(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183161
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】防眩性フィルム、防眩性フィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20221201BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20221201BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20221201BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20221201BHJP
G02F 1/1335 20060101ALN20221201BHJP
【FI】
G02B5/02 C
G02B5/30
B32B3/30
B32B7/023
G02F1/1335
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022149065
(22)【出願日】2022-09-20
(62)【分割の表示】P 2019075132の分割
【原出願日】2019-04-10
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115255
【弁理士】
【氏名又は名称】辻丸 光一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154081
【弁理士】
【氏名又は名称】伊佐治 創
(74)【代理人】
【識別番号】100227019
【弁理士】
【氏名又は名称】安 修央
(72)【発明者】
【氏名】平岡 慎哉
(72)【発明者】
【氏名】橋本 尚樹
(57)【要約】
【課題】 映り込みが抑制された防眩性フィルムを提供する。
【解決手段】 光透過性基材(A)11上に防眩層(B)12が積層された防眩性フィルム10であって、
防眩性フィルム10における防眩層(B)12側の最表面に凹凸が形成され、
前記凹凸が、下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とする防眩性フィルム10。
Ry≧1.7 (1)
θa≧0.7 (2)
前記数式(1)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(2)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材(A)上に防眩層(B)が積層された防眩性フィルムであって、
前記防眩性フィルムにおける前記防眩層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記凹凸が、下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とする防眩性フィルム。
Ry≧1.7 (1)
θa≧0.7 (2)
前記数式(1)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(2)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【請求項2】
前記防眩層(B)が微粒子を含む請求項1記載の防眩性フィルム。
【請求項3】
前記防眩層(B)における、前記光透過性基材(A)と反対側の面上に凹凸が形成され、
前記微粒子の重量平均粒子径が、前記防眩層(B)の最大厚みから前記凹凸の凸部の最大高さを差し引いた厚みよりも大きい請求項2記載の防眩性フィルム。
【請求項4】
前記微粒子の重量平均粒子径が、4~9μmの範囲である請求項2または3記載の防眩性フィルム。
【請求項5】
前記防眩層(B)における前記光透過性基材(A)と反対側の面上に、さらに、他の層が積層されている請求項1から4のいずれか一項に記載の防眩性フィルム。
【請求項6】
光透過性基材(A)上に防眩層(B)および他の層が前記順序で積層された防眩性フィルムであって、
前記他の層の最表面に凹凸が形成され、
前記凹凸が、下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とする防眩性フィルム。
Ry≧1.7 (1)
θa≧0.7 (2)
前記数式(1)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(2)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【請求項7】
前記光透過性基材(A)上に、前記防眩層(B)を、前記数式(1)および(2)を満たすように形成する防眩層(B)形成工程を含み、
前記防眩層(B)形成工程が、前記光透過性基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記塗工液が、樹脂と、溶媒とを含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の防眩性フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記防眩層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含む請求項7記載の製造方法。
【請求項9】
前記塗工液が、微粒子を含む請求項7または8記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1から6のいずれか一項に記載の防眩性フィルムを含む光学部材。
【請求項11】
偏光板である請求項10記載の光学部材。
【請求項12】
請求項1から6のいずれか一項に記載の防眩性フィルム、または請求項10もしくは11記載の光学部材を含む画像表示装置。
【請求項13】
パブリックインフォメーションディスプレイである請求項12記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防眩性フィルム、防眩性フィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
陰極管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)およびエレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)等の、様々な画像表示装置には、前記画像表示装置表面における蛍光灯や太陽光等の外光の反射や像の映り込みによるコントラスト低下を防止するための防眩(アンチグレア)処理が施され、特に、画像表示装置の大画面化が進むのに伴い、防眩性のフィルムを装着した画像表示装置が増大している。
【0003】
防眩性フィルムについて記載された文献は多数あるが、例えば、特許文献1および2等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-109683号公報
【特許文献2】特開2003-202416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
防眩性フィルムは、視認性の観点から、外光の反射による映り込みが抑制されている必要がある。
【0006】
例えば、近年、パブリックインフォメーションディスプレイ(PID)の需要が増えてきている。PIDは、屋外で使用される場合も多い。屋外でディスプレイ(画像表示装置)を使用した場合、屋内での使用よりも、外光の反射による映り込みが起こりやすい。映り込みが起こった場合、映像が視認しづらくなるおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、映り込みが抑制された防眩性フィルム、防眩性フィルムの製造方法、光学部材および画像表示装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明の防眩性フィルムは、
光透過性基材(A)上に防眩層(B)が積層された防眩性フィルムであって、
前記防眩性フィルムにおける前記防眩層(B)側の最表面に凹凸が形成され、
前記凹凸が、下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
Ry≧1.7 (1)
θa≧0.7 (2)
前記数式(1)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(2)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【0009】
