(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183031
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ポリアミド系複合フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
B32B 27/34 20060101AFI20221201BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20221201BHJP
C08G 73/14 20060101ALI20221201BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20221201BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20221201BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221201BHJP
G02B 1/18 20150101ALI20221201BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20221201BHJP
【FI】
B32B27/34
C08J5/18 CFG
C08G73/14
G09F9/00 313
G02B1/14
G02B5/30
G02B1/18
G02B1/111
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022077823
(22)【出願日】2022-05-10
(31)【優先権主張番号】10-2021-0069308
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】520287378
【氏名又は名称】エスケイシー ハイ・テック アンド マーケティング カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC hi-tech & marketing Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】112, Seonggeo-gil, Seonggeo-eup, Seobuk-gu, Cheonan-si,Chungcheongnam-do 31044, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ユンヒ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、サンフン
(72)【発明者】
【氏名】キ、ジョンヒ
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジンウ
(72)【発明者】
【氏名】オ、デソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハンジュン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソンファン
(72)【発明者】
【氏名】キム、フンシク
【テーマコード(参考)】
2H149
2K009
4F071
4F100
4J043
5G435
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB01
2H149DA02
2H149DA12
2H149FA15Y
2H149FC03
2H149FD03
2H149FD05
2H149FD09
2H149FD12
2H149FD25
2H149FD32
2H149FD44
2K009AA15
2K009BB22
2K009CC09
2K009CC24
2K009EE00
4F071AA22
4F071AA33
4F071AA41
4F071AA55
4F071AA56
4F071AA60
4F071AA67
4F071AB24
4F071AB26
4F071AB28
4F071AC12
4F071AE19
4F071AE22
4F071AF29Y
4F071AF30Y
4F071AF31Y
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH12
4F071AH16
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4F071BC15
4F071BC16
4F100AA07A
4F100AA20A
4F100AG00A
4F100AK12A
4F100AK25A
4F100AK25B
4F100AK36A
4F100AK46A
4F100AK51B
4F100AK52A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA23B
4F100CA30B
4F100EJ54B
4F100GB41
4F100JK12
4F100JK14
4F100JK14A
4F100JL04
4F100JN01
4F100JN06
4F100JN18
4F100JN18B
4F100JN30B
4F100YY00A
4J043QB15
4J043QB26
4J043QB31
4J043QB33
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043TA22
4J043TA26
4J043UA131
4J043UA132
4J043UB061
4J043UB062
4J043XA16
4J043ZA11
4J043ZA51
4J043ZB11
4J043ZB21
5G435AA01
5G435BB05
5G435BB12
5G435FF05
5G435FF13
5G435GG43
5G435HH02
5G435KK07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れたカール特性、機械的物性および光学物性を有するだけでなく、特に、可視光領域において反射防止に効果があり、レインボー現象を著しく減少させるとともに、ガラスに類似する質感を実現したポリアミド系複合フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】ポリアミド系重合体を含むベースフィルムと、ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、550nm波長の光で測定された面内位相差(Re)が100nm~220nmである、ポリアミド系複合フィルムおよびそれを含むディスプレイ装置とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド系重合体を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、
550nm波長の光で測定された面内位相差(Re)が100nm~220nmである、ポリアミド系複合フィルム。
【請求項2】
屈折率が1.48~1.54である、請求項1に記載のポリアミド系複合フィルム。
【請求項3】
3次元表面粗さパラメータにおいて、
Sa粗さ(算術平均高さ、arithmetical mean height)が0.005μm~0.08μmであり、
Sp粗さ(最大ピーク高さ、maximum peak height)が0.05μm~1.6μmであり、
Sv粗さ(最大溝深さ、maximum pit depth)が0.04μm~1.5μmであり、
Sz粗さ(最大高さ、maximum height)が0.09μm~3.1μmである、請求項1に記載のポリアミド系複合フィルム。
【請求項4】
前記ベースフィルムが配置された面の反対側に位置する前記機能層の一面の表面硬度が5H以上である、請求項1に記載のポリアミド系複合フィルム。
【請求項5】
前記ベースフィルムの表面粗さ(Ra)が0.005μm~0.050μmであり、
前記ベースフィルムの屈折率が1.620~1.650であり、
前記ベースフィルムの表面積増加率(Sdr)が0.0005%~0.0050%である、請求項1に記載のポリアミド系複合フィルム。
【請求項6】
前記ベースフィルムが消光剤をさらに含み、
前記消光剤が、シリカ、PMMA(poly(methyl methacrylate))、PBMA(poly(butyl methacrylate))、PS(polystyrene)、メラミン、シリコーン、硫酸バリウム、およびガラス(glass)からなる群より選択される1種以上であり、
前記消光剤の含有量が、前記ポリアミド系重合体の総重量を基準に100ppm~3000ppmである、請求項1に記載のポリアミド系複合フィルム。
【請求項7】
前記ポリアミド系重合体が下記化学式Aで表される繰り返し単位と、下記化学式Bで表される繰り返し単位とを0:100~50:50のモル比で含む、請求項1に記載のポリアミド系複合フィルム:
[化A]
[化B]
前記化学式Aおよび前記化学式Bにおいて、
EおよびJは互いに独立して、置換または非置換の2価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の2価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の2価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2-の中から選択され、
eおよびjは互いに独立して1~5の整数の中から選択され、
eが2以上の場合、2以上のEは互いに同一または異なり、
jが2以上の場合、2以上のJは互いに同一または異なり、
Gは、置換または非置換の4価のC
6-C
30脂環式基、置換または非置換の4価のC
4-C
30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC
6-C
30芳香族環基、置換または非置換の4価のC
4-C
30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂肪族環基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに接合されて縮合環を形成するか、置換または非置換のC
1-C
30アルキレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルケニレン基、置換または非置換のC
2-C
30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)
2-、-Si(CH
3)
2-、-C(CH
3)
2-、および-C(CF
3)
2-の中から選択された連結基によって結合されている。
【請求項8】
前記機能層がフィラーをさらに含み、
前記フィラーの含有量が、前記機能層の総重量を基準に40000ppm~300000ppmであり、
前記フィラーの平均粒径が5nm~100nmである、請求項1に記載のポリアミド系複合フィルム。
【請求項9】
ヘイズが1%以下であり、
透過度が80%以上である、請求項1に記載のポリアミド系複合フィルム。
【請求項10】
ディスプレイ部と、
前記ディスプレイ部上に配置されたポリアミド系複合フィルムとを含み、
前記ポリアミド系複合フィルムが、ポリアミド系重合体を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、
前記ポリアミド系複合フィルムの550nm波長の光で測定された面内位相差(Re)が100nm~220nmである、ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、可視光領域において反射防止に効果があり、レインボー現象を著しく減少するだけでなく、ガラスに類似する質感を実現したポリアミド系複合フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリ(アミド-イミド)(poly(amide-imide)、PAI)などのようなポリアミド系樹脂は、摩擦、熱、および化学的な抵抗力に優れ、1次電気絶縁材、コーティング剤、接着剤、押出用樹脂、耐熱塗料、耐熱板、耐熱接着剤、耐熱繊維、および耐熱フィルムなどに応用される。
【0003】
ポリアミドは、様々な分野で活用されている。例えば、ポリアミドは、粉末状に作られ金属または磁石ワイヤなどのコーティング剤として使用され、用途に応じて他の添加剤と混合して使用される。また、ポリアミドは、厨房調理器具にコーティングをするためにも使用され、耐熱性と耐薬品性の特徴があって、ガス分離に使用するメンブレンとしても使用され、天然ガス油井において二酸化炭素、硫化水素および不純物などの汚染物のろ過装置にも使用される。
【0004】
最近では、ポリアミドをフィルム化することによって、より安価でありながら光学的、機械的、および熱的特性に優れたポリアミド系フィルムが開発されている。このようなポリアミド系フィルムは、有機発光ダイオード(OLED、organic light-emitting diode)または液晶ディスプレイ(LCD、liquid-crystal display)などのディスプレイ材料に適用可能であり、位相差物性の実現時に反射防止フィルム、補償フィルム、または位相差フィルムに適用可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
