(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183041
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】研削盤、連続加工方法及びプログラム生成方法
(51)【国際特許分類】
B24B 49/03 20060101AFI20221201BHJP
B23Q 15/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
B24B49/03 Z
B23Q15/00 303Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022081031
(22)【出願日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2021089534
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000196705
【氏名又は名称】西部電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【弁理士】
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】藤井 浩明
(72)【発明者】
【氏名】川辺 剛
(72)【発明者】
【氏名】打越 大喜
(72)【発明者】
【氏名】福島 敏夫
【テーマコード(参考)】
3C034
【Fターム(参考)】
3C034BB91
3C034CB01
3C034DD07
(57)【要約】
【課題】 本発明は、作業者が加工処理及び測定処理のために介入することを抑制した研削盤等を提供する。
【解決手段】 研削盤1は、複数のワークに対して加工処理及び測定処理を行う。作業者は、研削盤1に対して、プログラム、加工条件及び測定条件などを特定して初期ワークの加工処理及び測定処理を行う。新規作成部7は、ワークデータ記憶部9に、初期ワークの加工処理及び測定処理のためのプログラム、加工条件及び測定条件などを特定するデータを記憶する。自動作成部11は、初期ワークの加工処理及び測定処理を行うために使用したプログラム、加工条件及び測定条件などを利用して、加工処理及び測定処理を行うための加工・測定プログラムを自動生成する。加工処理部3は、初期ワークとは異なる複数のワークに対して、自動作成部11が自動生成した加工・測定プログラムを利用して加工処理及び測定処理を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のワークに対して加工処理及び測定処理を行う研削盤であって、
当該研削盤は、初期ワークに対して加工処理及び測定処理を行い、その後に、複数のワークを含む連続処理ワーク群に対して加工処理及び測定処理を行うものであり、
当該研削盤は、ワークデータ記憶部と、自動作成部と、加工処理部を備え、
前記ワークデータ記憶部は、作業者が前記初期ワークの加工処理及び測定処理を行うために使用したプログラム、加工条件及び測定条件を特定するデータを記憶し、
前記自動作成部は、前記初期ワークの加工処理及び測定処理を行うために使用したプログラム、加工条件及び測定条件を利用して、加工処理及び測定処理を行うための加工・測定プログラムを生成し、
前記加工処理部は、前記連続処理ワーク群の各ワークに対して、前記自動作成部が生成した加工・測定プログラムを利用して加工処理及び測定処理を行う、研削盤。
【請求項2】
前記加工処理部は、前記自動作成部が生成した加工・測定プログラムを利用して加工処理及び測定処理を行ったときに、追加工を行うか否かを判定して、追加工を行うと判定したならば追加工を行い、追加工を行なわないと判定したならば追加工を行わない、請求項1記載の研削盤。
【請求項3】
前記加工処理部は、前記自動作成部が生成した加工・測定プログラムを利用して加工処理及び測定処理を行ったときに、測定結果が公差範囲内にあるか否かを判定し、公差範囲内にあるならば追加工を行うか否かを判定して、追加工を行うと判定したならば追加工を行い、追加工を行なわないと判定したならば追加工を行わない、請求項2記載の研削盤。
【請求項4】
複数のワークに対して加工処理及び測定処理を行う研削盤における連続加工方法であって、
前記研削盤は、加工処理部と、新規作成部と、ワークデータ記憶部と、自動作成部を備え、
前記新規作成部が、前記ワークデータ記憶部に、前記加工処理部が初期ワークに対して加工処理及び測定処理を行うときの工具情報、プログラム、加工条件及び測定条件を特定するデータを記憶する初期ステップと、
