(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183071
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】1つまたは複数の電気化学セルの電圧を測定するデバイス
(51)【国際特許分類】
H01M 8/02 20160101AFI20221201BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20221201BHJP
C25B 9/77 20210101ALI20221201BHJP
C25B 13/08 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
H01M8/02
H01M8/2483
C25B9/77
C25B13/08 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022084506
(22)【出願日】2022-05-24
(31)【優先権主張番号】2105460
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】522087084
【氏名又は名称】アルストム・イドロジェーヌ・エスアエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・ゲノ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ・ラコトンドレイニブ
【テーマコード(参考)】
4K021
5H126
【Fターム(参考)】
4K021DB04
4K021DB31
4K021DB53
5H126AA02
5H126AA15
5H126AA23
5H126BB06
5H126DD04
5H126DD05
5H126EE11
5H126FF09
(57)【要約】
【課題】セパレータと1つまたは複数の膜電極アセンブリとの積重ねによりもたらされる電気化学セルまたは複数の多層電気化学セルの電圧を確実に測定する電圧測定デバイスを提供することなど。
【解決手段】電圧測定デバイスは、1つまたは複数の電気化学セル(10)を形成するように積み重ねされている、セパレータ(6)と少なくとも1つの膜電極アセンブリ(8)とから形成されている積層アセンブリ(22)上で電圧測定を実施するようになされている。該電圧測定デバイスは、互いに離間されておりかつ互いに電気的に絶縁されている複数の電気接点(28)が上に分布している2つの測定板(24)を含み、該測定板(24)は積層アセンブリ(22)の両側に配置されるように構成されており、各測定板(24)の測定面は、この測定面(24A)上に配置されている電気接点(28)が前記セパレータ(6)と接触しているように、それぞれのセパレータ(6)に当接されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学セル(10)または複数の多層電気化学セル(10)を形成するように積層方向(S)に沿って積み重ねられている、セパレータ(6)と少なくとも1つの膜電極アセンブリ(8)とから形成されている、積層アセンブリ(22)上で電圧測定を実施するための電圧測定デバイスであって、
セパレータ(6)は前記積層アセンブリ(22)の各端部に配置されており、前記電圧測定デバイスは2つの測定板(24)を含み、各測定板は、互いに電気的に絶縁されている複数の離間された電気接点(28)が上に分布している測定面(24A)を有し、前記測定板(24)は、前記積層アセンブリ(22)の両側に配置されるように構成されており、各測定板(24)の前記測定面は、前記測定面(24A)上の前記電気接点(28)が前記セパレータ(6)と接触しているように、前記積層アセンブリ(22)の前記端部に配置されている2つの前記セパレータ(6)のそれぞれのセパレータ(6)に当接されている、電圧測定デバイス。
【請求項2】
各測定板(24)は、前記測定板(24)の縁部上に配置されているコネクタ(32)を有し、前記測定板により担持されている各電気接点(28)は前記コネクタ(32)に接続されている、請求項1に記載の電圧測定デバイス。
【請求項3】
各測定板(24)の前記コネクタ(32)は複数のプラグ(34)を含み、各プラグ(34)は前記測定板(24)の前記電気接点(28)のそれぞれの電気接点(28)に電気的に接続されている、請求項2に記載の電圧測定デバイス。
【請求項4】
前記電気接点(28)は、前記測定板(24)の前記測定面(24A)が互いに対向して配置されている場合、一方の測定板(24)の各電気接点が、他方の測定板(24)のそれぞれの電気接点(28)に対向しているように、各測定板(24)の前記測定面(24A)に亘って分布している、請求項1から3のいずれか一項に記載の電圧測定デバイス。
