(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183154
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】ビスホスホシンゲル製剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7072 20060101AFI20221201BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20221201BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20221201BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20221201BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20221201BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20221201BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20221201BHJP
A61P 27/16 20060101ALI20221201BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20221201BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20221201BHJP
A61P 17/10 20060101ALI20221201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221201BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20221201BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221201BHJP
A61K 47/04 20060101ALI20221201BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61K31/7072
A61K9/06
A61K45/00
A61K47/10
A61K47/26
A61P1/02
A61P27/02
A61P27/16
A61P31/00
A61P31/10
A61P17/10
A61P43/00 121
A61Q19/00
A61P17/00 101
A61K47/04
A61K47/02
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022147051
(22)【出願日】2022-09-15
(62)【分割の表示】P 2019567981の分割
【原出願日】2018-06-12
(31)【優先権主張番号】62/518,262
(32)【優先日】2017-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519327021
【氏名又は名称】レイクウッド アメディックス、インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ケイツ、スティーブン、エイ.
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、キース アーサー
(57)【要約】
【課題】抗菌活性を有するゲル製剤、ゲル製剤を使用する方法の提供。
【解決手段】Nu-2、Nu-3、Nu-4、Nu-5及びNu-8又は薬学的に許容可能なその塩、又はそれらの何らかの組み合わせからなる群から選択されるビスホスホシンと、脂肪アルコール増粘剤と、非イオン性ポリマー乳化剤と、を含む、ゲル製剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nu-2、Nu-3、Nu-4、Nu-5及びNu-8又は薬学的に許容可能なその塩、又はそれらの何らかの組み合わせからなる群から選択されるビスホスホシンと、
脂肪アルコール増粘剤と、
非イオン性ポリマー乳化剤と、
を含む、ゲル製剤。
【請求項2】
ビスホスホシンが、Nu-3又は薬学的に許容可能なその塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
約pH1~約pH5のpHを有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
約pH1.5~約pH4のpHを有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
約pH3~約pH4のpHを有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項6】
ビスホスホシンが、製剤中に約1%~約20%(重量/重量)の量で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
ビスホスホシンが、製剤中に約5%~約15%(重量/重量)の量で存在する、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
ビスホスホシンが、製剤中に約30%~約50%(重量/重量)の量で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
脂肪アルコール増粘剤が、製剤中に約1%~約50%(重量/重量)の量で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
脂肪アルコール増粘剤が、製剤中に約1%~約20%(重量/重量)の量で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項11】
脂肪アルコール増粘剤が、製剤中に約1%~約10%(重量/重量)の量で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項12】
非イオン性ポリマー乳化剤が、製剤中に約0.25%~約15%(重量/重量)の量で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項13】
非イオン性ポリマー乳化剤が、製剤中に約0.5%~約5%(重量/重量)の量で存在する、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
水、グリセロール、マンニトール、生理食塩水及びリン酸緩衝食塩水からなる群から選択される希釈剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項15】
希釈剤が水である、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
水が、製剤中に約65%~約97.5%(重量/重量)の量で存在する、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
脂肪アルコール増粘剤が、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ドコサノールアルコール及びオレイルアルコールからなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
脂肪アルコール増粘剤がセトステアリルアルコールである、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
セトステアリルアルコールが、製剤中に約2%~約10%(w/w)の量で存在する、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
非イオン性ポリマーが、セテス-20、ステアレス-20及びセテアレス-20からなる群から選択される、請求項1に記載の製剤。
【請求項21】
非イオン性ポリマー乳化剤がセテアレス20である、請求項20に記載の製剤。
【請求項22】
セテアレス-20が、製剤中に約0.5%(w/w)より多い量で存在する、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
セテアレス-20が、製剤中に約0.5%~約5%(w/w)の量で存在する、請求項21に記載の製剤。
【請求項24】
局所投与に適合している、請求項1に記載の製剤。
【請求項25】
請求項1に記載の製剤の有効量を患者に投与することを含む、感染症の処置を必要とする患者において感染症を処置する方法。
【請求項26】
感染症が糖尿病性足潰瘍の感染である、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
感染症が熱傷創の感染である、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
感染症が併発(complicated)静脈下肢潰瘍の感染である、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
感染症が外耳炎感染である、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
請求項1に記載の製剤の有効量を患者に投与することを含む、尋常性ざ瘡の処置を必要とする患者において尋常性ざ瘡を処置する方法。
【請求項31】
請求項1に記載の製剤の有効量を患者に投与することを含む、爪真菌症の処置を必要とする患者において爪真菌症を処置する方法。
【請求項32】
請求項1に記載の製剤の有効量を患者に投与することを含む、結膜炎の処置を必要とする患者において結膜炎を処置する方法。
【請求項33】
請求項1に記載の製剤の有効量を患者に投与することを含む、口腔粘膜炎の処置を必要とする患者において口腔粘膜炎を処置する方法。
【請求項34】
少なくとも1つのさらなる活性成分が患者に投与される、請求項25に記載の方法。
【請求項35】
患者がヒトである、請求項25記載の方法。
【請求項36】
治療での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項37】
感染症の処置での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項38】
糖尿病性足潰瘍の感染症の処置での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項39】
熱傷創の処置での感染症の処置での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項40】
併発(complicated)静脈下肢潰瘍の感染症の処置での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項41】
尋常性ざ瘡の処置での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項42】
外耳炎の処置での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項43】
爪真菌症の処置での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項44】
結膜炎の処置での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項45】
口腔粘膜炎の処置での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項46】
薬剤の製造での使用のための、請求項1に記載の製剤。
【請求項47】
薬剤が、熱傷創における感染症を処置するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項48】
薬剤が、糖尿病性足潰瘍での感染症を処置するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項49】
薬剤が、併発(complicated)静脈下肢潰瘍での感染症を処置するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項50】
薬剤が、尋常性ざ瘡を処置するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項51】
薬剤が、外耳炎を処置するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項52】
薬剤が、爪真菌症を処置するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項53】
薬剤が、結膜炎を処置するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項54】
薬剤が、口腔粘膜炎を処置するためのものである、請求項46に記載の使用。
【請求項55】
薬剤が局所投与に適合される、請求項46に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、その全体において本明細書に参照により組み込まれる、2017年6月12日提出の米国仮特許出願第62/518,262号の優先権を主張する。
【0002】
本開示は、一般に、デオキシリボースに基づく治療薬のゲル製剤に関する。本開示のいくつかの実施形態の製剤は、微生物感染の局所処置に特に有用である。
【背景技術】
【0003】
皮膚及び他の軟部組織の病原性微生物感染は、広範囲の疾患を引き起こす。皮膚上細菌感染は特に懸念されており、多数の深刻な疾患に関与する。メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(MRSA)などの抗生物質耐性菌株が広範囲にますます蔓延していることから、米国及び世界の他の場所で健康上の脅威が高まっている。過去数十年にわたる多大な努力にもかかわらず、新しい抗生物質の発見は非常に困難であることが証明されており、その結果、細菌が既存の抗生物質に対してより耐性になるにつれて、実行可能な治療選択肢が着実に減少する。
【0004】
グラム陰性細菌感染症の処置は、効果的な薬剤がなく、薬剤耐性株の発生が増加していることから、特に課題となっている。グラム陰性細菌は、創傷又は手術部位の感染を含め、重篤で時には生命を脅かす皮膚及び軟部組織感染(SSTI)を引き起こすことが知られている。グラム陰性細菌は、現在入手可能な薬物の殆ど又は全てに耐性であることが多い。
【0005】
バイオフィルムは、最も深刻なSSTIにも寄与し得る。現在、バイオフィルムは院内感染の65%超、全微生物感染の80%に寄与すると推定される。バイオフィルムを介した感染症の処置は、バイオフィルム細菌細胞に対する典型的な最小発育阻止濃度(MIC)及び最小殺菌濃度(MBC)が浮遊細菌細胞よりも通常10~1000倍高いため、非常に困難であることが証明されている。
