(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183036
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】抗糖化剤、およびその利用
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20221201BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20221201BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20221201BHJP
A61K 8/35 20060101ALI20221201BHJP
A61K 31/12 20060101ALI20221201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221201BHJP
A23K 20/111 20160101ALI20221201BHJP
A61Q 19/00 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
A23L33/105
A23L2/52
A23L2/00 F
A23L5/00 K
A61K8/35
A61K31/12
A61P43/00 111
A23K20/111
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079704
(22)【出願日】2022-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2021090572
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】504145320
【氏名又は名称】国立大学法人福井大学
(71)【出願人】
【識別番号】397022885
【氏名又は名称】公益財団法人若狭湾エネルギー研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 明彦
(72)【発明者】
【氏名】藤 あかね
(72)【発明者】
【氏名】畑下 昌範
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B035
4B117
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
2B150AA06
2B150AB03
2B150AB10
2B150DA01
4B018LB08
4B018LB10
4B018MD08
4B018MD48
4B018ME03
4B018ME14
4B035LC06
4B035LG04
4B117LC04
4B117LK06
4C083AC211
4C083AC212
4C083CC02
4C206CB13
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZC41
(57)【要約】
【課題】抗糖化活性の高い抗糖化剤を提供する。
【解決手段】本発明の抗糖化剤は、ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩を有効成分として含有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩を有効成分として含有する抗糖化剤。
【請求項2】
コラーゲンまたはエラスチンが糖化されることを抑制するためのものである、請求項1に記載の抗糖化剤。
【請求項3】
グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、ラクトース、またはグリセルアルデヒドによる糖化を抑制するためのものである、請求項1または2に記載の抗糖化剤。
【請求項4】
請求項1または2に記載の抗糖化剤を含有する、飲食品、飼料、化粧品または医薬品。
【請求項5】
請求項3に記載の抗糖化剤を含有する、飲食品、飼料、化粧品または医薬品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗糖化剤、およびその利用に関する。
【背景技術】
【0002】
糖化は、タンパク質またはアミノ酸のアミノ基に、還元糖のカルボニル基が非酵素的に結合することを起点とする一連の化学反応であり、糖化最終生成物(Advanced Glycation Endproducts、以下「AGEs」とも称する)が生成される。生体内で起こる糖化により生成されたAGEsは、様々な加齢関連疾患、糖尿病合併症、および炎症等を引き起こす。
【0003】
AGEsの生成等を抑制する代表的なAGEs生成抑制剤としては、アミノグアニジン等が知られている。アミノグアニジンは、生体組織におけるAGEsの蓄積を抑制し、加齢に伴う心臓血管および腎臓の機能低下に対し、保護作用を示し得る。
【0004】
また、糖化を抑制する抗糖化剤として、例えば、特許文献1には、カバノアナタケの抽出物を含む抗糖化剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、アミノグアニジンおよび特許文献1に開示される抗糖化剤は、抗糖化活性の高さ等の観点から十分なものでなく、さらなる改善の余地がある。
【0007】
本発明の一実施形態は、上記の問題点に鑑み為されたものであり、その目的は、抗糖化活性の高い抗糖化剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明の一実施形態は、以下の構成を含むものである。
【0009】
〔1〕ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩を有効成分として含有する抗糖化剤。〔2〕コラーゲンまたはエラスチンが糖化されることを抑制するためのものである、上記〔1〕に記載の抗糖化剤。
〔3〕グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、ラクトースまたはグリセルアルデヒドによる糖化を抑制するためのものである、上記〔1〕または〔2〕に記載の抗糖化剤。