本発明の防眩性フィルムの製造方法は、
前記光透過性基材(A)上に、前記防眩層(B)を、前記数式(1)および(2)を満たすように形成する防眩層(B)形成工程を含み、
前記防眩層(B)形成工程が、前記光透過性基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含み、
前記塗工液が、樹脂と、溶媒とを含むことを特徴とする本発明の防眩性フィルムの製造方法である。
【0010】
本発明の光学部材は、本発明の防眩性フィルムを含む光学部材である。
【0011】
本発明の画像表示装置は、本発明の防眩性フィルム、または本発明の光学部材を含む画像表示装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、映り込みが抑制された防眩性フィルム、光学部材および画像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の防眩性フィルムの一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の防眩性フィルムの別の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、防眩性フィルムの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
つぎに、本発明について、例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、本発明は、以下の説明により、なんら限定されない。
【0015】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記防眩層(B)が微粒子を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記防眩層(B)における、前記光透過性基材(A)と反対側の面上に凹凸が形成され、前記微粒子の重量平均粒子径が、前記防眩層(B)の最大厚みから前記凹凸の凸部の最大高さを差し引いた厚みよりも大きくてもよい。
【0017】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記微粒子の重量平均粒子径が、4~9μmの範囲であってもよい。
【0018】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記防眩層(B)における前記光透過性基材(A)と反対側の面上に、さらに、他の層が積層されていてもよい。
【0019】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、光透過性基材(A)上に防眩層(B)および他の層が前記順序で積層された防眩性フィルムであって、前記他の層の最表面に凹凸が形成され、前記凹凸が、下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とする防眩性フィルムであってもよい。
Ry≧1.7 (1)
θa≧0.7 (2)
前記数式(1)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(2)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【0020】
本発明の防眩性フィルムの製造方法は、例えば、前記防眩層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。
【0021】
本発明の防眩性フィルムの製造方法は、例えば、前記塗工液が、微粒子を含んでいてもよい。
【0022】
本発明の光学部材は、例えば、偏光板であってもよい。
【0023】
本発明の画像表示装置は、例えば、パブリックインフォメーションディスプレイであってもよい。
【0024】
[1.防眩性フィルム]
本発明の防眩性フィルムは、前述のとおり、光透過性基材(A)上に防眩層(B)が積層された防眩性フィルムであって、前記防眩性フィルムにおける前記防眩層(B)側の最表面に凹凸が形成され、前記凹凸が、下記数式(1)および(2)を満たすことを特徴とする。
Ry≧1.7 (1)
θa≧0.7 (2)
前記数式(1)において、Ryは、前記凹凸の凸部の最大高さ[μm]であり、
前記数式(2)において、θaは、前記凹凸の平均傾斜角[°]である。
【0025】
図1の断面図に、本発明の防眩性フィルムの構成の一例を示す。図示のとおり、この防眩性フィルム10は、光透過性基材(A)11の一方の面に、防眩層(B)12が積層されている。防眩層(B)12は、樹脂層12a中に微粒子12bおよびチキソトロピー付与剤12cが含まれている。防眩性フィルム10における防眩層(B)12側の最表面(防眩層(B)12の、光透過性基材(A)11と反対側の表面)には、凹凸が形成されている。前記凹凸の凸部の最大高さRyは、1μm以上である。前記凹凸の平均傾斜角θa(図示せず)は、0.7°以上である。また、微粒子12bの粒子径Dは、防眩層(B)の最大厚みdからRyを差し引いた膜厚tよりも大きい。ただし、
図1は例示であって、本発明はこれに限定されない。例えば、本発明の防眩性フィルムは、微粒子およびチキソトロピー付与剤を、それぞれ、含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、
図1では、微粒子12bの粒子径Dが防眩層(B)の膜厚tよりも大きいが、本発明は、これに限定されない。
【0026】
図3の断面図に、本発明の防眩性フィルムではない防眩性フィルムの構成の一例を示す。この防眩性フィルムは、凹凸の最大高さRyが1.7μm未満であることと、凹凸の平均系射角θa(図示せず)が0.7°未満であること以外は、
図1の防眩性フィルムと同様である。
【0027】
また、
図2の断面図に、本発明の防眩性フィルムの構成の別の一例を示す。図示のとおり、この防眩性フィルム10は、防眩層(B)12における光透過性基材(A)11と反対側の面上に、さらに、他の層13が積層されている。他の層13は特に限定されず、例えば、低屈折率層、反射防止層、高屈折率層、ハードコート層、粘着剤層等であってもよい。これ以外は、
図2の防眩性フィルム10の構成は、
図1の防眩性フィルム10と同様である。また、
図2において、防眩性フィルム10における防眩層(B)12側の最表面(他の層13の、光透過性基材(A)11と反対側の表面)には、凹凸が形成されている。前記凹凸の凸部の最大高さRyは、1.7μm以上である。前記凹凸の平均傾斜角θa(図示せず)は、0.7°以上である。防眩性フィルム10における、光透過性基材(A)11以外の部分(防眩層(B)12および他の層13)の最大高さは、図においてdで表している。また、防眩層(B)12における、光透過性基材(A)11と反対側(他の層13側)の面上には、凹凸が形成されている。防眩層(B)12の最大厚みd’から防眩層(B)12の前記凹凸の最大高さRy’を差し引いた膜厚は、図においてtで表している。図示のとおり、tは、d’-Ry’に等しいとともに、d-Ryに等しい。微粒子12bの粒子径Dは、
図1の場合と同様に、膜厚tよりも大きいが、前述のとおり、本発明はこれに限定されない。また、
図1の場合と同様に、防眩層(B)12は、微粒子およびチキソトロピー付与剤を、それぞれ、含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。また、他の層13は、
図2では一層であるが、複数の層でもよい。なお、他の層13が存在しない場合は、
図1に示したとおり、Ry’はRyに等しく、d’はdに等しい。
【0028】
以下、前記光透過性基材(A)、前記防眩層(B)および前記他の層のそれぞれについて、さらに例を挙げて説明する。なお、以下においては、主に、前記防眩層(B)が防眩性ハードコート層である場合について説明するが、本発明はこれには限定されない。
【0029】