【0006】
「ビスホスホシン」と呼ばれる新しいクラスの抗生物質が発見されており、これは、多剤耐性細菌によって引き起こされるものを含む、広範囲の臨床的に重要な細菌感染症の処置へのアプローチをもたらし得る。ビスホスホシンクラスのメンバーは、2個の保護されたリン酸基を有するコアデオキシリボースユニットを特徴とする。これらの分子は高度にプロトン化/酸性化されており、優れた化学的安定性、低pH耐性及びヌクレアーゼによる分解に対する耐性を示す。ビスホスホシンのクラスは、抗菌活性を持つものとして記載されている。抗生物質として、ビスホスホシンは、グラム陽性、グラム陰性及びある種の抗生物質耐性株を含む多くの異なる細菌株の細菌細胞膜及び/又は細胞壁を急速に破壊することにより作用すると考えられている。ビスホスホシンクラスの最も先進的なメンバーであるNu-3は現在、感染した糖尿病性足潰瘍の処置について臨床試験が行われている。
【0007】
臨床試験で現在使用されているNu-3の製剤は水溶液である。糖尿病性足潰瘍の処置に対するこの製剤の使用は困難であることが証明されている。より付着性の高い、Nu-3及び他のビスホスホシンの局所製剤が、いくつかの理由のために所望されよう。特に、ゲルのようなより粘性の高い製剤は、適用がより容易であり、より都合がよく、審美的に満足でき、より長い局所曝露時間をもたらす。ビスホスホシンクラスの化合物に対するゲル製剤の調製は、いくつかの理由のために特に困難となってきた。より高い(より塩基性の)pHレベルで製剤化した場合、活性レベルが低下するため、ビスホスホシン及びその対応する塩は通常、pH1~pH5の範囲の強酸性pHで製剤化される。例えば、Nu-3などのビスホスホシンは、最も強力な抗菌活性を保持するために、pH2以下で製剤化する必要がある。
【0008】
さらに、比較的高濃度の活性ビスホスホシン化合物を含有する局所製剤が所望されるが、またこれも製造が困難であった。さらに、ビスホスホシン及びその塩は強いイオン性であるため、これらの化合物とともにイオン性ポリマー又は乳化剤を使用することは困難であった。したがって、得られた製剤は不安定であり、粘着性が不十分である。
【0009】
したがって、上記の困難を克服する新しい抗菌性ビスホスホシン製剤が必要とされる。
【発明の概要】
【0010】
本開示は、上記で詳述した課題に対処するゲル製剤及びその使用を提供する。
【0011】
本開示の一態様は、ゲル製剤を提供する。いくつかの実施形態において、ゲル製剤は、Nu-2、Nu-3、Nu-4、Nu-5及びNu-8又は薬学的に許容可能なその塩、又はそれらの何らかの組み合わせからなる群から選択されるビスホスホシンと;脂肪アルコール増粘剤と;非イオン性ポリマー乳化剤と、を含む。いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、Nu-3又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0012】
いくつかの実施形態において、本製剤は約pH1~約pH5のpHを有する。いくつかの実施形態において、本製剤は約pH1.5~約pH4のpHを有する。いくつかの実施形態において、本製剤は約pH3~約pH4のpHを有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、製剤中に約1%~約20%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、製剤中に約5%~約15%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、製剤中に約30%~約50%(重量/重量)の量で存在する。
【0014】
いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤は、製剤中に約1%~約50%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤は、製剤中に約1%~約20%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤は、製剤中に約1%~約10%(重量/重量)の量で存在する。
【0015】
いくつかの実施形態において、非イオン性ポリマー乳化剤は、製剤中に約0.25%~約15%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、非イオン性ポリマー乳化剤は、製剤中に約0.5%~約5%(重量/重量)の量で存在する。
【0016】
いくつかの実施形態において、本製剤は、水、グリセロール、マンニトール、生理食塩水及びリン酸緩衝食塩水からなる群から選択される希釈剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、希釈剤は水である。いくつかの実施形態において、水は、製剤中に約65%~約97.5%(重量/重量)の量で存在する。
【0017】
いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤は、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ドコサノールアルコール及びオレイルアルコールからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤はセトステアリルアルコールである。いくつかの実施形態において、セトステアリルアルコールは、製剤中に約2%~約10%(w/w)の量で存在する。
【0018】
いくつかの実施形態において、非イオン性ポリマーは、セテス-20、ステアレス-20及びセテアレス-20からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、非イオン性ポリマー乳化剤はセテアレス20である。いくつかの実施形態において、セテアレス-20は、製剤中に約0.5%(w/w)を超える量で存在する。いくつかの実施形態において、セテアレス-20は、製剤中に約0.5%(w/w)~約5%(w/w)の量で存在する。
【0019】
いくつかの実施形態において、本製剤は局所投与に適合する。
【0020】
本開示の別の態様は、感染症の処置を必要とする患者において感染症を処置する方法を提供し、この方法は、本開示の製剤の有効量を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態において、感染は糖尿病性足潰瘍の感染である。いくつかの実施形態において、感染は熱傷創の感染である。いくつかの実施形態において、感染は、併発(complicated)静脈下肢潰瘍の感染である。いくつかの実施形態において、感染は外耳炎感染である。
【0021】
本開示の別の態様は、尋常性ざ瘡の処置を必要とする患者において尋常性ざ瘡を処置する方法を提供し、この方法は、本開示の製剤の有効量を患者に投与することを含む。
【0022】
本開示の別の態様は、外耳炎の処置を必要とする患者において外耳炎を処置する方法を提供し、この方法は、本開示の製剤の有効量を患者に投与することを含む。
【0023】
本開示の別の態様は、爪真菌症の処置を必要とする患者において爪真菌症を処置する方法を提供し、この方法は、本開示の製剤の有効量を患者に投与することを含む。
【0024】
本開示の別の態様は、結膜炎の処置を必要とする患者において結膜炎を処置する方法を提供し、この方法は、本開示の製剤の有効量を患者に投与することを含む。
【0025】
いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0026】
本開示の別の態様は、治療での使用のための本開示の製剤を提供する。
【0027】
本開示の別の態様は、感染症の処置での使用のための本開示の製剤を提供する。
【0028】
本開示の別の態様は、糖尿病性足潰瘍の感染症の処置での使用のための本開示の製剤を提供する。
【0029】
本開示の別の態様は、熱傷創の感染症の処置での使用のための本開示の製剤を提供する。
【0030】
本開示の別の態様は、併発(complicated)静脈下肢潰瘍の感染症の処置での使用のための本開示の製剤を提供する。
【0031】
本開示の別の態様は、尋常性ざ瘡の処置での使用のための本開示の製剤を提供する。
【0032】
本開示の別の態様は、外耳炎の処置での使用のための本開示の製剤を提供する。
【0033】
本開示の別の態様は、爪真菌症の処置での使用のための本開示の製剤を提供する。
【0034】
本開示の別の態様は、結膜炎の処置での使用のための本開示の製剤を提供する。
【0035】
本開示の別の態様は、薬剤の製造での使用のための本開示の製剤を提供する。いくつかの実施形態において、本薬剤は、熱傷創での感染症を処置するためのものである。いくつかの実施形態において、本薬剤は、糖尿病性足潰瘍での感染症を処置するためのものである。いくつかの実施形態において、本薬剤は、併発(complicated)静脈下肢潰瘍での感染症を処置するためのものである。いくつかの実施形態において、本薬剤は、尋常性ざ瘡を処置するためのものである。いくつかの実施形態において、本薬剤は、外耳炎を処置するためのものである。いくつかの実施形態において、本薬剤は、爪真菌症を処置するためのものである。いくつかの実施形態において、本薬剤は、結膜炎を処置するためのものである。いくつかの実施形態において、本薬剤は局所投与に適合する。
【0036】
本開示の一実施形態による製剤の1つの利点は、ビスホスホシンの活性の作用機序が、グラム陽性及びグラム陰性細菌の両方を含む多くの異なる臨床的に重要な病原性細菌に対して有効であることである。本開示の一実施形態による製剤の別の利点は、一実施形態のそのような製剤が、本開示の製剤の有効量で処置される患者にとって無毒性であることである。
【0037】
本開示の実施形態による製剤のさらなる利点は、そのような製剤がバイオフィルムによって引き起こされる感染症の処置に有用であることである。本開示の実施形態による製剤の別の利点は、皮膚疾患、眼の状態又は創傷に罹患する患者を処置するために有効量で本製剤を投与し得ることである。本開示の一実施形態による製剤の別の利点は、そのような製剤を手術中又は手術後に(例えば、外科的切開又はインプラントに関連して)使用し得ることである。
【0038】
本開示の一実施形態による製剤のさらなる利点は、そのような製剤を、皮膚疾患(例えば複雑性皮膚・皮膚組織感染(cSSSI)、尋常性ざ瘡、外耳炎又は爪真菌症など)、眼の状態(例えば結膜炎(はやり目)又は創傷(例えば熱傷創、併発(complicated)糖尿病性足潰瘍(cDFCU)又は併発(complicated)静脈下肢潰瘍(cVLU))に罹患する患者を処置するのに有効な量で投与し得ることである。
【0039】
本開示のこれら及び他の目的、利点及び特徴は、本開示による化合物及び製剤の詳細及び以下でより詳細に記載するようなその使用を読めば、当業者にとって明らかとなろう。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下に記載の実施形態は、網羅的であること、又は以下の発明を実施するための形態に開示される正確な形態に本発明を限定することを意図するものではない。むしろ、他の当業者が本開示の原理及び実施を認識し理解し得るように実施形態を選択し、記載する。
【0041】
本開示はゲル製剤を提供する。いくつかの実施形態において、ゲル製剤は、Nu-2、Nu-3、Nu-4、Nu-5及びNu-8又は薬学的に許容可能なその塩、又はそれらの何らかの組み合わせからなる群から選択されるビスホスホシンを含む。本明細書中で使用する場合、「ビスホスホシン」という用語は、Nu-2、Nu-3、Nu-4、Nu-5及びNu-8を含む抗菌活性を有する化合物のクラス、又は薬学的に許容可能なその塩を指す。米国特許第6,627,215号明細書、同第6,211,162号明細書、同第7,868,162号明細書、同第7,176,191号明細書、同第8,435,960号明細書及び同第6,211,349号明細書(これらは全てその全体において参照により本明細書に組み込まれる。)は、ビスホスホシン及びビスホスホシンの作製及び使用方法を開示する。
【0042】
本明細書中で使用する場合、「製剤」という用語は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を含有し、治療目的で患者に投与するのに適している医薬製剤を指す。本明細書中で使用する場合、「患者」という用語は、例えば、ヒト、他の霊長類(例えばサル、チンパンジーなど)、コンパニオンアニマル(例えばイヌ、ネコ、ウマなど)、農場の動物(例えばヤギ、ヒツジ、ブタ、ウシなど)、実験動物(例えばマウス、ラットなど)、野生動物及び動物園の動物(例えばオオカミ、クマ、シカなど)などの何れかの哺乳動物を含むが限定されない、ビスホスホシンで処置される生物を指す。本明細書中で使用する場合、「ゲル」という用語は、流体を閉じ込め、含有可能であるポリマーネットワークを含む半固体製剤を指す。本明細書中で使用する場合、「半固体」という用語は、製剤のレオロジー的特性を指し、製剤は加えられる力の元で流動するが、患者の何れかの接近可能な体表面への適用後に元の位置にとどまる。
【0043】
Nu-2の化学名は((2R,3R,4R,5R)-5-(2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)-3-((ヒドロキシ(4-ヒドロキシブトキシ)ホスホリル)オキシ)-4-メトキシテトラヒドロフラン-2-イル)メチル(4-ヒドロキシブチル)リン酸水素である。Nu-2の分子式は、C
18H
32N
2O
14P
2である。Nu-2は次の式:
【化1】
を有する。
【0044】
Nu-3の化学名は、(2R,3S)-2-((ブトキシ(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)メチル)-5-(5-メチル-2,4-ジオキソ-3,4-ジヒドロピリミジン-1(2H)-イル)テトラヒドロフラン-2-イル)ブチルリン酸水素である。Nu-3の分子式はC
18H
32N
2O
11P
2である。Nu-3は次の式:
【化2】
を有する。
【0045】
Nu-4の化学名は、((2R,3S)-3-((ブトキシ(ヒドロキシ)ホスホリル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチルブチルリン酸水素である。Nu-4の分子式はC
13H
28O
9P
2である。Nu-4は次の式:
【化3】
を有する。
【0046】
Nu-5の化学名は、ジブチル(オキシビス(エタン-2,1-ジイル))ビス(リン酸水素)である。Nu-5の分子式はC
12H
28O
9P
2である。Nu-5は次の式:
【化4】
を有する。
【0047】
Nu-8の化学名は((2R,3S,5R)-5-(4-アミノ-2-オキソピリミジン-1(2H)-イル)-3-((ブトキシオキシドホスホール-イル)オキシ)テトラヒドロフラン-2-イル)メチルブチルホスファートである。Nu-8の分子式はC
17H
29N
3Na
2O
10P
2である。Nu-8は次の式:
【化5】
を有する。
【0048】
本明細書中で使用する場合、塩及び、担体、賦形剤及び希釈剤などの製剤成分に関して「薬学的に許容可能な」という用語は、患者にとって有害ではなく、他の成分、活性成分、塩又は構成成分と適合する塩及び構成成分を指す。薬学的に許容可能なものには「獣医学的に許容可能な」ものが含まれ、したがって、ヒト及び非ヒト哺乳動物の両方の適用が独立して含まれる。
【0049】
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容可能な塩」という用語は、アルカリ金属塩を形成するために、及び遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成するために一般的に使用される塩を指す。このような塩としては、例えば、当業者にとって公知の、Handbook of Pharmaceutical Salts:Properties,Selection and Use,P.H.Stahl and C.G.Wermuth(Eds.),Wiley-VCH,New York,2002に列挙されている生理学的に許容可能な塩が挙げられる。塩の形成は、不安定なプロトンを有する1つ以上の位置で起こり得る。ビスホスホシンの薬学的に許容可能な塩には、酸付加塩及び塩基付加塩の両方が含まれる。
【0050】
ビスホスホシンは、あらゆる微生物に対して活性を有する抗菌剤として有用である。本明細書中で使用する場合、「微生物(microbe)」、「微生物の(microbial)」などの用語は、細菌、真菌、原虫、ウイルス、酵母などを指す。本明細書中で使用する場合、「抗菌性」という用語は、ビスホスホシンが、微生物を死滅させるか又は増殖を阻害する能力、又は微生物感染の重症度を減弱させる能力を有することを指す。
【0051】
ビスホスホシンが有効である細菌の非限定的なリストには、グラム陽性細菌、グラム陰性細菌、成長の遅い細菌及び抗酸菌、及び次の属に含まれる何らかの種が含まれるが限定されない:エアロコッカス(Aerococcus)、リステリア(Listeria)、ストレプトミセス(Streptomyces)、クラミジア(Chlamydia)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、ブルクホルデリア(Burkholderia)、ステントロフォモナス(Stentrophomonas)、アクロモバクター(Achromobacter)、クモ類(Arachnid)、ミコバクテリウム(Mycobacterium)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、スタフィロコッカス(Staphylococcus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、エリシペロトリクス(Erysipelothrix)、デルマトフィラス(Dermatophilus)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バチルス(Bacillus)、ペプトコッカス(Peptococcus)、ニューモコッカス(Pneumococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ナイセリア(Neisseria)、クレブシエラ(Klebsiella)、クルチア(Kurthia)、ノカルジア(Nocardia)、セラチア(Serratia)、ロチア(Rothia)、エシェリキア(Escherichia)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、アクチノミセス(Actinomyces)、ヘリコバクター(Helicobacter)、エンテロコッカス(Enterococcus)、シゲラ(Shigella)、ビブリオ(Vibrio)、クロストリジウム(Clostridium)、サルモネラ(Salmonella)、エルシニア(Yersinia)及びヘモフィルス(Haemophilus)。
【0052】
ビスホスホシンは院内感染を処置するために使用し得る。ビスホスホシンが有効な院内感染を引き起こす具体的な細菌の非限定リストには、アシネトバクター・イウォフィイ(Acinetobacter iwoffii)(臨床分離株)、アシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)(臨床分離株)、クロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)(多剤耐性)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)(W.T.及びバンコマイシン耐性)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(バンコマイシン耐性)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)(臨床分離株及びNDM-1)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(W.T.)、シュードモナス・エルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)(シプロフロキサシン、MDR)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcessens)(オキサシリン耐性)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(バンコマイシン)及びスタフィロコッカス・エピデルミス(オキサシリン耐性)が含まれるが限定されない。
【0053】
ビスホスホシンは、市中感染を処置するために使用し得る。ビスホスホシンが有効である市中感染を引き起こす具体的な細菌の非限定リストには、エアロモナス・ヒドロフィラ(Aeromonas hydrophilia)(臨床分離株)、アルカリゲネス・フェカリス(Alcaligenes faecalis)(臨床分離株)、ボレリア・ブルグドルフェリ(Borellia burgdorferi)、ヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenza)、ミコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobacterium tuberculosis)(WT、MDR)、モラクセラ・カタラーリス(Moraxella catarrhalis)、ナイセリア・メニンギティディス(Neisseria meningitidis)(リファンピシン耐性)、プロピオニバクテリウム・アクネス(Propionibacterium acnes)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)及びストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)(ペニシリン耐性)が含まれるが限定されない。
【0054】
ビスホスホシンは、食中毒病原体を処置するために使用し得る。ビスホスホシンが有効である具体的な食中毒病原体の非限定リストには、エシェリキア・コリ(Esherichia coli)(アンピシリン耐性、NDM-1)、サルモネラ・コレラエス(Salmonella choleraesuis)(エンテリカ(enterica))及びサルモネラ・チフィムリウム(Salmonella typhimurium)(ストレプトマイシン耐性)が含まれるが限定されない。
【0055】
ビスホスホシンが有効である真菌の非限定リストには、トリコフィトン(Trichophyton)、エピデルモフィトン(Epidermophyton)、ミクロスポルム(Microsporum)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及び他のカンジダ種、ピチロスポルム・オルビクラレ(Pityrosporum orbiculare)、トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)、エピデルモフィトン・フロコッスルム(Epidermophyton floccosurn)及びトリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans)が含まれるが限定されない。ビスホスホシンが有効であるウイルスの非限定リストには、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びインフルエンザウイルスが含まれるが限定されない。別段の指定がない限り、本明細書中の本開示の化合物の仕様には、このような化合物の薬学的に許容可能な塩が含まれる。
【0056】
ビスホスホシンが有効である具体的な真菌病原体の非限定リストには、トリコフィタン・ルブラム(Trichophytan rubrum)及びメンタグロフィテス(mentagrophytes)、ミクロスポルム・ジプセウム(Microsporum gypseum)及びアスペルギルス・フミガツス(Aspergillus fumigatus)が含まれるが限定されない。
【0057】
いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、治療及び非治療の両方の医療用途において有用である。非治療的医療用途を含むいくつかの実施形態において、ビスホスホシンの抗菌効果により、滅菌(例えば、患者の皮膚又は表面又は例えば手術器具などの物体の滅菌)又は除菌(例えば、疾患を引き起こす微生物の望ましくない濃度がない表面にするために、表面、器具を浄化すること)のためのビスホスホシンの使用が可能になる。いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、実験室の培養物、消耗品(例えば食品又は飲料調製物)、医療機器、病院の装置又は工業プロセスの微生物汚染に対抗するのに有効である。ビスホスホシンの治療適用は本明細書中に記載される。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態において、ゲル製剤は脂肪アルコール増粘剤を含む。本明細書中で使用する場合、「脂肪アルコール増粘剤」という用語は、本開示の製剤の他の特性を実質的に変化させることなく本開示の製剤の粘度を向上させる脂肪アルコール化合物又は組成物を指す。いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤は、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ドコサノールアルコール及びオレイルアルコール又はそれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤はセトステアリルアルコールである。いくつかの実施形態において、セトステアリルアルコールは、製剤中に約2%~約10%(w/w)の量で存在する。いくつかの実施形態においては、セトステアリルアルコールは、最終粘度が10~50000センチポアズ(cps)になるように使用される。いくつかの実施形態において、最終粘度は500~20000cpsである。
【0059】
本明細書中に記載の製剤によって克服される特定の課題は、ビスホスホシンなどの荷電分子を含有する低pHゲル形成に適している乳化剤を同定することである。ポリエチレングリコール(PEG)エステルなどの典型的なイオン性ポリマーは、ゲル崩壊につながるビスホスホシンとの静電相互作用のゆえに開示されるゲル製剤に使用し得ない。代わりに、低pHに耐え得る陰イオン性ポリマーが必要とされる。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態において、ゲル製剤は非イオン性ポリマー乳化剤を含む。本明細書中で使用する場合、「非イオン性ポリマー乳化剤」という用語は、非イオン性界面活性剤を指す。一部の実施形態において、非イオン性ポリマーは、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、セテアレス-12、セテアレス-20(又はセトマクロゴール1000)、セテアレス30、セテス-10、セテス-20、ステアレス-10、ステアレス-20、ステアレス-40及びステアレス-100からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、非イオン性ポリマー乳化剤は、PEG-100ステアラート、PEG-40ステアラート、PEG-120ラウリン酸グリセリル、PEG-40ヒマシ油、PEG-60硬化ヒマシ油、PEG-75ラノリン、PEG-120及びジオレイン酸メチルグルコースなどのエステルに基づく製品からなる群から選択される。本明細書中で使用する場合、「セトマクロゴール1000」は、ポリエチレングリコールヘキサデシルエーテルも意味する。
【0061】
いくつかの実施形態において、非イオン性ポリマー乳化剤はセテアレス20である。いくつかの実施形態において、セテアレス-20は、製剤中に約0.5%(w/w)を超える量で存在する。いくつかの実施形態において、セテアレス-20は、製剤中に約0.5%(w/w)~約5%(w/w)の量で存在する。
【0062】
いくつかの実施形態において、本製剤は、他の薬学的に許容可能な担体、賦形剤又は希釈剤を含むが限定されない、ビスホスホシンの改善された製剤を提供するために他の薬学的に許容可能な構成成分を含み得る。他の担体、賦形剤又は希釈剤は、投与に望ましい調製物の形態に応じて、多岐にわたる形態をとり得る。
【0063】
いくつかの実施形態において、本製剤は、水、グリセロール、マンニトール、生理食塩水及びリン酸緩衝食塩水からなる群から選択される希釈剤をさらに含む。いくつかの実施形態において、希釈剤は水である。いくつかの実施形態において、水は、製剤中に約65%~約97.5%(重量/重量)の量で存在する。
【0064】
本開示のいくつかの実施形態において、製剤中に存在するビスホスホシンの量は変動する。いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、製剤中に約1%~約20%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、製剤中に約5%~約15%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、製剤中に約30%~約50%(重量/重量)の量で存在する。
【0065】
本開示のいくつかの実施形態において、製剤中に存在する脂肪アルコール増粘剤の量は変動する。いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤は、製剤中に約1%~約50%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤は、製剤中に約1%~約20%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤は、製剤中に約1%~約10%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、脂肪アルコール増粘剤は、製剤中に約2%~約8%(重量/重量)の量で存在する。
