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特開2022-183050ブロックコポリマーを含むゴム組成物およびブロックコポリマー
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  • 特開-ブロックコポリマーを含むゴム組成物およびブロックコポリマー 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183050
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ブロックコポリマーを含むゴム組成物およびブロックコポリマー
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20221201BHJP
   C08L 53/00 20060101ALI20221201BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20221201BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20221201BHJP
   C08F 293/00 20060101ALI20221201BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C08L21/00
C08L53/00
C08K3/013
C08K3/36
C08F293/00
C08K3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022082695
(22)【出願日】2022-05-20
(31)【優先権主張番号】63/194,510
(32)【優先日】2021-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/656,097
(32)【優先日】2022-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】513158760
【氏名又は名称】ザ・グッドイヤー・タイヤ・アンド・ラバー・カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】515189922
【氏名又は名称】ルクセンブルク インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー(エルアイエスティー)
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100104374
【弁理士】
【氏名又は名称】野矢 宏彰
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ベイデルト
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンデル・シャプロブ
(72)【発明者】
【氏名】クレメント・ミュゲマナ
(72)【発明者】
【氏名】アブドゥラ・グナイディン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J026
【Fターム(参考)】
4J002AC011
4J002AC031
4J002AC061
4J002AC081
4J002BP032
4J002DA036
4J002DA040
4J002DE100
4J002DJ016
4J002EF050
4J002FD016
4J002FD020
4J002FD070
4J002FD140
4J002FD150
4J002GM01
4J002GN01
4J026HA06
4J026HA15
4J026HA26
4J026HA32
4J026HB11
4J026HB45
4J026HE01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特にタイヤ成分のための先進的な強化ゴム組成物および材料を提供する。
【解決手段】エラストマー、充填剤、ならびにエラストマーブロックとポリアルキルアクリレートとを含む熱可塑性ブロックを含むブロックコポリマーを含むゴム組成物が開示される。ポリアルキルアクリレートは、単結合で結合している酸素原子を含む。アルキルアクリレートは、その単結合で結合している酸素原子上に多環式置換基を含む。このゴム組成物は、タイヤ、動力伝達ベルト、ホース、トラック、空気スリーブおよびコンベヤベルトから選択される製造物品に使用されてもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エラストマー、充填剤およびブロックコポリマーを含むゴム組成物であって、前記ブロックコポリマーは、エラストマーブロックとポリアルキルアクリレートを含む熱可塑性ブロックとを含み、前記ポリアルキルアクリレートは、単結合で結合している酸素原子を含み、前記アルキルアクリレートは、その単結合で結合している酸素原子上に多環式置換基を含む、ゴム組成物。
【請求項2】
前記エラストマーブロックが、第1の分子鎖末端および第2の分子鎖末端を有するエラストマー鎖を含み、前記第1の分子鎖末端が、ポリアルキルアクリレートブロックに連結され、官能基が、前記第2の分子鎖末端に位置する、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記ポリアルキルアクリレートが、次の構造
【化1】
[式中、nは、ポリアルキルアクリレート中のアルキルアクリレートモノマーの数を表し、好ましくは、nは、10より大きく2000より小さい1つまたは複数の整数であり、Rはアルキルを表し、Rは多環式炭化水素材料を表す]を有する、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記アルキルアクリレートが、その単結合している酸素原子上に、
i)二環式置換基、
ii)三環式置換基、
iii)少なくとも7個の炭素原子を含み、前記炭素原子のうち少なくとも5個が環状に配置された炭化水素置換基
のうちの1つを有する、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項5】
前記ポリアルキルアクリレートが、ポリ(イソボルニルメタクリレート)およびポリ(アダマンチルメタクリレート)のうちの1つである、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項6】
前記ポリアルキルアクリレートが、次の構造
【化2】