前記光透過性基材(A)は、特に制限されないが、例えば、透明プラスチックフィルム基材等があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材は、特に制限されないが、可視光の光線透過率に優れ(好ましくは光線透過率90%以上)、透明性に優れるもの(好ましくはヘイズ値1%以下のもの)が好ましく、例えば、特開2008-90263号公報に記載の透明プラスチックフィルム基材があげられる。前記透明プラスチックフィルム基材としては、光学的に複屈折の少ないものが好適に用いられる。本発明の防眩性フィルムは、例えば、保護フィルムとして偏光板に使用することもでき、この場合には、前記透明プラスチックフィルム基材としては、トリアセチルセルロース(TAC)、ポリカーボネート、アクリル系ポリマー、環状ないしノルボルネン構造を有するポリオレフィン等から形成されたフィルムが好ましい。また、本発明において、後述するように、前記透明プラスチックフィルム基材は、偏光子自体であってもよい。このような構成であると、TAC等からなる保護層を不要とし偏光板の構造を単純化できるので、偏光板もしくは画像表示装置の製造工程数を減少させ、生産効率の向上が図れる。また、このような構成であれば、偏光板を、より薄層化することができる。なお、前記透明プラスチックフィルム基材が偏光子である場合には、前記防眩層(B)および前記反射防止層(C)が、保護層としての役割を果たすことになる。また、このような構成であれば、防眩性フィルムは、例えば、液晶セル表面に装着される場合、カバープレートとしての機能を兼ねることになる。
【0030】
本発明において、前記光透過性基材(A)の厚みは、特に制限されないが、強度、取り扱い性などの作業性および薄層性などの点を考慮すると、例えば、10~500μm、20~300μm、または30~200μmの範囲である。前記光透過性基材(A)の屈折率は、特に制限されない。前記屈折率は、例えば、1.30~1.80または1.40~1.70の範囲である。
【0031】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)に含まれる樹脂が、アクリル樹脂を含んでいてもよい。
【0032】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)が、アクリルフィルムであってもよい。
【0033】
また、本発明の防眩性フィルムは、前述のとおり、前記防眩層(B)側の最表面に凹凸が形成され、前記凹凸の最大高さRyが、1.7μm以上である。前記最大高さRyは、例えば、2.0μm以上または2.3μm以上であってもよく、例えば、9μm以下、8μm以下、7μm以下、または6μm以下であってもよい。前記最大高さRyは、例えば、1.7~9μm、1.7~8μm、2.0~7μm、または2.3~6μmであってもよい。Ryは、映り込み抑制の観点からは、大きいことが好ましいが、後述するヘイズ値の観点からは、大きすぎないことが好ましい。本発明において、前記最大高さRyは、JIS B 0601(1994年版)に基づく数値とする。Ryの測定方法は、特に限定されないが、例えば、後述する実施例に記載の測定方法により測定することができる。
【0034】
なお、本発明の防眩性フィルムにおいて、「防眩層(B)側の最表面」は、前記防眩層(B)側の最も外側の表面である。具体的には、「防眩層(B)側の最表面」は、前記他の層が存在しない場合(例えば
図1)は、前記防眩層(B)における前記光透過性基材(A)と反対側の表面である。また、「防眩層(B)側の最表面」は、前記他の層が存在する場合(例えば
図2)は、前記他の層における前記光透過性基材(A)と反対側の最も外側の表面である。
【0035】
また、本発明の防眩性フィルムは、前述のとおり、前記防眩層(B)側の最表面の凹凸形状において、平均傾斜角θa(°)が0.7以上である。前記平均傾斜角θaは、例えば、0.7°以上、0.8°以上、0.9°以上、または1.0°以上であってもよく、8°以下、7°以下、6°以下、または5°以下であってもよい。前記平均傾斜角θaは、例えば、0.7~8°、0.7~7°、0.7~6°、0.7~5°、0.8~8°、0.8~7°、0.8~6°、0.8~5°、0.9~8°、0.9~7°、0.9~6°、0.9~5°、1.0~8°、1.0~7°、1.0~6°、または1.0~5°であってもよい。θaは、映り込み抑制の観点からは、大きいことが好ましいが、後述するヘイズ値の観点からは、大きすぎないことが好ましい。ここで、前記平均傾斜角θaは、下記数式(3)で定義される値である。前記平均傾斜角θaは、例えば、後述の実施例に記載の方法により測定することができる。
平均傾斜角θa=tan-1Δa (3)
【0036】
前記数式(3)において、Δaは、下記数式(4)に示すように、JIS B 0601(1994年度版)に規定される粗さ曲線の基準長さLにおいて、隣り合う山の頂点と谷の最下点との差(高さh)の合計(h1+h2+h3・・・+hn)を前記基準長さLで割った値である。前記粗さ曲線は、断面曲線から、所定の波長より長い表面うねり成分を位相差補償形高域フィルタで除去した曲線である。また、前記断面曲線とは、対象面に直角な平面で対象面を切断したときに、その切り口に現れる輪郭である。
Δa=(h1+h2+h3・・・+hn)/L (4)
【0037】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、へイズ値が、例えば、4%以上、6%以上、10%以上、または15%以上であってもよく、例えば、50%以下、40%以下、35%以下、または30%未満であってもよい。前記ヘイズ値は、例えば、4~50%、6~40%、10~40%、さらに15~40%、または15~35%であってもよい。前記ヘイズ値とは、JIS K 7136(2000年版)に準じた防眩性フィルム全体のヘイズ値(曇度)である。一般に、防眩性フィルムにおいて、前記ヘイズ値が大きいと、映り込みを抑制しやすい。しかし、前記ヘイズ値が大きすぎると、画像が不鮮明になる、暗所でのコントラストが低下する等、表示特性が低下しやすい。しかし、本発明によれば、Ryおよびθaが前記数式(1)および(2)を満たすことにより、前記ヘイズ値が、例えば、50%以下、40%以下、35%以下、または30%未満と小さくても、映り込みを抑制できるのである。なお、前記ヘイズ値をなるべく小さくするためには、Ryおよびθaの調整以外に、後述する樹脂と微粒子との屈折率差がなるべく小さく(例えば0.001~0.02の範囲に)なるように、前記微粒子と前記樹脂とを選択すればよい。
【0038】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記防眩層(B)が、樹脂およびフィラーを含んでいてもよい。前記フィラーが、微粒子およびチキソトロピー付与剤(thixotropic agent)の少なくとも一方を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記防眩層(B)に含まれる前記樹脂が、アクリレート樹脂(アクリル樹脂ともいう)を含んでいてもよい。
【0040】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記防眩層(B)に含まれる前記樹脂が、ウレタンアクリレート樹脂を含んでいてもよい。
【0041】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記防眩層(B)に含まれる前記樹脂が、硬化型ウレタンアクリレート樹脂および多官能アクリレートの共重合物であってもよい。
【0042】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記防眩層(B)が、樹脂およびフィラーを含む防眩層形成材料を用いて形成されており、前記防眩層(B)が、前記フィラーが凝集することによって、前記防眩層(B)の表面に凸状部を形成する凝集部を有していてもよい。また、前記凸状部を形成する凝集部において、前記フィラーが、前記防眩層(B)の面方向における一方向に複数集まった状態で存在していてもよい。本発明の画像表示装置は、例えば、前記フィラーが複数集まった一方向と、前記ブラックマトリックスパターンの長辺方向とが一致するように、前記本発明の防眩性フィルムが配置されていてもよい。
【0043】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記チキソトロピー付与剤は、例えば、有機粘土、酸化ポリオレフィンおよび変性ウレアからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。また、前記チキソトロピー付与剤は、例えば、増粘剤であってもよい。
【0044】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層(B)の前記樹脂100重量(質量)部に対し、例えば、前記チキソトロピー付与剤が0.2~5重量部の範囲で含まれていてもよい。
【0045】
本発明の防眩性フィルムにおいて、前記防眩層(B)の前記樹脂100重量部に対し、前記微粒子は、例えば、0.2~12重量部または0.5~12重量部の範囲で含まれていてもよい。
【0046】