【0066】
本開示のいくつかの実施形態において、製剤中に存在する非イオン性ポリマー乳化剤の量は変動する。いくつかの実施形態において、非イオン性ポリマー乳化剤は、製剤中に約0.25%~約15%(重量/重量)の量で存在する。いくつかの実施形態において、非イオン性ポリマー乳化剤は、製剤中に約0.5%~約5%(重量/重量)の量で存在する。
【0067】
クラスとしてのビスホスホシンはpHが低いほど活性が高くなるため、ゲルの物理的完全性を維持しながら、ビスホスホシンの抗菌活性を保持する適切なゲル製剤を作製する必要がある。ゲルが約pH1~約pH5の所望のpH範囲のpHレベルで製剤化されることはまれであり、pH3以下ではさらにまれである。本開示の発明者らは、この目的を達成するために、活性成分、増粘剤及び乳化剤の独自の組み合わせをうまく処方した。所望のpHを達成するために、一部の実施形態において、本製剤は約pH1~約pH5のpHを有する。いくつかの実施形態において、本製剤は約pH1.5~約pH4のpHを有する。いくつかの実施形態において、本製剤は約pH3~約pH4のpHを有する。
【0068】
ビスホスホシンの活性はpH依存性である。したがって、本開示のいくつかの実施形態の製剤は、pH調整剤も含む。いくつかの実施形態において、pH調整剤は、酸(10%HClなど)、酸性塩又はそれらの混合物であり得る。さらに、pH調整剤は緩衝液でもあり得る。適切な緩衝液としては、クエン酸塩/クエン酸緩衝液、酢酸塩/酢酸緩衝液、リン酸塩/リン酸緩衝液、ギ酸塩/ギ酸緩衝液、プロピオン酸塩/プロピオン酸緩衝液、乳酸塩/乳酸緩衝液、炭酸塩/炭酸緩衝液、アンモニウム/アンモニア緩衝液などが挙げられる。いくつかの実施形態において、pH調整剤は、本組成物のpHを約pH1.0~約pH5.0に調整するのに十分な量で存在する。いくつかの実施形態において、pH調整剤は、本組成物のpHを約pH2~約pH4に調整するのに十分な量で存在する。
本開示の別の態様において、pH調整剤は、本組成物のpHを約pH3~約pH4に調整するのに十分な量で存在する。
【0069】
いくつかの実施形態において、本開示の製剤は局所投与に適合している。本明細書中で使用する場合、「局所投与」という用語は、ビスホスホシンが皮膚層を通過するように、患者の皮膚表面にビスホスホシンを投与することを指す。経皮投与及び経粘膜投与も局所投与という用語内に包含される。本明細書中で使用する場合、「経皮」という用語は、患者の少なくとも1つの皮膚層を横断するビスホスホシンの通過を指す。本明細書中で使用する場合、「経粘膜」は、患者の粘膜層を横断するビスホスホシンの通過を指す。特に明記又は示唆されない限り、「局所投与」、「経皮投与」及び「経粘膜投与」という用語は、本明細書中で交換可能に使用される。
【0070】
生物活性化合物を患者における微生物に送達させるための様々な局所送達系は、当技術分野で周知である。このような系としては、当技術分野における適切な担体の選択により、ローション、クリーム、ゲル、オイル、軟膏、溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられるが限定されない。
【0071】
いくつかの実施形態において、他の材料も本開示の局所製剤に追加され得、さらなる保湿効果を有し、本製剤の粘稠度を改善する。このような化合物の例としては、セチルエステルワックス、ステアリルアルコール、セチルアルコール、グリセリン、メチルパラベン、プロピルパラベン、クオタニウム-15、保湿剤、揮発性メチルシロキサン液及びポリジオルガノシロキサン-ポリオキシアルキレンが挙げられるが限定されない。いくつかの実施形態において、本製剤がさらなる洗浄効果を有することが望ましい場合、ラウリル硫酸ナトリウム又はカルボン酸の金属塩などの化学物質を添加し得る。
【0072】
本開示は、感染症の処置を必要とする患者において感染症を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示の製剤の有効量を患者に投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「感染」という用語は、患者の身体のあらゆる微生物感染を指す。感染には、微生物による患者の身体の侵入及びそれに続く患者の身体での増殖が含まれる。
【0073】
本明細書中で使用する場合、「処置する」、「処置」、「治療」などの用語は、疾患又は状態(すなわち適応症)の1つ以上の症状を予防する、緩和する、又は寛解させる、及び/又は処置中の患者の生存を延長させるのに有効な量のビスホスホシン又は本開示の製剤の投与を指す。いくつかの実施形態において、「処置する」、「処置」、「治療」などは、患者において感染を軽減又は排除することも含まれるが限定されない。
【0074】
本開示の方法を実施する際に、有効量のビスホスホシンがそれを必要とする患者に投与される。本明細書中で使用する場合、投与の文脈における「有効量」という用語は、患者に投与したときに、疾患又は状態(すなわち適応症)の1つ以上の症状を予防する、緩和する、又は寛解させる、及び/又は処置中の患者の生存を延長させるのに十分である本開示のビスホスホシンの量を指す。このような量は、処置される患者において有害事象を全く又はあまり生じさせないはずである。同様に、このような量は、処置される患者において毒性効果を全く又はあまり生じさせないはずである。当業者が理解するように、ビスホスホシンの量は、ビスホスホシンの活性(インビトロ、例えば、ビスホスホシン対標的、又は動物有効性モデルにおけるインビボ活性)、動物モデルにおける薬物動態の結果(生体半減期又はバイオアベイラビリティ)、処置中の患者のタイプ、患者の年齢、体格、体重及び一般的な身体状態、患者に付随する障害及び本処置で使用されている投与計画を含むが限定されない多くの要因に依存して変動する。
【0075】
いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、約1%~約15%の用量での投与に適している。いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、約2%~約10%の用量での投与に適している。いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、約3%~約8%の用量での投与に適している。いくつかの実施形態において、ビスホスホシンは、約5%の用量での投与に適している。
【0076】
本開示は、下肢潰瘍の感染症の処置を必要とする患者において下肢潰瘍の感染症を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を患者に投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「下肢」という用語は、臀部、大腿、脚、足首及び足を含むが限定されない患者の身体の下部の四肢を指す。本明細書中で使用する場合、「潰瘍」という用語は、患者の下肢のどこかに見られる開放創を指す。
【0077】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は局所投与である。いくつかの実施形態において、投与は、ローション、ペースト、クリーム、軟膏、オイル又は他の粘性組成物中のビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を使用して実施される。いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、投与は複数回投与計画として実施される。本明細書中で使用する場合、「複数回投与計画」という用語は、1日を超える処置期間を指す。
【0078】
いくつかの実施形態において、本開示は、糖尿病性足潰瘍の感染症の処置を必要とする患者において糖尿病性足潰瘍の感染症を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を患者に投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はI型糖尿病又はII型糖尿病に罹患している。本明細書中で使用する場合、「糖尿病性足潰瘍」という用語は、患者の足のどこかに位置する開放創を指す。いくつかの実施形態において、創傷は、患者の足の、踵中足部及び/又は前足部に位置する。本明細書中で使用する場合、糖尿病性足潰瘍の文脈における「処置する」という用語は、(a)足潰瘍のサイズ、面積及び/又は深さの進行の制限;(b)足潰瘍のサイズ、面積及び/又は深さの軽減;(c)治癒率の向上及び/又は治癒までの時間の短縮;(d)足潰瘍の治癒(排液なしで100%上皮化);及び(e)肢切断の発生率の低下又は肢切断までの時間の延長も含むが限定されない。
【0079】
いくつかの実施形態において、足潰瘍は、ニューロパチー、外傷、変形、高い足底圧、胼胝形成、浮腫及び末梢動脈疾患を含むが限定されないあらゆる基礎的病態によって引き起こされ得る。いくつかの実施形態において、ヒト糖尿病性足潰瘍は、少なくとも部分的に、ニューロパチー及び結果として生じる圧力(足における感覚の欠如による四肢にかかる重量)によって引き起こされるものである。当業者にとって公知であるように、ヒトの糖尿病性足潰瘍は、例えばマウスの急性創傷とは著しく異なるニューロパチー及び圧力によるものである傾向がある。一部の実施形態において、糖尿病性足潰瘍は、1つ以上の胼胝を含む。
【0080】
一部の実施形態において、糖尿病性足潰瘍は慢性潰瘍を含む。本明細書中で使用する場合、「慢性」足潰瘍は、サイズが縮小することなく少なくとも7日間存在しているものである。いくつかの実施形態において、慢性足潰瘍は、少なくとも14日間存在しているものである。いくつかの実施形態において、慢性足潰瘍は、サイズが縮小することなく少なくとも21又は28日間存在しているものである。いくつかの実施形態において、慢性足潰瘍は、何らかの他の処置に反応しなかった(すなわち、足潰瘍のサイズ、面積及び/又は深さの軽減なし;足潰瘍の治癒なし)。
【0081】
本開示の方法は、本明細書中に記載のゲル製剤を、適切と考えられる頻度で、すなわち1日1回、1日2回などで投与することを含み得る。本開示による方法は、例えば、潰瘍の治癒まで、主治医が望ましいとみなす限り、本開示の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を含有する製剤の局所投与をさらに含み得る。いくつかの実施形態において、ゲル製剤は、辺縁部を含む潰瘍の全領域を被覆する連続的フィルムを形成する。いくつかの実施形態において、ゲル製剤は、およそ0.25~2mmの厚さで塗布される。いくつかの実施形態において、ゲル製剤は、およそ0.5~1.5mmの厚さで塗布される。いくつかの実施形態において、局所製剤は、約1mmの厚さで塗布される。
【0082】
本明細書中で開示されるゲル製剤は、ヒト患者又は介護者によって適切とみなされる製剤中で密封するための何らかの創傷包帯材を含み得る何らかの適切な方式で適用され得る。このような包帯材の例としては、半透性フィルム、発泡体、親水コロイド及びアルギン酸カルシウム消毒綿が挙げられるが限定されない。
【0083】
糖尿病性足潰瘍に関する本開示の方法は、本開示の化合物及びその医薬組成物の投与と組み合わせた、創傷中及び創傷周囲のデブリードマンをさらに含み得る。全ての壊死、胼胝及び線維組織のデブリードマンは通常、糖尿病性足潰瘍の処置のために行われる。不健康な組織は、潰瘍の範囲を完全に視覚化し、根底にある膿瘍又は洞を検出できるように、出血している組織を明瞭に郭清する。主治医により決定される場合、何らかの適切なデブリードマン技術が使用され得る。次に、デブリードマン後に創傷を滅菌生理食塩水又は非細胞傷害性クレンザーで完全に洗い流し得る。
【0084】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は局所投与である。いくつかの実施形態において、投与は、ローション、ペースト、クリーム、軟膏、オイル又は他の粘性組成物中のビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を使用して実施される。いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、投与は複数回投与計画として実施される。
【0085】
本開示は、熱傷創における感染症の処置を必要とする患者において熱傷創における感染症を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を患者に投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「熱傷創」という用語は、患者の皮膚、及びおそらくは患者の皮膚の下にある組織に対する損傷を含む、患者の身体に対する熱傷創を指す。当業者にとって公知の3つの主要なタイプの熱傷レベルがあり、これには第1度、第2度及び第3度の熱傷が含まれるが限定されない。いくつかの実施形態において、本開示によって企図される熱傷創傷における感染症を処置する方法は、第1度、第2度及び/又は第3度の熱傷を処置するために使用される。
【0086】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は局所投与である。いくつかの実施形態において、投与は、ローション、ペースト、クリーム、軟膏、オイル又は他の粘性組成物中のビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を使用して実施される。いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、投与は複数回投与計画として実施される。
【0087】
いくつかの実施形態において、本開示は、併発(complicated)静脈下肢潰瘍の感染症の処置を必要とする患者において併発(complicated)静脈下肢潰瘍の感染症を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を患者に投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「併発(complicated)静脈下肢潰瘍」という用語は、患者の脚のどこかに位置し、静脈の不適切な機能に起因する開放創を指す。
【0088】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は局所投与である。いくつかの実施形態において、投与は、ローション、ペースト、クリーム、軟膏、オイル又は他の粘性組成物中のビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を使用して実施される。いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、投与は複数回投与計画として実施される。
