(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183048
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 2/24 20060101AFI20221201BHJP
C08F 236/12 20060101ALI20221201BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20221201BHJP
A41D 13/08 20060101ALI20221201BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20221201BHJP
A41D 19/015 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C08F2/24
C08F236/12
C08F2/44 C
A41D13/08 101
A41D19/00 P
A41D19/015 110Z
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022082372
(22)【出願日】2022-05-19
(31)【優先権主張番号】10-2021-0067978
(32)【優先日】2021-05-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】516298504
【氏名又は名称】コリア クンホ ペトロケミカル カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Korea Kumho Petrochemical Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】100,Cheonggyecheon-ro,Jung-gu,Seoul,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョン,スン フン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョン ウォン
(72)【発明者】
【氏名】カン,ユンソ
【テーマコード(参考)】
3B011
3B033
4J011
4J100
【Fターム(参考)】
3B011AA06
3B011AB01
3B011AC04
3B011AC17
3B033AB06
3B033AB10
3B033AC01
4J011AA01
4J011AA05
4J011KA04
4J011KB29
4J011PA53
4J011PB40
4J011PC03
4J011PC06
4J100AJ02R
4J100AM02Q
4J100AS02P
4J100CA05
4J100FA20
4J100JA50
4J100JA60
4J100JA64
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ニトリル系共重合体ラテックス重合工程に使用される乳化剤含量を低減するとともに、機械的安定性及び重合安定性に優れたディップ成形用ラテックス組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】(a)共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階、(b)無機溶媒、乳化剤及びデンプンを含む添加剤を前記モノマー混合物に投入する段階、及び(c)前記モノマー混合物を重合して共重合体ラテックスを製造する段階を含み、前記デンプン含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1~4.9重量部である、ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階と、
(b)無機溶媒、乳化剤及びデンプンを含む添加剤を前記モノマー混合物に投入する段階と、
(c)前記モノマー混合物を重合して共重合体ラテックスを製造する段階と、を含み、
前記デンプン含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1~4.9重量部である、ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項2】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つである、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項3】
前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つである、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項4】
前記エチレン性不飽和酸モノマーは、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つである、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項5】
前記乳化剤は、イオン性界面活性剤である、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項6】
前記乳化剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つである、請求項5に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項7】
前記乳化剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecylbenzene sulfonate)及びジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネート(disodium alkyl diphenyloxide sulfonate)を含む、請求項5に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項8】