のうちの1つまたは複数を含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項7】
エラストマー50phr~90phr、ブロックコポリマー10phr~50phr、ならびに、少なくとも1種のシリカと少なくとも1種のカーボンブラックとのうちの1種または複数を含む充填剤20phr~200phrを含む、請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項8】
タイヤ、動力伝達ベルト、ホース、トラック、空気スリーブおよびコンベヤベルトから選択される製造物品であって、請求項1から7のいずれか一項に記載のゴム組成物を含む、製造物品。
【請求項9】
エラストマーブロックとポリアルキルアクリレートを含む熱可塑性ブロックとを含むブロックコポリマーであって、前記ポリアルキルアクリレートが、単結合で結合している酸素原子を含み、前記アルキルアクリレートが、その単結合で結合している酸素原子上に多環式置換基を含み、前記ブロックコポリマーがジブロックコポリマーである、ブロックコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物、特にブロックコポリマーを含む硫黄加硫可能または硫黄加硫したゴム組成物を対象とする。さらに、本発明は、タイヤまたはタイヤ成分などのこのゴム組成物を含むゴム製品、ならびにブロックコポリマーを対象とする。
【背景技術】
【0002】
特にタイヤ用のゴム組成物は、そのような用途に限定されないが、耐久性、剛性、弾性、低ヒステリシスなどの複数の要件を満たす必要がある。一部の用途のためのゴム組成物の特性をさらに改善するために、過去に超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)の使用が提案されてきた。しかし、ポリエチレン材料の使用は、一部の用途において剛性などのゴムの特性を改善するのに役立ったが、その使用はまた、いくつかの固有の欠点を有する。例えば、ある問題は、135℃程度の比較的低い融点であり、多くのゴム組成物で問題となり得る。ゴム配合物にポリエチレンを配合することに関連する別の欠点は、ゴム配合物での加工および分散が困難であり、それにより分散が比較的不良であるため、所望の補強効果が制限されることである。さらに、適切な有機または無機充填剤材料を提供することで、剛性を改善することもできる。それにもかかわらず、そのような充填剤の量をより高い量へ増やすと、重量の増加、混合中の問題など、複数の欠点が生じる可能性もある。高剛性のゴム組成物を提供するためのアプローチは数多くあるが、大きな改善の余地が残されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,698,643号
【特許文献2】米国特許第5,451,646号
【特許文献3】米国特許第6,242,534号
【特許文献4】米国特許第6,207,757号
【特許文献5】米国特許第6,133,364号
【特許文献6】米国特許第6,372,857号
【特許文献7】米国特許第5,395,891号
【特許文献8】米国特許第6,127,488号
【特許文献9】米国特許第5,672,639号
【特許文献10】米国特許第6,608,125号
【特許文献11】米国特許出願公開第2003/0130535号
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版
【非特許文献2】Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)
【非特許文献3】The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、請求項1に記載のゴム組成物、請求項8に記載の製造物品および請求項9に記載のブロックコポリマーに関する。
従属請求項は、本発明の好ましい実施形態を指す。
【0006】
本発明は、特にタイヤ成分のための先進的な強化ゴム組成物および材料を提供することを第1の目的とする。
本発明は、ヒステリシスおよび/または重量が制限された、高剛性を有するゴム組成物を提供することを別の目的とすることができる。
【0007】
本発明は、UHMWPEなどの従来の熱可塑性材料のブレンディングと比較して、小さな相寸法を達成することを別の目的とすることができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様において、ゴム組成物が提供され、このゴム組成物は、エラストマー、充填剤およびブロックコポリマーを含む。本発明によれば、ブロックコポリマーは、エラストマーブロックとポリアルキルアクリレートを含む熱可塑性ブロックとを有し、アルキルアクリレートは、そのアルキルアクリレート中の単結合している酸素原子上に多環式置換基を含む。
【0009】
前記ブロックコポリマー材料の提供は、特にUHMWPEなどの他の従来の熱可塑性補強材と比較して、ゴム組成物における相寸法を減少させることが発見された。エラストマーブロックを有することで、このブロックコポリマーは、ゴム組成物中の他のエラストマーと相溶性となる。また、本発明者らの拘束力を持たない理論によれば、エラストマーブロックに(共有)結合するまたは言いかえれば連結するポリアルキルアクリレートは、充填剤などのゴム組成物の他の材料と結合する。さらに、ポリアルキルアクリレートの提供は、ゴムコンパウンドを補強し、その置換基はゴムコンパウンド内の連鎖移動度を著しく制限する。全体として、ブロックコポリマーは、特に従来の充填剤材料よりも低い重量または密度でそれぞれ補強を提供するのに役立つ。これらのブロックコポリマーはまた、高温での熱安定性に関して、前述のUHMWPEなどの他の熱可塑性補強材料よりも欠点が少ない。
【0010】
好ましい実施形態において、エラストマーおよび/またはエラストマーブロックは、少なくとも1種のジエン系エラストマーを含むかまたはそれからなる。
好ましくは、ジエン系エラストマーは、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエン、溶液重合スチレンブタジエンゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴム、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴムおよびイソプレンブタジエンゴムのうちの1つまたは複数から選択される。ジエン系エラストマーは、ブタジエン、スチレンおよびイソプレンのうちの1つまたは複数などのモノマー残基をベースとすることができる。そのようなエラストマーブロックを提供することにより、ゴム組成物中の他のゴムまたはジエン系エラストマーとの相溶性を改善するのに役立つ。