本発明の防眩性フィルムの製造方法において、さらに、前記防眩層形成材料中における前記樹脂100重量部に対する前記微粒子の重量部数を調整することにより、前記防眩性フィルムの表面形状を調整してもよい。
【0047】
前記防眩層(B)は、例えば、後述するように、前記樹脂、前記フィラーおよび溶媒を含む塗工液を、前記光透過性基材(A)の少なくとも一方の面に塗工して塗膜を形成し、次いで、前記塗膜から前記溶媒を除去することで形成される。前記樹脂は、例えば、熱硬化性樹脂、紫外線や光で硬化する電離放射線硬化性樹脂があげられる。前記樹脂として、市販の熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂等を用いることも可能である。
【0048】
前記熱硬化型樹脂や紫外線硬化型樹脂としては、例えば、熱、光(紫外線等)または電子線等により硬化するアクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する硬化型化合物が使用でき、例えば、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂、多価アルコール等の多官能化合物のアクリレートやメタクリレート等のオリゴマーまたはプレポリマー等があげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0049】
前記樹脂には、例えば、アクリレート基およびメタクリレート基の少なくとも一方の基を有する反応性希釈剤を用いることもできる。前記反応性希釈剤は、例えば、特開2008-88309号公報に記載の反応性希釈剤を用いることができ、例えば、単官能アクリレート、単官能メタクリレート、多官能アクリレート、多官能メタクリレート等を含む。前記反応性希釈剤としては、3官能以上のアクリレート、3官能以上のメタクリレートが好ましい。これは、防眩層(B)の硬度を、優れたものにできるからである。前記反応性希釈剤としては、例えば、ブタンジオールグリセリンエーテルジアクリレート、イソシアヌル酸のアクリレート、イソシアヌル酸のメタクリレート等もあげられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0050】
前記防眩層(B)を形成するための微粒子は、形成される防眩層(B)表面を凹凸形状にして防眩性を付与し、また、前記防眩層(B)のヘイズ値を制御することを主な機能とする。前記防眩層(B)のヘイズ値は、前記微粒子と前記樹脂との屈折率差を制御することで、設計することができる。前記微粒子としては、例えば、無機微粒子と有機微粒子とがある。前記無機微粒子は、特に制限されず、例えば、酸化ケイ素粒子、酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化亜鉛粒子、酸化錫粒子、炭酸カルシウム粒子、硫酸バリウム粒子、タルク粒子、カオリン粒子、硫酸カルシウム粒子等があげられる。また、前記有機微粒子は、特に制限されず、例えば、ポリメチルメタクリレート樹脂粉末(PMMA粒子)、シリコーン樹脂粉末、ポリスチレン樹脂粉末、ポリカーボネート樹脂粉末、アクリルスチレン樹脂粉末、ベンゾグアナミン樹脂粉末、メラミン樹脂粉末、ポリオレフィン樹脂粉末、ポリエステル樹脂粉末、ポリアミド樹脂粉末、ポリイミド樹脂粉末、ポリフッ化エチレン樹脂粉末等があげられる。これらの無機微粒子および有機微粒子は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0051】
前記微粒子の粒子径(D)(重量平均粒子径)は、特に限定されないが、例えば、2~10μmの範囲内である。前記微粒子の重量平均粒子径を、前記範囲とすることで、例えば、より防眩性に優れ、かつ映り込みが抑制された防眩性フィルムとすることができる。斜め方向からの映り込み抑制の観点からは、前記微粒子の重量平均粒子径が小さすぎないことが好ましい。正面方向からの映り込み抑制の観点からは、前記微粒子の重量平均粒子径が大きすぎないことが好ましい。前記微粒子の重量平均粒子径は、例えば、4μm以上であってもよく、例えば、9μm以下、または8μm以下であってもよい。前記微粒子の重量平均粒子径は、例えば、4~9μm、または4~8μmであってもよい。なお、前記微粒子の重量平均粒子径は、例えば、コールターカウント法により測定できる。例えば、細孔電気抵抗法を利用した粒度分布測定装置(商品名:コールターマルチサイザー、ベックマン・コールター社製)を用い、微粒子が前記細孔を通過する際の微粒子の体積に相当する電解液の電気抵抗を測定することにより、前記微粒子の数と体積を測定し、重量平均粒子径を算出する。
【0052】
前記微粒子の形状は、特に制限されず、例えば、ビーズ状の略球形であってもよく、粉末等の不定形のものであってもよいが、略球形のものが好ましく、より好ましくは、アスペクト比が1.5以下の略球形の微粒子であり、最も好ましくは球形の微粒子である。
【0053】
前記防眩層(B)における前記微粒子の含有率は、特に限定されないが、例えば、前記防眩層(B)の表面形状を考慮して適宜設定することができる。なお、前記微粒子の含有率(前記樹脂に対する重量部数)および重量平均粒子径と、前記防眩層(B)の表面形状との関係については、後述する。
【0054】
前記防眩層(B)において、前記フィラーが、微粒子およびチキソトロピー付与剤であってもよい。前記チキソトロピー付与剤は、単独で含んでいてもよいし、前記微粒子に加え、さらに、前記チキソトロピー付与剤を含んでいてもよい。前記チキソトロピー付与剤を含むことで、前記微粒子の凝集状態の制御を容易に行うことができる。前記チキソトロピー付与剤としては、例えば、有機粘土、酸化ポリオレフィン、変性ウレア等があげられる。
【0055】
前記有機粘土は、前記樹脂との親和性を改善するために、有機化処理した層状粘土であることが好ましい。前記有機粘土は、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ルーセンタイトSAN、ルーセンタイトSTN、ルーセンタイトSEN、ルーセンタイトSPN、ソマシフME-100、ソマシフMAE、ソマシフMTE、ソマシフMEE、ソマシフMPE(商品名、いずれもコープケミカル株式会社製);エスベン、エスベンC、エスベンE、エスベンW、エスベンP、エスベンWX、エスベンN-400、エスベンNX、エスベンNX80、エスベンNO12S、エスベンNEZ、エスベンNO12、エスベンNE、エスベンNZ、エスベンNZ70、オルガナイト、オルガナイトD、オルガナイトT(商品名、いずれも株式会社ホージュン製);クニピアF、クニピアG、クニピアG4(商品名、いずれもクニミネ工業株式会社製);チクソゲルVZ、クレイトンHT、クレイトン40(商品名、いずれもロックウッド アディティブズ社製)等があげられる。
【0056】
前記酸化ポリオレフィンは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ディスパロン4200-20(商品名、楠本化成株式会社製)、フローノンSA300(商品名、共栄社化学株式会社製)等があげられる。
【0057】
前記変性ウレアは、イソシアネート単量体あるいはそのアダクト体と有機アミンとの反応物である。前記変性ウレアは、自家調製してもよいし、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、BYK410(ビッグケミー社製)等があげられる。
【0058】
前記チキソトロピー付与剤は、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。
【0059】
前記防眩層(B)における前記チキソトロピー付与剤の割合は、前記樹脂100重量部に対し、0.2~5重量部の範囲が好ましく、より好ましくは、0.4~4重量部の範囲である。
【0060】
前記防眩層(B)の最大厚み(d’)は、特に制限されないが、3~12μmの範囲内にあることが好ましい。前記防眩層(B)の最大厚み(d’)を、前記範囲とすることで、例えば、防眩性フィルムにおけるカールの発生を防ぐことができ、搬送性不良等の生産性の低下の問題を回避できる。また、前記厚み(d)が前記範囲にある場合、前記微粒子の重量平均粒子径(D)は、前述のように、4~9μmの範囲内にあることが好ましい。前記防眩層(B)の最大厚み(d’)と、前記微粒子の重量平均粒子径(D)とが、前述の組み合わせであることで、防眩性に優れる防眩性フィルムとすることができる。前記防眩層(B)の最大厚み(d’)は、より好ましくは、4~8μmの範囲内である。
【0061】
