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特開2022-183105オレフィン重合用触媒、及び、エチレン系重合体の製造方法
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  • 特開-オレフィン重合用触媒、及び、エチレン系重合体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183105
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】オレフィン重合用触媒、及び、エチレン系重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 4/6592 20060101AFI20221201BHJP
   C08F 10/00 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
C08F4/6592
C08F10/00 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022085894
(22)【出願日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2021088250
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】303060664
【氏名又は名称】日本ポリエチレン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】青木 勝
(72)【発明者】
【氏名】安田 薫
【テーマコード(参考)】
4J128
【Fターム(参考)】
4J128AA02
4J128AB00
4J128AC28
4J128AD05
4J128AD08
4J128AD11
4J128AD13
4J128BA01A
4J128BA01B
4J128BB01A
4J128BB01B
4J128BC15B
4J128BC25A
4J128CA28A
4J128EA01
4J128EB02
4J128EB09
4J128EC02
4J128GA01
4J128GA05
4J128GA06
4J128GA08
4J128GA09
4J128GB01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体を製造可能なオレフィン重合用触媒を提供する。
【解決手段】特定の非架橋メタロセン化合物である成分(A)、特定の架橋メタロセン化合物である成分(B)、上記成分(A)及び上記成分(B)をカチオン性化合物にする化合物である成分(C)、及び微粒子担体である成分(D)を含むことを特徴とするオレフィン重合用触媒。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を含む、オレフィン重合用触媒。
成分(A):下記一般式(1)で表されるメタロセン化合物
成分(B):下記一般式(2)で表されるメタロセン化合物
成分(C):前記成分(A)及び前記成分(B)をカチオン性化合物にする化合物
成分(D):微粒子担体
【化1】
[式(1)中、
は、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子を示す。
及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基又は炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基を示す。
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルコキシアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。]
【化2】
[式(2)中、
は、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子を示す。
及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基又は炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基を示す。
Yは、炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子を示す。
11及びR21は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフリル基又は置換基を有していてもよいチエニル基を示す。
12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28及びR29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。R12乃至R19及びR22乃至R29のうち隣接する基同士が結合し6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
31及びR32は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。R31及びR32は、Yを含んで4~7員環を形成していてもよく、R31及びR32の少なくとも一つが環状構造を有する場合、R31、R32及びYにより構成される4~7員環は、R31及びR32が有する環状構造の構成原子の一部を共有する縮合環を形成してもよい。]
【請求項2】
前記成分(B)における前記一般式(2)中、R11およびR21が下記一般式(3)で表される基である、請求項1に記載のオレフィン重合用触媒。
【化3】
[式(3)中、Zは酸素原子または硫黄原子であり、
33、R34は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基であり、R33及びR34は互いに結合して6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。]
【請求項3】
前記成分(A)における前記一般式(1)中、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数3~6のアルキル基であり、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R、R、R、R、R及びR10が水素原子である、請求項1又は2に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項4】
前記成分(A)における前記一般式(1)中、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基である、請求項3に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項5】
前記成分(A)における前記一般式(1)中、R及びRが水素原子である、請求項3に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項6】
前記成分(C)が、メチルアルミノキサンである、請求項1又は2に記載のオレフィン重合用触媒。
【請求項7】
請求項1又は2に記載のオレフィン重合用触媒の存在下、エチレン、又はエチレン及び炭素数3~10のα-オレフィンを重合する、エチレン系重合体の製造方法。
【請求項8】
スラリー重合法で行われる、請求項7に記載のエチレン系重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オレフィンの重合体及び共重合体の製造に有用なオレフィン重合用触媒、及び、当該オレフィン重合用触媒を用いたエチレン系重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系重合体は、プラスチック成形材料として広く用いられている。成形材料としてのオレフィン系重合体は、溶融状態での流動性、溶融張力、伸長粘度などの成形性、及び、成形後の硬度、剛性、耐衝撃強度、耐熱性、耐久性、透明性など成形体の用途に適した物性が求められる。
このような中で、オレフィン重合用メタロセン触媒で製造されるポリオレフィンは、分子量分布や共重合組成分布といったポリマー分子構造の均一性が高く、衝撃強度や長期寿命等、様々な機械的物性に優れることから、近年、その使用量が増加してきている。しかし、メタロセン系ポリオレフィンは、機械的諸物性には優れているものの、狭い分子量分布故に、溶融張力や溶融流動性といったポリオレフィンの成形加工上重要な特性において劣り、成形加工面においては十分な性能を満たすものではなかった。
【0003】
メタロセン系ポリオレフィンの成形性を改善する方法として、特許文献1では、十分な数と適切な長さの長鎖分岐を導入したメタロセン系ポリエチレンの製造のためのオレフィン重合用触媒成分や重合用触媒として、特定の構造の架橋されたメタロセン錯体を複数組み合わせる触媒が開示されている。
特許文献2では、成形性改良のために長鎖分岐を導入することにより機械的物性が低下する懸念があることも開示されており、長鎖分岐を導入する代わりに特定の架橋シクロペンタジエニル-フルオレニル錯体とフェノキシイミン錯体とを組み合わせた二元触媒を用いて行う二段重合により分子量分布を制御することで、伸長流動特性を改良し成形性を改善する方法が開示されている。
【0004】
特許文献3では、特定の架橋シクロペンタジエニル-フルオレニル錯体と非架橋ビスシクロペンタジエニル錯体とを組合せた二元触媒により、成形性、機械的物性および製品外観が改善されることが開示されている。
特許文献4では、特定の架橋ビスシクロペンタジエニル錯体と架橋シクロペンタジエニル-フルオレニル錯体とを組み合わせた二元触媒、又は、特定の架橋ビスシクロペンタジエニル錯体と架橋インデニル-フルオレニル錯体とを組み合わせた二元触媒により、特定量の長鎖分岐を有する重合体を製造する方法が開示されている。
特許文献5では、特定の非架橋ビスシクロペンタジエニル錯体と特定の架橋ビスインデニル錯体とを組み合わせた二元触媒の存在下、多段重合を行うことにより、分子量分布の広い重合体を製造する方法が開示されている。
特許文献6では、特定の非架橋ビスシクロペンタジエニル錯体と、特定の架橋メタロセン錯体もしくは非架橋ビスシクロペンタジエニル錯体と、特定の固体酸化物とを組み合わせた触媒を用いることで、フィルムの成形性と機械的物性や透明性が改善されたポリエチレン系重合体が得られたと開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-214780号公報
【特許文献2】特開2017-25160号公報
【特許文献3】特表2009-527636号公報
【特許文献4】特開2006-321991号公報
【特許文献5】特表2002-504958号公報
【特許文献6】特開2011-140658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、多数のメタロセン触媒技術が開発されているが、従来のメタロセン触媒を用いて得られる重合体は、依然として成形性、強度及び耐久性のバランスが不十分であり、これを改良できる技術への要求がある。
【0007】
本発明は、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体を製造可能なオレフィン重合用触媒を提供することを目的とする。
また本発明は、上記のごときオレフィン重合用触媒を用いて、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のオレフィン重合用触媒は、以下の成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を含むことを特徴とする。
成分(A):下記一般式(1)で表されるメタロセン化合物
成分(B):下記一般式(2)で表されるメタロセン化合物
成分(C):前記成分(A)及び前記成分(B)をカチオン性化合物にする化合物
成分(D):微粒子担体
【0009】
【化1】
【0010】
[式(1)中、
は、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子を示す。
及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基又は炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基を示す。
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルコキシアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。]
【0011】
【化2】
【0012】
[式(2)中、
は、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子を示す。
及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基又は炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基を示す。
Yは、炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子を示す。
11及びR21は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフリル基又は置換基を有していてもよいチエニル基を示す。
12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28及びR29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。R12乃至R19及びR22乃至R29のうち隣接する基同士が結合し6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
31及びR32は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。R31及びR32は、Yを含んで4~7員環を形成していてもよく、R31及びR32の少なくとも一つが環状構造を有する場合、R31、R32及びYにより構成される4~7員環は、R31及びR32が有する環状構造の構成原子の一部を共有する縮合環を形成してもよい。]
【0013】
本発明のオレフィン重合用触媒においては、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、前記成分(B)における前記一般式(2)中、R11およびR21が下記一般式(3)で表される基であってよい。
【0014】
【化3】
[式(3)中、Zは酸素原子または硫黄原子であり、
33、R34は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基であり、R33及びR34は互いに結合して6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。]
【0015】
本発明のオレフィン重合用触媒においては、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、前記成分(A)における前記一般式(1)中、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数3~6のアルキル基であり、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R、R、R、R、R及びR10が水素原子であってよい。
【0016】
