IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社島津製作所の特許一覧

特開2022-183192真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置
<>
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図1
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図2
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図3
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図4
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図5
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図6
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図7
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図8
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図9
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図10
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図11
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図12
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図13
  • 特開-真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183192
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置
(51)【国際特許分類】
   G05D 16/20 20060101AFI20221201BHJP
   F16K 51/02 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
G05D16/20 Z
F16K51/02 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157947
(22)【出願日】2022-09-30
(62)【分割の表示】P 2018149760の分割
【原出願日】2018-08-08
(71)【出願人】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100149962
【弁理士】
【氏名又は名称】阿久津 好二
(74)【代理人】
【識別番号】100170988
【弁理士】
【氏名又は名称】妹尾 明展
(74)【代理人】
【識別番号】100189566
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 雅之
(72)【発明者】
【氏名】中村 雅哉
(72)【発明者】
【氏名】小崎 純一郎
(57)【要約】
【課題】複数の真空バルブを備えるバルブシステムにおいて、調圧応答性の向上を図ることができる制御装置の提供。
【解決手段】バルブシステムの制御装置は、複数の真空ポンプ2と複数の真空バルブとから成る全体排気系の排気速度Seおよびチャンバ3の容積V0を複数の真空バルブの台数nで除した1台当たり排気速度および1台当たり容積と、チャンバ3の圧力Pgと、チャンバ3の圧力目標値Psとに基づいて、複数の真空バルブに対して同一の調圧用開度信号θsを出力する調圧制御部121を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が、チャンバを排気する1つの真空ポンプと、前記真空ポンプと前記チャンバとの間に設けられる1つの真空バルブとを含む、n組(nは2以上の整数)の排気系と、
前記真空バルブを調圧制御する制御装置とを備え、
前記n組の排気系は、前記チャンバの等分割された各部分領域に配置されることにより、前記各部分領域は1組の排気系により均等に排気されるものであり、
前記制御装置は、