実現例の目的は、優れたカール特性、機械的物性および光学物性を有するのみならず、特に可視光領域において反射防止に効果があり、レインボー現象を著しく減少するとともに、ガラスに類似する質感を実現した、ポリアミド系複合フィルムおよびこれを含むディスプレイ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実現例は、ポリアミド系重合体を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、550nm波長の光で測定された面内位相差(Re)が100nm~220nmである、ポリアミド系複合フィルムを提供する。
【0007】
他の実現例は、ディスプレイ部と、前記ディスプレイ部上に配置されたポリアミド系複合フィルムとを含み、前記ポリアミド系複合フィルムが、ポリアミド系重合体を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含み、前記ポリアミド系複合フィルムの550nm波長の光で測定された面内位相差(Re)が100nm~220nmであるディスプレイ装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
実現例によるポリアミド系複合フィルムは、高い透過度、低いヘイズのような優れた光学特性を有するのみならず、優れたカール特性、高い表面硬度のような優れた機械的特性を有し得る。
【0009】
特に、実現例によるポリアミド系複合フィルムは、特定レベルの面内位相差を有することにより、可視光領域において反射防止に効果があり、レインボー現象を著しく減少し得る。これにより、前記ポリアミド系複合フィルムは、色相が歪む現象を技術的に制御し、優れた反射外観を実現し得るので、ディスプレイ装置に適用するのに好適である。
【0010】
また、実現例によるポリアミド系複合フィルムは、特定レベルの3次元表面粗さを満足することによりガラスに類似する質感を示すので、前記ポリアミド系複合フィルムをディスプレイ装置に適用したとき、ユーザに質感における異物感を与えないので、ガラス代替フィルムとして有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、一実現例によるディスプレイ装置の断面図を示すものである。
【
図2】
図2は、一実現例によるベースフィルムの製造方法の概略的手順を示すフロー図である。
【
図3】
図3は、一実現例によるベースフィルムの工程設備を概略的に示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように、実現例について添付の図面を参考にして詳細に説明する。しかし、実現例は様々な異なる形態で実現されてよく、本明細書で説明する実現例に限定されない。
【0013】
本明細書において、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などが、各フィルム、ウインドウ、パネル、または層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものとして記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。また、各構成要素の上/下に対する基準は、図面を基準に説明する。なお、図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさを意味するものではない。また、明細書全体に亘って、同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0014】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」と言うとき、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0015】
本明細書において、単数表現は、特別な説明がなければ、文脈上解釈される単数または複数を含む意味で解釈される。
【0016】
また、本明細書に記載されている構成成分の量、反応条件などを表すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、すべての場合に「約」という用語で修飾されるものと理解するべきである。
【0017】
本明細書において、第1、第2などの用語は、様々な構成要素を説明するために用いられるものであり、前記構成要素は、前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別するためにのみ用いられる。
【0018】
また、本明細書において「置換された」ということは、特に記載がない限り、重水素、-F、-Cl、-Br、-I、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミジノ基、ヒドラジン基、ヒドラゾン基、エステル基、ケトン基、カルボキシル基、置換または非置換のアルキル基、置換または非置換のアルケニル基、置換または非置換のアルキニル基、置換または非置換のアルコキシ基、置換または非置換の脂環式有機基、置換または非置換のヘテロ環基、置換または非置換のアリール基、および置換または非置換のヘテロアリール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されたことを意味し、前記列挙された置換基は互いに結合して環を形成し得る。
【0019】
有機発光ダイオードまたは液晶ディスプレイなどのディスプレイ材料などに適用され得るポリアミド系フィルムは、優れた光学的、機械的物性のみならず、ユーザに異物感を与えないように適正レベルの滑らかな質感を有することが求められる。
【0020】
前記ポリアミド系フィルムをディスプレイ装置に適用する場合、ディスプレイ装置に含まれる透明カバーウィンドウは、ハードコート層およびベースフィルムを含むものが適用される。この場合、ベースフィルムにハードコート層を形成する工程において、透明カバーウィンドウのヘイズが増加するなど、光学物性が低下する問題が発生したり、接着力が不足して不良が発生したりすることがあり、特に、製造された透明カバーウィンドウは、虹色のムラが発生するレインボー現象が生じてユーザの目に疲労感を与え得るため、このような問題点を改善する必要がある。
【0021】
また、ディスプレイ装置にハードコート層等の機能層を適用した複合フィルムの場合、フレキシブルディスプレイに適用する際に高レベルの機械的強度が求められ、製造工程または使用中にフィルムエッジにカール現象が生じない技術もまた求められる。このような場合、ディスプレイ装置の表面保護等にさらに効果的であり得る。
【0022】
そこで、実現例によるポリアミド系複合フィルムは、レインボーおよびムラ現象を著しく低減させ、表示品質に優れながら優れたカール特性、高い表面硬度のような向上した機械的物性を有するだけでなく、ガラスに類似する質感を実現して、ユーザに質感における異物感を与えないため、透明カバーウィンドウおよびそれを含むディスプレイ装置に好適であることを確認し、実現例を完成した。
【0023】
[ポリイミド系複合フィルム]
実現例は、高い機械的物性および光学物性を有するのみならず、色が歪む現象を技術的に制御して優れた反射外観を実現し、ガラスに類似する質感を示して、ユーザに質感における異物感を与えないポリアミド系複合フィルムを提供する。
【0024】
一実現例によるポリアミド系複合フィルムは、ポリアミド系重合体を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含む。
【0025】
一実現例において、前記ポリアミド系複合フィルムは、550nm波長の光で測定された面内位相差(Re)が100nm~220nmである。
【0026】
具体的に、前記ポリアミド系複合フィルムは、550nm波長の光で測定された面内位相差(Re)が120nm~220nm、140nm~220nm、140nm~200nm、150nm~200nm、または150nm~195nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0027】
なお、前記面内位相差(in-plane retardation、Re)は、フィルムの平面内に直交する2つの軸の屈折率の異方性(Δnxy=|nx-ny|)とフィルム厚さ(d)との積(△nxy×d)で定義されるパラメータとして、光学的等方性または異方性を示す尺度である。
【0028】
前記ポリアミド系複合フィルムの面内位相差の値が前記範囲であると、波長分散性を制御することにより、光による歪現象が著しく低減され、虹色のムラが発生するレインボー現象を改善することができ、ユーザの目の疲労感を減らし得る。
【0029】
一方、前記ポリアミド系複合フィルムの面内位相差の値が前記好ましい範囲から外れると、ポリアミド系複合フィルムを位相差フィルムやディスプレイ装置用フィルムに適用した際にレインボー現象が現れることがあり、このようなレインボー現象は示そうとする画面に重畳干渉などを引き起こして、色を歪ませたり所望の画面が実現できなかったりし得る。
【0030】
一実現例において、前記ポリアミド系複合フィルムは、屈折率が1.48~1.54である。具体的に、前記ポリアミド系複合フィルムの屈折率は、1.49~1.54、1.494~1.545、1.494~1.540、1.494~1.535、1.494~1.530、1.494~1.525、1.494~1.520、1.494~1.515、または1.495~1.510であり得るが、これに限定されるものではない。
【0031】
前記ポリアミド系複合フィルムの屈折率が前記範囲であると、可視光領域帯で波長分散性に優れ、ムラ現象およびレインボー現象を減少し得る。
【0032】
一実現例によると、前記ポリアミド系複合フィルムは、3次元表面粗さパラメータにおいて、Sa粗さ(算術平均高さ、arithmetical mean height)が0.005μm~0.08μmであり得る。具体的に、前記ポリアミド系複合フィルムのSa粗さは、0.006μm~0.08μm、0.008μm~0.08μm、0.008μm~0.07μm、0.008μm~0.06μm、または0.008μm~0.05μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0033】
他の実現例によると、前記ポリアミド系複合フィルムは、3次元表面粗さパラメータにおいて、Sp粗さ(最大ピーク高さ、maximum peak height)が0.05μm~1.6μmである。具体的に、前記ポリアミド系複合フィルムのSp粗さは、0.06μm~1.6μm、0.07μm~1.6μm、0.07μm~1.4μm、0.07μm~1.2μm、0.07μm~1.0μm、または0.07μm~0.85μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0034】
また他の実現例によると、前記ポリアミド系複合フィルムは、3次元表面粗さパラメータにおいて、Sv粗さ(最大溝深さ、maximum pit depth)が0.04μm~1.5μmである。具体的に、前記ポリアミド系複合フィルムのSv粗さは、0.05μm~1.5μm、0.05μm~1.2μm、0.05μm~1.0μm、0.07μm~1.0μm、0.1μm~1.0μm、0.15μm~1.0μm、または0.2μm~1.0μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0035】
一実現例によると、前記ポリアミド系複合フィルムは、3次元表面粗さパラメータにおいて、Sz粗さ(最大高さ、maximum height)が0.09μm~3.1μmである。具体的に、前記ポリアミド系複合フィルムのSz粗さは、0.09μm~2.5μm、0.09μm~2.0μm、0.1μm~2.0μm、0.15μm~2.0μm、0.2μm~2.0μm、0.25μm~2.0μm、0.3μm~2.0μm、または0.3μm~1.7μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記「粗さ」は、表面の非平坦化を指し、これは、ISO 25178規格により限定された3次元表面粗さパラメータによって数値化される。3D表面粗さパラメータは、光学測定方法によって定められた表面幾何構造に基づいて計算される。
【0037】
前記ポリアミド系複合フィルムのSa粗さ、Sp粗さ、Sv粗さ、およびSz粗さは、前記ポリアミド系複合フィルムの製造後、ベースフィルムが配置された面の反対側に位置する機能層一面の3次元表面粗さを測定したものである。
【0038】
前記ポリアミド系複合フィルムの3次元表面粗さパラメータが前述の範囲であると、ガラスに類似する質感を示して、ユーザに質感においても審美感においても異物感を与えないため、ガラス代替フィルムとして有用に使用され得る。これにより、前記ポリアミド系複合フィルムはガラスの代わりに使用するのに好適であり、ガラスに比べて軽量性および優れたフォルディング特性を確保し得るので、フォルダブルディスプレイ装置またはフレキシブルディスプレイ装置に適用するのに容易である。
【0039】
一実現例において、前記ポリアミド複合フィルムは、ベースフィルムが配置された面の反対側に位置する機能層一面の表面硬度が4H以上または5H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0040】
前記ポリアミド系複合フィルムの表面硬度が前記範囲を満足すると、ディスプレイ装置に適用する際、スクラッチや強い衝撃に強いので、ディスプレイ装置を保護するのに容易である。
【0041】
他の実現例において、前記ポリアミド系複合フィルムのカール(curl)高さは15mm未満である。