【0011】
好ましい実施形態において、ブロックコポリマーは、正確に2つのブロック、言いかえれば2つのみのブロック、すなわちエラストマーブロックおよび熱可塑性ブロックを有する。また言いかえれば、ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマーである。
【0012】
好ましい実施形態において、エラストマーまたはエラストマーブロックは、シリカおよびカーボンブラックのうちの一方の表面にカップリングするための官能基を有する。そのような基は、特にシリカにカップリングするために、例えば、アミノシラン、アミノシロキサン、メルカプトシラン、メルカプトシロキサン、シラノール、アルコキシシラン、アルコキシチオール、エポキシおよびヒドロキシのうちの1つまたは複数から選ぶことができる。そのような基は、ゴム組成物における、特に充填剤ネットワークを含むシリカに対する結合および/または補強をさらに改善する。
【0013】
好ましい実施形態において、エラストマーブロックは、第1の分子鎖末端および第2の分子鎖末端を有するエラストマー鎖を含み、第1の分子鎖末端は、ポリアルキルアクリレートブロックに連結され、前記官能基は、第2の分子鎖末端に位置する。
【0014】
好ましい実施形態において、官能基は、熱可塑性ブロックに連結されていないエラストマーブロックの分子鎖末端に位置する。
好ましい実施形態において、ポリアルキルアクリレートは、次の構造:
【0015】
【化1】
【0016】
[式中、nは、ポリアルキルアクリレート(またはそれぞれモノマー残基)中のアルキルアクリレートモノマーの数であり、Rは、0またはアルキルであり、Rは、多環式炭化水素材料である]を有する。
【0017】
好ましくは、nは、10より大きく、好ましくは50より大きく、好ましくは2000より小さく、好ましくは1500より小さい整数である。
そのような材料は、例えばコンパウンドの剛性を改善するのにさらに役立ち得る嵩高い置換基Rの故に、さらにより望ましいことが見出された。さらに、嵩高い側基/置換基を有するポリアルキルアクリレートは、(やはりその非晶質性により)加工性を高めるのに役立ち、比較的高い耐熱性または言いかえれば比較的高い熱転移点を有する。
【0018】
全体的に、提案されたブロックコポリマーは、限られたヒステリシスでゴムマトリックスの先進的な補強を提供する可能性がある。また、提案されたアルキルアクリレートは、同程度の補強を達成することを検討した場合、シリカまたはカーボンブラックに比べて比較的軽量な材料である。特に、そのような特性またはそれらの組み合わせは、ゴム組成物中にカーボンブラックまたはシリカをより多く提供することによって容易に達成されない場合がある。そのような材料をより多く添加すると、重量または密度のそれぞれおよび/またはヒステリシスが増加する場合がある。さらに、混合をより困難にするかまたはコンパウンドの他の特性を望ましくない方法で変化させる可能性がある。
【0019】
好ましい実施形態において、アルキルは、エチル基(-CH)またはエチル基(-C)である。
好ましい実施形態において、アルキルアクリレートは、その単結合している酸素原子上に、二環式置換基および三環式置換基のうちの1つを有する。
【0020】
好ましい実施形態において、アルキルアクリレートは、その単結合している酸素原子上に、少なくとも7個の炭素原子を含む炭化水素置換基を有し、この炭素原子のうち少なくとも5個は、環状に配置されている。
【0021】
好ましい実施形態において、アルキルアクリレートは、少なくとも7個の炭素原子、または少なくとも8個の炭素原子を含む炭化水素置換基を有し、この炭素原子のうち少なくとも5個(または少なくとも6個)は、環状に配置されている。これらは望ましい材料であることが分かった。
【0022】
好ましい実施形態において、ポリアルキルアクリレートは、ポリ(イソボルニルメタクリレート)(本明細書ではPIBOMAとも称される)およびポリ(アダマンチルメタクリレート)(本明細書ではPADAMとも称される)のうちの1つである。これらの材料は、特に補強の観点から、コポリマーのブロックの1つのための、最も望ましい特性を有する2つの材料として本発明者らによって同定されている。さらに、嵩高い側基または置換基は、加工性を高め、比較的高いガラス転移温度を提供するのに役立ち、加硫コンパウンド中の材料の耐熱性の指標となり得る。
【0023】
好ましい実施形態において、ポリアルキルアクリレートは、次の構造
【0024】
【化2】
【0025】
(nは整数であり、好ましくは3に等しいおよび/もしくは3より大きくまたはさらにより好ましくは10より大きい)のうちの1つまたは複数を含む 好ましい実施形態において、熱可塑性(ポリマー)ブロックは、ポリアルキルアクリレートからなり、i)少なくとも10,000g/mol、または少なくとも15,000または20,000g/molの数平均分子量Mnおよびii)前記アルキルアクリレートの少なくとも10、好ましくは少なくとも50のモノマー(またはモノマー残基)のうちの1つまたは複数を有する。そのような最小重量は、補強におけるより大きな効果を観察し、低すぎる熱転移点を避けるために望ましい場合があることが発見された。
【0026】
Mnおよび/またはMw(重量平均分子量)は、ポリスチレン較正標準を使用したASTM規格D5296に従ってGPCにより本明細書で求められる。
好ましい実施形態において、熱可塑性(ポリマー)ブロックは、ポリアルキルアクリレートからなり、(i)最大で450,000g/mol、好ましくは最大で150,000g/molまたはまたより好ましくは最大で100,000g/molまたはさらにより好ましくは90,000g/molの数平均分子量Mnおよび(ii)最大で6000個、好ましくは最大で2000個、また好ましくは最大で1500個またはさらにより好ましくは最大で500個または最大で400個の前記アルキルアクリレートのモノマー残基のうちの1つまたは複数を有する。
【0027】
好ましい実施形態において、エラストマーブロックまたは言いかえれば、エラストマー鎖は、(i)少なくとも10,000g/mol、好ましくは少なくとも20,000g/molまたはまたより好ましくは少なくとも50,000g/molの数平均分子量Mnならびに(ii)スチレン、ブタジエンおよびイソプレンのリストから選ばれる少なくとも90個または好ましくは少なくとも300個のモノマーのうちの1つまたは複数を有する。
【0028】