前記n組の排気系が含む前記真空ポンプと前記真空バルブとの全てから成る全体排気系の排気速度Seを前記n組の排気系の真空バルブの台数nで除した1台当たり排気速度Se/nと、前記チャンバの容積V0を前記n組の排気系の真空バルブの台数nで除した1台当たり容積V0/nと、前記チャンバの圧力と、前記チャンバの圧力目標値とに基づいて、前記n組の排気系の真空バルブに対して同一の調圧用開度信号を出力する、バルブシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のバルブシステムにおいて、
前記制御装置は、前記全体排気系の排気速度Seおよび前記チャンバの容積V0を取得する校正部を有し、
前記校正部は、前記チャンバに一定流量のガスを導入しつつ前記n組の排気系の真空バルブを同一の校正用開度信号で開閉制御して前記チャンバの圧力を複数の開度に対して取得し、取得された圧力と前記開度との関係から前記全体排気系の排気速度および前記チャンバの容積を算出する、バルブシステム。
【請求項3】
請求項1に記載のバルブシステムにおいて、
前記制御装置は、前記n組の排気系の真空バルブの各々の開度を取得する開度取得部を有し、
前記制御装置は、前記開度取得部で取得される各々の開度に基づいて稼働している真空バルブの台数を推定し、前記1台当たり排気速度および前記1台当たり容積として、全体排気系の排気速度および前記チャンバの容積を前記稼働している真空バルブの台数で除した値を使用する、バルブシステム。
【請求項4】
請求項1に記載のバルブシステムにおいて、
前記n組の排気系の1つは前記制御装置を含む第1の真空バルブを有し、前記n組の排気系のその他は第2の真空バルブを有し、
前記第1の真空バルブは、
バルブプレートと、
前記制御装置からの前記調圧用開度信号に基づいて前記バルブプレートの調圧時のバルブ開閉駆動を行う第1のバルブ駆動部とを有し、
前記第2の真空バルブは、
バルブプレートと、
前記制御装置からの前記調圧用開度信号に基づいて前記バルブプレートの調圧時のバルブ開閉駆動を行う第2のバルブ駆動部とを有する、バルブシステム。
【請求項5】
請求項1に記載のバルブシステムにおいて、
前記n組の排気系の各々の真空バルブが、バルブプレートと、前記制御装置とを有し、
前記制御装置が、
前記制御装置からの調圧用開度信号により前記バルブプレートの調圧時のバルブ開閉駆動を行うバルブ駆動部と、
自身が有する前記制御装置からの前記調圧用開度信号に基づいて前記バルブ駆動部を動作させ、かつ、前記調圧用開度信号を自身が有する前記制御装置から他の真空バルブが有する前記制御装置に与える第1の状態と、自身が有する前記制御装置が他の真空バルブが有する前記制御装置から前記調圧用開度信号を取得し、取得した前記調圧用開度信号に基づいて前記バルブ駆動部を動作させる第2の状態とのいずれかに設定する設定部と、を有し、
前記複数の真空バルブの内、いずれか1台の真空バルブは前記チャンバの圧力が入力されると共に前記設定部が前記第1の状態に設定し、その他の真空バルブは前記設定部が前記第2の状態に設定する、バルブシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空バルブ、バルブシステム、バルブシステムの制御装置および校正装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気経路のコンダクタンスを自動調節するための真空バルブとして、バルブコンダクタンスを調整できる自動圧力制御バルブ(以下では、APCバルブと呼ぶことにする)が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。成膜装置やエッチング装置などでは、一定流量の処理ガスを真空チャンバ内に供給しながら、APCバルブによって排気経路のコンダクタンスを調節し、所望のプロセス圧力に制御しつつ成膜処理やエッチング処理などのプロセスが行われる。
【0003】
APCバルブの開度を調整して真空チャンバの圧力を所望のプロセス圧力に正確に制御するためには、APCバルブの開度変化と真空チャンバの圧力変化との関係を正確に把握してそれを制御に反映させることが重要である。特許文献1に記載の発明では、真空チャンバに対してAPCバルブと真空ポンプとから成る排気装置が1セット設けられている場合における制御方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-112933号公報
