(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183088
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】電気的に直列に接続され、並列に空気が供給されるいくつかの燃料電池を備える電気化学システム
(51)【国際特許分類】
H01M 8/04 20160101AFI20221201BHJP
H01M 8/249 20160101ALI20221201BHJP
H01M 8/2483 20160101ALI20221201BHJP
【FI】
H01M8/04 J
H01M8/249
H01M8/2483
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022085217
(22)【出願日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】2105454
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】522087084
【氏名又は名称】アルストム・イドロジェーヌ・エスアエス
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ヤシーン・ハンマディ
(72)【発明者】
【氏名】フランク・ベルベック
(72)【発明者】
【氏名】サンドリーヌ・メルスコエ
【テーマコード(参考)】
5H126
5H127
【Fターム(参考)】
5H126AA26
5H126BB06
5H127AA06
5H127AB13
5H127AB17
5H127BA02
5H127BA57
5H127BB02
5H127BB07
5H127BB12
5H127BB22
5H127BB37
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気的に直列に接続され、並列に空気が供給される複数の燃料電池を備える電気化学システムを提供する。
【解決手段】この電気化学システムは、電気的に直列に接続された複数の同一の燃料電池4と、燃料電池4に並列に空気を供給し、燃料電池4から空気を回収するように構成された空気供給システムと、を備え、空気供給システムは、共通の導管および個々の導管を各々備える入口マニホールド22および出口マニホールド24であって、入口マニホールド22の各個々の導管が、それぞれの燃料電池4の空気入口ポート4Cに接続され、出口マニホールドの各個々の導管が、それぞれの燃料電池4の空気出口ポート4Dに接続された、入口マニホールド22および出口マニホールド24と、入口マニホールド22、燃料電池4、および出口マニホールド24を通って空気が流れるようにするための単一の空気圧縮機とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電のための電気化学システムであって、前記電気化学システムが、電気的に直列に接続された複数の同一の燃料電池(4)と、並列に前記燃料電池(4)に空気を供給し、前記燃料電池(4)から空気を回収するように構成された空気供給システム(18)と、を備え、各燃料電池(4)が、空気入口ポート(4C)および空気出口ポート(4D)を有し、前記空気供給システム(18)が、共通の導管(36、56)および前記共通の導管(36、56)に接続された個々の導管(38、58)を各々備える入口マニホールド(22)および出口マニホールド(24)であって、前記入口マニホールド(22)の各個々の導管(38)が、それぞれの燃料電池(4)の空気入口ポート(4C)に接続され、前記出口マニホールドの各個々の導管(58)が、それぞれの燃料電池(4)の空気出口ポート(4D)に接続された、入口マニホールド(22)および出口マニホールド(24)と、前記入口マニホールド(22)、前記燃料電池(4)、および前記出口マニホールド(24)を通って空気が流れるようにするための単一の空気圧縮機(26)と、を備える、電気化学システム。
【請求項2】
前記入口マニホールド(22)および前記出口マニホールド(24)の少なくとも一方が、その共通の導管(36、56)の伸長軸(A、C)に関して回転対称である、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項3】
前記入口マニホールド(22)および前記出口マニホールド(24)の少なくとも一方が、その共通の導管(36、56)の伸長軸(A、C)を含む少なくとも1つの対称面(P1、P2;P3、P4)に関して直交対称である、請求項1または請求項2に記載の電気化学システム。
