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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018299
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】像取得方法および電子顕微鏡
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/22 20060101AFI20220120BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20220120BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H01J37/22 502B
H01J37/28 B
H01J37/147 B
H01J37/22 502G
H01J37/22 502H
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121320
(22)【出願日】2020-07-15
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)「平成26年度、国立研究開発法人 科学技術振興機構、先端計測分析技術・機器開発プログラム「原子分解能磁場フリー電子顕微鏡の開発」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願」
(71)【出願人】
【識別番号】000004271
【氏名又は名称】日本電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(72)【発明者】
【氏名】河野 祐二
【テーマコード(参考)】
5C033
【Fターム(参考)】
5C033FF03
5C033UU01
5C033UU05
(57)【要約】
【課題】高い精度で複数の画像を重ね合わせることが可能な像取得方法を提供する。
【解決手段】電子プローブで試料を走査して走査像を取得する電子顕微鏡における像取得方法であって、前記電子プローブで前記試料の観察対象領域をラスター走査して、第1走査像を取得する工程S10と、前記電子プローブで前記観察対象領域をラスター走査して、第2走査像を取得する工程S20と、前記第1走査像と前記第2走査像を重ね合わせる工程S30と、を含み、前記第1走査像を取得する工程では、前記電子プローブで走査線を引く方向を第1方向とし、前記走査線を移動させる方向を前記第1方向と直交する第2方向とし、前記第2走査像を取得する工程では、前記電子プローブで前記走査線を引く方向を前記第1方向とし、前記走査線を移動させる方向を、前記第2方向とは反対方向の第3方向とする、像取得方法。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子プローブで試料を走査して走査像を取得する電子顕微鏡における像取得方法であって、
前記電子プローブで前記試料の観察対象領域をラスター走査して、第1走査像を取得する工程と、
前記電子プローブで前記観察対象領域をラスター走査して、第2走査像を取得する工程と、
前記第1走査像と前記第2走査像を重ね合わせる工程と、
を含み、
前記第1走査像を取得する工程では、
前記電子プローブで走査線を引く方向を第1方向とし、
前記走査線を移動させる方向を前記第1方向と直交する第2方向とし、
前記第2走査像を取得する工程では、
前記電子プローブで前記走査線を引く方向を前記第1方向とし、
前記走査線を移動させる方向を、前記第2方向とは反対方向の第3方向とする、像取得方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1走査像を取得する工程と前記第2走査像を取得する工程は、連続して行われる、像取得方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記第1走査像を取得する工程において最後の前記走査線を引いてから前記第2走査像を取得する工程において最初の前記走査線を引くまでの時間は、前記第1走査像を取得する工程において前記走査線を引いてから次の前記走査線を引くまでの時間と等しい、像取得方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記第1走査像と前記第2走査像を重ね合わせる工程では、
前記第1走査像の後半部分と、前記第2走査像の前半部分と、を用いて、前記第1走査像と前記第2走査像との間の位置ずれを補正する、像取得方法。
【請求項5】
請求項4において、
前記位置ずれを補正する工程では、
前記第1走査像の後半部分と前記第2走査像の前半部分において、前記試料中の同一箇所を示す目印の位置を求めて、前記位置ずれを補正する、像取得方法。
【請求項6】
請求項5において、
複数の前記目印がある場合、前記第1走査像において最後の前記走査線を引いて取得された部分に最も近い前記目印を用いる、像取得方法。
【請求項7】
請求項1ないし3のいずれか1項において、
前記第1走査像と前記第2走査像を重ね合わせる工程では、
