(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183002
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】搬送システム及び搬送方法
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20221201BHJP
B65G 1/00 20060101ALN20221201BHJP
B65G 1/137 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
G05D1/02 P
G05D1/02 A
B65G1/00 501C
B65G1/137 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022055546
(22)【出願日】2022-03-30
(31)【優先権主張番号】P 2021088376
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021088377
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(72)【発明者】
【氏名】グエンクアン テイン
(72)【発明者】
【氏名】山内 博
(72)【発明者】
【氏名】山川 晃弘
(72)【発明者】
【氏名】榊原 将弘
(72)【発明者】
【氏名】岩本 隆司
【テーマコード(参考)】
3F022
3F522
5H301
【Fターム(参考)】
3F022FF01
3F022LL07
3F022MM14
3F022NN36
3F022NN57
3F522BB35
3F522CC01
3F522GG09
3F522GG13
3F522GG48
3F522JJ02
3F522LL09
3F522LL10
3F522LL33
5H301AA02
5H301BB05
5H301CC03
5H301CC06
5H301CC10
5H301DD17
5H301EE06
5H301FF15
5H301GG07
5H301KK03
5H301KK08
5H301KK18
5H301LL04
5H301LL06
5H301LL07
5H301LL08
5H301LL12
(57)【要約】
【課題】自動搬送装置が走行するコース全体における搬送時間のロスを低減することが可能な搬送システム及び搬送方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る搬送システムは、自動搬送装置に対する移動要求を受け付ける移動要求受付部と、前記移動要求受付部が受け付けた前記移動要求に基づいて、第1自動搬送装置の現在位置から目的位置までの走行経路の一部を構成する所定の長さの区間走行経路を、前記第1自動搬送装置の前記区間走行経路が他の第2自動搬送装置に設定された前記区間走行経路と重複しないように設定する区間走行経路設定部と、を備え、前記区間走行経路設定部は、前記自動搬送装置が第1区間走行経路を走行中に、前記第1区間走行経路の終了位置を次の第2区間走行経路の開始位置として前記第2区間走行経路を設定する処理を繰り返し実行する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動搬送装置に対して走行経路を設定して目的位置まで移動させる搬送システムであって、
前記自動搬送装置に対する移動要求を受け付ける移動要求受付部と、
前記移動要求受付部が受け付けた前記移動要求に基づいて、第1自動搬送装置の現在位置から前記目的位置までの走行経路の一部を構成する所定の長さの区間走行経路を、前記第1自動搬送装置の前記区間走行経路が他の第2自動搬送装置に設定された前記区間走行経路と重複しないように設定する区間走行経路設定部と、
を備え、
前記区間走行経路設定部は、前記自動搬送装置が第1区間走行経路を走行中に、前記第1区間走行経路の終了位置を次の第2区間走行経路の開始位置として前記第2区間走行経路を設定する処理を繰り返し実行する、
搬送システム。
【請求項2】
前記区間走行経路の始点から予め設定された判定長さ以内の部分に関する情報に基づいて、前記区間走行経路の長さを決定する区間走行経路長さ決定部を備える、
請求項1に記載の搬送システム。
【請求項3】
前記区間走行経路設定部により設定される前記区間走行経路を予約走行経路として設定する予約走行経路設定部をさらに備える
請求項2に記載の搬送システム。
【請求項4】
複数の通路同士が交差する複数の交差点のうち複数の前記自動搬送装置が交差する可能性の高い特定交差点の位置が予め登録されており、
前記区間走行経路長さ決定部は、前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内に前記特定交差点が存在しない場合に、前記区間走行経路の長さとして第1長さを設定し、前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内に前記特定交差点が存在する場合に、前記区間走行経路の長さとして前記第1長さよりも短い第2長さを設定する、
請求項3に記載の搬送システム。
【請求項5】
前記自動搬送装置を高速走行させる高速走行通路と前記自動搬送装置を低速走行させる低速走行通路とが予め登録されており、
前記区間走行経路長さ決定部は、前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内に前記低速走行通路が含まれない場合に、前記区間走行経路の長さとして第1長さを設定し、前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内に前記低速走行通路が含まれる場合に、前記区間走行経路の長さとして前記第1長さよりも短い第2長さを設定する、
請求項3に記載の搬送システム。
【請求項6】
前記自動搬送装置を高速走行させる高速走行エリアと前記自動搬送装置を低速走行させる低速走行エリアとが予め登録されており、
前記区間走行経路長さ決定部は、前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内の部分が前記低速走行エリア内に含まれない場合に、前記区間走行経路の長さとして第1長さを設定し、前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内の部分が前記低速走行エリア内に含まれる場合に、前記区間走行経路の長さとして前記第1長さよりも短い第2長さを設定する、
請求項3に記載の搬送システム。
【請求項7】
前記区間走行経路長さ決定部は、前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内に右左折地点が存在しない場合に、前記区間走行経路の長さとして第1長さを設定し、前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内に前記右左折地点が存在する場合に、前記区間走行経路の長さとして前記第1長さよりも短い第2長さを設定する、
請求項3に記載の搬送システム。
【請求項8】
前記区間走行経路長さ決定部は、
全ての前記自動搬送装置の現在位置に基づいて交差の発生する確率が閾値よりも高い高密度エリアを判定し、
前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内の部分が前記高密度エリア内に含まれない場合に、前記区間走行経路の長さとして第1長さを設定し、前記区間走行経路の開始位置から前記判定長さ以内の部分が前記高密度エリア内に含まれる場合に、前記区間走行経路の長さとして前記第1長さよりも短い第2長さを設定する、
請求項3に記載の搬送システム。
【請求項9】
前記第1自動搬送装置の動作を規定する制御情報を前記区間走行経路上のマーカに対応付けて設定する制御情報設定部と、
前記走行経路及び前記区間走行経路を含む走行経路情報と、前記制御情報とを前記第1自動搬送装置に出力する出力処理部と、
をさらに備える請求項3から請求項8のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項10】
前記制御情報設定部は、前記区間走行経路設定部が設定した前記区間走行経路上の前記マーカに対応付けて、前記区間走行経路長さが所定の基準長さ以上である場合に第1速度の情報を設定し、前記区間走行経路長さが前記所定の基準長さ未満である場合に前記第1速度よりも小さい第2速度の情報を設定する、
請求項9に記載の搬送システム。
【請求項11】
前記走行経路を前記自動搬送装置が走行する際の動作を規定する制御情報を設定する制御情報設定部と、
前記第1自動搬送装置が前記走行経路上で前記第2自動搬送装置と交差するか否かを判定する交差判定部と、
前記交差判定部が、前記第1自動搬送装置が前記走行経路上で前記第2自動搬送装置と交差すると判定した場合に、前記第1自動搬送装置及び前記第2自動搬送装置の交差を回避させる複数の回避情報候補を作成する回避情報作成部と、
全ての前記自動搬送装置の運行シミュレーションによって、前記回避情報作成部が作成した前記複数の回避情報候補それぞれに対して適正度の評価を行う適正度評価部と、