本発明のオレフィン重合用触媒においては、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、前記成分(A)における前記一般式(1)中、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数3~6のアルキル基であり、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、R及びR10が水素原子であってよい。
【0017】
本発明のオレフィン重合用触媒においては、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、前記成分(A)における前記一般式(1)中、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数3~6のアルキル基であり、R及びRが水素原子であり、R、R、R、R、R及びR10が水素原子であってよい。
【0018】
本発明のオレフィン重合用触媒においては、工業的入手や重合体粒子性状の点から、前記成分(C)が、メチルアルミノキサンであってよい。
【0019】
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、上記本発明のオレフィン重合用触媒の存在下、エチレン、又はエチレン及び炭素数3~10のα-オレフィンを重合することを特徴とする。
【0020】
本発明のエチレン系重合体の製造方法においては、重合体粒子性状制御の点から、スラリー重合法で行われてよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、溶融張力が高く成形性に優れ、強度及び耐久性が高く、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体を製造可能なオレフィン重合用触媒を提供することができる。
また、本発明のオレフィン重合用触媒を用いることにより、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、実施例1及び比較例1で得られたエチレン系重合体のGPCチャートである。
図2図2は、参考例1、参考例2及び参考例3で得られたエチレン系重合体のGPCチャートである。
図3図3は、参考例1及び参考例3で得られたブレンド品の粘弾性測定の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について説明する。
なお、本発明において「重合」とは、1種類のモノマーの単独重合と複数種のモノマーの共重合を総称するものであり、特に両者を区別する必要がない場合には、総称して単に「重合」と記載する。
また、本発明において数値範囲を示す「~」とは、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
また、本発明において「i-」とはイソ、「n-」とはノルマル、「s-」とはsecondary、「t-」とはtertiaryの異性体構造を意味し、例えば単に「ブチル」とある場合は、ノルマル構造の意味で使用される。
【0024】
I.オレフィン重合用触媒
本発明のオレフィン重合用触媒は、後述する一般式(1)で表されるメタロセン化合物(成分(A))、後述する一般式(2)で表されるメタロセン化合物(成分(B))、上記成分(A)及び上記成分(B)をカチオン性化合物にする化合物(成分(C))、及び微粒子担体(成分(D))を含むことを特徴とする。
【0025】
従来のメタロセン触媒を用いて得られる重合体は、依然として成形性、強度及び耐久性のバランスが不十分であった。例えば、特許文献5に記載されている二元触媒により分子量分布の広い重合体を製造する方法では、高分子量の長鎖分岐を過剰数含む共重合体が得られやすいため高粘度の重合体が得られやすく、比較例1に示したように、成形性に適した所望の粘度に調整すると、低分子量成分が多く含まれ、機械的強度や耐久性が劣りやすいという問題があった。
それに対して、本発明のオレフィン重合用触媒を用いると、高い衝撃強度を維持しながら溶融張力も高く、また耐久性も高いため、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れる重合体を得ることができる。これは、本発明のオレフィン重合用触媒が含有するメタロセン錯体である成分(A)及び成分(B)の構造に由来すると考えられる。本発明のオレフィン重合用触媒の存在下で行われる重合では、主に、成分(A)によって相対的に低分子量のマクロモノマーを含む重合体が生成され、同時に、成分(B)によってオレフィンモノマーとマクロモノマーが共重合された相対的に高分子量の共重合体が生成される。またこれと同時に、共重合を進行させる成分(B)からも低頻度ではあるが相対的に高分子量のマクロモノマーが生成する結果、この高分子量のマクロモノマーとの共重合も起こる。すなわち、成分(A)由来の相対的に低分子量のマクロモノマーとの共重合および成分(B)由来の相対的に高分子量のマクロモノマーとの共重合が生じる。このうち、高分子量のマクロモノマーとの共重合から得られる共重合体は、高分子量の長鎖分岐が過剰数含まれると、過剰な粘度上昇につながるため、好ましくない。本発明で用いられる成分(B)においては、インデン骨格の2位置換基に含まれるフリル基又はチエニル基中のヘテロ原子と重合活性種である中心金属とが相互作用し、中心金属へのマクロモノマーの配位が適度に妨げられるため、相対的に高分子量のマクロモノマーとの共重合頻度が適度に低下すると考えられる。一方、インデン骨格の2位置換基に本発明の特定の置換基を持たない従来の錯体では、中心金属に高分子量のマクロモノマーも配位しやすく、高分子量のマクロモノマーとの共重合が適度に進行し高分子量の長鎖分岐が多く含まれる重合体が得られると考えられる。このように本発明のオレフィン重合用触媒の存在下で行われる重合では、重合体の高粘度化につながる、高分子量の長鎖分岐が過剰数生成されることを抑制しながら、分子量分布が適度に広がった高分子量の重合体を製造することができる。従って、得られる重合体は、HLMFR見合いで重合体中に含まれる低分子量成分の生成量が相対的に少なくなることから、高い衝撃強度を維持しながら溶融張力も高く、また耐久性も高いと考えられる。
【0026】
以下、本発明のオレフィン重合用触媒が含有する各成分、及び本発明のオレフィン重合用触媒の製造方法について説明する。
【0027】
1.成分(A)
本発明で用いられる成分(A)は、下記一般式(1)で表されるメタロセン化合物である。
【0028】
【化4】
【0029】
[式(1)中、
は、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子を示す。
及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基又は炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基を示す。
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルコキシアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。]
【0030】
は、チタン原子(Ti)、ジルコニウム原子(Zr)又はハフニウム原子(Hf)であり、中でも、分子量および活性の点から、ジルコニウム原子が好ましい。
【0031】
及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基又は炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基である。
ハロゲン原子の具体例としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、フッ素原子を挙げることができる。
炭素数1~20の炭化水素基の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、オクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のアルキル基またはシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等のアルケニル基;シクロペンチルメチル基、2-シクロヘキシルエチル基等の脂環式置換基を有するアルキル基;フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、3,5-ジ-t-ブチルフェニル基、4-ビニルフェニル基、3-アリルフェニル基、4-(3-ブテニル)フェニル基、ナフチル基等の飽和又は不飽和の炭化水素基が置換していてもよい単環又は縮合環のアリール基;ベンジル基、2-フェニルエチル基等の芳香族置換基を有するアルキル基などを挙げることができる。
炭素数1~20のアルコキシ基の具体例としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などを挙げることができる。
酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基は、少なくとも1つの酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基であってよく、具体例としては、例えば次のものがある。酸素原子を含むものとして、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、i-プロポキシメチル基、n-ブトキシメチル基、i-ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、4-メトキシブチル基、3-エトキシブチル基、6-メトキシヘキシル基等のアルコキシアルキル基、2-メトキシフェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、2,4-ジメトキシフェニル基等のアルコキシアリール基、アセチル基、1-オキソプロピル基、1-オキソ-n-ブチル基、2-メチル-1-オキソプロピル基、2,2-ジメチル-1-オキソ-プロピル基、フェニルアセチル基、ジフェニルアセチル基、ベンゾイル基等のオキソ基含有炭化水素基、2-フリル基、2-テトラヒドロフリル基、2-メチルフリル基等の環状エーテル基など;及び、窒素原子を含むものとして、ジメチルアミノメチル基、ジエチルアミノメチル基、ジi-プロピルアミノメチル基、ビス(ジメチルアミノ)メチル基、ビス(ジi-プロピルアミノ)メチル基、(ジメチルアミノ)(フェニル)メチル基、アミノエチル基、ジメチルアミノエチル基、ジエチルアミノエチル基、1-(メチルイミノ)エチル基、1-(フェニルイミノ)エチル基、1-[(フェニルメチル)イミノ]エチル基、ジメチルアミノヘキシル基等のアミノ置換アルキル基、4-アミノフェニル基、4-ジメチルアミノフェニル基等のアミノ置換アリール基などを挙げることができる。
炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基は、少なくとも1つの炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基であってよく、具体例としては、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジn-プロピルアミノ基、ジi-ブチルアミノ基、ジt-ブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などを挙げることができる。
【0032】
、R、R、R、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルコキシアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基である。
ハロゲン原子の具体例としては、例えば、上記X及びXで説明したハロゲン原子の具体例と同じものを挙げることができる。
炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。
炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、i-プロポキシ基、n-ブトキシ基、i-ブトキシ基、t-ブトキシ基、フェノキシ基などを挙げることができる。
炭素数2~6のアルコキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、エトキシメチル基、n-プロポキシメチル基、i-プロポキシメチル基、n-ブトキシメチル基、i-ブトキシメチル基、t-ブトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、4-メトキシブチル基、3-エトキシブチル基などを挙げることができる。
炭素数2~6のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基などを挙げることができる。
ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基としては、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基であってよく、例えば、ブロモメチル基、クロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-クロロエチル基、2-ブロモエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2-ブロモプロピル基、3-ブロモプロピル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、4-クロロブチル基、3-フルオロブチル基、4,4,4-トリフルオロブチル基などを挙げることができる。
アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基としては、例えば、トリメチルシリルメチル基、トリメチルシリルエチル基、2-トリメチルシリルプロピル基などを挙げることができる。
炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基としては、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基であってよく、例えば、トリメチルシリル基、t-ブチルジメチルシリル基などを挙げることができる。
炭素数6~18のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基などを挙げることができる。
ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基としては、少なくとも1つのハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基であってよく、例えば、2-クロロフェニル基、4-クロロフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、2,3,4,5,6-ペンタフルオロフェニル基などを挙げることができる。
置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基としては、少なくとも1つの置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基であってよく、例えば、ピロール基、ピリジン基等の含窒素複素環基、フラン基、ピラン基などの含酸素複素環基、チオフェン基などの含硫黄複素環基、及びこれらの複素環基に炭素数1~30のアルキル基又はアルコキシ基などの置換基が置換した基などを挙げることができる。
【0033】
