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特開2022-183113安全容器及び被試験デバイス試験方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183113
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】安全容器及び被試験デバイス試験方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/26 20200101AFI20221201BHJP
   G12B 17/00 20060101ALI20221201BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G01R31/26 H
G12B17/00
G01R31/28 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022086050
(22)【出願日】2022-05-26
(31)【優先権主張番号】63/193,391
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】17/750,261
(32)【優先日】2022-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505436014
【氏名又は名称】ケースレー・インスツルメンツ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Keithley Instruments,LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】アーロン・ファーガソン
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ・ディー・ブッチ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・ソボレフスキー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン・ディー・スミス
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・ジェイ・ターガヴィッチ
【テーマコード(参考)】
2F078
2G003
2G132
【Fターム(参考)】
2F078HA07
2F078HA20
2G003AB16
2G003AC03
2G003AD01
2G003AD03
2G003AE09
2G003AH07
2G132AA15
2G132AF20
2G132AL22
2G132AL31
(57)【要約】
【課題】広い温度範囲で被試験デバイス(DUT)の試験を安全に行う。
【解決手段】高出力電子デバイスの試験用の安全容器100には、第1ポート111及び第2ポート112を有する第1シェル101と、第1ポート114及び第2ポート115を有する第2シェル102とがあり、支持面104に載置される。第1シェル101は、DUTを収容する大きさの試験室を実質的に囲むように構成される。第1ポートからは、温度制御された空気が試験室に流入し、第2ポートからは空気が試験室から流出するように構成される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高出力電子デバイスの試験用の安全容器であって、
実質的に剛性であって、被試験デバイス(DUT)を収容する大きさの試験室を実質的に囲むように構成される第1シェルと、
第1シェルの第1及び第2ポートとを具え、
上記第1ポートは、流体が上記試験室に入ることを可能にするように構成され、上記第2ポートは、上記流体が上記試験室から出ることを可能にするように構成される安全容器。
【請求項2】
上記流体の温度を制御する流体制御装置を更に具える請求項1の安全容器。
【請求項3】
上記第1シェルが支持面に結合するように構成され、
上記安全容器は、上記第1シェルのリムの周囲にガスケットを更に具え、
該ガスケットは、上記第1シェルと上記支持面との間をシーリングするように構成される請求項1の安全容器。
【請求項4】
上記第1シェルが1つ以上の側壁と上面とを有し、上記1つ以上の側壁と上記上面とが1つの部材から形成される請求項1の安全容器。
【請求項5】
上記支持面に結合するように構成されると共に上記第1シェルを実質的に囲むように構成される第2シェルと、
該第2シェルの第1及び第2ポートと
を更に具え、
上記第2シェルの上記第1ポートは、上記第1シェルの上記第1ポートとアライメントされて上記流体が上記試験室に入ることを可能にすると共に、上記第2シェルの上記第2ポートは、上記第1シェルの上記第2ポートとアライメントされて上記流体が上記試験室から出ることを可能にする請求項1から4のいずれかの安全容器。
【請求項6】
上記第1シェルと上記第2シェルとの間に空隙を更に具える請求項5の安全容器。
【請求項7】
上記第2シェルが1つ以上の側壁と上面を含み、上記第2シェルの上記1つ以上の側壁と上記上面が1つの部材から形成される請求項5の安全容器。