前記自動作成部が、前記ワークデータ記憶部に記憶された工具情報、プログラム、加工条件及び測定条件を特定するデータを利用して、加工処理及び測定処理を行うための加工・測定プログラムを生成するプログラム自動生成ステップと、
前記加工処理部が、前記初期ワークとは異なるワークに対して、前記自動作成部が生成した加工・測定プログラムを利用して加工処理及び測定処理を行う後続加工ステップを含む連続加工方法。
【請求項5】
複数のワークに対して加工処理及び測定処理を行う研削盤における加工・測定プログラムを生成するプログラム生成方法であって、
前記研削盤が備える自動作成部が、初期ワークの加工処理及び測定処理を行うために使用したプログラム、加工条件及び測定条件を利用して、前記初期ワークとは異なるワークに対して加工処理及び測定処理を行うための加工・測定プログラムを生成するプログラム自動生成ステップを含むプログラム生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研削盤、連続加工方法及びプログラム生成方法に関し、特に、複数のワークに対して加工処理及び測定処理を行う研削盤等に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、加工条件に応じたプログラムにより制御して研削加工を実現することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、複数の工程を含む加工処理を行う場合に、研削盤の作業者は、通常、ある工程での測定結果に応じて続く工程の加工条件などを修正する。そのため、加工を行っている間、作業者が立ち会う必要があった。
【0005】
よって、本発明は、作業者が加工処理及び測定処理のために介入することを抑制した研削盤等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明の第1の観点は、複数のワークに対して加工処理及び測定処理を行う研削盤であって、当該研削盤は、初期ワークに対して加工処理及び測定処理を行い、その後に、複数のワークを含む連続処理ワーク群に対して加工処理及び測定処理を行うものであり、当該研削盤は、ワークデータ記憶部と、自動作成部と、加工処理部を備え、前記ワークデータ記憶部は、作業者が前記初期ワークの加工処理及び測定処理を行うために使用したプログラム、加工条件及び測定条件を特定するデータを記憶し、前記自動作成部は、前記初期ワークの加工処理及び測定処理を行うために使用したプログラム、加工条件及び測定条件を利用して、加工処理及び測定処理を行うための加工・測定プログラムを生成し、前記加工処理部は、前記連続処理ワーク群の各ワークに対して、前記自動作成部が生成した加工・測定プログラムを利用して加工処理及び測定処理を行う。
【0007】
本願発明の第2の観点は、第1の観点の研削盤であって、前記加工処理部は、前記自動作成部が生成した加工・測定プログラムを利用して加工処理及び測定処理を行ったときに、追加工を行うか否かを判定して、追加工を行うと判定したならば追加工を行い、追加工を行なわないと判定したならば追加工を行わない。
【0008】
本願発明の第3の観点は、第2の観点の研削盤であって、前記加工処理部は、前記自動作成部が生成した加工・測定プログラムを利用して加工処理及び測定処理を行ったときに、測定結果が公差範囲内にあるか否かを判定し、公差範囲内にあるならば追加工を行うか否かを判定して、追加工を行うと判定したならば追加工を行い、追加工を行なわないと判定したならば追加工を行わない。
【0009】
本願発明の第4の観点は、複数のワークに対して加工処理及び測定処理を行う研削盤における連続加工方法であって、前記研削盤は、加工処理部と、新規作成部と、ワークデータ記憶部と、自動作成部を備え、前記新規作成部が、前記ワークデータ記憶部に、前記加工処理部が初期ワークに対して加工処理及び測定処理を行うときの工具情報、プログラム、加工条件及び測定条件を特定するデータを記憶する初期ステップと、前記自動作成部が、前記ワークデータ記憶部に記憶された工具情報、プログラム、加工条件及び測定条件を特定するデータを利用して、加工処理及び測定処理を行うための加工・測定プログラムを生成するプログラム自動生成ステップと、前記加工処理部が、前記初期ワークとは異なるワークに対して、前記自動作成部が生成した加工・測定プログラムを利用して加工処理及び測定処理を行う後続加工ステップを含む。
【0010】
本願発明の第5の観点は、複数のワークに対して加工処理及び測定処理を行う研削盤における加工・測定プログラムを生成するプログラム生成方法であって、前記研削盤が備える自動作成部が、初期ワークの加工処理及び測定処理を行うために使用したプログラム、加工条件及び測定条件を利用して、前記初期ワークとは異なるワークに対して加工処理及び測定処理を行うための加工・測定プログラムを生成するプログラム自動生成ステップを含むプログラム生成方法。