【請求項4】
前記入口マニホールド(22)および前記出口マニホールド(24)の少なくとも一方が、その共通の導管(36、56)の前記伸長軸(A、C)を含む2つの別個の対称面(P1、P2;P3、P4)について直交対称である、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項5】
前記2つの別個の対称面(P1、P2;P3、P4)が、互いに垂直である、請求項4に記載の電気化学システム。
【請求項6】
前記入口マニホールド(22)および前記出口マニホールド(24)の少なくとも一方が、その個々の導管(38、58)の各々の前記伸長軸(B、D)が、その共通の導管(36、56)の前記伸長軸(A、C)に平行であるように構成される、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項7】
前記入口マニホールド(22)および前記出口マニホールド(24)の少なくとも一方の前記導管の断面積が、前記共通の導管(36、56)から前記個々の導管(38、58)に向かって徐々に減少する、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項8】
前記入口マニホールド(22)および前記出口マニホールド(24)の少なくとも一方が、前記共通の導管(36、56)と前記個々の導管(38、58)との間に少なくとも2つの分岐部(40、44;60、64)を備える、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項9】
前記入口マニホールド(22)および前記出口マニホールド(24)の少なくとも一方の各分岐部(40、44;60、64)が、導管を2つに分ける、請求項8に記載の電気化学システム。
【請求項10】
前記入口マニホールド(22)および前記出口マニホールド(24)の少なくとも一方の前記共通の導管(36、56)が、2つの1次導管(42、62)に枝分かれし、各1次導管(42、62)が、2つの2次導管(46、66)に枝分かれする、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項11】
各2次導管(46、66)が、それぞれの個々の導管(38、58)によって終端される、請求項10に記載の電気化学システム。
【請求項12】
厳密に4つの燃料電池(4)を備える、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項13】
前記燃料電池(4)が、マトリックス構成で配置される、請求項1に記載の電気化学システム。
【請求項14】
前記燃料電池(4)が、すべて同じ向きで配置される、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記入口マニホールド(22)および前記出口マニホールド(24)が同一である、請求項1に記載の電気化学システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化剤として空気を使用する複数の燃料電池を備える電気化学システムであって、燃料電池は、電気的に直列に接続され、並列に空気が供給される、電気化学システムの分野に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、電気エネルギーを生成するために、燃料流体に含まれている燃料と、酸化剤流体に含まれている酸化剤と、の間で酸化還元反応を行うように構成される。
【0003】
燃料は、たとえば二水素であり、燃料流体は二水素であり、酸化剤は、たとえば二酸素であり、酸化剤流体はたとえば二酸素または空気である。
【0004】
燃料電池は、少なくとも1つの電気化学セル、好ましくは複数の重ね合わされた電気化学セルのスタックを含み、各電気化学セルが燃料と酸化剤との間で酸化還元反応を行うように構成されている。
【0005】
高い電力を必要とする用途には、電気的に直列に接続された複数の同一の燃料電池を備える電気化学システムであって、燃料電池は、燃料および酸化剤が並列に供給される、電気化学システムを提供することが可能である。
【0006】
そのような電気化学システムの動作中に、電気的に直列に接続された燃料電池は、それらを同じ電流が流れる。したがって、燃料電池が各々同じ量の電気エネルギーを発生させるように、燃料電池への酸化剤および燃料の均一で一定の供給が、確保されなければならない。
【0007】
これは、燃料電池への均一な供給を確保するために高性能のフローおよび/または圧力制御デバイスを燃料供給システムおよび酸化剤供給システムに備え付けることによって達成され得る。