前記第1走査像の最後の走査線を引くことで取得された部分と、前記第2走査像の最初の走査線を引くことで取得された部分とを基準として、前記第1走査像と前記第2走査像の位置合わせを行う、像取得方法。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項において、
前記第1走査像と前記第2走査像を重ね合わせる工程では、前記第1走査像と前記第2
走査像に基づいてドリフト量を計算し、当該ドリフト量に基づいて前記第1走査像の歪みおよび前記第2走査像の歪みを補正する、像取得方法。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、
前記第2走査像を取得する工程の後に、前記電子プローブで前記観察対象領域をラスター走査して、第3走査像を取得する工程と、
前記第1走査像、前記第2走査像、および前記第3走査像を重ね合わせる工程と、
を含み、
前記第3走査像を取得する工程では、
前記電子プローブで前記走査線を引く方向を前記第1方向とし、
前記走査線を移動させる方向を前記第2方向とする、像取得方法。
【請求項10】
電子プローブで試料を走査して走査像を取得する電子顕微鏡であって、
電子源と、
前記電子源から放出された電子線を集束して前記電子プローブを形成する照射レンズ系と、
前記電子線を偏向させて、前記電子プローブで前記試料を走査するための偏向器と、
前記走査像を取得するための処理を行う制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記偏向器に前記電子線を偏向させることによって、前記電子プローブで前記試料の観察対象領域をラスター走査して、第1走査像を取得する処理と、
前記偏向器に前記電子線を偏向させることによって、前記電子プローブで前記観察対象領域をラスター走査して、第2走査像を取得する処理と、
前記第1走査像と前記第2走査像を重ね合わせる処理と、
を行い、
前記第1走査像を取得する処理では、
前記電子プローブで走査線を引く方向を第1方向とし、
前記走査線を移動させる方向を前記第1方向と直交する第2方向とし、
前記第2走査像を取得する処理では、
前記電子プローブで前記走査線を引く方向を前記第1方向とし、
前記走査線を移動させる方向を、前記第2方向とは反対方向の第3方向とする、電子顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像取得方法および電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線を集束させて電子プローブを形成し、電子プローブで試料を走査して像を取得する装置として、走査透過電子顕微鏡(STEM)や走査電子顕微鏡(SEM)などの電子顕微鏡が知られている。
【0003】
例えば、走査透過電子顕微鏡では、電子プローブで試料を走査し、この走査と同期させながら試料を透過した透過電子あるいは試料で散乱された散乱電子を検出し、検出信号の強度をマッピングすることで走査透過電子顕微鏡像(STEM像)を得ることができる。
【0004】
このような電子顕微鏡では、試料の同一領域を撮影して得られた複数の画像を重ね合わせることで、画像のノイズ成分を低減し、画質を向上させることができる。
【0005】
しかしながら、複数の画像を取得するためには、同一領域を繰り返し撮影しなければならないが、繰り返し撮影する間に位置ずれが生じてしまう。そのため、特許文献1では、複数の画像を重ね合わせる前に、画像間の重ね合わせ位置を調整するドリフト補正を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2017-130263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように複数の画像を重ね合わせて高品質な画像を得るためには、高い精度で複数の画像を重ね合わせなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る像取得方法の一態様は、
電子プローブで試料を走査して走査像を取得する電子顕微鏡における像取得方法であって、
前記電子プローブで前記試料の観察対象領域をラスター走査して、第1走査像を取得する工程と、
前記電子プローブで前記観察対象領域をラスター走査して、第2走査像を取得する工程と、
前記第1走査像と前記第2走査像を重ね合わせる工程と、
を含み、
前記第1走査像を取得する工程では、
前記電子プローブで走査線を引く方向を第1方向とし、
前記走査線を移動させる方向を前記第1方向と直交する第2方向とし、
前記第2走査像を取得する工程では、
前記電子プローブで前記走査線を引く方向を前記第1方向とし、
前記走査線を移動させる方向を、前記第2方向とは反対方向の第3方向とする。
【0009】
このような像取得方法では、第1走査像の後半部分と第2走査像の前半部分との間の位
置ずれを小さくできるため、第1走査像と第2走査像との間の位置ずれを正確に補正できる。したがって、このような像取得方法では、高い精度で第1走査像と第2走査像を重ね合わせることができる。
【0010】
本発明に係る電子顕微鏡の一態様は、
電子プローブで試料を走査して走査像を取得する電子顕微鏡であって、
電子源と、
前記電子源から放出された電子線を集束して電子プローブを形成する照射レンズ系と、
前記電子線を偏向させて、電子プローブで前記試料を走査するための偏向器と、
前記走査像を取得するための処理を行う制御部と、
