2Cは、一次レーザの摂動ありと摂動なしの光位相軌道のプロットである。図2Dは、二次レーザの出力パルスのプロットである。
図3A図3Aは、一次レーザおよび二次レーザを駆動するための利得変調回路の概略図である。
図3B図3Bは、一連の5つの時間依存プロットであり、一番上のプロットから順番に、一次レーザの変調、一次レーザのキャリア密度、一次レーザの出力、二次レーザの変調、および二次レーザの出力である。
図4図4Aは、一次利得スイッチレーザおよび二次利得スイッチレーザを有する一実施形態に係るエミッタの概略図である。図4Bは、図4Aのエミッタ内への入力のためのパルス列の概略図である。図4Cは、図4Aのエミッタによって出力されるパルス列の概略図である。
図5図5Aは、ファイバベースである一実施形態に係るエミッタの概略図である。図5Bは、図5Aのエミッタによって出力されるパルス列の概略図である。
図6図6Aは、二次レーザがエミッタの各アームに設けられている一実施形態に係るエミッタの概略図である。図6Bは、図6Aのエミッタによって出力されるパルス列の概略図である。
図7図7は、一実施形態に係る量子通信システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
一実施形態では、異なる偏光を有する周期的な光パルスのシーケンスを出力するように構成されたエミッタが提供され、本エミッタは、
第1のパルスのシーケンスのパルスを、各パルスが第1の経路と第2の経路とで分離されるように分割するように構成されたビームスプリッタと、第1のパルスのシーケンスは、異なった位相および第1の偏光を有し、
第1の経路または第2の経路のうちの一方におけるパルスの偏光状態を、他方の経路におけるパルスの偏光状態に対して回転させるように構成された偏光回転子と、
第1の経路における第1のパルスのシーケンスが第2の経路における第1のパルスのシーケンスに対して1周期遅延するように時間遅延を提供するように構成された時間遅延コンポーネントと、
パルスの出力シーケンスを生成するように第1の経路からの遅延した第1のパルスのシーケンスを第2の経路からの第1のパルスのシーケンスと合成するように構成された光合成コンポーネント(optical combination component)と、ここで、出力シーケンスにおける各パルスは、第2の経路からのパルスと第1の経路からの遅延パルスとを合成したものであり、合成されたパルス間の位相差と第1の経路および第2の経路の偏光とから決定された偏光を有する、を備える。
【0006】
上記エミッタは、異なる固定の偏光および位相を有するパルスの干渉を使用して、異なる偏光を有するパルスの流れを生成する。パルスの偏光は、入力パルスのペア間の位相差の制御によって制御することができる。よって、各パルスの偏光を能動的に設定するための偏光変調器等を使用せずに、異なった偏光を有するパルスの流れを出力することが可能である。エミッタは、位相で符号化されたパルスのシーケンスを変換し、偏光で符号化されたパルスの対応するシーケンスを出力する。一方の経路内に設けられる偏光回転子は、固定偏光回転子であり、パルスごとに変調されない。
【0007】
一実施形態では、エミッタは、異なった位相および第1の偏光を有する第1の光パルスのシーケンスを生成するように構成された第1の光源を備える。
【0008】
上記は多くの使用用途を有し、高クロックレートの符号化された情報を有する光パルスの生成は、光通信のための鍵構築ブロックである。光の偏光状態は、情報を符号化するために変調することができる最も一般的な光学特性の1つである(例えば、偏光シフトキーイング)。実用的な通信システムの用途のためには、光送信機は、簡単、小型、低コストであり、かつ低消費電力であるべきである。上記実施形態は、本技術分野の技術水準を簡単にし、よって、多くの通信分野で使用することができる。
【0009】
また、偏光変調レーザ光源が様々なセンシングおよびイメージング用途のために必要であり、それら用途では、試料の光に対する応答が、その構造または特性についての情報を推論するために偏光の関数として測定される(例えば、偏光変調赤外反射吸収分光(PM-IRRAS))。
【0010】
上記エミッタは、多くのQKDシステムにおいて使用することができる。例えば、上記は、偏光符号化量子鍵配送(QKD)および偏光符号化測定装置無依存量子鍵配送(MDI QKD)デバイスにおいて使用することができる。偏光符号化は、衛星QKDなどの自由空間QKD用途で特に重要である。QKDでは、本エミッタは、平均して1光子以下を備えるように、エミッタを出るパルスを減衰させるように構成された減衰器をさらに備えてもよい。
【0011】
量子通信では、偏光符号化は、弱い光パルス上に情報を符号化するために使用することができる。一部の符号化プロトコルは、パルスを2つの符号化基底のうちの1つで準備することが必要であり、ここで各基底に2つの直交状態がある。これは上記エミッタによって達成することができる。
【0012】
本エミッタは、該第1の光源用のコントローラをさらに備えてよく、該コントローラは、該第1の光源にパルスを出力させるように構成されており、ここで、パルスのペアは、設定数の位相差のうちの1つをランダムに選択することを可能にする位相差を有する。例えば、コントローラは、パルスのペア間の位相差を、2つの基底および各基底内の2つの直交状態に対応する異なる4つの値間でスイッチするように構成されていてよい。例えば、本エミッタは、該第1の光源用のコントローラを備えてよく、該コントローラは、該第1の光源に、0、π/2、-π/2、およびπのうちの1つからランダムに選択された設定された位相差を有するパルスのペアを出力させるように構成されている。
【0013】
一実施形態では、コントローラは、該第1の光源に該設定された位相差を有するパルスのペアを出力させ、ランダムな位相差が、1つのペアのうちの後のパルスと後続するペアのうちの第1のパルスとの間に提供されるように構成されている。
【0014】
一実施形態では、第1の光源は利得スイッチレーザであり、該コントローラは、第1の光源に適用された利得を修正するように構成されている。第1の光源に適用される利得を修正することによって、レーザによって出力されるパルスの位相の出力を制御することが可能である。第1の光源から出力されるパルスは、二次レーザへのシーディングパルスとして使用することができる。次いで二次利得スイッチレーザは、シーディングパルスの位相に関連する位相を有するが低減されたジッタを有するパルスを出力することになる。
【0015】
1つの実施形態では、二次レーザは、二次レーザによって出力されたパルスのシーケンスが該ビームスプリッタによって分割されるように、該ビームスプリッタより前に設けられる。
【0016】