【0089】
本開示は、外耳炎の処置を必要とする患者において外耳炎を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を患者に投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「外耳炎」という用語は、患者の外耳道の感染を指す。
【0090】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は局所投与である。いくつかの実施形態において、投与は、ローション、ペースト、クリーム、軟膏、オイル又は他の粘性組成物中のビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を使用して実施される。いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、投与は複数回投与計画として実施される。
【0091】
本開示は、尋常性ざ瘡の処置を必要とする患者において尋常性ざ瘡を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を患者に投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「尋常性ざ瘡」という用語は、しばしば膿疱性であるが化膿性ではない皮膚の発疹を特徴とする毛嚢脂腺の炎症性疾患を指す。
【0092】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は局所投与である。いくつかの実施形態において、投与は、ローション、ペースト、クリーム、軟膏、オイル又は他の粘性組成物中のビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を使用して実施される。いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、投与は複数回投与計画として実施される。
【0093】
本開示は、爪真菌症の処置を必要とする患者において爪真菌症を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を患者に投与することを含む。本明細書で使用する場合、「爪真菌症」という用語は、爪の真菌感染を指す。
【0094】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は局所投与である。いくつかの実施形態において、投与は、ローション、ペースト、クリーム、軟膏、オイル又は他の粘性組成物中のビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を使用して実施される。いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、投与は複数回投与計画として実施される。
【0095】
本開示はまた、結膜炎の処置を必要とする患者において結膜炎を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を患者に投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「結膜炎」という用語は、眼球の外膜及び/又は目頭の炎症又は感染を指す。
【0096】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は局所投与である。いくつかの実施形態において、投与は、ローション、ペースト、クリーム、軟膏、オイル又は他の粘性組成物中のビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を使用して実施される。いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、投与は複数回投与計画として実施される。
【0097】
本開示は、口腔粘膜炎の処置を必要とする患者において口腔粘膜炎を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、ビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の有効量を患者に投与することを含む。本明細書中で使用する場合、「口腔粘膜炎」という用語は、口の内側を覆う粘膜の炎症及び潰瘍形成を指す。
【0098】
いくつかの実施形態において、患者はヒトである。いくつかの実施形態において、投与は局所投与である。いくつかの実施形態において、投与は、ローション、ペースト、クリーム、軟膏、オイル又は他の粘性組成物中のビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩を使用して実施される。いくつかの実施形態において、患者に少なくとも1つのさらなる活性成分が投与される。いくつかの実施形態において、投与は複数回投与計画として実施される。
【0099】
本開示はまた、薬剤の製造のためのビスホスホシン又は薬学的に許容可能なその塩の使用も提供する。本明細書中で使用する場合、「薬剤」という用語は、本開示による製剤を指す。いくつかの実施形態において、本製剤は、例えばパッケージ、容器などの何らかの製造物中に含有される。
【0100】
いくつかの実施形態において、本開示による製剤において有用であるビスホスホシンは、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)又は(VI):
【化6】
(式中、Aは、H、アルキル、アルキル-(O-アルキル)、アリール、アルケニル、アルカノール、フェノール又はエノールであり;
式中、Qは、O、S、P-H、P-OH、P-アルキル、P-アリール、P-アシル、N-H、N-OH、N-アルキル、N-アリール、N-アシル、-CH
2、-CH(OH)又はCH(O-アルキル)であり;
式中、X及びZは、アルキル又はO-アルキル末端ブロッキング基であり;
式中、Wは、H、プリン、ピリミジン又はプリンもしくはピリミジンの修飾類似体である。);又は薬学的に許容可能なその塩の構造を有する。いくつかの実施形態において、X及び/又はZはアルキル末端ブロッキング基を含み、ここでアルキル部分は直鎖、分岐鎖又は環状である。いくつかの実施形態において、アルキル部分は1~4個の炭素を有し、直鎖である。いくつかの実施形態において、X及びZは同じ化学部分を有する。いくつかの実施形態において、X及びZは異なる化学部分を有する。いくつかの実施形態において、X及びZはブチル基を含む。いくつかの実施形態において、Xはブチル基であり、Zはブタノールである。いくつかの実施形態において、Xはブタノールであり、Zはブチル基である。いくつかの実施形態において、X及び/又はZは、CH
3CH
2CH
2CH
2-、CH
3CH
2CH
2-、CH
3CH
2-及びHOCH
2CH
2CH
2CH
2-からなる群から選択される構造を含む。
【0101】
別の実施形態において、本化合物は式(VII):
【化7】
(式中、環Aは、遊離アミノ基が環炭素原子に連結される飽和又は部分的不飽和の何れかである安定な5~7員単環式又は7~10員二環式炭素環式又は複素環式部分であり、R
1及びR
2は、分岐状又は非分岐状であり得るC
1-C
8アルキル部分の群からそれぞれ独立して選択される。)又は薬学的に許容可能なその塩を有する。
【0102】
いくつかの実施形態において、R
1及びR
2は両方ともブチル:
【化8】
であるか、又は薬学的に許容可能なその塩である。
【0103】
本開示のいくつかの実施形態において、本開示の製剤での使用のためのビスホスホシンとしては、以下で示される式(IX)の構造を有するもの:
【化9】
又は薬学的に許容可能なその塩が挙げられる。
【0104】
式(I)~(IX)の化合物の薬学的に許容可能な全ての塩形態が本明細書中で企図される。
【0105】
本開示の別の態様は、本開示の製剤を使用して、糖尿病性足潰瘍の処置を必要とする患者において糖尿病性足潰瘍を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示による製剤を患者に適用することにより、本開示の化合物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0106】
本開示の別の態様は、本開示の製剤を使用して、熱傷創の処置を必要とする患者において熱傷創を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示による製剤を患者に適用することにより、本開示の化合物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0107】
いくつかの実施形態による製剤を、皮膚疾患(例えば、複雑性皮・皮膚組織感染(cSSSI)、尋常性ざ瘡、外耳炎又は爪真菌症など)、眼の状態(例えば結膜炎(はやり目)又は創傷(例えば熱傷創、併発(complicated)糖尿病性足潰瘍(cDFCU)又は併発(complicated)静脈下肢潰瘍(cVLU))に罹患している患者を処置するのに有効な量で投与し得ることは、本開示の一実施形態のさらなる利点である。別の実施形態において、本開示のゲル製剤を手術中又は手術後に(例えば、外科的切開又はインプラントに関連して)使用し得る。
【0108】
本開示はまた、本開示の製剤を使用して、下肢静脈潰瘍の処置を必要とする患者において下肢静脈潰瘍を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示による製剤を患者に適用することにより、本開示の化合物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0109】
本開示はまた、本開示の製剤を使用して、皮膚疾患の処置を必要とする患者において皮膚疾患を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示による製剤を患者に適用することにより、本開示の化合物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0110】
本開示はまた、本開示の製剤を使用して、複雑性皮膚・皮膚組織感染症の処置を必要とする患者において複雑性皮膚・皮膚組織感染症を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示による製剤を患者に適用することにより、本開示の化合物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0111】
本開示はまた、本開示の製剤を使用して尋常性ざ瘡を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示による製剤を患者に適用することにより、本開示の化合物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0112】
本開示はまた、本開示の製剤を使用して、外耳炎の処置を必要とする患者において外耳炎を処置する方法を提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示による製剤を患者に適用することにより、本開示の化合物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0113】
本開示はまた、本開示の製剤を使用して、爪真菌症の処置を必要とする患者において爪真菌症を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示による製剤を患者に適用することにより、本開示の化合物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0114】
本開示はまた、本開示の製剤を使用して、眼の状態の処置を必要とする患者において眼の状態を処置する方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は、本開示による製剤を患者に適用することにより、本開示の化合物の有効量を投与することを含む。いくつかの実施形態において、患者はヒトである。
【0115】
本開示は、感染性生物を本明細書中で開示される製剤と接触させることにより、細菌、真菌又はウイルスの増殖を阻害又は予防するための方法も提供する。いくつかの実施形態において、本方法は哺乳動物を処置するために使用される。特定の実施形態において、本方法はヒトを処置するために使用される。いくつかの実施形態において、本開示は、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、エシェリキア・コリ(Escherichia coli)、アエロコッカス(Aerococcus)、リステリア(Listeria)、ストレプトミセス(Streptomyces)、クラミジア(Chlamydia)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ユーバクテリウム(Eubacterium)、クモ類(Arachnid)、マイコバクテリウム(Mycobacterium)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、コリネバクテリウム(Corynebacterium)、エリシペロトリクス(Erysipelothrix)、デルマトフィラス(Dermatophilus)、ロドコッカス(Rhodococcus)、シュードモナス(Pseudomonas)(アエルギノーザ(aeruginosa))、ストレプトコッカス(Streptococcus)、バチルス(Bacillus)、ペプトコッカス(Peptococcus)、ニューモコッカス(Pneumococcus)、ミクロコッカス(Micrococcus)、ナイセリア(Neisseria)、クレブシエラ(Klebsiella)(ニューモニエ(pneumoniae))、クルチア(Kurthia)、ノカルジア(Nocardia)、セラチア(Serratia)、ロチア(Rothia)、エシェリキア(Escherichia)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、アクチノミセス(Actinomyces)、ヘリコバクター(Helicobacter)、エンテロコッカス(Enterococcus)(腸球菌(Enterococci spp))、シゲラ(Shigella)、ビブリオ(Vibrio)、クロストリジウム(Clostridium)、サルモネラ(Salmonella)、エルシニア(Yersinia)、ヘモフィルス・モルガネラ・モルガニー(Haemophilus Morganella morganii)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、dコアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococci)、コアグラーゼ陰性ブドウ球菌(Staphylococcus)、腸内細菌科(Enterobacteriaceae)、E.フェカリス(E.faecalis)及びアシネトバクター・バウマンニイ(Acinetobacter baumannii)により引き起こされる細菌感染に罹患している哺乳動物を処置するために本開示の製剤を使用する方法を提供する。