前記乳化剤含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1~2.9重量部である、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項9】
前記デンプンは、天然デンプン、前記天然デンプンの誘導体、前記天然デンプンから抽出されたアミロース、変性デンプン、デキストリン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つである、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項10】
前記デキストリンのデキストロース当量(dextrose equivalent)は、8~22である、請求項9に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項11】
前記デンプン含量は、前記乳化剤含量の0.25~2倍である、請求項1に記載のディップ成形用ラテックス組成物の製造方法。
【請求項12】
請求項1に記載の製造方法により製造された、ディップ成形用ラテックス組成物。
【請求項13】
請求項12に記載のディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造された、ディップ成形品。
【請求項14】
前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋からなる群から選ばれる1つである、請求項13に記載のディップ成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ディップ成形用ラテックス組成物、その製造方法及びそれにより製造されたディップ成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用、農畜産物加工用、産業用に使用されている手袋の主原料は、天然ゴムラテックスであった。しかし、天然ゴムラテックスから製造された手袋を使用する場合、天然ゴムラテックスに含まれたタンパク質により手袋の使用者が接触性アレルギー疾患を患う問題が頻繁に発生した。そこで、ニトリル系共重合体ラテックスのようにタンパク質を含まない合成ゴムラテックスを適用して手袋を製造しようとする試みがなされた。
【0003】
ニトリル系共重合体ラテックスは、乳化重合によって製造され、乳化重合工程に使用される乳化剤(surfactant)は、重合場所を提供し、粒子の安定性を維持する役割を果たす。通常の乳化重合工程において、アニオン乳化剤を3~5phm(parts per hundred parts monomer)程度で使用する場合、重合物の重合安定性、粒径、ラテックスの機械的安定性及び貯蔵安定性に優れたラテックスが得られることが知られている。
【0004】
しかし、乳化剤の使用は、手袋製造工程中において過量の泡(foam)を発生させてピンホールを引き起こすことによって製品の品質を低下させることがあり、乳化剤を含む大量の廃水を発生させる原因となる。また、手袋に乳化剤が残留する場合、べたつきの発生など製品の物性が低下することがあり、使用者が手袋を着用して水分に接触したときに泡が発生するか、または滑る現象などの問題が発生することがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書の記載事項は、前述した従来技術の問題点を解決するためのもので、本明細書の一目的は、ニトリル系共重合体ラテックス重合工程に使用される乳化剤含量を低減するとともに、機械的安定性及び重合安定性に優れたディップ成形用ラテックス組成物の製造方法を提供することである。
【0006】
本明細書の他の一目的は、引張強度、伸び率などの機械的物性及び品質に優れたディップ成形用ラテックス組成物及びそれにより製造されたディップ成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様によると、(a)共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階、(b)無機溶媒、乳化剤及びデンプンを含む添加剤を前記モノマー混合物に投入する段階、(c)前記モノマー混合物を重合して共重合体ラテックスを製造する段階を含み、前記デンプン含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1~4.9重量部である、ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法を提供する。
【0008】
一実施例において、前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0009】
一実施例において、前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0010】
一実施例において、前記エチレン性不飽和酸モノマーは、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0011】
一実施例において、前記乳化剤は、イオン性界面活性剤であってもよい。
【0012】
一実施例において、前記乳化剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0013】
一実施例において、前記乳化剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecylbenzene sulfonate)及びジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネート(disodium alkyl diphenyloxide sulfonate)を含むものであってもよい。
【0014】
一実施例において、前記乳化剤含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1~2.9重量部であってもよい。