【請求項8】
上記第1シェル又は上記第2シェルの一方の突起部が、上記第1シェル又は上記第2シェルの他方のレセプタクルと係合することによって、上記第1シェルを上記第2シェルにアライメントする請求項5の安全容器。
【請求項9】
上記第1シェルが、加熱装置又は冷却装置を含む支持面に結合するように構成される請求項1の安全容器。
【請求項10】
上記第1シェルは、該第1シェルのオフセット・ピン・ホールと上記支持面の嵌合ピンによって支持面に結合するよう構成される請求項1の安全容器。
【請求項11】
被試験デバイス(DUT)を試験する方法であって、
試験室内に上記DUTを配置する処理と、
上記DUTを試験するために高出力電気信号を上記DUTに印加する処理と
を具え、
上記試験室は、上記DUTの収容に適した大きさを有すると共に実質的に剛性の第1シェルによって実質的に囲まれ、該第1シェルには第1ポート及び第2ポートがあり、上記第1ポートは上記試験室内に流体が流入できるように構成され、上記第2ポートは上記流体が上記試験室から流出できるように構成される被試験デバイスを試験する方法。
【請求項12】
上記第1ポートに流入される上記流体の温度を制御する処理を更に具える請求項11の被試験デバイスを試験する方法。
【請求項13】
上記DUTを試験するために上記高出力電気信号を上記DUTに印加する処理の前に、
上記第1シェルを実質的に囲むように第2シェルを配置する処理と、
上記第2シェルの第1ポートを上記第1シェルの上記第1ポートにアライメントする処理と、
上記第2シェルの第2ポートを上記第1シェルの上記第2ポートにアライメントする処理と
を更に具える請求項11の被試験デバイスを試験する方法。
【請求項14】
上記第1シェルを実質的に囲むように上記第2シェルを配置する処理が、上記第1シェル又は上記第2シェルの一方の突起部を、上記第1シェル又は上記第2シェルの他方のレセプタクルと係合して、上記第1シェルを上記第2シェルにアライメントする処理を有する請求項11の被試験デバイスを試験する方法。
【請求項15】
上記試験室内に上記DUTを配置する処理が、上記第1シェルのオフセット・ピン・ホールと支持面の嵌合ピンによって上記第1シェルを支持面に結合する処理を有する請求項11の被試験デバイスを試験する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、試験測定システムに関し、特に、被試験デバイス(DUT)の高出力試験を安全に行うための安全容器及び試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、例えば、ワイド・バンド・ギャップのSiC又はGaNデバイスその他の電子デバイスは、しばしば、高出力(high-power)試験やデバイスの特性評価を必要とする。一部のデバイスでは、広い温度範囲にわたる特性評価が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7-244114号公報
【特許文献2】特開平8-15369号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「Keysight B1505A Power Device Analyzer/Curve Tracer Quick Start and Demonstration Guide」、特に11頁「1-2. Agilent N1265A UHC Expander/Fixture」、キーサイト・テクノロジーズ社、2014年、[online]、[2022年5月25日検索]、インターネット<https://www.keysight.com/jp/ja/assets/9018-03800/quick-start-guides/9018-03800.pdf>
【非特許文献2】「B1505Aパワー・デバイス・アナライザ/カーブトレーサ データシート」、特に23頁「UHC(超大電流)エクスパンダー/フィクスチャ(N1265A)仕様」、キーサイト・テクノロジーズ社、2019年、[online]、[2022年5月25日検索]、インターネット<https://www.keysight.com/jp/ja/assets/7018-02115/data-sheets/5990-3853.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の試験システムの中には、デバイス試験用の部分的なソリューションを提供するものがある。例えば、米国キーサイト・テクノロジーズ社のN1265A型超高電流(Ultra High Current: UHC)エキスパンダー/フィクスチャは、このようなデバイスで高出力試験を実行する能力を備えているが、温度試験機能が含まれておらず、DUTの爆発が発生した場合に完全な破片の封じ込め機能も提供しない。同様に、従来の入手可能な温度試験オプションには、高出力破壊試験において、破片等の封じ込め機能が含まれていない。
【0006】