【0008】
しかしながら、これは、電気化学システムの複雑さを増大させるという代償を払って成り立ち、設計、製造、および運用コストが比較的高くなることにつながり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的の1つは、酸化剤として空気を使用する複数の燃料電池を備える電気化学システムを提供することであり、この燃料電池は、電気的に直列に接続され、並列に空気が供給され、この電気化学システムは、単純な設計である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的で、本発明は、発電のための電気化学システムを提供し、この電気化学システムは、電気的に直列に接続された複数の同一の燃料電池と、燃料電池に並列に空気を供給し、燃料電池から空気を回収するように構成された空気供給システムと、を備え、各燃料電池は、空気入口ポートおよび空気出口ポートを有し、空気供給システムは、共通の導管および共通の導管に接続された個々の導管を各々備える入口マニホールドおよび出口マニホールドであって、入口マニホールドの各個々の導管が、それぞれの燃料電池の空気入口ポートに接続され、出口マニホールドの各個々の導管が、それぞれの燃料電池の空気出口ポートに接続される、入口マニホールドおよび出口マニホールドと、入口マニホールド、燃料電池、および出口マニホールドを通る空気流を押し込むための単一の空気圧縮機と、を備える。
【0011】
入口マニホールドと、出口マニホールドと、入口マニホールド、燃料電池、および出口マニホールドを通して空気を送り込むための単一の空気圧縮機と、を設けて、単純な電気化学システムを実現する。
【0012】
入口マニホールドおよび出口マニホールドは、受動的方法で燃料電池間の空気の均一な分配を可能にし、燃料電池間の均一な空気分配の能動的システムの必要がない。
【0013】
特定の実施形態によれば、電気化学システムは、個々にまたは技術的に可能な任意の組合せで選ばれる以下の特徴のうちの1つまたは複数を備える。
- 入口マニホールドおよび出口マニホールドの少なくとも一方が、その共通の導管の伸長軸に関して回転対称である。
- 入口マニホールドおよび出口マニホールドの少なくとも一方が、その共通の導管の伸長軸を含む少なくとも1つの対称面に関して直交対称である。
- 入口マニホールドおよび出口マニホールドの少なくとも一方が、その共通の導管の伸長軸を含む2つの異なる対称面について直交対称である。
- 2つの対称面が、互いに垂直である。
- 入口マニホールドおよび出口マニホールドの少なくとも一方が、その個々の導管の各々の伸長軸がその共通の導管の伸長軸に平行であるように構成される。
- 入口マニホールドおよび出口マニホールドの少なくとも一方の導管の断面積が、共通の導管から個々の導管まで徐々に減少する。
- 入口マニホールドおよび出口マニホールドの少なくとも一方が、共通の導管と個々の導管との間に少なくとも2つの分岐部を備える。
- 入口マニホールドおよび出口マニホールドの少なくとも一方の各分岐部が、導管を2つに分ける。
- 入口マニホールドおよび出口マニホールドの少なくとも一方の共通の導管が、2つの1次導管に枝分かれし、各1次導管が、2つの2次導管に枝分かれする。
- 各2次導管が、それぞれの個々の導管によって終端される。
- 電気化学システムは厳密に4つの燃料電池を備える。
- 燃料電池は、マトリックス構成で配置される。
- 燃料電池は、すべて同じ向きで配置される。
- 入口および出口マニホールドは同一である。
【0014】
本発明およびその利点は、添付の図面を参照しながら単に非限定的な例として行う以下の説明を読むと明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】複数の燃料電池を備える電気化学システムの概略図である。
【
図2】燃料電池、入口マニホールド、および出口マニホールドの配置を示す、電気化学システムの概略図である。
【
図5】入口マニホールドの1次分岐部の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、電気化学発電システム2は、複数の同一の燃料電池4を備え、各燃料電池4が、互いの上に重ね合わせられた複数の電気化学セル6のスタックを備える。
【0017】
各燃料電池4は、中心軸Eに沿って、たとえば、電気化学セル6がこの中心軸Eに沿って重ね合わせられて伸びる。
【0018】
各電気化学セル6は、燃料流体に含まれている燃料と、酸化剤流体に含まれている酸化剤と、の間で酸化還元反応を行うことによって電気を発生させるように構成される。
【0019】