を含み、
前記制御部は、
前記偏向器に前記電子線を偏向させることによって、前記電子プローブで前記試料の観察対象領域をラスター走査して、第1走査像を取得する処理と、
前記偏向器に前記電子線を偏向させることによって、前記電子プローブで前記観察対象領域をラスター走査して、第2走査像を取得する処理と、
前記第1走査像と前記第2走査像を重ね合わせる処理と、
を行い、
前記第1走査像を取得する処理では、
前記電子プローブで走査線を引く方向を第1方向とし、
前記走査線を移動させる方向を前記第1方向と直交する第2方向とし、
前記第2走査像を取得する処理では、
前記電子プローブで前記走査線を引く方向を前記第1方向とし、
前記走査線を移動させる方向を、前記第2方向とは反対方向の第3方向とする。
【0011】
このような電子顕微鏡では、第1走査像の後半部分と第2走査像の前半部分との間の位置ずれを小さくできるため、第1走査像と第2走査像との間の位置ずれを正確に補正できる。したがって、このような電子顕微鏡では、高い精度で第1走査像と第2走査像を重ね合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態に係る電子顕微鏡の構成を示す図。
図2】実施形態に係る電子顕微鏡における像取得方法の一例を示すフローチャート。
図3】実施形態に係る電子顕微鏡における像取得方法を説明するための図。
図4】実施形態に係る電子顕微鏡における像取得方法を説明するための図。
図5】走査信号を示すグラフ。
図6】第1STEM像と第2STEM像との間の位置ずれを補正する工程を説明するための図。
図7】比較例を説明するための図。
図8】比較例を説明するための図。
図9】比較例における走査信号を示す図。
図10】第1STEM像と第2STEM像との間の位置ずれを補正する工程の変形例を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また、以下で説明される構成の全てが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0014】
1. 電子顕微鏡
まず、本発明の一実施形態に係る電子顕微鏡について図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る電子顕微鏡100の構成を示す図である。
【0015】
電子顕微鏡100は、電子プローブで試料Sを走査してSTEM像(走査像の一例)を取得する電子顕微鏡である。電子顕微鏡100は、走査透過電子顕微鏡である。すなわち、電子顕微鏡100は、電子プローブで試料Sを走査し、この走査と同期させながら試料Sを透過した透過電子あるいは試料Sで散乱された散乱電子を検出し、検出信号の強度をマッピングすることで走査透過電子顕微鏡像(STEM像)を得る。
【0016】
電子顕微鏡100は、図1に示すように、電子源10と、照射レンズ系11と、走査偏向器12と、対物レンズ13と、試料ステージ14と、中間レンズ15と、投影レンズ16と、検出器20と、制御部30と、を含む。
【0017】
電子源10は、電子線EBを発生させる。電子源10は、例えば、陰極から放出された電子を陽極で加速し電子線EBを放出する電子銃である。
【0018】
照射レンズ系11は、電子源10で発生した電子線EBを集束させる。走査偏向器12は、電子源10から放出された電子線EBを偏向させる。走査偏向器12を動作させることによって、集束された電子線EB、すなわち、電子プローブで試料S上を走査することができる。
【0019】
対物レンズ13は、電子線EBを試料S上に集束させる。照射レンズ系11および対物レンズ13で電子線EBを集束させることによって、電子プローブを形成することができる。また、対物レンズ13は、試料Sを透過した電子を結像する。
【0020】
試料ステージ14は、試料Sを保持する。試料ステージ14は、試料Sを水平方向や鉛直方向に移動させたり試料Sを傾斜させたりすることができる。
【0021】
中間レンズ15は、対物レンズ13の後段に配置されている。投影レンズ16は、中間レンズ15の後段に配置されている。対物レンズ13、中間レンズ15、および投影レンズ16は、電子顕微鏡100の結像系を構成している。結像系は、試料Sを透過した電子、または試料Sで散乱された電子を、検出器20に導く。
【0022】
検出器20は、試料Sを透過した電子を検出する。検出器20は、結像系によって導かれた電子を検出する。なお、検出器20は、試料Sで散乱された電子を検出する円環状の暗視野検出器であってもよい。これにより、電子顕微鏡100では、高角度散乱暗視野STEM像(HAADF-STEM像)を得ることができる。
【0023】
制御部30は、電子顕微鏡100の各部を制御する。制御部30は、例えば、走査偏向器12を制御する。制御部30は、例えば、CPU(Central Processing Unit)および記憶装置(RAM(Random Access Memory)およびROM(Read Only Memory)など)を含む。制御部30では、CPUで記憶装置に記憶されたプログラムを実行することにより、各種計算処理、各種制御処理を行う。
【0024】
2. 像取得方法
電子顕微鏡100では、STEM像(走査像の一例)を取得できる。図2は、電子顕微鏡100における像取得方法の一例を示すフローチャートである。