【請求項5】
各測定板(24)は、電気絶縁材料で作製されておりかつ前記電気接点(28)を担持している板状基板(30)を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の電圧測定デバイス。
【請求項6】
各測定板(24)の前記電気接点(28)は、前記積層アセンブリ(22)の前記電気化学セル(10)の活性面に対応する前記測定面の領域内に分布している、請求項1から3のいずれか一項に記載の電圧測定デバイス。
【請求項7】
各測定板(24)の前記電気接点(28)は、マトリクスパターンで、行列状に、前記測定板(24)の前記測定面(24A)上に分布している、請求項1から3のいずれか一項に記載の電圧測定デバイス。
【請求項8】
電圧測定値を決定するように構成されている多重チャネル電圧測定装置(40)を含み、電圧測定が、互いに実質的に対向して配置されている前記測定板(24)の一方の電気接点(28)および他方の測定板(24)の関連電気接点(28)により画定されている各測定点について行われる、請求項1から3のいずれか一項に記載の電圧測定デバイス。
【請求項9】
各測定板(24)は、前記測定板(24)が当接されている前記セパレータ(6)の開口部(36A、36B、36C、36D、36E、36F)と一致するように配置されておりかつ前記セパレータ(6)を通る反応性流体のまたは冷却流体の流動のために設けられている窓部(38A、38B、38C、38D、38E、38F)を含み、各測定板(24)の各窓部(38A、38B、38C、38D、38E、38F)は前記セパレータ(6)のそれぞれの開口部(36A、36B、36C、36D、36E、36F)と一致している、請求項1から3のいずれか一項に記載の電圧測定デバイス。
【請求項10】
電気化学セル(10)または複数の多層電気化学セル(10)を形成するように積層方向(S)に沿って積み重ねられている、セパレータ(6)と少なくとも1つの膜電極アセンブリ(8)とから形成されている積層アセンブリ(22)を含むアセンブリであって、
セパレータ(6)が前記積層アセンブリ(22)の各端部に配置されており、上記に定義されている電圧測定デバイス(20)の前記測定板(24)は前記積層アセンブリ(22)の両側に配置されており、各測定板(24)の測定面(24A)が、前記積層アセンブリ(22)の前記端部に配置されている2つのセパレータ(6)のそれぞれのセパレータ(6)に当接されており、その結果、この測定面(24A)上に配置されている前記電気接点(28)は前記セパレータ(6)と接触している、アセンブリ。
【請求項11】
多層電気化学セル(10)を画定している、積み重ねられたセパレータ(6)と膜電極アセンブリ(8)とから形成されているスタック(4)を含む電気化学反応器(2)を含み、
前記測定板(24)は前記スタック(4)に、前記スタック(4)の1つまたは複数の電気化学セル(10)を形成している、前記スタック(4)の前記セパレータ(6)と前記少なくとも1つの膜電極アセンブリ(8)とにより形成されている前記積層アセンブリ(22)の両側に、組み込まれている、請求項10に記載のアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータと積重ね方向に沿って積み重ねられている膜電極アセンブリとから形成されている、1つまたは複数の電気化学セルを画定している、スタックを含む、電気化学反応器の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような電気化学反応器は、例えば、酸化剤と燃料との間の電気化学反応による電力生産用の燃料電池、または例えば水から二水素および二酸素を生産するための、電気を使用する、流体からの化学元素の分離用の電解槽である。
【0003】
そのような電気化学反応器において、各膜電極アセンブリは、2つの電極間に挿入されているイオン交換膜を含む積層の形をしている。
【0004】
各セパレータは導電性であり、板状であり、膜電極アセンブリの面に当接されて、該セパレータの2つの面の一方または各々が、膜電極アセンブリのその面と共に、該膜電極アセンブリの前記面に沿った流体の流動のための流体室を画定するように構成されている。
【0005】
スタックにおいて、各電気化学セルは2つのセパレータ間の膜電極アセンブリにより画定されており、該セパレータの各々は、それが当接されている膜電極アセンブリの面と共に流体室を画定しており、電気化学反応は、流体室を通って、膜電極アセンブリを通って流動する流体間のイオン交換により実施される。