前記適正度評価部の評価結果に基づいて、前記複数の回避情報候補の中から一つの前記回避情報候補を回避情報として決定する回避情報決定部と、
をさらに備える請求項1に記載の搬送システム。
【請求項12】
前記適正度評価部は、全ての前記自動搬送装置の運行シミュレーションによって、前記回避情報作成部が作成した前記複数の回避情報候補のそれぞれに対して交差の回避の成否を判定する、
請求項11に記載の搬送システム。
【請求項13】
前記適正度評価部は、全ての前記自動搬送装置の運行シミュレーションによって、前記回避情報作成部が作成した前記複数の回避情報候補のそれぞれに対して全ての前記自動搬送装置の搬送時間の合計を判定する、
請求項11又は請求項12に記載の搬送システム。
【請求項14】
前記複数の回避情報候補は、複数の異なる回避方法による回避情報候補を含む、
請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項15】
前記複数の異なる回避方法は、前記制御情報設定部により設定された前記制御情報を変更することにより交差を回避する第1方法を含む、
請求項14に記載の搬送システム。
【請求項16】
前記制御情報は、走行経路の各地点における前記自動搬送装置の走行速度を含み、
前記第1方法は、走行経路の各地点における前記自動搬送装置の走行速度を変更することにより交差を回避する方法である、
請求項15に記載の搬送システム。
【請求項17】
前記複数の異なる回避方法は、前記走行経路を変更することにより交差を回避する第2方法を含む、
請求項12から請求項16のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項18】
前記複数の異なる回避方法は、前記制御情報設定部により設定された前記制御情報に走行経路の所定の位置で前記自動搬送装置を停止させる第3方法を含む、
請求項12から請求項17のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項19】
前記複数の異なる回避方法はそれぞれ優先順位が設定されており、
前記回避情報決定部は、前記適正度評価部の評価結果と前記複数の異なる回避方法それぞれに設定された優先順位とに基づいて、前記複数の回避情報候補の中から一つの回避情報候補を回避情報として決定する、
請求項12から請求項18のいずれか1項に記載の搬送システム。
【請求項20】
一又は複数のプロセッサーが、
自動搬送装置に対して走行経路を設定して目的位置まで移動させる搬送方法であって、
前記自動搬送装置に対する移動要求を受け付けることと、
前記移動要求に基づいて、第1自動搬送装置の現在位置から前記目的位置までの走行経路の一部を構成する所定の長さの区間走行経路を、前記第1自動搬送装置の前記区間走行経路が他の第2自動搬送装置に設定された前記区間走行経路と重複しないように設定することと、
前記自動搬送装置が第1区間走行経路を走行中に、前記第1区間走行経路の終了位置を次の第2区間走行経路の開始位置として前記第2区間走行経路を設定する処理を繰り返し実行することと、
を実行する搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送システム及び搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、倉庫などにおいて、自動搬送装置が搬送対象の物品を保管位置(例えば保管棚)で受け取って払い出し位置(出庫場所)まで搬送する搬送システムが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ワークの荷積み場所及び荷降し場所が指示されると荷積み場所から荷降し場所までの経路を含む走行計画を立案し、各自律移動体の立案した経路の関係を評価し、各自律移動体の経路間で干渉を生じる可能性があるときには干渉を回避させる指示を自律移動体に与える運行制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の実施形態1に記載されているシステムでは、集中制御装置から待機中の自律移動体に対して搬送要求がされると、自律移動体が、指示された荷積み場所と荷降し場所とを結ぶルートを単位ルートの組合せとして探索し、単位ルートの組合せのうち距離が最短になるものを抽出して走行計画を立案する。さらに、自動移動体は、立案した走行計画の走行ルートに他の自律移動体の走行計画が既に採用されているルートに設定された仮想障害物が存在する場合に、仮想障害物を避けるように走行計画を再立案する。そして、自律移動体は、仮想障害物を避けるように走行計画が立案された後に搬送を開始する。
【0006】
すなわち、実施形態1の前記システムは、自律移動体が搬送を開始する前に荷積み場所と荷降し場所までのルート全体における他の自律移動体との干渉を防止する走行計画を立案するものである。このため、走行ルートが長くなると、遠い未来における他の自律移動体との干渉を予測する必要があるため、干渉の予測が困難又は予測精度が低下する問題が生じる。また、走行計画に含まれる長い走行ルートにわたって他の自律移動体の進入を防止する仮想障害物が設定されるため、他の自律移動体の移動を大きく阻害してしまい、運行効率が低下する問題が生じる。
【0007】
また、特許文献1の実施形態2に記載されているシステムは、実施形態1と同様にして走行計画を立案した後に、仮想障害物を避ける走行計画を再立案せず、自律移動体が搬送を開始する。そして、前記システムは、自律移動体が搬送を開始した後に、自律移動体の位置を常時監視し、自律移動体の干渉を回避するように、必要に応じて集中制御装置から自律移動体に指示を与える。
【0008】
すなわち、実施形態2の前記システムは、自律移動体が搬送を開始する前には他の自律移動体との干渉を考慮することなく走行計画を立案し、自律移動体が搬送中に他の自律移動体との干渉が生じると判定した時点で、前記走行計画を破棄して新たな走行ルートを設定するものである。
【0009】
また、実施形態2の前記システムは、自律移動体の走行計画を立案した時点では他の自動移動体との干渉を許容しており、自律移動体が搬送中に他の自律移動体との干渉が生じると判定した時点で、搬送開始時に立案した走行計画を破棄して新たな走行ルートを設定するため、前記走行計画を破棄して新たな走行ルートを設定するまでの間は走行が停止してしまうという問題が生じる。また、自律移動体同士の干渉を回避するために各自律移動体の位置を常時監視しなければならないため非常に大きな処理負荷が発生する問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、自動搬送装置が走行するコース全体における搬送時間のロスを低減することが可能な搬送システム及び搬送方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一の態様に係る搬送システムは、自動搬送装置に対して走行経路を設定して目的位置まで移動させる搬送システムである。前記搬送システムは、移動要求受付部と、区間走行経路設定部とを備える。前記移動要求受付部は、前記自動搬送装置に対する移動要求を受け付ける。前記区間走行経路設定部は、前記移動要求受付部が受け付けた前記移動要求に基づいて、第1自動搬送装置の現在位置から前記目的位置までの走行経路の一部を構成する所定の長さの区間走行経路を、前記第1自動搬送装置の前記区間走行経路が他の第2自動搬送装置に設定された前記区間走行経路と重複しないように設定する。また、前記区間走行経路設定部は、前記自動搬送装置が第1区間走行経路を走行中に、前記第1区間走行経路の終了位置を次の第2区間走行経路の開始位置として前記第2区間走行経路を設定する処理を繰り返し実行する。
【0012】
本発明の他の態様に係る搬送方法は、一又は複数のプロセッサーが、自動搬送装置に対して走行経路を設定して目的位置まで移動させる搬送方法であって、前記自動搬送装置に対する移動要求を受け付けることと、前記移動要求に基づいて、第1自動搬送装置の現在位置から前記目的位置までの走行経路の一部を構成する所定の長さの区間走行経路を、前記第1自動搬送装置の前記区間走行経路が他の第2自動搬送装置に設定された前記区間走行経路と重複しないように設定することと、前記自動搬送装置が第1区間走行経路を走行中に、前記第1区間走行経路の終了位置を次の第2区間走行経路の開始位置として前記第2区間走行経路を設定する処理を繰り返し実行することと、を実行する搬送方法である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自動搬送装置が走行するコース全体における搬送時間のロスを低減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る搬送システムの構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る運行管理サーバーの構成を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る搬送システムが適用される倉庫の構成を模式的に示す図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態に係る搬送システムで使用される商品情報の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、本発明の実施形態に係る搬送システムで使用されるオーダー情報の一例を示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の実施形態に係る搬送システムで使用されるセットオーダー情報の一例を示す図である。