成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、中でも、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数3~6のアルキル基であり、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基であり、R、R、R、R、R及びR10が水素原子であってよく、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数3~6のアルキル基であり、R及びRが、それぞれ独立して、水素原子又はメチル基であり、R、R、R、R、R及びR10が水素原子であってよく、R及びRが、それぞれ独立して、炭素数3~6のアルキル基であり、R及びRが、水素原子であり、R、R、R、R、R及びR10が水素原子であってよい。
【0034】
前記式(1)で表されるメタロセン化合物の具体例としては、例えば、
ビスシクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、
ビス(メチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(i-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(s-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(t-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(n-ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(シクロヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1,3-ジn-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1,3-ジi-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1,3-ジn-ヘキシルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1,2-ジn-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1,2-ジi-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1,2,4-トリメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-エチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-i-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-i-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-s-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-メチル-3-t-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-エチル-3-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-エチル-3-i-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(メチルシクロペンタジエニル)(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(メチルシクロペンタジエニル)(i-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(メチルシクロペンタジエニル)(s-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(メチルシクロペンタジエニル)(t-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(n-プロピルシクロペンタジエニル)(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(n-プロピルシクロペンタジエニル)(i-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(n-プロピルシクロペンタジエニル)(s-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(n-プロピルシクロペンタジエニル)(t-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(i-プロピルシクロペンタジエニル)(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(i-プロピルシクロペンタジエニル)(i-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(i-プロピルシクロペンタジエニル)(s-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
(i-プロピルシクロペンタジエニル)(t-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(4-メトキシブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ブトキシシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(ブテニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(トリフルオロメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、
ビス(フェニルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、及び
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ハフニウムジクロリドなどを挙げることができる。
これらの中でも、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、ビス(n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド、ビス(1-メチル-3-n-プロピルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド及びビス(1-メチル-3-n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
なお、前記式(1)で表されるメタロセン化合物としては、従来公知の製法で適宜製造することができ、市販されているものを用いることもできる。
【0035】
2.成分(B)
本発明で用いられる成分(B)は、下記一般式(2)で表されるメタロセン化合物である。
【0036】
【化5】
【0037】
[式(2)中、
は、チタン原子、ジルコニウム原子又はハフニウム原子を示す。
及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基又は炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基を示す。
Yは、炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子を示す。
11及びR21は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフリル基又は置換基を有していてもよいチエニル基を示す。
12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28及びR29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。R12乃至R19及びR22乃至R29のうち隣接する基同士が結合し6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
31及びR32は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。R31及びR32は、Yを含んで4~7員環を形成していてもよく、R31及びR32の少なくとも一つが環状構造を有する場合、R31、R32及びYにより構成される4~7員環は、R31及びR32が有する環状構造の構成原子の一部を共有する縮合環を形成してもよい。]
【0038】
は、チタン原子(Ti)、ジルコニウム原子(Zr)又はハフニウム原子(Hf)であり、中でも、触媒の高活性化の点から、ジルコニウム原子が好ましい。
【0039】
及びXは、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~20の炭化水素基、炭素数1~20のアルコキシ基、酸素原子若しくは窒素原子を含む炭素数3~20の炭化水素基又は炭素数1~20の炭化水素基で置換された置換アミノ基である。
及びXの具体例としては、前記式(1)のX及びXについて説明した具体例を、X及びXについても挙げることができる。
【0040】
Yは、炭素原子、珪素原子又はゲルマニウム原子であり、中でも、錯体合成の点から、珪素原子が好ましい。
【0041】
11及びR21は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよいフリル基又は置換基を有していてもよいチエニル基であり、少なくとも1つの置換基を有していてもよいフリル基又は置換基を有していてもよいチエニル基であってよい。
フリル基、又はチエニル基が有していてもよい置換基としては、例えば、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基が挙げられる。ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基、及び炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基の具体例としては、前記と同じものを挙げることができる。
炭素数1~6の炭化水素基で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基は、少なくとも1つの炭素数1~6の炭化水素基で置換されていてもよい炭素数6~18のアリール基であってよく、具体例としては、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4-ジメチルフェニル基、2,5-ジメチルフェニル基、2,6-ジメチルフェニル基、3,5-ジメチルフェニル基、2-エチルフェニル基、3-エチルフェニル基、4-エチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基、2,3,4-トリメチルフェニル基、2,4,5-トリメチルフェニル基、3,4,5-トリメチルフェニル基、2-i-プロピルフェニル基、3-i-プロピルフェニル基及び4-i-プロピルフェニル基、2-t-ブチルフェニル基、3-t-ブチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基、2,4-ジt-ブチルフェニル基、2,5-ジt-ブチルフェニル基、2,6-ジt-ブチルフェニル基、3,5-ジt-ブチルフェニル基、ビフェニリル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、アセナフチル基、フェナントリル基、アントリル基などを挙げることができる。
さらにフリル基、又はチエニル基が有していてもよい置換基は、隣接する置換基が互いに結合して6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
【0042】
成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、R11及びR21は、下記式(3)で表される基であることが好ましい。
【0043】
【化6】
【0044】
[式(3)中、Zは酸素原子または硫黄原子であり、
33、R34は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基であり、R33及びR34は互いに結合して6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。]
【0045】
Zは、酸素原子または硫黄原子であり、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、酸素原子であることが好ましい。
【0046】
33、R34は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基であり、R33及びR34は互いに結合して6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
ハロゲン原子の具体例としては、例えば、上記X及びXで説明したハロゲン原子の具体例と同じものを挙げることができる
炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~8のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基、及び炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基の具体例としては、例えば、上記R乃至R10で説明したこれらの具体例と同じものを挙げることができる。
炭素数2~8のアルケニル基の具体例としては、例えば、上記R乃至R10で説明した炭素数2~6のアルケニル基の具体例、及び、ヘプテニル基、オクテニル基などを挙げることができる。
アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~3のアルキル基の具体例としては、例えば、トリメチルシリルエチル基、トリエチルシリルエチル基、2-トリメチルシリルプロピル基、2-トリエチルシリルプロピル基などを挙げることができる。
【0047】
成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、R33は、好ましくはハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、又は炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基であり、より好ましくは炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~18のアリール基、又は炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基である。R34は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数6~18のアリール基であり、より好ましくは水素原子、又は炭素数1~6のアルキル基である。
【0048】