さらなる実施形態では、二次レーザは、第1の利得スイッチ二次レーザおよび第2の利得スイッチ二次レーザによって提供され、第1の二次レーザは、第1の経路内に設けられ、第2の二次レーザは、第2の経路内に設けられる。この配置では、第1の二次レーザが設定された位相差を有するパルスのペアの第2のパルスを受信したときにパルスを放出しないように第1の二次レーザを制御し、第2の二次レーザが設定された位相差を有するパルスのペアの第1のパルスを受信したときにパルスを放出しないように第2の二次レーザを制御するために、二次レーザコントローラが設けられてよい。
【0017】
一実施形態では、偏光回転子は、第1の経路または第2の経路のうちの一方におけるパルスの偏光状態を、一方の経路におけるパルスが他方の経路におけるパルスに対して直交偏光を有するようにパルスの偏光状態に対して回転させるように構成されている。
【0018】
さらなる実施形態では、第1の経路および第2の経路は、偏光維持光ファイバを備え、偏光回転子は、一方の経路内のファイバ複屈折軸を回転させることによって設けられる。そのような配置により、光学合成部品が偏光ビームスプリッタとなることが可能になる。
【0019】
光学合成部品は、位相差によって決定される偏光を有するパルスを出力することになる。例えば、出力偏光を新たな偏光基底に変換するために、出力されたすべてのパルスに固定回転を適用することが望まれ得る。そのため、エミッタは、パルスの出力シーケンスの偏光を回転させるために設けられた波長板をさらに備えてよい。
【0020】
上述のように、エミッタは、量子鍵配送(QKD)で使用することができる。そのような使用の場合、エミッタは、2つの偏光基底からランダムに選択されたパルスを出力するように構成されてよい。例えば、これは、4つの状態のうちの1つを出力するようにエミッタを構成することによって達成でき、該4つの状態は、各偏光基底における2つの直交状態から選択される。
【0021】
利得スイッチレーザを備える実施形態において、偏光状態をスイッチすることは、レーザの利得をスイッチすることによって達成することができる。出力パルスのペアにおける出力パルス間の位相差を4つの値のうちの1つからランダムに選択することが可能になるように、レーザの利得を制御することができる。4つの値は、パルス間の干渉により、所望の偏光状態がエミッタから出力されることが可能になるように選択される。
【0022】
さらなる実施形態では、上記エミッタと受信機とを備える通信システムが提供され、該受信機は、該エミッタからパルスを受信し、該パルスを第1または第2の偏光基底で測定するように構成されている。例えば、該受信機は、該第1および第2の偏光基底間で能動的または受動的にスイッチされるように構成された偏光スプリッタと、該偏光スプリッタの出力を測定するように構成された少なくとも1つの検出器とを備えてよい。
【0023】
さらなる実施形態では、異なる偏光を有する周期的な光パルスのシーケンスを放出する方法が提供され、本方法は、
異なった位相および第1の偏光を有する第1の光パルスのシーケンスを受信することと、
第1のパルスのシーケンスのパルスを、各ビームからのパルスが第1の経路と第2の経路とで分離されるように分割することと、
第1の経路または第2の経路のうちの一方におけるパルスの偏光状態を、他方の経路におけるパルスの偏光状態に対して回転させることと、
第1の経路における第1のパルスのシーケンスを第2の経路における第1のパルスのシーケンスに対して1周期時間的に遅延させることと、
パルスの出力シーケンスを生成するように第1の経路からの遅延した第1のパルスのシーケンスを第2の経路からの第1のパルスのシーケンスと合成することと、ここで、出力シーケンスにおける各パルスは、第2の経路からのパルスと第1の経路からの遅延パルスとを合成したものであり、合成されたパルス間の位相差と第1の経路および第2の経路の偏光とから決定された偏光を有する、を備える。
【0024】
さらなる実施形態では、量子通信方法が提供され、本方法は、
上述の方法にしたがって異なる偏光を有する周期的な光パルスのシーケンスを放出することと、ここにおいて、異なる偏光を有する周期的な光パルスのシーケンスにおけるパルスは、2つの偏光基底からランダムに選択された偏光を備え、
異なる偏光を有する周期的な光パルスのシーケンスを受信機において受信し、受信機において偏光基底を変化させることと、を備える。
【0025】
図1Aは、一実施形態に係るエミッタを示し、エミッタへの入力は、「第1の」パルスシーケンスと呼ばれる、位相符号化されたパルスのシーケンスである。第1のパルスシーケンスは、図1Bにより詳細に示されている。第1のパルスシーケンスは、一連のパルスのペアと見なすことができる。パルスの各ペアは、パルスの各ペアのパルス間の位相差Φ、Φ、Φで符号化された1つのビットに対応する。1つのペアのうちの後のほうのパルスと時間的に後続するペアのうちの前のほうのパルスとの間の位相差は、ランダムであるべきであり、図中に「?」として示されている。本実施形態では、この第1のパルスシーケンスの偏光は水平である。しかしながら、他の偏光が可能である。本実施形態では、すべてのパルスが同じ偏光を有し、この固定偏光は、第1のパルスシーケンスを生成する光源によって生成されることができるか、またはシステム内のさらなるコンポーネントによって生成されることができる。
【0026】
この理由と、各ペアにおけるパルス間でパルス差がどのようにして選択されるかについて、本説明の後半でより詳細に説明する。まず、第1のパルスシーケンスは、50:50ビームスプリッタ1上に衝突する。ビームスプリッタ1は偏光ビームスプリッタではなく、パルスの50%が第1の経路3を辿り、パルスの50%が第2の経路5を辿るように各パルスを分離させるように構成されている。
【0027】
第1の経路3内には、第1の経路3を辿るパルスが第2の経路5におけるパルスに対して非直交偏光状態となるように第1の経路の偏光を90°回転させる偏光回転子7がある。本実施例では、偏光回転子7は、45°の角度の半波長板によって提供される。しかしながら、他のタイプの偏光回転子を使用すること、または偏光回転をファイバベースのシステムを介して実現することが可能である。
【0028】
図1Aでは、偏光回転子7は、第1の経路3内に設けられているが、同様に第2の経路に容易に設けることができる。偏光回転子は、第1の経路3における第1のパルスのシーケンスが第2の経路5における第1のパルスのシーケンスに対して直交偏光を有することが可能になるように設けられる。
【0029】
第2の経路5には、時間遅延ユニット9が設けられる。時間遅延ユニット9は、遅延線等によって実現してよい。本実施例では、時間遅延ユニット9は第2の経路5内に設けられている。しかしながら、代替的に第1の経路3内に設けることができる。時間遅延ユニット9は、パルスのペアのうちの前のほうの(または第1の)パルスを遅延させるように機能して、それが他方の経路を辿ったペアにおける後のほうの(または第2の)パルスと合成されることを可能にする。