具体的に、前記ポリアミド系複合フィルムのカール高さは、12mm以下、10mm以下、1mm~15mm未満、2mm~15mm未満、4mm~15mm未満、4mm~12mm、または4mm~10mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0042】
前記カール高さは、前記ポリアミド系複合フィルムを10cm角サイズに切断した後、ベースフィルムがガラス板と当接するようガラス板の上に載置して、25℃、50%RHで、4角のガラス板から離れた高さを測定した後、平均値を示したものである。
【0043】
前記ポリアミド系複合フィルムのヘイズは1%以下である。例えば、前記ヘイズは、0.8%以下、0.6%以下、0.5%以下、0.45%以下、または0.43%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記ポリアミド系複合フィルムの透過度は80%以上である。例えば、前記透過度は、82%以上、85%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、90%~99%、または91%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0045】
前記ポリアミド系複合フィルムの黄色度(yellow index)は5以下である。例えば、前記黄色度は、4以下、3.5以下、または3以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記ポリアミド系複合フィルムのヘイズ、透過度、および黄色度が前記範囲であると、無色透明でありながらも光学特性に優れ、ディスプレイ用カバーウィンドウにガラス代替フィルムとして使用するのに好適である。
【0047】
図1を参照すると、実現例によるポリアミド系複合フィルムは、ベースフィルム100と、前記ベースフィルム100上に配置された機能層200とを含む。
【0048】
前記ベースフィルム100は、前記機能層200を支持する支持層であり得る。また、前記ベースフィルム100はポリアミド系重合体を含み得る。例えば、前記ベースフィルム100はポリアミド系フィルムであり得る。
【0049】
前記機能層200は、前記ベースフィルム100上にコーティングされて形成され得る。前記機能層200は、前記ベースフィルム100上に接合され得る。前記機能層200は、前記ベースフィルム100上に接着され得る。
【0050】
前記機能層200は、前記ベースフィルム100上にコーティングされたコーティング層であり得る。前記機能層200は硬化性樹脂を含み得る。具体的に、前記機能層200は硬化性コーティング層であり得る。
【0051】
前記機能層200は、前記ベースフィルム100の機械的物性および/または光学物性を向上させる機能を果たす層として、目的に応じて様々に適用され得る。例えば、前記機能層は、反射防止層、防眩層、ハードコート層、復元層、衝撃拡散層、衝撃吸収層、指紋防止層、セルフクリーニング層または耐スクラッチ層などを含み得る。
【0052】
図1に示すように、前記機能層200は第2面102を含む。前記第2面102は、前記機能層200において前記ベースフィルム100が配置された面に位置する面であり、前記第2面102は前記機能層200において前記ベースフィルム100が接する面に位置する面である。前記第2面102は、前記機能層200の背面であり得る。例えば、前記第2面102は、前記機能層200の最背面であり得る。
【0053】
前記ベースフィルム100は第1面101を含む。前記第1面101は、前記ベースフィルム100において前記機能層200が配置された面に対向する面であって、前記第1面101は前記ベースフィルム100において前記機能層200が接する面の反対側に位置する面である。前記第1面101は前記ベースフィルム100の背面であり得る。例えば、前記第1面101は、前記ベースフィルム100の最背面であり得る。
【0054】
前述のポリアミド系複合フィルムの構造、構成成分および物性に関する特徴は互いに組み合わされ得る。
【0055】
[ベースフィルム100]
一実現例によるベースフィルム100はポリアミド系重合体を含む。
【0056】
前記ベースフィルム100は消光剤をさらに含み得る。
前記消光剤は、シリカ、PMMA(poly(methyl methacrylate))、PBMA(poly(butyl methacrylate))、PS(polystyrene)、メラミン、シリコーン、硫酸バリウム、およびガラス(glass)からなる群より選択される1種以上であり得る。
【0057】
前記消光剤の平均粒径は10nm~1000nmであり得る。例えば、前記消光剤の平均粒径は、50nm~800nm、50nm~500nm、50nm~300nm、50nm~200nm、70nm~180nm、または100nm~150nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記ベースフィルムは、前記消光剤を含むことにより、特定レベルの3次元表面粗さを実現して、ガラスに類似するレベルの質感を実現するだけでなく、巻取性を向上させフィルム製作の際、走行時に発生するスクラッチ改善効果を向上させ得る。さらには、ディスプレイの反射を減少させることにより視認性を増大させ、ユーザにとって目の疲労感を最小化し得る。
【0059】
前記ベースフィルムは、前記ポリアミド系重合体の総重量を基準に、前記消光剤を100ppm~3000ppmまたは200ppm~1000ppmの量で含み得る。
【0060】
フィルムに含まれている消光剤の含有量が前記範囲を超えると、フィルム表面に消光剤が析出され、後続工程に利用することができなくなったり、フィルムのヘイズが増加して光学特性が著しく劣ることになったりする。また、前記消光剤の含有量が前記範囲に未達となると、表面積が小さくなりコーティング性が低下するなどと後続工程に不利であり、ベースフィルム上に機能層が形成された後に耐久性(例えば、耐脱落性)が低下する原因として作用し得る。
【0061】
消光剤の平均粒径および/または含有量が前記範囲を満足すると、機能層のコーティングが容易であるとともに、最終的に製造されたフィルムにおいてベースフィルムと機能層との適性が向上して、安定した複合フィルムを実現し得る。
【0062】
実現例によるベースフィルムの表面粗さ(Ra)は、0.005μm~0.050μmである。具体的に、前記表面粗さは、0.007μm~0.050μmまたは0.007μm~0.030μmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0063】
前記ベースフィルムの表面粗さが前記範囲を満足することにより、ガラスに類似するレベルの質感および審美感を有するフィルムを実現することができ、ディスプレイの反射を減少させることにより視認性を増大させる効果がある。
【0064】
他の実現例によるベースフィルムの屈折率は1.620~1.650である。具体的に、前記ベースフィルムの屈折率は1.630~1.650、または1.630~1.640であり得るが、これに限定されるものではない。
【0065】
前記ベースフィルムの屈折率が前記範囲を満足することにより、画面の重畳干渉などによる色歪み現象を最小化でき、優れた反射外観を実現し得る。
【0066】
また他の実現例によるベースフィルムの表面積増加率(Sdr)が0.0005%~0.0050%である。具体的に、前記ベースフィルムの表面積増加率(Sdr)は、0.0005%~0.0040%、0.0005%~0.0030%、または0.0005%~0.0020%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0067】
前記ベースフィルムの表面積増加率が前記範囲を満足することにより、耐久性に優れた複合フィルムに適用するのに好適なベースフィルムとしての機能を果たし得る。
【0068】
一実現例によるベースフィルムはポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系重合体は、アミド繰り返し単位を含む重合体である。また、前記フィルムに含まれている重合体は、選択的にイミド繰り返し単位を含み得る。
【0069】
前記ベースフィルムはポリアミド系重合体を含み、前記ポリアミド系重合体はジアミン化合物およびジカルボニル化合物を含む反応物が同時または順次反応して形成され得る。具体的に、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジカルボニル化合物とが重合して形成される。
【0070】
または、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物と、ジアンヒドリド化合物と、ジカルボニル化合物とを重合して形成され得る。この際、前記ポリアミド系重合体は、ジアミン化合物とジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物とジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含む。
【0071】
一実現例によるベースフィルムは、ジアミン化合物、ジカルボニル化合物、選択的にジアンヒドリド化合物を重合して形成されたポリアミド系重合体を含む。
【0072】
一実現例として、前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物とのモル比が、0:100~50:50、0:100~45:55、0:100~30:70、0:100~25:75、0:100~20:80、0:100~15:85、または0:100~10:90である。
【0073】
前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物とのモル比が前記範囲であるとき、レインボー現象が著しく減少し、ガラスに類似する質感特性を示し、優れたフォルディング特性を有するフィルムを実現し得る。
【0074】
他の実現例として、前記ジアンヒドリド化合物が0種、1種または2種からなり、前記ジカルボニル化合物が1種または2種からなり得る。
【0075】
前記ジアミン化合物は、前記ジアンヒドリド化合物とイミド結合し、前記ジカルボニル化合物とアミド結合して共重合体を形成する化合物である。
【0076】
前記ジアミン化合物は、特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアミン化合物であり得る。例えば、前記ジアミン化合物は、下記化学式1の化合物であり得る。
[化1]
【0077】
前記化学式1において、Eは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0078】
eは1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、Eは互いに同一または異なり得る。
【0079】
前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1a~1-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0080】
具体的に、前記化学式1の(E)
eは、下記化学式1-1b~1-13bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0081】
より具体的に、前記化学式1の(E)eは、前記化学式1-6bで表される基または前記化学式1-9bで表される基であり得る。
【0082】
一実現例において、前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物またはエーテル基(-O-)を有する化合物を含み得る。
【0083】
前記ジアミン化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基はフッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0084】
他の実現例において、前記ジアミン化合物は1種のジアミン化合物を使用し得る。すなわち、前記ジアミン化合物は単一成分からなり得る。
【0085】
例えば、前記ジアミン化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-Bis(trifluoromethyl)-4,4'-diaminodiphenyl、TFDB)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0086】
前記ジアンヒドリド化合物は複屈折値が低いため、前記ポリイミド系重合体を含むフィルムの透過度のような光学物性の向上に寄与し得る化合物である。前記ポリイミド系重合体は、イミド繰り返し単位を含む重合体のことを意味する。
【0087】
前記ジアンヒドリド化合物は特に制限されないが、例えば、芳香族構造を含む芳香族ジアンヒドリド化合物であり得る。例えば、前記芳香族ジアンヒドリド化合物は、下記化学式2の化合物であり得る。
[化2]
【0088】
前記化学式2において、Gは置換または非置換の4価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC4-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択された連結基によって結合されている。
【0089】