【0015】
一実施例において、前記デンプンは、天然デンプン、前記天然デンプンの誘導体、前記天然デンプンから抽出されたアミロース、変性デンプン、デキストリン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0016】
一実施例において、前記デキストリンのデキストロース当量(dextrose equivalent)は、8~22であってもよい。
【0017】
一実施例において、前記デンプン含量は、前記乳化剤含量の0.25~2倍であってもよい。
【0018】
他の一態様によれば、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法により製造された、ディップ成形用ラテックス組成物を提供する。
【0019】
さらに他の一態様によれば、前記ディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造された、ディップ成形品を提供する。
【0020】
一実施例において、前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋からなる群から選ばれる1つであってもよい。
【発明の効果】
【0021】
本明細書の一態様によるディップ成形用ラテックス組成物の製造方法は、ニトリル系共重合体ラテックス重合工程に使用される乳化剤含量を低減して環境にやさしく、機械的安定性及び重合安定性に優れているので、安定的なディップ成形用ラテックス組成物の製造に適用されてもよい。
【0022】
本明細書の他の一態様によるディップ成形用ラテックス組成物及びそれにより製造されたディップ成形品は、引張強度、伸び率などの機械的物性及び品質に優れており、医療用手袋、濃縮産物加工用手袋、産業用手袋などの製造に適用されてもよい。
【0023】
本明細書の一態様の効果は、前記効果に限定されるものではなく、本明細書の詳細な説明または請求範囲に記載された構成から推論可能なすべての効果を含むものと理解すべきである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書の記載事項は、様々な異なる形態で具現されてもよく、したがって、ここで説明する実施例に限定されるものではない。
【0025】
明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているとするとき、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の部材を介して「間接的に連結」されている場合も含む。また、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに備えることができるということを意味する。
【0026】
本明細書において数値的値の範囲が記載されているとき、その具体的な範囲が特に言及のない限り、その値は、有効数字に対する化学における標準規則に従って提供された有効数字の精度を持つ。例えば、10は、5.0~14.9の範囲を含み、数字10.0は、9.50~10.49の範囲を含む。
【0027】
ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法
本明細書の一態様によるディップ成形用ラテックス組成物の製造方法は、(a)共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階、(b)無機溶媒、乳化剤及びデンプンを含む添加剤を前記モノマー混合物に投入する段階、及び(c)前記モノマー混合物を重合して共重合体ラテックスを製造する段階を含んでもよい。
【0028】
前記デンプン含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1~4.9重量部であってもよい。例えば、前記デンプン含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1.0重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.8重量部、1.9重量部、2.0重量部、2.1重量部2.2重量部、2.3重量部、2.4重量部、2.5重量部、2.6重量部、2.7重量部、2.8重量部、2.9重量部、3.0重量部、3.1重量部、3.2重量部、3.3重量部、3.4重量部、3.5重量部、3.6重量部、3.7重量部、3.8重量部、3.9重量部、4.0重量部、4.1重量部、4.2重量部、4.3重量部、4.4重量部、4.5重量部、4.6重量部4.7重量部、4.8重量部、4.9重量部またはこれらのうち2つの値の間の値であってもよい。前記デンプン含量が前記モノマー混合物100重量部に対して4.9重量部を超えると、成形品の引張強度、伸び率などの機械的物性及び製品品質が低下することがある。
【0029】
前記(a)段階は、ニトリル系共重合体を構成するモノマーである共役ジエン系モノマー、エチレン性不飽和ニトリルモノマー及びエチレン性不飽和酸モノマーを含むモノマー混合物を準備する段階で、窒素雰囲気下で行われてもよい。
【0030】
前記モノマー混合物は、前記モノマー混合物の総重量を基準に、共役ジエン系モノマー50~98重量%、エチレン性不飽和ニトリルモノマー1~49重量%、及びエチレン性不飽和酸モノマー1~10重量%を含んでもよい。前記モノマー混合物に含まれた各モノマーの含量が前記範囲を外れる場合、成形品が過度に柔らかくなるか、または過度に硬化してディップ成形品の使用者において着用感を低下させるか、またはディップ成形品の耐油性が低下して引張強度が低くなることがある。
【0031】
前記共役ジエン系モノマーは、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、イソプレン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、1,3-ブタジエン(1,3-butadiene)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0032】