好ましい実施形態において、エラストマーブロックまたは言いかえれば、エラストマー鎖は、(i)最大で150,000g/mol、好ましくは最大で120,000g/molの数平均分子量Mnならびに(ii)スチレン、ブタジエンおよびイソプレンのリストから選ばれる最大で2500個または好ましくは最大で2000個またはさらにより好ましくは最大で1500個のモノマーのうちの1つまたは複数を有する。
【0029】
好ましい実施形態において、エラストマーブロックおよび熱可塑性ブロックの数平均分子量比は、0.5~3、好ましくは0.5~2.5の範囲である。
好ましい実施形態において、エラストマーブロックおよび熱可塑性ブロックの数平均分子量比は、0.1~1、好ましくは0.1~0.95およびさらにより好ましくは0.25~0.8の範囲内でありまたはまたより好ましくは0.25~0.5の範囲内である。言いかえれば、エラストマーブロックの重量は、熱可塑性ブロックの重量に比べて比較的小さい。これにより、ブロックコポリマーを様々な種類のゴム組成物に柔軟な方法で使用することができる。特に、エラストマーブロックの特定の特性に関して、限られた重量または量のエラストマー材料を組成物に添加する。
【0030】
好ましい実施形態において、ブロックコポリマーは、1.03~3の範囲内、好ましくは1.05~2の範囲内およびさらにより好ましくは1.05~1.6の範囲内の多分散度指数(Mw/Mn)を有する。
【0031】
好ましい実施形態において、ブロックコポリマーは、-92℃~-15℃の範囲内の第1のガラス転移温度および150℃~250℃の範囲内の第2のガラス転移温度を有する。
【0032】
ガラス転移温度は、ASTM E1545-11(2016)の下でTMAによって求められ、1分あたり5℃の加熱速度で、変曲点を測定する。
好ましい実施形態において、ブロックコポリマーは、少なくとも20,000g/mol、好ましくは少なくとも30,000g/molおよび/または最大で300,000g/mol、好ましくは最大で200,000g/molの数平均分子量を有する。
【0033】
好ましい実施形態において、ゴム組成物は、エラストマー、好ましくはジエン系エラストマー10phr~95phr、ブロックコポリマー5phr~90phrならびに少なくとも1種のシリカおよび少なくとも1種のカーボンブラックのうちの1種または複数を含む充填剤20phr~200phrを含む。したがって、本明細書では、ブロックコポリマーのエラストマーブロック(のみ)が、ゴム/エラストマーの合計100重量部の一部とみなされる。
【0034】
好ましい実施形態において、充填剤は、主にシリカおよび任意にシランカップリング剤を含む。
好ましい実施形態において、ゴム組成物は、エラストマー100phr、ブロックコポリマー5phr~90phr(好ましくは10phr~50phr)ならびに少なくとも1種のシリカおよび少なくとも1種のカーボンブラックのうちの1種または複数を含む充填剤20phr~200phrを含む(ブロックコポリマーおよび/またはそのエラストマーブロックは、ゴム/エラストマー100重量部の一部としてカウントされない)。
【0035】
好ましい実施形態において、ゴム組成物は、ブロックコポリマー10phr~50phrおよびエラストマー50phr~90phrを含む。
ゴム組成物は、少なくとも1種および/または少なくとも1種の追加のジエン系ゴムを含んでもよい。代表的な合成ポリマーは、ブタジエンならびにその同族体および誘導体、例えば、メチルブタジエン、ジメチルブタジエンおよびペンタジエンの単独重合生成物ならびにブタジエンまたはその同族体もしくは誘導体から形成されたものなどの、他の不飽和モノマーとのコポリマーである。後者の中には、アセチレン、例えば、ビニルアセチレン、オレフィン、例えばイソプレンと共重合してブチルゴムを形成するイソブチレン;ビニル化合物、例えば、アクリル酸、アクリロニトリル(ブタジエンと重合してNBRを形成する)、メタクリル酸およびスチレン(後者は、ブタジエンと重合してSBRを形成する。)ならびにビニルエステルおよび様々な不飽和アルデヒド、ケトンおよびエーテル、例えばアクロレイン、メチルイソプロペニルケトンおよびビニルエチルエーテルがある。合成ゴムの特定の例としては、ネオプレン(ポリクロロプレン)、ポリブタジエン(cis-1,4-ポリブタジエンを含む)、ポリイソプレン(cis-1,4-ポリイソプレンを含む)、ブチルゴム、ハロブチルゴム、例えばクロロブチルゴムまたはブロモブチルゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、スチレン、アクリロニトリルなどのモノマーとの、1,3-ブタジエンまたはイソプレンのコポリマーならびに、またエチレン/プロピレン/ジエンモノマー(EPDM)としても知られるエチレン/プロピレンターポリマーおよび特に、エチレン/プロピレン/ジシクロペンタジエンターポリマーが含まれる。使用されてもよいゴムの追加の例としては、アルコキシシリル末端官能化溶液重合ポリマー(SBR、PBR、IBRおよびSIBR)、シリコンカップリング化およびスズカップリング化星形分枝高分子が含まれる。好ましいゴムまたはエラストマーは、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリブタジエンおよびSBRである。
【0036】
一態様において、エラストマーは、好ましくはジエン系エラストマーのうち少なくとも2種である。例えば、cis1,4-ポリイソプレンゴム(天然または合成であるが、天然が好ましい)、3,4-ポリイソプレンゴム、スチレン/イソプレン/ブタジエンゴム、乳化および溶液重合由来のスチレン/ブタジエンゴム、cis1,4-ポリブタジエンゴムおよび乳化重合で調製したブタジエン/アクリロニトリルコポリマーなど、2種類以上のエラストマーの組み合わせが好ましい。
【0037】
一実施形態において、比較的従来の20~28パーセントの結合スチレンのスチレン含有率を有する乳化重合由来のスチレン/ブタジエン(ESBR)または幾つかの用途に対して、中程度から比較的高い結合スチレン含有率、すなわち、30~45パーセントの結合スチレン含有率を有するESBRが使用されてもよい。乳化重合で調製されたESBRとは、スチレンおよび1,3-ブタジエンが水性乳剤として共重合されることを意味する。そのようなことは、当業者に周知されている。結合スチレン含有率は、例えば5~50パーセントと多様であってもよい。一態様において、ESBRは、また、例えば、ターポリマー中に結合アクリロニトリルを2~30重量パーセントの量、ESBARとしてターポリマーゴムを形成するアクリロニトリルを含有してもよい。コポリマー中に結合アクリロニトリルを2~40重量パーセント含有する、乳化重合で調製したスチレン/ブタジエン/アクリロニトリルコポリマーゴムはまた、本発明で使用するためのジエン系ゴムとして企図される。