【特許文献2】特開2018-112263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フラットパネルディスプレイを製造するための成膜装置やエッチング装置では、APCバルブと真空ポンプとから成る排気装置が真空チャンバに対して複数設けられる場合があり、そのような構成においても正確な圧力制御が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の好ましい態様による制御装置は、チャンバを排気する複数の真空ポンプの各々と前記チャンバとの間に設けられる複数の真空バルブを備えるバルブシステムの制御装置であって、前記複数の真空ポンプと前記複数の真空バルブとから成る全体排気系の排気速度および前記チャンバの容積を前記複数の真空バルブの台数で除した1台当たり排気速度および1台当たり容積と、前記チャンバの圧力と、前記チャンバの圧力目標値とに基づいて、前記複数の真空バルブに対して同一の調圧用開度信号を出力する調圧制御部を備える。
さらに好ましい態様では、前記全体排気系の排気速度および前記チャンバの容積を取得する校正部を備え、前記校正部は、前記チャンバに一定流量のガスを導入しつつ前記複数の真空バルブを同一の校正用開度信号で開閉制御して前記チャンバの圧力を複数の開度に対して取得し、取得された圧力と前記開度との関係から前記全体排気系の排気速度および前記チャンバの容積を算出する。
さらに好ましい態様では、前記複数の真空バルブの各々の開度を取得する開度取得部を備え、前記調圧制御部は、前記開度取得部で取得される各々の開度に基づいて稼働している真空バルブの台数を推定し、前記1台当たり排気速度および前記1台当たり容積として、全体排気系の排気速度および前記チャンバの容積を前記稼働している真空バルブの台数で除した値を使用する。
本発明の好ましい態様によるバルブシステムは、チャンバを排気する複数の真空ポンプの各々と前記チャンバとの間に設けられる複数の真空バルブと、上述の態様の制御装置と、を備える。
さらに好ましい態様では、前記複数の真空バルブは、前記制御装置を含む一つの第1の真空バルブと、その他の第2の真空バルブとで構成され、前記第1の真空バルブは、バルブプレートと、前記制御装置からの前記調圧用開度信号に基づいて前記バルブプレートの調圧時のバルブ開閉駆動を行う第1のバルブ駆動部とを有し、前記第2の真空バルブは、バルブプレートと、前記制御装置からの前記調圧用開度信号に基づいて前記バルブプレートの調圧時のバルブ開閉駆動を行う第2のバルブ駆動部とを有する。
さらに好ましい態様では、前記複数の真空バルブの各々が、バルブプレートと、前記制御装置とを有し、前記制御装置が、前記制御装置からの調圧用開度信号により前記バルブプレートの調圧時のバルブ開閉駆動を行うバルブ駆動部と、自身が有する前記制御装置からの前記調圧用開度信号に基づいて前記バルブ駆動部を動作させ、かつ、前記調圧用開度信号を自身が有する前記制御装置から他の真空バルブが有する前記制御装置に与える第1の状態と、自身が有する前記制御装置が他の真空バルブが有する前記制御装置から前記調圧用開度信号を取得し、取得した前記調圧用開度信号に基づいて前記バルブ駆動部を動作させる第2の状態とのいずれかに設定する設定部と、を有し、前記複数の真空バルブの内、いずれか1台の真空バルブは前記チャンバの圧力が入力されると共に前記設定部が前記第1の状態に設定し、その他の真空バルブは前記設定部が前記第2の状態に設定する。
本発明の好ましい態様による真空バルブは、上述した態様のいずれか一つに記載のバルブシステムに適用される。
本発明の好ましい態様による校正装置は、チャンバを排気する複数の真空ポンプの各々と前記チャンバとの間に設けられる複数の真空バルブを備え、同一の開度信号で前記複数の真空バルブを調圧制御するバルブシステムの、校正装置であって、前記チャンバに一定流量のガスを導入しつつ前記複数の真空バルブを同一の校正用開度信号で開閉制御し、前記チャンバの圧力を複数の開度に対して取得する取得部と、前記取得された圧力と前記開度との関係から、前記複数の真空ポンプと前記複数の真空バルブとから成る全体排気系の排気速度および前記チャンバの容積を算出する演算部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、複数の真空バルブを備えるバルブシステムにおいて、調圧応答性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、バルブシステムを示す模式図である。
図2図2は、APCバルブをチャンバ側から見た平面図である。
図3図3は、マスタのAPCバルブとスレーブのAPCバルブとの関係を説明するブロック図である。
図4図4は、調圧制御部の制御を説明するブロック図である。
図5図5は、校正処理の一例を示すフローチャートである。
図6図6は、校正処理時における開度θおよびチャンバ内圧力を示す図である。
図7図7は、開度-圧力特性の一例を示す図である。
図8図8は、開度-排気速度特性の一例を示す図である。
図9図9は、開度-プラントゲイン特性の一例を示す図である。
図10図10は、変形例1を示す図である。
図11図11は、第2の実施の形態のバルブシステムの全体構成を示す図である。