前記エチレン性不飽和ニトリルモノマーは、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α-クロロニトリル、α-シアノエチルアクリロニトリル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、アクリロニトリル(acrylonitrile)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記エチレン性不飽和酸モノマーは、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、スチレンスルホン酸、フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ-2-ヒドロキシプロピル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、メタクリル酸(methacrylic acid)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記(b)段階は、無機溶媒、乳化剤及びデンプンを含む添加剤を前記モノマー混合物に投入して乳化重合を準備する段階で、デンプンを添加する場合、重合段階においてデンプンが粒子表面に吸着されて粒子間の反発力が増加し、粒子同士が凝集するのを防止することにより安定性を高めてニトリル系共重合体ラテックス重合に使用される乳化剤含量を減少させることができる。
【0035】
前記無機溶媒は水であってもよく、例えば、イオン交換水であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0036】
前記乳化剤は、イオン性界面活性剤であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、前記乳化剤は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよい。
【0037】
前記乳化剤は、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルオキシドジスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコールの硫酸エステル塩、α-オレフィンスルホン酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0038】
前記乳化剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecylbenzene sulfonate)を含んでもよい。前記ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムは、水に対する溶解度が高く、価格が安くて経済的である長所があるが、単独使用時に泡を多く発生させることがあり、ラテックスの化学的安定性を低下させることがある。
【0039】
前記乳化剤は、ジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネート(disodium alkyl diphenyloxide sulfonate)を含んでもよい。前記ジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネートを乳化剤として用いることにより、重合時のモノマーの凝固を防止し、重合反応の転換率を高めることができる。
【0040】
前記乳化剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecylbenzene sulfonate)及びジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネート(disodium alkyl diphenyloxide sulfonate)を含むものであってもよいが、これに限定されるものではない。前記ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネートを含む乳化剤を用いることにより、前記モノマー混合物及び前記デンプンの凝固を防止し、重合反応の転換率を高めることができ、ラテックス組成物の機械的安定性、化学的安定性及び重合安定性を向上させることができる。
【0041】
前記ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネートの重量比は、1:1~3:1であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、前記ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネートの重量比は、1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1またはこれらのうち2つの重量比の間の比率であってもよい。前記ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネートの重量比が前記範囲を外れる場合、重合反応の転換率が低くなり、機械的安定性が低下することがある。
【0042】
前記乳化剤含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1~2.9重量部であってもよい。例えば、前記乳化剤含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1重量部、0.2重量部、0.3重量部、0.4重量部、0.5重量部、0.6重量部、0.7重量部、0.8重量部、0.9重量部、1.0重量部、1.1重量部、1.2重量部、1.3重量部、1.4重量部、1.5重量部、1.6重量部、1.7重量部、1.8重量部、1.9重量部、2.0重量部、2.1重量部、2.2重量部、2.3重量部、2.4重量部、2.5重量部、2.6重量部、2.7重量部、2.8重量部、2.9重量部またはこれらのうち2つの値の間の値であってもよい。前記乳化剤含量が前記モノマー混合物100重量部に対して0.1重量部未満であると、機械的安定性及び重合安定性が低下することがあり、前記乳化剤含量が前記モノマー混合物100重量部に対して2.9重量部を超えると、成形品の製造工程中において泡発生による製品品質の低下、乳化剤残留による製品物性の低下、乳化剤を含む廃水の発生などの問題点が発生することがある。