【0038】
別の実施形態において、溶液重合で調製されたSBR(SSBR)を用いることができる。そのようなSSBRは、例えば、5~50、好ましくは9~36パーセントの範囲の結合スチレン含有率を有することができる。SSBRは、好都合には例えば不活性有機溶媒中でアニオン重合することにより調製することができる。とりわけ、SSBRは、開始剤として有機リチウム化合物を使用して炭化水素溶媒中で、スチレンおよび1,3-ブタジエンモノマーの共重合によって合成することができる。
【0039】
一実施形態において、cis1,4-ポリブタジエンゴム(BR)が使用される。適切なポリブタジエンゴムは、例えば1,3-ブタジエンの有機溶液重合によって調製することができる。BRは、好都合には、例えば、少なくとも90パーセントのcis1,4-含有率および-95~-105℃の範囲のガラス転移温度Tgを有することを特徴とすることができる。The Goodyear Tire & Rubber CompanyからBudene(登録商標)1207、Budene(登録商標)1208またはBudene(登録商標)1223などの適切なポリブタジエンゴムが市販されている。Budene(登録商標)1223を除き、これらの高cis-1,4-ポリブタジエンゴムは、例えば、米国特許第5,698,643号および米国特許第5,451,646号に記載のように(1)有機ニッケル化合物、(2)有機アルミニウム化合物および(3)フッ素含有化合物の混合物を含むニッケル触媒系を使用して合成することができる。
【0040】
一実施形態において、合成または天然のポリイソプレンゴムを使用することができる。
本明細書においておよび慣行的実務に従って使用される用語「phr」は、「ゴムまたはエラストマー100重量部当たりの各材料の重量部」を指す。一般に、この慣例を使用して、ゴム組成物は100重量部のゴム/エラストマーで構成される。クレームの組成は、クレームのゴム/エラストマーのphr値がクレームのphr範囲と一致し、かつ組成のすべてのゴム/エラストマーの量が合計100部のゴムに帰着する限り、クレームに明示的に挙げられる以外のゴム/エラストマーを含んでもよい。例として、組成は、SBR、SSBR、ESBR、PBD/BR、NRおよび/または合成ポリイソプレンなどの、1種または複数の追加のジエン系ゴムを、1~10phr、場合によって1~5phrさらに含んでもよい。別の例において、組成は、追加のジエン系ゴムを5phr未満、好ましくは3phr未満含んでもよくまたは、またそのような追加のジエン系ゴムを本質的に含まなくてもよい。用語「コンパウンド」および「組成物」は、本明細書において他の方法で示されなければ、交換して使用することができる。
【0041】
ゴム組成物はまた、プロセスオイル70phrまでを含んでもよい。エラストマーを増量するために典型的に使用される増量油として、プロセスオイルがゴム組成物に含まれていてもよい。プロセスオイルはまた、ゴム配合時のオイルの直接添加によってゴム組成物に含まれてもよい。使用されるプロセスオイルは、エラストマー中に存在する増量油および配合時に添加されるプロセス油の両方に含まれていてもよい。適切なプロセス油は、芳香族、パラフィン、ナフテン、植物油ならびにMES、TDAE、SRAEおよび重質ナフテン油などの低PCA油を含む、当業界で公知である様々なオイルを含む。適切な低PCA油は、IP346法によって求めて3重量パーセント未満の多環式芳香族含有率を有するものを含む。IP346法の手順は、the Institute of Petroleum, United Kingdomによって発行された、Standard Methods for Analysis & Testing of Petroleum and Related Products and British Standard 2000 Parts、2003年、62版に見出すことができる。
【0042】
好ましい実施形態において、ゴム組成物は、シリカ40phr~160phrを含む。
ゴムコンパウンドに使用されてもよい一般に使用される珪質顔料は、従来の火成および沈降珪質顔料(シリカ)を含む。一実施形態において、沈降シリカが使用される。本発明で用いられる従来の珪質顔料は、例えば、可溶性ケイ酸塩、例えば、ケイ酸ナトリウムの酸性化によって得られるものなどの沈降シリカである。そのような従来のシリカは、例えば窒素ガスを使用して測定するBET表面積を有することを特徴とすることができる。一実施形態において、BET表面積は、1グラム当たり40~600平方メートルの範囲にあってもよい。別の実施形態において、BET表面積は、1グラム当たり80~300平方メートルの範囲であってもよい。表面積を測定するBET法は、Journal of the American Chemical Society、60巻、304頁(1930年)に記載されている。従来のシリカは、ジブチルフタレート(DBP)の吸収値が100~400、代替として150~300の範囲にあることを特徴とすることもできる。PPG Industriesから、Hi-Silの商標で210、315GおよびEZ160Gの名称で市販されているシリカ、Solvayから、例えばZ1165MPおよびPremium200MPの名称で入手可能なシリカ、Evonik AGから、例えばVN2およびUltrasil 6000GRおよび9100GRの名称で入手可能なシリカなど、様々な市販のシリカが使用されてもよい。
【0043】
一般的に使用されるカーボンブラックは、従来の充填剤として10~150phrの範囲の量で使用され得る。別の実施形態において、カーボンブラック20~80phrが使用されてもよい。そのようなカーボンブラックの代表的な例としては、N110、N121、N134、N220、N231、N234、N242、N293、N299、N315、N326、N330、N332、N339、N343、N347、N351、N358、N375、N539、N550、N582、N630、N642、N650、N683、N754、N762、N765、N774、N787、N907、N908、N990およびN991が含まれる。これらのカーボンブラックは、9~145g/kgの範囲のヨウ素吸収および34~150cm/100gの範囲のDBP数を有する。
【0044】
このゴム組成物には他の充填剤が使用されてもよく、追加で、これらに限定されないが、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)を含む粒子状充填剤、これらに限定されないが、米国特許第6,242,534号、米国特許第6,207,757号、米国特許第6,133,364号、米国特許第6,372,857号、米国特許第5,395,891号または米国特許第6,127,488号に開示されているものを含む架橋粒子状ポリマーゲルおよびこれらに限定されないが、米国特許第5,672,639号に開示されているものを含む可塑化デンプン複合充填剤を含む。そのような他の充填剤は、1~30phrの範囲の量で使用されてもよい。