【0025】
電子顕微鏡100における像取得方法は、試料Sの観察対象領域をラスター走査して第
1走査像を取得する工程S10と、試料Sの観察対象領域をラスター走査して第2走査像を取得する工程S20と、第1走査像と第2走査像を重ね合わせる工程S30と、を含む。また、第1走査像を取得する工程S10では、電子プローブで走査線を引く方向を第1方向とし、走査線を移動させる方向を第1方向と直交する第2方向とする。また、第2走査像を取得する工程S20では、電子プローブで走査線を引く方向を第1方向とし、走査線を移動させる方向を、第2方向とは反対方向の第3方向とする。以下、電子顕微鏡100における像取得方法を詳細に説明する。
【0026】
図3および図4は、電子顕微鏡100における像取得方法を説明するための図である。図3には、第1STEM像I1と、第1STEM像I1を取得するための電子プローブの走査を説明するための図を示している。図4には、第2STEM像I2と、第2STEM像I2を取得するための電子プローブの走査を説明するための図を示している。
【0027】
図5は、図3および図4に示す電子プローブの走査を行うための走査信号を示すグラフである。図5では、第1STEM像I1のn-1番目の走査線Ln-1を引いてから第2STEM像I2の2番目の走査線Lを引くまでの走査信号を示している。なお、ここでは、第1STEM像I1および第2STEM像I2は、n本の走査線Lを引くことによって取得される。
【0028】
2.1. 第1STEM像の取得(S10)
図3に示すように、まず、試料S中の観察対象領域S2をラスター走査して第1STEM像I1を取得する。
【0029】
第1STEM像I1を取得するためのラスター走査は、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を+Y方向とする。すなわち、電子プローブを+X方向に移動させて走査線Lを引き、走査線Lを引く位置を+Y方向に移動させることを繰り返して、観察対象領域S2を走査する。第1STEM像I1を得るための電子プローブの走査の開始位置Aは、画像の左上であり、終了位置Bは画像の右下である。
【0030】
第1STEM像I1を取得するための電子プローブの走査において、走査線Lを引いてから次の走査線Lを引くまでの時間T1は、一定である。また、1本の走査線Lを引く時間は、一定である。
【0031】
2.2. 第2STEM像の取得(S20)
次に、図4に示すように、観察対象領域S2をラスター走査して第2STEM像I2を取得する。
【0032】
第2STEM像I2を取得するためのラスター走査は、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を-Y方向とする。すなわち、電子プローブを+X方向に移動させて走査線Lを引き、走査線Lを引く位置を-Y方向に移動させることを繰り返して、観察対象領域S2を走査する。第2STEM像I2を得るための電子プローブの走査の開始位置Aは、画像の左下であり、終了位置Bは画像の右上である。
【0033】
このように、第1STEM像I1を取得する工程では、走査線Lを+Y方向に移動させ、第2STEM像I2を取得する工程では、走査線Lを-Y方向に移動させる。そのため、第1STEM像I1を取得する工程S10において最後(n番目)の走査線Lを引いてから第2STEM像I2を取得する工程S20において最初(1番目)の走査線Lを引くまでの時間T12に、電子プローブはY方向に移動しない。
【0034】
第1STEM像I1を取得する工程において最後の走査線Lを引く位置と、第2ST
EM像I2を取得する工程において最初の走査線Lを引く位置は、同じである。同様に、第1STEM像I1を取得する工程においてn-1番目の走査線Ln-1を引く位置と、第2STEM像I2を取得する工程において2番目の走査線Lを引く位置は、同じである。
【0035】
第2STEM像I2を取得するための電子プローブの走査において、走査線Lを引いてから次の走査線Lを引くまでの時間T2は、一定である。例えば、T1=T2である。
【0036】
図5に示すように、第1STEM像I1を取得する工程S10と第2STEM像I2を取得する工程S20とは、連続して行われる。
【0037】
例えば、第1STEM像I1を取得する工程S10において最後の走査線Lを引いてから第2STEM像I2を取得する工程S20において最初の走査線Lを引くまでの時間T12は、第1STEM像I1を取得する工程において走査線Lを引いてから次の走査線Lを引くまでの時間T1と等しい(T12=T1)。図5に示す例では、T12=T1=T2である。
【0038】
なお、第1STEM像I1を取得する工程と第2STEM像I2を取得する工程は、連続して行われれば、T12=T1の場合に限定されない。例えば、時間T12は、時間T1と同程度であってもよい。
【0039】
2.3. 重ね合わせ(S30)
次に、第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせる。第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせる工程S30は、第1STEM像I1と第2STEM像I2の位置ずれを補正する工程と、第1STEM像I1の歪みおよび第2STEM像I2の歪みを補正する工程と、位置ずれを補正する工程および歪みを補正する工程の後に、第1STEM像I1および第2STEM像I2を重ね合わせる工程と、を含む。