【0006】
電気化学セルは直列に電気的に接続されている。セパレータは電気化学セル間の電流の伝導および該電気化学セル内の流体の分配を確実にする。
【0007】
スタックは、一般に、セパレータと膜電極アセンブリとの間に良好な流体シールを得るために、積重ね方向に沿ったフィルタプレスタイプなどの機械的圧縮下で維持されて、異なる要素(セパレータと膜電極アセンブリとの)間の良好な電気接触を確実にし、効率的な電気化学反応を確実にする。
【0008】
セパレータと膜電極アセンブリとを積み重ねることにより形成されている電気化学反応器の、電気化学性能および耐久性を改善しかつより信頼性の高いものにすることが望ましい。
【0009】
そのような電気化学反応器の電気化学性能はいくつかの要因、詳細には各膜電極アセンブリを構成している材料の性質ならびに物理的/化学的特性、熱的特性、および機械的特性;流体の分配と電流の伝導の両方を可能にするセパレータの設計および形状;スタックの機械的圧縮の状態;ならびに動作条件、詳細には電気化学セル内で循環している流体の各々の温度、圧力、および流量に依存する。
【0010】
電気化学セルの電気化学性能は、詳細には電流に対する電圧レスポンスに関する(すなわち、電気化学セルを通って流れる電流に対する電気化学セルの2つのセパレータ間の電圧に関する)その分極曲線、およびしたがって動作条件の関数としての関連電力、により定義される。
【0011】
スタック内の1つまたは複数の電気化学セルの電圧の測定は、例えば、この目的のためにセパレータ上に設けられている接触区域内でセパレータと接触する電気接点により実施され、各セパレータの該接触区域は、例えばセパレータの周囲縁部上にスタックが作製された後にアクセス可能な、セパレータ上の局在点に置かれている。
【0012】
しかし、その電気化学セルの2つのセパレータの各々に配置されている接触区域から実施される電気化学セルの電圧の測定は、セパレータ上の、すなわちセパレータの周囲の所の、すなわち膜電極アセンブリの平面に対して垂直なセパレータの面上のまたは膜電極アセンブリの平面に平行なセパレータの面上の、接触区域の配置に依存する可能性がある。セパレータ上の接触区域の異なる配置が異なる結果をもたらす可能性がある。
【0013】
これは特に、高分子バインダおよび/または樹脂を含有するマトリクス内に埋め込まれているグラファイトおよび/または炭素粉末で構成されている複合材料の熱圧着により作製されているセパレータの場合に当てはまる。そのようなセパレータは、実際、異方性導電性を示す可能性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的の1つが、セパレータと1つまたは複数の膜電極アセンブリとの積重ねによりもたらされる1つの電気化学セルまたは複数の多層電気化学セルの電圧を高い信頼性で測定する電圧測定デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的のために、本発明は、1つの電気化学セルまたは複数の多層電気化学セルを形成するように積層方向に沿って積み重ねられている、セパレータと少なくとも1つの膜電極アセンブリとから形成されている積層アセンブリにおいて電圧測定を実施する電圧測定デバイスを提案し、セパレータは積層アセンブリの各端部に配置されており、該電圧測定デバイスは2つの測定板を含み、各測定板は、互いに電気的に絶縁されている複数の離間された電気接点が上に分布している測定面を有し、該測定板は、積層アセンブリの両側に配置されるように構成されており、各測定板の測定面は、その測定面上の電気接点が前記セパレータと接触しているように、積層アセンブリの両端部に配置されている2つのセパレータのそれぞれ1つに当接されている。
【0016】
測定板は、セパレータと1つまたは複数の膜電極アセンブリとを重ね合わせることにより形成されている積層アセンブリの両側に配置されてもよく、2つの測定板の各々の測定面はそれぞれのセパレータの面と接触している。
【0017】
詳細には、測定板は、電気化学反応器のセパレータと膜電極アセンブリとのスタック内へ挿入されて、2つの測定板間に配置されている電気化学反応器の電気化学セルにより形成されている積層アセンブリの電圧を測定することが可能である。
【0018】
2つの測定板の各々の測定面上に分布している電気接点により、電圧測定はセパレータに亘って分布している異なる測定点で行われ、したがって異なる電気接点により画定されている異なる測定点間の電圧の差異を考慮に入れることが可能になる。
【0019】
その電気化学セルのセパレータおよび膜電極アセンブリに平行な電気化学セルの延長平面内の位置の関数としての各電気化学セルの電圧レスポンスをマッピングすることが可能である。