【0045】
一実施形態において、ゴム組成物は、従来の硫黄含有有機ケイ素化合物を含んでいてもよい。適切な硫黄含有有機ケイ素化合物の例は、式:
【0046】
【化3】
【0047】
である[式中、Zは、
【0048】
【化4】
【0049】
からなる群から選択され、式中、Rは、1~4個の炭素原子のアルキル基、シクロヘキシルまたはフェニルであり;Rは、1~8個の炭素原子のアルコキシまたは5~8個の炭素原子のシクロアルコキシであり;Alkは、1~18個の炭素原子の二価炭化水素であり、nは整数2~8である]。
【0050】
一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリメトキシまたはトリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドである。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物は、3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィドおよび/または3,3’-ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドである。したがって、式Iについて、Zは、
【0051】
【化5】
【0052】
であり得る[式中、Rは、2~4個の炭素原子、代替として2個の炭素原子のアルコキシであり;Alkは、2~4個の炭素原子、代替として3個の炭素原子の二価炭化水素であり;nは、整数2~5、代替として2または4である]。
【0053】
別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物には、米国特許第6,608,125号に開示されている化合物が含まれる。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物には、3-(オクタノイルチオ)-1-プロピルトリエトキシシラン、Momentive Performance MaterialsからNXT(商標)として市販されているCH(CHC(=O)-S-CHCHCHSi(OCHCHが含まれる。
【0054】
別の実施形態において、適切な硫黄含有有機ケイ素化合物には、米国特許出願公開第2003/0130535号に開示されているものが含まれる。一実施形態において、硫黄含有有機ケイ素化合物はDegussaからのSi-363である。
【0055】
ゴム組成物中の硫黄含有有機ケイ素化合物の量は、使用される他の添加剤のレベルに依存して様々であろう。一般的に言うと、化合物の量は0.5~20phrの範囲であろう。一実施形態において、その量は1~10phrの範囲であろう。
【0056】
ゴム組成物(または言いかえれば、硫黄加硫可能ゴム組成物)が、例えば、硫黄供与体、硬化助剤、例えば、活性剤および遅延剤ならびにオイルなどの加工添加剤、粘着性樹脂および可塑剤を含む樹脂、充填剤、顔料、脂肪酸、酸化亜鉛、ワックス、抗酸化剤およびオゾン劣化防止剤および釈解薬などの様々な一般に使用される添加材料との、様々な構成要素の硫黄加硫可能ゴムの混合などのゴム配合技術において一般に公知の方法によって配合されることは、当業者によって容易に理解される。当業者に知られているように、硫黄加硫可能材料および硫黄加硫材料(ゴム)の意図される使用に応じて、上記に挙げた添加剤が選択され、一般に従来の量で使用される。硫黄供与体の、代表的な例は、元素の硫黄(遊離の硫黄)、アミンジスルフィド、ポリマーのポリスルフィドおよび硫黄オレフィン付加物を含む。一実施形態において、硫黄加硫剤は元素の硫黄である。硫黄加硫剤は、0.5~8phrの範囲、代替として1.5~6phrの範囲の量で使用されてもよい。典型的な量の粘着性付与樹脂は、使用される場合、0.5~10phr、通常1~5phrを含む。典型的な量の加工助剤は、1~50phrを含む。典型的な量の抗酸化剤は、1~5phrを含む。代表的な抗酸化剤は、例えばジフェニル-p-フェニレンジアミン他、例えば、The Vanderbilt Rubber Handbook(1978年)、344~346頁に開示されているものなどであってもよい。典型的な量のオゾン劣化防止剤は、1~5phrを含む。ステアリン酸を含むことができる脂肪酸の典型的な量は、使用される場合、0.5~3phrを含む。典型的な量のワックスは、1~5phrを含む。多くの場合、微晶質ワックスが使用される。典型的な量の釈解剤は、0.1~1phrを含む。典型的な釈解剤は、例えばペンタクロロチオフェノールおよびジベンズアミドジフェニルジスルフィドであってもよい。
【0057】
別の実施形態では、この組成物は、トラクション樹脂などの少なくとも1種の樹脂5phr~80phrを含む。樹脂は、スチレン-アルファメチルスチレン樹脂、クマロン-インデン樹脂、石油樹脂、炭化水素樹脂、テルペンポリマー、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、C5樹脂、C9樹脂、CPD樹脂、DCPD樹脂、ロジン由来樹脂およびそれらのコポリマーのうちの1種または複数から選ぶことができる。さらに、これらの樹脂のうち1種または複数が水素化されてもよい。
【0058】
促進剤は、加硫のために必要とされる時間および/または温度を制御し、加硫物の特性を改善するために使用されてもよい。一実施形態において、単一の促進剤系、すなわち一次促進剤が使用されてもよい。一次促進剤(複数可)は、0.5~10または0.5~4、代替として0.8~1.5phrの範囲の合計量において使用されてもよい。別の実施形態において、一次および二次促進剤の組み合わせが使用されてもよく、二次促進剤は、活性化し加硫物の特性を改善するために0.05~3phrなどのより少ない量で使用される。これらの促進剤の組み合わせは、最終的な特性に相乗効果を生み出すと予想することができ、どちらかの促進剤の単独使用によって製造されたものより多少良好である。さらに、正常な加工温度に影響を受けないが、通常の加硫温度で満足すべき硬化を生ずる遅効性促進剤も使用されてもよい。加硫遅延剤もまた使用されてもよい。本発明において使用されてもよい適切な種類の促進剤は、アミン、ジスルフィド、グアニジン、チオ尿素、チアゾール、チウラム、スルフェンアミド、ジチオカルバメートおよびザンセートである。一実施形態において、一次促進剤はスルフェンアミドである。第2の促進剤が使用される場合、二次促進剤は、グアニジン、ジチオカルバメートまたはチウラム化合物であり得る。適切なグアニジンとしては、ジフェニルグアニジンなどが含まれる。適切なチウラムとしては、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィドおよびテトラベンジルチウラムジスルフィドが含まれる。