【0040】
2.3.1. 位置ずれの補正
図6は、第1STEM像I1と第2STEM像I2の間の位置ずれを補正する工程を説明するための図である。
【0041】
第1STEM像I1と第2STEM像I2との間の位置ずれの補正は、第1STEM像I1の後半部分I1aと、第2STEM像I2の前半部分I2aと、を用いて行う。
【0042】
第1STEM像I1の後半部分I1aは、第1STEM像I1をY方向に半分に分けたときに、後から取得された部分である。図示の例では、第1STEM像I1の後半部分I1aは、第1STEM像I1の下半分である。第2STEM像I2の前半部分I2aは、第2STEM像I2をY方向に半分に分けたときに、先に取得された部分である。図示の例では、第2STEM像I2の前半部分I2aは、第2STEM像I2の下半分である。
【0043】
第1STEM像I1と第2STEM像I2との間の位置ずれの補正は、例えば、第1STEM像I1の後半部分I1aと第2STEM像I2の前半部分I2aにおいて、試料Sの同一箇所を示す目印の位置(相対位置)を求めることで行われる。第1STEM像I1における目印の位置と第2STEM像I2における目印の位置を一致させることによって、位置ずれを補正できる。
【0044】
ここで、第1STEM像I1の後半部分I1aに複数の目印がある場合、第1STEM像I1の後半部分I1aのうち、最後の走査線Lを引くことによって取得された部分に最も近い目印を用いる。すなわち、まず、第1STEM像I1の後半部分I1aのうち、
最後の走査線Lを引くことによって取得された部分に最も近い目印の位置を求め、次に、この目印の第2STEM像I2における位置を求める。
【0045】
なお、複数の目印がある場合に、第2STEM像I2の前半部分I2aのうち、最初の走査線Lを引くことによって取得された部分に最も近い目印の位置を用いてもよい。すなわち、まず、第2STEM像I2の前半部分I2aのうち、最初の走査線Lを引くことによって取得された部分に最も近い目印の位置を求め、次に、この目印の第1STEM像I1における位置を求める。
【0046】
また、例えば、第1STEM像I1と第2STEM像I2との間の位置ずれを補正する工程において、第1STEM像I1の後半部分I1aと第2STEM像I2の前半部分I2aの相互相関関数を計算し、その計算結果に基づいて位置ずれを補正してもよい。このとき、第1STEM像I1の後半部分I1aの一部の領域と第2STEM像I2の前半部分I2aの一部の領域の相互相関関数を計算してもよい。また、相互相関関数を計算する領域は、第1STEM像I1において最後の走査線Lを引くことによって取得された部分およびその近傍の領域、第2STEM像I2において最初の走査線Lを引くことによって取得された部分およびその近傍の領域とする。
【0047】
ここで、第2STEM像I2の最初の走査線L1を引くことによって取得された部分における、第1STEM像I1と第2STEM像I2の像ドリフトによる位置ずれΔは、次式(1)のように表される。
【0048】
【数1】
【0049】
ただし、D(「D」の上の矢印は省略する)は、ドリフトレート[nm/μs]である。Tは、1本の走査線を引く時間[μs]である。なお、式(1)に示す位置ずれΔは、第1STEM像I1の最後の走査線Lを引くことで取得された部分と、第2STEM像I2の最初の走査線Lを引くことで取得された部分と、の間の位置ずれともいえる。
【0050】
このように、位置ずれΔは、ドリフトレートDに、1本の走査線Lを引く時間をかけた量に抑えられる。したがって、上記のように、第2STEM像I2のうちの最初の走査線Lを引くことによって取得された部分に最も近い目印、または第1STEM像I1のうちの最後の走査線Lを引くことによって取得された部分に最も近い目印を用いることによって、正確に位置ずれΔを求めることができる。
【0051】
上記のように、電子顕微鏡100における像取得方法では、位置ずれΔを極めて小さくできる。そのため、第1STEM像I1のうちの最後の走査線Lを引くことによって取得され部分と、第2STEM像I2のうちの最初の走査線Lを引くことによって取得された部分は、位置ずれが無いものと仮定できる。
【0052】
したがって、第1STEM像I1のうちの最後の走査線Lを引くことによって取得され部分と、第2STEM像I2のうちの最初の走査線Lを引くことによって取得された部分とを重ねたときに、2つの部分はほぼ一致する。したがって、この2つの部分を基準として第1STEM像I1と第2STEM像I2の位置合わせを行うことによって、第1STEM像I1と第2STEM像I2を正確に位置合わせできる。
【0053】
2.3.2.歪みの補正
第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせる工程では、第1STEM像I1と第2STEM像I2に基づいてドリフト量を計算し、当該ドリフト量に基づいて第1STEM像I1の歪みおよび第2STEM像I2の歪みを補正する。
【0054】
第1STEM像I1の歪みは、次式(2)のように表される。
【0055】
【数2】
【0056】