【0020】
特定の実施形態によれば、電圧測定デバイスは、個々にまたは技術的に可能な任意の組合せで採用される次の特徴のうちの1つまたは複数を有する:
- 各測定板が、該板の1つの縁部上に配置されているコネクタを有し、板により担持されている各電気接点は該コネクタに接続されている;
- 各測定板のコネクタは複数のプラグを含み、各プラグは測定板の電気接点のそれぞれ1つに電気的に接続されている;
-測定板の測定面が互いに対向して配置されている場合、電気接点は一方の測定板の各電気接点が他方の測定板のそれぞれの電気接点に対向しているように、各測定板の測定面に亘って分布している;
- 各測定板は、電気絶縁材料で作製されておりかつ電気接点を担持している板状基板を含む;
- 各測定板の電気接点は、積層アセンブリの電気化学セルの活性面に相当する測定面の領域内に分布している;
- 各測定板の電気接点は、マトリクスパターンで、行列状に、測定板の測定面上に分布している;
- 電圧測定デバイスは、電圧測定値を決定するように構成されている多重チャネル電圧測定装置を含み、電圧測定が、互いに実質的に対向して配置されている、一方の測定板の電気接点および他方の測定板の関連電気接点により画定されている各測定点について行われる;
- 各測定板は、測定板が当接されているセパレータの開口部と一致するように配置されておりかつセパレータを通る反応性流体のまたは冷却流体の流動のために設けられている窓部を含み、各測定板の各窓部はセパレータのそれぞれの開口部と一致している。
【0021】
また、本発明は、1つの電気化学セルまたは複数の多層電気化学セルを形成するように積層方向に沿って積み重ねられているセパレータと少なくとも1つの膜電極アセンブリとから形成されている積層アセンブリを含むアセンブリであって、セパレータが積層アセンブリの各端部に配置されており、前段で定義されている電圧測定デバイスの測定板は積層アセンブリ(22)の両側に配置されており、各測定板の測定面が、積層アセンブリの端部に配置されている2つのセパレータのそれぞれ1つに当接されており、その結果、この測定面上に配置されている電気接点は前記セパレータと接触している、アセンブリに関する。
【0022】
特定の実施形態では、アセンブリは、多層電気化学セルを画定している積み重ねられたセパレータと膜電極アセンブリとから形成されているスタックを含む電気化学反応器を含み、測定板は、セパレータと少なくとも1つの膜電極アセンブリとのスタックにより形成されている積層アセンブリの両側で該スタックに組み込まれており、スタックの1つまたは複数の電気化学セルを形成している。
【0023】
本発明およびその利点は、添付図面を参照して、単に非制限的例として与えられている次の説明を読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】セパレータと膜電極アセンブリとのスタックで構成されている電気化学反応器の側面図であり、該電気化学反応器は電圧測定デバイスを備え付けられている、図である。
【
図2】電圧測定デバイスの測定板が電気化学セルの両側に配置されている、電気化学セルの横断面図である。
【
図3】
図2の電気化学セルおよび測定デバイスの測定板の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1および
図2に示されている電気化学反応器2は、複数の多層電気化学セル10を画定している、セパレータ6と膜電極アセンブリ8とのスタック4を有する。
【0026】
セパレータ6と膜電極アセンブリ8とは積重ね方向Eに沿って積み重ねられている。電気化学セル10は該積重ね方向Eに沿って重ね合わせられている。
【0027】
実際には、電気化学反応器2は、数十または数百の多層電気化学セル10を含み得る。
【0028】
図2および
図3に示されている通り、スタック4内の各電気化学セル10は、2つのセパレータ6間に膜電極アセンブリ8が間置されることにより形成されている。
【0029】
膜電極アセンブリ8(MEA: membrane electrode assembly)は、イオン交換膜12が2つの電極14間に差し込まれて構成されている積層である(
図2)。該イオン交換膜12は、例えば、プロトン交換膜(PEM: proton exchange membrane)またはアニオン交換膜(AEM: anion exchange membrane)である。
【0030】
各セパレータ6は導電性である。
【0031】
各セパレータ6は、例えば、金属材料または好ましくはグラファイト粉末および/もしくは炭素粉末を含有する材料、例えば高分子バインダおよび/または樹脂で作製されているマトリクス内にグラファイトビーム(graphite beam)および/または炭素粉末を含む複合材料、で作製されている。