【0116】
皮膚糸状菌と呼ばれる一連の真菌又はカビは、皮膚の真菌感染を引き起こす。これらの真菌は皮膚における寄生生物であり、体の様々な部分で様々な症状を引き起こす。これらは非常に感染性が高く、人から人へと伝染する。通常、これらの感染は局所的であるものの、特定の患者(例えば免疫抑制患者など)では、全身又は内部で起こり得る。
【0117】
本開示のゲル組成物で処置し得る真菌感染としては、皮膚糸状菌症(トリコフィトン(Trichophyton)、エピダーモフィトン(Epidermophyton)及びミクロスポルム(Microsporum))、カンジダ症(カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及び他のカンジダ種)、癜風(ピチロスポルム・オルビクラレ(Pityrosporum orbiculare))、足白癬(トリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、トリコフィトン・ルブラム(Trichophyton rubrum)及びエピデルモフィトン・フロコッスルム(Epidermophyton floccosurn))、頭部白癬及び白癬(トリコフィトン・トンスランス(Trichophyton tonsurans))が挙げられる。
【0118】
膣酵母感染は一般にカンジダ・アルビカンス(Candida albicans)によって引き起こされるが、これは、いくつかのタイプの細菌とともに、通常は膣領域に比較的少数で存在する。酵母が急速に増殖して占領し、カンジダ症又はモニリア症を引き起こすことがある。これは、膣環境の変化、傷害、性感染、HIV感染などが原因であることが多い。酵母に好都合な一般的環境の破壊としては、pH上昇、熱及び水分の増加、アレルギー反応、糖レベル上昇、ホルモンの流れ及び通常存在する細菌集団の減少が挙げられる。
【0119】
いくつかの実施形態において、1投与単位は、緩和が達成されるまで、又は症状が消失するかもしくは満足のいくように減弱されるまで、10、9、8、7、6、5、4、3、2日ごとに1回、又は1日あたり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回又は10回以上、局所投与され得る。いくつかの実施形態において、1投与単位は、1日あたり約1回~約4回局所投与される。いくつかの実施形態において、患者は、1日あたり2~3投与単位を服用するように指示される。本開示の組成物を使用する処置計画は、急性又は慢性であり得る。いくつかの実施形態において、特定の投与計画には、7、14、21及び28日投与が含まれる。
【0120】
本開示はまた、本開示の化合物を、別の活性成分、例えば抗生物質、抗真菌剤、抗原虫剤又は抗ウイルス剤を含有するゲル製剤中の活性成分として使用する製剤及び治療方法も提供する。いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、微生物感染(細菌、真菌、ウイルス又は原虫感染など)を処置するために患者に投与される唯一の活性成分であり、すなわち、本開示の化合物は単剤療法として投与される。単剤療法は、鎮痛剤(例えばアセトアミノフェン又は非ステロイド系抗炎症薬、例えばアスピリン、イブプロフェン又はナプロキセンなど)又はしびれ薬など、感染に特異的でない処置とともに、又はそのような処置なしで投与され得る。
【0121】
本開示は、本明細書中で開示される製剤から構成される消毒剤組成物をさらに提供する。消毒剤組成物は、皮膚での使用に適するものであり得るか、又は医療機器など、例えば手術器具の表面の消毒に使用され得る。消毒剤組成物は、創傷感染を予防又は処置するために包帯又は他の包帯材においても使用され得る。
【0122】
本明細書中に記載の製剤での使用のために開示される化合物は、薬学的に許容可能な塩の形態で存在し得る。塩の形成は、不安定なプロトンを有する1つ以上の位置で起こり得る。開示される化合物の薬学的に許容可能な塩には、酸付加塩及び塩基付加塩の両方が含まれる。「薬学的に許容可能な塩」という用語は、アルカリ金属塩を形成させるために、及び遊離酸又は遊離塩基の付加塩を形成させるために一般的に使用される塩を包含する。このような塩としては、当業者にとって公知の、HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL SALTS:PROPERTIES,SELECTION AND USE,P.H.Stahl and C.G.Wermuth(Eds.),Wiley-VCH,New York,2002に列挙されている生理学的に許容可能な塩が挙げられる。
【0123】
開示される化合物の適切な薬学的に許容可能な酸付加塩は、無機酸又は有機酸から調製され得る。このような無機酸の例は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硝酸、炭酸、硫酸及びリン酸である。適切な有機酸は、数例挙げると、脂肪族、脂環式、芳香族、アリール脂肪族、複素環式、カルボン酸及びスルホン酸系の有機酸から選択され得、その例は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、グルコン酸、マレイン酸、エンボニン酸(パモン酸)、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、パントテン酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、スルファニル酸、メシル酸、シクロヘキシルアミノスルホン酸、ステアリン酸、アルゲン酸、β-ヒドロキシ酪酸、マロン酸、ガラクチン酸(galactic)及びガラクツロン酸である。薬学的に許容可能な酸性/陰イオン塩としてはまた、とりわけ、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重酒石酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カンシル酸塩、炭酸塩、塩化物、クエン酸塩、二塩酸塩、エデト酸塩、エジシル酸塩、エストラート(estolate)、エシル酸塩、フマル酸塩、グリセプタート(glyceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グリコリルアルサニラート(glycollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヒドロキシナフトエ酸塩、ヨウ化物、イセチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、マンデル酸塩、メシル酸塩、メチル硫酸塩、ムチン酸塩、ナプシル酸塩、硝酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、塩基性酢酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクル酸塩、トシル酸塩及びトリエチオダイド塩も挙げられる。
【0124】
開示される化合物の適切な薬学的に許容可能な塩基付加塩としては、アルミニウム、カルシウム、リチウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウム及び亜鉛から作られる金属塩又はN,N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、リジン、アルギニン及びプロカインから作られる有機塩が挙げられるが限定されない。これらの塩は全て、例えば、開示される化合物を適切な酸又は塩基で処理することにより、開示される化合物によって表される対応する化合物から従来の手段によって調製され得る。数例挙げると、薬学的に許容可能な塩基性/陽イオン性塩としては、ジエタノールアミン、アンモニウム、エタノールアミン、ピペラジン及びトリエタノールアミン塩も挙げられる。
【0125】
一実施形態において、薬学的に許容可能な塩は、一価陽イオン又は二価陽イオンを含む。別の実施形態において、薬学的に許容可能な塩は、ビスリン酸ジエステルビスナトリウム塩である。
【0126】
本開示の化合物は、処置している状態に応じて、本明細書中に記載のゲル製剤中で同時製剤化するか、又は他の活性医薬品と同時投与され得る。同時投与としては、同じ剤型中の2つの薬剤の同時投与、別個の剤型での同時投与及び個別投与が挙げられ得る。様々な実施形態において、本開示の化合物に関する同時投与は、単一の処置計画の一部として、本開示の化合物と同じ時間及び頻度で、又はより一般的には異なる時間及び頻度での何れかを意味する。本開示の態様には、別の抗菌剤の投与前、投与後及び/又は投与中の本開示の化合物の投与が含まれる。したがって、本開示の化合物以外の抗菌剤(例えば、一般的又は特異的に微生物を標的とする薬剤)を、本開示の化合物と組み合わせて使用し得るが、また本開示の化合物とは異なる時間、異なる投与量及び異なる頻度で投与し得る。
【0127】
用量及び投与体制
本開示の化合物を含む今回記載のゲル製剤は、様々な活性成分及び様々な生理学的担体分子とともに製剤化し得る。本開示の化合物は、場合によっては、標的細胞への侵入能を高める分子と複合化され得る。このような分子の例としては、炭水化物、ポリアミン、アミノ酸、ペプチド、脂質及び細菌の増殖に不可欠な分子が挙げられるが限定されない。
【0128】
本開示のゲル製剤の投与は、希釈された量で本開示の化合物を患者に導入し得る。いくつかの実施形態において、局所投与のための本開示に適した単位投与量は、約1、5、10、50、100又は500mg/kgを超え得る。
【0129】
本開示のいくつかの実施形態において、ゲル製剤は、約0.001重量%~約40重量%の本開示の化合物を含有する。いくつかの実施形態において、ゲル製剤は、約0.5重量%~約30重量%の本開示の化合物を含有する。他の実施形態において、ゲル製剤は、約1重量%~約20重量%の本開示の化合物を含有する。また他の実施形態において、ゲル製剤は、約5重量%~約20重量%の本開示の化合物を含有する。
【0130】
一実施形態において、1投与単位は、緩和が達成されるまで、又は症状が消失するかもしくは満足のいくように減弱されるまで、10、9、8、7、6、5、4、3、2もしくは1日ごとに1回、又は1日あたり1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回又は10回以上、局所投与され得る。いくつかの実施形態において、1投与単位は、1日に約1回~約4回局所投与される。いくつかの実施形態において、局所投与のための投与計画には、1、7、14、21及び28日投与が含まれる。
【0131】
本開示の化合物を含有するゲル組成物の治療的使用
今回記載される製剤はまた、実験室の培養物、消耗品(食品又は飲料調製品)、医療機器、病院の装置又は工業プロセスの微生物(例えば細菌、真菌、原虫又はウイルス)汚染に対抗するのに有効であることも企図される。
【0132】
本明細書中で開示されるゲル製剤は、バイオフィルムによって引き起こされる感染症を処置するために特に有用である。単一の微生物が水分のある面に付着し、他の微生物との接着細胞マトリクスとして増殖する場合、バイオフィルムが形成される。バイオフィルムは、分泌されたポリマーにそれ自身囲まれる微生物細胞の密集コミュニティを形成する。バイオフィルムは処置が困難であることで悪名高く、アテローム性動脈硬化症、慢性副鼻腔炎、慢性創傷治癒と同程度に共通点のない疾患に関連付けられている。
【0133】
本開示の化合物又は薬学的に許容可能なその塩を含むゲル製剤の殺菌及び/又は静菌活性は、当業者にとって利用可能なあらゆる多くの方法を使用して測定し得る。このような方法の一例は、抗生物質による細菌感染の局所処置に対するインビボ効力を予測することが認められるMIC(最小発育阻止濃度)試験の使用を通じた抗菌活性の測定である。本開示のゲル製剤は、膜を透過性にするための細菌の前処理がなくても、この試験で抗菌活性を示す。
【0134】
本開示は、活性剤が本開示の化合物である本開示のゲル製剤と微生物を接触させることにより、微生物の増殖を阻害する方法を提供する。これらの方法は、インビボでの感染及び特に局所感染に対して有効である。これは、標準条件下においてインビトロで培養される様々な病原生物に対する製剤の最小発育阻止濃度(MIC)及び最小殺生物濃度(MBC)を示す試験データによって実証される。ヒトを含む動物での感染症の処置における抗菌製剤の有用性を予測するためのMIC及びMBC決定の広範な使用によって証明されるように、これらのインビトロ試験はインビボ活性と強く相関する。
【0135】
特に顕著であるのは、本開示の化合物を含む本ゲル製剤が、以前はある種の従来の抗生物質に対して非反応性であるとみなされていた細菌に対して抗菌効果の範囲を拡大する能力である。例えば、本開示の化合物を含むゲル製剤は、ざ瘡、糖尿病性足潰瘍、外耳炎又は熱傷創を処置するための製剤に特に有用であり得る。
【0136】
本開示の化合物は、抗菌活性を有するだけでなく、抗真菌剤としての活性も有し得る。したがって、本開示の化合物は、足白癬及びカンジダ症などの真菌感染症の処置のためのゲル製剤中の活性剤として有用である。
【0137】
本開示の化合物を含むゲル製剤は、抗ウイルス剤としての活性も有し得る。したがって、このような製剤は、単純ヘルペスなどのウイルス感染に対する局所処置として有用である。
【0138】
本明細書中で開示されるゲル製剤は、例えば、カウンタートップ、手術器具、包帯及び皮膚などの表面の滅菌のための局所消毒剤として;角膜、皮膚の切り傷及び擦り傷、熱傷及び細菌又は真菌感染部位を含む、皮膚への外用(例えば手指消毒剤として)及び粘膜表面(例えば鼻腔消毒剤)のための医薬製剤として;口腔又は膣などの内部粘膜表面に投与して、細菌、ウイルス又は酵母を含む真菌の増殖を抑制するための医薬製剤として;及び細菌又は真菌感染を抱え易い留置カテーテル及び類似のインプラントをコーティングするための医薬製剤としても使用され得る。
【0139】
抗生物質
本開示のゲル製剤は、処方薬(例えばベンゾマイシン)及び市販薬(例えば、サリチル酸、過酸化ベンゾイルなど)の両方とともに他の抗生剤を含む局所抗生物質製剤として有用であり得る。疾患の治療的処置において使用される場合、本開示の化合物及び別の活性成分を含有するゲル製剤の適切な投与量は、いくつかの十分に確立された方法論の何れかによって決定され得る。例えば、動物実験は、体重1キログラムあたりの生物活性剤の最大耐容量又はMTDを決定するために一般的に使用される。一般に、試験した動物種の少なくとも1つは哺乳動物である。当業者は、有効性のために用量を定期的に外挿し、ヒトを含む他の種への毒性を回避する。さらに、感染の重症度及び宿主の体格又は種などの要因に応じて、治療投与量を変更することもできる。
