(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018317
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】吸液スティック、吸液スティックの製造方法、及び、吸液方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/94 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
A61B17/94
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121356
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000109440
【氏名又は名称】テイボー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】曽根 康介
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160MM32
(57)【要約】 (修正有)
【課題】トロカールの内側をスムーズに通過して体腔内に挿入でき、使用後に体腔外にスムーズに取り出せる吸液スティックであって、出血量は少ないものの、頻繁に血液を吸い取ってぬぐうことが可能であり、ピンポイントで狙ったところに確実に精度よく、かつ、短時間で吸液できる吸液スティックを提供する。
【解決手段】吸液スティック1は、吸液芯2と、把持部3と、を備え、前記吸液芯は、先端部分以外の外周を前記把持部で被覆されたことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸液芯と、
把持部と、
を備え、
前記吸液芯は、先端部分以外の外周を前記把持部で被覆された、吸液スティック。
【請求項2】
前記吸液芯は、多孔質体である、請求項1に記載の吸液スティック。
【請求項3】
前記把持部は、熱可塑性樹脂である、請求項1又は2に記載の吸液スティック。
【請求項4】
前記吸液芯の先端部分は、所定の形状を有する、請求項1~3いずれか一項に記載の吸液スティック。
【請求項5】
略棒状の吸液芯部材を作製するステップと、
前記作製された吸液芯部材の外周を熱可塑性樹脂で被覆するステップと、
前記熱可塑性樹脂で被覆された吸液芯部材を所定の長さに切断し、熱可塑性樹脂で被覆された吸液芯を作製するステップと、
前記熱可塑性樹脂で被覆された吸液芯の先端部分を研削して吸液芯を露出させ、前記露出した吸液芯の先端部分を所定の形状に加工するステップと、
を含む、吸液スティックの製造方法。
【請求項6】
略棒状の吸液芯部材を作製するステップと、
前記作製された吸液芯部材を所定の長さに切断して加工前吸液芯を作製し、前記加工前吸液芯の先端部分を所定の形状に加工して吸液芯を作製するステップと、
熱可塑性樹脂で、挿入孔を有する把持部を成形するステップと、
前記挿入孔に前記加工された吸液芯を挿入し、装着するステップと、
を含む、吸液スティックの製造方法。
【請求項7】
請求項1~4いずれか一項に記載の吸液スティック、又は、請求項5又は6に記載の吸液スティックの製造方法で製造した吸液スティックを、トロカールに差し込むステップと、
前記吸液スティックの吸液芯の先端部分を体液に接触させ、吸い取るステップと、
前記吸液スティックをトロカールから取り出すステップと、
を含む、吸液方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡下の手術等において、滲出する血液等の体液を短時間、ピンポイントで精度よく吸液することができる吸液スティック、該吸液スティックの製造方法、及び、該吸液スティックを用いた吸液方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡下の手術等においては、術者は、トロカールを体腔内に差し込み、トロカールの管を通して手術に必要な器具や材料を体腔内に運び込み、使用後に体腔外へ取り出す作業を行う。トロカールは管状構造を有し、該手術に必要な器具や材料は、トロカールの内側をスムーズに通過して体腔内に運べることと、使用後に体腔外にスムーズに取り出せることが必要である。
【0003】