【
図7】
図7は、本発明の実施形態に係る倉庫の一部のエリアを模式的に示す図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図9】
図9は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図10】
図10は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図11】
図11は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態に係る搬送システムにおける走行経路の設定方法の一例を示す図である。
【
図18】
図18は、本発明の実施形態に係る搬送システムで実行される搬送処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【
図19】
図19は、本発明の実施形態に係る搬送システムで実行される搬送処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明し、本発明の理解に供する。なお、以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0016】
[搬送システム10]
図1に示されるように、本発明の実施形態に係る搬送システム10は、運行管理サーバー1と注文管理サーバー2と自動搬送装置3(AGV、無人搬送装置ともいう。)とを含む。運行管理サーバー1と注文管理サーバー2とは、有線LAN又は無線LANなどの通信網N1を介して通信可能である。また、運行管理サーバー1と自動搬送装置3とは、無線LANなどの通信網N2を介して通信可能である。また、注文管理サーバー2は、インターネットなどの通信網N3を介して顧客端末4と通信可能である。
【0017】
搬送システム10は、自動搬送装置3が走行可能な複数の通路が設定され、自動搬送装置3に対して前記複数の通路のうち走行すべき通路を走行経路として指定して搬送対象を保管位置から目的位置まで搬送させるシステムである。具体的には、搬送システム10は、例えば商品(搬送対象)を保管する倉庫(物流倉庫)などに適用される。搬送システム10は、顧客(顧客端末4)から商品のオーダーを受け付けると、自動搬送装置3に搬送指示を出力する。自動搬送装置3は、前記搬送指示を取得すると、前記商品の保管位置(保管棚)まで移動して作業者から前記商品を受け取り、当該商品を出庫場所まで搬送する。顧客端末4は、パーソナルコンピューター、スマートフォンなどの情報処理装置であり、例えば顧客は、顧客端末4を利用して注文管理サーバー2が運用するWEBサイト(注文ページ)にアクセスして商品の注文を行うことが可能である。
【0018】
注文管理サーバー2は、複数の顧客端末4のそれぞれから前記商品のオーダーを受け付け可能であり、受け付けた各オーダー情報を集約して運行管理サーバー1に出力する。運行管理サーバー1は、複数の自動搬送装置3のそれぞれの運行を管理し、前記オーダー情報に基づいて各自動搬送装置3に搬送指示(走行指示)を出力する。自動搬送装置3は、前記搬送指示に基づいて、予め設定された走行経路を自律走行し、前記オーダー情報に含まれる商品を保管棚からピッキングして出庫場所まで搬送する。なお、自動搬送装置3の自律走行方法は、特に限定されず周知の方法、例えば床面に設置された磁気テープと走行動作(制御情報)を規定したマーカとを利用した方法を採用することができる。
【0019】
また、自動搬送装置3には、例えば複数のコンテナ(収容部)が搭載されており、コンテナごとに顧客のオーダー商品を収容することにより、一度のピッキング走行(待機場所から各棚を巡回して出庫場所まで移動する走行)により複数の顧客の商品をまとめて搬送することが可能になっている。例えば、自動搬送装置3が2個のコンテナを搭載している場合には、自動搬送装置3は、2人分の顧客のオーダー商品をまとめて搬送することが可能である。運行管理サーバー1は、一又は複数の顧客のオーダー情報に対応する前記搬送指示を各自動搬送装置3に出力する。
【0020】
本実施形態では、一例として、搬送システム10が
図3に示す倉庫W1に適用される例について説明する。
図3に示す倉庫W1には、商品(搬送対象)を保管する複数の保管棚(保管位置)が配置されている。
図3には、16個の保管棚T1~16を例示している。
【0021】
また倉庫W1には、自動搬送装置3の待機場所が設定されている。例えば、倉庫W1には、AGV1が待機する待機場所P1と、AGV2が待機する待機場所P2と、AGV3が待機する待機場所P3とが設定されている。各自動搬送装置3は、運行管理サーバー1から搬送指示を受けていない場合に所定の待機場所で待機する。
【0022】
各自動搬送装置3は、運行管理サーバー1から搬送指示を取得すると、待機場所からオーダー商品を保管する保管棚に移動する。例えば、AGV1は、運行管理サーバー1から保管棚T1の商品をオーダー情報に含む搬送指示を取得すると、保管棚T1に移動して、ピッキング作業を担当する作業者からオーダー商品を受け取ると、予め設定された走行経路に従って出庫場所まで移動する。
【0023】
本実施形態では、搬送システム10が本発明に係る搬送システムに相当するが、本発明に係る搬送システムは、運行管理サーバー1単体で構成されてもよいし、運行管理サーバー1、注文管理サーバー2、及び自動搬送装置3のうち一又は複数の構成要素を含むものであってもよい。
【0024】
[注文管理サーバー2]
図1に示されるように、注文管理サーバー2は、制御部21、記憶部22、操作表示部23、及び通信部24などを備えるサーバーである。なお、注文管理サーバー2は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステムであってもよい。また、注文管理サーバー2で実行される各種の処理は、一又は複数のプロセッサーによって分散して実行されてもよい。
【0025】
通信部24は、注文管理サーバー2を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して運行管理サーバー1との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。また通信部24は、注文管理サーバー2を有線又は無線で通信網N3に接続し、通信網N3を介して一又は複数の顧客端末4との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0026】
操作表示部23は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるマウス、キーボード、又はタッチパネルのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。
【0027】
記憶部22は、各種の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)などの不揮発性の記憶部である。具体的に、記憶部22には、商品情報D1、オーダー情報D2などのデータが記憶される。商品情報D1には、倉庫に保管されている商品に関する情報が含まれる。オーダー情報D2には、顧客のオーダーに関する情報が含まれる。
図4は商品情報D1の一例を示す図であり、
図5はオーダー情報D2の一例を示す図である。
【0028】
図4に示されるように、商品情報D1には、商品ごとに、対応する「商品ID」、「商品名」、「棚ID」などの情報が含まれる。前記商品IDは、商品の識別情報であり、前記商品名は、商品の名称である。前記棚IDは、商品が保管されている保管棚の識別情報である。本実施形態では、前記棚IDとして、例えば保管棚T1を示す「T1」、保管棚T2を示す「T2」、保管棚T3を示す「T3」などが登録される。
【0029】
商品情報D1は、例えば倉庫の管理者の登録操作により予め記憶部22に記憶される。また、管理者は、商品情報D1を適宜更新することが可能である。また、商品情報D1は、運行管理サーバー1に登録されてもよい。
【0030】
図5に示されるように、オーダー情報D2には、オーダー(注文)ごとに、対応する「単位オーダーID」、「顧客ID」、「オーダー商品」、「数量」、「オーダー日時」などの情報が含まれる。前記単位オーダーIDは、一つのオーダーの識別情報であり、前記顧客IDは、商品をオーダーした顧客の識別情報である。前記オーダー商品は、顧客がオーダーした商品の名称であり、前記数量は、オーダー商品の注文数である。前記オーダー日時は、顧客からオーダーを受け付けた日時の情報である。
【0031】
オーダー情報D2は、注文管理サーバー2が顧客端末4からオーダーを受け付けるごとに制御部21により登録される。