ただし、P(「P」の上の矢印は省略する)は、第1STEM像I1における基準点を表す位置ベクトルである。P(「P」の上の矢印は省略する)は、ドリフトが無い場合の基準点を表す位置ベクトルである。なお、図3に示す格子像では、PおよびPは、格子ベクトルを表す。Pyは、位置ベクトルPのY成分である。なお、式(2)では、位置ベクトルPのX成分は、無視できるものとした。
【0057】
第2STEM像I2の歪みは、次式(3)のように表される。
【0058】
【数3】
【0059】
ただし、P′(「P」の上の矢印は省略する)は、第2STEM像I2における基準点を表す位置ベクトルである。P′yは、位置ベクトルP′のY成分である。なお、図4に示す格子像では、PおよびPは、格子ベクトルを表す。なお、式(3)では、位置ベクトルP′のX成分は、無視できるものとした。
【0060】
上記式(2)および上記式(3)に示すように、第1STEM像I1における像ドリフトによる歪みの方向と第2STEM像I2における像ドリフトによる歪みの方向は、反対方向である。そのため、第1STEM像I1の歪みと第2STEM像I2の歪みの差からドリフトレートD、すなわち、ドリフト量を求めることができる。
【0061】
このように、上記式(2)および上記式(3)から、ドリフト量を求めることができる。また、ドリフト量から、第1STEM像I1の歪みおよび第2STEM像I2の歪みを求めることができる。第1STEM像I1の歪みは、求めた第1STEM像I1の歪みに基づいて補正できる。また、第2STEM像I2の歪みは、求めた第2STEM像I2の歪みに基づいて補正できる。
【0062】
2.3.3. 重ね合わせ
位置ずれおよび歪みが補正された第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせる。これにより、第1STEM像I1と第2STEM像I2を、高い精度で重ね合わせることができる。第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせることによって、第1STEM像I1と第2STEM像I2が積算された画像(積算画像)を得ることができる。
【0063】
3. 制御部の処理
電子顕微鏡100では、制御部30は、上述した像取得方法によってSTEM像(積算画像)を取得する。
【0064】
具体的には、制御部30は、走査偏向器12に電子線EBを偏向させることによって、電子プローブで観察対象領域S2をラスター走査して、第1STEM像I1を取得する処理と、走査偏向器12に電子線EBを偏向させることによって、電子プローブで観察対象領域S2をラスター走査して、第2STEM像I2を取得する処理と、第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせる処理と、を行う。また、第1STEM像I1を取得する処理では、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を+Y方向とし、第2STEM像I2を取得する処理では、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を、-Y方向とする。
【0065】
また、制御部30は、第1STEM像I1を取得する処理と、第2STEM像I2を取得する処理を、連続して行う。制御部30は、図5に示すように、第1STEM像I1を取得する処理において最後の走査線Lを引いてから第2STEM像I2を取得する処理において最初の走査線Lを引くまでの時間T12を、第1STEM像I1を取得する処理において走査線Lを引いてから次の走査線Lを引くまでの時間T1と等しくする。
【0066】
また、制御部30は、第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせる処理では、第1STEM像I1の後半部分I1aと、第2STEM像の前半部分I2aと、を用いて、第1STEM像I1と第2STEM像I2との間の位置ずれを補正する。位置ずれを補正する処理は、上述した「2.3.1. 位置ずれの補正」に記載した手法により行われる。
【0067】
また、制御部30は、第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせる処理では、第1STEM像I1と第2STEM像に基づいてドリフト量を計算し、当該ドリフト量に基づいて第1STEM像I1の歪みおよび第2STEM像I2の歪みを補正する。歪みを補正する処理は、上述した「2.3.2. 歪みの補正」に記載した手法により行われる。
【0068】
制御部30は、位置ずれおよび歪みが補正された、第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせて、STEM像(積算画像)を生成する。
【0069】
4. 作用効果
電子顕微鏡100における像取得方法では、第1STEM像I1を取得する工程において、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を+Y方向とし、第2STEM像I2を取得する工程において、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を、-Y方向とする。そのため、電子顕微鏡100における像取得方法では、第1STEM像I1と第2STEM像I2を高い精度で重ね合わせることができる。したがって、高品質なSTEM像(積算画像)を得ることができる。