【発明の効果】
【0011】
本願発明の各観点によれば、初期ワークに対する加工処理及び測定処理を実現するための加工・測定プログラムを生成するときに使用したプログラム、加工条件及び測定条件を特定するデータを記憶しておき、後続のワークの加工においては初期ワークのときのデータを利用して加工・測定プログラムを自動生成することにより、人の介入を抑制して連続加工を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本願発明の実施の形態に係る研削盤の構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】
図1の研削盤1における(a)1回目の加工処理及び(b)2回目以降の加工処理の一例を示すフロー図である。
【
図3】(a)追加工について説明するためのフロー図と、(b)具体例を説明するための図である。
【
図4】連続加工の加工・測定プログラムを生成する設定を行うための画面を示す。
【
図6】「測定方法」ボタン55をタップしたときに表示される画面である。
【
図7】「O1606」の工程を指定したときの表示例である。
【
図10】測定条件(加工中・加工後)を設定するためのものである。
【
図11】具体的な動作の一例を説明するための図である。
【
図12】連続加工について説明するための図である。
【
図14】
図13の「連続加工」ボタン67をタップすると表示される運転状況画面である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例0014】
図1は、本願発明の実施の形態に係る研削盤の構成の一例を示すブロック図である。
図1を参照して研削盤1の構成を説明する。
【0015】
研削盤1は、加工処理部3と、設定処理部5と、新規作成部7と、ワークデータ記憶部9と、自動作成部11を備える。
【0016】
新規作成部7は、工具情報保存部21と、プログラム保存部23と、加工条件保存部25と、測定条件保存部27を備える。
【0017】
ワークデータ記憶部9は、M個(Mは自然数)の個別ワークデータ31を記憶する。各個別ワークデータ31は、工具情報特定データ33と、一つ又は複数のプログラム特定データ35、加工条件特定データ37及び測定条件特定データ39の組み合わせを含む。個別ワークデータ311は、工具情報特定データ331と、n個のプログラム特定データ351i、加工条件特定データ371i及び測定条件特定データ391iの組み合わせ(nは自然数であり、iはn以下の自然数)を含む。
【0018】
自動作成部11は、自動作成処理部41と、プログラム選択部45と、加工条件選択部47と、測定条件選択部49を備える。
【0019】
設定処理部5は、研削盤1の作業者の指示に従い、加工処理(切削、研削など)・測定処理に必要な処理を行う。加工処理部3は、加工・測定プログラムに従ってワークに対する加工処理・測定処理を行う。加工処理は、内径加工でも、外径加工でも、内径及び外径の加工でもよい。
【0020】
ワークに対しては、複数の工程によって加工処理(切削、研削など)が行われる。例えば粗加工と仕上げ加工を行う場合に、第1工程が粗加工、第2工程が仕上げ加工である。
【0021】
従来の加工処理では常に人が介入する必要があった。例えばワークに対して粗加工と仕上げ加工を行うとする。作業者は、まず、粗加工のための加工・測定プログラムを呼び出し、目的の寸法公差内となるまで加工処理と測定処理を繰り返し行う。粗加工が終わると、粗加工の測定結果から仕上げ加工のための加工条件を作成して、工具摩擦があれば摩耗量を算出して補正を行い、粗加工とは異なる加工・測定プログラムを呼び出し、目的の寸法公差内となるまで作成した加工処理と測定処理を繰り返し行う。作業者は、仕上げ加工のための加工条件の作成、摩耗量による補正などのために介入する必要があった。
【0022】
発明者は、あるワークに対して加工・測定処理(1回目の加工等処理)を行った場合に、異なるワークに対して同様に加工・測定処理(2回目以降の加工等処理)を行うときに、1回目の加工等処理を活用して2回目以降の加工等処理を実現することができることに着目した。すなわち、2回目以降の加工等処理における加工条件の作成、摩耗量による補正などの処理は、1回目の加工等処理と同様に行うことができることに着目した。
【0023】