さらに、内視鏡下の手術において電気メス等が使用される場合、比較的少ない量の出血に対し、内視鏡を通した視界の確保等のために、頻繁に血液を吸い取ってぬぐうことが要求される。すなわち、複雑な体腔内に入れられた電気メスの処置部分からの出血を、ピンポイントで狙ったところに確実に精度よく、かつ、短時間で吸液できる吸液器具が要求される。
【0004】
しかしながら、特許文献1のように、吸液材としてガーゼや不織布を用いた場合、先端形状を細くしたり尖らせたりすることができず、また、吸液材の曲げ強度が低いため、吸収材の先端をピンポイントで狙ったところに当てることが難しいという課題があった。
さらに、吸収材は吸液すると膨らむため、トロカールから取り出しにくく、また、取り出す操作のときに吸液材で吸い取った体液が絞られ、体液が再び体腔内に戻りやすく、場合によっては内視鏡の視界を再度遮ってしまうという課題があった。
【0005】
また、特許文献2のように、組織への愛護的な剥離を可能としながら、剥離作業を容易かつ効率的にすることができる剥離器具を用いた場合、該剥離器具は、剥離組織からの滲出液等を一時的に吸水保持しておけるため、剥離作業中の視野の確保等に有効である(特許文献2段落0005、0010等参照)。しかしながら、剥離が主目的であり、剥離性確保に適した強度を有する剥離チップを用いる必要があり、吸液性を十分に高めることが難しいという課題があった。
【0006】
さらに、特許文献3のように、生体組織の鈍的剥離時や手術中に滲出する体液、及び洗浄液を吸引、配設する医療用剥離吸引嘴管を用いた場合、調圧による吸引で体液を排出することから、ある程度多くの血液や体液の吸引排出ができるため、処置具を頻繁に交換する煩雑さから術者を解放できる(特許文献3段落0001、0027等)。しかしながら、少量の血液等の吸い取りには圧力調整が難しいという課題があった。さらに、該吸引嘴管は先端にチップ、パイプ、調圧孔、把手、コック、コネクタ等の部品からなり、各部品の調整が複雑となり、コストがかかるという課題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2013-183751号公報
【特許文献2】特開2009-279044号公報
【特許文献3】実開平5-88552号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情を鑑みたものであり、トロカールの内側をスムーズに通過して体腔内に挿入でき、使用後に体腔外にスムーズに取り出せる吸液スティックであって、比較的少ない量の出血に対し、頻繁に血液を吸い取ってぬぐうことが可能であり、ピンポイントで狙ったところに確実に精度よく、かつ、短時間で吸液できる吸液スティックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の吸液スティックは、吸液芯と、把持部と、を備え、前記吸液芯は、先端部分以外の外周を前記把持部で被覆されたことを特徴とする。
【0010】
前記吸液芯は、多孔質体であることが好ましい。
【0011】
前記把持部は、熱可塑性樹脂であってもよい。
【0012】
前記吸液芯の先端部分は、所定の形状を有することが好ましい。
【0013】
本発明の吸液スティックの製造方法は、略棒状の吸液芯部材を作製するステップと、前記作製された吸液芯部材の外周を熱可塑性樹脂で被覆するステップと、前記熱可塑性樹脂で被覆された吸液芯部材を所定の長さに切断し、熱可塑性樹脂で被覆された吸液芯を作製するステップと、前記熱可塑性樹脂で被覆された吸液芯の先端部分を研削して吸液芯を露出させ、前記露出した吸液芯の先端部分を所定の形状に加工するステップと、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明の吸液スティックの製造方法はまた、略棒状の吸液芯部材を作製するステップと、前記作製された吸液芯部材を所定の長さに切断して加工前吸液芯を作製し、前記加工前吸液芯の先端部分を所定の形状に加工して吸液芯を作製するステップと、熱可塑性樹脂で、挿入孔を有する把持部を成形するステップと、前記挿入孔に前記加工された吸液芯を挿入し、装着するステップと、を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の吸液方法は、上記吸液スティック、又は、上記吸液スティックの製造方法で製造した吸液スティックを、トロカールに差し込むステップと、前記吸液スティックの吸液芯の先端部分を体液に接触させ、吸い取るステップと、前記吸液スティックをトロカールから取り出すステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の吸液スティックによれば、トロカールの内側をスムーズに通過して体腔内に挿入でき、使用後に体腔外にスムーズに取り出せ、比較的少ない量の出血に対し、頻繁に血液を吸い取ってぬぐうことが可能であり、ピンポイントで狙ったところに確実に精度よく、かつ、短時間で吸液できる吸液スティックを提供することができる。