前記化学式2におけるGは、下記化学式2-1a~2-9aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0090】
例えば、前記化学式2におけるGは、前記化学式2-2aで表される基、前記化学式2-8aで表される基、または前記化学式2-9aで表される基であり得る。
【0091】
一実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物、ビフェニル基を有する化合物、またはケトン基を有する化合物を含み得る。
【0092】
前記ジアンヒドリド化合物は、フッ素含有置換基を有する化合物からなり得る。この際、前記フッ素含有置換基は、フッ素化炭化水素基であり、具体的にはトリフルオロメチル基であり得るが、これに限定されるものではない。
【0093】
他の実現例において、前記ジアンヒドリド化合物は、1種の単一成分または2種の混合成分からなり得る。
【0094】
例えば、前記ジアンヒドリド化合物は、下記のような構造を有する2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(2,2'-Bis-(3,4-Dicarboxyphenyl)hexafluoropropane dianhydride、6-FDA)を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0095】
前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とが重合してポリアミック酸を生成し得る。
【0096】
次いで、前記ポリアミック酸は、脱水反応によりポリイミドに転換されても良く、前記ポリイミドはイミド繰り返し単位を含む。
【0097】
前記ポリイミドは、下記化学式Aで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化A]
【0098】
前記化学式Aにおいて、E、G、およびeに関する説明は、前述の通りである。
【0099】
例えば、前記ポリイミドは、下記化学式A-1で表される繰り返し単位を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0100】
[化A-1]
前記化学式A-1におけるnは1~400の整数である。
【0101】
前記ジカルボニル化合物は特に制限されないが、例えば、下記化学式3の化合物であり得る。
[化3]
【0102】
前記化学式3において、Jは、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択され得る。
【0103】
jは1~5の整数の中から選択され、jが2以上の場合、Jは互いに同一または異なり得る。
【0104】
Xはハロゲン原子である。具体的に、XはF、Cl、Br、I等であり得る。より具体的に、XはClであり得るが、これに限定されるものではない。
【0105】
前記化学式3の(J)jは、下記化学式3-1a~3-14aで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0106】
具体的に、前記化学式3の(J)
jは、下記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択され得るが、これに限定されるものではない。
【0107】
より具体的に、前記化学式3の(J)jは、前記化学式3-1bで表される基、前記化学式3-2bで表される基、3-3bで表される基、または3-8bで表される基であり得る。
【0108】
一実現例において、前記ジカルボニル化合物は、互いに異なる少なくとも2種のジカルボニル化合物を混合して使用し得る。前記ジカルボニル化合物が2種以上使用される場合、前記ジカルボニル化合物は、前記化学式3において(J)jが前記化学式3-1b~3-8bで表される基の中から選択される2種以上が使用され得る。
【0109】
他の実現例において、前記ジカルボニル化合物は、芳香族構造を含む芳香族ジカルボニル化合物であり得る。
【0110】
例えば、前記ジカルボニル化合物は、第1ジカルボニル化合物および/または第2ジカルボニル化合物を含み得る。
【0111】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、それぞれ芳香族ジカルボニル化合物(aromatic dicarbonyl compound)であり得る。
【0112】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物は、互いに異なる化合物であり得る。
【0113】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物が互いに異なる芳香族ジカルボニル化合物であり得るが、これに限定されるものではない。
【0114】
前記第1ジカルボニル化合物および前記第2ジカルボニル化合物がそれぞれ芳香族ジカルボニル化合物である場合、ベンゼン環を含んでいるので、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムの表面硬度および引張強度のような機械的物性を向上させるのに寄与し得る。
【0115】
前記ジカルボニル化合物は、下記のような構造を有するテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride、TPC)、1,1'-ビフェニル-4,4'-ジカルボニルジクロリド(1,1'-biphenyl-4,4'-dicarbonyl dichloride、BPDC)、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride、IPC)、またはその組み合わせを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0116】
例えば、前記第1ジカルボニル化合物はBPDCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はTPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0117】
前記第1ジカルボニル化合物としてBPDCを、前記第2ジカルボニル化合物としてTPCを、適切に組み合わせて使用すると、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムは、高い耐酸化性を有し得る。
【0118】
または、前記第1ジカルボニル化合物はIPCを含み、前記第2ジカルボニル化合物はTPCを含み得るが、これに限定されるものではない。
【0119】
前記第1ジカルボニル化合物としてIPCを、前記第2ジカルボニル化合物としてTPCを、適切に組み合わせて使用すると、製造されたポリアミド系重合体を含むフィルムは、高い耐酸化性を有し得るだけでなく、コスト削減をもでき経済的である。
【0120】
前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、下記化学式Bで表される繰り返し単位を形成し得る。
[化B]
前記化学式Bにおいて、E、J、e、およびjに関する説明は前述の通りである。
【0121】
例えば、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、化学式B-1およびB-2で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0122】
または、前記ジアミン化合物および前記ジカルボニル化合物が重合して、化学式B-2およびB-3で表されるアミド繰り返し単位を形成し得る。
【0123】
[化B-1]
前記化学式B-1のxは1~400の整数である。
【0124】
[化B-2]
前記化学式B-2のyは1~400の整数である。
【0125】
[化B-3]
前記化学式B-3のyは1~400の整数である。
【0126】
一実現例によると、前記ポリアミド系重合体は、下記化学式Aで表される繰り返し単位および下記化学式Bで表される繰り返し単位を含み得る。
[化A]
[化B]
【0127】
前記化学式AおよびBにおいて、EおよびJはそれぞれ独立して、置換または非置換の2価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の2価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の2価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の2価のC4-C30芳香族ヘテロ環基、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択される。
【0128】
eおよびjはそれぞれ独立して1~5の整数の中から選択され、eが2以上の場合、2以上のEは互いに同一または異なり、jが2以上の場合、2以上のJは互いに同一または異なり得る。
【0129】
Gは、置換または非置換の4価のC6-C30脂環式基、置換または非置換の4価のC4-C30ヘテロ脂環式基、置換または非置換の4価のC6-C30芳香族環基、置換または非置換の4価のC4-C30芳香族ヘテロ環基であり、前記脂環式基、前記ヘテロ脂環式基、前記芳香族環基、または前記芳香族ヘテロ環基が単独で存在するか、互いに結合され縮合環を形成するか、置換または非置換のC1-C30アルキレン基、置換または非置換のC2-C30アルケニレン基、置換または非置換のC2-C30アルキニレン基、-O-、-S-、-C(=O)-、-CH(OH)-、-S(=O)2-、-Si(CH3)2-、-C(CH3)2-、および-C(CF3)2-の中から選択された連結基によって結合されている。
【0130】
前記ポリアミド系重合体において、前記化学式Aで表される繰り返し単位と、前記化学式Bで表示される繰り返し単位とのモル比が、0:100~50:50、0:100~45:55、0:100~30:70、0:100~25:75、0:100~20:80、0:100~15:85、または0:100~10:90であり得るが、これに限定されるものではない。
【0131】
前記化学式Aで表される繰り返し単位と、前記化学式Bで表される繰り返し単位とのモル比が前記範囲であると、レインボー現象が著しく減少して可視光領域において反射防止に効果があり、ガラスに類似する質感特性を示し、優れたフォルディング特性を有するフィルムを実現し得る。
【0132】
前記ベースフィルム内の残留溶媒の含有量は1500ppm以下である。例えば、前記残留溶媒の含有量は1200ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、500ppm以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0133】
前記残留溶媒は、フィルム製造時に揮発されず、最終的に製造されたフィルムに残っている溶媒の量を意味する。
【0134】
前記ベースフィルム内の残留溶媒の含有量が前記範囲を超えると、フィルムの耐久性が低下することがあり、光学特性にも影響を与え得る。
【0135】
また、前記ベースフィルムの下記式1で表示されるIS値は10~200である。
[式1]
【0136】
前記式1において、IMは、前記フィルム内のイミド繰り返し単位およびアミド繰り返し単位の総モル数を100としたとき、イミド繰り返し単位のモル数を意味し、RSは、前記フィルム内の残留溶媒の含有量(ppm)を意味する。
【0137】
例えば、前記IS値は10~150、10~120、または10~60であり得るが、これに限定されるものではない。
【0138】
前記ベースフィルムのIS値が前記範囲を満足することにより、過酷な条件下でも耐久性に優れ、フォルディング特性に優れ、質感もまたガラスと類似のレベルの質感を有するフィルムを実現し得る。
【0139】
実現例によるベースフィルムは、厚さ50μmを基準に、曲率半径が3mmとなるようにフォルディングするとき、破断する寸前までのフォルディング回数が20万回以上である。
【0140】
前記フォルディング回数は、フィルムの曲率半径が3mmとなるように曲げて広げることを1回とする。
【0141】
前記ベースフィルムが、前述の範囲のフォルディング回数を満足することにより、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置に有用に適用され得る。
【0142】
前記ベースフィルムのヘイズが1%以下である。例えば、前記ヘイズは0.8%以下、0.6%以下、0.5%以下、または0.4%以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0143】
前記ベースフィルムの透過度は80%以上である。例えば、前記透過度は82%以上、85%以上、88%以上、89%以上、80%~99%、88%~99%、または89%~99%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0144】
前記ベースフィルムの黄色度(yellow index)は5以下である。例えば、前記黄色度が4以下、3.5以下、または3以下であり得るが、これに限定されるものではない。
【0145】
前記ベースフィルムのモジュラスが5.0GPa以上である。具体的に、前記モジュラスは5.5GPa以上、6.0GPa以上、6.5GPa以上、7.0GPa以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0146】