本実施例では、新規作成部7、ワークデータ記憶部9及び自動作成部11を追加する。新規作成部7は、ワークデータ記憶部9に対して、1回目の加工・測定処理において使用した、工具情報、加工・測定プログラム、加工条件及び測定条件を特定するための情報を保存する。工具情報は、加工・測定プログラムに紐づける。自動作成部11は、ワークデータ記憶部9に記憶された、1回目の加工・測定処理において使用した工具情報、加工・測定プログラム、加工条件及び測定条件を利用して、2回目以降の加工等処理に必要なプログラムを自動生成する。本実施例によれば、2回目以降の加工等処理において、加工開始から完了まで人が介入せず連続で加工することができる。そのため、トータルの加工時間を大幅に短縮することができる。
【0024】
発明者らは、本実施例の装置を利用し、最初のワークでは従来と同様に立ち会い、続いて4つのワークに対して加工・測定プログラムを自動生成して連続加工した。立ち会いのときには145分の加工時間がかかり、そのうち86分が人の作業であった。連続加工のワークの一つでは、加工時間は84分であり、そのうち人の作業はワークの取り換えなどの5分であった。このように、大幅に時間を短縮することができる。ここで、内径の誤差は、φ14.568に対して、立ち会いでは0.0028であったところ、連続加工時には、-0.0007から-0.0010の範囲であった。そのため、自動生成された加工・測定プログラムでも、十分な加工精度が得られている。
【0025】
なお、加工中は、砥石やバイトの摩耗が発生して、予定より切込み量が不足する場合がある。加工面の測定を随時行って狙い寸法との誤差を自動で判断し、不足と判断した場合、加工のリトライ処理を行って追加工処理を行って工具摩耗による切込み不足分を解決する。
【0026】
例えば、3つのワーク(第1ワーク、第2ワーク及び第3ワーク)に対して、粗加工及び仕上げ加工を行うとする。
【0027】
研削盤1の作業者は、第1ワークに対しては、従来と同様の指示を行って加工処理を行う。
【0028】
作業者は、第1ワークを研削盤1に取り付けて工具情報を入力する。工具情報保存部21は、ワークデータ記憶部9に、工具情報を特定するための工具情報特定データ331を記憶する。
【0029】
作業者は、粗加工及び仕上げ加工のための加工・測定プログラムを個別に特定する。プログラム保存部23は、ワークデータ記憶部9に、粗加工及び仕上げ加工のための加工・測定プログラムを特定するための工程1プログラム特定データ3511及び工程2プログラム特定データ3512をそれぞれ記憶する。
【0030】
作業者は、粗加工のための加工条件及び測定条件を入力する。加工条件保存部25及び測定条件保存部27は、それぞれ、ワークデータ記憶部9に、粗加工のための加工条件及び測定条件を特定するための工程1加工条件特定データ3711及び工程1測定条件特定データ3911を記憶する。
【0031】
加工処理部3は、入力された工具情報、粗加工のための加工・測定プログラム、加工条件及び測定条件を利用して第1ワークに対する粗加工を行う。
【0032】
粗加工が終わると、作業者は、粗加工での測定結果を利用して、仕上げ加工のための加工条件及び測定条件を入力する。加工条件保存部25及び測定条件保存部27は、それぞれ、ワークデータ記憶部9に、仕上げ加工のための加工条件及び測定条件を特定するための工程2加工条件特定データ3712及び工程2測定条件特定データ3912を記憶する。
【0033】
加工処理部3は、入力された工具情報、仕上げ加工のための加工・測定プログラム、加工条件及び測定条件を利用して第1ワークに対する仕上げ加工を行う。
【0034】
これにより、第1ワークに対する加工処理を行うことができる。
【0035】
作業者は、第1ワークに対する加工処理が終わると、2回目以降の加工処理であって連続加工であることを指示する。
【0036】
作業者は、粗加工のために、工程1プログラム特定データ3511、工程1加工条件特定データ3711及び工程1測定条件特定データ3911を選択する。自動作成処理部41は、ワークデータ記憶部9から、工程1プログラム特定データ3511に紐づけられた工具情報特定データ331を読み出す。プログラム選択部45、加工条件選択部47及び測定条件選択部49は、それぞれ、工程1プログラム特定データ3511、工程1加工条件特定データ3711及び工程1測定条件特定データ3911を読み出す。
【0037】
作業者は、仕上げ加工のために、工程2プログラム特定データ3512、工程2加工条件特定データ3712及び工程2測定条件特定データ3912を選択する。自動作成処理部41は、ワークデータ記憶部9から、工程2プログラム特定データ3512に紐づけられた工具情報特定データ331を読み出す。プログラム選択部45、加工条件選択部47及び測定条件選択部49は、それぞれ、工程2プログラム特定データ3512、工程2加工条件特定データ3712及び工程2測定条件特定データ3912を読み出す。