また、本発明の吸液スティックは毛細管力により吸液するため、体液等の吸い上げ性もよく、かつ、吸液可能な量も多く設定することができ、繰り返し使用することができる。よって、術中にトロカール経由で吸液スティックを出し入れして新しい吸液スティックに交換する頻度を下げることができる。さらに、吸液スティックの吸液芯の先端部分以外の外周は把持部に被覆されており、吸液芯が把持部に固定されているため、トロカールへの出し入れ時や吸液のために先端部を患部に接触させる際に吸液芯が曲がったり撓ったりしないことから、操作性もよい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の吸液スティックの一例を示す。
図1(a)は全体の写真、
図1(b)は先端部分の写真、
図1(c)は概略図である。
【
図2】本発明の吸液スティックの一例を示す。
図2(a)は全体の写真、
図2(b)は先端部分の写真、
図2(c)は概略図である。
【
図4】本発明の吸液スティックの先端部分の形状の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の吸液スティック1は、吸液芯2と、把持部3を備えるものであり、
図1、
図2に概略を示す。以下に、本吸液スティックについて詳細に説明する。
なお、本願明細書において、「先端部」は各部品(部品の部分を含む。以下同じ。)における吸液スティックの吸液側の最先端部(位置)を指し、「後端部」は各部品における吸液スティックの吸液側と反対側の最後端部(位置)を指し、「先端部分」は各部品における先端部又は先端部の近辺部分を指し、「後端部分」は各部品における後端部又は後端部の近辺部分を指す。また、「先端側」は吸液側を指し、「後端側」は吸液側と反対側を指す。
【0019】
(吸液芯)
吸液芯2は、血液等の体液を吸液することが可能な芯である。吸液芯2の材質は、吸液芯2の先端部から吸液が可能であれば限定されないが、毛細管力を有する多孔質体であることが好ましい。
【0020】
多孔質体は、吸液芯の長手方向に繊維を束ねた繊維束を熱硬化性樹脂等で接着したものでもよいし、液体を吸い上げる気孔が長手方向に略直線状に連続するように合成樹脂を押出成形したものであってもよい。ある合成繊維に対し、その合成繊維の融点より低い融点を有する合成繊維を混合して溶融することによって、融点の高い合成繊維同士を接着してもよい。さらには、熱可塑性樹脂製の各粒状粒子が互いに部分的に融着し、かつ、各粒状粒子間に相互に連通状の連続気孔を形成している焼結法で成形されるもの、相互に連通状の連続気孔を有する立体網目構造で、かつ、保形性と適度な可撓性を備えた、ポリオレフィン系フォーム等の熱可塑性生成物からなるものであってもよい。毛細管力を有する焼結体であってもよい。
【0021】
繊維束を樹脂で接着した多孔質体の繊維には、合成繊維や獣毛等が用いられる。合成繊維としては、ポリアミド繊維のナイロン(登録商標)等、ポリエステル繊維のポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等、アクリル繊維等が例示される。なかでも、ポリエステルが好ましい。
また、繊維束を樹脂で接着した多孔質体の樹脂には、ポリウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が例示される。繊維の材料と接着性が高い樹脂バインダであることが好ましく、ナイロン繊維やポリエステル繊維には、ポリウレタン樹脂がより好ましい。
【0022】
融点の異なる合成繊維には、ポリアミド繊維のナイロン(登録商標)等、ポリエステル繊維のポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等、アクリル繊維等が例示される。
【0023】