開示技術の実施形態は、従来技術における欠点に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願に記載されるように、本発明の実施形態は、ある範囲の温度にわたる高出力デバイス試験及び特性評価のための包括的なソリューションを提供するものであり、DUTが爆発した場合における破片及び煙の完全な封じ込め機能がある。本発明の実施形態によれば、ユーザは、例えば、ある範囲の温度(例えば、-50度Cから150度C)において、DUTの破壊試験を実行できる。このとき、「高出力デバイス(high-power device)」とは、(a)瞬間的に1000ワットを超えて動作するデバイス、又は、(b)万が一、動作中に壊滅的な破損が発生した場合、オペレータが怪我をする恐れがあるというリスクのあり得るデバイス、のいずれかを意味する。例えば、3500ボルト及び数キロ・アンペアを扱えるデバイスであっても良い。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、支持面に配置され、流体ラインに接続された実施形態例による安全容器の斜視図である。
図2図2は、図1の安全容器の分解図である。
図3図3は、図1において、3で示す部分での断面図である。
図4図4は、図1において、4に示す部分での断面図である。
図5図5は、例示的な構成要素間の関係を示す機能ブロック図である。
図6図6は、被試験電子デバイスの試験方法の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、例示的な実施形態による安全容器(safety container)の一部を示す斜視図である。図2は、図1の安全容器の分解図である。図3は、図1において、3で示す部分における断面図である。図4は、図1において、4で示す部分での断面図である。図5は、例示的な構成要素間の関係を示す機能ブロック図である。
【0010】
図1~4に例示されるように、安全容器100は、第1シェル101、第2シェル102及びガスケット103を有していても良い。安全容器100は、支持面104に設置されても良い。支持面104は、例えば、ワークベンチ、試験フィクスチャ、プリント回路基板(PCB)の一部、又は電子回路を試験するための他のプラットフォームであっても良い。
【0011】
第1シェル101は、被試験デバイス(DUT)106に合わせた大きさの試験室(testing chamber)105の周囲を実質的に囲むように構成される。この状況で使用される場合、「実質的に周囲を囲む」とは、完全な包囲を必要とせずに、大部分又は本質的に周囲に広がっていることを意味する。例えば、安全容器100は、上述のように支持面104上に載置されても良いと理解される。従って、第1シェル101は、第1シェル101と支持面104とを組み合わせて一緒になって試験室105を囲むことになるので、全ての実施形態において、試験室105の下にまで広がっている必要はない。
【0012】
DUT106は、例えば、電子回路であっても良い。実施形態によっては、DUT106は、例えば、SiC又はGaNパワー・モジュールなどの62ミリ・メートルのフォーム・ファクタを有する回路素子であっても良い。このような構成において、試験室105は、62ミリ・メートルのフォーム・ファクタを有する回路素子を収容する大きさである。別の実施形態においては、別の大きさのものを収容しても良い。図5に例示されるように、DUT106は、オシロスコープなどの試験測定装置107に接続されても良い。実施形態によっては、DUT106が、支持面104に対して着脱可能な試験フィクスチャ(fixture:固定装置)108によって試験室105内に固定されても良い。例えば、試験フィクスチャ108の支持面104に対する着脱は、試験フィクスチャ108のねじ108aを着脱することによって行っても良い。
【0013】
実施形態によっては、第1シェル101は実質的に剛性である。この文脈で使用される場合、「実質的に剛性」とは、完全に柔軟性がないことを必要とせず、大部分又は本質的に硬く、しなやかではないことを意味する。このような実施形態において、第1シェル101に剛性があることは、DUT106が試験中に破裂する場合において、安全容器100が、爆発から安全容器100の外側の領域を隔離(insulate)する能力を向上させるのに役立つ。
【0014】
図1~4に例示されるように、第1シェル101は、1つ以上の側壁109及び上面110を有していても良い。実施形態によっては、1つ以上の側壁109及び上面110は、単一の部材から形成される。つまり、側壁109及び上面110を形成するための、2つ以上の部材を接続した溶接部やその他の継手(Joint:ジョイント)はない。このような実施形態では、単一部材による構成によって、DUT106が爆発した場合に、安全容器100の外側の領域を隔離する第1シェル101の能力が向上し、もって、安全容器100全体としての能力も向上する。
【0015】
実施形態によっては、第1シェル101は、電気的に非導電性の材料から形成されるか、そうでない場合でも、電気的に非導電性の材料を含んでいる。このような実施形態によれば、第1シェル101は、試験室105と、試験室105内のDUT106とを、オペレータがいるかもしれない安全容器100の外側の領域から電気的に絶縁(insulate)するのに役立つ。