置換されていてもよいフリル基の具体例としては、2-フリル基、2-(5-メチルフリル)基、2-(5-エチルフリル)基、2-(5-n-プロピルフリル)基、2-(5-i-プロピルフリル)基、2-(5-t-ブチルフリル)基、2-(5-トリメチルシリルフリル)基、2-(5-トリエチルシリルフリル)基、2-(5-フェニルフリル)基、2-(5-トリルフリル)基、2-(5-フルオロフェニルフリル)基、2-(5-クロロフェニルフリル)基、2-(4,5-ジメチルフリル)基、2-(3,5-ジメチルフリル)基、2-ベンゾフリル基、3-フリル基、3-(5-メチルフリル)基、3-(5-エチルフリル)基、3-(5-n-プロピルフリル)基、3-(5-i-プロピルフリル)基、3-(5-t-ブチルフリル)基、3-(5-トリメチルシリルフリル)基、3-(5-トリエチルシリルフリル)基、3-(5-フェニルフリル)基、3-(5-トリルフリル)基、3-(5-フルオロフェニルフリル)基、3-(5-クロロフェニルフリル)基、3-(4,5-ジメチルフリル)基、3-ベンゾフリル基などが挙げられる。
置換されていてもよいチエニル基の具体例としては、2-チエニル基、2-(5-メチルチエニル)基、2-(5-エチルチエニル)基、2-(5-n-プロピルチエニル)基、2-(5-i-プロピルチエニル)基、2-(5-t-ブチルチエニル)基、2-(5-トリメチルシリルチエニル)基、2-(5-トリエチルシリルチエニル)基、2-(5-フェニルチエニル)基、2-(5-トリルチエニル)基、2-(5-フルオロフェニルチエニル)基、2-(5-クロロフェニルチエニル)基、2-(4,5-ジメチルチエニル)基、2-(3,5-ジメチルチエニル)基、2-ベンゾチエニル基、3-チエニル基、3-(5-メチルチエニル)基、3-(5-エチルチエニル)基、3-(5-n-プロピルチエニル)基、3-(5-i-プロピルチエニル)基、3-(5-t-ブチルチエニル)基、3-(5-トリメチルシリルチエニル)基、3-(5-トリエチルシリルチエニル)基、3-(5-フェニルチエニル)基、3-(5-トリルチエニル)基、3-(5-フルオロフェニルチエニル)基、3-(5-クロロフェニルチエニル)基、3-(4,5-ジメチルチエニル)基、3-ベンゾチエニル基、などを挙げることができる。
【0049】
12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R22、R23、R24、R25、R26、R27、R28及びR29は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基を示す。R12乃至R19及びR22乃至R29のうち隣接する基同士が結合し6~7員環を構成してもよく、6~7員環が不飽和結合を含んでいてもよい。
ハロゲン原子の具体例としては、例えば、上記X及びXで説明したハロゲン原子の具体例と同じものを挙げることができる
炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、炭素数2~6のアルケニル基、ハロゲン原子で置換された炭素数1~6のアルキル基、アルキル基が炭素数1~3のトリアルキルシリル基で置換された炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6の炭化水素基で置換された置換シリル基、炭素数6~18のアリール基、ハロゲン原子で置換された炭素数6~18のアリール基又は置換基を有していてもよい5員環若しくは6員環を構成する複素環基の具体例としては、例えば、上記R乃至R10で説明したこれらの具体例と同じものを挙げることができる。
【0050】
上記式(2)で表されるメタロセン化合物の具体例としては、例えば、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-チエニル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジフェニルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルゲルミレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルゲルミレンビス{2-(5-メチル-2-チエニル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-トリメチルシリル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(4,5-ジメチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロライドジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-ベンゾフリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-クロロフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-フルオロフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-トリフルオロメチルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-トリメチルシリルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(1-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(2-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(2-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(2-フリル)-4-(9-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(2-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(9-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(1-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(2-ナフチル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(2-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、
[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-(9-フェナンスリル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリドなどを挙げることができる。
【0051】
これらの中でも、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体が得られやすい点から、[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-t-ブチル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-トリメチルシリル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-フェニル-2-フリル)-4-フェニル-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-t-ブチルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリド、及び[1,1’-ジメチルシリレンビス{2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)-インデニル}]ジルコニウムジクロリドからなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0052】
式(2)で表されるメタロセン化合物を合成する際には、例えば、特開2012-149160号公報の合成例1を参考にすることができる。
【0053】
3.成分(C)
本発明で用いられる成分(C)は、上述した成分(A)及び成分(B)をカチオン性化合物にする化合物であり、すなわち助触媒である。本発明のオレフィン重合用触媒に含まれる成分(A)及び成分(B)は、成分(C)と反応してカチオン性化合物となったものであってもよい。
成分(C)としては、例えば、有機アルミニウムオキシ化合物、ボラン化合物、ボレート化合物、後述する層状珪酸塩等を用いることができる。これらのうち、微粒子担体への固定化が容易であるという点から、有機アルミニウムオキシ化合物が好ましく用いられる。
【0054】
(1)有機アルミニウムオキシ化合物
有機アルミニウムオキシ化合物は、分子中にAl-O-Al結合を有する化合物であり、Al-O-Al結合の結合数は通常1~100、好ましくは1~50個の範囲にある。
典型的には、下記式(4)又は式(5)で表されるような、-(O-Al)-単位の連鎖構造を含む有機アルミニウムオキシ化合物が用いられる。
【0055】
【化7】
【0056】
【化8】
【0057】
[上記の各式中、R41は、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基であり、好ましくは炭素数1~18、さらに好ましくは炭素数1~12のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基等の炭化水素基であり、R41の少なくとも一部は炭化水素基である。pは0~40、好ましくは2~30の整数を示す。]
【0058】
このような有機アルミニウムオキシ化合物は、通常、有機アルミニウム化合物と水とを反応させて得られる。
有機アルミニウム化合物と水との反応は、通常、不活性炭化水素(溶媒)中で行われる。不活性炭化水素としては、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素及び芳香族炭化水素が使用できるが、脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素を使用することが好ましい。
【0059】
原料の有機アルミニウム化合物としては、下記式(6)で表される化合物を使用できるが、好ましくはトリアルキルアルミニウムが使用される。
41 AlX 3-t 式(6)
[式(6)中、R41は、上記式(4)及び式(5)と同じであり、Xは、水素原子又はハロゲン原子を示し、tは、1≦t≦3の整数を示す。]
【0060】
トリアルキルアルミニウムのアルキル基は、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基等のいずれでも差し支えないが、メチル基であることが特に好ましい。上記有機アルミニウム化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0061】
水と有機アルミニウム化合物との反応比(水/Alモル比)は、0.25/1~1.2/1、特に、0.5/1~1/1であることが好ましく、反応温度は、通常-70℃~100℃、好ましくは-20℃~20℃の範囲である。反応時間は、通常5分~24時間、好ましくは10分~5時間の範囲で選ばれる。
反応に要する水として、単なる水のみならず、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物等に含まれる結晶水や反応系中に水が生成しうる成分も利用することができる。
【0062】
原料の有機アルミニウム化合物としてトリメチルアルミニウムを用いた有機アルミニウムオキシ化合物をメチルアルミノキサン(MAO)と呼ぶ。メチルアルミノキサン(MAO)は、工業的入手や重合体粒子性状制御の点から、成分(C)として特に好ましく使われる。MAOは未反応のトリメチルアルミニウムを含んだ形で成分(C)として使うこともできる。この未反応のトリメチルアルミニウムは、トリメチルアルミニウムとメチルアルミノキサンの合計のアルミニウム原子に対して、1mol%~30mol%で存在するものであってよく、この範囲であればMAOが溶液中に析出しにくく、取り扱い時の危険性が低下して扱いやすい。好ましくは10mol%~15mol%のトリメチルアルミニウムを含むMAO溶液がよい。また、MAOの濃度はこの範囲にあると取り扱い時の危険性が低下し、保存安定性も良好で、取り扱いの点からも適している。MAOの濃度は好ましくは10質量%~20質量%のものが用いられる。さらにMAO溶液は常温で析出しやすいということもあり、-10℃を下回る低温保管が好ましい。
もちろん、有機アルミニウムオキシ化合物として、上記した有機アルミニウムオキシ化合物の2種以上を組み合わせて使用することもでき、また、前記有機アルミニウムオキシ化合物を前述の不活性炭化水素溶媒に溶液または分散させた溶液としたものを用いても良い。
【0063】
(2)ボラン化合物
ボラン化合物としては、例えば、次の化合物が挙げられる:トリフェニルボラン、トリ(o-トリル)ボラン、トリ(p-トリル)ボラン、トリ(m-トリル)ボラン、トリ(o-フルオロフェニル)ボラン、トリス(p-フルオロフェニル)ボラン、トリス(m-フルオロフェニル)ボラン、トリス(2,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4-トリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボラン。
【0064】
これらの中でも、次の化合物が好ましい:トリス(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロアントリル)ボラン、トリス(パーフルオロビナフチル)ボラン。
これらの中でも、次の化合物がさらに好ましい:トリス(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(パーフルオロナフチル)ボラン、トリス(パーフルオロビフェニル)ボラン。
【0065】
(3)ボレート化合物
ボレート化合物の第1の例としては、例えば次の式(7)で表される化合物が挙げられる。
[L-H][BR42437’ 式(7)
【0066】
式(7)中、Lは、中性ルイス塩基であり、Hは、水素原子であり、[L-H]は、アンモニウム、アニリニウム、ホスホニウム等のブレンステッド酸である。
アンモニウムとしては、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリ(n-プロピル)アンモニウム、トリ(n-ブチル)アンモニウムなどのトリアルキル置換アンモニウム、ジ(n-プロピル)アンモニウム、ジシクロヘキシルアンモニウムなどのジアルキルアンモニウムを例示できる。
また、アニリニウムとしては、N,N-ジメチルアニリニウム、N,N-ジエチルアニリニウム、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムなどのN,N-ジアルキルアニリニウムが例示できる。
さらに、ホスホニウムとしては、トリフェニルホスホニウム、トリ(n-ブチル)ホスホニウム、トリ(メチルフェニル)ホスホニウム、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムなどのトリアリールホスホニウム、トリアルキルホスホニウムが挙げられる。
【0067】
また、式(7)中、R42およびR43は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭素数6~20、好ましくは置換基を有していてもよい炭素数6~16の芳香族炭化水素基で、架橋基によって互いに連結されていてもよく、置換基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基等に代表されるアルキル基やフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲンが好ましい。