【0070】
また、電子顕微鏡100における像取得方法では、第1STEM像I1を取得する工程と第2STEM像I2を取得する工程は、連続して行われる。例えば、第1STEM像I1を取得する工程において最後の走査線Lnを引いてから第2STEM像I2を取得する工程において最初の走査線Lを引くまでの時間T12は、第1STEM像I1を取得する工程において走査線Lを引いてから次の走査線Lを引くまでの時間T1と等しい。
【0071】
以下、電子顕微鏡100における像取得方法の作用効果について、比較例と対比しながら説明する。
【0072】
図7および図8は、比較例を説明するための図である。図7には、第1STEM像I1
Dと、第1STEM像I1Dを取得するための電子プローブの走査を説明するための図を図示している。図8には、第2STEM像I2Dと、第2STEM像I2Dを取得するための電子プローブの走査を説明するための図を図示している。
【0073】
図9は、図7および図8に示す電子プローブの走査を行うための走査信号を示す図である。なお、図9では、第1STEM像I1Dのn-1番目の走査線Ln-1を引いてから第2STEM像I2Dの2番目の走査線Lを引くまでの走査信号を示している。
【0074】
図7に示すように、比較例では、まず、観察対象領域S2をラスター走査して第1STEM像I1Dを取得する。第1STEM像I1Dを取得するためのラスター走査は、上述した図3に示す第1STEM像I1を取得するためのラスター走査と同様に行われる。
【0075】
次に、図8に示すように、観察対象領域S2をラスター走査して第2STEM像I2を取得する。第2STEM像I2Dを取得するためのラスター走査は、第1STEM像I1Dを取得するためのラスター走査と同様に行われる。
【0076】
次に、第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせる。
【0077】
以上の工程により、第1STEM像I1と第2STEM像I2が積算された画像(積算画像)を得ることができる。
【0078】
ここで、比較例では、第2STEM像I2の最初の走査線L1を引くことによって取得された部分での、第1STEM像I1と第2STEM像I2の像ドリフトによる位置ずれΔは、以下のように表される。
【0079】
【数4】
【0080】
ただし、Nは、走査線の数である。Tは、電子プローブを開始位置Aに移動させるための時間[μs]である。
【0081】
比較例では、式(4)に示すように、位置ずれΔは、ドリフトレートDに、1つのSTEM像を取得する時間(T×N+T)をかけた大きさとなる。
【0082】
これに対して、電子顕微鏡100における像取得方法では、式(1)に示すように、位置ずれΔは、ドリフトレートDに、1本の走査線Lを引く時間(T)をかけた大きさとなる。このように、電子顕微鏡100における像取得方法では、位置ずれΔを小さくできる。
【0083】
ここで、2つの画像間の位置ずれが小さい場合、2つの画像間の位置ずれが大きい場合と比べて、精度よく位置ずれを求めることができる。例えば、位置ずれが大きい場合、原子分解能像(格子像)など、周期的な像では、位置ずれを正確に求めることは困難である。これに対して、2つの画像間の位置ずれが小さい場合には、原子分解能像(格子像)など、周期的な像であっても、位置ずれを正確に求めることができる。例えば、格子像において、位置ずれを格子の周期の1周期未満にすることによって、容易に、正確に位置ずれを求めることができる。
【0084】
電子顕微鏡100における像取得方法では、第2STEM像I2において最初の走査線
を引いて取得された部分に最も近い目印を用いて、第1STEM像I1と第2STEM像I2との間の位置ずれを補正する。そのため、比較例と比べて、位置ずれを小さくでき、正確に位置ずれを求めることができる。したがって、正確に位置ずれを補正できる。電子顕微鏡100における像取得方法では、例えば、原子分解能像など、周期的な像であっても、正確に位置ずれを補正できる。
【0085】
また、第1STEM像I1の後半部分I1aと、第2STEM像I2の前半部分I2aと、を用いて位置ずれを補正する場合でも、比較例と比べて、位置ずれを小さくでき、位置ずれを正確に求めることができる。これは、第2STEM像I2の前半部分I2aにおける位置ずれを表す式において、ドリフトレートDにかける値は、1つのSTEM像を取得する時間(T×N+T)よりも小さくなるためである。
【0086】
電子顕微鏡100における像取得方法では、第1STEM像I1と第2STEM像I2を重ね合わせる工程において、第1STEM像I1と第2STEM像I2に基づいてドリフト量を計算し、当該ドリフト量に基づいて第1STEM像I1の歪みおよび第2STEM像I2の歪みを補正する。そのため、電子顕微鏡100における像取得方法では、像ドリフトによる歪みの影響を低減でき、第1STEM像I1と第2STEM像I2を高い精度で重ね合わせることができる。
【0087】
例えば、比較例では、第1STEM像I1Dおよび第2STEM像I2Dに像ドリフトがあると、画像中の点の相対位置が以下のようにずれる。
【0088】
【数5】
【0089】