図12図12は、図11のバルブシステムに含まれるバルブおよびバルブコントローラを詳細に示すブロック図である。
図13図13は、第2の実施の形態のバルブシステムの、他の例を示す図である。
図14図14は、校正部の詳細を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
―第1の実施の形態―
図1は、半導体装置に設けられたバルブシステムを示す模式図である。半導体装置のチャンバ3には、APCバルブ(自動圧力制御バルブ)1A~1Dを介して4台の真空ポンプ2が設けられている。APCバルブ1Aとそれに接続された真空ポンプ2とで1組の排気系を構成しており、図1に示すチャンバ3には4組の排気系が設けられていることになる。なお、本実施の形態では、真空ポンプ2としてターボ分子ポンプが用いられているが、真空ポンプ2はターボ分子ポンプに限定されない。
【0010】
APCバルブ1A~1Dは、バルブプレート101を開閉駆動するバルブモータ(不図示)が設けられているモータ部11と、バルブモータを制御するバルブ制御部12とを備えている。なお、APCバルブ1A~1Dの共通部分を説明する場合には、符号1A~1Dの代わりに符号1を用いる場合もある。後述するように、本実施の形態では、APCバルブ1A~1Dには同一構成のバルブが用いられ、APCバルブ1Aはマスタのバルブに設定され、APCバルブ1B~1Dは、マスタのAPCバルブ1Aからの開度信号θsに基づいて各バルブプレート101を開閉駆動されるスレーブのバルブに設定されている。
【0011】
マスタのAPCバルブ1Aのバルブ制御部12は、通信ライン7によってスレーブのAPCバルブ1B~1Dのバルブ制御部12と接続され、RS-485などのデイジーチェーンによりAPCバルブ1B~1Dのバルブ制御部12と通信を行う。マスタのAPCバルブ1Aは、通信によりAPCバルブ1B~1Dの開度計測値や稼働状態やAPCバルブ1B~1D自身により生成されるアラーム信号等をスレーブ情報として検出する。以下では、APCバルブ1A~1Dの開度計測値をθra~θrdと標記することにする。
【0012】
チャンバ3の圧力は真空計5によって計測される。計測された圧力計測値Pgは、半導体装置のコントローラ4およびAPCバルブ1Aに入力される。APCバルブ1Aには、調圧制御をする際の圧力目標値Psがコントローラ4から入力される。チャンバ3に導入されるガスの流量Qは、マスフローコントローラ6によって計測されると共に制御される。マスフローコントローラ6は、コントローラ4からの流量指令に基づいて流量Qのガスをチャンバ3内に流入させる。マスフローコントローラ6で計測された流量値は、コントローラ4に入力される。
【0013】
図2は、APCバルブ1をチャンバ3側から見た平面図である。バルブモータ110を正方向および逆方向に回転駆動してバルブプレート101を揺動駆動することにより、バルブプレート101の開閉動作が行われる。バルブプレート101は、バルブボディ100に形成された開口部100aの全体に対向する全遮蔽位置C2と、バルブボディ100内のバルブ退避位置C1との間の任意の位置にスライド移動させることができる。バルブプレート101の開閉状態は開度と呼ばれるパラメータで表される。
【0014】
開度とは、比=(バルブプレートの揺動角):(全遮蔽位置C2からバルブ退避位置C1までの揺動角)をパーセントで表したものである。図2の全遮蔽位置C2は開度=0%であり、バルブ退避位置C1は開度=100%である。バルブプレート101の開度は、モータ軸に設けられたエンコーダ(不図示)によって検出される回転角に基づいて算出される。APCバルブ1A~1Dでは、バルブプレート101の開度を調整することによりAPCバルブ1A~1Dのコンダクタンスを調整することができる。
【0015】
図3は、マスタのAPCバルブ1AとスレーブのAPCバルブ1Bとの関係を説明するブロック図である。前述したように、各APCバルブ1A~1Dには同一構成のAPCバルブが用いられ、各APCバルブ1A~1Dのバルブプレート101は、バルブモータ110により開閉駆動される。バルブモータ110にはエンコーダ111が設けられており、エンコーダ111で検出されたバルブプレート101の開度計測値θra~θrdはバルブ制御部12に入力される。
【0016】
バルブ制御部12は、調圧制御部121,バルブ駆動部122,校正部123,設定部124,記憶部125,入出力部126および警報部127を備えている。記憶部125にはバルブ制御に用いられるプラントパラメータ等が記憶されている。プラントパラメータとしては、APCバルブ1の開度変化とチャンバ3の圧力変化との関係を表すプラントゲインGp、チャンバ3の容積V0、および、4組の排気系から成る全排気系の排気速度Seが記憶されている。プラントパラメータの詳細は後述する。