さらに、X及びX7’は、それぞれ独立して、ハイドライド基、ハライド基、炭素数1~20の炭化水素基、1個以上の水素原子がハロゲン原子によって置換された炭素数1~20の炭化水素基である。
【0068】
上記一般式(7)で表される化合物の具体例としては、例えば、次の化合物が挙げられる:トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(2,6-ジフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルホスホニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリメチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリエチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラフェニルボレート。
【0069】
これらの中でも、次の化合物が好ましい:トリブチルアンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリブチルアンモニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、ジメチルアニリニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート。
【0070】
ボレート化合物の第2の例としては、例えば次の式(8)で表される化合物が挙げられる。
[L[BR42437’7’ 式(8)
【0071】
式(8)中、Lは、メチルカチオン、エチルカチオン、n-プロピルカチオン、i-プロピルカチオン、n-ブチルカチオン、i-ブチルカチオン、t-ブチルカチオン、n-ペンチルカチオン、トロピニウムカチオン、ベンジルカチオン、トリチルカチオン、ナトリウムカチオン、プロトン等が挙げられる。また、R42、R43、X及びX7’は、前記式(7)における定義と同じである。
【0072】
上記式(8)で表される化合物の具体例としては、例えば、次の化合物が挙げられる:トリチルテトラフェニルボレート、トリチルテトラ(o-トリル)ボレート、トリチルテトラ(p-トリル)ボレート、トリチルテトラ(m-トリル)ボレート、トリチルテトラ(o-フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(p-フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(m-フルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5-ジフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラフェニルボレート、トロピニウムテトラ(o-トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(p-トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(m-トリル)ボレート、トロピニウムテトラ(o-フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(p-フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(m-フルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5-ジフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaBPh、NaB(o-CH-Ph)、NaB(p-CH-Ph)、NaB(m-CH-Ph)、NaB(o-F-Ph)、NaB(p-F-Ph)、NaB(m-F-Ph)、NaB(3,5-F-Ph)、NaB(C、NaB(2,6-(CF-Ph)、NaB(3,5-(CF-Ph)、NaB(C10、HBPh・(EtO)、HB(3,5-F-Ph)・(EtO)、HB(C・(EtO)、HB(2,6-(CF-Ph)・(EtO)、HB(3,5-(CF-Ph)・(EtO)、HB(C10・(EtO)
なお、本明細書においてEtはエチル、Phはフェニルを表す。
【0073】
これらの中でも、次の化合物が好ましい:トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トリチルテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(パーフルオロナフチル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6-(CF-Ph)、NaB(3,5-(CF-Ph)、NaB(C10、HB(C・(EtO)、HB(2,6-(CF-Ph)・(EtO)、HB(3,5-(CF-Ph)・(EtO)、HB(C10・(EtO)
【0074】
これらの中でも、次の化合物がさらに好ましい:トリチルテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリチルテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、トロピニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル) ボレート、トロピニウムテトラ(2,6-ジトリフルオロメチルフェニル)ボレート、NaB(C、NaB(2,6-(CF-Ph)、HB(C・(EtO)、HB(2,6-(CF-Ph)・(EtO)、HB(3,5-(CF-Ph)・(EtO)、HB(C10・(EtO)
【0075】
なお、成分(C)として、前記の有機アルミニウムオキシ化合物と、上記ボラン化合物やボレート化合物との混合物を用いることもできる。さらに、上記ボラン化合物やボレート化合物は、2種以上混合して使用することもできる。
【0076】
4.成分(D)
成分(D)、すなわち微粒子担体としては、無機物担体、粒子状ポリマー担体またはこれらの混合物が挙げられる。無機物担体は、金属、金属酸化物、金属塩化物、金属炭酸塩、炭素質物、またはこれらの混合物が使用可能である。
無機物担体に用いることができる好適な金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケルなどが挙げられる。
【0077】
また、金属酸化物としては、周期表1~14族の元素の単独酸化物または複合酸化物が挙げられ、例えば、SiO、Al、MgO、CaO、B、TiO、ZrO、Fe、Al・MgO、Al・CaO、Al・SiO、Al・MgO・CaO、Al・MgO・SiO、Al・CuO、Al・Fe、Al・NiO、SiO・MgOなどの天然または合成の各種単独酸化物または複合酸化物を例示することができる。ここで、上記の式は、分子式ではなく、組成のみを表すものであって、本発明において用いられる複合酸化物の構造および成分比率は特に限定されるものではない。また、本発明において用いる金属酸化物は、少量の水分を吸収していても差し支えなく、少量の不純物を含有していても差し支えない。
【0078】
金属塩化物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属の塩化物が好ましく、具体的にはMgCl、CaClなどが特に好適である。金属炭酸塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属の炭酸塩が好ましく、具体的には、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウムなどが挙げられる。
炭素質物としては、例えば、カーボンブラック、活性炭などが挙げられる。
以上の無機物担体は、いずれも本発明に好適に用いることができるが、金属酸化物、シリカ、アルミナを用いることが好ましく、シリカを用いることがさらに好ましい。シリカとしては、平均粒径が10μm~150μm程度の小粒径シリカを用いることが好ましい。ここで、平均粒径は一般的に用いられるレーザー回折を用いた測定方法で、体積基準により表されたデータより、メジアン径として示される値である。
【0079】
これら無機物担体は、通常、200℃~800℃、好ましくは400℃~600℃で空気中または窒素、アルゴン等の不活性ガス中で焼成して、表面水酸基の量を0.8mmol/g~1.5mmol/gに調節して用いるのが好ましい。これら無機物担体の性状としては、特に制限はないが、通常、平均粒径は5μm~200μm、好ましくは10μm~150μm、平均細孔径は20Å~1000Å、好ましくは50Å~500Å、比表面積は150m/g~1000m/g、好ましくは200m/g~700m/g、細孔容積は0.3m/g~2.5cm/g、好ましくは0.5m/g~2.0cm/g、見掛比重は0.20g/cm~0.50g/cm、好ましくは0.25g/cm~0.45g/cmを有する無機物担体を用いるのが好ましい。
【0080】
上記した無機物担体は、もちろんそのまま用いることもできるが、予備処理としてこれらの担体をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリi-ブチルアルミニウム、トリn-ヘキシルアルミニウム、トリn-プロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム、トリn-デシルアルミニウム、ジi-ブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物や、Al-O-Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物に接触させた後、用いることができる。
【0081】
5.オレフィン重合用触媒の製造方法
本発明のオレフィン重合用触媒は、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を混合乃至接触させて製造することができる。
本発明のオレフィン重合用触媒の製造方法としては、特に限定はされないが、例えば以下の方法を任意に採用可能である。
方法(1):
成分(A)及び成分(B)を、最初に成分(C)と接触させた後、成分(D)と接触させる。より詳しくは、成分(A)と成分(B)を一つの成分(C)と接触させた後、または、成分(A)及び成分(B)それぞれを、別個に分けた成分(C)と接触させた後、得られた接触処理物を成分(D)とを接触させる。
成分(A)と成分(B)を一つの成分(C)と接触させる場合、成分(A)と成分(B)の混合物を成分(C)と接触させてもよいし、成分(A)と成分(B)を成分(C)に対し同時に又は順次接触させてもよい。
成分(A)及び成分(B)を、それぞれ別個に分けた成分(C)と接触させる場合、成分(A)の接触処理物と成分(B)の接触処理物を一つの成分(D)と接触させてもよいし、成分(A)の接触処理物と成分(B)の接触処理物それぞれを、別個に分けた成分(C)と接触させた後、得られた2つの接触処理物を混合してもよい。
方法(2):
成分(A)及び成分(B)を、最初に成分(D)と接触させた後、成分(C)と接触させる。より詳しくは、成分(A)と成分(B)を一つの成分(D)と接触させた後、または、成分(A)及び成分(B)それぞれを、別個に分けた成分(D)と接触させた後、得られた接触処理物を成分(C)とを接触させる。
成分(A)と成分(B)を一つの成分(D)と接触させる場合、成分(A)と成分(B)の混合物を成分(D)と接触させてもよいし、成分(A)と成分(B)を成分(D)に対し同時に又は順次接触させてもよい。
成分(A)及び成分(B)を、それぞれ別個に分けた成分(D)と接触させる場合、成分(A)の接触処理物と成分(B)の接触処理物を一つの成分(C)と接触させてもよいし、成分(A)の接触処理物と成分(B)の接触処理物それぞれを、別個に分けた成分(C)と接触させた後、得られた2つの接触処理物を混合してもよい。
方法(3):
成分(C)と成分(D)を最初に接触させて接触処理物を得た後、成分(A)及び成分(B)を接触処理物と接触させる。より詳しくは、成分(C)と成分(D)を接触させて接触処理物を得た後、成分(A)と成分(B)を一つの接触処理物と接触させるか、または、成分(A)及び成分(B)それぞれを、別個に分けた接触処理物と接触させ、得られた2つの接触処理物を混合する。
成分(A)と成分(B)を一つの接触処理物と接触させる場合、成分(A)と成分(B)の混合物を接触処理物と接触させてもよいし、成分(A)と成分(B)を接触処理物に対し同時に又は順次接触させてもよい。
【0082】
これらの接触方法の中で、成分(A)及び成分(B)を最初に成分(C)と接触させる(1)の方法と、成分(A)及び成分(B)を成分(C)と成分(D)の接触処理物と接触させる(3)の方法が好ましく、さらに(1)の方法が最も好ましい。さらに、成分(A)と成分(B)の混合物を、成分(C)、成分(D)または成分(C)と成分(D)の接触処理物と接触させることが好ましい。
【0083】
いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数は6~12)、ヘプタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5~12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
この接触は、通常-100℃~200℃、好ましくは-50℃~100℃、さらに好ましくは0℃~50℃の温度にて、5分~50時間、好ましくは30分~24時間、さらに好ましくは30分~12時間で行うことが望ましい。
接触方法の具体例としては、成分(A)と成分(B)の混合物、または成分(A)と成分(B)を上記したような不活性溶剤に溶解または分散させた液と、成分(C)を不活性溶剤に溶解または分散させた液とを混合し、得られた混合液を、成分(D)のスラリーと混合する方法が挙げられる。
【0084】
また、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の接触に際しては、ある種の成分が可溶ないしは難溶な芳香族炭化水素溶媒と、ある種の成分が不溶ないしは難溶な脂肪族または脂環族炭化水素溶媒とがいずれも使用可能である。
【0085】
各成分同士の接触反応を段階的に行う場合にあっては、前段で用いた溶媒などを除去することなく、これをそのまま後段の接触反応の溶媒に用いてもよい。また、可溶性溶媒を使用した前段の接触反応後、ある種の成分が不溶もしくは難溶な液状不活性炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、デカン、ドデカン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素あるいは芳香族炭化水素)を添加して、所望生成物を固形物として回収した後に、あるいは一旦可溶性溶媒の一部または全部を、乾燥等の手段により除去して所望生成物を固形物として取り出した後に、この所望生成物の後段の接触反応を、上記した不活性炭化水素溶媒のいずれかを使用して実施することもできる。本発明では、各成分の接触反応を複数回行うことを妨げない。
【0086】
本発明において、成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
成分(A)と成分(B)のモル比(成分(A):成分(B))は、得られる重合体の分子量分布の形を決めるために任意に調整され、通常1:500~500:1、好ましくは1:100~100:1、さらに好ましくは1:10~10:1の範囲であり、1.2:1~5:1の範囲であってよい。