〔4〕上記〔1〕~〔3〕の何れか1項に記載の抗糖化剤を含有する、飲食品、飼料、化粧品または医薬品。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、抗糖化活性の高い抗糖化剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】グルコースによるBSAの糖化に対する抗糖化活性を示すグラフである。
【
図2】フルクトースによるBSAの糖化に対する抗糖化活性を示すグラフである。
【
図3】グリセルアルデヒドによるコラーゲンの糖化に対する抗糖化活性を示すグラフである。
【
図4】グリセルアルデヒドによるエラスチンの糖化に対する抗糖化活性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態について以下に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能である。また、異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態または実施例についても、本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。なお、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。また、本明細書において特記しない限り、数値範囲を表す「A~B」は、「A以上(Aを含みかつAより大きい)B以下(Bを含みかつBより小さい)」を意図する。
【0013】
〔1.用語の定義〕
本明細書において、「抗糖化剤」とは、抗糖化活性を有する剤を意図する。また、「抗糖化」とは、糖化を阻害し、糖化最終生成物(AGEs)の生成を抑制する作用(以下「糖化阻害作用」または「AGEs生成抑制作用」とも称する)、AGEsの生体内の蓄積を抑制する作用(以下「AGEs蓄積抑制作用」とも称する)、および、AGEsの分解を促進する作用(以下「AGEs分解促進作用」とも称する)を包含する。したがって、本明細書において、抗糖化剤は、「糖化阻害剤」、「AGEs生成抑制剤」、「AGEs蓄積抑制剤」または「AGEs分解促進剤」ともいえる。
【0014】
なお、抗糖化活性を調べる方法としては、試料、タンパク質および還元糖を含む反応溶液中の蛍光性AGEsからの蛍光スペクトルを測定する方法等が挙げられる。蛍光性AGEsは、約370nmまたはその近傍の波長により励起して、蛍光を発する性質を有するため、反応溶液の蛍光強度を測定することにより、反応溶液中の蛍光性AGEsを定量し、試料の抗糖化活性を調べることができる。
【0015】
「糖化最終生成物(AGEs)」は、糖化(「メイラード反応」とも称される)により生じる生成物の総称である。AGEsは、種々の疾患(例えば、老化に関連する状態および疾患(以下「加齢関連疾患」とも称する)、糖尿病合併症、並びに炎症等)に関係していることが知られている。
【0016】
AGEsとしては、Nε-カルボキシメチルリシン(CML)、Nε-カルボキシエチルリシン(CEL)、アルグピリミジン、ペントシジン、ピラリン、クロスリン、GA-ピリジン、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、フロイルフラニルイミダゾール、および、グルコスパン等が挙げられる。
【0017】
〔2.抗糖化剤〕
本発明の一実施形態に係る抗糖化剤は、下記式(1)により示されるジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩を有効成分として含有する。本発明の一実施形態に係る抗糖化剤を、以下「本抗糖化剤」と称する場合もある。
【0018】
【0019】
従来、AGEsの生成抑制剤として知られていたアミノグアニジンは、抗糖化活性の強度において改善の余地があった。また、アミノグアニジンは、肝障害等の副作用を引き起こす可能性があることが報告されている。これに対し、本発明者らが見出したジヒドロキシベンザルアセトンおよびその塩は、アミノグアニジンと比して、高い抗糖化活性を有する。したがって、本抗糖化剤は、有効成分として、ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩を含有することにより、アミノグアニジンを上回る、高い抗糖化活性を示すという利点を有する。
【0020】
なお、本明細書において、「有効成分」とは、抗糖化活性を有する物質、または、組成物の抗糖化活性を増大させる物質を意図する。
【0021】
また、ジヒドロキシベンザルアセトンは、4-ジヒドロキシフェニル-ブタ-3-エン-2-オン、またはジヒドロキシベンジリデンアセトンとも称される。
【0022】
本抗糖化剤が抗糖化活性を発揮する作用機序は、以下の(i)~(iii)のいずれかまたはこれらの組合せであると推察されるが、本発明はかかる推察に限定されない:(i)標的タンパク質の糖化を阻害することにより、AGEsの生成を抑制する;(ii)標的タンパク質の糖化により生成したAGEsの生体内の蓄積を抑制する;および、(iii)標的タンパク質の糖化により生成したAGEsの分解を促進することにより、AGEsの量を低減させる。
【0023】
本抗糖化剤は、タンパク質等の種々の物質の糖化に対して、抗糖化活性を有する。本抗糖化剤は、これらの中でも、コラーゲンまたはエラスチンの糖化に対して、高い抗糖化活性を発揮する。特に、本抗糖化中の活性成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の投与量を適宜に調整することにより、抗糖化活性を有する陽性対照として代表的に用いられるアミノグアニジンを顕著に上回る優れた抗糖化活性を発揮する。コラーゲンおよびエラスチンの糖化は、加齢に伴う皮膚の老化現象、動脈硬化、骨粗しょう症等との高い関連性が報告されているため、当該効果は非常に重要である。
【0024】
したがって、本抗糖化剤は、コラーゲンが糖化されることを抑制するための、コラーゲン糖化抑制剤、または、エラスチンが糖化されることを抑制するための、エラスチン糖化抑制剤として好適に用いることができる。換言すれば、本発明は、ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩を有効成分として含有する、コラーゲン糖化抑制剤およびエラスチン糖化抑制剤を提供する。本発明の一実施形態に係るコラーゲン糖化抑制剤およびエラスチン糖化抑制剤は、例えば、AGEsが関係する皮膚の状態を改善する化粧品等に好適に用いることができる。