【0032】
各セパレータ6は板状である。各セパレータ6は2つの対向側面を有する。
【0033】
各電気化学セル10は延長平面Pに沿って延在している。各電気化学セル10の該延長平面Pは、セパレータ6と膜電極アセンブリ8とが沿って積み重ねられている積重ね方向Eに対して垂直である。
【0034】
セパレータ6と膜電極アセンブリ8とは各々、延長平面Pに沿って延在している。該延長平面Pは電気化学セル10のセパレータ6および膜電極アセンブリ8に実質的に平行である。
【0035】
各電気化学セル10において、各セパレータ6は膜電極アセンブリ8のそれぞれの面に当接されている。
【0036】
電気化学セル10の2つのセパレータ6の各々は、セパレータ6が当接されている膜電極アセンブリ8の面に沿って流体を導くように構成されている、膜電極アセンブリ8に当接されているその面を有する。
【0037】
膜電極アセンブリ8に当接されているセパレータ6の側面は、例えば、流体の循環のための分配チャネル16を有する。該分配チャネル16は共に、流体流場または気体流場を画定している。
【0038】
セパレータ6の面が膜電極アセンブリ8に当接されている場合、流場は、膜電極アセンブリ8と共に、流体室を画定する。
【0039】
動作中、各電気化学セル10において、膜電極アセンブリ8の2つの対向側面に沿って流動する流体は、膜電極アセンブリ8の両側に配置されている2つのセパレータ6を通して導かれる流体間でイオン(またはアニオン)交換により、電気化学反応が起こることを可能にし、該イオン(またはアニオン)は膜電極アセンブリ8を通過する。
【0040】
各電気化学セル10において、電気化学反応は、「活性面」として知られている領域上で、膜電極アセンブリ8に亘って起こる。該活性面は延長平面Pに沿って延在している。活性面は、セパレータ6の流場に対向して配置されている膜電極アセンブリ8の領域である。
【0041】
電気化学反応器2が燃料電池である場合、2つのセパレータ6の一方が、該セパレータが当接されている膜電極アセンブリ8の面に沿って燃料流体を導くように構成されており、他方のセパレータ6は、該セパレータが当接されている膜電極アセンブリ8の他方の面に沿って酸化流体を導くように構成されている。
【0042】
スタック4は、例えば、バイポーラセパレータ6(「バイポーラ板」としても知られている)を含み、各バイポーラセパレータ6は2つの膜電極アセンブリ8間に間置されており、セパレータ6の2つの面の各々は、セパレータ6のその面が当接されている膜電極アセンブリ8の面に沿って流体を導くように構成されている。各バイポーラセパレータ6は2つの隣接する電気化学セル10に共通である。
【0043】
スタック4は、例えば、モノポーラセパレータ6を含み、各モノポーラセパレータ6は、膜電極アセンブリ8の面に当接されているその2つの面の一方のみを有し、セパレータ6のこの面は、膜電極アセンブリ8の前記面に沿って流体を導くように構成されている。各モノポーラセパレータ6は単一の電気化学セル10に属する。
【0044】
スタック4は、例えば、膜電極アセンブリ8と交互に積み重ねられているバイポーラセパレータ6から形成されており、2つのモノポーラセパレータ6は該スタック4の端部に配置されており、スタック4の端部に配置されている2つの電気化学セル10を画定している。
【0045】
各電気化学セル10において、セパレータ6は流体分配および電気伝導を確実にする。
【0046】
スタック4において、電気化学セル10はセパレータ6により直列に電気的に接続されている。各電気化学セル10は次の電気化学セル10に電気的に接続されている。
【0047】
動作中、各電気化学セル10は、その電気化学セル10の2つのセパレータ6間の電位差に対応する電圧を有し、電流が該電気化学セルを通って流れる。
【0048】
電気化学セル10の電圧は1つの電気化学セル10から別のものまで様々である可能性がある。電気化学セル10は直列に電気的に接続されているので、電気化学セル10を通る電流は原則として同一である。
【0049】
図1から
図3までに示されている通り、電圧測定デバイス20は、1つの電気化学セル10または複数の多層電気化学セル10に亘る電圧を測定するように構成されている。
【0050】
電圧測定デバイス20は、積層方向Sに沿って積み重ねられたセパレータ6と少なくとも1つの膜電極アセンブリ8とから形成され、積層方向Sに沿って重ね合わせられている1つまたは複数の電気化学セル10を画定している、積層アセンブリ22に亘る電圧を測定するように構成されており、各電気化学セル10は、膜電極アセンブリ8が2つのセパレータ6間に間置されて、形成されている。