【0140】
抗ウイルス剤
本開示の化合物の一部はヌクレオシドの天然構造に基づくので、本開示の化合物を含む製剤は効率的な抗ウイルス活性を保持し得る。
【0141】
本開示の製剤により処置され得るウイルスとしては、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、サイトメガロウイルス(CMV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)及びインフルエンザウイルスが挙げられるが限定されない。
【0142】
併用療法(Conjunctive Therapies)
本開示の化合物を含むゲル製剤は、従来の抗菌剤と併用することもできる。活性成分のさらなる活性は、より効果的な製剤を提供し得、微生物が標的とされる複数の機序をもたらし得る。別の活性剤と混合して本開示の化合物を含有する医薬組成物は、従来の医薬配合技術に従って調製し得る。
【0143】
例えば、ざ瘡の処置のための組成物は、サリチル酸、過酸化ベンゾイル及び/又はイオウとともに本開示の化合物を含み得る。本開示の化合物を別の活性剤とともに使用するこのような併用療法は、消費者にとって現在利用可能な薬剤の量、例えば市販品で見られる量を増加させることなく、本開示のゲル製剤の効力を向上させ得る。
【0144】
本開示のゲル組成物におけるさらなる活性成分であり得る市販薬(OTC)抗真菌薬としては、ミコナゾール、硝酸ミコナゾール、ポリノキシリン、クロトリマゾール、硝酸スルコナゾール、硝酸エコナゾール、トルナフタート、硫化セレン、チオコナゾールが挙げられるが限定されない。プレスシプティブ(presciptive)抗真菌薬としては、アリルアミン、アゾール、ポリエンマクロライド、フルシトシン、シュードマイシン及びグリセオフルビンなどの薬物が挙げられる。代表的な抗真菌剤としては、アンホテリシンB、フルコナゾール/ジフルイアン(Difluian)、フルシトシン、ホスカルネット、イトラコナゾール/スポロネクス、ケトコナズブル/ニトラール及びナイスタチン1が挙げられる。両方とも参照により組み込まれる、Elewski,Cutaneous Fungal Infections,2nd Edition(1998)及びSegal,Pathogenic Yeasts and Yeast Infections(1994)も参照のこと。
【0145】
本開示のゲル製剤は、活性成分として本開示の化合物を含有し、また、レチノイン酸、グリコール酸、乳酸、α-ヒドロキシ酸、ケトヒドロキシ酸、クエン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、グルクロノラクトン、グルコノラクトン、a-ヒドロキシ酪酸、α-ヒドロキシイソ酪酸、リンゴ酸、ピルビン酸、フェニル乳酸、フェニルピルビン酸、糖酸、マンデル酸、酒石酸、タルトロン酸、ヒドロキシ酪酸、ビタミンAパルミタート(パルミチン酸レチニル)及び/又はビタミンEアセタート(酢酸トコフェリル)など、それ自体が活性成分である多くの添加剤の何れかも含有し得る。いくつかの実施形態において、これらのそれぞれは、約0.5重量%~約20重量%の量で存在する。さらに、4-アミノ安息香酸(PABA)などのUV吸収又はブロッキング材料を使用し得る。
【0146】
本開示のゲル製剤中で使用され得るさらなる活性成分としては、α-ヒドロキシ酸、レチノイン酸及びサリチル酸の組み合わせを対象とする米国特許第5,652,266号明細書;サリチル酸を伴うか又は伴わないかの何れかのα-ヒドロキシ酸及び過酸化カルバミドを含有する組成物を対象とする米国特許第5,843,998号明細書;主要な活性成分がグリコール酸である製剤を対象とする米国特許第5,153,230号明細書;グリコール酸誘導体を含有する抗菌製剤を対象とする米国特許第4,464,392号明細書;及び本開示のゲル組成物で使用され得る多くの他の同様の活性剤を記載する米国特許第4,105,782号明細書で見られるものが挙げられる。
【0147】
本開示のゲル製剤はまた、殺精子剤、抗ウイルス剤及び抗真菌剤などの他の薬剤に対するか及び/又はそれらと組み合わせた担体材料としても使用され得、それにより組成物の医薬効力がさらに広げられる。本開示のゲル製剤は、処置中の疼痛又はそう痒を緩和するために、塩酸リドカインなどの局所麻酔薬及びコルチコステロイドなどの局所ステロイドも含み得る。
【0148】
消毒剤としてのゲル製剤の使用
本開示の化合物を含有する本明細書中に記載のゲル製剤は、消毒剤として、及び静菌性又は殺生物性を有する調製物としての用途も見出し得る。本開示の消毒剤ゲル製剤はまた、静菌性及び/又は殺生物性がある他の活性成分も含有し得る。例えば、消毒剤ゲルは、ジメチルベンジルドデシルアンモニウムクロリド、ジメチルベンジルデシルアンモニウムクロリド、ジメチルベンジルデシルアンモニウムブロミド及びジメチルベンジルオクチルアンモニウムクロリド(dimethylbenzylloctylammonium chloride)などの適切な濃度の四級アンモニウム化合物とともに本開示の化合物を含有し得る。
【0149】
別の例において、オリゴヘキサメチレンビグアナイド塩及びビスビグアナイドなどの適切な殺菌性ビグアニジン化合物を使用し得る。例えば米国特許第5,030,659号明細書を参照のこと。さらなる殺生物成分としては、アルデヒド、フェノール誘導体及びハロゲンフェニル誘導体が挙げられる。例えば米国特許第5,767,054号明細書を参照のこと。当業者によって認識されるように、このような活性を有する他の化合物も、本明細書中に記載のゲル製剤において本開示の化合物と併せて使用され得る。
【0150】
これらの調製品は、病院、獣医学の診療所、歯科医院及び診療所などの医療関連環境での表面消毒に特に適している。いくつかの実施形態において、本開示の製剤は、手術器具の滅菌に使用される。これらの調製品は、学校、公共交通機関、レストラン、ホテル及びランドリーなどの公共エリアでも有用である。消毒剤はまた、トイレ、洗面器及び台所エリアに対する消毒剤として家庭でも利用される。
【0151】
例
本開示に関連する例を以下に記載する。殆どの場合、代替技術を使用し得る。例は例示であることを意図するものであり、特許請求の範囲で示されるような本発明の範囲を限定又は制限するものではない。
【0152】
本開示の化合物は、当業者にとって公知の方法に従って合成される。それらの全体において参照により本明細書によって組み込まれる米国特許第6,627,215号明細書、同第6,211,162号明細書、同第7,868,162号明細書、同第7,176,191号明細書、同第8,435,960号明細書及び同第6,211,349号明細書に記載の方法は全て、本開示の化合物の合成に適している。Nu-8は次の方法に従って合成される。
【化10】
【0153】
段階-1.シチジン2aをヘキサメチルジシラザン(HMDS)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)及びジ-tert-ブチルジカーボナート((BOC)2O)に添加して、BOC保護化合物Int-2を生成させることにより2aの窒素原子を保護する。
【0154】
段階-2:ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)の存在下で触媒としてのテトラゾールとともにTHF中のホスフィンアミド1とn-ブタノールを反応させる。粗製生成物を中性アルミナ上でクロマトグラフにかけ、ヘキサン及び次いでヘキサン中の2%酢酸エチルで溶出させる。純粋な分画を合わせ(TLCにより)、真空下で蒸発させて残渣を得る。
【0155】
段階-3.ジクロロメタン(DCM)/ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒中の試薬2及び触媒としてのテトラゾールを用いてBOC保護種Int-2をビスホスフィニル化して、3を生成させる。反応混合物を濃縮して残渣にし、粗製生成物を次の段階ですぐに酸化する。
【0156】
段階-4及び5:デカンの存在下で粗製生成物3をt-ブチルヒドロペルオキシド(TBTH)で酸化して、ビスホスホナート種4を生成させる。トリフルオロ酢酸(TFA)の存在下においてDCM中でBOC基の除去を行い、5を得る。酢酸エチルで溶出するシリカゲルでのクロマトグラフィーに粗製生成物をかける。純粋な分画(TLCにより)を合わせ、真空下で蒸発させて残渣を得る。
【0157】
段階-6:メタノール性水酸化アンモニウム(NH4OH、MeOH)による5の加水分解により、粗製(I)アンモニウム塩(6)を得る。
【0158】
段階-7及び8:6の分取HPLCによる精製及びDowex 50WX8-200樹脂による遊離酸への変換を行う。水性溶出液の蒸発により(I)を得て、それを精製水で希釈し、その周囲pHで20%溶液を得る。
【0159】
式(IX)を有する化合物のナトリウム塩又はNu-8は、以下の方法に従って合成される:
【化11】
【0160】
化合物-2の合成:THF(6L)中の化合物-1(1.0kg、3.3222mol)の溶液に、DIPEA(1.370mL、8.3055mol)及びテトラゾール(230g、3.3222mol)、続いてTHF(6L)中のn-ブタノール(275mL、2.99mol)を0℃で12時間滴下して添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌する。TLCにより反応の進行を監視し、反応の完了後、固形物を濾別する。濾液を減圧下で40℃にて蒸発させて、粗製化合物を得る。粗製化合物を酢酸エチル(5L)中で溶解させる。有機層を水(3L)及びブライン(2L)で洗浄する。有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させて粗製化合物を得る。粗製化合物を、塩基性アルミナ(Al
2O
3)上のカラムクロマトグラフィーにより精製し、化合物を石油エーテル中の0~2%EtOAcで溶出して、化合物-2(700g、76.92%)を淡黄色の液体として得る。
【数1】
【0161】
化合物-4の合成:ヘキサメチルジシラザン(638g、3.964mol)中の化合物-3(300g、1.321mol)の溶液に、DMAP(16.11g、0.132mol)を添加し、続いてTMSOTf(7.22g、0.039mol)を0℃で添加し、得られた反応混合物を室温で1時間撹拌する。出発物質の完了後、Boc無水物(1.4L、6.605mol)を0℃で1時間添加し、反応混合物を室温で16時間撹拌する。反応物にメタノール(3L)を添加し、続いてトリエチルアミン(1.5L)を0℃で1時間添加し、反応混合物を室温で20時間撹拌する。反応混合物を減圧下で濃縮して、粗製化合物を得る。粗製化合物を酢酸エチル(3L)で希釈し、水(1.0L)及びブライン(1.0L)溶液で洗浄し;有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させて粗製化合物を得る。粗製化合物をカラムクロマトグラフィーシリカゲル(100~200メッシュ)により精製し、DCM中の0~3%MeOHで化合物を溶出し、化合物-4(180g、31.89%)を灰白色の固形物として得る。
【数2】
【0162】
化合物-6の合成:THF(1.0L)中の化合物-4(180g、0.421mol)の撹拌溶液に、0℃でDIPEA(348mL、2.105mol)及びテトラゾール(176g、2.526mol)を添加する。得られた反応混合物に、THF(800mL)中の化合物-2(519g、1.896mol)の溶液を0℃で1時間かけて滴下して添加する。反応混合物を室温で16時間撹拌する。反応の完了後、デカン中のtert-ブチルペルオキシド(505mL、5M)を0℃で滴下して添加し、反応混合物を室温で6時間撹拌する。TLCによって反応を監視する。反応完了後、反応混合物を40℃で濃縮し、酢酸エチル(3リットル)で希釈し、水(1リットル)及びブライン(1リットル)溶液で洗浄し;有機層を無水Na
2SO
4で乾燥させ、濾過し、溶媒を減圧下で蒸発させて粗製化合物(350g、粗製)を得る。シリカゲル(100~200メッシュ)を通じてカラムクロマトグラフィーシリカゲルにより粗製化合物を精製し、DCM中の0~5%MeOHでカラムに対して溶出を行う。回収した全ての純粋な分画を濃縮して、純粋な化合物-6(220g、64.83%)をワインレッド色の液体として得る。
【数3】
【0163】
化合物-7の合成:DCM(4.4L)中の化合物-6(220g、0.273mol)の溶液に、TFA(210mL、2.732mol)を0℃で滴下して添加する。反応混合物を室温で24時間撹拌する。TLCによって反応を監視する。反応完了後、溶媒を減圧下で蒸発させて、粗製化合物を得る。カラムクロマトグラフィーシリカゲル(230~400メッシュ)により粗製化合物を精製し、化合物をDCM中の0~10%MeOHで溶出する。回収した全ての純粋な分画を濃縮して、純粋な化合物-7(170g、84.67%)を淡黄色の液体として得る。
【数4】
【0164】
Nu-8の合成:MeOH(5.0L)中の化合物-7(720g、1.1900mol)の撹拌溶液に、0℃でaq.アンモニア(600mL)を添加する。反応混合物を室温で4時間撹拌する。TLCによって反応を監視する。反応の完了後、減圧下でMeOHを蒸発させ、水層をDCM(1.5L)で洗浄する。水層をDowex-H
+樹脂に通す。水を減圧下で除去して、Nu-8(260g、43.84%)を灰白色の固形物として得る。
【数5】
【0165】
Nu-8ナトリウム塩の合成:水(2.6L)中の化合物-Nu-8(260g、0.478mol)の撹拌溶液に、1N NaOH(950mL)を0℃で滴下して添加する。反応混合物を室温で2時間撹拌する。TLCによって反応を監視する。反応の完了後、水層をDCM(1.5L)で洗浄する。水層を減圧下で蒸発させて、Nu-8ナトリウム塩(265g、93%)を灰白色の固形物として得る。
【数6】
【0166】
以下の例で言及される賦形剤は全て公定グレードである。分析用の溶媒は全てHPLCグレードである。
【0167】
Nu-3のHPLC分析は、HPLCを使用して行う。HPLC機器は、ダイオードアレイ検出器を備えたAgilent 1200システムである。およそ0.2gのNu-3脂肪アルコールに基づくゲルを50mLメスフラスコに添加する。Nu-3セルロースに基づくゲルの場合、~25mLの水を添加し、フラスコをボルテックスしてゲルを溶解させ、次にフラスコに対して水で体積を合わせる。脂肪アルコール(FA)ゲルの場合、小さな撹拌棒を用いて~25mLの温水(45~50□)を添加し、フラスコを15分間混合してFAゲルを均一に分散させ、撹拌棒を取り外し、フラスコに対して水で体積を合わせる。セルロースゲル抽出物は、直接注入に適しており;FAゲル抽出物のアリコートを2分間遠心分離して、溶解していない固形物を除去する。
【0168】