【0017】
調圧制御部121は、圧力計測値Pg、圧力目標値Ps、プラントゲインGpおよびチャンバ3の容積V0に基づいて、調圧制御における開度指令としての開度信号θsをバルブ駆動部122へ出力する。バルブ駆動部122は、開度信号θsに基づいてバルブモータ110を駆動する。
【0018】
校正部123は、後述するようにプラントパラメータの校正処理を行う。設定部124はAPCバルブ1の状態を設定するためのものであり、設定部124の設定に応じて、APCバルブ1Aはマスタのバルブに設定され、APCバルブ1B~1DはAPCバルブ1Aによって制御されるスレーブのバルブに設定される。入出力部126は外部装置との信号の授受をするために設けられている。警報部127は、APCバルブ1の異常を検知するとアラーム信号を出力する。そのアラーム信号は入出力部126から半導体装置のコントローラ4へと出力される。
【0019】
設定部124および入出力部126についてより詳細に説明する。APCバルブ1Aの調圧制御部121で生成された開度信号θsは、通信ライン7を介してスレーブのAPCバルブ1B~1Dへ出力される。各APCバルブ1B~1Dから、各エンコーダ111で検出された開度計測値θrb~θrdが通信ライン7を介してAPCバルブ1Aへ出力される。
【0020】
マスタのAPCバルブ1Aの調圧制御部121は、スレーブのAPCバルブ1B~1Dから送信されるスレーブ情報(例えば、開度計測値θrb~θrdやアラーム信号等)により、正常に稼働しているスレーブの台数を検出する。例えば、APCバルブ1Aのバルブ制御部12は、受信したAPCバルブ1B~1Dの開度計測値θrb~θrdが開度信号θsから大きく乖離していた場合(例えば、常にθr=0)には、そのAPCバルブは正常に動作していないと判断する。正常に動作していないAPCバルブがある場合には、マスタのAPCバルブ1Aは警報部127からアラーム信号を出力する。アラーム信号は、半導体装置のコントローラ4へと送信される。また、APCバルブ1B~1Dは自身に異常を検出した場合、アラーム信号を警報部127から出力する。出力されたアラーム信号は通信ライン7を介してAPCバルブ1Aへ送信される。
【0021】
(マスタ、スレーブの設定処理)
次に、設定部124によるマスタとスレーブの設定方法について説明する。本実施の形態では、設定指令が半導体装置のコントローラ4からAPCバルブ1A~1Dに出力される構成の場合について説明するが、各APCバルブ1A~1Dの設定部124の設定をオペレータが手動で予め設定するようにしても良い。設定指令は各APCバルブ1A~1DのIDナンバーとマスタ/スレーブ設定であり、ここでは、APCバルブ1A~1Dの(IDナンバー、マスタ/スレーブ設定)が、順に(ID=0、マスタ),(ID=1、スレーブ),(ID=2、スレーブ),(ID=3、スレーブ)であると仮定する。
【0022】
設定指令(ID=0、マスタ)(ID=1、スレーブ)(ID=2、スレーブ)(ID=3、スレーブ)がAPCバルブ1Aの入出力部126に入力されると、APCバルブ1Aの設定部124は、IDを0に設定すると共に、調圧制御部121および校正部123を有効化して通常通りの動作を行わせ、調圧制御部121で生成された開度信号θsを入出力部126から出力させる。APCバルブ1Aの入出力部126からAPCバルブ1Bの入出力部126へは、設定指令(ID=1、スレーブ)(ID=2、スレーブ)(ID=3、スレーブ)が出力される。
【0023】
APCバルブ1Aから設定指令(ID=1、スレーブ)(ID=2、スレーブ)(ID=3、スレーブ)を受信したAPCバルブ1Bでは、設定部124は、IDを1に設定すると共に、調圧制御部121および校正部123を無効化してそれらの動作を停止させる。さらに設定部124は、APCバルブ1Aから入出力部126に入力された開度信号θsをバルブ駆動部122に入力すると共に入出力部126からAPCバルブ1Cへ出力させる。その結果、バルブ駆動部122は、APCバルブ1Bの開度をAPCバルブ1Aと同一の開度に制御する。APCバルブ1Bの入出力部126からAPCバルブ1Cの入出力部126へは、設定指令(ID=2、スレーブ)(ID=3、スレーブ)が出力される。
【0024】
説明は省略するが、同様の手順で、APCバルブ1CおよびAPCバルブ1DのID設定とマスタ/スレーブ設定が行われる。その結果、APCバルブ1Aはマスタのバルブに設定され、APCバルブ1B~1DはAPCバルブ1Aに従属して動作するスレーブのバルブに設定される。
【0025】
(調圧動作の説明)