【0043】
前記デンプンは、天然デンプン、前記天然デンプンの誘導体、前記天然デンプンから抽出されたアミロース、変性デンプン、デキストリン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、デキストリン(dextrin)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0044】
前記天然デンプンは、一般トウモロコシデンプン、モチトウモロコシデンプン、高アミローストウモロコシデンプン、米デンプン、もち米デンプン、高アミロース米デンプン、ジャガイモデンプン、サツマイモデンプン、タピオカデンプン、キビデンプン、小麦デンプン、サゴ(sago)デンプン、栗デンプン、大豆デンプン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0045】
前記変性デンプンは、ヒドロキシプロピルデンプン、リン酸デンプン、酸化デンプン、糊化デンプン、オクテニルコハク酸置換デンプン、酢酸デンプン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0046】
前記デキストリンは、デンプンを加水分解して得られる低分子量の炭水化物であり、天然デンプンを酸、熱、酵素などで加水分解して得ることができ、商業的に販売されるものを購入して使用してもよい。前記加水分解に使用される酸は、塩酸、硫酸、硝酸または酢酸であってもよいが、これに限定されるものではない。前記酵素は、デンプン加水分解能力のある酵素であれば、どんな酵素でも可能であり、例えば、アルファアミラーゼ、ベータアミラーゼ、グルコアミラーゼ、アミログルコシダーゼ、イソアミラーゼ、フルラナーゼ、アルファグルコシダーゼ及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0047】
前記デキストリンのデキストロース当量(dextrose equivalent、DE)は、8~22であってもよく、例えば、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22またはこれらのうち2つの値の間の値であってもよい。前記デキストリンのデキストロース当量が8未満であると、重合の途中でラテックスゲル化現象が発生して成形品の品質が低下することがあり、前記デキストリンのデキストロース当量が22超過であると、粘度低下及び褐変現象が発生することがある。
【0048】
前記デキストリンの分子量は、1000~10000g/molであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0049】
前記デンプン含量は、前記乳化剤含量の0.25~2倍であってもよい。例えば、前記デンプン含量は、前記乳化剤含量の0.25倍、0.3倍、0.35倍、0.4倍、0.45倍、0.5倍、0.55倍、0.6倍、0.65倍、0.7倍、0.75倍、0.8倍、0.85倍、0.9倍、0.95倍、1倍、1.05倍、1.1倍、1.15倍、1.2倍、1.25倍、1.3倍、1.35倍、1.4倍、1.45倍、1.5倍、1.55倍、1.6倍、1.65倍、1.7倍、1.75倍、1.8倍、1.85倍、1.9倍、1.95倍、2倍またはこれらのうち2値の間の値であってもよい。前記デンプン含量が前記乳化剤含量の0.25倍未満であると、機械的安定性及び重合安定性が低下することがあり、乳化剤の減量による効果が減少してディップ成形品の製造工程中において泡発生による製品品質の低下、乳化剤残留による製品物性の低下、乳化剤を含む廃水の発生などの問題が発生することがある。前記デンプン含量が前記乳化剤含量の2倍を超えると、成形品の引張強度、伸び率などの機械的物性及び製品品質が低下することがある。
【0050】
前記添加剤は、分子量調節剤をさらに含んでもよい。前記分子量調節剤はα-メチルスチレンダイマー、t-ドデシルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、塩化メチレン、臭化メチレンなどのハロゲン化炭化水素、テトラエチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムジスルフィド、ジイソプロピルキサントゲンジスルフィドなどの硫黄含有化合物及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、t-ドデシルメルカプタン(t-dodecyl mercaptan)であってもよいが、これに限定されるものではない。前記分子量調節剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.1~1.0重量部であってもよい。
【0051】
前記(c)段階は、前記モノマー混合物を乳化重合して共重合体ラテックスを製造する段階で、重合を通じて製造された前記共重合体ラテックスは、固形分濃度が30~60重量%、例えば、30重量%、32重量%、34重量%、36重量%、38重量%、40重量%、42重量%、44重量%、46重量%、48重量%、50重量%、52重量%、54重量%、56重量%、58重量%、60重量%またはこれらのうち2つの値の間の範囲であり、pH7~12、例えば、7.0、7.2、7.4、7.6、7.8、8.0、8.2、8.4、8.6、8.8、9.0、9.2、9.4、9.6、9.8、10.0、10.2、10.4,10.6、10.8、11.0、11.2、11.4、11.6、11.8、12.0またはこれらのうち2つの値の間の範囲に調節されてもよいが、これに限定されるものではない。
【0052】