【0025】
本抗糖化剤は、種々の還元糖により引き起こされる糖化に対して、抗糖化活性を有する。還元糖の例としては、全ての単糖(例えば、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、およびガラクトース)、ラクトース、および、グリセルアルデヒド等が挙げられる。これらの還元糖の中でも、グルコースおよびフルクトースは、生体内の存在量が多い。また、グリセルアルデヒドによる糖化から生じたAGEsは、疾患の発症等との高い関連性が報告されている。
【0026】
本抗糖化剤は、これらの還元糖の中でも、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、ラクトース、およびグリセルアルデヒドによる糖化に対して、優れた抗糖化活性を発揮する。換言すれば、本抗糖化剤は、グルコース、フルクトース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、ラクトース、およびグリセルアルデヒドによる糖化を抑制するために、好適に用いることができる。
【0027】
(2-1.有効成分)
本抗糖化剤の有効成分であるジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩は、炎症および活性酸素種の生成を抑制することが報告されている(W. Chao, et al., Int. Immunopharmacol., 50, 77-86(2017)、および、Y. Nakajima, et al.,: Free Radic. Biol. Med., 47, 1154-1161(2009))。しかしながら、ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩と糖化またはAGEsとの関係については、これまでに一切報告されていない。本発明者らは、ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩と糖化およびAGEsとの関係に初めて着目し、当該化合物が高い抗糖化活性を示すことを見出した。
【0028】
ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩は、シス体であってもよく、トランス体であってもよく、シス体とトランス体との混合物であってもよい。優れた抗糖化活性を有することから、トランス体であることがより好ましい。
【0029】
好ましい実施形態において、ジヒドロキシベンザルアセトンは、下記式(2)により示される3,4-ジヒドロキシベンザルアセトンである。3,4-ジヒドロキシベンザルアセトンのIUPAC名は、4-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-ブタ-3-エン-2-オンである。
【化2】
特に好ましい実施形態において、ジヒドロキシベンザルアセトンは、(E)-3,4-ジヒドロキシベンザルアセトンである。(E)-3,4-ジヒドロキシベンザルアセトンのIUPAC名は、(E)-4-(3,4-ジヒドロキシフェニル)-ブタ-3-エン-2-オン(CAS番号:123694-03-1)である。
【0030】
ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩は、供給元(例えば、富士フイルムワコーケミカル(株)またはアルファ・エイサー社等)からの市販品であっても、公知の方法に従って化学合成されたものであっても、天然供給源(例えば、植物の抽出液等)に由来するものであってもよい。また、ジヒドロキシベンザルアセトンは、精製により純度を高めたものであっても、不純物を含むものであってもよい。
【0031】
一実施形態において、ジヒドロキシベンザルアセトンは、上述した物質の誘導体であってよい。本明細書において、「誘導体」とは、特定の化合物に対して、当該化合物の分子内の一部が、他の官能基または他の原子と置換されることにより生じる化合物群を意図する。
【0032】
上記他の官能基の例としては、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリールアルキル基、アリールアルコキシ基、アリールアルキルチオ基、アリールアルケニル基、アリールアルキニル基、アリル基、アミノ基、置換アミノ基、シリル基、置換シリル基、シリルオキシ基、置換シリルオキシ基、アリールスルフォニルオキシ基、アルキルスルフォニルオキシ基、ニトロ基等が挙げられる。上記他の原子の例としては、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子等が挙げられる。
【0033】
本明細書において、「塩」とは、医薬品として被験体に投与することが生理学的に許容されうる塩であるならば、限定されない。塩の例としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩、有機塩基塩(トリメチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン塩等)、有機酸塩(酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、蟻酸塩、トルエンスルホン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等)、無機酸塩(塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、燐酸塩等)を挙げられる。「塩」は、水に溶け易く、投与し易い等の利点を有する。
【0034】
ジヒドロキシベンザルアセトンの誘導体または塩は、公知の手法により製造することができる。勿論、市販の誘導体または塩を用いることも可能である。
【0035】
(2-2.その他の成分)