各燃料電池4は、たとえば、イオン交換膜燃料電池、詳細にはプロトン交換膜燃料電池(PEMFC)である。
【0020】
知られている方法では、各電気化学セル6は、燃料流体の循環用の第1のチャンバと、酸化剤流体の循環用の第2のチャンバと、を備え、第1のチャンバおよび第2のチャンバは、イオン交換膜、詳細にはプロトン交換膜によって分離されている。
【0021】
各燃料電池4は、たとえば、燃料として水素(H2)を使用するように構成され、燃料媒体は、たとえば水素である。
【0022】
各燃料電池4は、酸化剤流体として空気を使用するように構成され、酸化剤は、空気中に存在する酸素である。
【0023】
各燃料電池4は、燃料流体が燃料電池4に入り、燃料流体を各電気化学セル6に供給するための燃料流体入口ポート4Aと、燃料電池4の電気化学セル6を通過した後に燃料流体が出るための燃料流体出口ポート4Bと、を備える。
【0024】
各燃料電池4は、空気が燃料電池4に入り、空気を各電気化学セル6に供給するための空気入口ポート4Cと、燃料電池4の電気化学セル6を通過した後に空気が出るための空気出口ポート4Dと、を備える。
【0025】
燃料電池4は、電気的に直列に接続されている。したがって、動作中、同じ電流が燃料電池4を流れる。
【0026】
燃料電池4は、たとえば、電気負荷8に接続されて、この電気負荷8に電気を供給する。電気負荷8は、たとえば電気を蓄えるためのバッテリー、または電気モーターを含む。
【0027】
電気化学システム2は、燃料流体源12を含む燃料流体供給システム10を備える。
【0028】
燃料流体供給システム10は、燃料電池4の燃料流体入口ポート4Aを燃料流体源12に、好ましくは並列に接続する燃料流体回路14を備える。
【0029】
燃料流体システム14は、たとえば、燃料流体が燃料流体システム14を通って流れるようにするために配置されたポンプ16を含む。ポンプ16は、たとえば燃料流体源12と、燃料電池4の燃料流体入口ポート4Aと、の間に配置される。
【0030】
電気化学システム2は、燃料電池4に空気を供給するように構成された空気供給システム18を備える。
【0031】
空気供給システム18は、空気回路20を備え、燃料電池4は空気回路20に並列に配置される。
【0032】
空気供給システム18は、入ってくる空気流を燃料電池4の空気入口ポート4C間で分配するように構成された入口マニホールド22(
図2)と、出ていく空気流を形成するために燃料電池4の空気出口ポート4Dを出ていく空気を集めるように構成された出口マニホールド24(
図2)と、を備える。
【0033】
入口マニホールド22および出口マニホールド24は各々、空気流をそれぞれ燃料電池4の上流および燃料電池4の下流に受動的に導くためのマニホールドの形態である。
【0034】
入口マニホールド22および出口マニホールド24は、空気流を能動的に調整するための作動装置付きの能動的空気流調整器がない。
【0035】
空気供給システム18は、入口マニホールド22および出口マニホールド24によって燃料電池4を通して、詳細には入口マニホールド22、燃料電池4、および出口マニホールド24を順番に通して空気を送り込むように配置された単一の空気圧縮機26を備える。
【0036】
好ましくは、空気圧縮機26は、入口マニホールド22の上流の空気回路20に配置される。空気圧縮機26は、空気を入口マニホールド22、燃料電池4、および出口マニホールド24に押し込む。
【0037】
空気圧縮機26は、入ってくる空気流を発生させ、空気流は、入口マニホールド22によって燃料電池4に並列に送り込まれる。出口マニホールド24は、出ていく空気流を形成するために、燃料電池4を出る空気を集める。
【0038】
場合によっては、空気供給システム18は、空気が燃料電池4に入る前に空気をろ過するように構成された少なくとも1つの空気ろ過デバイス28を備える。
【0039】
好ましくは、空気供給システム18は、入口マニホールド22の上流に配置された単一の空気ろ過デバイス28を備える。したがって、単一の空気ろ過デバイス28は、複数の燃料電池4に供給される空気をろ過することができる。
【0040】
有利には、空気ろ過デバイス28は、空気圧縮機26の下流に配置される。
【0041】
場合によっては、空気供給システム18は、空気が燃料電池4に入る前に空気を冷却するように構成された少なくとも1つの冷却デバイス30を備える。これは、圧縮によって加熱された空気が、燃料電池4に入る前に冷却されることを可能にする。
【0042】
好ましくは、空気供給システム18は、空気圧縮機26と入口マニホールド22との間に配置された単一の冷却デバイス30を備える。
【0043】