前記(c)段階の重合は、10~90℃で行われてもよく、例えば、10℃、15℃、20℃、25℃、30℃、35℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃またはこれらのうち2つの温度の間の温度で行われてもよい。
【0053】
前記(c)段階は、重合開始剤を投入して前記モノマー混合物を重合させる段階、重合停止剤を投入して重合を停止する段階、及び未反応モノマーを除去し、固形分濃度及びpHを調節して共重合体ラテックスを得る段階を含んでもよい。
【0054】
前記重合開始剤は、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素などの無機過酸化物、t-ブチルペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、p-メンタンヒドロペルオキシド、ジ-t-ブチルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシド、アセチルペルオキシド、イソブチルペルオキシド、オクタノイルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシイソブチレートなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸(ブチル酸)メチル及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、過硫酸カリウム(potassium peroxodisulfate)であってもよいが、これに限定されるものではない。前記重合開始剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.02~1.5重量部であってもよい。
【0055】
前記共重合体ラテックスの重合は、活性化剤を含んで行ってもよく、前記活性化剤は、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート、ソジウムエチレンジアミンテトラアセテート、硫酸第1鉄、デキストロース、ピロリン酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、ソジウムホルムアルデヒドスルホキシレート(sodium formaldehyde sulfoxylate)であってもよいが、これに限定されるものではない。前記活性化剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.01~0.3重量部であってもよい。
【0056】
前記重合停止剤は、前記重合反応の転換率が90%以上であるときに投入するものであってもよく、例えば、前記重合停止剤は、前記重合反応の転換率が90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%またはこれらのうち2つの値の間の値であるときに投入するものであってもよい。
【0057】
前記重合停止剤は、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸及びそのアルカリ金属イオン、ソジウムジメチルジチオカルバメート、ヒドロキノン誘導体、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸などの芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、ソジウムジメチルジチオカルバメート(sodium dimethyldithiocarbamate)であってもよいが、これに限定されるものではない。前記重合停止剤の含量は、前記モノマー混合物100重量部に対して0.02~1.5重量部であってもよい。
【0058】
前記共重合体ラテックスの固形分濃度及びpHは、pH調整剤、酸化防止剤、消泡剤などの添加剤を投入することにより調節してもよい。
【0059】
前記pH調整剤は、水酸化カリウム水溶液またはアンモニア水であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0060】
前記共重合体ラテックスは、機械的安定性及び重合安定性に優れており、安定的なディップ成形用ラテックス組成物の製造に適用されてもよい。
【0061】
前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法は、(d)前記共重合体ラテックスに加硫剤、加硫促進剤及び架橋剤を投入してディップ成形用ラテックス組成物を製造する段階をさらに含んでもよい。
【0062】
前記加硫剤は、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄などの硫黄を含んでもよい。これらの加硫剤は、ブタジエンの共役二重結合内のパイ結合を攻撃して高分子鎖の間を架橋するので、共重合体に弾性を付与するだけでなく、ディップ成形品の耐化学性を改善しうる。前記加硫剤の含量は、前記共重合体ラテックス100重量部に対して0.1~3.0重量部であってもよい。
【0063】
前記加硫促進剤は、2-メルカプトベンゾチアゾール、2,2-ジチオビスベンゾチオゾール-2-スルフェンアミド、N-シクロヘキシルベンゾチアゾール-2-スルフェンアミド、2-モルホリノチオベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジンクジエチルジチオカルバメート、ジンクジブチルジチオカルバメート、ジフェニルグアニジン、ジ-o-トリルグアニジン及びこれらのうち2以上の組み合わせからなる群から選ばれる1つであってもよく、例えば、ジンクジブチルジチオカルバメート(zinc dibutyldithiocarbamate)であってもよいが、これに限定されるものではない。前記加硫促進剤の含量は、前記共重合体ラテックス100重量部に対して0.1~3.0重量部であってもよい。
【0064】
前記架橋剤は、酸化亜鉛であってもよいが、これに限定されるものではない。前記架橋剤の含量は、前記共重合体ラテックス100重量部に対して0.1~3.0重量部であってもよい。
【0065】
ディップ成形用ラテックス組成物