本抗糖化剤は、ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩そのものであってもよく、その他の成分を含有する組成物の形態であってもよい。組成物である場合の本抗糖化剤における、その他の成分については、〔3.飲食品〕、〔4.飼料〕、〔5.化粧品〕および〔6.医薬品〕の項に後述するものが適用できる。したがって、ここでは記載を省略する。
【0036】
(2-3.有効成分、および、他の成分の含有量)
本抗糖化剤に含まれる有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の量は、所望の効果が得られるならば、特に限定されない。当該有効成分の好適な量は、本抗糖化剤の投与対象および投与形態等により異なるが、例えば、本抗糖化剤の総質量に対して、0.00005質量%~100質量%であってもよく、0.0001質量%~100質量%であることが好ましく、0.001質量%~100質量%であることがより好ましく、0.01質量%~100質量%であることがより好ましく、0.1質量%~100質量%であることがより好ましく、0.1質量%~95質量%であることがより好ましく、0.1質量%~90質量%であることがより好ましく、0.1質量%~80質量%であることがより好ましく、0.1質量%~70質量%であることがより好ましく、0.1質量%~60質量%であることがより好ましく、0.1質量%~50質量%であることがより好ましく、0.1質量%~40質量%であることがより好ましく、0.1質量%~30質量%であることがより好ましく、0.1質量%~20質量%であることがより好ましく、0.1質量%~10質量%であることがさらに好ましく、0.1質量%~5質量%であることが特に好ましい。
【0037】
本抗糖化剤に含まれる有効成分以外の成分の量は、特に限定されない。当該有効成分以外の成分の量は、例えば、本抗糖化剤の総質量に対して、0質量%~99.99995質量%であってもよく、0質量%~99.9999質量%であることが好ましく、0質量%~99.999質量%であることがより好ましく、0質量%~99.99質量%であることがより好ましく、0質量%~99.9質量%であることがより好ましく、5質量%~99.9質量%であることがより好ましく、10質量%~99.9質量%であることがより好ましく、20質量%~99.9質量%であることがより好ましく、30質量%~99.9質量%であることがより好ましく、40質量%~99.9質量%であることがより好ましく、50質量%~99.9質量%であることがより好ましく、60質量%~99.9質量%であることがより好ましく、70質量%~99.9質量%であることがより好ましく、80質量%~99.9質量%であることがより好ましく、90質量%~99.9質量%であることがさらに好ましく、95質量%~99.9質量%であることが特に好ましい。
【0038】
(2-4.投与対象、投与形態および剤型)
本抗糖化剤の投与対象としては、特に限定されず、ヒトであってもよく、非ヒト動物(例えば、家畜、愛玩動物、および、実験動物)であってもよい。非ヒト動物としては、例えば、サル、チンパンジー、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、イヌ、ネコ、ウサギ、マウス、ラット、ニワトリ、および、魚介類が挙げられる。
【0039】
本抗糖化剤の投与量は、所望の効果が得られるならば、特に限定されない。好適な投与量は、投与対象および投与形態等により異なる。
【0040】
投与対象が成人のヒトであり、本抗糖化剤を経口投与する場合、好適な投与量は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の質量として、例えば、50~3,000mg/kg(体重)であり、より好ましくは、100~2,000mg/kg(体重)である。また、本抗糖化剤を長期にわたって日常的に経口投与する場合、好適な投与量は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の質量として、例えば、1~500mg/kg(体重)である。
【0041】
投与対象が非ヒト動物であり、本抗糖化剤を経口投与する場合、好適な投与量は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の質量として、例えば、50~3,000mg/kg(体重)であり、より好ましくは、100~2,000mg/kg(体重)である。また、本抗糖化剤を長期にわたって日常的に経口投与する場合、好適な投与量は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の質量として、例えば、1~500mg/kg(体重)である。
【0042】
本抗糖化剤は、任意の投与経路によって投与対象に投与され得る。投与経路の例としては、経口投与、および非経口投与(例えば、経皮投与、経粘膜投与、経鼻投与、経静脈投与)が挙げられる。
【0043】
本抗糖化剤は、固体(粉末、顆粒等)、液体(溶液、懸濁液等)、および、ペースト等のいずれの形状であってもよい。また、本抗糖化剤の剤型は、任意の剤型であり得る。剤形の例としては、散剤、丸剤、顆粒剤、錠剤、被覆錠剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、浸剤、煎剤、チンキ剤、注射剤、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、貼布剤、外用液剤、外用散剤、坐剤、吸入剤、点眼剤等が挙げられる。
【0044】
本抗糖化剤は、例えば、飲食品(飲食品組成物、および飲食品添加物等)、飼料(飼料組成物、および飼料添加物等)、化粧品、および医薬品等の製品の成分として用いることができる。
【0045】
〔3.飲食品〕
本発明の一実施形態に係る飲食品は、上記〔2.抗糖化剤〕に記載される本抗糖化剤を含有する。本発明の一実施形態に係る飲食品を、以下「本飲食品」と称する場合もある。本飲食品は、本抗糖化剤を含有するため、高い抗糖化活性を示すという利点を有する。したがって、本飲食品は、抗糖化をコンセプトとする旨がパッケージ等に表示されている抗糖化用飲食品であってよい。
【0046】
飲食品(すなわち、飲料および食品)としては、飲食品組成物、および飲食品添加物等が挙げられる。飲食品組成物には、健康食品、機能性表示食品、特別用途食品、栄養補助食品、サプリメント、および、特定保健用食品が含まれる。