【0032】
なお、他の実施形態として、商品情報D1及びオーダー情報D2の一部又は全部が、注文管理サーバー2から通信網N3を介してアクセス可能な他のサーバーに記憶されてもよい。
【0033】
また、記憶部22には、制御部21に後述の搬送処理(
図18及び
図19参照)を実行させるための搬送プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記搬送プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、注文管理サーバー2が備えるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)で読み取られて記憶部22に記憶される。
【0034】
制御部21は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、制御部21は、前記ROM又は記憶部22に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより注文管理サーバー2を制御する。
【0035】
具体的には、制御部21は、顧客端末4から商品のオーダーを受け付ける。制御部21は、顧客端末4からオーダーを受け付けると、オーダー内容をオーダー情報D2に登録する。また、制御部21は、オーダー情報D2を運行管理サーバー1に出力する。例えば、制御部21は、所定時間の間に受け付けた複数のオーダーを集約したオーダー情報D2(
図5参照)を運行管理サーバー1に出力する。このように、制御部21は、所定の周期でオーダー情報D2を運行管理サーバー1に出力する。
【0036】
他の実施形態として、制御部21は、運行管理サーバー1からオーダー情報D2の出力要求を受信した場合に、オーダー情報D2を運行管理サーバー1に出力してもよい。例えば、運行管理サーバー1は、自動搬送装置3の運行状況に基づいて、オーダー情報D2の出力要求を注文管理サーバー2に出力してもよい。
【0037】
また制御部21は、オーダー情報D2を運行管理サーバー1に出力した場合に、当該オーダー情報D2を記憶部22から削除してもよい。
【0038】
[運行管理サーバー1]
図1に示されるように、運行管理サーバー1は、制御部11、記憶部12、操作表示部13、及び通信部14などを備えるサーバーである。なお、運行管理サーバー1は、1台のコンピュータに限らず、複数台のコンピュータが協働して動作するコンピュータシステムであってもよい。また、運行管理サーバー1で実行される各種の処理は、一又は複数のプロセッサーによって分散して実行されてもよい。
【0039】
通信部14は、運行管理サーバー1を有線又は無線で通信網N1に接続し、通信網N1を介して注文管理サーバー2との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。また通信部14は、運行管理サーバー1を有線又は無線で通信網N2に接続し、通信網N2を介して一又は複数の自動搬送装置3との間で所定の通信プロトコルに従ったデータ通信を実行するための通信インターフェースである。
【0040】
操作表示部13は、各種の情報を表示する液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイのような表示部と、操作を受け付けるマウス、キーボード、又はタッチパネルのような操作部とを備えるユーザーインターフェースである。
【0041】
記憶部12は、各種の情報を記憶するHDD又はSSDなどの不揮発性の記憶部である。具体的に、記憶部12には、セットオーダー情報D3などのデータが記憶される。セットオーダー情報D3には、単位オーダーを組み合わせたセットオーダーに関する情報が含まれる。
図5はセットオーダー情報D3の一例を示す図である。
【0042】
図5に示されるように、セットオーダー情報D3には、単位オーダーを組み合わせたセットオーダーごとに、対応する「セットオーダーID」、「単位オーダーID」、「棚ID」などの情報が含まれる。前記セットオーダーIDは、単位オーダーを組み合わせたセットオーダーの識別情報である。制御部11は、商品の保管位置、自動搬送装置3の現在位置、運行ルールなどの情報に基づいて、単位オーダーを組み合わせてセットオーダーを生成する。
【0043】
セットオーダー情報D3は、自動搬送装置3に送信される搬送指示に含まれる。例えばAGV1が「SET1」のセットオーダー情報D3を含む搬送指示を取得すると、AGV1は、セットオーダー情報D3に含まれる棚ID「T3」の位置に移動する。そして、AGV1は、作業者から単位オーダーID「O1」、「O2」、「O3」、「O4」のそれぞれの商品を受け取る。
【0044】
制御部11は、注文管理サーバー2からオーダー情報D2(
図5参照)を取得すると、商品情報D1(
図4参照)を参照して、セットオーダー情報D3(
図6参照)を生成する。
【0045】
なお、他の実施形態として、オーダー情報D2及びセットオーダー情報D3の一部又は全部が、運行管理サーバー1から通信網N1を介してアクセス可能な他のサーバーに記憶されてもよい。この場合、運行管理サーバー1の制御部11は、前記他のサーバーから前記情報を取得して、後述の搬送処理(
図18及び
図19参照)などの各処理を実行してもよい。
【0046】
また、記憶部12には、制御部11に後述の搬送処理(
図18及び
図19参照)を実行させるための搬送プログラムなどの制御プログラムが記憶されている。例えば、前記搬送プログラムは、CD又はDVDなどのコンピュータ読取可能な記録媒体に非一時的に記録されており、運行管理サーバー1が備えるCDドライブ又はDVDドライブなどの読取装置(不図示)で読み取られて記憶部12に記憶される。
【0047】
制御部11は、CPU、ROM、及びRAMなどの制御機器を有する。前記CPUは、各種の演算処理を実行するプロセッサーである。前記ROMは、前記CPUに各種の演算処理を実行させるためのBIOS及びOSなどの制御プログラムが予め記憶される不揮発性の記憶部である。前記RAMは、各種の情報を記憶する揮発性又は不揮発性の記憶部であり、前記CPUが実行する各種の処理の一時記憶メモリー(作業領域)として使用される。そして、制御部11は、前記ROM又は記憶部12に予め記憶された各種の制御プログラムを前記CPUで実行することにより運行管理サーバー1を制御する。
【0048】
ところで、従来のシステムは、各自律移動体が各単位経路の走行を終了した時点で、自律移動体に、他の自律移動体に先に採用された経路との干渉を回避するように経路を割り当てる。具体的には、前記システムは、ある自律移動体に先に経路を採用した場合に、当該経路に仮想障害物を設定することにより、他の自律移動体が当該経路に進入することを禁止する。この構成によれば、割り当てられる経路が長い場合に、他の自律移動体の進入を広範囲に亘って排他してしまい、他の自律移動体が迂回するようにコースを再設定する頻度が高くなり、交差点によるロスが増大する。一方、割り当てられる経路が短い場合には、当該経路において加速のための距離、減速のための距離が短くなるため、設定可能な最高速度が低下してしまう。特許文献1のシステムでは、このような問題が考慮されていないため、搬送時間にロスが生じてしまう問題が生じる。
【0049】
また、従来のシステムは、走行計画の再立案を行う際に、最初に立案した経路の次に短い経路を抽出する。しかし、再立案した経路の搬送時間が実際に最短であるかどうかの評価は行っていない。例えば、先に経路が設定された自律移動体との干渉を回避した結果、他の自律移動体との干渉が増大し、自律移動体全体の搬送時間が長くなってしまう問題が起こり得る。
【0050】
これに対して、本実施形態に係る搬送システム10は、以下に示すように、自動搬送装置が走行するコース全体における搬送時間のロスを低減することが可能である。
【0051】
具体的には、
図2に示されるように、制御部11は、搬送要求受付部111、全体走行経路設定部112、区間走行経路長さ決定部113、区間走行経路設定部114、予約走行経路設定部115、制御情報設定部116、出力処理部117、重複判定部118、交差判定部119、回避情報作成部120、適正度評価部121、回避情報決定部122などの各種の処理部を含む。なお、制御部11は、前記CPUで前記搬送プログラムに従った各種の処理を実行することによって前記各種の処理部として機能する。また、一部又は全部の前記処理部が電子回路で構成されていてもよい。なお、前記搬送プログラムは、複数のプロセッサーを前記処理部として機能させるためのプログラムであってもよい。
【0052】
搬送要求受付部111は、商品(搬送対象)の搬送要求(ピッキングオーダー)を受け付ける。なお、搬送要求は、本発明の移動要求の一例である。具体的には、搬送要求受付部111は、注文管理サーバー2から複数の顧客のオーダーに対応するオーダー情報D2を受け付ける。例えば、搬送要求受付部111は、CUSTOM1及びCUSTOM2の顧客のオーダーを含むオーダー情報D2(
図5参照)を受け付ける。搬送要求受付部111は、本発明の移動要求受付部の一例である。
【0053】