本明細書の他の一態様によるディップ成形用ラテックス組成物は、前記ディップ成形用ラテックス組成物の製造方法により製造されたものであってもよい。
【0066】
前記ディップ成形用ラテックス組成物は、固形分濃度が10~30重量%であり、pH9~11であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0067】
ディップ成形品
本明細書のさらに他の一態様によるディップ成形品は、前記ディップ成形用ラテックス組成物をディップ成形して製造されたものであってもよい。
【0068】
前記ディップ成形品は、引張強度、伸び率などの機械的物性に優れており、不良率が低く、肌触りなどの品質に優れているので、様々な分野のディップ成形品に適用されてもよい。
【0069】
前記ディップ成形品は、医療用手袋、農畜産物加工用手袋、産業用手袋からなる群から選ばれる1つであってもよいが、これに限定されるものではない。
【0070】
以下、本明細書の実施例について、さらに詳細に説明する。ただし、以下の実験結果は、前記実施例のうち代表的な実験結果のみを記載したものであり、実施例などにより本明細書の範囲と内容が縮小されるか、または制限されて解釈することはできない。以下に明示的に示されていない本明細書のいくつかの具現例のそれぞれの効果は、当該部分で具体的に記載する。
【0071】
実施例1
攪拌機、温度計、冷却器、及び窒素ガスの引込口が備えられており、モノマー、乳化剤、重合開始剤などの各構成要素を連続的に投入できるように装置された10L高圧反応器を用意した。前記反応器を窒素で置換した後、混合物の総重量を基準に1,3-ブタジエン65重量%、アクリロニトリル30重量%、メタクリル酸5重量%であるモノマー混合物を投入した。その後、前記モノマー混合物100重量部に対してドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(sodium dodecylbenzene sulfonate、SDBS)1.4重量部、ジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネート(disodium alkyl diphenyloxide sulfonate,DPOS)0.7重量部、分子量が1,000~10,000g/molであるデキストリン(dextrin、三養社)1重量部、t-ドデシルメルカプタン(t-dodecyl mercaptan)0.5重量部、及びイオン交換水120重量部を前記反応器に投入した。前記反応器の温度を約25℃まで昇温した後、過硫酸カリウムを0.3重量部投入した。
【0072】
転換率が約95%に達したとき、ソジウムジメチルジチオカルバメート(sodium dimethyldithiocarbamate)を0.1重量部投入して重合反応を停止させた。その後、脱臭工程を通じて未反応モノマーなどを除去し、アンモニア水、酸化防止剤、消泡剤などを添加して固形分濃度45重量%、pH8.5のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0073】
実施例2
デキストリンを3重量部で投入した以外は、前記実施例1と同様の方法でカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0074】
実施例3
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネートをそれぞれ1.0重量部及び0.5重量部で投入した以外は、前記実施例1と同様の方法でカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0075】
実施例4
デキストリンを3重量部で投入した以外は、前記実施例3と同様の方法でカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0076】
比較例1
ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネートをそれぞれ2.0重量部及び1.0重量部で投入し、デキストリンを投入しなかった以外は、前記実施例1と同様の方法でカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0077】
比較例2
デキストリンを5重量部で投入した以外は、前記実施例1と同様の方法でカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0078】
比較例3
デキストリンを5重量部で投入した以外は、前記実施例3と同様の方法でカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0079】
比較例4
デキストリンを10重量部で投入した以外は、前記実施例3と同様の方法でカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0080】
比較例5
デキストリンを20重量部で投入した以外は、前記実施例3と同様の方法でカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスを得た。
【0081】
下記表1は、前記実施例1~4及び比較例1~5のカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス重合に使用されたドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(SDBS)、ジソジウムアルキルジフェニルオキシドスルホネート(DPOS)、及びデキストリンの含量をまとめたものである。
【0082】
【0083】
製造例
前記実施例1~4及び比較例1~5により製造したそれぞれのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックス100重量部に対して硫黄1.0重量部、酸化亜鉛1.4重量部、及びジンクジエチルジチオカルバメート(zinc dibutyldithiocarbamate、ZDBC)0.6重量部を添加し、4%水酸化カリウム水溶液及び2次蒸留水を加えて固形分濃度18重量%、pH10.0のディップ成形用ラテックス組成物を製造した。