【0038】
自動作成処理部41は、読み出した工具情報特定データ331、粗加工のための工程1プログラム特定データ3511、工程1加工条件特定データ3711及び工程1測定条件特定データ3911を利用して第2ワーク及び第3ワークに対する粗加工を行うための粗加工用プログラムを自動生成する。
【0039】
自動作成処理部41は、読み出した工具情報特定データ331、仕上げ加工のための工程2プログラム特定データ3512、第2加工条件特定データ3712及び第2測定条件特定データ3912を利用して第2ワーク及び第3ワークに対する仕上げ加工を行うための仕上げ加工用プログラムを自動生成する。
【0040】
作業者は、第1ワークを第2ワークに交換して、連続加工を指示する。
【0041】
加工処理部3は、生成された粗加工用プログラムに従って第2ワークに対する粗加工を行い、生成された仕上げ加工用プログラムに従って第2ワークに対する仕上加工を行う。
【0042】
これにより、第2ワークに対して、作業者が介入せずに、粗加工と仕上げ加工の連続加工処理を行うことができる。
【0043】
作業者は、第2ワークに対する加工処理が終わると、第2ワークを第3ワークに交換して、連続加工を指示する。加工処理部3は、生成された粗加工用プログラムに従って第3ワークに対する粗加工を行い、生成された仕上げ加工用プログラムに従って第3ワークに対する仕上げ加工を行う。これにより、第3ワークに対して、作業者が介入せずに、粗加工と仕上げ加工の連続加工処理を行うことができる。
【0044】
図2は、
図1の研削盤1における(a)1回目の加工処理及び(b)2回目以降の加工処理の一例を示すフロー図である。
図2を参照して研削盤1の動作の一例を説明する。
【0045】
図2(a)を参照して、1回目の加工処理について説明する。
図1の個別ワークデータ31
1は、この例でのワークに対するデータを含むとする。ここで、この例でのワークの加工処理には、n個(nは自然数)の工程が含まれているとする。
【0046】
作業者は、研削盤1の所定の場所に工具を配置し、必要に合わせ成形する(ステップSTA1)。
【0047】
作業者は、ワークを取り付け、芯出しを行う(ステップSTA2)。
【0048】
作業者は、工具座標などの工具情報を設定する(ステップSTA3)。工具情報保存部21は、ワークデータ記憶部9に、工具情報を特定するための工具情報特定データ331を記憶する。
【0049】
作業者は、工程1から工程nについて、加工・測定プログラムを個別に特定する。また、作業者は、工程1から工程nのための加工条件及び測定条件を入力する。設定処理部5は、加工・測定プログラムを生成する(ステップSTA4)。プログラム保存部23、加工条件保存部25及び測定条件保存部27は、ワークデータ記憶部9に、工程j(jはn以下の自然数)のための加工・測定プログラムに対応して、工程jプログラム特定データ351jを記憶する。
【0050】
加工処理部3は、作業者による設定処理部5に対する指示に従い、素材測定を行う(ステップSTA5)。ここで、端面及び内径を測定する。
【0051】
加工処理部3は、作業者による設定処理部5に対する指示に従い、加工テストを行う(ステップSTA6)。
【0052】
加工処理部3は、変数iの初期値を1とする(ステップSTA7)。
【0053】
加工処理部3は、加工・測定プログラムに従い、工程iの加工処理及び加工後の機内測定処理を行う(ステップSTA8及びSTA9)。作業者は、通常、ワークの状態に応じて、事前に定めた工程iの加工処理及び加工後の機内測定処理を調整する。例えば加工処理が不足しているならば、加工処理を繰り返し行うなどを行う。加工条件保存部25及び測定条件保存部27は、工程iがワークデータ記憶部9に、作業者が工程iの加工処理及び/又は加工後の機内測定処理を調整した後の工程i加工条件特定データ371i及び工程i測定条件特定データ391iを記憶する。
【0054】
作業者が工程を終了したならば、処理を終了する(ステップSTA10)。作業者が処理を継続する場合には、形状・面粗度確認などを行い(ステップSTA11)、iを1増加して(ステップSTA12)、ステップSTA8に戻る。
【0055】
図2(b)を参照して、2回目以降の加工処理について説明する。
【0056】
作業者は、設定処理部5に対し、連続加工のための設定を行う(ステップSTB1)。作業者は、ワークデータ記憶部9に記憶されたデータから、工程i(iはn以下の自然数)のそれぞれに対応して、工程iプログラム特定データ35
1i、工程i加工条件特定データ37