制御部11は、オーダー情報D2に基づいてセットオーダー情報D3を生成する。例えば、制御部11は、搬送要求受付部111がCUSTOM1及びCUSTOM2の顧客の4個のオーダー(単位オーダー)を含むオーダー情報D2(
図5参照)を受け付けると、商品情報D1(
図4参照)を参照して、「SET1」のセットオーダー情報D3(
図6参照)を生成する。例えば、制御部11は、オーダー情報D2に含まれる複数の商品のうち、同じエリアに保管されている複数の商品を一つのオーダー(セットオーダー)に集約してセットオーダー情報D3を生成する。また制御部11は、自動搬送装置3に搭載された複数のコンテナのそれぞれに割り当てたセットオーダー情報D3を生成する。
【0054】
全体走行経路設定部112は、搬送要求受付部111が受け付けた前記搬送要求に基づいて、自動搬送装置3の現在位置から保管位置(保管棚)までの全体走行経路を設定する。
【0055】
ここで、制御部11は、全ての自動搬送装置3の現在位置を取得する。各自動搬送装置3は、現在位置、走行速度、進行方向、走行状態(走行中又は待機中)などの情報をリアルタイムに運行管理サーバー1に送信する。制御部11は、各自動搬送装置3から送信される前記情報に基づいて、1台の自動搬送装置3を指定してセットオーダー情報D3を割り当てる。
【0056】
全体走行経路設定部112は、割り当てられた自動搬送装置3に走行開始位置及び目的位置を設定する。
図7には、倉庫W1の一部のエリアを模式的に示している。符号A~Rは倉庫W1内の地点を示し、各地点を結ぶ直線は自動搬送装置3が走行可能な通路を示している。例えば、制御部11がAGV1に「SET1」のセットオーダー情報D3を割り当てた場合、
図8に示すように、全体走行経路設定部112は、地点PをAGV1の走行開始位置に設定し、地点Iを目的位置に設定する。
【0057】
全体走行経路設定部112は、AGV1に走行開始位置及び目的位置を設定すると、初期走行経路である全体走行経路を設定する。具体的には、全体走行経路設定部112は、全ての自動搬送装置3に対して運行シミュレーションを行い、全ての自動搬送装置3の搬送時間の合計が最短となる全体走行経路及び制御情報を設定する。
【0058】
例えば、全体走行経路設定部112は、最初に、他の自動搬送装置3(ここではAGV2、AGV3)の走行状況(現在位置、走行速度、予約走行経路、予約走行経路の到着予測時間)を観測する。例えば
図9に示すように、AGV2は、保管棚T1の地点Cから出庫場所の地点Rに移動中であり、地点C→B→Eの通路が予約走行経路として設定されており、地点Eに到着する到着予測時間がt2である。この場合、全体走行経路設定部112は、時間t0からt2までの間、地点C→B→Eの通路の区画へのAGV1の進入を禁止する。
【0059】
次に、全体走行経路設定部112は、全ての自動搬送装置3に対して並行して運行シミュレーションを行って、時間t0からt2までの間、地点C→B→Eの通路の区画へのAGV1の進入を禁止しつつ、全てのAGVの搬送時間の合計が最短となるように、AGV1が地点Pから地点Iに移動するための全体走行経路を設定する。ここでは、
図10に示すように、全体走行経路設定部112は、AGV1に対して、地点P→N→L→J→G→H→Iの通路を全体走行経路R10(初期走行経路)として設定する。なお、
図10のR20は、AGV2に対して設定された全体走行経路(初期走行経路)を示している。
【0060】
区間走行経路長さ決定部113は、全体走行経路設定部112が設定した全体走行経路における、区間開始位置から予め設定された判定長さ以内の部分に関する情報に基づき区間走行経路(予約走行経路)の長さを決定する。前記区間走行経路の長さを決定する方法は、以下に示す複数の方法(第1~第5決定方法)が考えられ、区間走行経路長さ決定部113は、いずれかの方法を採用することが可能である。
【0061】
(第1決定方法)
第1決定方法では、複数の通路同士が交差する複数の交差点のうち複数の自動搬送装置3が交差する可能性の高い特定交差点の位置が予め登録されている。そして、区間走行経路長さ決定部113は、全体走行経路設定部112が設定した前記全体走行経路における、前記区間開始位置から前記判定長さ以内の部分に前記特定交差点が存在しない場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さを設定し、前記区間開始位置から前記判定長さ以内に前記特定交差点が存在する場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さよりも短い第2長さを設定する。
【0062】
例えば
図11に示すように、保管棚T1,T2,T3からの合流地点である地点B,E,Hが特定交差点として登録されているものとする。区間走行経路長さ決定部113は、全体走行経路R10に対して、現在位置から4区画(4つ先のマーカ位置までの区間)以内に前記特定交差点が存在するか否かを判定する。なお、現在位置から4区画の長さは、前記判定長さの一例である。区間走行経路長さ決定部113は、現在位置から4区画以内に前記特定交差点が存在しない場合に、前記区間走行経路長さを「4」(前記第1長さ)に設定する。また、区間走行経路長さ決定部113は、現在位置から4区画以内に前記特定交差点が存在する場合に、前記区間走行経路長さを「2」(前記第2長さ)に設定する。
図11の例では、AGV1の現在位置Pから4区画以内に前記特定交差点が存在しないため、区間走行経路長さ決定部113は、現在位置Pから4区画先の地点Gまでの長さ(前記区間走行経路長さ「4」)(第1長さ)を設定する。制御部11は、運行シミュレーションにより、AGV1が地点Gに到着するまでの時間を予測し、それまでの間、他のAGVの進入を禁止する。
【0063】
(第2決定方法)
第2決定方法では、複数の通路において、自動搬送装置3を高速走行させる高速走行通路と自動搬送装置3を低速走行させる低速走行通路とが予め登録されている。そして、区間走行経路長さ決定部113は、全体走行経路設定部112が設定した前記全体走行経路における、前記区間開始位置から前記判定長さ以内の部分に前記低速走行通路が含まれない場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さを設定し、前記区間開始位置から前記判定長さ以内の部分に前記低速走行通路が含まれる場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さよりも短い第2長さを設定する。
【0064】
例えば
図12に示すように、縦方向の通路(地点A~Pの通路、地点B~Qの通路)が高速走行通路に登録されており、横方向の通路(地点A~Cの通路、地点D~Fの通路、地点G~Iの通路、地点J~Kの通路、地点L~Mの通路、地点N~Oの通路、地点P~Rの通路)が低速走行通路に登録されている。区間走行経路長さ決定部113は、現在位置から4区画以内に前記低速走行通路が含まれない場合に、前記区間走行経路長さを「4」(前記第1長さ)に設定する。また、区間走行経路長さ決定部113は、現在位置から4区画以内に前記低速走行通路が含まれる場合に、前記区間走行経路長さを「2」(前記第2長さ)に設定する。
図11の例では、AGV1の現在位置Pから4区画以内に前記低速走行通路が含まれないため、区間走行経路長さ決定部113は、現在位置Pから4区画先の地点Gまでの長さ(前記区間走行経路長さ「4」)(第1長さ)を設定する。
【0065】
(第3決定方法)
第3決定方法では、自動搬送装置3を高速走行させる高速走行エリアと自動搬送装置3を低速走行させる低速走行エリアとが予め登録されている。そして、区間走行経路長さ決定部113は、全体走行経路設定部112が設定した前記全体走行経路における、前記区間開始位置から前記判定長さ以内の部分が前記低速走行エリアに含まれない場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さを設定し、前記区間開始位置から前記判定長さ以内の部分が前記低速走行エリアに含まれる場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さよりも短い第2長さを設定する。
【0066】
例えば
図13に示すように、地点A~Iの通路が低速走行エリアに登録されており、地点J~Rの通路が高速走行エリアに登録されている。区間走行経路長さ決定部113は、現在位置から4区画以内の部分が前記低速走行エリアに含まれない場合に、前記区間走行経路長さを「4」(前記第1長さ)に設定する。また、区間走行経路長さ決定部113は、現在位置から4区画以内の部分が前記低速走行エリアに含まれる場合に、前記区間走行経路長さを「2」(前記第2長さ)に設定する。
図11の例では、AGV1の現在位置Pから4区画の部分が前記低速走行エリアに含まれないため、区間走行経路長さ決定部113は、現在位置Pから4区画先の地点Gまでの長さ(前記区間走行経路長さ「4」)(第1長さ)を設定する。
【0067】
(第4決定方法)