次に、複数のAPCバルブ1A~1Dを備えるバルブシステムにおける調圧動作について、図1を参照して説明する。大型のフラットパネルディスプレイに用いられる半導体製造装置においては、チャンバ3は高さ寸法に比べて底面積が大きく、そのようなチャンバ3を均等に真空排気するためには図1のように複数組の排気系(APCバルブ1+真空ポンプ2)を均等に配置するのが好ましい。本実施の形態では、等分割された各部分領域は流量q=Q/(分割数)のガスが流入する独立した排気領域とみなし、各部分領域は1組の排気系により均等に排気されるものと考えて調圧制御を行う。
【0026】
図1のように4台のAPCバルブ1A~1Dが設けられている場合には、各APCバルブ1A~1Dに対応してチャンバ3の容積V0を等しい4つの部分領域RA,RB,RC,RDに区分し、各部分領域RA,RB,RC,RDが対応するAPCバルブ1A,1B,1C,1Dで個別に均等に排気されると考える。各部分領域RA,RB,RC,RDに流入するガス流量はq=Q/nと考える。ただし、nは稼働しているAPCバルブの台数であり、マスタのAPCバルブ1Aの調圧制御部121は通信ライン7を介して取得されるスレーブ情報から判断する。
【0027】
このように、4組の排気系で各部分領域RA,RB,RC,RDを均等に排気する場合には、マスタのAPCバルブ1Aと同一の開度信号θsで、スレーブの各APCバルブ1B~1Dを制御するのが好ましい。例えば、複数台のAPCバルブを独立して調圧制御させると、調圧応答の干渉により調圧応答性が劣化するという問題が生じる。しかし、本実施の形態のように複数台のAPCバルブを同一の開度信号θsで同期して調圧制御する場合には調圧応答の干渉を避けることができ、調圧応答性の向上を図ることができる。
【0028】
マスタのAPCバルブ1Aの調圧制御部121は、マスタのAPCバルブ1Aと真空ポンプ2とから成る排気系の排気速度se(=Se/n)、部分領域RAの容積v(=V0/n)に基づいて調圧動作を行う。なお、Seは、n組の排気系から成る排気系全体の排気速度である。排気速度SeおよびseはAPCバルブ1の開度θに依存するので、以下ではSe(θ)およびse(θ)のように表す場合もある。nは稼働状態にあるAPCバルブの台数であって、図1の場合にはn=4である。なお、排気速度Se(θ)およびチャンバ3の容積V0は、APCバルブ1Aの記憶部125に記憶されている。
【0029】
上述したように、スレーブのAPCバルブ1B~1Dのバルブ開閉動作は、マスタのAPCバルブ1Aから入力される開度信号θsに基づいてAPCバルブ1Aに同期するように行われる。本実施の形態では、流量qのガスが流入する容積vの部分領域RAを1組の排気系(APCバルブ1A+真空ポンプ2)で排気するものとみなして考えるので、調圧制御に用いられる排気の式は次式(1)のように表される。部分領域RAの圧力Pとしては、真空計5で計測される圧力計測値Pgが用いられる。
q=v×(dP/dt)+P×se(θ) …(1)
【0030】
図4は、APCバルブ1Aの調圧制御部121における制御を説明するブロック図である。調圧制御部121は、圧力計測値Pgと圧力目標値Psとの差分である圧力偏差ΔP(=Pg-Ps)を算出し、圧力偏差ΔPを解消する開度操作量Δθを算出する。そして、調圧制御部121は、エンコーダ111で計測された開度計測値θraに開度操作量Δθを加算した開度信号θsをバルブ駆動部122に出力する。このときの開度操作量Δθは、圧力偏差ΔPを解消するための圧力変化(-ΔP)を発生させるものであり、次式(2)のように表される。式(2)において、Kpは圧力偏差ΔPに対する比例ゲインであり、Gpはバルブの開度変化とチャンバの圧力変化との関係を表すプラントゲインである。
Δθ=(1/Pg)・(1/Gp)・Kp・ΔP …(2)
【0031】
プラントゲインGpは次式(3)で表される量である。平衡状態ではSe=Q/Pとなっているので、排気速度Seを用いて、Gp=|dSe/dθ|/Seと表すこともできる。プラントゲインの導出方法については、例えば、特開2018-112263号公報等に開示されている。なお、図4では、比例制御(P制御)を用いる場合を例に説明したが、従来の比例積分制御(PI制御)または比例積分微分制御(PID制御)でも良い。
Gp=|dP/dθ|/P …(3)
【0032】
本実施の形態では、全てのAPCバルブ1A~1Dが同一の開度信号θsで制御され、各部分領域RA~RDの圧力はチャンバ3の圧力と等しいとみなしている。そのため、式(3)からも分かるように、1組の排気系で各部分領域RA~RDを排気する場合にAPCバルブ1Aの調圧制御部121で用いられるプラントゲインは、4組の排気系でチャンバ3の全体を排気する場合のプラントゲインGpと同じものとなる。
【0033】
(校正処理の説明)