【0059】
ゴム組成物の混合は、ゴム混合技術における当業者に公知の方法によって達成することができる。例えば、原料は、典型的に、少なくとも2つの段階、すなわち、少なくとも1つの非生産的な段階、続いて生産的混合段階において混合される。硫黄加硫剤を含む最終硬化薬は、典型的に、従来は「生産的」混合段階と呼ばれる最終段階において混合され、ここで、典型的には、先行する非生産的混合段階(複数可)の混合温度(複数可)より低い、ある温度または最終温度で混合が行われる。ゴム組成物は、熱機械的混合ステップにかけられてもよい。熱機械的混合ステップは、一般に、140℃から190℃までのゴム温度を生じるために、適切な期間、混合機または押出機での機械式作業を含む。熱機械的作業の好適な継続時間は、運転条件ならびに成分の量および性質の関数として変動する。例えば、熱機械的作業は1~20分であってもよい。
【0060】
本発明の別の態様において、好ましくはタイヤ、動力伝達ベルト、ホース、トラック、空気スリーブおよびコンベヤベルトから選択され得る製造物品が提供される。この物品は、上記の実施形態またはそれらの要素のうちの1つまたは複数に従うゴム組成物を含む。
【0061】
一実施形態において、タイヤは、ゴム組成物からなる少なくとも1つの成分を含み、この成分は、カーカスプライ、ベルトプライ、オーバーレイプライ、アペックス、サイドウォール、トレッド、チッパー、フリッパー、インナーライナー、チェーファー、プライストリップ、ショルダー、アンダートレッド、トレッドキャップおよびトレッドベースのうちの少なくとも1つである。この組成物は、原理的には、前記タイヤ成分の複数に用いることができる。
【0062】
別の実施形態において、前記成分は、カーカスプライ、ベルトプライ、アペックス、サイドウォール、チッパー、フリッパー、チェーファーおよびショルダーのうちの少なくとも1つから選択される。言いかえれば、このゴム組成物は、高い剛性を必要とする成分において特に目的のものであり得る。トレッドまたはその一部は、この特定の実施形態では目的のものではない。
【0063】
タイヤ、特に空気入りタイヤは、レースタイヤ、乗用タイヤ、航空機用タイヤ、農業用タイヤ、大型土木機械用タイヤ、オフロードタイヤ、トラック用タイヤなどであってもよい。一実施形態において、タイヤは乗用またはトラック用タイヤである。タイヤはまた、ラジアルまたはバイアスタイヤであってもよい。
【0064】
ゴム組成物または(空気入り)タイヤの加硫は、一般に100℃~200℃の範囲の従来の温度で実行されてもよい。一実施形態において、加硫は、110℃~180℃の範囲の温度で行われる。プレスまたは型中での加熱、過熱蒸気または熱風を用いる加熱などの通常の加硫方法のうちのいずれを使用してもよい。そのようなタイヤは、当業者にとって公知で、容易に明白であろう様々な方法によって組み立て、成形、成型および硬化することができる。
【0065】
別の態様において、本発明は、上述の態様およびさらに任意には対応する実施形態において記載されるように、ブロックコポリマーそれ自体を対象とする。一実施形態において、ブロックコポリマーは、ジブロックコポリマーである。
【0066】
また別の態様において、本発明は、ゴム組成物、ゴム成分およびタイヤのうちの1つまたは複数における、本明細書に記載のブロックコポリマーの使用を対象とする。
1つまたは複数の実施形態またはその特徴は、本発明の範囲内で互いに組み合わせることができることが強調される。
【0067】
本発明の、構造、操作および利点は、添付の図面と併せて、以下の記述を考慮することでより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
図1】例示的タイヤの略断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0069】
図1はタイヤ1の略断面図である。タイヤ1は、トレッド10、インナーライナー13、4つのベルトプライ11を含むベルト構造体、カーカスプライ9、2つのサイドウォール2ならびにビード充填剤アペックス5およびビード4を含む、2つのビード領域3を有する。例示のタイヤ1は、例えば、トラックまたは乗用車などの車両のリムへの取り付けに適切である。図1に示すように、ベルトプライ11は、オーバーレイプライ12によって被覆されてもよい。カーカスプライ9は、1対の軸方向の反対端部6を含み、そのそれぞれは、ビード4のそれぞれ1つに割り当てられる。カーカスプライ9の、各軸方向端部6は、各軸方向端部6に固定する位置に、それぞれのビード4で折り返し、回すことができる。カーカスプライ9、ベルトプライ11およびオーバーレイプライ12のうちの1つまたは複数は、ポリエステル、レーヨンまたは類似の適切な有機高分子化合物などの布地材料からなるまたは金属ワイヤからなる、実質的に平行な複数の補強部材を有していてもよい。カーカスプライ9の折り返し部分6は、2つのフリッパー8の軸方向外部表面と2つのチッパー7の軸方向内部表面とをはめ込むことができる。図1に示すように、例示のトレッド10は、4つの周溝を有することができ、それぞれの溝は、本質的に、トレッド10にU字型の開口部を画定する。
【0070】
図1の実施形態は、例えば、アペックス5、チッパー7、フリッパー8およびオーバーレイ12を含む複数のタイヤ成分を提案するが、そのような成分すべてが、本発明に必須ではない。また、カーカスプライ9の折り返し端部は、本発明に必要ではなく、またはビード領域3の反対側を通り、ビート4の軸方向の外側ではなく、ビード4の軸方向の内側で終わることができる。タイヤはまた、例えば、多かれ少なかれ、4つの溝を有することもできた。本発明は、ブロックコポリマーを含むゴム組成物に焦点を置いていることは強調されるべきである。したがって、図1の説明およびその成分は、本発明を制限することなく、単に一例として理解されるべきである。
【0071】