空気ろ過デバイス28が設けられるとき、好ましくは冷却デバイス30は、空気ろ過デバイス28の上流に配置される。これは、空気ろ過デバイス28が熱にさらされるのを制限することによって空気ろ過デバイス28を保護するのに役立つ。
【0044】
場合によっては、空気供給システム18は、たとえば出口マニホールド24の下流に、燃料電池4への空気の流れを調整するように構成された調整デバイス32を備える。
【0045】
調整デバイス32は、たとえば、空気流の断面積を減少または増加させるために可動弁を備える。
【0046】
好ましくは、空気供給システム18は、空気が燃料電池4を通過した後に空気を大気中に排出するためのベント34を備える。ベント34は、出口マニホールド24、および該当する場合は調整デバイス32の下流に位置する。
【0047】
図1では、燃料電池4は、側面図で概略的に示され、燃料流体供給システム10および空気供給システム18を説明するために互いに隣り合わせに並べられている。
【0048】
図2に示すように、燃料電池4は、好ましくは3次元構成で互いに隣り合わせに配置される。
【0049】
燃料電池4は、たとえば、燃料電池4が行および列に配置されるマトリックス構成で配置され、または燃料電池4が想像上の円に沿って分散される円形構成で配置される。
【0050】
これは、燃料電池4が、空気を均一に供給されるのを容易にするようにして配置されることを可能にする。
【0051】
特に有利な実施形態では、燃料電池4が正面図で示される
図2に示すように、燃料電池の数は4であり、2×2のマトリックス構成で配置される。
【0052】
燃料電池4は、たとえば、燃料電池4の正面図において、それらの中心軸Eが想像上の正方形の4つの隅に配置されるように配置される。
【0053】
燃料電池4は、好ましくはそれらの中心軸Eが互いに平行であるように配置される。
【0054】
各燃料電池4は、電気化学セル6の中心スタッキング軸Eに沿って燃料電池4の端部に位置する前面35Fおよび後面35Rを有する。
【0055】
燃料電池4は、好ましくは、それらの前面35Fが同じ方向を向き、それらの後面35Rが同じ方向を向くように配置される。
【0056】
燃料電池4の前面35Fは、好ましくは1つの平面(
図2の平面)に配置される。
【0057】
燃料電池4の空気入口ポート4Cは、たとえば、燃料電池4の前面35Fに位置している。
【0058】
燃料電池4は、好ましくはそれらのそれぞれのスタッキング軸E周りで同じ向きで配置される。
【0059】
図示の例では、各燃料電池4の前面35Fは、矩形の輪郭を有し、各燃料電池4が、そのスタッキング軸Eの周りに、前面35Fの縁部が、燃料電池4のマトリックス構成の行および列方向に平行であるように向きを定められ、各燃料電池4の空気入口ポート4Cが、前面35Fの左上隅に位置している。
【0060】
好ましい実施形態では、燃料電池空気出口ポート4Dもまた、燃料電池4の前面35Fに位置している。
【0061】
各燃料電池4の前面35Fが矩形の形状であるとき、空気入口ポート4Cおよび空気出口ポート4Dは、たとえば、前面35Fのそれぞれの隅に、詳細には2つのはす向かいの隅に、各々位置している。
【0062】
図2に示すように、各燃料電池4の空気出口ポート4Dは、たとえば、燃料電池4の前面35Fの右下の隅に位置している。
【0063】
入口マニホールド22(「分配器」としても知られる)は、空気圧縮機26によって発生した空気流を燃料電池4の空気入口ポート4C間で均一に分配するように構成される。
【0064】
入口マニホールド22は、共通の導管36と、共通の導管36に接続された複数の個々の導管38と、を備え、各個々の導管38は、それぞれの燃料電池4の空気入口ポート4Cに接続される。
【0065】
空気流の方向を考えると、共通の導管36は、段階的に分かれて、入口マニホールド22の個々の導管を形成する。
【0066】
入口マニホールド22は、各燃料電池4用のそれぞれの個々の導管38を備える。各燃料電池4の空気入口ポート4Cは、入口マニホールド22のそれぞれの個々の導管38に接続される。
【0067】
入口マニホールド22の共通の導管36は、共通の伸長軸Aに沿って伸び、入口マニホールド22の各個々の導管38は、それぞれの個々の伸長軸Bに沿って伸びる。
【0068】
一実施形態では、個々の導管38の個々の伸長軸Bは、共通の導管36の共通の伸長軸Aに平行である。
【0069】
有利には、入口マニホールド22は、その共通の導管36の共通の伸長軸Aに関して離散的回転対称性を有する。
【0070】