【0030】
次いで、第1の経路3および第2の経路5からのパルスは、偏光ビームスプリッタ11において合成される。偏光ビームスプリッタにより、第2の経路5からのパルスのペアのうちの遅延した前のほうのパルスが、第1の経路3を辿った同じパルスのペアのうちの遅延していない後のほうのパルスとオーバーラップすることが可能となる。
【0031】
また、図1Bに示す第1のパルスシーケンスにおけるパルスの連続する流れに起因して、パルスのペアのうちの遅延した後のほうのパルスが、後続するパルスのペアのうちの遅延していない第1のパルスとオーバーラップすることにもなる。しかしながら、このパルスは有益な情報を何ら含んでおらず、破棄されることになる。図1Cは、パルスの出力シーケンスを示し、黒のパルスは破棄されるパルスを示し、白のパルスは偏光で符号化されたパルスを示す。
【0032】
第1のパルスシーケンスにおけるパルスのペア間の位相差がどのように使用されて偏光で符号化されたパルスシーケンスを生成するかを理解するために、偏光の基底について以下で説明する。
【0033】
光に関連する電場は、2つの垂直の振動波として説明することができ、これら2つの振動波は、異なる振幅と位相遅延とを間に有し得る。これらの波は共に伝播し、光の偏光の状態として知られる電場の全体の方向を定義する。
【0034】
光偏光状態を変調することによって情報を符号化することができる。この実施形態では、状態は、以下の2つの直交基底状態を備える偏光基底から選択される。
・ 直線偏光-基底状態H(水平偏光、すなわち0度の角度の向き)およびV(垂直偏光、すなわち90度の角度の向き)を有する
・ 対角直線偏光-基底状態D(対角偏光、すなわち45度の角度の向きであり、光が、0の位相遅延を間に有する水平の光50%と垂直方向の光50%から構成されているとみなすことと同等である)およびA(反対角偏光、すなわち-45度の角度の向きであり、光が、πの位相遅延を間に有する水平の光50%と垂直方向の光50%から構成されているとみなすことと同等である)を有する
・ 円偏光-基底状態L(左円偏光、すなわち45度の角度の向きであり、光が、π/2の位相遅延を間に有する水平の光50%と垂直方向の光50%から構成されているとみなすことと同等である)およびR(右円偏光、すなわち45度の角度の向きであり、光が、-π/2の位相遅延を間に有する水平の光50%と垂直方向の光50%から構成されているとみなすことと同等である)を有する
【0035】
これらの偏光基底状態はジョーンズベクトルで以下のように表し、
【数1】
ここで、
【数2】
である。
【0036】
図1A図1B、および図1Cは、位相変調されたタイムビンビットを備える図1Aの第1のパルスシーケンスが、図1Cの偏光変調されたビットシーケンスに変換されることを可能にするシステムを示す。
【0037】
上述のように、第1のパルスシーケンスから入力される各位相変調されたタイムビンビットは、パルスペアのシーケンスを備える。各ペアは、「前の」パルスと「後の」パルスを備え、ここで、ビット値は、それらパルス間の位相Φで符号化される。
【0038】
量子通信では、このビットの波動関数を以下のように書くことができ、
ψ=|E>+ejΦ|L>
ここで、|E>および|L>は、各ペアのうちの前と後のタイムビン状態を示す。パルスの各ペア間のグローバル位相は、量子鍵配送(QKD)用途のためのセキュリティ要件を満たすために位相ランダム化することができる(図1Aに「?」として示される)。
【0039】
図1Cの出力パルスシーケンスは、図1Aの第1のパルスシーケンスと同じ繰り返し速度となる。しかしながら、図1Cの出力パルスシーケンスにおけるパルスのペアについては、各ペアのうちの前のほうのパルスが偏光ランダム化されることになる。これは、入力ビット間のランダム位相が、ランダムな位相遅延、ひいてはランダムな出力偏光をもたらすことに起因する。
【0040】
これらの偏光ランダム化されたパルスは、情報の符号化のために使用されない(ただし、QKDにおいてセキュリティ特徴として使用することができ、後述する)。しかしながら、各出力ペアにおける後のほうのパルスは、位相符号化を偏光符号化に直接的にマッピングする入力パルス間のΦ値に直接的に依存する偏光状態を有する。
【0041】
次に、どのようにして方式が光の偏光状態を変化させるかについて、ジョーンズ計算法を参照して説明する。入力は、固定の直線水平偏光状態であると仮定する。図1Bにおける第1の経路3および第2の経路5は、非対称干渉計と同様の構造を形成する。
【0042】
第1の経路および第2の経路におけるパルスが偏光ビームスプリッタ11において再合成する前、単一ビットのための前および後のビンが干渉している時間においてジョーンズベクトルは以下のように書くことができる。
【数3】
【数4】
【0043】
偏光ビームスプリッタ11は、水平に偏光された光を送信し、垂直に偏光された光を反射する。そのため、偏光ビームスプリッタ11の出力ポートのうちの1つにおいて、光偏光状態は以下である。
【数5】
【0044】
一実施形態では、前および後のパルスは等しい振幅であり、これにより、正規化された出力偏光状態を以下のように書くことが可能となる。
【数6】
【0045】
これは、図1Aの装置を使用して、以下の入力位相Φを単に選択することによって基底ベクトルを対角偏光および円偏光基底で生成することができることを示す。
【表1】
【0046】
上記は一例であり、いずれの入力偏光状態も可能であり、単に例示としてHが使用されていることに留意されたい。同様に、生成される出力基底を、単純なユニタリ回転を適用することによって変えることができる。例えば、45度の向きで1/4波長板部品を出力に付加すると、対角基底(D/A)ベクトルを変えないでおきながら円基底(L/R)の基底ベクトルを直線基底(H/V)に変換することになる。
【0047】
図1Aの第1のパルスシーケンスを生成するために、任意のタイプの光源および/または追加のコンポーネントを有する光源を使用することができる。
【0048】
図2A図2D図3A、および図3Bを使用して、超小型かつ高性能のQKD送信機の形成を可能にする特定のタイプの光源を説明する。図2Aに示すこの光源は、利得スイッチングおよび光注入同期を使用してパルスを直接的に位相変調しており、外部の位相変調器は必要ない。
【0049】
光源はパルスされた二次レーザ103を備え、そこに一次レーザ101からのパルスが注入されて、光注入同期に基づいて二次レーザの出力パルス間の位相を定義する。一次レーザ101は、位相準備のタスクを行うが、二次レーザ103は、パルス生成のタスクを行う。図2A図2Dの説明は、一次レーザの制御により焦点を置いている。図3A図3Bの説明は、二次レーザおよび2つのレーザの組合せにより焦点を置いている。
【0050】