本発明の一実施形態において、タイヤ1のゴム成分などのゴム組成物は、溶液重合スチレンブタジエンゴムならびにエラストマーブロックおよびポリ(イソボルニルメタクリレート)ブロックを有するブロックコポリマーを含む。代替の実施形態において、ゴム組成物は、エラストマーとして、ポリブタジエン、天然ゴム、溶液重合スチレンブタジエンのうちの1つまたは複数を含んでもよい。ブロックコポリマーは、ポリ(イソボルニルメタクリレート)ブロックの代わりに、ポリ(アダマンチルメタクリレート)ブロックまたは熱可塑性ブロック内の両方の熱可塑性材料、すなわち(イソボルニルメタクリレート)単位および(アダマンチルメタクリレート)単位を含むブロックを含むこともできる。
【0072】
そのようなブロックコポリマーは、例えば、フリーラジカル、イオン性、配位、可逆的付加-開裂連鎖移動(RAFT)または原子移動ラジカル重合(ATRP)によって、当業者によって調製され得る。
【0073】
本発明は、以下の例によって説明される。特に他の方法で示されなければ、部およびパーセンテージは重量基準で示される。
一例において、溶媒として1,1,2-トリクレロエタン(trichleroethane)(TCA)を用いて60℃の温度でRAFT重合によりならびに4-シアノ-4-[(ドデシルスルファニルチオカルボニル)スルファニル]ペンタン酸(CDTPA)およびα,α,’-アゾイソブチロニトリル(AIBN)を添加することにより、イソボルニルメチクリレート(isobornyl methycrylate)(IBOMA)をPIBOMAに重合するが、CDTPA:AIBNのモル比は4:1で、IBOMAは1.44g/mlまたは50%で24時間存在する。熱可塑性PIBOMA(ブロック)を得た後、CDTPAおよび開始剤2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(VAM-110)および1,1,2-トリクロルエタン(trichlorethane)(1,1,2-TCA)を例示反応時間72時間、モルTCAと開始剤の比が1:1で、すべて115℃の温度での添加のもとで、スチレンおよびブタジエンモノマーを添加する。このPIBOMA-SBRブロックコポリマーの合成は、当業者に公知の重合技術を用いた唯一の可能な例であることが改めて強調される。
【0074】
別の例において、ブロックコポリマーは、アニオン重合によって合成することができ、アニオン重合では、第1のステップでエラストマー形成モノマーから第1のエラストマーブロックを合成し、次いでジブロックコポリマーの第2の熱可塑性ブロックが形成されるように、第2のステップで熱可塑性モノマーを添加する。例えば、ブタジエンを真空下で、-20℃で予冷した圧力安定ガラス反応器に留出させる。さらに、反応器を0.1barの過圧までの不活性雰囲気で満たす。シクロヘキサン中のテトラアセチルエチレンジアミン(TMEDA)溶液を別のフラスコに入れ、脱気する。この溶液を、-20℃の不活性雰囲気(Arなど)の過圧下でブタジエンを含む反応器に注入する。次いで反応器を55℃に加熱し、溶液をこの温度で20分間撹拌する。ヘキサン中のn-BuLi溶液を55℃で反応器に注入すると、ポリ(ブタジエニル)リチウム(PBD-Li+)が生成される。n-BuLiの注入が完了してから、反応器内の温度を60℃に上昇させる。ブタジエンの重合を60℃で1時間進め、温度を45℃に低下させる。さらに温度を25℃に低下させ、1,1-ジフェニルエチレン(DPE)を反応器に注入してポリブタジエンアニオンをエンドキャップする。25℃で15分間撹拌を続け、溶液の色が淡黄色から橙赤色に変化する。その後、溶液を0℃まで冷却し、テトラヒドロフラン(THF)を反応器に導入し、溶液の色を赤色に変化させる。最後に、溶液の色が消えるように、0℃でIBOMAを反応器に注入する。IBOMAの重合を0℃で1.5時間進め、脱酸素化無水メタノールを注入して重合をクエンチする。得られたブロックコポリマーは、過剰のメタノールに(二重)沈殿させることによって精製し、乾燥させることができる。
【0075】
本発明者らは、様々な分子量を有するブロックおよび様々なエラストマーモノマー単位を含む複数の様々なブロックコポリマーを合成し、以下の表1に示すようなゴム組成物中にそれらを含める。
【0076】
特に、表1は、SSBR、充填剤(ここではカーボンブラック)、オイル、ステアリン酸、抗酸化剤、ワックス、酸化亜鉛、硫黄および硬化促進剤を含むゴム組成物の2つの対照試料を示す。対照試料1は、熱可塑性ポリマーを含まず、主としてカーボンブラック充填剤によって補強されているのに対し、(やはり本発明に従わない)対照試料2は、ゴム組成物の追加の補強のために使用されるポリエチレン(PE)10phrを含む。
【0077】
本発明実施例1~7の各々は、本発明の実施形態に従って、様々な種類のブロックコポリマーを含む。本発明実施例は、いずれもPEを含んでいない。カーボンブラック、オイル、ステアリン酸、抗酸化剤、ワックス、酸化亜鉛、硫黄および促進剤は、対照試料1および2と同じ重量レベルで含まれている。さらに、本発明実施例は、対照試料と同じ種類のSSBRを含むが、使用されるブロックコポリマーのエラストマーブロックの異なる鎖長の観点から、量はわずかに異なる。各ブロックコポリマー1~7の組成を、以下の表1の脚注に示す。
【0078】
【表1-1】
【0079】
【表1-2】
【0080】
表2は、表1にも列挙されている組成物の測定貯蔵弾性率(E’)値を示しており、貯蔵弾性率は剛性の指標または言いかえれば、PEおよび上記組成物中の様々なブロックコポリマーの補強効果の指標として考えることができる。
【0081】
追加のPE補強材を含む対照試料2は、100℃未満で剛性値が増加していることを示す。対照試料2は対照試料1と同じ量のカーボンブラックを含んでいるが、より高温では、PEの補強は著しく低下し、対照試料1の値を下回りさえする。本発明者らの拘束力を持たない理論によれば、これは主にPE材料の融点によって(135℃で)引き起こされる。
【0082】
本発明実施例に目を向けると、すべての本発明実施例は、測定温度30℃、50℃および100℃で、対照試料1および2よりも著しく高い剛性を示す。150℃でさえも、対照試料2と比較して、すべての本発明実施例で剛性がより高い。本発明実施例1、2、3、4および7はまた、対照試料1と比較して、150℃での貯蔵弾性率値がより高いことを示しているが、本発明実施例5および6の貯蔵弾性率値は、対照試料1と比較して、同じ温度で少なくとも同等のレベルにある。しかし、この文脈では、低温での剛性および補強は、対照試料1と比較して、本発明実施例5および6で著しくより高いことが強調される。
【0083】
【表2】
【符号の説明】
【0084】
1 タイヤ
2 サイドウォール
3 ビード領域
4 ビード
5 アペックス
6 軸方向端部
7 チッパー
8 フリッパー
9 カーカスプライ
10 トレッド
11 ベルトプライ
12 オーバーレイプライ
13 インナーライナー
図1
【外国語明細書】