入口マニホールド22は、その共通の導管36の伸長軸Aに関して次数nの回転対称である。ここでnは正の整数である。入口マニホールド22は、この場合、その共通の導管36の共通の伸長軸Aの周りを角度2π/nだけ回転すると不変である。
【0071】
入口マニホールド22は、たとえば、共通の導管36の共通の伸長軸Aを含む少なくとも1つの対称面について直交対称である。
【0072】
特定の実施形態では、
図3に示すように、入口マニホールド22は、共通の導管36の共通の伸長軸Aを各々含む2つの異なる対称面P1、P2について直交対称であり、2つの対称面P1およびP2は、好ましくは互いに垂直である。
【0073】
入口マニホールド22は、共通の導管36と個々の導管38との間にたとえば少なくとも2つの分岐部を備える。たとえば、各分岐部が、上流導管を2つの下流導管に分ける。
【0074】
図3に示すように、入口マニホールド22は、たとえば、その共通の導管36が1次分岐部40で2つの1次導管42に細分されて構成され、各1次導管42は、2次分岐部44で2つの2次導管46に枝分かれする。各2次導管46は、たとえばそれぞれの個々の導管38によって終端される。
【0075】
そのような入口マニホールド22は、したがって4つの個々の導管38を備える。それは、
図2に示すように4つの燃料電池4を備える電気化学システム2のために構成される。
【0076】
入口マニホールド22は、1次分岐部40から各々伸びる2つのマニホールド部分48を備え、2つのマニホールド部分48の各々が、対称面P1に関して他方と対称である。
【0077】
各マニホールド部分48が、それぞれの2次分岐部44と、2次分岐部44から伸びる2つのマニホールドサブ部分50と、を含み、2つのマニホールドサブ部分50の各々が、対称面P2に関して他方と対称である。
【0078】
好ましくは、入口マニホールド導管の断面積は、共通の導管36から個々の導管38まで徐々に減少する。
【0079】
詳細には、入口マニホールド導管22の断面積は、各分岐部(たとえば、1次分岐部40および2次分岐部44)後に徐々に減少し、共通の導管36から個々の導管38に移る。
【0080】
図示の例では、導管の断面積は、1次導管42および2次導管46に沿って徐々に減少する。各1次導管42および各2次導管46は、徐々に減少する面積の断面積を有する。
【0081】
空気流の方向を考えると、入口マニホールド導管22の断面積は、上流(共通の導管36)から下流(個々の導管38)まで徐々に減少する。
【0082】
入口マニホールド22の各導管の断面積の減少は、導管の長さ全体にわたって、または導管の長さのごく一部にわたってなされる。
【0083】
図3に示す例では、1次導管42および2次導管46の断面積の減少は、これらの導管の長さのごく一部にわたってなされる。
【0084】
出口マニホールド24もまた、燃料電池4間で空気の均一な分配をもたらすように構成される。
【0085】
これを行うために、出口マニホールド24は、燃料電池4の空気出口ポート4Dから出る別個の空気流を結合して共通の出口空気流にするように構成され、異なる別個の空気流に対して同一の流れ状態を確保する。
【0086】
このために、
図4に示すように、出口マニホールド24は、たとえば入口マニホールド22に類似している。
【0087】
出口マニホールド24は、共通の導管56と、共通の導管56に接続された複数の個々の導管58と、を備え、各個々の導管58は、それぞれの燃料電池4の空気出口ポート4Dに接続される。
【0088】
空気流の方向を考えると、出口マニホールド24の個々の導管58は合流して、出口マニホールド24の共通の導管56を形成する。
【0089】
出口マニホールド24は、各燃料電池4用のそれぞれの個々の導管58を備える。各燃料電池4の空気出口ポート4Dは、出口マニホールド24のそれぞれの個々の導管58に接続される。
【0090】
出口マニホールド24の共通の導管56は、共通の伸長軸Aに沿って伸び、出口マニホールド24の各個々の導管58は、それぞれの個々の伸長軸Bに沿って伸びる。
【0091】
一実施形態では、出口マニホールド24の個々の導管58の個々の伸長軸Dは、出口マニホールド24の共通の導管56の共通の伸長軸Cに平行である。
【0092】
有利には、出口マニホールド24は、その共通の導管56の共通の伸長軸Cに関して離散的回転対称性を有する。
【0093】
出口マニホールド24は、その共通の導管56の共通の伸長軸Cに関して次数nの回転対称である。出口マニホールド24は、この場合、その共通の導管56の共通の伸長軸Cの周りを角度2π/nだけ回転すると不変である。
【0094】
出口マニホールド24は、たとえば、共通の導管56の共通の伸長軸Cを含む少なくとも1つの対称面について直交対称である。