前記防眩層(B)の厚み(d’)と前記微粒子の重量平均粒子径(D)との比D/d’は、例えば、1以下、1未満、0.98以下、0.96以下、0.93以下、または0.90以下であってもよく、0.5以上、0.6以上、0.7以上、または0.8以上であってもよい。このような関係にあることにより、より防眩性に優れ、かつ映り込みが抑制された防眩性フィルムとすることができる。例えば、D/d’が大きいと、Ryおよびθaが大きくなりやすい傾向がある。
【0062】
本発明における防眩性フィルムでは、例えば、前記防眩層(B)は、前記フィラーが凝集することによって、前記防眩層(B)の表面に凸状部を形成する凝集部を有しており、前記凸状部を形成する凝集部において、前記フィラーが、前記防眩層(B)の面方向における一方向に、複数集まった状態で存在してもよい。これにより、例えば、蛍光灯の映り込み等を防止することができる。ただし、本発明の防眩性フィルムは、これに限定されない。
【0063】
前記防眩層(B)の表面形状は、例えば、前記防眩層(B)の最大厚みd’から防眩層(B)の前記凹凸の最大高さRy’を差し引いた膜厚tと、前記微粒子の重量平均粒子径Dとを調整することで設計できる。具体的には、例えば、前記防眩層(B)の膜厚tに対して前記微粒子の重量平均粒子径Dが相対的に大きいと、前記Ryおよびθaが大きくなりやすい。膜厚tは、例えば、前記樹脂の塗工厚みによって調整できる。また、前記防眩層形成材料中における前記樹脂100重量部に対する前記微粒子の重量部数を調整することによっても、前記防眩層(B)の表面形状を設計できる。例えば、前記微粒子の重量部数が前記樹脂に対し相対的に多いと、θaが大きくなりやすい傾向がある。
【0064】
また、本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)と前記防眩層(B)との間に、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩層(B)由来の樹脂とを含む中間層を有していてもよい。この中間層の厚みの制御により、前記防眩層(B)の表面形状を制御することができる。例えば、前記中間層の厚みを大きくすると、前記Ryおよびθaが大きくなりやすく、前記中間層の厚みを小さくすると、前記Ryおよびθaが小さくなりやすい。
【0065】
本発明において、前記中間層(浸透層、相溶層ともいう)が形成されるメカニズムは、特に限定されないが、例えば、本発明者の防眩性フィルムの製造方法における前記乾燥工程で形成される。具体的には、例えば、前記乾燥工程において、前記防眩層(B)形成用の塗工液が前記光透過性基材(A)に浸透し、前記光透過性基材(A)由来の樹脂と、前記防眩層(B)由来の樹脂とを含む前記中間層が形成される。前記中間層に含まれる樹脂は、特に限定されず、例えば、前記光透過性基材(A)に含まれる樹脂と前記防眩層(B)に含まれる樹脂とが単に混合(相溶)されたものでもよい。また、前記中間層に含まれる樹脂は、例えば、前記光透過性基材(A)に含まれる樹脂と前記防眩層(B)に含まれる樹脂との、少なくとも一方が、加熱、光照射等により化学変化していてもよい。
【0066】
下記数式(5)で定義される前記中間層の厚み比率Rは、特に限定されないが、例えば、0.10~0.80であり、例えば、0.15以上、0.20以上、0.25以上、0.30以上、0.40以上、または0.45以上であってもよく、例えば、0.75以下、0.70以下、0.65以下、0.60以下、0.50以下、0.40以下、0.45以下、または0.30以下であってもよい。前記中間層の厚み比率Rは、例えば、0.15~0.75、0.20~0.70、0.25~0.65、0.30~0.60、0.40~0.50、0.45~0.50、0.15~0.45、0.15~0.40、0.15~0.30、または0.20~0.30であってもよい。前記中間層は、例えば、防眩性フィルムの断面を、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで、確認することができ、厚みを測定することができる。
R=[DC/(DC+DB)] (5)
前記数式(5)において、DBは、前記防眩性層(B)の厚み[μm]であり、DCは、前記中間層の厚み[μm]である。
【0067】
また、防眩層(B)の表面形状は、防眩層形成材料に含まれるフィラーの凝集状態を制御することによっても設計することができる。前記フィラーの凝集状態は、例えば、前記フィラーの材質(例えば、微粒子表面の化学的修飾状態、溶媒や樹脂に対する親和性等)、樹脂(バインダー)または溶媒の種類、組合せ等により制御できる。また、前記チキソトロピー付与剤により、前記微粒子の凝集状態を精密にコントロールすることができる。
【0068】
なお、本発明の防眩性フィルムは、前記凸状部が、なだらかな形状となり、外観欠点となる防眩層(B)表面の突起状物の発生を防止できるものであってもよいが、これに限定されない。また、本発明の防眩性フィルムは、例えば、防眩層(B)の厚み方向に直接または間接的に重なる位置で、前記微粒子が多少存在していてもよい。
【0069】
前記他の層は、特に限定されず、例えば、前述のとおり、低屈折率層、反射防止層、高屈折率層、ハードコート層、粘着剤層等であってもよい。また、前記他の層は、一層でも複数の層でもよく、複数の場合は、一種類でも複数種類でもよい。例えば、前記他の層は、厚みおよび屈折率を厳密に制御した光学薄膜もしくは前記光学薄膜を二層以上積層したものであってもよい。
【0070】
[2.防眩性フィルムの製造方法]
本発明の防眩性フィルムの製造方法は、特に制限されず、どのような方法で製造されてもよいが、前記本発明の防眩性フィルムの製造方法により製造することが好ましい。
【0071】
前記防眩性フィルムの製造方法は、例えば、以下のようにして行うことができる。
【0072】
まず、前記光透過性基材(A)上に、前記防眩層(B)を、前記数式(1)および(2)を満たすように形成する(防眩層(B)形成工程)。これにより、前記光透過性基材(A)と前記防眩層(B)との積層体を製造する。前記防眩層(B)形成工程は、前述のとおり、前記光透過性基材(A)上に塗工液を塗工する塗工工程と、塗工した前記塗工液を乾燥させて塗膜を形成する塗膜形成工程とを含む。また、例えば、前述のとおり、前記防眩層(B)形成工程が、さらに、前記塗膜を硬化させる硬化工程を含んでいてもよい。前記硬化は、例えば、前記乾燥の後に行なうことができるが、これに限定されない。前記硬化は、例えば、加熱、光照射等により行うことができる。前記光は、特に限定されないが、例えば、紫外線等であってもよい。前記光照射の光源も特に限定されないが、例えば、高圧水銀ランプ等であってもよい。
【0073】
前記塗工液は、前述のとおり、樹脂と、溶媒とを含む。前記塗工液は、例えば、前記樹脂、前記粒子、前記チキソトロピー付与剤および前記溶媒を含む防眩層形成材料(塗工液)であってもよい。
【0074】
前記塗工液は、チキソ性を示していることが好ましく、下記式で規定されるTi値が、1.3~3.5の範囲にあることが好ましく、より好ましくは1.4~3.2の範囲であり、さらに好ましくは1.5~3の範囲である。
Ti値=β1/β2
上記式中、β1はHAAKE社製レオストレスRS6000を用いてずり速度20(1/s)の条件で測定される粘度、β2はHAAKE社製レオストレスRS6000を用いてずり速度200(1/s)の条件で測定される粘度である。
【0075】
Ti値が、1.3以上であれば、外観欠点が生じたり、防眩性、白ボケについての特性が悪化したりする問題が起こりにくい。また、Ti値が、3.5以下であれば、前記粒子が凝集せずに分散状態となる等の問題が起こりにくい。
【0076】
また、前記塗工液は、チキソトロピー付与剤を含んでいても含んでいなくてもよいが、チキソトロピー付与剤を含む方が、チキソ性を示しやすいため好ましい。また、前述のように、前記塗工液が前記チキソトロピー付与剤を含むことで、前記粒子の沈降を防止する効果(チキソトロピー効果)が得られる。さらに、前記チキソトロピー付与剤自体のせん断凝集により、防眩性フィルムの表面形状を、さらに広い範囲で自在に制御することも可能である。
【0077】