【0016】
実施形態によっては、第1シェル101は、矩形のドーム型である。この文脈で使用される場合、「矩形のドーム」とは、側壁109を通る実質的に矩形の水平断面を有するドーム構造を意味する。本開示で使用される場合、「実質的に矩形」とは、大部分又は本質的に矩形又は正方形のような形状であることを意味する一方で、角は、依然として、例えば、丸みを帯びていても良いとするものである。このような断面は、図1~4に示す視点では、支持面104に対して水平又は平行である。第1シェル101は、図1図4の夫々において矩形のドームとして描かれている。実施形態によっては、第1シェル101が、円形ドーム又は直円柱で、円形の断面を有していても良い。
【0017】
実施形態によっては、第1シェル101は、第1ポート111及び第2ポート112を有する。第1ポート111は、流体が試験室105に入ることを可能にするように構成され、第2ポート112は、流体が試験室105から出ることを可能にするように構成される。しかしながら、図において第1ポート111としてラベル付けされているものを、これに代えて、流体が試験室105から出る場所としても良く、第2ポート112としてラベル付けされているものを、流体が試験室105に入る場所としても良いことが理解できよう。
【0018】
実施形態によっては、試験室105に入る流体は、試験室105内に所望の試験温度を提供するために、所定の温度とする。実施形態によっては、流体は空気である。従って、例えば、流体制御装置113によって流体を第1ポート111に導入しても良い(図5参照)。実施形態によっては、流体制御装置113は、所定の温度で第1ポート111に流体を導入し、このとき、この所定の温度は、流体制御装置113によって制御される。流体制御装置113は、本開示で説明する別の温度制御機能の代わりに、又は、これらに加えて使用されても良い。実施形態によっては、試験室105を出た流体は、流体制御装置113に戻る。別の実施形態において、試験室105を出る流体は、流体が汚染物質を有していても良い状況では、流体制御装置113以外のどこか、例えば、大気中、排気管(drain:流体が液体なら排液管等)、又は、汚染制御装置へと排気又は排出される。
【0019】
第2シェル102は、支持面104に結合するよう構成され、第1シェル101の周囲を実施的に囲むように構成される。上述のように、「実質的に周囲を囲む」とは、完全な包囲を必要とせずに、大部分又は本質的に周囲に広がっていることを意味する。従って、安全容器100が支持面104上に載置されている場合、第2シェル102は、第2シェル102と支持面104とを組み合わせて一緒になって第1シェル101を囲むことになるので、全ての実施形態において、第1シェル101又は試験室105の下にまで広がっている必要はない。
【0020】
実施形態によっては、第2シェル102は、第1ポート114及び第2ポート115を有する。第2シェル102の第1ポート114は、第1シェル101の第1ポート111とアライメント(alignment:位置合わせ)されて、流体が試験室105に入ることを可能にする。同様に、第2シェル102の第2ポート115は、第1シェル101の第2ポート112とアライメントされて、流体が試験室105から出ることを可能にする。第1シェル101について上述したように、図において第1ポート114としてラベル付けされているものを、これに代えて、流体が試験室105から出る場所としても良く、図において第2ポート115としてラベル付けされているものを、流体が試験室105に入る場所としても良いことが理解できよう。
【0021】
図1に例示されるように、第1ポート111及び114は、第1流体ライン117に取り付けられた第1流体継手116を受け入れるように構成されても良い。第1流体ライン117は、流体制御装置113又は他の流体供給源に接続されても良い。図1に例示されるように、第2ポート112及び115は、第2流体ライン119に取り付けられた第2流体継手118を受け入れるように構成されても良い。第2流体ライン119は、流体制御装置113又は試験室105から排出される流体用の排気管(drain:流体が液体なら排液管等)に接続されても良い。
【0022】
図1~4に例示されるように、第2シェル102は、1つ以上の側壁120及び上面121を有していても良い。実施形態によっては、1つ以上の側壁120及び上面121は、1つの部材から形成されている。即ち、側壁120と上面121を形成するための2つ以上の部材を接続する溶接部やその他の継手(ジョイント)はない。このような構成において、単一部材による構成は、DUT106が爆発した場合に安全容器100の外側の領域を隔離するための、第2シェル102の能力を向上させ、もって、安全容器100全体としての能力も向上させる。
【0023】
実施形態によっては、第2シェル102は、電気的に非導電性の材料から作られるか、そうでない場合でも、電気的に非導電性の材料を含んでいる。このような実施形態によれば、第2シェル102は、試験室105と、試験室105内のDUT106とを、安全容器100の外側の領域から電気的に絶縁するのに役立つ。別の実施形態では、第2シェル102が、アルミニウムなどの金属から形成されても良い。