前記ベースフィルムの圧縮強度は0.4kgf/μm以上である。具体的に、前記圧縮強度は、0.45kgf/μm以上または0.46kgf/μm以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0147】
前記ベースフィルムをUTM圧縮モードで2.5mm球状のチップを使用して10mm/minの速度で穿孔する際、クラックを含む穿孔最大径(mm)が60mm以下である。具体的に、前記穿孔最大径が5mm~60mm、10mm~60mm、15mm~60mm、20mm~60mm、25mm~60mm、または25mm~58mmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0148】
前記ベースフィルムの表面硬度はHB以上である。具体的に、前記表面硬度がH以上または2H以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0149】
前記ベースフィルムは、引張強度が15kgf/mm2以上である。具体的に、前記引張強度が18kgf/mm2以上、20kgf/mm2以上、21kgf/mm2以上、または22kgf/mm2以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0150】
前記ベースフィルムは、伸び率が15%以上である。具体的に、前記伸び率が16%以上、17%以上、または17.5%以上であり得るが、これに限定されるものではない。
【0151】
実現例によるベースフィルムは、低いヘイズ、低い黄色度、高い透過度などの優れた光学物性のみならず、ガラスに類似する質感特性を有し、優れたフォルディング特性を確保し得る。これにより、ディスプレイの審美感と視認性とを増大させる効果がある。
【0152】
前述の前記ベースフィルムの物性は40μm~60μmの厚さを基準とする。例えば、前記ベースフィルムの物性は50μmの厚さを基準とする。
【0153】
前述のベースフィルムの構成成分および物性に関する特徴は、互いに組み合わされ得る。
【0154】
また、前記ベースフィルムの前述の物性は、前記ベースフィルムをなす成分の化学的、物理的な物性とともに、後述する前記ベースフィルムの製造方法において、各段階の工程条件が総合して現れる結果である。
【0155】
例えば、ベースフィルムをなす成分の組成と含有量、添加剤の種類と含有量、表面粗さの範囲、フィルム製造工程における熱処理温度と冷却温度条件などと、すべてのことが総合され、目的とするレベルの面内位相差範囲を達成し得る。
【0156】
[ベースフィルム100の製造方法]
一実現例は、ベースフィルムの製造方法を提供する。
【0157】
一実現例によるベースフィルムの製造方法は、有機溶媒中でポリアミド系重合体溶液を調製する段階と、前記重合体溶液をタンクに移動させる段階と、前記タンク内の重合体溶液をベルト上にキャスティングした後、乾燥させてゲルシートを製造する段階と、前記ゲルシートを移動させながら熱処理して硬化フィルムを製造する段階と、前記硬化フィルムを移動させながら冷却させる段階とを含む。
【0158】
図2を参照すると、一実現例によるベースフィルムの製造方法は、重合設備内において、有機溶媒中でジアミン化合物およびジカルボニル化合物、またはジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて重合体溶液を調製する段階(S100)と、前記重合体溶液をタンクに投入する段階(S200)と、不活性ガスによりパージする段階(S300)と、前記タンク内の重合体溶液をベルト上にキャスティングした後、乾燥させてゲルシートを製造する段階(S400)と、前記ゲルシートを移動させながら熱処理して硬化フィルムを製造する段階(S500)と、前記硬化フィルムを移動させながら冷却させる段階(S600)と、前記冷却された硬化フィルムをワインダー(winder)により巻き取る段階(S700)と、を含む。
【0159】
前記ベースフィルムは、ポリアミド系重合体が主成分であるフィルムであって、前記ポリアミド系重合体は、構造単位としてアミド繰り返し単位を含む樹脂である。また、前記ポリアミド系重合体は、イミド繰り返し単位をも含み得る。
【0160】
前記ベースフィルムの製造方法において、前記ポリアミド系重合体を調製するための重合体溶液は、重合設備内で有機溶媒中にジアミン化合物およびジカルボニル化合物、またはジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時または順次混合し、前記混合物を反応させて調製される(S100)。
【0161】
一実現例において、前記重合体溶液は、有機溶媒中にジアミン化合物およびジカルボニル化合物、またはジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物を同時に投入して反応させることにより調製され得る。
【0162】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを混合および反応させて、ポリアミド(Polyamide、PA)溶液を調製する段階を含み得る。前記ポリアミド溶液はアミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0163】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させて、ポリアミック酸(Polyamic acid、PAA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸(PAA)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させて、アミド結合およびイミド結合を形成する段階とを含み得る。前記ポリアミック酸溶液はポリアミック酸を含む溶液である。
【0164】
または、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物とを1次混合および反応させてポリアミック酸溶液を調製する段階と、前記ポリアミック酸溶液を脱水させてポリイミド(Polyimide、PI)溶液を調製する段階と、前記ポリイミド(PI)溶液に前記ジカルボニル化合物を2次混合および反応させてアミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリイミド溶液は、イミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0165】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、溶媒中に前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物とを1次混合および反応させて、ポリアミド(Polyamide、PA)溶液を調製する段階と、前記ポリアミド(PA)溶液に前記ジアンヒドリド化合物を2次混合および反応させて、イミド結合を追加形成する段階とを含み得る。前記ポリアミド溶液は、アミド繰り返し単位を有する重合体を含む溶液である。
【0166】
このように調製された前記重合体溶液は、ポリアミック酸(PAA)繰り返し単位、ポリアミド(PA)繰り返し単位、およびポリイミド(PI)繰り返し単位からなる群より選択された1種以上を含む重合体が含有されている溶液であり得る。
【0167】
前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位を含む。
【0168】
または、前記重合体溶液に含まれている重合体は、前記ジアミン化合物と前記ジアンヒドリド化合物との重合に由来するイミド(imide)繰り返し単位と、前記ジアミン化合物と前記ジカルボニル化合物との重合に由来するアミド(amide)繰り返し単位とを含む。
【0169】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量は10重量%~30重量%であり得る。または、前記第2重合体溶液に含まれている固形分の含有量は15重量%~25重量%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0170】
前記重合体溶液に含まれている固形分の含有量が前記範囲であると、押出およびキャスティング工程において効果的にベースフィルムが製造され得る。また、製造されたベースフィルムは向上されたモジュラスなどの機械的物性および低い黄色度などの光学物性を有し得る。
【0171】
一実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、触媒を投入する段階をさらに含み得る。
【0172】
この際、前記触媒は、β-ピコリン、無水酢酸、イソキノリン(isoquinoline、IQ)およびピリジン系化合物からなる群より選択された1種以上を含み得るが、これに限定されるものではない。
【0173】
前記触媒は、前記ポリアミック酸1モルを基準に0.01モル当量~0.4モル当量を投入し得るが、これに限定されるものではない。
【0174】
前記触媒を投入すると、反応速度を向上させることができ、繰り返し単位構造間または繰り返し単位構造内の化学的結合力を向上させ得る。
【0175】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液の粘度を調節する段階をさらに含み得る。
【0176】
具体的に、前記重合体溶液を調製する段階は、(a)有機溶媒中にジアミン化合物およびジカルボニル化合物または、ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、およびジカルボニル化合物を同時または順次に混合および反応させて第1重合体溶液を調製する段階と、(b)前記第1重合体溶液の粘度を測定して、目標粘度に到達するか否かを評価する段階と、(c)前記第1重合体溶液の粘度が目標粘度に達しない場合、前記ジカルボニル化合物を追加投入して、目標粘度を有する第2重合体溶液を調製する段階とを含み得る。
【0177】
前記目標粘度は、常温にて10万cps~50万cpsであり得る。具体的に、前記目標粘度は、常温にて10万cps~40万cps、10万cps~35万cps、10万cps~30万cps、15万cps~30万cps、または15万cps~25万cpsであり得るが、これに限定されるものではない。
【0178】
前記第1重合体溶液を調製する段階および第2重合体溶液を調製する段階の場合、調製された重合体溶液の粘度が異なる。例えば、前記第1重合体溶液よりも前記第2重合体溶液の粘度がより高い。
【0179】
前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度と、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度とが異なる。例えば、前記第1重合体溶液を調製する際の撹拌速度が、前記第2重合体溶液を調製する際の撹拌速度よりも速い。
【0180】
また他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、前記重合体溶液のpHを調節する段階をさらに含み得る。この段階において、前記重合体溶液のpHは4~7に調節され、例えば、4.5~7に調節され得る。
【0181】
前記重合体溶液のpHは、pH調整剤を添加することによって調整され、前記pH調整剤は特に制限されないが、例えば、アルコキシアミン、アルキルアミン、またはアルカノールアミン等のアミン系化合物を含み得る。
【0182】
前記重合体溶液のpHを前述の範囲に調節することにより、後続する工程において機器の損傷を防止することができ、前記重合体溶液から製造されたフィルムの欠陥発生を阻止し、黄色度およびモジュラスの面から目的とする光学物性および機械的物性を実現し得る。
【0183】
前記pH調整剤は、前記重合体溶液内の単量体の総モル数を基準に、0.1モル%~10モル%の量で添加され得る。
【0184】
他の実現例において、前記重合体溶液を調製する段階は、不活性ガスによりパージする段階をさらに含み得る。不活性ガスパージ段階により水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、最終フィルムの優れた表面外観および機械的物性などを実現し得る。
【0185】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これらに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0186】
また他の実現例において、ベースフィルムの製造方法は、消光剤を投入する段階をさらに含み得る。
【0187】
前記消光剤を投入する段階は、前記重合体溶液を調製する前に行っても良く、前記重合体溶液を調製した後で行っても良い。つまり、先に消光剤を有機溶媒に溶解した後、混合物を反応させて重合体を調製しても良く、先に有機溶媒中で混合物を反応させて重合体を調製した後で消光剤を有機溶媒に投入しても良い。
【0188】
具体的に、前記ポリアミド系重合体溶液を調製した後、有機溶媒中に消光剤を投入する段階をさらに含み得る。
【0189】
これにより、ガラスに類似するレベルの質感を有するフィルムを実現し得る。その上、表面粗さおよび巻取性を向上させ、フィルム製造工程における走行時に発生するスクラッチの改善効果を向上させることができ、ガラスのように見える審美感の実現が可能となる。さらには、光反射によって生じる光の干渉によるムラを減少させ、ディスプレイの視認性を増大させる効果がある。