前記溶媒は、特に制限されず、種々の溶媒を使用可能であり、一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。前記樹脂の組成、前記粒子および前記チキソトロピー付与剤の種類、含有量等に応じて、本発明の防眩性フィルムを得るために、最適な溶媒種類や溶媒比率を適宜選択してもよい。溶媒としては、特に限定されないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、t-ブチルアルコール(TBA)、2-メトキシエタノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等があげられる。また、例えば、前記溶媒が、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含んでいてもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、およびアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、アセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、チキソトロピー付与剤(例えば増粘剤)を溶解させるために、前記炭化水素溶媒(例えばトルエン)を含むことが好ましい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、または40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がメチルエチルケトンであってもよい。また、前記溶媒は、例えば、トルエンを含むとともに、さらに、酢酸エチル、酢酸ブチル、IPA、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、およびTBAからなる群から選択される少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0078】
光透過性基材(A)として、例えば、アクリルフィルムを採用して中間層(浸透層)を形成する場合は、アクリルフィルム(アクリル樹脂)に対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、前述のとおり、炭化水素溶媒と、ケトン溶媒とを含む溶媒でもよい。前記炭化水素溶媒は、例えば、芳香族炭化水素であってもよい。前記芳香族炭化水素は、例えば、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン、エチルベンゼン、およびベンゼンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記ケトン溶媒は、例えば、シクロペンタノン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、およびアセトフェノンからなる群から選択される少なくとも一つであってもよい。前記溶媒は、例えば、前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒とを、90:10~10:90の質量比で混合した溶媒であってもよい。前記炭化水素溶媒と、前記ケトン溶媒との質量比は、例えば、80:20~20:80、70:30~30:70、または40:60~60:40等であってもよい。この場合において、例えば、前記炭化水素溶媒がトルエンであり、前記ケトン溶媒がメチルエチルケトンであってもよい。
【0079】
光透過性基材(A)として、例えば、トリアセチルセルロース(TAC)を採用して中間層(浸透層)を形成する場合は、TACに対する良溶媒が好適に使用できる。その溶媒としては、例えば、酢酸エチル、メチルエチルケトン、シクロペンタノンなどをあげることができる。
【0080】
また、溶媒を適宜選択することによって、チキソトロピー付与剤を含有する場合において防眩層形成材料(塗工液)へのチキソ性を良好に発現させることができる。例えば、有機粘土を用いる場合には、トルエンおよびキシレンを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、酸化ポリオレフィンを用いる場合には、メチルエチルケトン、酢酸エチル、プロピレングリコールモノメチルメーテルを好適に、単独使用または併用することができ、例えば、変性ウレアを用いる場合には、酢酸ブチルおよびメチルイソブチルケトンを好適に、単独使用または併用することができる。
【0081】
前記防眩層形成材料には、各種レベリング剤を添加することができる。前記レベリング剤としては、塗工ムラ防止(塗工面の均一化)を目的に、例えば、フッ素系またはシリコーン系のレベリング剤を用いることができる。本発明では、防眩層(B)表面に防汚性が求められる場合、または、後述のように反射防止層(低屈折率層)や層間充填剤を含む層が防眩層(B)上に形成される場合などに応じて、適宜レベリング剤を選定することができる。本発明では、例えば、前記チキソトロピー付与剤を含ませることで塗工液にチキソ性を発現させることができるため、塗工ムラが発生しにくい。この場合、例えば、前記レベリング剤の選択肢を広げられるという優位点を有している。
【0082】
前記レベリング剤の配合量は、前記樹脂100重量部に対して、例えば、5重量部以下、好ましくは0.01~5重量部の範囲である。
【0083】
前記防眩層形成材料には、必要に応じて、性能を損なわない範囲で、顔料、充填剤、分散剤、可塑剤、紫外線吸収剤、界面活性剤、防汚剤、酸化防止剤等が添加されてもよい。これらの添加剤は一種類を単独で使用してもよく、また二種類以上併用してもよい。
【0084】
前記防眩層形成材料には、例えば、特開2008-88309号公報に記載されるような、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0085】
前記塗工液を前記光透過性基材(A)上に塗工して塗膜を形成する方法としては、例えば、ファンテンコート法、ダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ロールコート法、バーコート法等の塗工法を用いることができる。
【0086】
つぎに、前述のとおり、前記塗膜を乾燥および硬化させ、防眩層(B)を形成する。前記乾燥は、例えば、自然乾燥でもよいし、風を吹きつけての風乾であってもよいし、加熱乾燥であってもよいし、これらを組み合わせた方法であってもよい。
【0087】
前記防眩層(B)形成用の塗工液の乾燥温度は、例えば、30~200℃の範囲であってもよい。前記乾燥温度は、例えば、40℃以上、50℃以上、60℃以上、70℃以上、80℃以上、90℃以上、または100℃以上であってもよく、190℃以下、180℃以下、170℃以下、160℃以下、150℃以下、140℃以下、135℃以下、130℃以下、120℃以下、または110℃以下であってもよい。乾燥時間は特に限定されないが、例えば、30秒以上、40秒以上、50秒以上、または60秒以上であってもよく、150秒以下、130秒以下、110秒以下、または90秒以下であってもよい。
【0088】
前記塗膜の硬化手段は、特に制限されないが、紫外線硬化が好ましい。エネルギー線源の照射量は、紫外線波長365nmでの積算露光量として、50~500mJ/cm2が好ましい。照射量が、50mJ/cm2以上であれば、硬化が十分に進行しやすく、形成される防眩層(B)の硬度が高くなりやすい。また、500mJ/cm2以下であれば、形成される防眩層(B)の着色を防止することができる。
【0089】
以上のようにして、前記光透過性基材(A)と前記防眩層(B)との積層体を製造できる。この積層体を、そのまま本発明の防眩性フィルムとしてもよいし、例えば、前記防眩層(B)上に前記他の層を形成して本発明の防眩性フィルムともよい。前記他の層の形成方法は特に限定されず、例えば、一般的な低屈折率層、反射防止層、高屈折率層、ハードコート層、粘着剤層等の形成方法と同様またはそれに準じた方法で行うことができる。
【0090】
[3.光学部材および画像表示装置]
本発明の光学部材は、特に限定されないが、例えば、偏光板であってもよい。前記偏光板も、特に限定されないが、例えば、本発明の防眩性フィルムおよび偏光子を含んでいてもよいし、さらに、他の構成要素を含んでいてもよい。前記偏光板の各構成要素は、例えば、接着剤または粘着剤等により貼り合わせられていてもよい。
【0091】
本発明の画像表示装置も特に限定されず、どのような画像表示装置でもよいが、例えば、液晶表示装置、有機EL表示装置等があげられる。
【0092】
本発明の画像表示装置は、例えば、本発明の防眩性フィルムを視認側表面に有する画像表示装置であって、前記画像表示装置がブラックマトリックスパターンを有していてもよい。
【0093】
本発明の防眩性フィルムは、例えば、前記光透過性基材(A)側を、粘着剤や接着剤を介して、LCDに用いられている光学部材に貼り合せることができる。なお、この貼り合わせにあたり、前記光透過性基材(A)表面に対し、前述のような各種の表面処理を行ってもよい。前述のとおり、本発明の防眩性フィルムの製造方法によれば、防眩性フィルムの表面形状を広い範囲で自在に制御可能である。このため、前記防眩性フィルムを、接着剤や粘着剤などを用いて他の光学部材と積層することによって得ることができる光学特性は、前記防眩性フィルムの表面形状に対応した広い範囲にわたる。