1i及び工程i測定条件特定データ39
1iを選択する。
図4以降を参照して具体例を説明する。プログラム選択部45、加工条件選択部47及び測定条件選択部49は、ワークデータ記憶部9から、作業者により工程iのそれぞれに対応して選択された、工程iプログラム特定データ35
1i、工程i加工条件特定データ37
1i及び工程i測定条件特定データ39
1iを読み出し、自動作成部11は、工程iに紐づけられた工具情報特定データ33
1を読み出す。自動作成部11は、工程iのための加工・測定プログラムを自動生成する。
【0057】
作業者は、新しいワークを取り付け、芯出しなどを行う(ステップSTB2)。
【0058】
加工処理部3は、工具情報特定データ331を利用して工具座標を設定することなどを行う(ステップSTB3)。
【0059】
加工処理部3は、素材測定を行う(ステップSTB4)。ここで、例えば、端面、内径、外径などを測定する。
【0060】
加工処理部3は、変数nを工程数とし、変数iの初期値を1とする(ステップSTB5)。
【0061】
加工処理部3は、自動生成された加工・測定プログラムに従い、工程iの加工処理及び加工後の機内測定処理を行う(ステップSTB6及びSTB7)。
【0062】
ステップSTB8において、加工処理部3は、iがnであるか否かを判定する。
【0063】
iがnでないならば、加工中測定(形状・面粗度確認など)を行い(ステップSTB9)、iを1増加し(ステップSTB10)、ステップSTB6に戻る。
【0064】
iがnであれば、次のワークに対する連続加工処理の指示があるか否かを判断する(ステップSTB11)。次のワークに対する連続加工処理の指示がないならば、処理を終了する。次のワークに対する連続加工処理の指示があるならば、作業者によるワーク交換を待ち(ステップSTB12)、ステップSTB4に戻る。なお、ステップSTB12のワーク交換は、例えばロボットなどを利用して作業者を介入しないようにしてもよい。
【0065】
図3は、追加工について説明するための図である。
図3(a)は、
図2(b)のステップSTB7の処理の一例を示すフロー図である。
【0066】
図3(a)を参照して、加工処理部3は、機内測定を行い(ステップSTC1)、測定結果を用いて、複数の測定結果のバラつきが許容でき、かつ、各測定結果が公差範囲内にあるか否かを判定する(ステップSTC2)。バラつきが許容できない、又は、いずれかの測定結果が公差範囲内にないならば、エラー処理を行って処理を終了する(ステップSTC3)。複数の測定結果のバラつきが許容でき、かつ、いずれの測定結果も公差範囲内にあるならば、追加工を行うか否かを判断する(ステップSTC4)。追加工を行うならば、追加工を行い(ステップSTC5)、ステップSTC1の測定処理に戻る。追加工を行わないならば、ステップSTB8に進む。
【0067】
図3(b)を参照して、具体的に説明する。例えば、内径加工を行うときに、内径3点測定を行う。φ14.995を公差中央(狙い寸法)とし、公差範囲を-方向が-0.005、+方向が+0.005とする。追加工範囲を、-方向が-0.002、+方向が+0.002とする。また、バラつき許容値を0.002とする。
【0068】
ある測定点での加工結果がφ14.990未満であれば-エラー範囲にあり、φ15.000よりも大きければ+エラー範囲にあるとして、公差範囲を外れていてエラーが生じたとする(ステップSTC2のNO)。他方、加工結果がφ14.990以上φ15.000以下であれば、公差範囲内にあると判断する(ステップSTC2のYES)。公差範囲内にあっても、φ14.990以上φ14.993以下であれば追加工を行うとし(ステップSTC4のYES)、φ14.993よりも大きければ追加工を行わないとする(ステップSTC4のNO)。内径加工であるため、追加工は、-方向のもののみを考慮して判断する。
【0069】
また、内径3点測定のバラつきが許容できる範囲ならば、エラーが生じていないとする(ステップSTC2のYES)。例えば、加工結果の3点の測定値が、φ14.994、φ14.994及びφ14.995であれば最大最小差は0.001であり、バラつき許容値よりも小さいため、バラつきが許容される。他方、内径3点測定のバラつきが許容できない範囲ならば、エラーが生じたとする(ステップSTC2のNO)。例えば、加工結果の測定値が、φ14.992、φ14.993及びφ14.995であれば最大最小差は0.003であり、バラつき許容値よりも大きいため、バラつきが許容されない。なお、バラつきの判断は、例えば一点の測定を行う場合などでは行わないように、必要に応じて行わないようにしてもよい。
【0070】