成分(C)として、有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量に対する有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウム原子のモル比(Al/M)は、通常、1~100,000、好ましくは5~1000、さらに好ましくは50~200の範囲が望ましい。また、ボラン化合物やボレート化合物を用いる場合、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量に対する、ホウ素原子のモル比(B/M)は、通常、0.01~100、好ましくは0.1~50、さらに好ましくは0.2~10の範囲で選択することが望ましい。
さらに、成分(C)として、有機アルミニウムオキシ化合物と、ボラン化合物、ボレート化合物との混合物を用いる場合にあっては、混合物における各化合物について、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量に対して上記と同様な使用割合で選択することが望ましい。
【0087】
成分(D)の使用量は、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属の合計量が成分(D)1g当たり、0.0001mmol~5mmolが挙げられ、好ましくは0.001mmol~0.5mmol、さらに好ましくは0.01mmol~0.1mmolである。
【0088】
成分(A)、成分(B)、成分(C)及び成分(D)を前記接触方法(1)~(3)のいずれかで相互に接触させることでオレフィン重合用触媒が得られるが、接触工程に続き、未反応物や不要な生成物を除去するための洗浄工程を実施した後に、溶媒を除去してもよい。
洗浄工程においては、オレフィン重合用触媒を沈降させ、その後に不要な上澄み液を抜き出してから新たな溶媒を追加し攪拌均一化させる方法、前記の攪拌均一化を繰り返す方法、フィルター装置を使って洗浄する方法などが用いられる。洗浄工程で使用される溶媒は、成分(A)~(D)の接触で用いることができる溶媒が用いられる。また、洗浄工程の途中で溶媒を変更することもできる。
溶媒を除去する工程としては、溶媒の沸点に応じた圧力において溶媒を蒸発させる留去方法や、乾燥した不活性ガスの気流によって溶媒を気化させる方法などを用いることができる。溶媒の除去は、常圧下または減圧下、0℃~200℃、好ましくは20℃~150℃で1分~50時間、好ましくは10分~10時間で行うことが望ましい。
洗浄工程後に得られたオレフィン重合用触媒はスラリー状態で取り扱いまたは保管することができ、溶媒を除去する工程で得られたオレフィン重合用触媒は、粉末状固体触媒として取り扱いまたは保管することができる。
【0089】
なお、本発明のオレフィン重合用触媒は、以下の方法によっても得ることができる。
方法(4):
成分(A)及び成分(B)と微粒子担体である成分(D)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で助触媒である成分(C)と接触させる。
方法(5):
助触媒である成分(C)と微粒子担体である成分(D)とを接触させて溶媒を除去し、これを固体触媒成分とし、重合条件下で触媒活性成分である成分(A)及び成分(B)と接触させる。
上記方法(4)及び上記方法(5)の場合も、成分比、接触条件および溶媒除去条件は、前記と同様の条件を採用できる。
【0090】
また、助触媒である成分(C)と微粒子担体である成分(D)とを兼ねる成分として、層状珪酸塩を用いることもできる。層状珪酸塩とは、イオン結合等によって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造をとる珪酸塩化合物である。大部分の層状珪酸塩は、天然には主に粘土鉱物の主成分として産出するが、これら、層状珪酸塩は特に天然産のものに限らず、人工合成物であってもよい。
これらの中では、モンモリロナイト、ザウコナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、ベントナイト、テニオライト等のスメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族が好ましい。
【0091】
一般に、天然品は、非イオン交換性(非膨潤性)であることが多く、その場合は好ましいイオン交換性(ないし膨潤性)を有するものとするために、イオン交換性(ないし膨潤性)を付与するための処理を行うことが好ましい。そのような処理のうちで特に好ましいものとしては、次のような化学処理が挙げられる。ここで化学処理とは、表面に付着している不純物を除去する表面処理と層状珪酸塩の結晶構造、化学組成に影響を与える処理のいずれをも用いることができる。
具体的には、(イ)塩酸、硫酸等を用いて行う酸処理、(ロ)NaOH、KOH、N H等を用いて行うアルカリ処理、(ハ)周期表第2族から第14族から選ばれた少なくとも1種の原子を含む陽イオンとハロゲン原子または無機酸由来の陰イオンからなる群より選ばれた少なくとも1種の陰イオンからなる塩類を用いた塩類処理、(ニ)アルコール、炭化水素化合物、ホルムアミド、アニリン等の有機物処理等が挙げられる。これらの処理は、単独で行ってもよいし、2つ以上の処理を組み合わせてもよい。
【0092】
前記層状珪酸塩は、全ての工程の前、間、後のいずれの時点においても、粉砕、造粒、分粒、分別等によって粒子性状を制御することができる。その方法は、合目的的な任意のものであり得る。特に、造粒法について示せば、例えば、噴霧造粒法、転動造粒法、圧縮造粒法、撹拌造粒法、ブリケッティング法、コンパクティング法、押出造粒法、流動層造粒法、乳化造粒法および液中造粒法等が挙げられる。特に好ましい造粒法は、上記の内、噴霧造粒法、転動造粒法および圧縮造粒法である。
【0093】
上記した層状珪酸塩は、もちろんそのまま用いることもできるが、これらの層状珪酸塩をトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリi-ブチルアルミニウム、トリn-プロピルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリn-ヘキシルアルミニウム、トリn-オクチルアルミニウム、トリn-デシルアルミニウム、ジi-ブチルアルミニウムハイドライドなどの有機アルミニウム化合物やAl-O-Al結合を含む有機アルミニウムオキシ化合物と組み合わせて用いることができる。
【0094】
触媒活性成分である成分(A)及び成分(B)を、層状珪酸塩に担持するには、成分(A)及び成分(B)と層状珪酸塩を相互に接触させる、あるいは成分(A)及び成分(B)、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物、及び、層状珪酸塩を相互に接触させてもよい。
各成分の接触方法は、特に限定されず、例えば、以下の方法が任意に採用可能である。
方法(6):
成分(A)及び成分(B)と有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物を接触させた後、層状珪酸塩担体と接触させる。
方法(7):
成分(A)及び成分(B)と層状珪酸塩担体を接触させた後、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物と接触させる。
方法(8):
有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物と層状珪酸塩担体を接触させた後、成分(A)及び成分(B)と接触させる。
【0095】
これらの接触方法の中で方法(6)と方法(8)が好ましい。いずれの接触方法においても、通常は窒素またはアルゴンなどの不活性雰囲気中、一般にベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素(通常炭素数6~12)、n-ヘプタン、n-ヘキサン、n-デカン、n-ドデカン、シクロヘキサンなどの脂肪族あるいは脂環族炭化水素(通常炭素数5~12)等の液状不活性炭化水素の存在下、撹拌下または非撹拌下に各成分を接触させる方法が採用される。
成分(A)及び成分(B)を層状珪酸塩に担持する場合の担持、溶媒洗浄および溶媒除去の方法は、前記の無機物担体と同様の条件を採用できる。
【0096】
触媒活性成分である成分(A)及び成分(B)と、有機アルミニウム化合物または有機アルミニウムオキシ化合物、層状珪酸塩担体の使用割合は、特に限定されないが、以下の範囲が好ましい。
成分(A)及び成分(B)の担持量は、層状珪酸塩担体1gあたり、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量が、0.0001mmol~5mmol、好ましくは0.001mmol~0.5mmol、さらに好ましくは0.01mmol~0.1mmolである。
また、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物を用いる場合、成分(A)及び成分(B)に含まれる遷移金属(M)の合計量に対する、有機アルミニウム化合物又は有機アルミニウムオキシ化合物に含まれるアルミニウム原子のモル比(Al/M)は、0.01~100、好ましくは0.1~50、さらに好ましくは0.2~10の範囲であることが望ましい。
【0097】
こうして得られるオレフィン重合用触媒は、重合槽内で、または重合槽外で、オレフィンの存在下で予備重合を行ってもよい。オレフィンとは炭素間二重結合を少なくとも1個含む炭化水素をいい、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、3-メチルブテン-1、スチレン、ジビニルベンゼン等が例示されるが、特に種類に制限はなく、これらと他のオレフィンとの混合物を用いてもよい。好ましくはエチレン、プロピレンである。さらに好ましくはエチレンである。
【0098】
予備重合を行う際のオレフィンの供給方法は、オレフィンを反応槽に定速的にあるいは定圧状態になるように維持する供給方法やその組み合わせ、段階的な変化をさせるなど、任意の方法が可能である。
予備重合時間は、特に限定されないが、5分~24時間の範囲であることが好ましい。
また、予備重合量は、予備重合ポリマー量がポリオレフィン重合用触媒の1重量部に対し、好ましくは0.01重量部~100重量部、さらに好ましくは0.1重量部~50重量部である。予備重合を終了した後に、触媒の使用形態に応じ、そのまま使用することが可能であるが、必要ならば乾燥を行ってもよい。
【0099】
予備重合温度は、特に制限は無いが、0℃~100℃が好ましく、より好ましくは10℃~70℃、特に好ましくは20℃~60℃、さらに好ましくは30℃~50℃である。
この範囲とすることで、反応速度の低下を起こさず、活性化反応は促進されると考えられる。また、予備重合ポリマーの溶解や予備重合速度が速すぎて生じる粒子形状の悪化や、副反応のための活性点の失活も抑制できると考えられる。
【0100】
予備重合は有機溶媒等の液体中で実施することも出来、かつこれが好ましい。予備重合時の固体触媒の濃度には特に制限は無いが、好ましくは50g/L以上、より好ましくは60g/L以上、特に好ましくは70g/L以上である。濃度が高い方が成分(A)及び成分(B)の活性化が進行し、高活性触媒となる。
【0101】
さらに、オレフィン重合用触媒とオレフィンの接触の際、もしくは接触の後の接触混合物中に、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンなどの重合体やシリカ、チタニアなどの無機酸化物固体を共存させることも可能である。
【0102】
予備重合後に触媒を乾燥してもよい。乾燥方法には特に制限は無いが、減圧乾燥や加熱乾燥、乾燥ガスを流通させることによる乾燥などが例示され、これらの方法を単独で用いても良いし2つ以上の方法を組み合わせて用いてもよい。乾燥工程において触媒を攪拌、振動、流動させてもよいし静置させてもよい。
本発明のオレフィン重合用触媒は、このように予備重合を行った後のものであってもよいし、予備重合を行う前のものであってもよい。
【0103】
II.エチレン系重合体の製造方法
本発明のエチレン系重合体の製造方法は、上述した本発明のオレフィン重合用触媒の存在下、エチレン、又はエチレン及び炭素数3~10のα-オレフィンを重合することを特徴とする。
本発明のエチレン系重合体の製造方法においては、上述した本発明のオレフィン重合用触媒を用いることにより、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体を得ることができる。
【0104】
本発明のエチレン系重合体の製造方法において、使用するモノマーは、エチレンのみであってもよいし、エチレンと炭素数3~10のα-オレフィンとの組み合わせであってもよい。
炭素数3~10のα-オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、スチレン、ジビニルベンゼン、7-メチル-1,7-オクタジエン、シクロペンテン、ノルボルネン、エチリデンノルボルネンなどが挙げられ、好ましくは炭素数3~8のα-オレフィン、より好ましくは炭素数4~6のα-オレフィンである。
【0105】
重合様式は、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式を採用しうる。具体的には、不活性溶媒を用いるスラリー重合法、不活性溶媒を実質的に用いずプロピレンを溶媒として用いるバルク重合方法、溶液重合法あるいは実質的に液体溶媒を用いず各モノマーをガス状に保つ気相重合法などが採用できる。また、連続重合、回分式重合、又は予備重合を行う方法も適用される。これらの中では、重合体粒子性状の制御の点から、スラリー重合法が好ましい。
また、水素濃度、モノマー濃度、重合圧力、重合温度等の重合条件が互いに異なる2段階以上の多段階重合行う方法も適用される。
スラリー重合法の場合は、重合溶媒として、イソブタン、ヘキサン、ヘプタン、ペンタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族又は芳香族炭化水素の単独又は混合物が用いられる。重合温度は0℃~150℃であり、また分子量調節剤として補助的に水素を用いることができる。重合圧力は0MPa~200MPa、好ましくは0MPa~6MPaが適当である。
共重合の場合、反応系中の各モノマーの量比は、経時的に一定である必要はなく、各モノマーを一定の混合比で供給することも便利であるし、供給するモノマーの混合比を経時的に変化させることも可能である。また、共重合反応比を考慮してモノマーのいずれかを分割添加することもできる。
【0106】
一般的にエチレン系重合体を重合する際には、重合反応器へのポリマーの静電気付着を抑制するため、例えば、Innospec社製(代理店丸和物産)の製品名Stadisや製品名STATSAFE等の静電気防止剤を使用することも可能である。StadisやSTATSAFE等の静電気防止剤は、不活性炭化水素媒体に希釈したものをポンプ等により重合反応器に添加することもできる。
添加方法には、オレフィン重合用触媒に事前に添加する方法や、重合反応器に添加する方法などがあるが、添加量としては、スラリー重合法の場合には、溶媒に対して0.1ppm以上500ppm以下が好ましく、1ppm以上50ppm以下がより好ましい。また、気相法の場合には、単位時間当たりのエチレン系重合体の生産量に対して、1ppm以上500ppm以下が好ましく、10ppm以上100ppm以下がより好ましい。
【0107】
生成する重合体の分子量は、重合温度を変えることや、重合反応器内に水素を添加することなどで調節することができるが、水素の添加で調節する方法が好ましく用いられる。
水素が遷移金属とポリマー鎖との結合に挿入されて連鎖移動反応が起き、ポリマー鎖は遷移金属から脱離することで、生長反応が停止し、それ以上分子量が高くならなくなる。したがって、水素添加量を多くして、反応器内の水素濃度を高くすると分子量が小さくなり、添加量を少なくして水素濃度を低くすると分子量が高くなる。