【0094】
前記光学部材としては、例えば、偏光子または偏光板があげられる。偏光板は、偏光子の片側または両側に透明保護フィルムを有するという構成が一般的である。偏光子の両面に透明保護フィルムを設ける場合は、表裏の透明保護フィルムは、同じ材料であってもよいし、異なる材料であってもよい。偏光板は、通常、液晶セルの両側に配置される。また、偏光板は、2枚の偏光板の吸収軸が互いに略直交するように配置される。
【0095】
前記防眩性フィルムを積層した偏光板の構成は、特に制限されないが、例えば、前記防眩性フィルムの上に、透明保護フィルム、前記偏光子および前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよいし、前記防眩性フィルム上に、前記偏光子、前記透明保護フィルムを、この順番で積層した構成でもよい。
【0096】
本発明の画像表示装置は、前記防眩性フィルムを特定の方向で配置する以外は、従来の画像表示装置と同様の構成である。例えば、LCDの場合、液晶セル、偏光板等の光学部材、および必要に応じ照明システム(バックライト等)等の各構成部品を適宜に組み立てて駆動回路を組み込むこと等により製造できる。
【0097】
本発明の防眩性フィルムによれば、例えば、強い外光を散乱させ、反射を抑制することができるため、屋外でも映り込みを抑制できる。このため、本発明の画像表示装置は、例えば、屋外用のパブリックインフォメーションディスプレイ等として好適に使用できる。ただし、本発明の画像表示装置は、この用途に限定されず、他の任意の用途に使用可能である。その用途としては、例えば、パソコンモニター、ノートパソコン、コピー機等のOA機器、携帯電話、時計、デジタルカメラ、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機等の携帯機器、ビデオカメラ、テレビ、電子レンジ等の家庭用電気機器、バックモニター、カーナビゲーションシステム用モニター、カーオーディオ等の車載用機器、商業店舗用インフォメーション用モニター等の展示機器、監視用モニター等の警備機器、介護用モニター、医療用モニター等の介護・医療機器等があげられる。
【実施例0098】
つぎに、本発明の実施例について、比較例と併せて説明する。ただし、本発明は、以下の実施例および比較例により制限されない。
【0099】
なお、以下の実施例および比較例において、物質の部数は、特に断らない限り、質量部(重量部)である。
【0100】
<製造例1>基材フィルムAの作製
まず、特開2010-284840号公報の製造例1と同様の方法で、押出反応機を2台直列に並べたタンデム型反応押出機を用いてイミド化ポリメタクリル酸メチル樹脂を製造した。タンデム型反応押出機は、第1押出機、第2押出機共に直径75mm、L/D(押出機の長さLと直径Dの比)が74の同方向噛合型二軸押出機を用いた。第1押出機原料供給口への原料樹脂の供給には、定重量フィーダー(クボタ(株)製)を用いた。第1押出機および第2押出機における各ベントの減圧度は-0.095MPaとした。第1押出機と第2押出機との接続には、直径38mm、長さ2mの配管を用いた。第1押出機の樹脂吐出口と第2押出機の原料供給口とを接続する部品内圧力制御機構には、定流圧力弁を用いた。また、第1押出機出口、第1押出機と第2押出機との接続部品中央部、および第2押出機出口には、それぞれ樹脂圧力計を設けた。この樹脂圧力計は、第1押出機の樹脂の吐出口と第2押出機原料供給口とを接続する部品内の圧力調整のために、または押出変動を見極めるために用いることができる。
【0101】
前記イミド化ポリメタクリル酸メチル樹脂の製造は、以下のようにして行った。まず、第1押出機に、原料樹脂であるポリメタクリル酸メチル樹脂(Mw:10.5万)と、イミド化剤であるモノメチルアミンとを投入し、イミド樹脂中間体1を製造した。このとき、押出機最高温部温度を280℃、スクリュー回転数は55rpm、原料樹脂供給量は150kg/時間、モノメチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して2.0部とした。また、第2押出機原料供給口直前に設置した定流圧力弁により、第1押出機モノメチルアミン圧入部圧力を8MPaになるように調整した。つぎに、イミド樹脂中間体1を第2押出機内に移行させ、リアベントおよび真空ベントで、残存しているイミド化反応試剤及び副生成物を脱揮した。その後、エステル化剤として炭酸ジメチルとトリエチルアミンとの混合溶液を添加しイミド樹脂中間体2を製造した。このとき、第2押出機の各バレル温度を260℃、スクリュー回転数は55rpm、炭酸ジメチルの添加量は原料樹脂100部に対して3.2部、トリエチルアミンの添加量は原料樹脂100部に対して0.8部とした。さらに、ベントでエステル化剤を除去した後、ストランドダイから押し出し、水槽で冷却した後、ペレタイザーでペレット化することで、目的物であるイミド化ポリメタクリル酸メチル樹脂を得た。このイミド化ポリメタクリル酸メチル樹脂のイミド化率は3.7%、酸価は0.29mmol/gであった。
【0102】
つぎに、前記イミド化ポリメタクリル酸メチル樹脂100重量部およびトリアジン系紫外線吸収剤(アデカ社製、商品名:T-712)0.62重量部を、2軸混練機にて220℃にて混合し、樹脂ペレットを作製した。この樹脂ペレットを、100.5kPa、100℃で12時間乾燥させ、単軸の押出機にてダイス温度270℃でTダイから押出してフィルム状に成形した(厚み160μm)。さらに、前記フィルムを、150℃の雰囲気下で前記フィルムの搬送方向に延伸し、厚み80μmとした。つぎに、前記フィルムを、150℃の雰囲気下で前記フィルムの搬送方向と直交する方向に延伸し、厚み40μmの基材フィルムA((メタ)アクリル系樹脂フィルム)を得た。得られた基材フィルムAの波長380nmの光の透過率は8.5%、面内位相差Reは0.4nm、厚み方向位相差Rthは0.78nmであった。また得られた基材フィルムAの透湿度は、61g/m2・24hrであった。なお、光透過率は、日立ハイテク(株)社製の分光光度計(装置名称;U-4100)を用いて波長範囲200nm~800nmで透過率スペクトルを測定し、波長380nmにおける透過率を読み取った。また、位相差値は、王子計測機器(株)製 商品名「KOBRA21-ADH」を用いて、波長590nm、23℃で測定した。透湿度は、JIS K 0208に準じた方法により、温度40℃、相対湿度92%の条件で測定した。
【0103】
[塗工液1]
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)(大阪有機化学工業社製、商品名:ビスコート#300、濃度80%)60部、15官能ウレタンアクリルオリゴマー(新中村化学社製、商品名:NK オリゴ UA-53H、重量平均分子量:2300、濃度100%)40部、4-ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業社製、商品名:4-HBA、濃度100%)20部、レベリング剤(DIC社製、商品名:GRANDIC PC-4100)1部、光重合開始剤(BASFジャパン社製、商品名:イルガキュア907)5部、架橋アクリルスチレン共重合樹脂の微粒子(積水化成品社製、商品名:SSX1055QXE、重量平均粒子径:5.5μm)8部、増粘剤(チキソトロピー付与剤、クニミネ工業社製、商品名:スメクトンSANをトルエンにて濃度を6%に調整したもの)2.5部を混合し、固形分濃度が40%且つ、トルエンとメチルエチルケトンのトータル量が7:3になるように希釈し、塗工液1(防眩層形成用組成物)を調製した。
【0104】
[塗工液2]
塗工液1の架橋アクリルスチレン共重合樹脂の微粒子を、重量平均粒子径が3.0μmである架橋アクリルスチレン共重合樹脂の微粒子6部に変更したこと以外は塗工液1と同様にして塗工液2(防眩層形成用組成物)を調製した。
【0105】
[塗工液3]
塗工液1の架橋アクリルスチレン共重合樹脂の微粒子を、重量平均粒子径が8.0μmである架橋アクリルスチレン共重合樹脂の微粒子20部に変更したこと以外は塗工液1と同様にして塗工液3(防眩層形成用組成物)を調製した。
【0106】
<測定方法>
[表面形状測定]