【0024】
実施形態によっては、第2シェル102は、矩形のドーム型である。第2シェル102は、図1~4の夫々おいて、矩形のドームとして描かれている。別の実施形態では、第2シェル102が、円形のドーム又は直円柱で、円形の断面を有していても良い。
【0025】
実施形態によっては、第1シェル101と第2シェル102との間に空隙(air gap:エア・ギャップ)122が存在しても良い。空隙122によって、第1シェル101と第2シェル102が、確実に直接接触しないようにできる(ただし、以下で説明する突起部125及びレセプタクル126の部分は除く)。実施形態によっては、空隙122内の空気は、試験室105内を所望の試験温度にするのを促進するため、循環させるか、温度を制御するか、又は、その両方であっても良い。空隙122は、本開示で説明する他の温度制御機能の代わりに、又は、これらに加えて使用されても良い。
【0026】
実施形態によっては、第1シェル101の第1ポート111又は第1シェル101の第2ポート112の一方又は両方が、サーマル・カメラなどのカメラを受け入れるように構成されても良い。このような構成では、対応する第2シェル102の第1ポート114又は第2シェル102の第2ポート115も、それぞれの場合において、流体が試験室105に出入りすることを可能にする代わりに、又は、これに加えて、同様に構成されても良い。サーマル・カメラによって、試験室105内のDUT106の温度を監視することが可能になるので、例えば、DUT106が温度上昇により破損する恐れが生じたら、必要に応じて、DUT106に供給する電流を低下させる又はオフにしても良い。また、サーマル・カメラによって、試験室105内のDUT106の温度を監視して、本開示で説明する温度制御機能、例えば、流体制御装置113や加熱又は冷却装置130を通して温度制御を行っても良い。もしカメラが可視光のカメラであれば、例えば、DUT106の状態を映像として観察、記録するのに利用しても良い。
【0027】
実施形態によっては、ガスケット103は、第1シェル101のリム(rim:縁部)123又は第2シェル102のリム124の一方又は両方と支持面104との間をシーリング(seal:密封)するように構成されている。ガスケット103は、例えば、DUT106の爆発から安全容器100の外側の領域を隔離する安全容器100の能力を改善できる。また、ガスケット103は、例えば、試験室105内を所望の試験温度に維持する安全容器100の能力を改善できる。
【0028】
実施形態によっては、第1シェル101又は第2シェル102のいずれか一方には、突起部125があり、これは、第1シェル101又は第2シェル102の他方のレセプタクル126と係合して、第1シェル101を第2シェル102にアライメント(位置合わせ)する。図3に示す実施形態例では、第1シェル101に突起部125があり、第2シェル102にレセプタクル126がある。
【0029】
実施形態によっては、支持面104には、ホット・プレートなどの発熱体(加熱装置、ヒータ)130があり、試験室105内に所望の試験温度を提供する。また、支持面104が、発熱体130の代わりに、又は、発熱体130に加えて、冷却装置を有していても良い。加熱装置又は冷却装置は、本開示で説明する別の温度制御機能の代わりに、又は、これらに加えて使用されても良い。
【0030】
実施形態によっては、安全容器100は、安全容器100内のオフセット・ピン・ホール127及び支持面104上の嵌合ピン128によって支持面104に結合するように構成されている。従って、例えば、第1シェル101若しくは第2シェル102、又は、その両方が、オフセット・ピン・ホール127を有していてもよい。図2図4に図示される実施形態例では、第1シェル101が、オフセット・ピン・ホール127を有する。実施形態によっては、オフセット・ピン・ホール127が、代わりに支持面104にあっても良く、一方、安全容器100は、代わりに、嵌合ピン128を有していても良いことが理解できよう。ピン・ホールは、安全容器100を支持面104上に1つの向きでのみ適切に設置できるようにオフセットされる。例えば、図1に示す例では、2つの嵌合ピン128が、第1シェル101に対して対角に配置することで、第1シェル101を逆向きで支持面104上に載置できないようにしている。
【0031】
実施形態によっては、安全容器100は、温度若しくは電圧又はその両方が所定の閾値を下回るまで、支持面104からの安全容器100の取り外し(又は、安全容器100内の試験室105からのDUT106の取り外し)を防止するための、サーマル・インターロック若しくは電圧インターロック又はその両方を有していても良い。
【0032】