図2のステップSTB7により、ある工程で複数の測定を行う場合に、各測定結果が公差範囲にあり、かつ、バラつきが許容されるならば、エラーがないと判断する。他方、いずれかの測定結果が公差範囲になかったり、バラつきが許容されなかったりするならば、エラーとする。なお、エラーがあっても、リトライ回数内でリトライするようにしてもよい。リトライの測定をしても解決できなかった場合にはアラーム停止する。
【0071】
図4から
図10を参照して、作業者の入力画面を用いて具体的に説明する。作業者の入力画面は、タッチパネルにて実現されている。
【0072】
図4は、「連続加工」ボタン51をタップした場合に表示される、連続加工の加工・測定プログラムを生成する設定を行うための画面を示す。「プログラム名」の欄には、作成する加工・測定プログラムの名称を記載する。また、工程、エアブロ条件、測定条件(加工前)、工程間加工条件、測定設定、測定条件(加工中・後)の設定をすることができる。
【0073】
図5は、工程設定を説明するための図である。
図4の「工程追加」ボタン53をタップすると、
図5(a)にあるように、ワークデータ記憶部9に記憶された工程の一覧を表示する。作業者が表示された一覧から連続加工に必要な工程を選択する。例えば作業者が「O1606」の工程を選択すると、
図5(b)にあるように、工程1に「O1606」の工程が追加される。なお、工程を削除したり、次の工程に複写したり、工程の順番を変更したりすることができる。ここで、機内機器の破損を防ぐため、工程に追加できるものは、未加工プログラム(一度もプログラム確認を行っていないもの)は選択しても追加できないこととしている。作業者が「工程設定」にある工程を選択すると、選択された工程の詳細が「エアブロ条件」、「測定条件(加工前)」、「工程間加工条件」、「測定設定」、「測定条件(加工中・後)」に表示される。
【0074】
連続加工では、測定を行う際に、ワークや測定子についた切粉、クーラントを除去して安定した測定を行うために、クーラントブロー及びエアブロを行う。
図4において「エアブロ条件」の設定は、エアブロの設定を行うためのものであり、チャック清掃、刃物台エアブロ(奥及び手前)について設定する。
【0075】
図4において、「測定条件(加工前)」は、加工開始位置をチェックするために、連続加工前の測定として、取り付けた素材の端面及び内径を加工前に測定し、設定範囲内の素材であることを確認する(ステップSTB4参照)。設定範囲外の素材であればアラーム停止する。
【0076】
「端面」の測定の設定について説明する。
図6の「ワークの選択」画面は、作業者が「測定方法」ボタン55をタップしたときに表示される画面である。1回目の加工において使用した設定が保存されている(ステップSTA5参照)。作業者が取り付けた素材の1回目の加工で使用した設定を選択して「OK」ボタンをタップすると、「許容範囲(±)」及び「測定リトライ回数」の項目が設定できるようになる。「許容範囲(±)」は、1回目の対象ワークの測定時の端面測定結果を「0」として、2回目以降の連続加工時の端面測定を行った結果が「許容範囲(±)」の範囲内であれば、工程設定で使用されているツール番号のZジオメトリを結果分オフセットして加工を行う。リトライ回数は、許容範囲外の結果となった場合に、リトライ回数の測定のリトライを行い、リトライ回数を超えても許容範囲内に入らなければアラーム停止する。
【0077】
「内径」の測定の設定についても同様に設定することができる。作業者が「内径」の「測定方法」ボタンをタップすると、作業者は保存された設定を選択できるようになり、作業者が設定を選択すると、「許容範囲(+)」及び「測定リトライ回数」を設定できるようになる。
【0078】
「工程間加工条件」の設定について説明する。「工程設定」に表示されている工程の一つを選択すると、「工程間加工条件」には、選択された工程の加工条件が表示される。
図7は、「O1606」の工程を指定したときの表示例である。作業者は、この欄を利用して、加工条件を編集することができる。加工後測定を行う場合には、「工具補正係数[%]」及び「追加工リトライ回数」を設定する。なお、エアカットは、取り付けた素材が初期切れ込み位置から余分当たるおそれがある場合に、逃がし量として初期値に加算するために設定する。工具補正係数は、加工後測定を設定した場合、狙い寸法との誤差に対して補正を行うためのものである。追加工リトライ回数は、追加工リトライ回数の追加工処理を行っても狙い寸法に入らない場合に、アラーム停止するためのものである。
【0079】