合成樹脂を押出成形した多孔質体の材質は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリアセタール、ナイロン等のポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、テフロン(登録商標)、ABS樹脂、AS樹脂、ポリフェニレンスルファイド、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリエステルエラストマー等の各種エラストマー等の熱可塑性樹脂が例示される。目的に応じ、充填剤、各種添加剤等が配合されてもよい。
【0024】
吸液芯2は、上記材料を用いて略棒状の吸液芯部材を作製し、後述する把持部3を被覆してから、あるいは、被覆する前に、所定の長さに切断し、必要に応じ先端部分を所定の形状に加工して作製され得る。
吸液芯2の先端部分の形状は、加工なしもの、切断面を面取りしただけのもの、半円の円弧形状、砲弾形状、筆形状、球形状、チゼル形状、ヘラ形状、そろばん珠形状等が例示される。
図4(a)に砲弾形状、
図4(b)に筆形状、
図4(c)に球形状、
図4(d)チゼル形状、
図4(e)にヘラ形状、
図4(f)にそろばん珠形状の先端部分の形状を示す。
吸液芯2の先端部分以外の部分の断面は、好ましくは円形であるが、楕円形、矩形、多角形であってもよい。以下、円形の場合について説明する。
【0025】
吸液芯2の先端部分以外の外径は、把持部3の厚みと合計してトロカールの内径より小さければよいが、たとえば2.0mm~12.0mmの間が好ましく、4.0mm~8.0mmの間がより好ましい。
吸液芯2の長さは、吸液芯2が把持部3全体で被覆されている場合は、吸液スティック1の長さと等しくなる。その場合、トロカールへ出し入れ可能な長さであればよいが、300mm~600mmの範囲が好ましく、350mm~500mmの範囲がより好ましい。また、吸液芯2が把持部3の先端側のみに装着されている場合は、吸液スティックの長さより短くなる。その場合、吸液芯2の長さは、血液等の体液を十分に吸液可能な程度の体積となるような長さであればよいが、3mm~100mmの範囲が好ましく、5mm~80mmの範囲がより好ましい。
【0026】
(把持部)
把持部3は、術者が吸液スティック1を把持する部分である。把持部3は吸液芯2を被覆するため、吸い取った血液等の体液が染み出しにくいように、また、吸液芯2を固定するように、さらには術者が持ちやすいように構成される。
【0027】
把持部3の材料は、吸液芯2を被覆可能であり、より好ましくは加熱による溶着被覆可能である、熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、接着剤による接着被覆、圧着被覆を行ってもよい。ゴム状弾性を示すエラストマーの他、各種合成樹脂が用いられる。具体的には、ポリエステル系、ポリスチレン系、オレフィン系、ウレタン系、ポリアミド系、ポリアセタール等の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が例示される。吸液芯2がポリエステルの場合、把持部3はポリアセタールであることが好ましく例示される。
また、把持部3は、金属やセラミック材料を用いて形成してもよい。金属やセラミック材料の把持部3は、吸液芯2にそのまま被覆してもよいし、圧着被覆、熱による溶着被覆、接着剤による接着被覆を行ってもよい。
【0028】
把持部3の内径は、吸液芯2の先端部分以外の外径と同じに設計される。また、吸液芯2の外周を被覆する部分の把持部3の厚みは、0.1mm~2.0mmの範囲が好ましく、0.1mm~0.6mmの範囲がより好ましい。なお、把持部3の外径(吸液芯2の外径+把持部3の厚み×2)は、トロカールの内径より小さくなるように設計される。
【0029】
把持部3は、長さ方向の全部が吸液芯2の外周を被覆するように、略管状になっていてもよい。また、把持部3の長さ方向の先端側が吸液芯2の外周を被覆し、それ以外の部分は中実状になっていてもよい。
【0030】
(吸液スティックの製造方法1)
図3(a)に示されるような、把持部3が略管状になっている吸液スティック1の製造方法は、以下のとおりである。上述した吸液芯2の材料を用いて略棒状の吸液芯部材を作製し、該吸液芯部材全体の外周を上述した把持部3の材料である熱可塑性樹脂で被覆し、所定の長さに切断し、熱可塑性樹脂で被覆された吸液芯2の先端部分を研削して吸液芯2を露出させ、露出した吸液芯2の先端部分を所定の形状に加工する。