図6は、被試験電子デバイスの試験方法の一例を示す。図6に例示されるように、DUT106を試験する方法600には、安全容器100の試験室105内にDUT106を配置する処理601があっても良い。試験室105は、DUT106の収容に適した大きさを有し、実質的に剛性の第1シェル101によって実質的に囲まれる。第1シェル101には、第1ポート111及び第2ポート112があり、第1ポート111は、試験室105内に流体が流入できるように構成され、第2ポート112は、流体が試験室105から流出できるように構成される。方法600には、更に、DUT106を試験するために、高出力電気信号をDUT106に印加する処理606がある。
【0033】
実施形態によっては、試験室105内にDUT106を配置する処理601は、第1シェル101のオフセット・ピン・ホール127及び支持面104上の嵌合ピン128によって、第1シェル101を支持面104に結合する処理を有していても良い。
【0034】
実施形態によっては、方法600が、第1ポート111に空気を導入する処理605を有していても良く、これは、実施形態によっては、空気が所定の温度であっても良い。
【0035】
実施形態によっては、方法600が、DUT106を試験するために高出力電気信号をDUT106に印加する処理606の前に、第1シェル101を実質的に囲むように第2シェル102を配置する処理602と、第2シェル102の第1ポート114を第1シェル101の第1ポート111にアライメント(位置合わせ)する処理603と、第2シェル102の第2ポート115を第1シェル101の第2ポート112にアライメントする処理604とを有していても良い。
【0036】
実施形態によっては、第1シェル101を実質的に囲むように第2シェル102を配置する処理602が、第1シェル101又は第2シェル102の一方の突起部125を、第1シェル101又は第2シェル102の他方のレセプタクル126と係合させることで、第1シェル101を第2シェル102に対してアライメント(位置合わせ)する処理を有していても良い。
【0037】
実施形態によっては、第1シェル101及び第2シェル102は、支持面104に同時に結合される。従って、例えば、第1シェル101及び第2シェル102を支持面104に結合する前に、第1シェル101が第2シェル102に結合されても良い。
【0038】
従って、本発明の実施形態によれば、DUT爆発が発生した場合に破片や煙を完全に封じ込め、様々な広い温度にわたって高出力電子デバイスの試験と特性評価を行える。更に、2つのシェルを有することにより、構成上、試験室の周りに単一のシェルを有する場合よりも、優れた熱的隔離、電気的絶縁及び爆発時の隔離を提供できる。

実施例
【0039】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0040】
実施例1は、高出力電子デバイスの試験用の安全容器であって、該安全容器は、実質的に剛性であって、被試験デバイス(DUT)を収容する大きさの試験室を実質的に囲むように構成される第1シェルと、第1シェルの第1及び第2ポートとを具え、上記第1ポートは、流体が試験室に入ることを可能にするように構成され、上記第2ポートは、流体が試験室から出ることを可能にするように構成される。
【0041】
実施例2は、実施例1の安全容器であって、上記流体の温度を制御する温度制御装置を更に具え、上記流体は、所定温度の空気である。
【0042】
実施例3は、実施例1~2のいずれかの安全容器であって、第1シェルが支持面に結合するように構成され、安全容器は、第1シェルのリムの周囲にガスケットを更に具え、ガスケットは、第1シェルと支持面との間をシーリング(密封)するように構成される。
【0043】
実施例4は、実施例1~3のいずれかの安全容器であって、第1シェルが矩形ドームから構成される。
【0044】
実施例5は、実施例1~4のいずれかの安全容器であって、第1シェルが、電気的に非導電性の材料を含む。
【0045】
実施例6は、実施例1~5のいずれかの安全容器であって、第1シェルが1つ以上の側壁と上面とを有し、1つ以上の側壁と上面が1つの部材から形成される。
【0046】
実施例7は、実施例1~6のいずれかの安全容器であって、支持面に結合するように構成されると共に第1シェルを実質的に囲むように構成される第2シェルと、第2シェルの第1及び第2ポートとを更に具え、第2シェルの第1ポートは、第1シェルの第1ポートとアライメントされて流体が試験室に入ることを可能にすると共に、第2シェルの第2ポートは、第1シェルの第2ポートとアライメントされて流体が試験室から出ることを可能にする。
【0047】
実施例8は、実施例7の安全容器であって、第1シェルと第2シェルとの間に空隙(エア・ギャップ)を更に具える。このとき、空隙内の空気の温度を制御しても良い。
【0048】
実施例9は、実施例7~8のいずれかの安全容器であって、第2シェルが1つ以上の側壁と上面を含み、第2シェルの1つ以上の側壁と上面が1つの部材から形成される。
【0049】
実施例10は、実施例7~9のいずれかの安全容器であって、第2シェルが矩形ドームから構成される。
【0050】
実施例11は、実施例7~9のいずれかの安全容器であって、第1シェル又は第2シェルの一方の突起部が、第1シェル又は第2シェルの他方のレセプタクルと係合することによって、第1シェルを第2シェルにアライメントする。
【0051】