【0051】
積層アセンブリ22は積層方向Sに沿って2つの対向する端面22Aを含み、各端面22Aは積層アセンブリ22のそれぞれのセパレータ6により画定されている。
【0052】
電圧測定デバイス20は、積層アセンブリ22の両側に配設されるように構成されている2つの測定板24を含み、該積層アセンブリ22は積層方向Sに沿って2つの測定板24間に間置されている。
【0053】
各測定板24は、積層アセンブリ22のそれぞれの端面22Aと、すなわち積層アセンブリ22の端部において2つのセパレータ6のそれぞれの1つと、接触するようになされている測定面24Aを有する。
【0054】
電圧測定デバイス20の測定板24は電気化学反応器2のスタック4内に組み込まれて、スタック4の電気化学セル10のうちの1つの電圧を測定する。
【0055】
積層アセンブリ22は、間に膜電極アセンブリ8を備えた2つのセパレータ6で構成されており、該2つのセパレータ6と膜電極アセンブリ8とは電気化学セル10を形成している。積層アセンブリ22の積層方向Sはスタック4の積重ね方向Eと一致する。
【0056】
図1から
図3までに示されている通り、2つの測定板24の各々はスタック4内へ、好ましくは2つのセパレータ6間に、挿入される。
【0057】
各測定板24は、例えば、スタック4内の2つのバイポーラセパレータ6間に挿入されるように構成されており、膜電極アセンブリ8の代わりをする。
【0058】
各測定板24は、測定板24が間置されている2つのセパレータ6の直列電気接続を確実にするために設けられることが好ましい。
【0059】
これにより、例えば膜電極アセンブリ8の代わりに、測定板24が、電気化学セル10の直列電気接続を壊すことなく、スタック4内の2つのセパレータ6間に挿入されることが可能になる。
【0060】
各測定板24は、その測定面24A上に、互いに離間されてかつ電気的に絶縁されて、該測定板24の該測定面24Aに亘って分布している複数の電気接点28を担持している。
【0061】
各測定板24の電気接点28は、積層アセンブリ22の端面22Aに当接されている測定板24が電気接点28を介してこの端面22Aと接触しているように配置されている。
【0062】
各測定板24は、例えば、電気絶縁材料で作製されている板状基板30を含み、該基板30は電気接点28を担持している。
【0063】
各電気接点28は導電性材料、例えば金属材料、で作製されている。
【0064】
各測定板24の電気接点28は、膜電極アセンブリ8の活性面または2つの測定板24間に間置されている積層アセンブリ22の膜電極アセンブリ8の形状に形状が対応する測定領域内に分布していることが好ましい。
【0065】
各測定板24の測定領域は、詳細には積層アセンブリ22の各セパレータ6の流場を含む。
【0066】
各測定板24の測定領域は、例えば、矩形形状を有する。
【0067】
測定板24の測定面24Aが互いに対向して配置されている場合、各測定板24の電気接点28は、一方の測定板24の各電気接点28が他方の測定板24の関連するそれぞれの電気接点28と一致しているように、測定面24Aに亘って分布していることが好ましい。
【0068】
測定板24が積層アセンブリ22の両側に配置されている場合、一方の測定板24の各電気接点28は、積層方向Sに沿って他方の測定板24の関連するそれぞれの電気接点28と一致している。
【0069】
一方の測定板24の各電気接点28と他方の測定板24の電気接点28とは共に、積層アセンブリ22の端部に接触している2つのセパレータ6間で取られる、積層アセンブリ22の電圧を測定するための測定点を画定している。
【0070】
一実施形態では、各測定板24の電気接点28は、マトリクスパターンで、該測定板24の測定面24A上に分布している。マトリクスパターンが行列状の分布である。
【0071】
図2に示されている通り、各測定板24の電気接点28の1つまたは複数が、測定板24が間置されている2つのセパレータ6を電気的に接続するために、基板30を通過することが有利である。
【0072】
したがって、各測定板24は、測定板24が間置されている2つのセパレータ6の直列電気接続を確実にする可能性がある。
【0073】
1つの特定の例では、
図2に示されているように、各測定板24の各電気接点28は、測定板24が間置されている2つのセパレータ6を電気的に接続するために、基板30を通過する。
【0074】
基板30を通過する各電気接点28は、例えば、測定板24の測定面24Aにおいてかつ反対側の面において基板30から突出している。
【0075】