図2Aに概略的に示すように、一次レーザダイオード101は、光サーキュレータ105を介して二次レーザダイオード103に接続される。一次レーザダイオード101および二次レーザダイオード103は同一であってよく、単に明確にするために「一次」および「二次」という用語を使用しているだけであり、一次レーザダイオード101と二次レーザダイオード103との物理的相違を暗示するものではないことに留意されたい。
【0051】
位相準備のために使用される一次レーザ101は、直接変調されて準定常状態放出から長パルスを生成する。これらのパルスの各々は、二次またはパルス生成レーザ103を利得スイッチすることによって放出される2つ以上の短い二次光パルスのブロックをコヒーレントにシードする。位相準備レーザ101は、浅い強度変調を伴うナノ秒単位またはさらにはそれ以下の準定常状態の光パルスを生成するようにバイアスされ、これもまた光位相を修正する。1GHzを超えるクロックレートの場合、パルス幅は1ns未満である。利得スイッチパルス生成レーザ103は、位相準備レーザによって準備された光位相を引き継ぐ短い光パルスを放出する。各位相準備レーザパルスの持続時間は、異なる長さのパルス列をシードするために変えられ得る。
【0052】
二次パルス間の相対位相は、一次パルスの位相展開(phase evolution)に依存し、一次または位相準備レーザ101に印加される駆動電流を直接変調することによって任意の値に設定することができる。
【0053】
例えば、図2Aの位相準備レーザの駆動信号に微小摂動を導入することによって、2つの二次パルス間の相対位相φを取得することができる。同様に、3つの二次パルス間の相対位相は、一次レーザ101の駆動信号に2つの微小摂動を加えることによってφおよびφに設定することができる。
【0054】
原理上、このような駆動信号における摂動により、一次パルスの強度および周波数に有害な変動が生じることになる。しかしながら、摂動信号に対応して二次レーザ103の利得をオフにスイッチすることによって、これを回避することができる。効果的に、二次レーザ103は、残留変調を拒否するフィルタとしても動作する。
【0055】
位相準備レーザに印加された駆動信号に摂動を生じさせることによって光位相がどのように設定されるかを理解するために、中央周波数νで放出するしきい値より上の連続波レーザを考慮することが有用である。
【0056】
図2Bは、持続時間tの微小摂動下での位相準備レーザの光周波数のプロットである。図2Cは、位相準備レーザの摂動ありと摂動なしの光位相軌道のプロットである。
【0057】
微小摂動が駆動信号に適用されると、光周波数が量Δνだけシフトし、位相展開の過程が変化する。摂動がスイッチオフされると、周波数は初期値νに戻る。この摂動は以下の位相差を引き起こすことになり、
Δφ=2πΔνt
ここで、tは摂動の持続時間である。光注入により、この位相差は、図2Dに示すパルス生成レーザによって放出される二次パルスのペア上に転移される。
【0058】
ここで摂動信号は、位相準備レーザに適用される電圧変調である。一次レーザダイオード101内のレーザ活性媒体の屈折率に対するキャリア密度の影響から光周波数変化が生じる。レーザキャビティの閉じ込め(confinement)により、光場がキャビティ内で前後に振動し、摂動の持続時間全体にわたり屈折率が変化することが可能になる。レーザキャビティに起因する強化により、後述するように、位相変調半波長電圧を1V未満に保つことが可能になる。従来の位相変調器にはこのキャビティ特徴がないので、従来の位相変調器では、光が電気光学媒体を1回しか通過せず、よって相互作用距離をデバイス長に制限している。
【0059】
マスタ光源の電気コントローラ信号への小さい変化(従来のニオブ酸リチウム位相変調器が必要とするものよりもはるかに少ない1ボルト未満)は、マスタ光源の出力の出力周波数に一時的変化を引き起こすことができ、これは次いで、二次レーザの光出力の出力位相を変化させる。
【0060】
本実施形態では、一次レーザ101は、ペアのシーケンスを備える光パルスのシーケンスを出力するように構成されている。一次レーザによって出力されるパルスの位相は、同じペアにおけるパルス間の位相が、位相差のセットの1つからランダムに選択され、異なるペアからのパルス間にランダムな位相差ができるように制御される。一実施形態では、位相差のセットは、0、π/2、-π/2、およびπのうちの1つから選択されてよい。
【0061】
一次レーザによってシードされる二次レーザ103は、一次レーザ101によって出力されるパルスのシーケンスと同じ位相差を有するパルスのペアのシーケンスを出力することになる。
【0062】
パルス注入シーディングは、二次レーザ103がレージングしきい値より上にスイッチされるたびに生じる。この場合、生成されたスレーブ光パルスは、注入されたマスタ光パルスに対して固定位相関係を有する。注入された各マスタ光パルスについて1つのみのスレーブ光パルスが生成されるので、二次レーザによって出力されるパルス間の位相関係は、二次レーザ内に注入されるパルス間の関係と同じである。
【0063】
図3Aおよび図3Bと関連させて以下で説明する動作条件下で、二次レーザ103は、ペアのシーケンスを備える、新たなパルスのシーケンスを生成する。同じペアにおけるパルス間の位相は位相差のセットの1つからランダムに選択され、異なるペアからのパルス間にランダムな位相差がある。これらのパルスはまた、一次レーザ101によって出力されたパルスに対してより小さい時間ジッタτ’<τを有する。低減されたジッタ時間は、二次光パルスの低時間ジッタに起因して干渉可視性を改善する。
【0064】
パルス注入シーディングが生じるためには、一次レーザ101からの光パルスの周波数は、ある範囲内で二次レーザ103の周波数に一致する必要がある。1つの実施形態では、一次レーザ101によって供給される光の周波数と二次レーザ103の周波数との差は、30GHz未満である。いくつかの実施形態では、二次レーザ103が分布帰還型(DFB:distributed feedback)レーザダイオードである場合、周波数の差は100GHz未満である。
【0065】
パルス注入シーディングの成功のためには、二次レーザ103の光キャビティに入る一次レーザ101の出力光パルスの相対パワーが、使用される光源のタイプに依存するある特定の限界内にある必要がある。1つの実施形態では、注入された光パルスの光パワーは、二次レーザ103の光出力パワーの少なくとも1000分の1である。1つの実施形態では、注入された光パルスの光パワーは、二次レーザ103の光出力パワーの少なくとも100分の1である。
【0066】
1つの実施形態では、二次レーザ103および一次レーザ101は、電気的に駆動される利得スイッチ半導体レーザダイオードである。1つの実施形態では、スレーブ光源およびマスタ光源は、同じ帯域幅を有する。1つの実施形態では、両方の光源は、10GHzの帯域幅を有する。1つの実施形態では、両方の光源は、2.5GHzの帯域幅を有する。ここで、帯域幅とは、直接変調されている利得スイッチレーザダイオードを用いて達成可能な最も高いビットレートを意味する。ある特定の帯域幅のレーザは、より低いクロックレートで動作することができる。