なお、吸液芯部材全体の外周を熱可塑性樹脂で被覆する際に、加熱して溶着被覆することがより好ましい。吸液芯2が把持部3により確実に固定され、吸液スティック1の制御がしやくす操作性が向上する。また、圧着、接着剤による接着被覆を行ってもよい。
【0031】
(吸液スティックの製造方法2)
図3(b)に示されるような、把持部3の長さ方向の先端側が吸液芯2の外周を被覆し、それ以外の部分は中実状になっている吸液スティックの製造方法は、以下のとおりである。上述した吸液芯2の材料を用いて略棒状の吸液芯部材を作製し、該吸液芯部材を所定の長さに切断し、加工前吸液芯の先端部分を所定の形状に加工し、熱可塑性樹脂で挿入孔を有する把持部3を成形し、該挿入孔に加工された吸液芯2を挿入し加熱して溶着、または接着剤による接着、または圧着により装着する。
吸液芯2は、把持部3の先端部分に溶着被覆、接着被覆、または圧着被覆されて固定されるため、吸液スティック1の制御がしやくす操作性が向上する。
【0032】
(吸液方法)
吸液方法は、以下のとおりである。上記吸液スティック1又は上記吸液スティックの製造方法で製造した吸液スティック1を、トロカールに差し込むステップと、吸液スティック1の吸液芯2の先端部分を体液に接触させ、吸い取るステップと、使用後の吸液スティック1をトロカールから取り出すステップを含む。
なお、吸液スティック1の吸液芯2の先端部分を体液に接触させ、吸い取るステップは、トロカールから吸液スティック1を出し入れすることなく、吸液芯2が吸液しなくなるまで反復して行うことができる。吸液芯2は、血液等の体液を吸収しても膨張することもなく、また、曲がったり撓ったりしないためである。
また、吸液スティック1は吸液芯2が把持部3に被覆され固定されているため、トロカールに差し込むときに、引っ掛かり(抵抗)も少ない。
【実施例0033】
以下に本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
-実施例1-
図1に実施例1の吸液スティック1を示す。
図1(a)は全体の写真、
図1(b)は先端部分の写真、
図1(c)は概略図である。
吸液芯2は、ポリエステル(3.3dtex)に低融点ポリエステル(2.2dtex)を50:50で混合し、加熱し、低融点ポリエステルで融着したものである。吸液芯2の先端部分以外のサイズは、外径3.9mm、長さ400mmである。
把持部3の材料には、ポリアセタールを用いた。厚みは0.4mmで、上記吸液芯2を溶着被覆した。該把持部3の被覆により、吸い取った血液等の体液が染み出ず、吸液芯2は固定され、また、術者が持ちやすい吸液スティックとなった。
先端部から10mmの位置までの先端部分を切削し、吸液芯2を露出させ、外径3.2mmに加工し、その後、先端部を円弧状に加工した。吸液スティック1の先端部分以外の外径は4.7mm、吸液スティック1の長さは400mmである。なお、先端部から8mm~10mmの部分は傾斜するように加工されている。
吸液芯2の体積は、4776mm
3である。
表1に、実施例1につき、吸液芯2のSEM写真を含めて特徴を示した。
【0035】
-実施例2-
図2に実施例2の吸液スティック1を示す。
図2(a)は全体の写真、
図2(b)は先端部分の写真、
図2(c)は概略図である。
吸液芯2は、ポリエステル(3.3dtex)に低融点ポリエステル(2.2dtex)を50:50で混合し、加熱し、低融点ポリエステルで融着したものである。吸液芯2の先端部分以外のサイズは、外径6.8mm、長さ400mmである。
把持部3の材料には、ポリアセタールを用いた。厚みは0.25mmで、上記吸液芯2を溶着被覆した。該把持部3の被覆により、吸い取った血液等の体液が染み出ず、吸液芯2は固定され、また、術者が持ちやすい吸液スティックとなった。
先端部から10mmの位置までの先端部分を切削し、吸液芯2を露出させ、外径6.1mmに加工し、その後、先端部を円弧状に加工した。吸液スティック1の先端部分以外の外径は7.3mm、吸液スティック1の長さは400mmである。なお、先端部から8mm~10mmの部分は傾斜するように加工されている。
吸液芯2の体積は、14519mm
3である。
表1に、実施例2につき、吸液芯2のSEM写真を含めて特徴を示した。
【0036】
-比較例1-