【0095】
特定の実施形態では、
図4に示すように、出口マニホールド24は、共通の導管56の共通の伸長軸Cを各々含む2つの異なる対称面P3、P4について直交対称であり、2つの対称面P3、P4は、好ましくは互いに垂直である。
【0096】
出口マニホールド24は、共通の導管56と個々の導管58との間にたとえば少なくとも2つの分岐部を備える。たとえば、各分岐部が、上流導管を2つの下流導管に分ける。
【0097】
図4に示すように、出口マニホールド24は、たとえば、その共通の導管56が1次分岐部60で2つの1次導管62に細分されて構成され、各1次導管62は、2次分岐部64で2つの2次導管66に枝分かれする。各2次導管66は、たとえばそれぞれの個々の導管58によって終端される。
【0098】
そのような出口マニホールド24は、したがって4つの個々の導管58を備える。それは、
図2に示すように4つの燃料電池4を備える電気化学システム2のために構成される。
【0099】
出口マニホールド24は、1次分岐部60から各々伸びる2つのマニホールド部分68を備え、2つのマニホールド部分68の各々が、対称面P4に関して他方と対称である。
【0100】
各マニホールド部分68が、それぞれの2次分岐部64、および2次分岐部64から伸びる2つのマニホールドサブ部分70を含み、2つのマニホールドサブ部分70の各々が、対称面P3に関して他方と対称である。
【0101】
好ましくは、出口マニホールド導管24の断面積は、共通の導管56から個々の導管58まで徐々に減少する。
【0102】
詳細には、出口マニホールド導管24の断面積は、各分岐部(たとえば、1次分岐部60および2次分岐部64)後に徐々に減少し、共通の導管56から個々の導管58に移る。
【0103】
空気流の方向を考えると、出口マニホールド24の導管の断面積は、上流(個々の導管58)から下流(共通の導管56)まで増加する。
【0104】
図示の例では、導管の断面積は、1次導管62および2次導管66に沿って徐々に減少する。各1次導管62および各2次導管66は、徐々に減少する面積の断面積を有する。
【0105】
出口マニホールド24の各導管の断面積の減少は、導管の長さ全体にわたって、または導管の長さのごく一部にわたってなされる。
【0106】
図4に示す例では、1次導管62および2次導管66の断面積の減少は、これらの導管の長さのごく一部にわたってなされる。
【0107】
図3および
図4に示すように、各分岐部(入口マニホールド22の1次分岐部40および2次分岐部46、出口マニホールド24の1次分岐部60および2次分岐部64)は、一般的にT字形である。
【0108】
代替的に、第1の導管と、第1の導管から伸びる2つの第2の導管と、の間の分岐部の少なくとも1つまたは各々は、Y字形である。
【0109】
これは、同じレベルのマニホールド(入口マニホールド22または出口マニホールド24)で異なる導管に空気流の不均一性をもたらし得る局部的な過度の圧力の発生を回避する。
【0110】
2つの第2の導管は、ある角度をなしてもよい。
【0111】
図5に示すように、入口マニホールド22の共通の導管36(第1の導管)は、1次分岐部40で2つの1次導管42(第2の導管)に分かれ、1次分岐部40はY字形である。1次導管42は、ある角度をなしている。
【0112】
図5は、入口マニホールド22の1次分岐部40の場合を例として示すが、これは当然、出口マニホールド24の1次分岐部60、および/または入口マニホールド22の各2次分岐部44、および/または出口マニホールド24の各2次分岐部64に当てはまる。
【0113】
マニホールドの同じレベルの分岐部(2次分岐部、考えられる3次分岐部など)は、異なる燃料電池4間で均一な流れを確保するために、同じタイプの形状を有することが好ましい。
【0114】
2次分岐部44を有する入口マニホールド22を備える4つの燃料電池の例4では、これらの2次分岐部44は、同じ形状(たとえば、TまたはY)を有する。
【0115】
2次分岐部64を有する出口マニホールド24を備える4つの燃料電池の例4では、これらの2次分岐部64は、同じ形状(たとえば、TまたはY)を有する。
【0116】
場合によっては、第1の導管を2つの第2の導管に分ける少なくとも1つのまたは各々の分岐部が、分岐部から第1の導管の中へ伸びる中間仕切りを有し、中間仕切りは、第1の導管を中間仕切りに対して対称である2つの部分に分ける。
【0117】
これは、2つの第2の導管間の接合部での乱流を防ぎ、2つの第2の導管間の空気流の均一性を向上させる。
【0118】