【0067】
図3Aは、一次レーザ503および二次レーザ502の両方が単一の利得変調ユニット509を用いて駆動される位相ランダム化光源500のための駆動方式の概略図である。利得変調ユニット509および遅延線510は、光パルスが受信される各時間期間中に1つのみの光パルスが生成されるように時変駆動信号を二次レーザ502に印加するように構成されたコントローラの一例である。一次レーザ503は、光接続505を介して二次レーザ502に接続される。光接続505は、導波路、例えば、光ファイバであり得る。代替的に、光パルスは、自由空間を通って一次レーザ503と二次レーザ502との間を移動してよい。光接続は、図2Aの配置で設けられる光サーキュレータまたはビームスプリッタなどのさらなるコンポーネントを含んでよい。
【0068】
利得変調ユニット509は、光パルスを生成するために一次レーザ503および二次レーザ502の両方を駆動する。遅延線510は、装置を同期させるために使用される。遅延線は、例えば、固定長ケーブルであってよい。利得変調ユニットは、一次レーザ503に直接接続されている。例えば、一次レーザ503が半導体レーザである場合、利得変調回路は、一次レーザ503に電気的に接続される。利得変調ユニット509は、遅延線510を通して二次レーザ502に接続される。
【0069】
図3Bは、図3Aに示す単一の利得変調方式のための時間的シーケンスを示す。上のグラフは、一次光源503に適用される利得変調を示す。レーザに印加される電流が垂直軸に、時間が水平軸に示される。利得変調は、矩形波の形態を有する時変駆動信号であり、これはマスタ光源に印加されると、キャリア密度をレージングしきい値より上および下に変化させる。換言すれば、利得変調は一連のパルスである。パルス間では、利得は最小値を有し、これは利得バイアスであり、点線によって示されている。この場合の波は、矩形波形である。例えば、正弦波または非周期的な時変信号など、異なる利得変調信号を使用することができる。この場合、電流は、電流変調パルス間でゼロに低減されず、バイアス値(点線で示す)に低減されるだけである。
【0070】
電流変調信号は、レーザに印加され、レーザの利得を周期的にレージングしきい値より上および下にスイッチする。2番目のグラフは、レーザのキャリア密度を垂直軸に示し、時間を水平軸に示す。レージングしきい値を、破線水平線で示す。電流変調パルスがレーザに印加されると、注入されたキャリアがキャリア密度を増加させ、光子密度が増加する。
【0071】
変調信号によって生成されるレーザ出力をその下のグラフに示す。垂直軸がレーザ強度を示し、水平軸は時間である。キャリア密度がレージングしきい値より上であるときに、レーザは光を出力する。レーザキャビティ内部での自然放出によって生成された光子が、刺激された放出によって十分に増幅されて出力信号を生成する。電流変調パルスの印加と出力光の生成との間の遅延の長さは、レーザタイプ、キャビティの長さ、およびポンピングパワーなどの、いくつかのパラメータに依存する。
【0072】
光子密度の急増により、キャリア密度の減少が生じる。これは次に光子密度を減少させ、これはキャリア密度を増加させる。この時点で、電流変調パルスは、DCバイアスレベルにスイッチバックして下がるように調時され、レーザ放出は迅速に停止する。したがってレーザ出力は、下のグラフに示すように短いレーザパルス列から成る。
【0073】
より長いパルスを生成するために、レージングしきい値により近くなるように利得バイアスが選択される。これは、キャリア密度がより早くにレージングしきい値と交差することを意味し、これは、発する時間をより多く光パルスに与える。最初に光強度がオーバーシュートし、迅速にキャリア密度を減少させる。これは次に、光子密度を減少させ、キャリア密度を増加させ、次に光強度を増加させる。この競争プロセスにより、パルスの開始時に光強度の振動が生じ、これは強く減衰し、強度が一定である安定状態を迅速にもたらす。振動を緩和振動と呼ぶ。電流パルスが終了し、電流を再びバイアス値にスイッチしたときに、レーザパルスは終了する。
【0074】
この下のグラフは、一次レーザ503の出力を示す。キャリア密度がレージングしきい値より上に増加するたびに1つの光パルスが出力される。上述したように、利得が増加するときと光パルスが出力されるときとの間に遅延があり得る。マスタレーザから出力された光パルスは、大きい時間ジッタτを有する。
【0075】
次のグラフは、二次レーザ502に適用される利得変調を示す。利得変調は、一次レーザ503に適用されたものと同じであるが、矢印によってラベルされた時間遅延が付加されている。利得変調は、二次レーザに印加される時変駆動信号である。換言すれば、二次レーザ502に適用される利得変調は、一次レーザ503に適用された利得変調に対して時間的にシフトされる。利得の各周期的増加が、一次レーザ503に適用されるのよりも後に二次レーザ502に適用される。この場合の遅延は、利得変調信号の周期の約半分である。遅延は、光パルスが注入された後に、利得の周期的増加が二次レーザ502に適用されることを意味する。そのため、利得増加が適用されるとき一次レーザ503からの光パルスは二次レーザのレーザキャビティ内に存在し、結果として得られる二次レーザ502がマスタ光パルスからの刺激された放出によって光パルスを生成する。これは、二次レーザからの生成された光パルスが、一次レーザから二次レーザ内に注入された光パルスに対して固定位相関係を有することを意味する。
【0076】
二次レーザ502は一次レーザからの光パルスが注入された後にレージングしきい値より上にスイッチされ、その結果、二次レーザからのパルスが、注入された光パルスによって引き起こされた刺激された放出によって開始される。二次レーザ502の利得バイアスの始まりのタイミングは、遅延線510を介して制御される。最後のグラフは、二次レーザ502の出力を示す。キャリア密度がレージングしきい値より上に増加するたびに1つのみの光パルスが出力される。ここでもまた、利得変調の増加と出力された光パルスとの間に遅延があり得る。二次レーザからの出力された光パルスの時間ジッタは、一次レーザからの光パルスのジッタのそれよりも低い。
【0077】
図3Aに示すシステムでは、利得変調ユニット509は、一次レーザからの各光パルスが入射する時間中に一度だけレージングしきい値より上にスイッチされるように、時変利得変調を二次光源502に適用する。二次レーザ502のスイッチングは、同じ利得変調信号が両方の光源に印加されるので一次レーザからの光パルスの到着と同期され、遅延線が、利得の増加を二次レーザ502に適用することを一次レーザ503に対して遅延させる。