【0084】
実験例1:機械的物性評価
前記製造例により製造したそれぞれのディップ成形用ラテックス組成物からASTM D-412に準じてダンベル状の試験片を作製した。UTM(Universal Testing Machine)を用いて前記試験片を伸張速度500mm/minで引っ張り、破断時の引張強度及び伸び率を測定して機械的物性を評価した。通常、ラテックス成形品の引張強度及び伸び率は、その数値が高いほどディップ品質に優れていると評価する。
【0085】
下記表2は、実施例1、2及び比較例1、2のラテックスから作製した試験片の機械的物性評価結果を示す。
【0086】
【0087】
前記表2を参考すると、実施例1及び2のラテックスから作製した試験片の引張強度及び伸び率が比較例1のラテックスから作製した試験片に比べて優れていることが確認できる。これらの結果は、ニトリル系共重合体ラテックスの重合段階でデンプンを添加する場合、乳化剤を従来使用していた量の70%だけ投入しても成形品の機械的物性及びディップ品質が維持又は改善されることを示す。
【0088】
ただし、デキストリン含量がモノマー混合物100重量部に対して4.9重量部を超える比較例2の場合、引張強度及び伸び率が低下し、比較例1のラテックスから作製した試験片の機械的物性を満たしていないことを確認した。
【0089】
下記表3は、実施例3、4及び比較例1、3~5のラテックスから作製した試験片の機械的物性評価結果を示す。
【0090】
【0091】
前記表3を参考すると、実施例3及び4のラテックスから作製した試験片の引張強度及び伸び率が比較例1のラテックスから作製した試験片に比べて優れていることが確認できる。これらの結果は、ニトリル系共重合体ラテックスの重合段階でデンプンを添加する場合、乳化剤を従来使用していた量の50%だけ投入しても成形品の機械的物性及びディップ品質が維持または改善されることを示す。
【0092】
ただし、デキストリン含量がモノマー混合物100重量部に対して4.9重量部を超える比較例3~5の場合、引張強度及び伸び率が低下し、比較例1のラテックスから作製した試験片の機械的物性を満たしていないことを確認した。
【0093】
実験例2:機械的安定性評価
前記実施例1~4及び比較例1~5により製造したそれぞれのカルボン酸変性ニトリル系共重合体ラテックスの機械的安定性を評価するためにラテックス安定性試験(Maron test)を行った。ラテックス安定性試験は、マロン試験機を用いて試料枠内にラテックス試料30gを入れ、49N、1000rpmで1分間せん断応力を加えた後に得られた凝集物の重量を測定した。ラテックス安定性試験時に得られた凝集物の重量は、その数値が低いほど機械的安定性に優れていると評価できる。
【0094】
下記表4は、実施例1、2及び比較例1、2のラテックスの機械的安定性評価結果を示す。
【0095】
【0096】
前記表4を参考すると、実施例2のラテックスの機械的安定性が比較例1のラテックスに比べて優れていることが確認できる。これらの結果は、ニトリル系共重合体ラテックスの重合段階でデンプンを添加する場合、乳化剤を従来使用していた量の70%だけ投入してもラテックスの機械的安定性が維持または改善されることを示す。
【0097】
下記表5は、実施例3、4及び比較例1、3~5のラテックスに対する機械的安定性評価結果を示す。
【0098】
【0099】
前記表5を参考すると、実施例4のラテックスの機械的安定性が比較例1のラテックスに比べて優れていることが確認できる。これらの結果は、ニトリル系共重合体ラテックスの重合段階でデンプンを添加する場合、乳化剤を従来使用していた量の50%だけ投入してもラテックスの機械的安定性が維持または改善されることを示す。
【0100】
実験例3:重合安定性評価
前記実施例1~4及び比較例1~5のラテックス重合安定性を評価するため、それぞれの重合工程が終了した後、反応器の汚染度を測定して5点法で評価した(5:非常に良い、4:よい、3:普通、2:悪い、1:非常に悪い)。
【0101】
下記表6は、実施例1、2及び比較例1、2の重合安定性評価結果を示す。
【0102】
【0103】
前記表6を参考すると、実施例1及び2の重合安定性が比較例1に比べて優れていることが確認できる。これらの結果は、ニトリル系共重合体ラテックスの重合段階でデンプンを添加する場合、乳化剤を従来使用していた量の70%だけ投入してもラテックス重合工程における重合安定性が維持または改善されることを示す。
【0104】
下記表7は、実施例3、4及び比較例1、3~5の重合安定性評価結果を示す。
【0105】
【0106】
前記表7を参考すると、実施例3及び4の重合安定性が比較例1に比べて優れていることが確認できる。これらの結果は、ニトリル系共重合体ラテックスの重合段階でデンプンを添加する場合、乳化剤を従来使用していた量の50%だけ投入してもラテックス重合工程における重合安定性が維持または改善されることを示す。
【0107】
前述した本明細書の説明は、例示のためのものであり、本明細書の一態様が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本明細書に記載された技術的思想や必須の特徴を変更することなく、他の具体的な形態に容易に変形が可能であることが理解できるだろう。したがって、以上に述べた実施例は、すべての面で例示的なものであり、限定的ではないものと理解しなければならない。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して行われてもよく、同様に分散されたものと説明されている構成要素も結合された形態で行われてもよい。
【0108】
本明細書の範囲は、後述する請求範囲によって示され、請求範囲の意味及び範囲、そして、その均等概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本明細書の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。