前記消光剤の種類および含有量に関する説明は、前述の通りである。
【0190】
前記重合体溶液を調製するために使用される前記ジアンヒドリド化合物:前記ジカルボニル化合物のモル比は、0:100~50:50、0:100~45:55、0:100~30:70、0:100~25:75、0:100~20:80、0:100~15:85または0:100~10:90であり得る。前記ジアンヒドリド化合物と前記ジカルボニル化合物とがこのようなモル比で使用されることにより、前記重合体溶液から製造されたベースフィルムの機械的物性と光学物性の面で目標とするレベルに達成するのに有利である。
【0191】
前記範囲を外れると、フォルディング回数、硬度のような機械的物性や透明性のような光学物性が低下し得る。
【0192】
前記ジアミン化合物、ジアンヒドリド化合物、およびジカルボニル化合物に関する説明は、前述の通りである。
【0193】
一実現例において、前記有機溶媒は、ジメチルホルムアミド(dimethylformamide、DMF)、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)、N-メチル-2-ピロリドン(N-methyl-2-pyrrolidone、NMP)、m-クレゾール(m-cresol)、テトラヒドロフラン(tetrahydrofuran、THF)、およびクロロホルムからなる群より選択された1種以上であり得る。前記重合体溶液に使用される有機溶媒は、ジメチルアセトアミド(dimethylacetamide、DMAc)であり得るが、これに限定されるものではない。
【0194】
次に、前記重合体溶液を調製する段階の後、前記重合体溶液をタンクに移動させる(S200)。
【0195】
図3は、一実現例による前記ベースフィルムの製造工程の設備を概略的に示したものである。
図3を参照すると、前術の前記重合体溶液は重合設備10において調製され、このように調製された前記重合体溶液はタンク20に移動し、保管される。
【0196】
この際、前記重合体溶液の調製後、別途の工程なく前記重合体溶液をタンクに移動する段階を行う。具体的に、前記重合設備において調製された重合体溶液は、不純物を除去するための別途の沈殿および再溶解の過程なく、そのまま前記タンクに移動して保管される。従来は、前記重合体溶液の調製過程で生成される塩酸(HCl)などの不純物を除去するために、調製済みの重合体溶液を別途の工程により精製して不純物を除去し、これを溶媒に再溶解させる工程を行っていた。ただ、このような場合、不純物を除去する過程で有効成分の損失が大きくなり、その結果、収率が低下する問題があった。
【0197】
そこで、一実現例による前記製造方法は、前記重合体溶液の調製過程において根本的に不純物の含有量を最小化するか、所定の不純物が存在しても、後続の工程においてこれらを適切に制御して、最終フィルムの物性を低下させないようにすることにより、別途の沈殿または再溶解過程もなくフィルムを製造する利点を有する。
【0198】
前記タンク20は、前記重合体溶液をフィルム化する前にこれを保管する場所であり、その内部温度が-20℃~20℃であり得る。
【0199】
具体的に、前記内部温度は、-20℃~10℃、-20℃~5℃、-20℃~0℃、または0℃~10℃であり得るが、これに限定されるものではない。
【0200】
前記タンク20の内部温度を前記範囲に調節することにより、前記重合体溶液が保管中に変質するのを防止することができ、含水率を低下させ、これにより製造されたフィルムの欠陥(defect)を防止することができる。
【0201】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記タンク20に移動された前記重合体溶液に真空脱泡を行う段階をさらに含み得る。
【0202】
前記真空脱泡は、前記タンクの内部圧力を0.1bar~0.7barに減圧した後、30分~3時間行われ得る。このような条件で真空脱泡を行うことにより、前記重合体溶液内部の気泡を低減させることができ、その結果、これにより製造されたフィルムの表面欠陥を防止し、ヘイズなどの優れた光学物性を実現し得る。
【0203】
また、前記ベースフィルムの製造方法は、前記タンク20に移動された前記重合体溶液に、不活性ガスを用いてパージ(purging)する段階をさらに含み得る(S300)。
【0204】
具体的に、前記パージは、不活性ガスを用いて前記タンクの内部圧力を1気圧~2気圧にパージする方法により行われる。このような条件で不活性ガスパージを実施することによって、前記重合体溶液内部の水分を除去し、不純物を減少させることにより、反応収率を増加させることができ、ヘイズなどの光学物性と機械的物性などを優秀に実現できる。
【0205】
前記不活性ガスは、窒素、ヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)、およびラドン(Rn)からなる群より選択された1種以上であり得るが、これらに限定されるものではない。具体的に、前記不活性ガスは窒素であり得る。
【0206】
前記真空脱泡する段階と、前記タンクを不活性ガスによりパージする段階とは、別途の工程により行われる。
【0207】
例えば、前記真空脱泡する段階が行われ、その後、前記タンクを不活性ガスによりパージする段階が行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0208】
前記真空脱泡する段階および/または前記タンクを不活性ガスによりパージする段階を行うことにより、製造されたベースフィルム表面の物性が向上され得る。
【0209】
その後、前記重合体溶液をタンク20内で1時間~360時間保管する段階をさらに含み得る。この際、タンクの内部温度は-20℃~20℃に維持され続け得る。
【0210】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記タンク20内の重合体溶液をキャスティングした後、乾燥させて、ゲルシートを製造する段階をさらに含む(S400)。
【0211】
前記重合体溶液は、キャスティングロール(roll)またはキャスティングベルト(belt)のような注型体にキャスティングされ得る。
【0212】
図3を参照して、一実現例によると、前記重合体溶液は、注型体としてキャスティングベルト30上に塗布され、移動しながら乾燥され、ゲル状のシートに製造され得る。
【0213】
前記重合体溶液が前記ベルト30上に注入されるとき、その注入速度は300g/min~700g/minであり得る。前記重合体溶液の注入速度が前記範囲を満足することにより、前記ゲルシートが適切な厚さで均一に形成され得る。
【0214】
また、前記重合体溶液のキャスティング厚さは200μm~700μmであり得る。前記重合体溶液が前記厚さ範囲にキャスティングされることにより、乾燥および熱処理を経て最終フィルムとして製造されたとき、適切な厚さと厚さ均一性とを確保し得る。
【0215】
前記重合体溶液の粘度は、前述のように、常温にて10万cps~50万cpsであり、例えば10万cps~40万cps、10万cps~35万cps、15万cps~35万cps、または15万cps~25万cpsであり得る。前記粘度範囲を満足することにより、前記重合体溶液がベルト上にキャスティングされる際、欠陥なく均一な厚さにキャスティングされ得る。
【0216】
前記重合体溶液をキャスティングした後、60℃~150℃の温度で、5分~60分間乾燥させてゲルシートを製造し得る。前記乾燥中に前記重合体溶液の溶媒が一部または全部揮発され、前記ゲルシートが製造される。
【0217】
前記乾燥の際、注型体上でゲルシートの移動速度は、0.1m/分~15m/分であり、例えば、0.5m/分~10m/分であり得るが、これに限定されるものではない。
【0218】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記ゲルシートを移動させながら熱処理して、硬化フィルムを製造する段階を含む(S500)。
【0219】
図3を参照すると、前記ゲルシートの熱処理は、熱硬化装置40を通過することにより行われ得る。
【0220】
前記熱硬化装置40を通過するとき、前記ゲルシートは熱風処理される。
【0221】
熱風による熱処理を行う場合、熱量が均等に付与され得る。もし、熱量が均等に分布されないと、満足のいく表面粗さを実現することができず、そうすると、表面張力が上昇し過ぎたり、低下し過ぎたりし得る。
【0222】
前記ゲルシートの熱処理は、60℃~500℃の範囲で5分~200分間行われる。具体的に、前記ゲルシートの熱処理は、75℃~460℃の範囲で1.5℃/min~80℃/minの速度で昇温させながら10分~150分間行われ得る。
【0223】
この際、前記ゲルシートの熱処理開始温度は60℃以上であり得る。具体的に、60℃~200℃、より具体的に、80℃~180℃であり得る。
【0224】
また、熱処理中の最高温度は300℃~500℃であり得る。例えば、前記熱処理中の最高温度は、350℃~500℃、380℃~500℃、400℃~500℃、410℃~480℃、410℃~470℃、または410℃~450℃であり得る。
【0225】
すなわち、
図3を参照すると、前記熱硬化装置40の入口温度が熱処理開始温度であり、前記熱硬化装置40内部における所定の領域の温度が熱処理中の最高温度であり得る。
【0226】
一実現例によると、前記ゲルシートの熱処理は2段階以上で行われ得る。
【0227】
具体的に、前記熱処理は、60℃~120℃の範囲で5分~30分間行われる第1熱風処理段階と、120℃~350℃の範囲で10分~120分間行われる第2熱風処理段階とを含む。
【0228】
このような条件で熱処理することにより、前記ゲルシートが適切な表面硬度とモジュラスとを有するように硬化され、前記硬化フィルムが高い光透過率および低いヘイズ、適正な質感レベルを同時に確保し得る。
【0229】
他の実現例によると、前記熱処理は、IRヒーターを通過させる段階を含み得る。前記IRヒーターによる熱処理は、300℃以上の温度範囲で1分~30分間行われ得る。具体的に、前記IRヒーターによる熱処理は、300℃~500℃の温度範囲で1分~20分間行われ得る。
【0230】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記硬化フィルムを移動させながら冷却する段階を含む(S600)。
【0231】
図3を参照すると、前記硬化フィルムの冷却処理は、前記熱硬化装置40を通過した後に行われ、別途の冷却チャンバー(図示せず)を用いて行われても良く、別途の冷却チャンバーなしで適切な温度雰囲気を造成して行われても良い。
【0232】
前記硬化フィルムを移動させながら冷却させる段階は、100℃/分~1000℃/分の速度で減温させる第1減温段階と、40℃/分~400℃分の速度で減温させる第2減温段階とを含み得る。
【0233】
この際、具体的に、前記第1減温段階の後で前記第2減温段階が行われ、前記第1減温段階の減温速度は、前記第2減温段階の減温速度よりも速くて良い。
【0234】
例えば、前記第1減温段階中の最大速度が、前記第2減温段階中の最大速度よりも速い。または、前記第1減温段階中の最低速度が、前記第2減温段階中の最低速度よりも速い。
【0235】
前記硬化フィルムの冷却段階が、このように多段階で行われることにより、前記硬化フィルムの物性をより安定化することができ、前記硬化過程で確立されたフィルムの光学物性および機械的物性をより安定して長期間維持させ得る。
【0236】
前記ゲルシートおよび前記硬化フィルムの移動速度は同一である。
【0237】
前記ベースフィルムの製造方法は、前記冷却された硬化フィルムをワインダー(winder)により巻き取る段階を含む(S700)。
【0238】
図3を参照すると、前記冷却された硬化フィルムの巻取りは、ロール状のワインダー50を利用し得る。
【0239】
この際、前記乾燥の際、ベルト上でゲルシートの移動速度:巻取りの際の硬化フィルムの移動速度の比は、1:0.95~1:1.40である。具体的に、前記移動速度の比は、1:0.99~1:1.20、1:0.99~1:1.10、または1:1.0~1:1.05であり得るが、これに限定されるものではない。
【0240】
前記移動速度の比が前記範囲を外れると、前記硬化フィルムの機械的物性が損なわれるおそれがあり、柔軟性および弾性特性が低下するおそれがある。
【0241】
前記ベースフィルムの製造方法において、下記一般式1による厚さ偏差(%)は3%~30%であり得る。具体的に、前記厚さの偏差(%)は5%~20%であり得るが、これに限定されるものではない。
【0242】
[一般式1]
厚さ偏差(%)={(M1-M2)/M1}×100
前記一般式1において、M1は前記ゲルシートの厚さ(μm)であり、M2は巻取りの際に冷却された硬化フィルムの厚さ(μm)である。
【0243】
前記ベースフィルムは、前述の製造方法によって製造されることにより、光学的、機械的に優れた物性を示し得る。このような前記ベースフィルムは、柔軟性、透明性、特定レベルの質感が要求される様々な用途に適用可能である。例えば、前記ベースフィルムは、太陽電池、ディスプレイ、半導体素子、センサーなどに適用され得る。
【0244】
特に、前記ベースフィルムは、レインボー現象が著しく減少し、ガラスに類似する質感特性を実現し得るので、軽量性を確保したガラス代替フィルムとしてディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびディスプレイ装置に有用に適用され、フォルディング特性に優れてフォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置にも有用に適用され得る。