図5に示すように、入口マニホールド22の1次分岐部40は、共通の導管38の中へ伸びる中間仕切り72を設けられ、共通の導管38を分けて、1次導管42の上流で中間仕切り72の両側を2つの対照的な部分にする。
【0119】
図5は、入口マニホールド22の1次分岐部40の場合を例として示すが、これは当然、出口マニホールド24の1次分岐部60、および/または入口マニホールド22の各2次分岐部44、および/または出口マニホールド24の各2次分岐部64に当てはまる。
【0120】
マニホールド(入口マニホールド22または出口マニホールド24)の分岐部が、中間壁を有する場合、そのマニホールドと同じレベルの他の分岐部もまた中間壁を有する。
【0121】
詳細には、入口マニホールド22の一方の2次分岐部44が中間仕切り72を有するとき、その入口マニホールド22の他方の2次分岐部44もまた中間仕切り72を有し、出口マニホールド24の一方の2次分岐部64が中間仕切り72を有するとき、その出口マニホールド24の他方の2次分岐部64もまた中間仕切り72を有する。
【0122】
一実施形態では、電気化学システム2は、150kW~350kWの公称/最大出力を有する。各燃料電池4は、40kW~100kWの公称/最大出力を有する。
【0123】
好ましくは、空気圧縮機26は、250g/秒~600g/秒の公称/最大流量を有する。
【0124】
電気化学システム2は、たとえば建造物の主電力源もしくは補助電力源として、固定使用のために、あるいは、たとえば道路車両、たとえば乗用車、公共交通車両、もしくは重量物運搬車両、鉄道車両、または航空車両における搭載電力源として、移動使用のために、構成することができる。
【0125】
本発明によって、電気的に直列に接続された複数の燃料電池4に並列に空気を供給するための単純な電気化学システム2を得ることが可能である。
【0126】
入口マニホールド22および出口マニホールド24を設けると、単一の空気圧縮機26によって供給される、入ってくる空気流から燃料電池4間で空気を均一に分配することが可能になり、燃料電池は、それらを同じ電流が流れて、同じ条件下で動作することができる。
【0127】
入口マニホールド22および出口マニホールド24の特徴、詳細には1つまたは複数の対称面(P1、P2、P3、P4)についてのそれらの離散的回転対称性または直交対称性が、各マニホールド内の空気の均一な分配を可能にする。
【0128】
燃料電池4の最適なレイアウトは、燃料電池4間の均一な空気分配を促すような対称性で入口マニホールド22および/または出口マニホールド24を設けることを容易にする。
【0129】
単一の空気圧縮機26の使用は、空気供給システム18を単純にする。
【0130】
高い電力出力を有し、しかも設計が単純である電気化学発電システム2を実現することが可能である。
【0131】
加えて、空気圧縮機26は、他の構成要素よりも信頼性が低い電気化学システムの構成要素の1つである。複数の空気圧縮機の代わりに単一の空気圧縮機26を使用すると、操作が簡単になり、また信頼性が改善し、保守が簡単になる。
【0132】
入口マニホールド22および出口マニホールド24は、好ましくは同様であり、たとえば、上記に示した特徴の各々を有する。
【0133】
しかしながら、入口マニホールド22または出口マニホールド24のいずれかが、他方にはない特徴を有することが可能である。
【0134】
一般に、上記で説明した特徴の各々では、入口マニホールド22および出口マニホールド24の少なくとも一方が、上記の特徴を有する。言い換えれば、入口マニホールド22および/または出口マニホールド24は、各々特徴を有する。
【0135】
他の実施形態が可能であるとき、本発明は、図示した実施形態に限定されない。
【0136】
詳細には、発電システム2内の燃料電池4の数は、必ずしも4に等しいとは限らない。それはたとえば2、3、または5以上であることがある。
【符号の説明】
【0137】
2 電気化学発電システム
4 燃料電池
6 電気化学セル
8 電気負荷
10 燃料流体供給システム
12 燃料流体源
14 燃料流体システム
16 ポンプ
18 空気供給システム
20 空気回路
22 入口マニホールド
24 出口マニホールド
26 空気圧縮機
28 空気ろ過デバイス
30 冷却デバイス
32 調整デバイス
34 ベント
36 共通の導管
38 個々の導管
40 1次分岐部
42 1次導管
44 2次分岐部
46 2次導管
48 マニホールド部分
50 マニホールドサブ部分
56 共通の導管
58 個々の導管
60 1次分岐部
62 1次導管
64 2次分岐部
66 2次導管
68 マニホールド部分
70 マニホールドサブ部分
72 中間仕切り
【外国語明細書】