この水素による連鎖移動反応の起きやすさは、オレフィン重合用触媒が含む遷移金属化合物の種類及び含有比率等により変化する。
【0108】
遷移金属化合物として成分(A)のみを含むオレフィン重合用触媒は、比較的少量のマクロモノマーを含む重合体を生成させるのに適切である。一方、遷移金属化合物として成分(B)のみを含むオレフィン重合用触媒は、自身もマクロモノマーを生成しつつ、α-オレフィンとマクロモノマーを共重合し、分岐構造を持つ高分子量の共重合体を生成させるのに適切である。さらに、成分(B)は炭素数3~10のα-オレフィン(コモノマー)に対する共重合反応性が成分(A)よりも高いという、成分(A)および成分(B)の組み合わせが好ましい。
本発明においては、オレフィン重合用触媒が、比較的低頻度で相対的に低分子量のマクロモノマーを生成する成分(A)と、成分(A)由来のマクロモノマーを共重合する共重合錯体であって成分(A)よりも高分子量の(共)重合体を生成し且つ自身で生成した相対的に高分子量のマクロモノマーを重合しにくい成分(B)の組み合わせを遷移金属化合物として含むことにより、高分子量の長鎖分岐が過剰数生成されることを抑制しながら、分子量分布が広いエチレン系重合体を製造することができる。
また、分子量分布の形、すなわち低分子量のポリマー成分が多いのか、高分子量のポリマーが多いのかを制御するには、成分(A)及び成分(B)の量を変えることで制御できる。
【0109】
重合においては、1つの反応器を使う以外に複数の反応器を用いる多段階の重合方法も用いられる。これは反応条件の同じまたは異なる反応器を接続し、1つ目の反応器で製造したポリマーを溶媒とともに、または溶媒を含まず、連続または間欠的に2つ目の反応器に供給し、2つ目の反応条件下においてポリマーの製造を継続するものである。反応器の数に制約はないが、好ましくは2または3段階の反応器が用いられる。1つ目の反応条件と2つ目以降の反応条件との間で、重合温度、重合圧力、モノマー濃度、コモノマー濃度、水素濃度など多様な条件を変更することで、それぞれの反応器で製造されるポリマーの混合物が得られる。水素濃度を変えることで分子量分布を広げることが可能となり、水素濃度に加え、コモノマー濃度を変えることを併用すれば、分子量ごとにコモノマー含量の異なるポリマーを製造することが可能になる。さらにモノマー濃度や重合温度を変えて反応器ごとのポリマー生成量を変えることで、反応器ごとに生成されるポリマーの量比を制御することも可能である。
多段重合においては、2段目以降に1段目とは異なるまたは同じオレフィン重合用触媒を追加してもよく、反応器を接続する間に未反応のガスを除去する装置を付与してもよい。
【0110】
また、重合系中に、水分除去を目的とした成分、いわゆるスカベンジャーを加えてもよい。なお、かかるスカベンジャーとしては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリi-ブチルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物、前記有機アルミニウムオキシ化合物、分岐アルキルを含有する変性有機アルミニウム化合物、ジエチル亜鉛、ジブチル亜鉛などの有機亜鉛化合物、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、エチルブチルマグネシウムなどの有機マグネシウム化合物、エチルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムクロリドなどのグリニヤ化合物などが使用される。これらの中では、トリエチルアルミニウム、トリi-ブチルアルミニウム、エチルブチルマグネシウムが好ましく、トリエチルアルミニウムが特に好ましい。
【0111】
III.得られるエチレン系重合体の物性
本発明のオレフィン重合用触媒の存在下で、エチレン、又はエチレン及び炭素数3~10のα-オレフィンを重合させることにより得られるエチレン系重合体は、溶融張力が高く成形性に優れているだけでなく、強度及び耐久性が高いものとすることができる。このようにして得られるエチレン系重合体は、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れる。本発明のオレフィン重合用触媒を用いて得られるエチレン系重合体は、プラスチック成形材料として好適に用いられ、特に、中空容器用プラスチック成形材料として好適に用いられる。
なお、本発明のオレフィン重合用触媒を用いて製造されるエチレン系重合体は、別の重合体と混合して使用してもよい。また当該エチレン系重合体は、重合体以外にも各種添加剤を混合したのち、溶融混錬されてから使うこともできる。
【0112】
本発明においては、以下の物性を有し、中空容器に適したエチレン系共重合体が得られる。
(1)MFR(190℃、2.16kg荷重)
本発明において得られるエチレン系重合体のメルトフローレート、すなわち、MFR(190℃、2.16kg荷重)は、0.001g/10分~1000g/10分であってよく、0.005g/10分~200g/10分であってよく、0.01g/10分~50g/10分であってよく、0.02g/10分~5.0g/10分であってよく、中でも好ましくは0.10g/10分~1.0g/10分である。
MFRは上記範囲にあることで、成形時における押出機モーター負荷の軽減やせん断による樹脂発熱量の増大抑制しやすいためシャークスキンやメルトフラクチャーなどの流動不安定現象の発生を抑制でき、成形品の外観を良好に保てる。また、良好な成形品の落下衝撃耐性や長期耐久性となる。
【0113】
(2)HLMFR(190℃、21.6kg荷重)
本発明において得られるエチレン系重合体のハイロードメルトフローレート、すなわち、HLMFR(190℃、21.6kg荷重)は、0.01g/10分~1000g/10分であってよく、0.1g/10分~500g/10分であってよく、1.0g/10分~300g/10分であってよく、2.0g/10分~200g/10分であってよく、中でも好ましくは40g/10分~60g/10分である。
HLMFRは上記範囲にあることで,(1)で述べたMFR同様の性能を示すと考えられる。
MFRやHLMFRは、主にエチレン系重合体の重合時の水素量及び重合温度により調整することができる。加えて、オレフィン重合用触媒を製造する際の成分(A)と成分(B)の比率によっても変化させることができると考える。
【0114】
(3)密度
本発明において得られるエチレン系重合体の密度は、0.850g/cm~0.980g/cmであってよく、0.935g/cm~0.970g/cmであってよく、中でも好ましくは0.945g/cm~0.965g/cmである。
密度は上記範囲にあると、耐環境応力亀裂性能および剛性が良好となる。
密度は、従来から良く知られている主にオレフィン重合用触媒を用いて重合するときのα-オレフィンの量により制御することができる。加えて、オレフィン重合用触媒を製造する際の成分(A)と成分(B)の比率によっても変化させることができると考える。
【0115】
(4)かさ密度
本発明において得られるエチレン系重合体のかさ密度は、0.20g/cm~0.50g/cmであってよく、0.30g/cm~0.50g/cmであってよく、中でも好ましくは0.35g/cm~0.45g/cmである。
かさ密度は上記範囲にあると、ポリマーの生産性の向上および生成したエチレン系重合体の移送工程の安定性の向上につながる。
かさ密度は、主に成分(D)の性状、触媒の製造方法、帯電防止剤の添加による重合反応器内のポリエチレン粒子同士の凝集の抑制により調整することができる。
【0116】
(5)分子量分布(Mw/Mn)
本発明において得られるエチレン系重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、6.0~60であってよく、8.0~50であってよく、10~40であってよく、10~30であってよく、中でも好ましくは12~20である。
分子量分布は上記範囲にあると、シャークスキンなどの流動不安定現象が発生しにくくさらに溶融張力が良好で,相溶性や耐衝撃性も良好となる。
好適な範囲で分子量分布を広げると、FNCTや溶融張力には適し、且つ、低分子量成分が多くなり過ぎずに引張衝撃強度を確保しやすくなる。
本発明において、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)から計算される。
分子量分布は、主に成分(A)および(B)の比率、多段重合においては重合条件が異なる各段で反応させることにより調整することができる。
【0117】
(6)溶融張力(MT)
本発明において得られるエチレン系重合体の溶融張力(MT)は、測定温度190℃において、好ましくは50mN以上であり、より好ましくは60mN以上であり、更に好ましくは70mN以上である。
溶融張力は、MFRやHLMFRで制御することができる。また、分子量分布によっても溶融張力を調節できる。MFRやHLMFRを小さくすると溶融張力は大きくなり、分子量分布を広げても溶融張力は大きくなる。さらに、溶融張力は長鎖分岐の影響も受け、長鎖分岐の量が多いほど溶融張力は大きい。溶融張力は上記範囲にあると、耐ドローダウンが良好で成形が容易になる。
【0118】
(7)引張衝撃強度(TIS)
本発明において得られるエチレン系重合体の引張衝撃強度(TIS)は、好ましくは130kJ/m以上であり、より好ましくは150kJ/m以上であり、更に好ましくは170kJ/m以上であり、より更に好ましくは200kJ/m以上である。
本発明において、引張衝撃強度(TIS)は、ASTM D1822 Type-Sの形状の試験片を用いて、JIS K 7160-1996のB法に準拠して測定される。
引張衝撃強度(TIS)は重量平均分子量や分子量分布、および密度により制御できる。分子量を大きくすることや分子量分布を狭くすること、および密度を下げることが衝撃強度を高くすることにつながるが、反面成形性とトレードオフの関係にある。
【0119】
(8)耐環境応力亀裂性
本発明において得られるエチレン系重合体は、ISO 16770に準拠して行う全周囲ノッチ式クリープ試験(FNCT)の破断時間が、好ましくは100時間以上であり、より好ましくは200時間以上であり、更に好ましくは600時間以上であり、より更に好ましくは1000時間以上である。
耐環境応力亀裂性(FNCT)は重量平均分子量や分子量分布、および密度により制御できる。分子量を大きくすること、および密度を下げることが耐環境応力亀裂性(FNCT)を高くすることにつながるが、反面成形性とトレードオフの関係にある。従って、成形性と両立させてFNCTの破断時間を長くするためには、高粘度化につながる高分子量の長鎖分岐が過剰数生成されることを抑制しながら、分子量分布が適度に広がった高分子量の重合体となるように制御することが挙げられる。
【実施例0120】
以下の実施例および比較例において本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
実施例においては、下記の評価方法を実施し、触媒合成工程および重合工程は、すべて精製窒素雰囲気下で実施し、使用した溶媒は、モレキュラーシーブ4A(商品名、ユニオン昭和株式会社製)で脱水精製したものを用いた。
【0121】
1.評価方法
(1)MFR(190℃、2.16kg荷重)
MFRは、JIS K6760に準拠し、温度190℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
(2)HLMFR(190℃、21.6kg荷重)
HLMFRは、JIS K6922-2:1997に準拠し、温度190℃、荷重21.6kgの条件で測定した。
(3)密度
密度は、JIS K6922-1,2:1997に準拠して測定した。
(4)かさ密度
JIS K6730に記載の方法に準拠し、得られたエチレン系重合体を、漏斗を使用して自由落下させ、容積がわかっている容器に回収し、次いで容器中のポリマー重量を測定し、1mlあたりのエチレン系重合体の重量(g)をかさ密度とした。
【0122】
(5)分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を以下に示す条件で実施し、保持容量から分子量へ換算することにより数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)を測定し、分子量分布(Mw/Mn)を計算した。
[GPC装置、測定条件]
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o-ジクロロベンゼン(ODCB)
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
[試料の調製]
試料を、140℃で約1時間を要してODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)中に溶解させ、濃度1mg/mLの試料溶液を調製した。
[保持容量から分子量への換算]
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行った。使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々の標準ポリスチレンが0.5mg/mLとなるように、ODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成した。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いた。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは、以下の数値を用いた。
PS:K=1.38×10-4、α=0.7
PE:K=3.92×10-4、α=0.733
PP:K=1.03×10-4、α=0.78
【0123】
(6)溶融張力(MT)
溶融させたエチレン系重合体を一定速度で延伸したときの応力を測定することにより決定され、下記条件により測定した。
[測定条件]
使用機種:東洋精機製作所製、キャピログラフ1B
ノズル径:2.095mm
ノズル長さ:8.0mm
流入角度:180°(flat)
押出速度:15mm/min
引き取り速度:6.5m/min
測定温度:190℃
【0124】
(7)引張衝撃強度(TIS)
[引張衝撃強さ試験サンプルの作製方法]
試料を、厚さ1mmの加熱プレス用モールドに入れ、表面温度230℃の熱プレス機中で5分間予熱後、加圧と減圧を繰り返すことで試料を溶融すると共に試料中の残留気体を脱気し、更に4.9MPaで加圧し、5分間保持した。その後、4.9MPaの圧力をかけた状態で、10℃/分の速度で徐々に冷却し、温度が室温付近まで低下したところでモールドから成形板を取り出した。得られた成形板を温度23±2℃、湿度50±5℃の環境下で48時間以上、状態調節した。状態調節後のプレス板からASTM D1822 Type-Sの形状の試験片を打ち抜き、引張衝撃強さ試験サンプルとした。
[引張衝撃強さ試験条件(TIS)]
上記試験片を用い、JIS K 7160-1996のB法に準拠して引張衝撃強さを測定した。なお、JIS K 7160-1996と異なるのは、試験片の形状のみである。
その他測定条件等に関しては、JIS K 7160-1996に準じた方法で試験を実施した。
【0125】
(8)耐環境応力亀裂性(FNCT)
全周囲ノッチ式クリープ試験(FNCT)を、ISO 16770に準拠して行った。
試料は、6mm×6mm×11mmの大きさの角柱の全周囲にカミソリ刃にて1mmのノッチが付けられ、4mm×4mmの大きさの断面を有した試験片を用意し、80℃の純水中で、3.7MPaに相当する引張応力を試験片に与え、試験片が破断するまでの時間を計測して、FNCTの破断時間とした。
【0126】
(9)粘弾性
粘弾性はともにAnton Paar社製のMCR302を用いて以下の条件で行った。