図8は、「測定設定」の表示例である。「測定設定」について説明する。「測定設定」は、連続加工の各工程に必要な測定を追加・変更するためのものである。最大5個の測定を追加でき、追加した測定は加工後測定ですべて使用する。ただし、加工中測定は、星印がついた測定を「基準測定」として使用する。「測定追加」ボタンや表示されている測定方法をタップすると、
図9のワーク選択ダイアログが表示される。「測定削除」ボタンを利用して、測定設定に登録されている測定方法を削除することができる。
【0080】
図10は、測定条件(加工中・加工後)を設定するためのものである。「測定方法」ボタン58をタップすることにより、測定方法を設定する。対象ワークの測定項目を設定して連続加工中及び加工後の測定を行い、狙い寸法まで自動で仕上げ加工を行うことができる。狙い寸法から外れたり、設定した研削比を下回ったりすると、アラーム停止する。「公差範囲(径方向)」、「追加工範囲」、「バラつき許容値」は、
図3を用いて説明したものである。
【0081】
また、「素材寸法変化量確認」を設定し、加工前測定(内径)において素材測定を行った際の測定結果に対し、この項目で設定された値以上の寸法変化があった際に寸法変化がありとする。リトライ回数内の加工を行っても寸法が変化しない場合はアラーム停止する。初期位置設定ミスや砥石欠損などによる空振り加工を防ぐことができる。
【0082】
「工程間寸法差」は、各工程間において追加する測定の狙い寸法を調整する際に使用する。
【0083】
「加工中測定」は、初期位置から最終切込位置までの間で切り込み量の累積が「測定間隔」で設定された値に到達すると測定を行うものである。累積が「測定間隔」未満であれば測定を行わない。測定リトライ回数は、加工中測定で測定結果が設定した研削比を下回る場合やバラつき許容値以上の寸法差が生じた場合にリトライする回数である。「目標研削比」は、素材寸法変化量で設定した値を上回った際の結果を記憶し、次回の加工中測定での測定結果との差において確認する研削比である。
【0084】
「加工後測定」は、初期位置から最終切込位置までに設定された加工が終了した後、測定を行い、狙い寸法まで追加工をする機能である。
【0085】
図4の各項目を設定すると、作業者は、「OLIST登録」ボタン57をタップし、プログラムを登録する。OLISTに登録することにより、連続加工を行っているときに加工条件を変更することができ、また、再編集することができるようになる。
【0086】
【0087】
図11(a)より、工程2の「工程間加工条件」では、切込量が-0.00300、初期位置が0.28600、最終切込位置が0.27100である。そのため、0.00300の加工を5パス行い、初期位置から最終切込位置まで加工を行う。ここで、「加工中測定」の測定間隔では0.01000であり、0.01000を超えたパスのときに加工中測定を行う。測定方法は、「測定設定」で星印が付いたものである。
【0088】
図11(b)より、工程2の加工開始の初期位置は0.28600である。4回切り込んで-0.01200切り込むと、0.27400となる。測定間隔0.01000を超えるため、この段階で加工中測定を行う。そして、5パス目の加工を行い、最終切込位置0.271000となる。
【0089】
その後、加工後の測定として、内径を測定し、内径テーパ測定を行う。
【0090】
【0091】
図12を参照して、「本機運転」ボタン61をタップし、「メモリ運転」ボタン63をタップし、「ファイル選択」ボタン65をタップすると、OLISTファイル内のファイル選択画面となる。ここでは、「O0001」を選択する。
【0092】
タップ後は、
図13の本機運転のメイン画面に戻る。作業者は、ワークを設置して、本機の操作盤に設けられたスタートボタンを押して加工を実行する。
【0093】
図14は、
図13の「連続加工」ボタン67をタップすると表示される運転状況画面である。確認したい項目をタップすると、詳細を確認することができる。
図15は加工前測定結果の表示画面であり、
図16は工程加工条件の表示画面であり、
図17は加工後測定結果の表示画面である。
1 研削盤、3 加工処理部、5 設定処理部、7 新規作成部、9 ワークデータ記憶部、11 自動作成部、21 工具情報保存部、23 プログラム保存部、25 加工条件保存部、27 測定条件保存部、31 個別ワークデータ、33 工具情報特定データ、35 プログラム特定データ、37 加工条件特定データ、39 測定条件特定データ、41 自動作成処理部、45 プログラム選択部、47 加工条件選択部、49 測定条件選択部、51 「連続加工」ボタン、53 「工程追加」ボタン、55 「測定方法」ボタン、57 「OLIST登録」ボタン、58 「測定方法」ボタン、61 「本機運転」ボタン、63 「メモリ運転」ボタン、65 「ファイル選択」ボタン、67 「連続加工」ボタン