【0047】
飲食品の形態としては、特に限定されず、一般の食品、病者用食品、流動食、ドリンク剤等の種々の加工形態であってよい。飲食品の形態の例としては、調味料(例えば、醤油、味噌、ソース等)、飲料(例えば、清涼飲料、果汁飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、スポーツ飲料、茶、コーヒー、ココア、ミルク、スープ等)、菓子(例えば、飴、ガム、グミ、ヨーグルト、ゼリー、プリン、チョコレート、クッキー、スナック菓子、パン、ケーキ、シュークリーム、アイスクリーム、アイスキャンデー等)、加工食品(例えば、ハム、かまぼこ、ソーセージ、ミートソース、カレー、シチュー、ドレッシング、チーズ、バター等)を例示することができる。
【0048】
本飲食品は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)以外の「その他の成分」として、可食成分(例えば、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、有機酸、有機塩基等)を含むものであってよい。また、本飲食品は、「その他の成分」として、〔6.医薬品〕の項に後述する製剤用の賦形剤を含んでいてもよい。
【0049】
上記タンパク質としては、動物性タンパク質および植物性タンパク質、並びにこれらの加水分解物、例えば、全脂粉乳、脱脂粉乳、カゼイン、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、ゼラチン、コラーゲン、乳清タンパク質等が挙げられる。
【0050】
上記糖質としては、糖類、食物繊維、デンプン(例えば、酸化デンプン、可溶性デンプン、デンプンエステル、デンプンエーテル、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、バレイショデンプン、小麦デンプン等)等が挙げられる。
【0051】
上記脂質としては、植物油および動物油、並びに加工油脂、例えば、ラード、牛脂、乳脂、コーン油、綿実油、ひまし油、ナタネ油、オリーブ油、ヤシ油、大豆油、サフラワー油、水素添加油、分別油、エステル交換油等が挙げられる。
【0052】
上記ビタミンとしては、ビタミンA、ビタミンB群、ビタミンC、ビタミンD群、ビタミンE、ビタミンK群、葉酸、ユビキノン、フラボノイド、ナイアシン、カロチン、ニコチン酸、パントテン酸、ビオチン、イノシトール、およびコリン、並びにこれらの誘導体等が挙げられる。
【0053】
上記ミネラルとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、銅、亜鉛、マンガン、セレン等が挙げられる。
【0054】
上記有機酸としては、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等が挙げられる。
【0055】
本飲食品に含まれる有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の量の好適な範囲は、上記(2-3.有効成分、および、他の成分の含有量)の項の記載が適宜援用される。また、本飲食品の好適な摂取量は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の量として、上記(2-4.投与対象、投与形態および剤型)の項の記載が適宜援用される。
【0056】
〔4.飼料〕
本発明の一実施形態に係る飼料は、上記〔2.抗糖化剤〕に記載される本抗糖化剤を含有する。本発明の一実施形態に係る飼料を、以下「本飼料」と称する場合もある。本飼料は、本抗糖化剤を含有するため、高い抗糖化活性を示すという利点を有する。したがって、本飼料は、抗糖化をコンセプトとする旨がパッケージ等に表示されている抗糖化用飼料であってよい。
【0057】
飼料は、飼料組成物および飼料添加物を包含し、非ヒト動物に経口投与される全ての剤型が含まれる。飼料組成物には、家畜用飼料、家禽用飼料、養殖魚介類用飼料、ペット用飼料(例えば、ドッグフード、およびキャットフード等)等の配合飼料が含まれる。
【0058】
本飼料は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)以外の「その他の成分」として、可食成分(例えば、タンパク質、糖質、脂質、ビタミン、ミネラル、有機酸、有機塩基等)を含むものであってよい。可食成分の具体例としては、〔3.飲食品〕の項の記載が適宜援用される。また、本飼料は、「その他の成分」として、飼料組成物または飼料添加物の製造に使用される飼料用賦形剤を含んでいてもよい。飼料用賦形剤としては、デンプン、デキストリン、グルテン、小麦粉、ふすま、脱脂糠、大豆類、糖類、油脂、魚粉、酵母、鉱物(例えば、ケイソウ土、ベントナイト等)、ケイ素化合物、リン酸塩等が挙げられる。
【0059】
本飼料に含まれる有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の量の好適な範囲は、上記(2-3.有効成分、および、他の成分の含有量)の項の記載が適宜援用される。また、本飼料の好適な摂取量は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の量として、上記(2-4.投与対象、投与形態および剤型)の項の記載が適宜援用される。
【0060】
本飼料は、飼料中に本抗糖化剤を添加する以外は、公知の方法により製造することができる。例えば、飼料用賦形剤(例えば、トウモロコシデンプン、デキストリンおよび脱脂糠等)を、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)と混合することにより、固形(例えば、粉末状、顆粒状、または錠剤状等)の飼料添加物を製造することができる。
【0061】
〔5.化粧品〕
本発明の一実施形態に係る化粧品は、上記〔2.抗糖化剤〕に記載される本抗糖化剤を含有する。本発明の一実施形態に係る化粧品を、以下「本化粧品」と称する場合もある。本化粧品は、本抗糖化剤を含有するため、高い抗糖化活性を示すという利点を有する。したがって、本化粧品は、抗糖化をコンセプトとする旨がパッケージ等に表示されている抗糖化用化粧品であってよい。一実施形態において、本化粧品は、AGEsが関係する皮膚の状態を改善する化粧品(例えば、しわ改善用化粧品、美白用化粧品、ニキビ改善用化粧品等)であってよい。