ガーゼを折り曲げた状態の従来の吸液器具を比較例1とした。ガーゼは綿(2.6dtex)である。ガーゼのサイズは外径5.0mm、長さは65mmであり、ガーゼの体積は1275mm3である。
表1に、比較例1につき、ガーゼのSEM写真を含めて特徴を示した。
【0037】
-比較例2-
繊維をスティックに巻き付けた、従来の吸液器具を比較例2とした。吸収体となる繊維は綿(2.2dtex)である。繊維のサイズは外径5.1mm、長さは10mmであり、繊維の体積は185mm3である。繊維が巻き付けられている部分のスティック(中心棒)のサイズは、外径2.0mm、長さ6mmである。全体としては、外径4.7mm、長さ405mmである。
表1に、比較例2につき、繊維のSEM写真を含めて特徴を示した。
【0038】
-比較例3-
繊維を織り込んだ布をスティックに巻き付けた、従来の吸液器具を比較例3とした。吸収体となる布の繊維は綿(2.2dtex)である。布のサイズは外径5.0mm、長さは13mmであり、布の体積は227mm3である。布が巻き付けられている部分のスティック(中心棒)のサイズは、外径2.0mm、長さ9mmである。全体としては、外径5.0mm、長さ455mmである。
表1に、比較例3につき、布のSEM写真を含めて特徴を示した。
【0039】
-評価試験1(血液吸液試験)-
実施例1、2、比較例1~3を用いて、血液吸液試験を行った。電気メスで一度に滲出する血液の量を参考にし、0.05gの血液を5秒で吸い上げられるかの確認を行い、吸い上げられた場合は○、吸い上げられなかった場合は×として評価した。0.05gの血液を5秒で吸い上げられなくなるまで、繰り返し評価を行った。
なお、実際の手術においては、一度血液をぬぐってから、次にぬぐうまでに時間の間隔が開くため、本血液吸液試験では5分ごとに吸液を繰り返し、n=1で行った。
【0040】
【0041】
血液吸液試験の結果を、表2に示した。
実施例1では6回の吸液操作が可能であり合計0.37gの血液を吸い上げることができ、実施例2では13回の吸液操作が可能であり合計0.69gの血液を吸い上げることができた。
一方、比較例2、3では、1回目の0.05gすら吸い上げることができなかった。なお、比較例1では少なくとも15回の吸液操作が可能であり、15回までに合計0.75gの血液を吸い上げることが確認できた。
【0042】
-評価試験2(操作性の確認)-
実施例1、2、比較例1~3を用いて、操作性を確認した。ピンポイントで狙った患部から滲出した血液に触れることができた場合は○、できなかった場合は×として評価した。
【0043】
操作性の結果を、表2に示した。
実施例1、2及び比較例2、3では操作性はよかった。一方、比較例1ではピンポイントで狙った患部から滲出した血液にガーゼを触れることができず操作性がよくなかった。
【0044】
-評価試験3(先端撓り量の測定)-
実施例1、2、比較例1~3を用いて、先端撓り量の測定を行った。吸液スティック等の吸液器具の先端部から8mmの位置から後端側を水平に固定し、吸液スティックの長手方向に対して垂直方向に1Nの力をかけた場合に撓った量(mm)を測定した。n=10で行った。
【0045】
先端撓り量の測定結果を、表2に示した。
実施例1、2及び比較例2、3では上記測定条件では撓り量は0mmであり、撓らないことが分かった。
一方、比較例1では、先端の折り曲げたガーゼが柔らかすぎて、撓り量を測定できないほど撓ることが分かった。
【0046】
【0047】
以上、評価試験1~3より、実施例1、2は、0.05gの血液を5秒以内に少なくとも6回以上吸い上げることができ、操作性もよく、撓り量も0であった。すなわち、電気メス等による量の少ない出血に対し、頻繁に血液を吸い取ってぬぐうことが可能であり、ピンポイントで狙ったところに確実に精度よく、かつ、短時間で吸液できることが分かった。
【0048】
また、評価試験1~3より、比較例1は、0.05gの血液を5秒以内に少なくとも15回以上吸い上げることができたが、操作性がよくなく、撓り量も測定不可能なほど撓った。すなわち、吸液性は高いものの、ピンポイントで狙ったところに確実に精度よく器具の先端を接触させることが難しいことが分かった。
【0049】
さらに、評価試験1~3より、比較例2、3は、操作性もよく、力をかけても撓らなかったが、0.05gの血液を5秒以内に1回も吸い上げることができなかった。すなわち、ピンポイントで狙ったところに確実に精度よく器具の先端を接触させることはできるが、吸液性に劣ることが分かった。