第4決定方法では、区間走行経路長さ決定部113は、全体走行経路設定部112が設定した前記全体走行経路において、前記区間開始位置から前記判定長さ以内の部分に右左折地点が存在しない場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さを設定し、前記区間開始位置から前記判定長さ以内の部分に前記右左折地点が存在する場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さよりも短い第2長さを設定する。
【0068】
図11の例では、現在位置Pから4区画の部分は直線経路であり当該部分に右左折地点が存在しないため、区間走行経路長さ決定部113は、AGV1の現在位置Pから4区画先の地点Gまでの長さ(前記区間走行経路長さ「4」)(第1長さ)を設定する。
【0069】
(第5決定方法)
第5決定方法では、区間走行経路長さ決定部113は、全ての自動搬送装置3の現在位置に基づいて交差の発生する確率が閾値よりも高い高密度エリアを判定する。そして、区間走行経路長さ決定部113は、全体走行経路設定部112が設定した前記全体走行経路において、前記区間開始位置から前記判定長さ以内の部分が前記高密度エリア内に含まれない場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さを設定し、前記区間開始位置から前記判定長さ以内の部分が前記高密度エリア内に含まれる場合に、前記区間走行経路長さとして第1長さよりも短い第2長さを設定する。
【0070】
例えば、地点A~Iの通路を含むエリアが高密度エリアであり、地点J~Rの通路を含むエリアが低密度エリアである場合に、AGV1の現在位置Pから4区画のエリアは低密度エリアであるため、区間走行経路長さ決定部113は、AGV1の現在位置Pから4区画先の地点Gまでの長さ(前記区間走行経路長さ「4」)(第1長さ)を設定する。
【0071】
以上のいずれかの方法により、区間走行経路長さ決定部113は、前記区間走行経路の長さ(区間走行経路長さ)を決定する。
【0072】
区間走行経路設定部114は、前記全体走行経路上において、前記区間開始位置から区間走行経路長さ決定部113が決定した前記区間走行経路長さの区間走行経路を設定する。
図11に示す例では、区間走行経路設定部114は、AGV1に対応する全体走行経路R10において、現在位置Pから4区画先の地点Gまでの長さ(前記区間走行経路長さ「4」)の経路(地点P→N→L→J→Gの通路)を区間走行経路R11に設定する。また、区間走行経路設定部114は、AGV2に対応する全体走行経路R20において、現在位置Cから2区画先の地点Eまでの長さ(前記区間走行経路長さ「2」)の経路(地点C→B→Eの通路)を区間走行経路R21に設定する。
【0073】
予約走行経路設定部115は、区間走行経路設定部114により設定される前記区間走行経路を予約走行経路として設定する。
図11に示す例では、予約走行経路設定部115は、AGV1に対応する地点P→N→L→J→Gの区間走行経路R11を予約走行経路に設定する。また、予約走行経路設定部115は、AGV2に対応する地点C→B→Eの区間走行経路R21を予約走行経路に設定する。
【0074】
制御情報設定部116は、自動搬送装置3の動作を規定する制御情報を前記区間走行経路上のマーカに対応付けて設定する。
【0075】
具体的には、制御情報設定部116は、各マーカ位置における次に進行するマーカ位置に向けた進行方向を指定する情報(直進、左折、右折など)と、各マーカ位置における走行速度、加速度、停止、旋回などの情報を含む制御情報を設定する。例えば、制御情報設定部116は、区間走行経路設定部114が設定した前記区間走行経路上の前記マーカに対応付けて、前記区間走行経路長さが所定の基準長さ以上である場合に第1速度の情報を設定し、前記区間走行経路長さが前記所定の基準長さ未満である場合に前記第1速度よりも低速の第2速度の情報を設定する。前記基準長さは、前記判定長さと同一であってもよい。例えば、制御情報設定部116は、AGV1に対応する区間走行経路R11の予約走行経路に対して、走行速度を高速に設定した制御情報を設定する。一方、制御情報設定部116は、AGV2に対応する区間走行経路R21の予約走行経路に対して、走行速度を低速に設定した制御情報を設定する。
【0076】
出力処理部117は、前記全体走行経路及び前記区間走行経路を含む走行経路情報と、前記制御情報とを自動搬送装置3に出力する。ここでは、出力処理部117は、AGV1及びAGV2のそれぞれに、前記走行経路情報及び前記制御情報を出力する。AGV1及びAGV2のそれぞれは、前記走行経路情報及び前記制御情報を取得すると、予約走行経路の走行を開始する。
【0077】
自動搬送装置3が予約走行経路の走行を開始すると、制御部11は、自動搬送装置3を次に走行させる予約走行経路を設定する。具体的には、制御部11は、以下の処理を実行する。
【0078】
例えば、AGV1が全体走行経路R10における区間走行経路R11を走行中の第1時点において、区間走行経路長さ決定部113は、区間走行経路R11の終点(地点G)を当該区間走行経路R11の次の区間走行経路R12の区間開始位置に設定し、全体走行経路R10における、区間走行経路R11の終点から前記判定長さ以内の部分に関する情報に基づき、区間走行経路R12の区間走行経路長さである第2区間経路長さを決定する。また、区間走行経路設定部114は、全体走行経路R10上において、区間走行経路R11の終点から前記第2区間経路長さの経路を区間走行経路R12として仮設定する。
【0079】
この場合に、重複判定部118は、AGV1の全体走行経路R10における区間走行経路R11の終点(地点G)から前記判定長さ以内の部分が、AGV2の予約走行経路と重複するか否かを判定する。そして、重複判定部118が、AGV1の全体走行経路R10における区間走行経路R11の終点(地点G)から前記判定長さ以内の部分が、AGV2の予約走行経路と重複しないと判定した場合に、区間走行経路長さ決定部113は、全体走行経路R10における、区間走行経路R11の終点から前記判定長さ以内の部分に関する情報に基づき、前記第2区間経路長さを決定する。また、区間走行経路設定部114は、全体走行経路R10上において、区間走行経路R11の終点から前記第2区間経路長さの区間走行経路R12を仮設定する。
【0080】
また、重複判定部118が、AGV1の全体走行経路R10における区間走行経路R11の終点(地点G)から前記判定長さ以内の部分が、AGV2の予約走行経路と重複すると判定した場合に、全体走行経路設定部112は、全体走行経路を再設定する。再設定された全体走行経路は、本発明の第2全体走行経路に相当する。そして、全体走行経路設定部112が全体走行経路を再設定した後に、重複判定部118は、AGV1の再設定した全体走行経路R10における区間走行経路R11の終点から前記判定長さ以内の部分がAGV2の予約走行経路と重複するか否かを更に判定する。重複判定部118が、AGV1の再設定した全体走行経路R10における区間走行経路R11の終点から前記判定長さ以内の部分がAGV2の予約走行経路と重複しないと判定した場合に、区間走行経路長さ決定部113は、再設定した全体走行経路R10における区間走行経路R11の終点から前記判定長さ以内の部分に関する情報に基づき、前記第2区間経路長さを決定し、区間走行経路設定部114は、再設定した全体走行経路R10上において、区間走行経路R11の終点から前記第2区間走行経路の長さの区間走行経路R12を設定する。
【0081】
また、重複判定部118が、AGV1の再設定した全体走行経路R10における区間走行経路R11の終点から前記判定長さ以内の部分がAGV2の予約走行経路と重複すると判定した場合には、全体走行経路設定部112は、さらに全体走行経路を再設定する。再設定された全体走行経路は、本発明の第3全体走行経路に相当する。
【0082】
また、交差判定部119は、AGV1が全体走行経路R10上でAGV2と交差するか否かを判定する。
【0083】
例えば
図14に示すように、制御部11は、AGV1が区間走行経路R11の終点である地点Gに到着する前のタイミング(t1)で、次の予約走行経路の仮設定を行う。ここでは、地点Gから4区画(判定長さ)以内に特定交差点Hが存在するため、区間走行経路長さ決定部113は、前記区間走行経路長さを「2」(前記第2長さ)に設定し、予約走行経路設定部115は、AGV1に対応する地点G→H→Iの区間走行経路R12を予約走行経路に仮設定する。同様に、予約走行経路設定部115は、AGV2に対応する地点E→H→Kの区間走行経路R22を予約走行経路に仮設定する。
【0084】
交差判定部119は、AGV1がAGV2と交差するか否かを判定する。AGV1がAGV2と交差する場合、制御部11は、以下の回避方法を実行する。また、AGV1がAGV2と交差しない場合、出力処理部117は、仮設定した予約走行経路を正式な予約走行経路に設定して、前記走行経路情報及び前記制御情報をAGV1に出力する。
図14に示す例では、AGV1の区間走行経路R12がAGV2の区間走行経路R22と交差するため、制御部11は、以下の回避方法を実行する。
【0085】
具体的には、回避情報作成部120は、交差判定部119が、AGV1が全体走行経路R10上でAGV2と交差すると判定した場合に、AGV1及びAGV2の交差を回避させる複数の回避情報候補を作成する。前記複数の回避情報候補は、複数の異なる回避方法による回避情報候補を含む。回避情報作成部120は、複数の異なる回避方法(第1~第3回避方法)を作成する。