実施例12は、実施例7~11のいずれかの安全容器であって、第1ポート及び第2ポートの少なくとも一方がカメラを受け入れるように構成される。
【0052】
実施例13は、実施例1~12のいずれかの安全容器であって、第1シェルが、発熱装置又は冷却装置を含む支持面に結合するように構成される。
【0053】
実施例14は、実施例1~13のいずれかの安全容器であって、第1シェルは、第1シェルのオフセット・ピン・ホールと支持面の嵌合ピンによって支持面に結合するよう構成される。
【0054】
実施例15は、被試験デバイス(DUT)を試験する方法であって、該方法は、試験室内にDUTを配置する処理と、DUTを試験するために高出力電気信号をDUTに印加する処理とを具え、試験室は、DUTの収容に適した大きさを有すると共に実質的に剛性の第1シェルによって実質的に囲まれ、第1シェルには第1ポート及び第2ポートがあり、第1ポートは試験室内に流体が流入できるように構成され、第2ポートは流体が試験室から流出できるように構成される。
【0055】
実施例16は、実施例15の方法であって、第1ポートに空気を導入する処理を更に具える。
【0056】
実施例17は、実施例15の方法であって、第1ポートに所定温度の空気を導入する処理を更に具え、このとき、空気の温度は、流体制御装置によって制御される。
【0057】
実施例18は、実施例15~17のいずれかの方法であって、DUTを試験するために高出力電気信号をDUTに印加する処理の前に、第1シェルを実質的に囲むように第2シェルを配置する処理と、第2シェルの第1ポートを第1シェルの第1ポートにアライメントする処理と、第2シェルの第2ポートを第1シェルの第2ポートにアライメントする処理とを更に具える。
【0058】
実施例19は、実施例18の方法であって、第1シェルを実質的に囲むように第2シェルを配置する処理が、第1シェル又は第2シェルの一方の突起部を、第1シェル又は第2シェルの他方のレセプタクルと係合して、第1シェルを第2シェルにアライメントする処理を有する。
【0059】
実施例20は、実施例15~19のいずれかの方法であって、試験室内にDUTを配置する処理が、第1シェルのオフセット・ピン・ホールと支持面の嵌合ピンによって第1シェルを支持面に結合する処理を有する。
【0060】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0061】
開示された主題の上述の様々な実施形態は、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべての実施形態において、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0062】
加えて、本願の記述は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0063】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0064】
更に、用語「を具える(comprises)」及びその文法的に等価なものは、本願において、他のコンポーネント(components)、機能(features)、ステップ、処理(processes)、工程(operations)がオプションで存在することを示すのに使用される。例えば、コンポーネントA、B及びC「を具える(comprising)」又は「何かが」コンポーネントA、B及びC「を具える(which comprises)」という条件は、コンポーネントA、B及びCだけを含んでも良いし、又は、コンポーネントA、B及びCと共に1つ以上の他のコンポーネントを含んでいても良い。
【0065】
また、「垂直」、「水平」、「下」、「右」、「左」などの方向は、便宜上、図に記載されている描写を参照しながら使用している。しかし、安全容器は、実際に使用では、多数の向きがあり得る。従って、図面において、垂直、水平、下、右側にある、又は、左側にあるといった配置関係は、実際の使用では、同じ配置又は向きではない場合がある。
【0066】
説明の都合上、本発明の具体的な実施例を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。
【符号の説明】
【0067】
100 安全容器
101 第1シェル
102 第2シェル
103 ガスケット
104 支持面
105 試験室
106 被試験デバイス(DUT)
107 試験測定装置
108 試験フィクスチャ
109 第1シェルの側壁
110 第1シェルの上面
111 第1シェルの第1ポート
112 第1シェルの第2ポート
113 流体制御装置
114 第2シェルの第1ポート
115 第2シェルの第2ポート
116 第1流体継手
117 第1流体ライン
118 第2流体継手
119 第2流体ライン
120 第2シェルの側壁
121 第2シェルの上面
122 空隙
123 第1シェルのリム
124 第2シェルのリム
125 突起部
126 レセプタクル
127 オフセット・ピン・ホール
128 嵌合ピン
130 加熱又は冷却装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6