各測定板24はセパレータ6の外形と実質的に同一の外形を有することが有利である。これは、測定板24が電気化学反応器2のスタック4内へ、例えばスタック4の2つのセパレータ6間に、容易に挿入されることを可能にし、測定板24は、突出することなく、セパレータ6と位置合わせされている。
【0076】
各測定板24には、例えば、測定板24の縁部上に配置されている電気コネクタ32が設けられており、測定板24により担持されている各電気接点28は該電気コネクタ32に接続されている。
【0077】
電気コネクタ32は、例えば、測定板24の縁部から突出している。したがって、電気コネクタ32は、測定デバイス20がスタック4内へ組み込まれている場合、電気化学反応器2のこのスタック4から突出することができ、それにより測定板24の接続が容易になる。
【0078】
電気コネクタ32は電源プラグ34を含み、各電源プラグ34は、例えば電気トラック(図面を分かり易く保つために図示せず)により、それぞれの電気接点28に接続されている。
【0079】
図3に示されている通り、各セパレータ6は、1つまたは複数の膜電極アセンブリ8と共に積み重ねられている複数のセパレータ6に亘って、酸化還元反応に必要な反応性流体の流動のための、かつ随意に冷却流体の流動のための導管を形成するように構成されている開口部36A、36B、36C、36D、36E、36Fを含む。
【0080】
スタック4または積層アセンブリ22などの1つもしくは複数の電気化学セル10を画定している、セパレータ6と1つまたは複数の膜電極アセンブリ8とのスタックにおいて、セパレータ6の開口部36A、36B、36C、36D、36E、36Fは位置合わせされてスタック4を通過する複数の導管を画定しており、各導管は反応性流体または冷却流体の流動を可能にする。各導管は入口導管または出口導管のどちらかである。
【0081】
セパレータ6の流場、およびセパレータ6の任意の冷却導管が、該流場内へ入る反応性流体の流動、および冷却導管内へ入る任意の冷却流体の流動のために、開口部36A、36B、36C、36D、36E、36Fにより画定されている導管に流体接続されている。
【0082】
各セパレータ6は、例えば、第1の反応性流体の入口導管用の開口部36Aと、第2の反応性流体の入口導管を形成するための開口部36Bと、冷却流体の入口導管を形成するための開口部36Cと、第1の反応性流体の出口導管を形成するための開口部36Dと、第2の反応性流体の出口導管を形成するための開口部36Eと、冷却流体の出口導管を形成するための開口部36Fとを含む。
【0083】
各測定板24は、測定板24が当接されているセパレータ6の開口部36A、36B、36C、36D、36E、36Fと一致するように配置されている窓部38A、38B、38C、38D、38E、38Fを含むことが好ましく、各測定板24の窓部38A、38B、38C、38D、38E、38Fはセパレータ6のそれぞれの開口部36A、36B、36C、36D、36E、36Fと一致している。
【0084】
したがって、各測定板24は積層アセンブリ22上に配置されてもよいか、またはスタック4内へ挿入されてもよく、一方、積層アセンブリ22および適用可能な場合にはスタック4を通る各反応性流体および随意に冷却流体の流動を可能にする。
【0085】
図1に戻って、測定板24は、膜電極アセンブリ8が2つのセパレータ6間に間置されることにより形成されている電気化学セル10に対応する積層アセンブリ22の両側に配置されることにより、スタック4内へ組み込まれる。
【0086】
各測定板24はスタック4内の2つのセパレータ6間に挿入されている。
【0087】
測定板24のコネクタ32のみがスタック4から、より具体的には該スタック4の一側面4Aから、突出している。
【0088】
スタック4において、セパレータ6の開口部36A、36B、36C、36D、36E、36Fは、スタック4を通る複数の導管を画定するように位置合わせされており、各導管は反応性流体または冷却流体の流動を可能にする。各導管は入口導管または出口導管のどちらかである。
【0089】
スタック4は、少なくとも1つの反応性流体源、この場合には2つの反応性流体源S1、S2に、かつ随意に冷却回路CCに、流体接続されている。
【0090】
各反応性流体源S1、S2は、例えば、開口部36A、36Bにより画定されている入口導管に接続されている。適用可能な場合、DC冷却回路は、例えば、開口部36Cにより画定されている入口導管に接続されている。入口導管の各々はスタック4の一方の端部において開いている。開口部36D、36E、36Fにより形成されている出口導管は各々、スタック4の一方の端部において開いている。
【0091】