【0086】
(第1回避方法)
第1回避方法は、制御情報設定部116により設定された前記制御情報を変更することにより交差を回避する方法である。具体的には、前記制御情報は、走行経路の各地点における自動搬送装置3の走行速度の情報を含み、走行経路の各地点における自動搬送装置3の走行速度を変更することにより交差を回避する。例えば
図15に示すように、回避情報作成部120は、AGV2の地点Bから地点Hまでの走行速度を地点Cから地点Bまでの走行速度V1の2倍の速度V2に変更する。なお、AGV1の走行速度は速度V1に設定される。また、回避情報作成部120は、AGV1の走行速度V1を変更してもよい。
【0087】
(第2回避方法)
第2回避方法は、全体走行経路設定部112により設定された全体走行経路を変更することにより交差を回避する方法である。例えば
図16に示すように、回避情報作成部120は、AGV1に対して仮設定した地点G→H→Iの区間走行経路R12を、地点G→D→E→H→Iの区間走行経路R12に変更する。なお、回避情報作成部120は、AGV2に対して仮設定した地点E→H→Kの区間走行経路R22を変更してもよい。
【0088】
(第3回避方法)
第3回避方法は、制御情報設定部116により設定された前記制御情報に走行経路の所定の位置で自動搬送装置3を停止させる方法である。例えば
図17に示すように、回避情報作成部120は、AGV1を交差点Hの手前で所定時間(例えば1秒間)停止させる制御情報を設定する。なお、回避情報作成部120は、AGV2を交差点Hの手前で所定時間(例えば1秒間)停止させる制御情報を設定してもよい。
【0089】
以上のように、回避情報作成部120は、複数の異なる回避方法(回避情報候補)を作成する。自動搬送装置3を回避方法の走行を実行させることにより、交差点Hにおいて、AGV1及びAGV2の交差を回避することができる。
【0090】
適正度評価部121は、全ての自動搬送装置3の運行シミュレーションによって、回避情報作成部120が作成した前記複数の回避情報候補それぞれに対して適正度の評価を行う。具体的には、適正度評価部121は、全ての自動搬送装置3の運行シミュレーションによって、回避情報作成部120が作成した前記複数の回避情報候補のそれぞれに対して交差の回避の成否を判定する。
【0091】
例えば、適正度評価部121は、全ての自動搬送装置3の運行シミュレーションによって、回避情報作成部120が作成した前記複数の回避情報候補のそれぞれに対して全ての自動搬送装置3の搬送時間の合計を判定(評価)する。
【0092】
回避情報決定部122は、適正度評価部121の評価結果(合計搬送時間)に基づいて、前記複数の回避情報候補の中から一つの前記回避情報候補を回避情報として決定する。例えば、回避情報決定部122は、全ての自動搬送装置3の合計搬送時間が最短となる前記回避情報候補を回避情報として決定する。
【0093】
また、前記複数の異なる回避方法にはそれぞれ優先順位が設定されており、回避情報決定部122は、適正度評価部121の評価結果と前記複数の異なる回避方法それぞれに設定された優先順位とに基づいて、前記複数の回避情報候補の中から一つの回避情報候補を回避情報として決定してもよい。
【0094】
また、回避情報決定部122は、前記複数の回避情報候補の中から、前記評価結果が所定の基準を満たし、かつ優先順位が最も高い前記回避情報候補を2次候補として抽出し、さらに、前記2次候補として抽出した前記回避情報候補の中から、適正度評価部121の評価結果に基づいて、一つの前記回避情報候補を回避情報として決定してもよい。
【0095】
回避情報決定部122が回避情報を決定すると、出力処理部117は、回避情報に対応する予約走行経路に関する前記走行経路情報及び前記制御情報を自動搬送装置3に出力する。AGV1及びAGV2のそれぞれは、前記走行経路情報及び前記制御情報を取得すると、設定された予約走行経路の走行を開始する。制御部11は、順次、予約走行経路に対応する前記走行経路情報及び前記制御情報を設定して、各自動搬送装置3の走行を継続させる。
【0096】
[搬送処理]
以下、
図18及び
図19を参照しつつ、搬送システム10において実行される搬送処理について説明する。具体的に、本実施形態では、運行管理サーバー1の制御部11によって前記搬送処理が実行される。また、制御部11は、注文管理サーバー2から出力される複数の搬送要求に応じて複数の搬送処理を並行して実行することが可能である。
【0097】
なお、本発明は、前記搬送処理に含まれる一又は複数のステップを実行する搬送方法の発明として捉えることができる。また、ここで説明する前記搬送処理に含まれる一又は複数のステップは適宜省略されてもよい。なお、前記搬送処理における各ステップは同様の作用効果を生じる範囲で実行順序が異なってもよい。さらに、ここでは制御部11が前記搬送処理における各ステップを実行する場合を例に挙げて説明するが、一又は複数のプロセッサーが当該搬送処理における各ステップを分散して実行する搬送方法も他の実施形態として考えられる。
【0098】
先ずステップS1において、制御部11は、注文管理サーバー2から搬送要求を受け付けたか否かを判定する。具体的には、制御部11は、注文管理サーバー2からオーダー情報D2(
図5参照)を受け付けたか否かを判定する。制御部11がオーダー情報D2を受け付けると、処理はステップS2に移行する。
【0099】
ステップS2において、制御部11は、セットオーダー情報D3(
図6参照)を生成する。具体的には、制御部11は、オーダー情報D2(
図5参照)と商品情報D1(
図4参照)とに基づいて、セットオーダー情報D3を生成する。
【0100】
次にステップS3において、制御部11は、セットオーダー情報D3を、1台の自動搬送装置3に割り当てる。具体的には、制御部11は、全ての自動搬送装置3の現在位置、走行速度、進行方向、走行状態(走行中又は待機中)などの情報をリアルタイムに取得して、前記各情報に基づいて、1台の自動搬送装置3を指定してセットオーダー情報D3を割り当てる。ここでは、制御部11は、「SET1」のセットオーダー情報D3をAGV1に割り当てる。
【0101】
次にステップS4において、制御部11は、AGV1の初期走行経路である全体走行経路を設定する。
【0102】
先ず、制御部11は、自動搬送装置3に走行開始位置P及び目的位置Iを設定する(
図8参照)。次に、制御部11は、他のAGV2に設定された予約走行経路(地点C→B→Eの通路)に基づいて、時間t0からt2までの間、地点C→B→Eの通路の区画へのAGV1の進入を禁止する。次に、制御部11は、全ての自動搬送装置3に対して並行して運行シミュレーションを行って、時間t0からt2までの間、地点C→B→Eの通路の区画へのAGV1の進入を禁止しつつ、全てのAGVの搬送時間の合計が最短となるように、AGV1が地点Pから地点Iに移動するための全体走行経路を設定する。ここでは、
図10に示すように、制御部11は、AGV1に対して、地点P→N→L→J→G→H→Iの通路を全体走行経路R10として設定する。
【0103】
次にステップS5において、制御部11は、区間走行経路を設定する。具体的には、制御部11は、上述の前記第1~第5決定方法のいずれかの方法により、前記区間走行経路の長さを決定して、決定した前記区間走行経路長さの区間走行経路を設定する。
図11に示す例では、制御部11は、AGV1に対応する全体走行経路R10において、現在位置Pから4区画先の地点Gまでの長さ(前記区間走行経路長さ「4」)の経路(地点P→N→L→J→Gの通路)を区間走行経路R11に設定する。また、制御部11は、AGV2に対応する全体走行経路R20において、現在位置Cから2区画先の地点Eまでの長さ(前記区間走行経路長さ「2」)の経路(地点C→B→Eの通路)を区間走行経路R21に設定する。
【0104】
次にステップS6において、制御部11は、設定した前記区間走行経路を予約走行経路として設定する。
図11に示す例では、制御部11は、AGV1に対応する地点P→N→L→J→Gの区間走行経路R11を予約走行経路に設定し、AGV2に対応する地点C→B→Eの区間走行経路R21を予約走行経路に設定する。
【0105】
次にステップS7において、制御部11は、自動搬送装置3の動作を規定する制御情報を前記区間走行経路上のマーカに対応付けて設定する。例えば、制御部11は、AGV1に対応する区間走行経路R11の予約走行経路に対して高速の制御情報を設定し、AGV2に対応する区間走行経路R21の予約走行経路に対して低速の制御情報を設定する。
【0106】
次にステップS8において、制御部11は、前記全体走行経路及び前記区間走行経路を含む走行経路情報と、前記制御情報とを自動搬送装置3に出力する。例えば、制御部11は、AGV1及びAGV2のそれぞれに、前記走行経路情報及び前記制御情報を出力する。
【0107】
AGV1及びAGV2のそれぞれは、前記走行経路情報及び前記制御情報を取得すると、予約走行経路の走行を開始する。
【0108】
自動搬送装置3が予約走行経路の走行を開始すると、ステップS9(