【0062】
本化粧品の形状は特に限定されず、液状(例えば、溶液、懸濁液、乳液等)、固体状(例えば、粉、顆等)、半固体状(例えば、クリーム、軟膏、ゲル等)等であってよい。本化粧品の形態としては、基礎化粧品(例えば、洗顔料、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、エッセンス(美容液)、パック、マスク等)、メーキャップ化粧品(例えば、ファンデーション、口紅等)、毛髪化粧品、ボディ化粧品(例えば、ボディーソープ、石けん等)等が挙げられる。
【0063】
本化粧品は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)以外の「その他の成分」として、化粧品に通常用いられる成分、例えば、界面活性剤、水溶性高分子、油脂、有機酸、無機塩、無機酸、高分子、粉末成分、その他の添加剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、殺菌剤、色素、着色剤、香料、水性成分、水等)、各種皮膚栄養剤(美白剤、オリゴペプチド、トラネキサム酸およびその誘導体、アミノ酸、動物または植物の抽出物、微生物培養代謝物、リン脂質、セラミド、ビタミン、硫黄、湯の花、糠等)等を、必要に応じて適宜含むものであってよい。
【0064】
界面活性剤(天然界面活性剤または合成界面活性剤)としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、およびシリコーン系界面活性剤等が挙げられる。アニオン性界面活性剤としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、アミン塩型、および第四級アンモニウム塩型等が挙げられる。両性界面活性剤としては、ベタイン型、イミダゾリン型、およびアミノ酸型等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、グリセリン脂肪酸エステル等のエステル型、ポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等のエーテル型、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等のエステルエーテル型、ヒマシ油誘導体、硬化ヒマシ油誘導体等が挙げられる。
【0065】
水溶性高分子(保湿剤または増粘剤)としては、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、カルボキシメチルセルロースおよびその塩、カチオン化セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、アルギン酸およびその塩またはエステル、トラガントガム、アラビアガム、キサンタンガム、塩化ポリ(N,N’-ジメチル-3,5-メチレンピペリジニウム)、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルピロリドン、デキストラン、シクロデキストリン、ムコ多糖、キトサン、デンプン、ゼラチン、ペクチン、カゼインナトリウム、乳清タンパク質、大豆タンパク質、鶏卵タンパク質、ホエータンパク質等が挙げられる。
【0066】
油脂としては、植物油脂および動物油脂(オリーブ油、アボカド油、パーム油、ヤシ油、ヒマシ油、大豆油、ホホバ油、アーモンド油、カカオ油、ゴマ油、パーシック油、ヌカ油等、および動物油脂:牛脂、豚脂、およびミンク油等、並びにこれらの硬化油、合成トリグリセリドおよびジグリセリド等)、ロウ(例えば、ミツロウ、カルナバロウ、鯨ロウ、ラノリン等)、鉱物油(例えば、流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、スクワレン、スクワラン、マイクロクリスタリンワックス、セレシン、プリスタン等)、脂肪酸(例えば、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸、イソノナン酸、カプロン酸等)、アルコール(例えば、2-ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、コレステロール等)、エステル(例えば、オクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸コレステロール等)、精油、シリコーン油等が挙げられる。
【0067】
有機酸としては、コハク酸、フマル酸、クエン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、ピルビン酸、グルクロン酸、タルトロン酸、および2-ヒドロキシ酪酸、並びにこれらの塩およびエステル等が挙げられる。
【0068】
無機塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、塩化カリウム、硫化カリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0069】
無機酸としては、ホウ酸、メタケイ酸、および無水ケイ酸等が挙げられる。
【0070】
高分子としては、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、スチレン樹脂、ポリテトラフルオロエタン等が挙げられる。
【0071】
粉末成分としては、ケイ酸、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ゼオライト、酸化チタン、タルク、カオリン、マイカ、ベントナイト、鉱砂、雲母、白土等が挙げられる。
【0072】
本化粧品に含まれる有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の量の好適な範囲は、所望の効果が得られるならば、特に限定されない。当該有効成分の好適な量は、本化粧品の総質量に対して、例えば、0.00005質量%以上であり、好ましくは0.0001質量%以上であり、10質量%以下であり、好ましくは5質量%以下である。