測定板24はスタック4内へ組み込まれており、それらの窓部38A、38B、38C、38D、38E、38Fの各々は、積重ね方向Eに沿って、セパレータ6の対応する開口部36A、36B、36C、36D、36E、36Fと一致している。したがって、測定板24により、スタック4を通る流体の流動を可能になる。
【0092】
各測定板24は、それが間置されている2つのセパレータ6間に直列電気接続をもたらして、スタック4内の全電気化学セル10の直列電気接続を確実にする。
【0093】
電圧測定デバイス20は、測定板24に接続されている場合、測定板24の2つの関連電気接点28により画定されている各測定点において積層アセンブリ22に亘る電圧を測定するように構成されている多重チャネル電圧測定装置40を含む。
【0094】
多重チャネル電圧測定装置40が、測定板24の関連電気接点28により画定されている各測定点について積層アセンブリ22に亘る電圧をマッピングするように構成されていることが有利である。
【0095】
図1に示されている通り、多重チャネル電圧測定装置40は、プレートコネクタ32を補完する装置コネクタ42を介して、測定板24に接続されており、各装置コネクタ42はそれぞれのプレートコネクタ32に接続されている。
【0096】
多重チャネル電圧測定装置40は、例えば、積層アセンブリ22の分極マッピングを決定しかつ積層アセンブリ22の電気化学セル10の分極マッピングを導き出すように構成されている。
【0097】
分極マッピングは、測定板24の電気接点28により画定されている異なる測定点についての、積層アセンブリ22または電気化学セル10を通って流れる電流の関数としての、積層アセンブリ22または積層アセンブリ22の電気化学セル10の電圧レスポンスである。
【0098】
分極マッピングは、例えば、例えばスタック4を横断して接続されているプログラム可能な電気機器46により、スタック4、ならびにしたがって積層アセンブリ22および各電気化学セル10に電流を通すことにより、電気化学反応器2を動作させることにより決定され、測定板24の電気接点28により画定されている各測定点において、積層アセンブリ22の電圧を測定する。
【0099】
積層アセンブリ22が単一の電気化学セル10を含む場合、各測定点における電圧は、該電気化学セル10のその測定点における電圧に等しいと見なされる可能性がある。
【0100】
積層アセンブリ22が複数の多層電気化学セル10を含む場合、各電気化学セル10の各測定点における電圧は、積層アセンブリ22内の電気化学セル10の数で割られた、その測定点における積層アセンブリ22の電圧に等しいと見なされる可能性がある。
【0101】
電圧測定デバイス20により、1つまたは複数の電気化学セル10を含む積層アセンブリ22の異なる点で電圧を測定すること、および異なる測定点について積層アセンブリ22の電圧をマッピングすることが可能である。
【0102】
測定点は電気化学セル10の活性領域に亘って分布している。これは、電圧不均一性を検出することを可能にする。そのような不均一性は、例えば、炭素複合材料で作製されているセパレータ6で起こる可能性がある。
【0103】
測定が、測定デバイス20を電気化学反応器のスタック4内へ組み込むことにより、スタック4の1つまたは複数の電気化学セル10により形成されている積層アセンブリ22上で測定を実施することにより、実施され得る。
【0104】
電圧測定はこのようにその場で実施されることが可能であり、したがってスタック4の圧縮の機械的状態および/またはスタック4を封止するための、セパレータ6と膜電極アセンブリ8との接続などの、スタック4の性能パラメータを考慮することができる。
【0105】
これらの電圧測定に関連するマッピングはまた、スタック4の動作の不均一性につながる可能性がある、セパレータ6の電気伝導特性の不均一性の実態を提供するであろう。
【符号の説明】
【0106】
2 電気化学反応器
4 スタック
4A (スタックの)側面
6 セパレータ、バイポーラセパレータ、バイポーラ板、モノポーラセパレータ
8 膜電極アセンブリ
10 多層電気化学セル、電気化学セル
12 イオン交換膜
14 電極
16 分配チャネル
20 電圧測定デバイス
22 積層アセンブリ
22A (積層アセンブリの)端面
24 測定板
24A (測定板の)測定面
28 電気接点
30 板状基板
32 電気コネクタ、プレートコネクタ
34 電源プラグ
36A、36B、36C、36D、36E、36F (セパレータの)開口部
38A、38B、38C、38D、38E、38F (測定板の)窓部
40 多重チャネル電圧測定装置
42 装置コネクタ
46 プログラム可能な電気機器
CC 冷却回路
E 積重ね方向
P 延長平面
S 積層方向
S1、S2 反応性流体源
【外国語明細書】