【0078】
図3Bに示すシステムでは、時変利得変調信号は、矩形波形を有する。しかしながら、時変利得変調は、任意のパルス形状を有する信号を備えることができる。
【0079】
光源が利得スイッチ半導体レーザである場合、利得変調信号は、印加電流もしくは電圧である。1つの実施形態では、利得変調信号は、矩形波形を有する印加電流もしくは電圧である。代替の実施形態では、時変電流もしくは電圧は、周波数合成器によって生成された電気正弦波である。1つの実施形態では、利得変調信号の周波数は、4GHz以下である。1つの実施形態では、周波数は2.5GHzである。1つの実施形態では、周波数は2GHzである。
【0080】
利得スイッチ半導体レーザは、パルスが放出されるときの状態と「オフ」状態との間に良好な消光比を有する。それは、超短パルスを生成するために使用することができる。1つの実施形態では、二次レーザから出力された各パルスの持続時間は200ps未満である。1つの実施形態では、二次レーザから出力された各パルスの持続時間は50ps未満である。1つの実施形態では、二次レーザから出力された各パルスの持続時間は数ピコ秒のオーダである。1つの実施形態では、時変電流もしくは電圧が2GHzの周波数を有する矩形波電流もしくは電圧である場合、短光パルスは500ps離れている。
【0081】
これらの図に示す光源において、一次レーザおよび二次レーザは、利得変調のために同じ電気ドライバを共有する。しかしながら、一次レーザおよび二次レーザは、別個の利得変調ユニット509によって駆動されてもよい。別個のユニットによって利得変調を駆動することによって、図3Bに示すものよりも長い、一次レーザから出力される光パルスを生成することが可能であり、これは利得バイアス値がレージングしきい値により近いためである。これは、キャリア密度がより早くにレージングしきい値と交差することを意味し、これは、発する時間をより多く光パルスに与える。これはジッタを低減するために使用することもできる。
【0082】
図4A図4B、および図4Cは、図1Aのシステムと組み合わせて図2A図2B図2C図2D図3A、および図3Bを参照して説明した光源を使用するさらなる実施形態に関連する。
【0083】
図4Aのシステムは、パルスのペアを備えるパルスのシーケンスを出力するように図2A図2Dを参照して説明したように制御される一次レーザ301を備える。同じペアにおけるパルス間の位相は位相差のセットの1つからランダムに選択され、異なるペアからのパルス間にランダムな位相差がある。一次レーザ301には、レーザに適用される利得を制御するコントローラ(図示せず)が設けられる。
【0084】
一次レーザ301から出力されたこのパルスのシーケンスは、すべて同じ偏光を有し、図4Aの参照フレームでは水平偏光として定義されている。次いでパルスのシーケンスは、二次レーザ303内に入力されて二次レーザ303をシードする。これにより、二次レーザが図4Bに示す第1のパルスのシーケンスを出力することが可能になる。この第1のパルスのシーケンスは、図1Bを参照して説明した第1のパルスのシーケンスと同一である。二次レーザにも、上述のようにレーザの利得を制御するためのコントローラ(図示せず)が設けられる。
【0085】
そしてシステムの残りの部分は、図1Aを参照して説明したシステムと同一である。そのため、不要な繰り返しを避けるために、同様の特徴を示すために同様の参照番号を使用する。
【0086】
出力パルスシーケンスが図4Cに示されている。図4Aのシステムには、偏光軸を所望の基底に変えるために1/4波長板が設けられている。例えば、45度の向きで1/4波長板部品を出力に付加すると、対角基底(D/A)ベクトルを変えないでおきながら円基底(L/R)の基底ベクトルを直線基底(H/V)に変換することになる。
【0087】
偏光ビームスプリッタ11の出力において、1/4波長板13は、シーケンスの各出力パルスの偏光状態を回転させる。
【0088】
図4の装置では、図4Cに示す出力シーケンスが一次レーザ301の制御によって得られることに留意することが重要である。図2Aおよび図2Bを参照して説明した方法を使用して一次レーザからの出力パルスの位相を制御することにより、位相または偏光変調器などのコンポーネントを用いる必要なしに、図4Cのパルスシーケンスを得ることが可能になる。
【0089】
直接変調された利得スイッチ注入同期レーザ光源を使用することにより、偏光で符号化されたパルスの非常に小型の光源を製造することが可能になる。
【0090】
図5Aは、設計が光ファイバを使用して実現される図4Aのシステムのさらなる変形形態を示す。しかしながら、図1Aまたは図4Aのシステムを、自由空間にも、または一体型フォトニクス(すなわちオンチップ)でも製造することができることに留意されたい。
【0091】
図4Aを参照して説明したように、第1のパルスのシーケンスの光源は、二次レーザ303を利得スイッチ一次レーザ301に注入同期することによって提供される。一次レーザの出力は、偏光維持ファイバ305を介して二次レーザ303内に方向付けられる。
【0092】
次いで、二次レーザ303からの第1のパルスシーケンス(図示せず)は、50:50ファイバベースのビームスプリッタ351内に方向付けられ、このビームスプリッタは、パルスを分離させ、それらを第1のファイバ353および第2のファイバ355に沿って方向付ける。
【0093】
第2のファイバ355には、図1Aの遅延コンポーネント9と同様に機能する、遅延Δtを導入する遅延ループ357が示されている。第1のファイバ353および第2のファイバ355の両方が偏光維持ファイバであり、パルスの偏光方向は、図5Aに示すファイバの複屈折361、363と揃えられている。
【0094】
次いで、第1のファイバ353および第2のファイバ355は、偏光ビームコンバイナ365において合成される。偏光ビームコンバイナは、第1のファイバ353または第2のファイバ355の各々から1つの入力を得て、これらを1つのみの出力ファイバに合成し、ここで、2つの入力からの光が、2つの直交偏光軸に(すなわち、偏光維持ファイバの2つの複屈折軸に沿って)置かれる。
【0095】
図5Aの設計は、PBSの代わりに偏光維持ファイバ偏光ビームコンバイナ(PBC)365を使用することによって、半波長板7を使用する干渉計の一方のアーム内での偏光回転(HからVへ)の必要を軽減することができるので、図4Aの設計に対して利点を提供する。ファイバPBCは、2つの入力ファイバの遅相軸上の偏光された光を出力ファイバ367の直交軸に合成することができる、既製品として入手可能な低コスト標準コンポーネントである。2つの偏光コンポーネントが出力ファイバ367の断面369に示されている。
【0096】
最後に、1/4波長板371が、出力を所望の基底に回転させるために設けられている。1/4波長板は、それが遭遇する各偏光状態に同じ変換を提供する固定部品である。出力シーケンスが図5Bに示されている。