式(5)に示す画像中の点の相対位置のずれは、画像の歪みとして現れる。したがって、第1STEM像I1Dと第2STEM像I2Dを、重ね合わせても高品質な画像が得られない。
【0090】
これに対して、電子顕微鏡100における像取得方法では、上記のように、電子プローブの走査方向が互いに反対方向の2つのSTEM像(第1STEM像I1および第2STEM像I2)に基づいて、2つのSTEM像の歪みを補正できる。したがって、高品質な画像のSTEM像(積算画像)を得ることができる。
【0091】
5. 変形例
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。
【0092】
5.1. 第1変形例
上記の実施形態では、2つのSTEM像(第1STEM像I1および第2STEM像I2)を取得して、2つのSTEM像を重ね合わせる場合について説明したが、3以上のSTEM像を取得して、3以上のSTEM像を重ね合わせてもよい。
【0093】
この場合、第2STEM像I2の次に取得される第3STEM像(第3走査像の一例)を取得する工程では、第1STEM像I1と同様に、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を+Y方向とする。第3STEM像を他の画像(例えば第1STEM像I1と第2STEM像I2の積算画像)と重ね合わせる工程では、第3STEM像の前半部分と他の画像の後半部分を用いて位置ずれを補正する。
【0094】
また、第3STEM像の次に取得される第4STEM像を取得する工程では、第2STEM像I2と同様に、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を-Y方向とする。第4STEM像を他の画像(例えば第1~第3STEM像の積算画像)と重ね合わせる工程では、第4STEM像の前半部分と他の画像の後半部分を用いて位置ずれを補正する。また、第3STEM像と第4STEM像を用いて、歪みを補正することもできる。
【0095】
このように、奇数番目のSTEM像を取得する工程では、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を+Y方向とする。また、偶数番目のSTEM像を取得する工程では、電子プローブで走査線Lを引く方向を+X方向とし、走査線Lを移動させる方向を-Y方向とする。
【0096】
また、取得されたSTEM像を、取得したSTEM像よりも前に取得された他の画像と重ね合わせる工程では、取得されたSTEM像の前半部分と他の画像の後半部分を用いて位置ずれを補正する。
【0097】
また、連続して取得された奇数番目のSTEM像と偶数番目のSTEM像を用いて、ドリフト量を求め、当該ドリフト量に基づいて、これらのSTEM像の歪みを補正することができる。
【0098】
第1変形例によれば、上述した電子顕微鏡100における像取得方法と同様の作用効果を奏することができる。さらに、上記の実施形態と比べて、画像の積算数を多くできるため、より画質を向上させることができる。
【0099】
5.2. 第2変形例
上記の実施形態では、第1STEM像I1の後半部分I1aと第2STEM像I2の前半部分I2aを用いて、第1STEM像I1と第2STEM像I2の間の位置ずれを補正する場合について説明した。これに対して、例えば、図10に示すように、第1STEM像I1をY方向に4等分した場合に、最後に取得された部分I1bと、第2STEM像I2をY方向に4等分した場合に、最初に取得された部分I2bを用いて、第1STEM像I1と第2STEM像I2との間の位置ずれを補正してもよい。これにより、第1STEM像I1の後半部分I1aと第2STEM像I2の前半部分I2aを用いる場合と比べて、位置ずれを小さくでき、より正確に位置ずれを求めることができる。
【0100】
5.3. 第3変形例
上記の実施形態では、電子顕微鏡100が走査透過電子顕微鏡である場合について説明したが、電子顕微鏡100は、電子プローブを走査して走査像を取得する装置であれば特に限定されない。例えば、電子顕微鏡100は、走査電子顕微鏡であってもよい。この場合、走査像は、走査電子顕微鏡像(SEM像)である。電子顕微鏡100が走査電子顕微鏡である場合であっても、上述した電子顕微鏡100が走査透過電子顕微鏡である場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0101】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、さらに種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施形態で説明した構成と実質的に同一の構成を含む。実質的に同一の構成とは、例えば、機能、方法、及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成である。また、本発明は、実施形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【符号の説明】
【0102】
10…電子源、11…照射レンズ系、12…走査偏向器、13…対物レンズ、14…試料ステージ、15…中間レンズ、16…投影レンズ、20…検出器、30…制御部、100…電子顕微鏡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10