防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、松浪ガラス工業(株)製のガラス板(厚み1.3mm)を粘着剤で貼り合わせ、高精度微細形状測定器(商品名;サーフコーダET4000、(株)小坂研究所製)を用いて、カットオフ値0.8mmの条件で前記防眩層(B)の表面形状を測定し、最大高さおよび平均傾斜角を算出した。さらに、前記最大高さおよび平均傾斜角を任意の10点で測定した平均値を、それぞれ最大高さRyおよび平均傾斜角θaとした。なお、前記高精度微細形状測定器は、前記最大高さRy、および前記平均傾斜角θaを自動算出する。また、前記最大高さRyおよび前記平均傾斜角θaの測定方法および算出方法は、JIS B 0601(1994年版)に基づくものである。
【0107】
[映り込み]
(1)防眩性フィルムの防眩層が形成されていない面に、黒色アクリル板(三菱レイヨン(株)製、厚み2.0mm)を粘着剤で貼り合わせ、裏面の反射をなくしたサンプルを作製した。
(2)一般的にディスプレイを用いるオフィス環境下(約1000Lx)において、前記サンプルを、正面方向の50cm離れた位置から蛍光灯(三波長光源)で照らし、前記サンプルの防眩性を、正面方向の50cm離れた位置から下記の基準で目視にて判定した。
判定基準
◎ :防眩性に優れ、写り込む蛍光灯の輪郭の像を残さない。
○ :◎より防眩性は劣るが、問題なく映り込み防止可能である。
△ :○より防眩性は劣るが、蛍光灯の輪郭がややぼやける。
× :蛍光灯の輪郭がぼやけず、はっきりと映り込んでしまう。
【0108】
[斜め映り込み]
蛍光灯を、サンプルの正面から30°傾斜した方向の50cm離れた位置から照射したことと、サンプルの正面から30°傾斜した方向の50cm離れた位置から下記の基準で目視にて判定したこと以外は、映り込み試験と同様にして斜め映り込み試験を行った。
判定基準
◎ :防眩性に優れ、写り込む蛍光灯の輪郭の像を残さない。
○ :◎より防眩性は劣るが、問題なく映り込み防止可能である。
△ :○より防眩性は劣るが、蛍光灯の輪郭がややぼやける。
× :蛍光灯の輪郭がぼやけず、はっきりと映り込んでしまう。
【0109】
[膜厚t]
前記高精度微細形状測定器(商品名;サーフコーダET4000、(株)小坂研究所製)により、前記最大高さRyの測定点と同じ10点で前記防眩層(B)の最大厚みを測定した。前記10点での最大厚みの測定値の平均値を、前記防眩層(B)の最大厚みdとした。前記最大厚みdから前記最大高さRyを差し引いた数値を前記防眩層(B)の膜厚tとした。なお、前記高精度微細形状測定器は、前記最大厚みd、および前記膜厚tを自動算出する。また、本実施例および比較例において、前記最大厚みdは、微粒子の重量平均粒子径とほぼ等しいため、前記重量平均粒子径から前記最大高さRyを差し引いた数値を近似的に膜厚tとすることができる。
【0110】
[ヘイズ値]
へイズ値の測定方法は、JIS K 7136(2000年版)のヘイズ(曇度)に準じ、ヘイズメーター((株)村上色彩技術研究所製、商品名「HM-150」)を用い、防眩性フィルムを単体でセットして測定した。
【0111】
[実施例1]
製造例1の基材(光透過性基材(A))の一方の面に塗工液1を塗布(塗工)し、塗布層(塗工層)を形成した。その後、前記塗工層を90℃で1分間加熱して乾燥させ、塗膜を形成した。その後、前記塗膜に、高圧水銀ランプにて積算光量300mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、防眩層(B)を形成することにより、目的とする防眩性フィルムを得た。防眩層(B)の最大高さRy値は、4.6μmであった。また、本実施例において、防眩層(B)は、防眩性ハードコート層である。以下の各実施例および比較例においても同様である。
【0112】
[実施例2]
塗膜の厚みを変更することにより、防眩層(B)の最大高さRy値を2.6μmとしたこと以外は実施例1と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0113】
[実施例3]
塗膜の厚みを変更することにより、防眩層(B)の最大高さRy値を1.8μmとしたこと以外は実施例1と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0114】
[比較例1]
塗膜の厚みを変更することにより、防眩層(B)の最大高さRy値を1.1μmとしたこと以外は実施例1と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0115】
[比較例2]
実施例2の防眩性フィルムにおける防眩層(A)上に、塗工液1から架橋アクリルスチレン共重合樹脂の微粒子(積水化成品社製、商品名:SSX1055QXE、平均粒径:5.5μm)8部を抜いた塗工液を再度上塗りした。その後、前記上塗りした層を、実施例1と同様の方法により乾燥し硬化させ、防眩層を形成した。この防眩層の最大高さRy値は、0.64μmであった。
【0116】
[比較例3]
塗工液1を塗工液2に変更し、防眩層(B)の最大高さRy値を1.5μmとしたこと以外は実施例1と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0117】
[比較例4]
塗膜の厚みを変更することにより、防眩層(B)の最大高さRy値を1.1μmとしたこと以外は比較例3と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0118】
[比較例5]
塗膜の厚みを変更することにより、防眩層(B)の最大高さRy値を2.4μmとしたこと以外は比較例3と同様にして防眩性フィルムを得た。つぎに、この防眩性フィルムにおける防眩層(A)上に、塗工液1から架橋アクリルスチレン共重合樹脂の微粒子(積水化成品社製、商品名:SSX1055QXE、平均粒径:5.5μm)8部を抜いた塗工液を再度上塗りした。その後、前記上塗りした層を、実施例1と同様の方法により乾燥し硬化させ、防眩層を形成した。この防眩層の最大高さRy値は、0.55μmであった。
【0119】
[実施例4]
塗工液1を塗工液3に変更し、防眩層(B)の最大高さRy値を6.9μmとしたこと以外は実施例1と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0120】
[実施例5]
塗工液1を塗工液3に変更し、防眩層(B)の最大高さRy値を4.5μmとしたこと以外は実施例1と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0121】
[実施例6]
塗工液1を塗工液3に変更し、防眩層(B)の最大高さRy値を2.6μmとしたこと以外は実施例1と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0122】
[実施例7]
塗膜の厚みを変更することにより、防眩層(B)の最大高さRy値を1.8μmとしたこと以外は実施例4と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0123】
[比較例6]
塗膜の厚みを変更することにより、防眩層(B)の最大高さRy値を1.2μmとしたこと以外は実施例4と同様にして防眩性フィルムを得た。
【0124】
[比較例7]
実施例6の防眩性フィルムにおける防眩層(A)上に、塗工液1から架橋アクリルスチレン共重合樹脂の微粒子(積水化成品社製、商品名:SSX1055QXE、平均粒径:5.5μm)8部を抜いた塗工液を再度上塗りした。その後、前記上塗りした層を、実施例1と同様の方法により乾燥し硬化させ、防眩層を形成した。この防眩層の最大高さRy値は、0.77μmであった。
【0125】
前記実施例1~7および比較例1~7における膜厚t(防眩層(B)の最大厚みから凹凸の凸部の最大高さを差し引いた厚み)、最表面の凹凸の凸部の最大高さRy、最表面の凹凸の平均傾斜角θa、ヘイズ値、映り込み試験結果および斜め映り込み試験結果を、下記表1にまとめて示す。
【0126】
【0127】
前記表1に示したとおり、Ryおよびθaが本発明の要件を満たす実施例1~7は、映り込みが抑制されていた。これに対し、Ryおよびθaが本発明の範囲外である比較例2、5および7は、正面方向および斜め方向の映り込みが顕著であった。また、θaが本発明の要件を満たすがRyが本発明の範囲外である比較例1、3、4および6は、斜め方向の映り込みが顕著であった。
以上、説明したとおり、本発明によれば、映り込みが抑制された防眩性フィルム、光学部材および画像表示装置を提供することができる。本発明の防眩性フィルムによれば、例えば、強い外光を散乱させ、反射を抑制することができるため、屋外でも映り込みを抑制できる。このため、本発明は、例えば、屋外用のパブリックインフォメーションディスプレイ等の画像表示装置に好適に使用できる。ただし、本発明は、この用途に限定されず、広範な用途に使用可能である。