図19参照)において、制御部11は、自動搬送装置3が走行中に、自動搬送装置3を次に走行させる区間走行経路を仮設定する。例えば、制御部11は、AGV1に対応する地点G→H→Iの区間走行経路R12を予約走行経路に仮設定し、AGV2に対応する地点E→H→Kの区間走行経路R22を予約走行経路に仮設定する。
【0109】
次にステップS10において、制御部11は、予約走行経路において、AGV1がAGV2と交差するか否かを判定する。具体的には、制御部11は、AGV1がAGV2と交差するか否かを判定する。AGV1がAGV2と交差する場合(S10:Yes)、処理はステップS11に移行する。AGV1がAGV2と交差しない場合(S10:No)、処理はステップS101に移行する。
【0110】
ステップS101では、制御部11は、仮設定した予約走行経路に対応する前記走行経路情報及び前記制御情報をAGV1に出力する。ステップS101の後、処理はステップS15に移行する。
【0111】
ステップS11では、制御部11は、AGV1及びAGV2の交差を回避させる複数の回避情報候補を作成する。例えば、制御部11は、前記第1回避方法の回避情報候補(
図15参照)と、前記第2回避方法の回避情報候補(
図16参照)と、前記第3回避方法の回避情報候補(
図17参照)とを作成する。
【0112】
次にステップS12において、制御部11は、全ての自動搬送装置3の運行シミュレーションによって、作成した前記複数の回避情報候補それぞれに対して適正度の評価を行う。例えば、制御部11は、全ての自動搬送装置3の運行シミュレーションによって、作成した前記複数の回避情報候補のそれぞれに対して全ての自動搬送装置3の搬送時間の合計を判定(評価)する。
【0113】
次にステップS13において、制御部11は、前記評価結果(合計搬送時間)に基づいて、前記複数の回避情報候補の中から一つの前記回避情報候補を回避情報として決定する。具体的には、制御部11は、前記評価結果(合計搬送時間)と、前記複数の回避方法それぞれに設定された優先順位とに基づいて、前記複数の回避情報候補の中から一つの回避情報候補を回避情報として決定する。
【0114】
次にステップS14において、制御部11は、決定した回避情報に対応する制御情報を設定する。
【0115】
次にステップS15において、制御部11は、回避情報に対応する予約走行経路に関する前記走行経路情報及び前記制御情報を自動搬送装置3に出力する。AGV1及びAGV2のそれぞれは、前記走行経路情報及び前記制御情報を取得すると、次の予約走行経路の走行を開始する。
【0116】
次にステップS16において、制御部11は、自動搬送装置3が出庫場所に到着した否かを判定する。自動搬送装置3が出庫場所に到着すると(S16:Yes)、制御部11は、前記搬送処理を終了する。制御部11は、自動搬送装置3が出庫場所に到着するまでステップS9~S15の処理を繰り返す(S16:No)。
【0117】
以上説明したように、本実施形態に係る搬送システム10は、搬送対象の搬送要求を受け付け、受け付けた前記搬送要求に基づいて、第1自動搬送装置の現在位置から目的位置までの走行経路の一部を構成する所定の長さ(可変な長さ)の区間走行経路を、前記第1自動搬送装置の前記区間走行経路が他の自動搬送装置である第2自動搬送装置に設定された前記区間走行経路と重複しないように設定する。また、搬送システム10は、前記自動搬送装置が区間走行経路を走行中に、当該区間走行経路の終了位置を次の区間走行経路の開始位置として当該次の区間走行経路を設定する処理を繰り返し実行する。
【0118】
例えば、全体走行経路が地点「1→2→3→4→5→6→7→8→9」の順番の経路であって、第1区間走行経路が「1→2→3→4」であり、第2区間走行経路が「4→5→6→7」であり、第3区間走行経路が「7→8→9」である場合に、搬送システム10は、地点「3」において第1区間走行経路の終了位置「4」に続く第2区間走行経路を設定する。なお、搬送システム10は、第2区間走行経路の開始位置が第1区間走行経路の終了位置と同一のため地点「4」を追加せず、自動的に「5→6→7」の経路を追加する。搬送システム10は、この処理を繰り返し実行する。
【0119】
例えば、搬送システム10は、AGVが第1区間走行経路「1→2→3→4」の地点「3」に到達すると、第2区間走行経路「4→5→6→7」を設定するが、AGVは内部処理で「5→6→7」を追加する。続いて、搬送システム10は、AGVが第2区間走行経路「4→5→6→7」の地点「6」に到達すると、第3区間走行経路「7→8→9」を設定するが、AGVは内部処理で「8→9」を追加する。また、この追加する区間走行経路の長さをシミュレーションによる状況に応じてダイナミックに長さ調整(長くする、短くする)ことにより、大規模台数でも安定走行制御を実現できる。
【0120】
また、本実施形態に係る搬送システム10は、搬送対象の搬送要求を受け付け、受け付けた前記搬送要求に基づいて、第1自動搬送装置の現在位置から前記保管位置までの全体走行経路を設定する。また、搬送システム10は、前記全体走行経路における、区間開始位置から予め設定された判定長さ以内の部分に関する情報に基づき区間走行経路の長さを決定し、前記全体走行経路上において、前記区間開始位置から前記区間走行経路長さの区間走行経路を設定する。また、搬送システム10は、前記区間走行経路を予約走行経路として設定する。
【0121】
上記構成によれば、全体走行経路に基づき、距離の長い予約走行経路と距離の短い予約走行経路とを設定することができる。このように、全体走行経路において、部分ごとに予約走行経路の長さを調整することができるため、自動搬送装置が走行するコース全体における搬送時間のロスを低減することが可能となる。
【0122】
また、本実施形態に係る搬送システム10は、前記搬送対象の搬送要求を受け付け、受け付けた前記搬送要求に基づいて、第1自動搬送装置の現在位置から前記保管位置までの全体走行経路を設定する。また、搬送システム10は、前記全体走行経路を前記自動搬送装置が走行する際の動作を規定する制御情報を設定する。また、搬送システム10は、第1自動搬送装置が前記全体走行経路上で第2自動搬送装置と交差するか否かを判定し、前記第1自動搬送装置が前記全体走行経路上で前記第2自動搬送装置と交差すると判定した場合に、前記第1自動搬送装置及び前記第2自動搬送装置の交差を回避させる複数の回避情報候補を作成する。また、搬送システム10は、全ての前記自動搬送装置の運行シミュレーションによって、作成した前記複数の回避情報候補それぞれに対して適正度の評価を行い、評価結果に基づいて、前記複数の回避情報候補の中から一つの前記回避情報候補を回避情報として決定する。
【0123】
上記構成によれば、最初に複数の自動搬送装置3に走行開始位置から目的位置までの全体走行経路を割り当てて、各自動搬送装置3の走行を開始させる。そして、自動搬送装置3の走行途中において、近い未来での交差の発生を随時予測する。なお、搬送システム10は、全てのAGVにおける、リアルタイムの位置情報、走行状況などを用いてAGV同士の交差の発生有無を予測してもよい。交差の発生が予測された場合に、複数の回避情報候補を作成し、複数の回避情報候補のそれぞれについて全ての自動搬送装置3に対して運行シミュレーションを行って、搬送時間が最短となる予約走行経路を再設定する。これにより、目的位置までの距離が遠い場合であっても、交差の発生を精度よく予測できる。また、交差の発生が予測された場合に、全ての自動搬送装置3に対して運行シミュレーションを行い、搬送時間が最短となる予約走行経路を再設定することにより、複数の自動搬送装置全体としての搬送時間のロスを低減することが可能となる。
【0124】
以上のように、搬送システム10は、搬送要求に対して、一括の経路(全体走行経路)を設定するのではなく、区間走行経路を基本としてリアルタイムに全体のAGVの走行状況を用いて、交差の有無を予測し、ダイナミックに重複しない走行経路を生成する。また、搬送システム10は、ダイナミックに可変な長さの区間走行経路を設定し、高速かつ効率的な区間走行経路の生成及び指示を行うことにより、全体的に交差による停止時間を最小化し、最短時間の搬送を実現する。
【0125】
具体的には、搬送システム10は、複数の区間走行経路に分割して設定し、それぞれを適切なタイミングでAGVに走行指示する。また、搬送システム10は、最短経路を基本としてリアルタイムに全体のAGVの走行状況を用いて、交差の有無を予測し、ダイナミックに重複しない走行経路を生成する。また、搬送システム10は、交差が発生した場合に、迂回、速度調整、停止待ちの各方法について、シミュレーションにより適切な方法を選択する。
【符号の説明】
【0126】
1 :運行管理サーバー
2 :注文管理サーバー
3 :自動搬送装置
4 :顧客端末
10 :搬送システム
11 :制御部
12 :記憶部
13 :操作表示部
14 :通信部
111 :搬送要求受付部
112 :全体走行経路設定部
113 :決定部
114 :区間走行経路設定部
115 :予約走行経路設定部
116 :制御情報設定部
117 :出力処理部
118 :重複判定部
119 :交差判定部
120 :回避情報作成部
121 :適正度評価部
122 :回避情報決定部