【0073】
本化粧品は、本抗糖化剤を添加する以外は、公知の方法により製造することができる。本抗糖化剤の添加方法および添加時期は、特に限定されない。本化粧品の包装形態は特に限定されず、瓶、缶、袋、噴霧容器、箱、スプレー缶、およびパック等の包装容器に収容された状態で提供され得る。
【0074】
〔6.医薬品〕
本発明の一実施形態に係る医薬品は、上記〔2.抗糖化剤〕に記載される本抗糖化剤を含有する。本発明の一実施形態に係る医薬品を、以下「本医薬品」と称する場合もある。本医薬品は、本抗糖化剤を含有するため、高い抗糖化活性を示すという利点を有する。したがって、本医薬品は、AGEsが関係する種々の疾患(例えば、加齢関連疾患、糖尿病合併症、炎症、乳癌、前立腺癌、骨粗しょう症、心疾患、更年期障害等)の予防または治療を目的として用いることができる。上記加齢関連疾患としては、皮膚の老化等が挙げられる。上記糖尿病合併症としては、白内障、動脈硬化、腎機能障害等との合併症が挙げられる。
【0075】
本明細書において、「予防」とは、本医薬品を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の発症または再発を防止するか、またはリスクを低減することを意味する。また、「治療」とは、本医薬品を投与しなかった場合と比較して、疾患に係る1つ以上の症状の重症度を低減するか、当該重症度の増加または進行を防止するか、当該重症度の増加速度または進行速度を低減することを意味する。
【0076】
本医薬品の剤型は、任意の剤型であり得る。剤形の例としては、(2-4.投与対象、投与形態および剤型)の項の記載が適宜援用される。
【0077】
本医薬品は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)以外の「その他の成分」として、医薬品に通常用いられる成分を、必要に応じて適宜含むものであってよい。医薬品に通常用いられる成分は、薬学的に許容され得る成分であればよく、例えば、賦形剤、緩衝剤、pH調整剤、等張化剤、溶媒、防腐剤、抗酸化剤、高分子量重合体、充填剤、増量剤、可溶化剤、結合剤、安定化剤、滑沢剤、増粘剤、界面活性剤、崩壊剤、崩壊抑制剤、吸収促進剤、吸着剤、保湿剤、保存剤、風味剤、甘味剤、香料、着色料、乳化剤、酵素、溶解補助剤等であり得る。
【0078】
前記賦形剤の例としては、製剤用の各種賦形剤が使用される。製剤用の賦形剤としては、ラクトース、スクロース、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプン、結晶セルロース等が挙げられる。これらの賦形剤のうち、還元糖(例えば、ラクトース)、および加水分解により還元糖を生じるスクロース等は、糖化を引き起こし得るため、使用量を少なくすることが好ましく、または、使用しないことが好ましい。
【0079】
前記緩衝剤の例としては、リン酸またはリン酸塩、ホウ酸またはホウ酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、酢酸または酢酸塩、炭酸または炭酸塩、酒石酸または酒石酸塩、ε-アミノカプロン酸、トロメタモール等が挙げられる。前記リン酸塩としては、リン酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム等が挙げられる。前記ホウ酸塩としては、ホウ砂、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム等が挙げられる。前記クエン酸塩としては、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、クエン酸三ナトリウム等が挙げられる。前記酢酸塩としては、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム等が挙げられる。前記炭酸塩としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム等が挙げられる。前記酒石酸塩としては、酒石酸ナトリウム、酒石酸カリウム等が挙げられる。
【0080】
前記pH調整剤の例としては、塩酸、リン酸、クエン酸、酢酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0081】
前記等張化剤の例としては、イオン性等張化剤(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム等)、非イオン性等張化剤(グリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、マンニトール等)が挙げられる。
【0082】
前記溶媒の例としては、水、生理的食塩水、アルコール等が挙げられる。
【0083】
前記防腐剤の例としては、ベンザルコニウム塩化物、ベンザルコニウム臭化物、ベンゼトニウム塩化物、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸プロピル、クロロブタノール等が挙げられる。
【0084】
前記抗酸化剤の例としては、アスコルビン酸、トコフェノール、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、エリソルビン酸ナトリウム、没食子酸プロピル、亜硫酸ナトリウム等が挙げられる。
【0085】
前記高分子量重合体の例としては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ポリエチレングリコール、アテロコラーゲン等が挙げられる。
【0086】
また、本医薬品は、その他の成分として、所望の効果を有する薬効成分を含んでいてもよく、所望の効果を有する薬効成分と併用されてもよい。
【0087】
本医薬品に含まれる有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の量の好適な範囲は、上記(2-3.有効成分、および、他の成分の含有量)の項の記載が適宜援用される。また、本医薬品の好適な投与量は、有効成分(ジヒドロキシベンザルアセトンまたはその塩)の量として、上記(2-4.投与対象、投与形態および剤型)の項の記載が適宜援用される。
【0088】