Orion 710A+メーター及び電極(Themo)を使用してpHを測定する。粘度はブルックフィールド粘度計で測定する。ゲルに対する中程度のせん断混合は、1.0”マリンプロペラを備えたIKAユーロスター200オーバーヘッドドライブによって提供される。FAゲルに対する高せん断混合は、~10,000rpmで7mmのローターステーターヘッドを備えたOmniホモジナイザーによって提供される。
【0169】
例1:セルロースゲル配合
以下の段階は、100gスケールで遊離酸としてNu-3の溶液を使用してセルロースゲルを調製するために使用される。
1.水の一部にNu-3を添加し、均一になるまで混合する。
2.塩化ナトリウムを添加し、均一になるまで混合する。
3.4%NaOHを使用してpHを1.5(1.4~1.6の許容範囲)に調整する。
4.残りの水を添加し、均一になるまで混合する。
5.ヒドロキシエチルセルロース粉末(Natrosol 250 HHX PH,Ashland)を混合プロペラの渦にゆっくりと添加する。
6.ポリマーゲルが透明になるまで(~45-60分)混合を継続する。
【0170】
例2:脂肪アルコール(FA)ゲル配合
以下の段階は、100gスケールで二ナトリウム塩としてNu-3の溶液を使用してFAゲルを調製するために使用される。
1.水の一部にNu-3を添加し、均一になるまで混合する。
2.10%HClを使用してpHを1.5(1.4~1.6が許容範囲)に調整する。
3.残りの水を添加し、均一になるまで混合する。
4.別個の容器中で、セトステアリルアルコール(Crodacol CS 50 NF,Croda)及びセテアレス-20(Cetomacrogol 1000 NF,Croda)を組み合わせ、混合しながらホットプレート上で~60℃に加熱して、脂肪アルコール及び界面活性剤を融解させる。~60℃で保持する。
5.プロペラミキサーで混合しながら、ホットプレート上で~60℃にAPI溶液を加熱する。
6.プロペラミキサーで混合しながら、脂肪アルコール/界面活性剤混合物をAPI溶液に添加する。プロペラミキサーを取り外し、容器を熱源から取り外し、高せん断混合を開始する。
7.ゲルが冷えて濃厚になるので、高せん断混合を継続する(~45-50℃)。
8.ゲルが濃厚になりすぎてホモジナイザーで混合できない場合は、高せん断混合を停止し、ゲルが35~40℃)に達するまでプロペラミキサーで混合を継続する。
【0171】
例3:HPLCアッセイ設定及びオートクレーブ試験
表1のクロマトグラフィー条件を使用して、この例に対してNu-3製剤をアッセイする。
【表1】
0.05~0.4mg/mLのNu-3溶液を使用して、直線性を評価する。mg/mLに対するピーク面積についての相関係数は0.9994の値を有する。0.2mg/mL標準液を繰り返し注入した場合の%相対標準偏差(RSD)は<1.0%である。
【0172】
例4:評価のためのビヒクルゲル
評価のために3種類のビヒクルゲルを調製する。式(I)の化合物の存在を模倣するためにリン酸ナトリウムを使用し、抗菌防腐剤としてベンジルアルコールを使用する。それらの組成を表2でまとめる。
【表2】
ゲル2及び3は、それらの優れた物理的特性ゆえに5%w/wでNu-3を用いた製剤に対して選択される。Nu-3の最適な活性を確保するために、製剤のpHを1.5の目標値まで低下させる。
【0173】
例5:5%NU-3セルロースゲル:製剤及び安定性
このゲルに対する組成を表3で示す。
【表3】
5%Nu-3セルロースゲルの初期に対する結果及び安定性の結果を表4でまとめる。
【表4】
保管時に、セルロースNu-3ゲルの粘度は温度とともに著しく低下する。これはおそらく、ポリマー中のセルロースの加水分解によるものである。しかし、40℃で1か月保管した後のアッセイ及びpHに顕著な変化はない。
【0174】
例6:5%NU-3FAゲル:製剤及び安定性
これらのゲルに対する組成を表5で示す。
【表5】
配合中、FA Gel1は濃厚にならない。
FA Gel 2の場合、セトステアリルアルコールレベルが4.0から7.25%w/wに上昇する。これにより、ビヒクル及び5%Nu-3製剤に対するゲル粘度が上昇する。Nu-3 FA Gel 2に対する安定性データを表6でまとめる。
【表6】
FA Gel 2に対する、アッセイ、外観及びpHは、25又は40℃で1か月後に顕著な変化を示さない。保管時に粘度が僅かに上昇するが、これは脂肪アルコールゲルでは珍しいことではない。それらの粘度は、1~3か月の保管後に横ばいになる傾向がある。
【0175】
高強度のNu-3 FAゲル:製剤及び安定性
これらのゲルに対する組成を表7で示し、安定性の結果を表8で示す。
【表7】
【表8】
10~20%Nu-3入りのFAゲルに対する、アッセイ、外観及びpHは、25又は40℃で1か月後に顕著な変化を示さない。保管時に粘度が僅かに上昇するが、これは脂肪アルコールゲルでは珍しいことではない。それらの粘度は、1~3か月の保管後に横ばいになる傾向がある。
【0176】
例7:スタフィロコッカス・アウレウス(STAPHYLOCOCCUS AUREUS)誘発性マウス皮膚感染モデルにおけるビスホスホシンの有効性の評価
動物及び畜産
Charles River Laboratoriesから注文された雌SKH1マウスは、飼育条件に順応させ、Animal Use Protocol(AUP)番号TP-18に従って取り扱う。動物は、細菌負荷試験前に最短で24時間順応させ、実験の第0日に6~8週齢である。健康とみなされる動物のみをこの研究に含める。動物には、照射したTeklad Global Rodent Diet 2918及び水を自由に与える。マウスは、1時間あたり100回の完全な空気交換でバブル環境にH.E.P.A.フィルター処理空気を提供するbioBubble(登録商標)クリーンルーム内に、照射済みTeklad 1/8”コーンコブベッディング7902を備えた静置ケージに収容する。全ての処置及び感染負荷は、BSL2手術スイートで実施する。74°+4°Fの温度範囲及び30~70%の湿度範囲に環境を制御する。処置群はケージカードによって識別する。この実験で実施される全ての手順は、National Institutes of Healthの法律、規制、ガイドラインに準拠し、TransPharm Animal Care and Use Committeeの承認を得て実施される。
【0177】
細菌培養
この研究で使用する細菌株は、Barry Kreiswirth研究室(Public Health Research Institute Center,New Jersey Medical School)から調達したメチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)株USA300(TPPS 1056)である。
【0178】
皮膚の調製
感染直前の第0日に、イソフルラン誘導チャンバーを使用して各マウスに麻酔をかけ、皮膚の最外表皮層を除去するために、背部にNexcare(商標)(3M)外科用テープを7~10回貼付し、除去した。
【0179】
感染負荷実験
生物は、5%ヒツジ血液細胞を補充したトリプチケース大豆寒天プレート上で、周囲大気中、37℃で一晩増殖させた。負荷日(第0日)に、培養物を無菌的に拭い取り、TSBの培養チューブに移した。培養物を光学密度が600nmでおよそ0.65に達するまで37℃の水浴で増殖させ、およそ109コロニー形成単位(CFU)/mLの未希釈細菌濃度を得た。次いで、培養物を希釈して、100μLの体積でマウスあたり6.0 log10 CFUの負荷接種物を与える。
接種材料カウントは接種前に光学密度により推定し、接種後に希釈及び逆算により確認する。
【0180】
テープ剥離の直後に、各動物は、およそ0.75”x0.75”の領域に100μLの体積を広げて、マウスあたりおよそ6.0 log10 CFUで局所適用を受ける。マウスを麻酔から覚醒させる前に、負荷物を僅かに乾燥させる。負荷懸濁液からの最終CFU数により、マウスあたり5.6log10 CFUが送達されると判断した。細菌負荷試験の滴下注入は、この試験に対する時間0時間を構成する。
【0181】
製剤及び投与
Nu-3の10%(100mg/mL)溶液を脂肪アルコールに基づくゲル中で調製する。塩酸を使用して溶液をpH1.5に調整する。
【0182】
負荷試験から4時間後、マウスに対して、以前剥離して細菌を接種した背部領域に試験品又はビヒクルゲルを局所塗布する。滅菌ループを使用して、ゲルを均等に広げる。対照動物は処置を行わない。マウスは、処置後、回収時まで個別に収容する。
【0183】
エンドポイント分析
研究に基づいて指定時点でマウスを回収する。各時点で各グループから4匹のマウスを回収する。
【0184】
安楽死後、切除した皮膚のおよそ0.5”x0.5”の部分を感染/処置領域から無菌的に取り出し、2.0mLの滅菌水を入れたバイアルに移し、重量を測定する。組織を室温で10分間固化させる。リトマス紙を使用して組織pHを測定し、記録する。pH測定後、ビーズビーターを使用して組織をホモジナイズする。ホモジネートをPBS中でニートから10-7に連続希釈し、5%ヒツジ血液細胞を補充したトリプチケース大豆寒天プレート上に5μLのスポットを2個ずつプレーティングする。100μLの未希釈(ニート)ホモジネートを各試料にプレーティングする。プレートを周囲大気中、37℃で一晩温置する。コロニー形成単位(CFU)は、組織1グラムあたりの各処置について集計する。
【0185】
結果及び考察
処置に関連する何らかの急性有害事象を示したマウスはいなかった。循環系又は深部組織への感染の浸透に起因し得る感染により死亡したか又は病的状態の兆候を示したマウスはなかった。表在性の細菌感染を受けたマウスについて予想されるもの以上の有害な兆候を示す群はなかった。
【0186】
未処理群(群1)のベースライン細菌負荷は、細菌負荷後5時間で6.94 log10 CFU、負荷後12時間で8.14 log10 CFUである。ビヒクルを投与した第2群は、未治処置群と比較した場合、有意な変化を示さなかった。Nu-3を投与した第3群は、未処置の対照動物と比較した場合、負荷後5時間及び12時間でCFU負荷量の有意な減少を示した。第3群は、ビヒクル処置動物と比較した場合、全ての回収時点でCFU負荷量が有意に減少した。
【0187】
合わせて、これらのデータは、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)がロバストな皮膚感染を確立することを示す。Nu-3の局所投与は、未処理対照と比較した場合は負荷試験後5及び12時間で、及びビヒクル処置群と比較した場合は全時点で、細菌負荷量を顕著に減少させた。
【0188】
以上、実施形態を開示してきたが、本発明は、開示される実施形態に限定されるものではない。代わりに、本願は、その一般的原理を使用する本発明のあらゆる変形、使用、又は適合を包含するものとする。さらに、本願は、本願が属する、及び添付の特許請求の範囲の制限内に入る、当技術分野において公知又は通常の実務内に入るものとして、本開示からのこのような逸脱を包含するものとする。
【手続補正書】
【提出日】2022-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約1%~約20%(重量/重量)の式(1)
【化1】
で表されるNu-3、又は薬学的に許容可能なその塩と、
約1%~約10%(重量/重量)の脂肪アルコール増粘剤と、
約0.5%~約5%(重量/重量)の非イオン性ポリマー乳化剤と、
約65%~約97.5%(重量/重量)の希釈剤と
を含む製剤。
【請求項2】
式(1)
【化2】
で表されるNu-3、又は薬学的に許容可能なその塩と、
脂肪アルコール増粘剤と、
非イオン性ポリマー乳化剤と、
希釈剤と
を含む製剤。
【請求項3】
脂肪アルコール増粘剤が、セチルアルコール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、ドコサノールアルコール、オレイルアルコール、及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項4】
非イオン性ポリマー乳化剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、セテアレス-12、セテアレス-20、セテアレス-30、セテス-10、セテス-20、ステアレス-10、ステアレス-20、ステアレス-40、ステアレス-100、及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項5】
希釈剤が、水、グリセロール、マンニトール、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水、及びその組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項6】
Nu-3が、製剤中に約1%~約15%(重量/重量)の量で存在する、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項7】
脂肪アルコール増粘剤が、製剤中に約2%~約8%(重量/重量)の量で存在する、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項8】
希釈剤が水である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項9】
脂肪アルコール増粘剤がセトステアリルアルコールである、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項10】
セトステアリルアルコールが、製剤中に約2%~約10%(w/w)の量で存在する、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
非イオン性ポリマー乳化剤がセテアレス-20である、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項12】
セテアレス-20が、製剤中に約0.5%(w/w)より多い量で存在する、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
感染症を処置するための請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項14】
感染症が糖尿病性足潰瘍の感染、熱傷創の感染、併発(complicated)静脈下肢潰瘍の感染、外耳炎感染、尋常性ざ瘡、爪真菌症、結膜炎、及び口腔粘膜炎からなる群から選択される、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
少なくとも1つのさらなる活性成分が併用される、請求項13に記載の製剤。
【請求項16】
患者がヒトである、請求項13記載の製剤。
【請求項17】
前記製剤が約pH1~約pH3のpHを有する、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項18】
前記製剤が約pH1~約pH1.5のpHを有する、請求項1又は2に記載の製剤。
【請求項19】
前記製剤が約pH1.4~約pH1.6のpHを有する、請求項1又は2に記載の製剤。
【外国語明細書】