【0245】
前述の製造方法により製造されたポリアミド系ベースフィルムに関する説明は、前述の通りである。
【0246】
[機能層200]
前記機能層200は有機樹脂を含み得る。
また、前記機能層200は、フィラーをさらに含み得る。
前記機能層200は、その他の添加剤をさらに含み得る。
【0247】
前記有機樹脂は硬化性樹脂であり得る。前記有機樹脂はバインダー樹脂であり得る。前記有機樹脂は、アクリレート系モノマー、ウレタンアクリレート系オリゴマー、およびエポキシアクリレート系オリゴマーからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0248】
前記アクリレート系モノマーは、置換または非置換のアクリレートおよび置換または非置換のメタクリレートからなる群より選択された1種以上であり得る。
【0249】
前記アクリレート系モノマーは、1~10官能基を含み得る。前記ウレタンアクリレート系オリゴマーは、2~15官能基を含み得る。前記エポキシアクリレート系オリゴマーは、1~10官能基を含み得る。
【0250】
前記アクリレート系モノマーの例としては、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシトリアクリレート(GPTA)、ペンタエリトリトールテトラアクリレート(PETA)、またはジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられる。
【0251】
前記アクリレート系モノマーの重量平均分子量(Mw)は、約200g/mol~約2000g/mol、約200g/mol~約1000g/mol、または約200g/mol~約500g/molの範囲であり得る。
【0252】
前記アクリレート系モノマーのアクリレート当量(equivalent weight)は、約50g/eq~約300g/eq、約50g/eq~約200g/eq、または約50g/eq~約150g/eqの範囲であり得る。
【0253】
前記ウレタンアクリレート系オリゴマーの例としては、重量平均分子量1400~25000の2官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量1700~16000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量500~3500の4官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量818~2600の6官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量3500~5500の9官能ウレタンアクリレートオリゴマー、重量平均分子量3200~3900の10官能ウレタンアクリレートオリゴマー、または重量平均分子量2300~20000の15官能ウレタンアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0254】
前記エポキシアクリレート系オリゴマーの例としては、重量平均分子量100~300の1官能エポキシアクリレートオリゴマー、重量平均分子量250~2000の2官能エポキシアクリレートオリゴマー、または重量平均分子量1000~3000の4官能エポキシアクリレートオリゴマーなどが挙げられる。
【0255】
前記エポキシアクリレート系オリゴマーのエポキシ当量は、約50g/eq~約300g/eq、約50g/eq~約200g/eq、または約50g/eq~約150g/eqの範囲であり得る。
【0256】
前記有機樹脂の含有量は、前記機能層の総重量を基準に30wt%~100wt%であり得る。具体的に、前記有機樹脂の含有量は、前記機能層の総重量を基準に40wt%~90wt%、50wt%~90wt%、または50wt%~80wt%であり得る。
【0257】
前記フィラーの例としては、シリカ、硫酸バリウム、酸化亜鉛、またはアルミナなどが挙げられる。
【0258】
前記フィラーの含有量は、前記機能層の総重量を基準に40000ppm~300000ppmであり得る。具体的に、前記フィラーの含有量は、前記機能層の総重量を基準に、40000ppm~250000ppm、50000ppm~250000ppm、50000ppm~240000ppm、または70000ppm~240000ppmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0259】
前記フィラーの粒径は5nm~100nmであり得る。具体的に、前記フィラーの粒径は、5nm~80nm、5nm~60nm、5nm~50nm、5nm~30nm、5nm~20nm、または10nm~15nmであり得る。
【0260】
前記フィラーは表面処理され得る。前記フィラーは、シランカップリング剤等により表面処理され得る。前記シランカップリング剤の例としては、(メタ)アクリルシラン((meth)acrylsilane)、メタクロキシシラン(methacroxysilane)、ビニールシラン(vinylsilane)、エポキシシラン(epoxysilane)、またはメルカプトシラン(mercaptosilane)などが挙げられる。
【0261】
具体的に、前記フィラーはシリカであり、粒径は5nm~100nm、例えば、10nm~15nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0262】
前記機能層が前記フィラーを含むと、ポリアミド系複合フィルムの表面硬度を向上させるだけでなく、表面粗さおよび光路にも影響を与えて、レインボー現象を低減させ適切な表面質感を実現し得る。
【0263】
一実現例において、ポリアミド系複合フィルムに含まれている前記ベースフィルムは消光剤をさらに含み、前記機能層はフィラーをさらに含み得る。
【0264】
具体的に、前記消光剤と前記フィラーとは、同一または異なり得る。
【0265】
より具体的に、前記消光剤と前記フィラーとはいずれもシリカであり得るが、粒子の粒径、分布、含有量などの面で異なり得る。例えば、前記消光剤の粒径は100nm~150nmであり、前記フィラーの粒径は10nm~15nmであり得るが、これに限定されるものではない。
【0266】
前記機能層は、光開始剤をさらに含み得る。
前記光開始剤の例としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンゾイル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、現在市販の商品としては、Irgacure(登録商標)184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur(登録商標)1173、Darocur MBF、Irgacure 819、Darocur TPO、Irgacure 907、Esacure(登録商標)KIP 100Fなどが挙げられる。前記光開始剤は、単独で、または互いに異なる2種以上を混合して使用し得る。
【0267】
前記機能層は、界面活性剤、UV吸収剤、UV安定剤、黄変防止剤、レベリング剤、防汚剤、または色相値改善のための染料などを、その他の添加剤として含み得る。また、前記添加剤の含有量は、前記機能層の物性を低下させない範囲内で多様に調節され得る。例えば、前記添加剤の含有量は、前記機能層を基準に、約0.01wt%~約10wt%で含まれ得るが、これに限定されるものではない。
【0268】
前記界面活性剤は、1~2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤、またはシリコーン系界面活性剤であり得る。前記界面活性剤は、前記機能層内に分散または架橋されている形態で含まれ得る。
【0269】
前記UV吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、またはトリアジン系化合物などが挙げられ、前記UV安定剤としては、テトラメチルピペリジン(tetramethyl piperidine)などが挙げられる。
【0270】
前記機能層を形成するために、コーティング組成物が調製され得る。前記コーティング組成物は、前記有機樹脂、前記フィラー、前記添加剤、および有機溶媒を含む。
【0271】
前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒と、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒と、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒と、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒と、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用し得る。
【0272】
前記有機溶媒の含有量は、コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節し得るので特に制限はないが、前記コーティング組成物に含まれる成分のうち固形分に対して、固形分:有機溶媒の重量比が約30:70~約99:1となるように含み得る。前記有機溶媒が前記範囲にあるとき、適切な流動性および塗布性を有し得る。
【0273】
前記機能層が調製される過程において、前記有機溶媒が使用されるため、前記機能層には前記有機溶媒が微量で残り得る。
【0274】
具体的に、前記コーティング組成物は、有機樹脂およびフィラーを含み得る。
【0275】
前記フィラーは、溶媒に分散したゾルの状態で含まれ得る。例えば、前記フィラーがシリカであり、前記シリカはシリカゾルの状態で含まれ得る。
【0276】
前記コーティング組成物は、有機樹脂とフィラーとが分散されたゾルを80:20~40:60の重量比で含み得る。
【0277】
具体的に、前記コーティング組成物は、有機樹脂とフィラーとが分散されたゾルを80:20~50:50の重量比で含み得るが、これに限定されるものではない。
【0278】
前記コーティング組成物は、前記ベースフィルムの前面または背面に塗布され得る。前記コーティング組成物は、バーコート方式、ナイフコート方式、ロールコート方式、ブレードコート方式、ダイコート方式、マイクログラビアコート方式、コンマコート方式、スロットダイコート方式、リップコート方式、またはソリューションキャスティング(solution casting)方式などを利用し得る。
【0279】
その後、前記コーティング組成物に含まれている有機溶媒が除去され得る。前記有機溶媒は蒸発によって除去され得る。
【0280】
その後、前記コーティング組成物層は、光および/または熱によって硬化され得る。
【0281】
前記機能層は、完全に硬化した後、厚さが約2μm以上、または約3μm以上、例えば、約2μm~約20μm、約2μm~約15μm、約2μm~約10μm、約3μm~約10μmの厚さを有し得る。
【0282】
前記ベースフィルムおよび前記機能層の間に追加層がさらに配置され得る。前記追加層は帯電防止層であって帯電防止機能を果たすか、低屈折率層であって低反射(low reflection)機能を果たし得る。これとは異なり、前記機能層自体が帯電防止機能および/または低反射機能を果たすこともできる。
【0283】
また、前記機能層の屈折率は、1.45~1.60である。具体的に、前記機能層の屈折率は、1.46~1.58、1.46~1.55、1.46~1.52、1.48~1.51、または1.49~1.51であり得るが、これに限定されるものではない。
【0284】
前記機能層の屈折率が前記範囲を満足することにより、フィルムの優れた反射外観を実現し得る。
前述の機能層の構成成分および物性に関する特徴は互いに組み合わされ得る。
【0285】
[ディスプレイ装置]
一実現例によるディスプレイ装置は、ディスプレイ部と、前記ディスプレイ部上に配置されたポリアミド系複合フィルムとを含み、前記ポリアミド系複合フィルムが、ポリアミド系重合体を含むベースフィルムと、前記ベースフィルム上に配置された機能層とを含む。
【0286】
前記ポリアミド系複合フィルムは、550nm波長の光で測定された面内位相差(Re)が100nm~220nmである。
【0287】
なお、ベースフィルム、機能層、ポリアミド系複合フィルム等については、前述の通りである。
【0288】
具体的に、
図1には、ディスプレイ部400と、前記ディスプレイ部400上に第1面101および第2面102を有するベースフィルム100と機能層200とを含むポリアミド系複合フィルム300とが配置され、前記ディスプレイ部400と前記ポリアミド系複合フィルム300との間に接着層500が配置されたディスプレイ装置が例示されている。
【0289】
前記ディスプレイ部400は、画像が表示され得るものであり、フレキシブル(flexible)な特性を有し得る。
【0290】
前記ディスプレイ部400は、画像を表示するための表示パネルであり得るが、例えば、液晶表示パネルまたは有機電界発光表示パネルであり得る。前記有機電界発光表示パネルは、前面偏光板および有機ELパネルを含み得る。
【0291】
前記前面偏光板は、前記有機ELパネルの前面上に配置され得る。具体的に、前記前面偏光板は、前記有機ELパネルにおいて、画像が表示される面に接着され得る。
【0292】