[粘弾性測定条件]
・試験片:プレス温度180℃のプレスにより厚み1mmのプレスシートを作成し、適度な大きさに切り取って測定した。
・使用治具:25φパラレルプレート
・測定温度:170℃
・歪み:1~10%
・周波数:100~0.01rad/sec
【0127】
2.成分(A)及び成分(B)の準備
ビス(n-ブチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリド(以下、メタロセンA1)は、富士フィルム和光純薬(株)より入手した。
【0128】
[合成例1]
ラセミ-ジメチルシリレンビス{(2-(5-メチル-2-フリル)-4-(4-i-プロピルフェニル)インデニル)}ジルコニウムジクロリド(以下、メタロセンB1)の合成:
メタロセンB1は、前記式(2)で表される化合物である。特開2012-149160号公報の合成例1に記載された手順に従って、配位子を合成し、四塩化ハフニウム(13mmol)の代わりに四塩化ジルコニウム(13mmol)を用いて錯化した以外は同様の操作にて錯体を合成し、メタロセンB1を得た。
【0129】
[合成例2]
ラセミ-ジメチルシリレンビス(2-メチル-4-フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド(以下、メタロセンB2)の合成:
メタロセンB2は、Organometallics、1994、vol.13、pp.954-963に記載の手順に従って合成した。
【0130】
3.触媒調製及びエチレン系重合体の製造
[実施例1]
(1)固体触媒の調製
成分(D)として、グレース社のsylopol2212の未焼成品を400℃で7時間焼成したシリカゲル3.5gに、トルエン86mlを添加して室温でスラリー化した。
上記工程とは別に、成分(A)としてメタロセンA1を28mg(69μmol)と成分(B)としてメタロセンB1を15mg(18μmol)計量した容器に、トルエンを18ml、成分(C)としてメチルアルミノキサントルエン溶液(アルベマール社より購入;MAO濃度20wt%品)を9.5ml(アルミニウムとして29mmol)添加して室温で1時間攪拌した。
この溶液を、前記成分(D)であるシリカゲルのトルエンスラリーに添加して40℃で1時間攪拌した。メタロセンA1とメタロセンB1との合計量のシリカゲル1g当たりの量は、25μmol/gである。攪拌停止後、静置した上澄みを取り除き、ヘキサン200mlを加えて上澄みを除去する操作を2回繰り返して触媒を洗浄した。減圧にて溶媒を留去し、さらさらとした固体触媒(MIX-1)を得た。
【0131】
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
攪拌および温度制御装置を有する内容積2リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、窒素下で、トリイソブチルアルミニウムを1.0mmol、1-ヘキセンを1ml、反応器の汚れ防止剤としてイノスペック社の製品名Statsafe6000をヘキサンで2vol%に希釈したもの1ml、精製イソブタンを800ml投入し、撹拌しながら70℃へ昇温した。次いで、水素を38ml(1.7mmol)導入後、エチレンを分圧が1MPaになるまで導入した。このとき,オートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.24mol%であった。その後、上記固体触媒(MIX-1)45mgを窒素ガスで圧入して90分間重合を行った。重合中は70℃を維持するように温度制御を実施し、また、全圧が一定になるようにエチレンを継続的に供給し、エチレン消費速度に比例して1-ヘキセン、および水素を供給した。
重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.15mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは1.5mlであった。
重合の結果、186gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表1にまとめた。また、得られたエチレン系重合体のGPCチャートを図1に示した。
【0132】
[比較例1]
(1)固体触媒の調製
実施例1の固体触媒の調製において、メタロセンA1を28mg(69μmol)から21mg(53μmol)に変更し、メタロセンB1を15mg(18μmol)からメタロセンB2を22mg(35μmol)に変更した以外は、実施例1と同様にして固体触媒(MIX-2)を製造した。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
実施例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒として、固体触媒(MIX-1)45mgの代わりに、上記固体触媒(MIX-2)53mgを使用し、重合時間を90分から60分に変更した以外は実施例1と同様に操作して重合を行った。重合開始前のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.19mol%であり、重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.11mol%であった。また、重合中に追加したヘキセンは、1mlであった。
重合の結果、130gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表1にまとめた。また、得られたエチレン系重合体のGPCチャートを図1に示した。
【0133】
[比較例2]
ノバテックHD HB431(日本ポリエチレン社製)について物性測定した結果を表1にまとめた。
【0134】
[比較例3]
エボリューH SP6505(プライムポリマー社製、メタロセン触媒を用いたスラリー法多段重合プロセスより得られる重合体)について物性測定した結果を表1にまとめた。
【0135】
【表1】
【0136】
4.考察
表1に示す実施例1及び比較例1~3の溶融張力(MT)、引張衝撃強度(TIS)及びFNCTの破断時間を比較すると、実施例1のエチレン系重合体は、これら全てが良好であり、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体であることが示された。実施例1のエチレン系重合体は、特にFNCTの破断時間が格段に長くなっており、従来のエチレン系重合体に比べ、耐久性が大幅に向上したものであった。
比較例1のエチレン系重合体は、MTは高かったものの、実施例に比べてTIS及びFNCTが劣っていた。
比較例2のエチレン系重合体は、MT、TIS及びFNCTの全てが実施例に比べて劣っていた。
比較例3のエチレン系重合体は、TISは高かったものの、MT及びFNCTが実施例に比べて劣っていた。
【0137】
また、実施例1のエチレン系重合体と比較例1のエチレン系重合体は、表1に示す通りHLMFRはほぼ同等であるが、図1に示す実施例1及び比較例1のエチレン系重合体のGPCチャートから明らかなように、実施例1のエチレン系重合体の方が、比較例1のエチレン系重合体よりも高分子量成分がやや多く、低分子量成分がやや少なかった。このように、実施例1のエチレン系重合体の方が、HLMFRを合わせて流動性を良好にしても充分な量の高分子量成分を含んでいるために、比較例1よりもFNCTは向上したと考える。さらに、比較例1で使用したメタロセンB2は実施例1で使用したメタロセンB1に比べて、高分子量のマクロモノマーを共重合しやすいため、比較例1では高分子量の長鎖分岐を持つポリマーの割合が多いことから重量平均分子量が同等であっても粘度が高くなりやすく、HLMFRを所望の範囲に合わせたエチレン系重合体で比較すると低分子量成分が多くなり強度の低下を招いたと推定される。
【0138】
[参考例1]
(1)メタロセンB1のみを使用した固体触媒の調製
実施例1の固体触媒の調製において、メタロセンA1を用いず、メタロセンB1の量を74mg(88μmol)とした以外は、実施例1と同様に調製して固体触媒(SC-1)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
攪拌および温度制御装置を有する内容積2リットルのステンレス鋼製オートクレーブに、窒素下で、トリイソブチルアルミニウムを1.0mmol、1-ヘキセンを6ml、反応器の汚れ防止剤としてイノスペック社の製品名Statsafe6000をヘキサンで2vol%に希釈したもの1ml、精製イソブタンを800ml投入し、撹拌しながら70℃へ昇温した。次いで、水素を25ml(1.1mmol)導入後、エチレンを分圧が1MPaになるまで導入した。このとき、オートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.14mol%であった。その後、上記固体触媒(SC-1)25mgを窒素ガスで圧入して60分間重合を行った。重合中は70℃を維持するように温度制御を実施し、また、全圧が一定になるようにエチレンを継続的に供給し、エチレン消費速度に比例して1-ヘキセン、および水素を供給した。
重合終了時のオートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、0.16mol%であった。また、重合中に追加した1-ヘキセンは7mlであった。
重合の結果、176gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表2にまとめた。また、得られたエチレン系重合体のGPCチャートを図2に示した。
【0139】
(3)ブレンド用低分子量ポリエチレンの製造
290Lの液体充填ループ型反応器に、脱水精製イソブタン、トリイソブチルアルミニウム、特開2012-72229号公報の比較例B1に記載のチーグラーナッタ予備重合触媒を用いて、水素、及びエチレンを連続的に供給して80℃でエチレンを重合することにより、MFRが46g/10minであるブレンド用低分子量ポリエチレンを製造した。
(4)ブレンド品の作製
300mlの三角フラスコに、キシレン180ml、上記(2)で得られたエチレン系重合体1.6g、上記(3)で得られた低分子量ポリエチレン2.4gおよび2,6-ジ-t-ブチルヒドロキシトルエン(BTH)1.0~1.5gを加えた。これを125~130℃で45分~90分間撹拌し、エチレン系重合体及び低分子量ポリエチレンをキシレンに完全に溶解させたキシレン溶液を得た。当該キシレン溶液をエタノール500mLに注ぎ、エチレン系重合体及び低分子量ポリエチレンを析出させた。ろ過により回収したエチレン系重合体及び低分子量ポリエチレンを80℃で真空乾燥し、エチレン系重合体及び低分子量ポリエチレンのブレンド品を得た。当該ブレンド品の粘弾性を測定し、結果を図3に示した。
【0140】
[参考例2]
(1)メタロセンB2のみを使用した固体触媒の調製
比較例1の固体触媒の調製において、メタロセンA1を用いず、メタロセンB2の量を55mg(88μmol)とした以外は、比較例1と同様に製造して、固体触媒(SC-2)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
参考例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒(SC-1)25mgの代わりに上記固体触媒(SC-2)を33mg使用した以外は、参考例1と同様に重合を行った。オートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、重合開始前は0.16mol%であり、重合終了時は0.21mol%であった。重合中に追加した1-ヘキセンは7mlであった。
重合の結果、176gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表2にまとめた。また、得られたエチレン系重合体のGPCチャートを図2に示した。
【0141】
[参考例3]
(1)メタロセンB2のみを使用した固体触媒の調製
比較例1の固体触媒の調製において、メタロセンA1を用いず、メタロセンB2の量を55mg(88μmol)とした以外は、比較例1と同様に製造して、固体触媒(SC-2)を得た。
(2)エチレン/1-ヘキセン共重合
参考例1のエチレン/1-ヘキセン共重合において、固体触媒(SC-1)25mgの代わりに上記固体触媒(SC-2)を33mg使用し、水素の導入量を25ml(1.1mmol)から75ml(3.3mmol)に変更した以外は、参考例1と同様に重合を行った。オートクレーブ内気相部の水素とエチレンのモル比は、重合開始前は0.47mol%であり、重合終了時は0.42mol%であった。重合中に追加した1-ヘキセンは6mlであった。
重合の結果、146gのさらさらとしたエチレン系重合体が得られた。重合結果と物性測定結果を表2にまとめた。また、得られたエチレン系重合体のGPCチャートを図2に示した。
【0142】
(3)ブレンド用低分子量ポリエチレンの製造
参考例1の(3)と同様の手順によりブレンド用低分子量ポリエチレンを製造した。
(4)ブレンド品の作製
参考例1のブレンド品の作製において、参考例1の(2)で得られたエチレン系重合体の代わりに、参考例3の(2)で得られたエチレン系重合体を用いた以外は、参考例1の(4)と同様にしてブレンド品を得た。当該ブレンド品の粘弾性を測定し、結果を図3に示した。
【0143】
【表2】
【0144】
参考例1及び参考例2では、遷移金属化合物としてメタロセンB1またはメタロセンB2のみを用いて、同じ重合条件によりエチレン系重合体を製造した。図2に示すように参考例1および参考例2のエチレン系重合体の分子量ピークはほぼ同じで、かつ参考例2のエチレン系重合体の方が低分子量成分を有しているにもかかわらず、表2に示すように、参考例1の重合体より参考例2のエチレン系重合体の方が、HLMFRが小さい。これは、参考例2のエチレン系重合体にはより多くの高粘度のポリマーが含んでいることを示唆している。
参考例1及び参考例3では、遷移金属化合物としてメタロセンB1又はメタロセンB2のみを用いて、HLMFRが同程度となるように水素の導入量を調整し、エチレン系重合体を製造した。
表2に示す通り、参考例1のエチレン系重合体と参考例3のエチレン系重合体は、HLMFRはほぼ同等であるが、図2に示す参考例1及び参考例3のエチレン系重合体のGPCチャートから明らかなように、参考例3のエチレン系重合体の方が、参考例1のエチレン系重合体よりも低分子量成分が多かった。また、図3に示す参考例1及び参考例3のブレンド品の粘弾性の結果から明らかなように、参考例1のブレンド品では低周波数で粘度が上昇しなかった。
参考例1及び参考例3で得られた重合体の分子量分布及び粘弾性の違いは、長時間緩和成分の量の違いに起因すると考えられる。すなわち、メタロセンB1を使用した参考例1の方が、メタロセンB2を使用した参考例3に比べ、得られたエチレン系重合体中に長時間緩和成分の量が少なく、参考例1のブレンド品では、低周波数での粘度が上昇しなかったと考えられる。この長時間緩和成分は、長鎖分岐に由来すると考えられる。メタロセンB1またはメタロセンB2を単独で触媒活性成分として重合に用いた際に製造される重合体において、長鎖分岐量は、メタロセンB2を使用した場合よりもメタロセンB1を使用した場合の方が少ない。すなわち、触媒としての性質(長鎖分岐ができる量)がメタロセンB1とメタロセンB2で異なることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明のオレフィン重合用触媒は、成形性、強度及び耐久性のバランスに優れたエチレン系重合体を製造するために利用することができる。
このようにして得られる成形性、強度及び耐久性のバランスに優れた本発明のエチレン系重合体は、プラスチック成形材料として広く用いることができる。
図1
図2
図3