【0097】
図6Aは、図4Aのシステムについてのさらなる変形形態を示す。
【0098】
この配置では、一次レーザ701は、水平に偏光された光を50:50ビームスプリッタ703に向けて出力する。次いでビームスプリッタ703は、受信したパルスを第1の経路705と第2の経路707とで分割する。
【0099】
第1の二次レーザ709が第1の経路705に設けられ、第2の二次レーザ711が第2の経路707に設けられている。よって、この配置では一次レーザ701があるが、今回は干渉システムの2つのアーム内にスレーブレーザのペアがある。
【0100】
一実施形態では、一次レーザ701は、図1Aおよび図4Aを参照して説明したものと全く同じ方法で駆動されるが、第1の二次レーザ709は、クロックレートの「後の」タイムビンスロットにおいてのみパルスするように電子的に駆動される。次いで、第1の二次レーザ709からのパルスは、波長板713を通過し、偏光状態をV偏光に回転する。第2の経路707内の第2の二次レーザ711は、クロックレートの「前の」タイムビンスロットにおいてのみパルスするように電子的に駆動される。次いで、第2の二次レーザ711からのパルス(H偏光である)は、時間遅延Δt715だけ遅延される。
【0101】
一次レーザ701への電気信号は、前のタイムビン期間と後のタイムビン期間との間でわずかに変調され、制御された位相シフトΦを、第1の二次レーザ709からのパルスと比較して第2の二次レーザ711からのパルス上に付与する。両方の干渉計アームからのパルスが同時にPBS717に到着し、そのため、PBSからの出力は以下となる。
【数7】
【0102】
図1A図1B、および図1Cと関連させて説明したように、これにより、単に一次レーザ701の変調によって第2の二次レーザ711に適用される位相変調を変化させることによって偏光状態を調整することが可能になる。出力は、1/4波長板719を使用してさらに回転されてよい。
【0103】
上記のように、このセットアップは、半波長板およびPBSの代わりに偏光維持ファイバから構成される偏光ビームコンバイナを使用することによって光ファイバ構成においてさらに簡易化することができる。
【0104】
上記配置により、図6Bに示すように、出力パルス列における1つおきのパルスを占有する偏光ランダム化パルスの除去が可能になる。これにより、追加の偏光ランダム化パルスを生成することなしに非常に柔軟な偏光変調を達成することが可能となる。
【0105】
上記送信機は、偏光の変調が必要である任意のシステムで使用することができる。1つの特定の使用例は量子鍵配送(QKD)である。提案された送信機は、2地点間リンクおよび測定装置無依存「MDI」QKDなどのより最新のプロトコル展開を含む任意のQKDシステムでの使用に好適である。
【0106】
図7は、図4A図4B、および図4Cのエミッタを組み込んだQKDシステムを示す。しかしながら、上記エミッタのいずれも本システムで使用することができる。
【0107】
図7のQKDシステムは、送信機801および受信機803を備える。本実施形態では、送信機801は、ファイバベース、自由空間とすることができる、またはファイバと自由空間光通信の混合を備えることができる通信チャネル805を介して受信機803に接続される。
【0108】
送信機801は、図4A図4B、および図4Cのエミッタを備える。不要な繰り返しを避けるために、図4A図4B、および図4Cのエミッタと同様の特徴を示すために同様の参照番号を使用する。
【0109】
図2Aおよび図2Bを参照して説明したように、一次レーザ303によって出力される連続パルス間の位相差を正確に制御することができる。制御された位相を有するパルスは、二次レーザ305をシードするために使用され、二次レーザ305は、図3Aおよび図3Bを参照して説明したように、シードパルスの位相に関連する位相を有するパルスを出力して、図4Bに示す入力パルスシーケンスを生成する。
【0110】
多くのプロトコルがQKDにおいて使用され、一般的なプロトコルの1つはBB84プロトコルである。BB84プロトコルについて簡潔に説明する。しかしながら、偏光符号化を使用して実行することができる任意のQKDプロトコルを使用することができる。
【0111】
プロトコルは2つの基底を使用し、ここにおいて、各基底は2つの直交状態によって表される。この実施例の場合、H/VおよびD/Aの基底である。しかしながら、L/R基底を選択してもよい。
【0112】
プロトコルにおける送信者が、H、V、D、またはA偏光のうちの1つを有する状態を準備する。換言すれば、準備された状態は、2つの基底H/VおよびD/Aのうちの一方における2つの直交状態(HとVまたはDとA)から選択される。2つの基底のうちの一方で0および1の信号を送信する、例えば、H/V基底ではH=0、V=1の信号を、D/A基底ではD=0、A=1の信号を送信すると考えることができる。パルスは、平均して1光子以下を備えるように減衰される。よって、パルスに対して測定が行われた場合、パルスは破壊される。またパルスを分離させることも不可能である。図1A図4Cを参照して説明したように、一次レーザ301を、4つの位相差のうちの1つから選択された位相差を有する連続パルスを出力するように制御することができ、これらの位相差を有する連続パルスは、図2A図2B図2C、および図2Dのエミッタを使用して上記4つの状態のうちの1つを有する偏光状態に変換される。
【0113】
QKDシステムの場合、一次レーザ303は、4つの設定された位相差のうちの1つからランダムに選択するように制御されることができ、ここで、設定された各位相差は、プロトコルに必要な4つの偏光状態のうちの1つに対応する。上述のように、図1Bまたは図4Bの入力信号はパルスのペアを備える。異なるペア間の位相差はランダム化される。一次レーザを利得スイッチすることによって、各一次レーザパルス(ひいては各二次レーザパルスペア)は、(二次レーザとは異なり)シードされないのでランダム位相を自動的に受け継ぎ、よって、本質的に位相ランダムであるノイズ(真空ゆらぎ)から光が生じる。連続ペアのパルス間の位相差を任意の値にランダムに設定することも可能である。これは図4Aには示されていないが、一次レーザおよび二次レーザのための利得を制御するために利得コントローラが設けられることになる。
【0114】
次いで、送信機801からの出力パルスのシーケンスは、自由空間を通過して、または光ファイバ805を介して、受信機803に到達する。簡易化した形態の受信機が示されている。受信機は、到来パルスを第1の測定チャネル807または第2の測定チャネル809のいずれかに沿って方向付ける50:50ビームスプリッタ806を備える。パルスは平均して1光子未満を含むので、50:50ビームスプリッタ806は、パルスをランダムに第1の測定チャネルまたは第2の測定チャネルの一方に沿って方向付ける。これにより、測定基底の選択の結果は、X(D/A)基底またはZ(H/V)基底となる。無偏光ビームスプリッタ808は、2つの基底のうちの一方のランダムな選択が可能となるように機能する。