本医薬品は、本抗糖化剤を添加する以外は、公知の方法により製造することができる。
【0089】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0090】
以下に実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【実施例0091】
〔実施例1〕ウシ血清アルブミンの糖化に対する抗糖化活性
糖(グルコースまたはフルクトース)によるウシ血清アルブミン(BSA)の糖化に対する本抗糖化剤の抗糖化活性(AGEs生成抑制活性)を、下記の方法に従って評価した。本抗糖化剤としては、(E)-3,4-ジヒドロキシベンザルアセトン(富士フイルムワコーケミカル(株)製、以下「DBL」とも称する)を使用した。
【0092】
まず、2mL容ねじ口チューブに、40g/Lウシ血清アルブミン水溶液300μL、2Mグルコース水溶液または2Mフルクトース水溶液150μL、DBL水溶液50μL、および、リン酸緩衝生理食塩水(pH7.4)900μLを加え、撹拌して混合物を得た。上記DBL水溶液は、混合物におけるDBLの終濃度が0.0004~0.0500g/Lとなるように、原液(高濃度DBL水溶液)を水で希釈することにより調製した。陽性対照として、DBL水溶液の代わりに、アミノグアニジン水溶液(混合物におけるアミノグアニジンの終濃度0.060~0.500g/L)を使用した。
【0093】
次いで、得られた混合物の反応0時間における蛍光強度を測定した。次に、上記混合物を、遮光条件下、60℃で48時間インキュベートし、得られた反応溶液の蛍光強度を測定した。蛍光強度の測定は、マイクロプレートリーダーを用いて、励起波長370nm、蛍光波長440nmにて行った。
【0094】
測定された蛍光強度から、下記式にしたがって、DBLおよびアミノグアニジンのAGEs生成抑制率を算出した。結果を
図1(グルコース)および
図2(フルクトース)に示す。
【数1】
式中、E
sample(0h)は、反応0時間における混合物(DBL)の蛍光強度であり、E
sample(48h)は、48時間インキュベート後に得られた反応溶液(DBL)の蛍光強度であり、E
control(0h)は、反応0時間における混合物(アミノグアニジン)の蛍光強度であり、E
control(48h)は、48時間インキュベート後に得られた反応溶液(アミノグアニジン)の蛍光強度である。
【0095】
算出したAGEs生成抑制率から、DBLおよびアミノグアニジンのEC50値を算出した。結果を以下の表1に示す。
【0096】
【0097】
表1に示されるとおり、グルコースおよびフルクトースのいずれにおいても、DBLのEC50値は、アミノグアニジンの1/13程度の低い値であった。この結果から、DBLは、陽性対照であるアミノグアニジンを顕著に上回る高い抗糖化活性を示すことが明らかとなった。
【0098】
〔実施例2〕コラーゲンの糖化に対する抗糖化活性
グリセルアルデヒドによるコラーゲンの糖化に対する本抗糖化剤の抗糖化活性(AGEs生成抑制活性)を、コスモ・バイオ株式会社製「コラーゲン抗糖化アッセイキット グリセルアルデヒド」を用いて評価した。本抗糖化剤としては、DBLを使用した。具体的な試験方法は、上記キットに添付のプロトコールにしたがった。以下に、試験方法について簡単に説明する。
【0099】
まず、上記キットのコラーゲン溶液、グリセルアルデヒド溶液、および緩衝液に、DBL水溶液を加え、撹拌して混合物を得た。上記DBL水溶液は、混合物におけるDBLの終濃度が0.001~0.250g/Lとなるように、原液(高濃度DBL水溶液)を水で希釈することにより調製した。陽性対照として、DBL水溶液の代わりに、アミノグアニジン水溶液(混合物におけるアミノグアニジンの終濃度0.001~0.250g/L)を使用した。
【0100】
次いで、得られた混合物の反応0時間における蛍光強度を測定した。次に、上記混合物を、37℃で24時間インキュベートし、得られた反応溶液の蛍光強度を測定した。蛍光強度の測定は、実施例1と同様に行った。
【0101】
測定された蛍光強度から、実施例1と同様にして、DBLおよびアミノグアニジンのAGEs生成抑制率を算出した。結果を
図3に示す。
【0102】
図3に示されるとおり、DBLは、グリセルアルデヒドによるコラーゲンの糖化に対し、特に高濃度域において、陽性対照であるアミノグアニジンを顕著に上回る高い抗糖化活性を示した。また、低濃度域においても、アミノグアニジンと同等の良好な抗糖化活性を示した。
【0103】
〔実施例3〕エラスチンの糖化に対する抗糖化活性
グリセルアルデヒドによるエラスチンの糖化に対する本抗糖化剤の抗糖化活性(AGEs生成抑制活性)を、コスモ・バイオ社株式会社製「エラスチン抗糖化アッセイキット(グリセルアルデヒド)」を用いて評価した。本抗糖化剤としては、DBLを使用した。具体的な試験方法は、上記キットに添付のプロトコールにしたがった。以下に、試験方法について簡単に説明する。
【0104】
96ウェルプレート(Greiner bio-one製、96 well microplate、black、655076、蓋付き)の各ウェルに糖化用タンパク質(2g/L BSA溶液、エラスチン溶液)を50μL入れた。アミノグアニジン水溶液および試料は、緩衝液を用いて終濃度が0.005~0.5g/Lとなるように調製し滅菌した後、各ウェルに40μL加えた。次に500mMグリセルアルデヒド溶液を各ウェルに10μL加えて、反応0時間の蛍光(励起波長355nm、蛍光波長460nm)をマイクロプレートリーダーで測定した。測定後はプレートを、濡らしたプロワイプ(大王製紙社製)とともに袋に入れ、遮光下、37℃でインキュベートし、5日後に蛍光値を測定し実施例1と同様にAGEs生成抑制率を算出した。結果を
図4に示す。
【0105】
図4に示されるとおり、DBLは、グリセルアルデヒドによるエラスチンの糖化に対し、陽性対照であるアミノグアニジンを顕著に上回る高い抗糖化活性を示した。
【0106】
また、算出したAGEs生成抑制率から、DBLおよびアミノグアニジンのEC50値を算出した結果、DBLのEC50値は、アミノグアニジンのEC50値の1/7程度の低い値であった。この結果も、DBLは、陽性対照であるアミノグアニジンを顕著に上回る高い抗糖化活性を示すことが明らかとなった。