前記有機ELパネルは、ピクセル単位の自発光により画像を表示する。前記有機ELパネルは、有機EL基板および駆動基板を含み得る。前記有機EL基板は、ピクセルにそれぞれ対応する複数の有機電界発光ユニットを含み得る。具体的に、それぞれ陰極、電子輸送層、発光層、正孔輸送層、および陽極を含み得る。前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動的に接続され得る。すなわち、前記駆動基板は、前記有機EL基板に駆動電流などのような駆動信号を印加できるように接続されることにより、前記有機電界発光ユニットにそれぞれ電流を印加して、前記有機EL基板を駆動し得る。
【0293】
また、前記ディスプレイ部400と前記ポリアミド系複合フィルム300との間に接着層500が含まれ得る。前記接着層500は光学的に透明な接着層であってよく、特に限定されない。
【0294】
前記ポリアミド系複合フィルム300は、前記ディスプレイ部400上に配置される。前記ポリアミド系複合フィルムは、実現例によるディスプレイ装置の最外郭に位置して、前記ディスプレイ部を保護し得る。
【0295】
前記ポリアミド系複合フィルム300は、ベースフィルムおよび機能層を含み得る。前記機能層は、ハードコート層、反射率低減層、防汚層、および防眩層からなる群より選択された1種以上であり得る。前記機能層は、前記ベースフィルムの少なくとも一面にコーティングされ得る。
【0296】
実現例によるポリアミド系複合フィルムの場合、ディスプレイ駆動方式やパネル内部のカラーフィルター、積層構造等の変更もなく簡単にディスプレイ装置の外部にフィルム状で適用して、広い視野角を有し視認性に優れたディスプレイ装置を提供し得るので、過度の工程変更やコスト増加を必要としないので、生産コストを削減できるという利点もある。
【0297】
実現例によるポリアミド系複合フィルム300は、高い透過度、低いヘイズ、低い黄色度のような優れた光学特性を有するとともに、優れたカール特性、高い表面硬度、低い表面粗さのような優れた機械的特性を有し得る。
【0298】
特に、実現例によるポリアミド系複合フィルム300は、可視光領域において特定レベルの面内位相差を有することにより、光による歪み現象が著しく低減されることにより、虹色のムラが発生するレインボー現象が改善され得る。これにより、優れた反射外観を実現できるので、ディスプレイ装置に適用するのに好適である。
【0299】
また、実現例によるポリアミド系複合フィルムは、特定レベルの3次元表面粗さを満足することによってガラスに類似する質感を示すため、前記ポリアミド系複合フィルムをディスプレイ装置に適用した際、ユーザに質感における異物感を与えず、ガラスに類似する審美感を有するので、ガラス代替フィルムとして使用するのに好適である。
【0300】
これにより、ガラスに比べて軽くて優れた柔軟性を有し、高い表面硬度特性を同時に満足するので、フォルダブルディスプレイ装置やフレキシブルディスプレイ装置にも有用に適用され得る。
【0301】
(実施例)
前記内容を下記実施例によりさらに詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものであるのみ、実施例の範囲がこれらにのみ限定されるものではない。
【0302】
(実施例1)
温度調節が可能な二重ジャケットの1L用ガラス反応器に、20℃の窒素雰囲気下で、有機溶媒であるジメチルアセトアミド(DMAc)779.1gを満たした後、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ジアミノフェニル(TFMB)0.2molを徐々に投入して溶解させた。その後、2,2'-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパンジアンヒドリド(6FDA)0.014molを徐々に投入して1時間撹拌した。そして、イソフタロイルクロリド(IPC)0.142molを投入して1時間撹拌し、テレフタロイルクロリド(TPC)0.044molを投入し1時間撹拌して、重合体溶液を調製した。その後、調製された重合体溶液にポリアミド系重合体の総重量を基準に、消光剤としてシリカ(平均粒径:100nm~150nm)500ppmを投入して撹拌した。
【0303】
得られた重合体溶液をガラス板に塗布した後、80℃の熱風で30分乾燥した後、ガラス板から剥離した後、ピンフレームに固定して80℃~300℃にて2℃/分の速度で昇温させながら熱風で乾燥して、厚さ50μmのポリアミド系フィルム(ベースフィルム)を得た。
【0304】
TFMB、6FDA、IPCおよびTPCの含有量に関して、ジアミン化合物100モルを基準に、ジアンヒドリド化合物およびジカルボニル化合物のモル数を表1に記載した。
【0305】
このように製造されたベースフィルムの一面にハードコート層を形成した。前記ハードコート層を形成するために、ウレタンアクリレートオリゴマー(PU2050、ミウォン・スペシャルティ・ケミカル社)54.32重量部、多官能アクリレートモノマー(M300、ミウォン・スペシャルティ・ケミカル社)23.28重量部、シリカ微粒子(平均粒径:10nm~15nm)が30重量%でメタノールに分散されたシリカゾル(MA-ST、日産化学社)19.4重量部、光開始剤(I-184、BASF社)3重量部を撹拌機で配合してハードコート形成用組成物を調製した。
【0306】
その後、前記ハードコート形成用組成物を、固形分100重量部を基準に、溶媒であるメチルイソブチルケトン100重量部を添加して撹拌した後、前記製造されたポリアミド系フィルム(ベースフィルム)の一面にダイコート方式で塗布した。その後、80℃の乾燥室に通過させて約1分程度溶媒を乾燥させた後、高圧水銀ランプの紫外線を1000mJ/cm2の光量で照射して硬化させ、5μmの厚さで塗膜を形成した。これにより、ベースフィルムとハードコート層(機能層)とを含むポリアミド系複合フィルムを製造した。また、製造された複合フィルム内に存在するシリカの含有量(ppm)を、機能層の総重量を基準に表1に記載した。
【0307】
(実施例2~6、比較例1および2)
下記表1に記載のように、各反応物の含有量などを異にしたことを除いて、実施例1と同様にしてフィルムを製造した。
【0308】
<評価例>
前記実施例1~6、比較例1および2で製造されたベースフィルム、ポリアミド系複合フィルムについて、下記のような物性を測定および評価し、その結果を下記表1に示した。
【0309】
(評価例1:フィルムの厚さ測定)
日本のミツトヨ社のデジタルマイクロメーター547-401を使用して、幅方向に5ポイント測定して平均値をもって厚さを測定した。
【0310】
(評価例2:表面粗さ測定)
表面粗さの測定は、AFM(atomic force microscopy)装置を用いた。
具体的に、Park Systems社の型名XE-150を使用し、条件は1.0hz、スキャン領域20μm×20μm条件で、Non-contact Cantilever PPP-NCHR 10Mを適用して、前記ベースフィルム製造後、機能層が配置される面の表面粗さを測定した。
【0311】
(評価例3:屈折率測定)
屈折率の測定はプリズム結合器(Prism coupler)を用いた。
具体的に、Sairon technology社のモデル名SPA-4000を使用し、常温の550nm条件で、測定するフィルムをプリズムに当接するように固定し、そのプリズムを通過するレーザビームの入射角を変えながら屈折率を測定した。
【0312】
ベースフィルム単独の屈折率およびポリアミド系複合フィルムの屈折率をそれぞれ測定した。
【0313】
(評価例4:表面積増加率(Sdr)測定)
表面積増加率の測定は、共焦点レーザー走査顕微鏡を用いた。
具体的に、Carl zeiss社のLSM 5 pascalを用いて、ISO 25178-2:2012規格により、下記式に従ってベースフィルム一面の表面積増加率を測定した。
前記表面積増加率計算式において、前記表面積は、横長がLx(cm)、縦長がLy(cm)のときの表面積のことを意味する。
【0314】
(評価例5:透過度およびヘイズ測定)
日本電色工業社のヘイズメーターNDH-5000Wを使用して、JIS K 7105規格に基づいて光透過度およびヘイズを測定した。
【0315】
(評価例6:表面硬度の測定)
KIPAE E&T社のPencil Hardness Testerと日本三菱社のPressure-Proofed Hi-Density Lead Pencilを使用して鉛筆硬度を測定した。
【0316】
具体的に、前記ポリアミド系複合フィルムの製造後、ベースフィルムが配置された面の反対側に位置する機能層の一面の表面硬度を測定した。Pencil Hardness Testerのガラス基板上に機能層が上を向くように固定し、三菱鉛筆を機能層の表面と45度の角度をなすように設置した後、750gの荷重を加えた状態で機能層の表面を5回擦ってスクラッチの有無をもって硬度を判断した。
【0317】
(評価例7:カール(curl)評価)
各実施例および比較例によるポリアミド系複合フィルムを10cm角のサイズに切断した後、ベースフィルムがガラス板と当接するようガラス板の上に載置し(つまり、機能層を上向きにして載置し)、25℃、50%RHで、4角のガラス板から離れた高さを測定して平均値を記載した。
【0318】
(評価例8:面内位相差(Re)測定)
各実施例および比較例によるポリアミド系複合フィルムを10cm角の大きさに切断した後、位相差測定機(Axometrics社製、Axoscan装置)を用いて550nm波長の光で測定した。
【0319】
(評価例9:3次元表面粗さ測定)
3次元表面粗さの測定は、3D光学プロファイラを使用した。
【0320】
具体的に、Bruker社のモデル名Optical Profiler Contour GTを使用し、220μm×220μmの領域で前記3D光学プロファイラによりイメージを撮影し、これに基づいて粗さを測定した。前記ポリアミド系複合フィルムの製造後、ベースフィルムが配置された面の反対側に位置する機能層一面の3次元表面粗さを測定した。
【0321】
具体的には、3次元表面粗さパラメータにおいて、Sa粗さ(算術平均高さ、arithmetical mean height)、Sp粗さ(最大ピーク高さ、maximum peak height)、Sv粗さ(最大溝深さ、maximum pit depth)、およびSz粗さ(最大高さ、maximum height)を記載した。
【0322】
【0323】
-機能層組成のうちAに関して、PU2050およびM300を7:3の重量比で混合した。
-機能層組成に関して、AとBを表1に記載の重量比で混合した。
-機能層のシリカ含有量は、機能層の総重量を基準に含まれた含有量(ppm)を記載したものである。
【0324】
【0325】
前記表1および2から分かるように、実施例1~6のポリアミド系複合フィルムは、550nm波長において100nm~220nmの面内位相差を有することにより、可視光領域において反射防止に効果があり、レインボー現象を著しく減少させ得る。
【0326】
これにより、実施例1~6によるポリアミド系複合フィルムをディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびディスプレイ装置に適用したとき、画面に重畳干渉等が生じて色が歪む現象を技術的に制御して、優れた反射外観を実現できることを確認した。
【0327】
また、実施例1~6のポリアミド系複合フィルムは、3次元表面粗さパラメータにおいて、Sa粗さ(算術平均高さ)が0.008μm~0.08μmを満足しており、特に、実施例1~4によるポリアミド系複合フィルムは、Sa粗さが0.005μm~0.08μmを満足することにより、ガラスに類似する質感を実現できることを確認した。
【0328】
これにより、前記ポリアミド系複合フィルムをディスプレイ装置用カバーウィンドウおよびディスプレイ装置に適用したとき、ユーザに質感における異物感を与えないため、ガラス代替フィルムとして適用するのに好適である。
【0329】
さらには、実施例1~6によるポリアミド系複合フィルムは、カール評価において4つの角の高さ平均が10mm以下と、優れたカール特性を示すことを確認しており、実施例1~4によるポリアミド系複合フィルムは、表面硬度も4H以上と、優れた機械的特性まで示すことも確認できた。
【0330】
具体的に、特定レベルの表面粗さ、屈折率および表面積増加率を満足するベースフィルムを適用することにより、目的とする面内位相差、屈折率および3次元表面粗さ値を示すポリアミド系複合フィルムを実現できるだけでなく、機能層形成用組成物のコーティングが容易であるとともに、ベースフィルムと機能層との適性に優れるため、耐脱落性のような耐久性の向上したポリアミド系複合フィルムが実現できた。
【0331】
実施例5および6のポリアミド系複合フィルムの場合、面内位相差は目的とするレベルに相当するが、相対的にSa粗さ値が低く滑らか過ぎるため、ディスプレイ装置に適用したときにやや異質感があり、表面硬度が低いため機械的特性が低下した。
【0332】
一方、比較例1および2のポリアミド系複合フィルムの場合、面内位相差が所望のレベルを超えて、レインボー現象が視認される問題が発生し、Sa粗さ値もまた所望の範囲を超えることにより、ガラス代替フィルムとして適用するには不適であり、表面硬度は優れているが著しく低下したカール特性を示した。
【符号の説明】
【0333】
10:重合設備
20:タンク
30:ベルト
40:熱硬化装置
50:ワインダー
100:ベースフィルム
101:第1面
102:第2面
200:機能層
300:ポリアミド系複合フィルム
400:ディスプレイ部
500:接着層