【0115】
第1の測定チャネルは、D/A基底に対応するX基底のためのものである。ここで、偏光を回転させるために半波長板811が22.5°の角度で設けられている。次いで、半波長板811の出力は、偏光ビームスプリッタ813に向けて方向付けられる。偏光ビームスプリッタ813は、反対角偏光を有するパルスを反対角検出器815に向けて方向付け、対角偏光を有するパルスを対角検出器817に向けて方向付ける。検出器815および817は、例えばアバランシェフォトダイオードなどの、単一光子検出器である。
【0116】
第2の測定チャネルに沿って方向付けられたパルスは、水平であるのか垂直であるのかを決定するためにZ基底で測定される。ここで、第2の測定チャネル内に方向付けられたパルスは偏光ビームスプリッタ819に向けて方向付けられ、偏光ビームスプリッタ819は、垂直に偏光されたパルスを検出器821に向けて方向付け、水平に偏光されたパルスを検出器823に向けて方向付ける。ここでもまた、検出器821および823は、単一光子検出器である。
【0117】
D/A基底で偏光された光子が受信され、これがランダムに送信されて第2の測定チャネル809に沿ってX基底で測定された場合、検出器821、823の一方がカウントを登録する可能性が高い。しかしながら、この結果は、偏光ビームスプリッタ819において受信された光子が、垂直検出器または水平検出器のいずれかに向けて方向付けられる可能性が50:50であるので信用できない。
【0118】
測定基底の選択は、能動的または受動的であり得る。受動的選択では、基底は、図7に示すビームスプリッタなどの固定部品を使用して選択される。「能動的」基底選択では、受信者は、例えば、電気制御信号を用いる変調器を使用して、どの基底で測定すべきかの判定を行う。
【0119】
要約すると、受信者においてパルスの測定のために使用された基底が、パルスの符号化に使用された基底と同じである場合、受信者のパルスの測定は正確である。しかしながら、受信者がパルスの測定に他方の基底を選択した場合、受信者によって測定された結果に50%の誤りがあることになる。
【0120】
鍵を確立するために、送信者および受信者は、符号化および測定(復号)のために使用された基底を比較する。それらが一致した場合、結果は保たれ、一致しなかった場合、結果は破棄される。上記方法は非常にセキュアである。盗聴者がパルスを傍受し測定した場合、盗聴者は、受信者に送信するための別のパルスを準備する必要がある。しかしながら、盗聴者は、正しい測定基底がわからず、そのため、パルスの正しい測定の可能性は50%しかない。盗聴者によって再作成されたパルスがあると、盗聴者の存在を証明するために使用することができる、受信者に対する誤り率が大きくなる。送信者および受信者は、誤り率、ひいては盗聴者の存在を決定するために鍵の小部分を比較する。
【0121】
図7は、2地点間QKDシステムに配備される単一の二次レーザ305を有する位相・偏光ベースの送信機801を示す。図4Bと関連させて説明したように、この送信機からの出力は、1つおきにパルスが偏光ランダム化されている。これらのパルスは情報を符号化するために使用することはできず、QKD受信機は、(例えば、すでにQKDシステムにおいて両技法が広く用いられているソフトウェア処理または検出器の電子ゲーティングによって)セキュアな量子鍵を生成するために検出器信号を引き出すときにこれらを無視することになる。しかしながら、ランダム化されたパルスは、それでもなおQKDでは有用であるとすることができ、受信機は、これらのパルスについての検出統計を使用して、ランダムな偏光状態の分布を測定し、よって、QKDのセキュリティについての重要な基準である、ビット間の位相ランダム化の品質を推論することができる。
【0122】
代替的に、2つの二次レーザを使用する図6Aに示す送信機を、図7の送信機801として用いることができ、これは、1つおきにパルスが偏光ランダム化されていない。これが望ましい特徴であるか否かは用途に依存し、両方のオプションが実際面で有用性を見いだすことができる。
【0123】
受信機設計803は、送信機801専用に適応されておらず、受信機は、QKDでの偏光復号のために使用される任意の受信機とすることができる。
【0124】
QKDシステムにおける上記エミッタは、ディスクリート光ファイバ、自由空間光通信、またはオンチップを使用して実現することができる。
【0125】
図7は、基本的なシステムを示す。しかしながら、実際のQKD通信システムで使用されるデコイ状態などの追加の特徴を(これらについての現在の技術的アプローチを使用して)追加するために追加のコンポーネントを有するように設計を修正することができる。
【0126】
上記システムでは、異なる偏光を有する各パルスの波長は、それらがすべて同じ一次レーザから到来したものであるので同一であり、したがって、盗聴者がパルスの波長の相違に起因して「サイドチャネル」情報を取得することはできない。
【0127】
さらに、上記QKDシステムは、多大なスト、複雑性、およびサイズを偏光変調送信機に付加する位相変調器を使用する必要がない。またLiNbO変調器は、一体型フォトニクスプラットフォームに容易に適応可能でなく、これにより多くのQKD送信機設計が小型のフォトニックチップベース設計内に展開されることを妨げられている。また、位相変調用水晶の複屈折は、偏光モード分散を誘発する可能性があり、これは追加のコンポーネントによって補償される必要があるので、さらなる複雑性およびコストを付加する。位相変調器は、典型的には、数ボルトの半波長電圧を有する。非干渉計配置で使用されるときに偏光モード間のπ位相シフトを取得するために、さらに高い電圧が必要となる。そのような高電圧は、通信送信機全体の消費電力を生成および増加させるのに実用的でない可能性がある。
【0128】
特定の実施形態について説明したが、これらの実施形態は単に例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。実際、本明細書に記載の新規のデバイスおよび方法は、様々な他の形態で具現化することができ、さらに、本明細書に記載のデバイス、方法、および製品の形態で様々な省略、置換え、および変更を、本発明の趣旨から逸脱することなく行うことができる。添付の特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本発明の趣旨および範囲内に入る形態または修正を網羅することを意図している。
図1
図2A
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
【外国語明細書】