一般に、チャンバ3に1組の排気系(APCバルブ1A+真空ポンプ2)が設けられている場合には、プラントパラメータとしてチャンバ3の容積V0、プラントゲインGpおよび排気系の排気速度Seが記憶部125に記憶される。その場合、校正処理またはラーニング処理などと呼ばれる処理を実行して、容積V0、プラントゲインGpおよび排気系の排気速度Seを取得して記憶部125に記憶させるのが一般的である。本実施の形態では、上述したように4組の排気系(APCバルブ1+真空ポンプ2)の各々が同一容積を有する部分領域を排気するものとみなし、各APCバルブ1A~1Dの開度を同一の開度信号θsにより同期して制御しているので、プラントパラメータを取得する場合も、このような調整制御を前提とした校正処理を行う必要がある。
【0034】
図14は、バルブ制御部12に設けられた校正部123の詳細を示すブロック図である。校正部123は、開度生成部1231、特性取得部1232および演算部1233を備えている。開度生成部1231は、バルブ駆動部122に校正用開度信号θcを出力する。特性取得部1232は、校正用開度信号θcにより開閉制御したときに得られる圧力計測値Pgから、開度-圧力特性を取得する。演算部1233は、取得したデータに基づいてチャンバ3の容積V0、排気速度Se、およびプラントゲインGpを演算する。なお、本実施の形態では、校正処理を行う校正部123をAPCバルブ1Aのバルブ制御部12に設けたが、校正部123をAPCバルブ1A内ではなく独立した校正装置として設けて、その校正装置から各APCバルブ1A~1Dに校正信号を送信するようにしても良い。
【0035】
図5は、校正部123で実行される校正処理の一例を示すフローチャートである。また、図6は、校正処理時における開度θおよびチャンバ内圧力を示す図である。図6においてラインL31は開度計測値θra(%)を示し、ラインL32は真空計5により計測される圧力計測値Pg(Pa)を示す。
【0036】
図5のステップS1では、一定流量Qinのガスをマスフローコントローラ6からチャンバ3内に流入させる。そして、圧力計測値Pgが安定するまで待つ。所定流量Qinとしては、例えば、実際に行われるプロセス処理の代表的なガス流入量にほぼ近い流量が用いられる。そのように設定することで、実際の使用状況と同様の条件におけるプラントパラメータが取得できる。このときの流量値Qinは、半導体装置のコントローラ4からAPCバルブ1Aのバルブ制御部12に送信される。
【0037】
ステップS2では、複数の開度計測値θra (i)における圧力を取得する処理を行う。なお、i=1~N(正の整数)である。校正処理においては、校正部123から校正処理用の開度信号θsがバルブ駆動部122へ入力される。図6に示す例では、θra=100%であって圧力計測値Pgが安定している時刻t1において、開度信号θsを100%から0%へと変更する。調圧制御の場合と同様に、開度信号θsは通信ライン7を介してスレーブのAPCバルブ1B~1Dへ送信され、各バルブ駆動部122に入力される。すなわち、校正処理においても、調圧制御の場合と同様にスレーブのAPCバルブ1B~1DはマスタのAPCバルブ1Aと同一の開度信号θcにより同期して制御される。
【0038】
開度変更により圧力計測値Pgは上昇するが、圧力計測値Pgが安定してほぼ一定値となったならば、真空計5の圧力計測値Pg(1)を取得する。同様に、図6の時刻t2,t3,・・・,tNにおいて開度信号θsをθs(2),θs(3),・・・,θs(N)の順に出力し、複数の開度計測値θra (2),θra (3),・・・,θra (N)=100%に対して圧力計測値Pg(2),Pg(3),・・・,Pg(N)を取得する。
【0039】
ステップS3では、ビルドアップ法によりチャンバ3の容積V0を求める。具体的には、図6の時刻taにおいて開度信号θsを100%→0%と変更し、変更後の圧力計測値Pgを複数取得する。開度は0%なので、チャンバ3の圧力Pとガス流入量Qinと容積V0との間には次式(4)の関係が成り立つ。そのため、時刻taの後に計測される圧力計測値Pgの変化からチャンバ3の容積V0を算出することができる。
Qin=V0×(dP/dt) …(4)
【0040】
ステップS4では、APCバルブ1Aの開度θに対する排気速度Se(θ)を算出する。チャンバ3に流入するガスの流量値QinとステップS2で取得した開度θra(1)~θra (N)における圧力計測値Pg(2)~Pg(N)とに基づいて、図7に示すような開度-圧力特性(すなわち、P(θ))が得られる。4組の排気系のトータルの排気速度Se(θ)は、平衡状態では次式(5)の関係が成り立つ。図7に示す開度-圧力特性(すなわち、P(θ))と式(5)とから図8に示す開度-排気速度特性(すなわち、Se(θ))が得られる。
Se(θ)=Qin/P(θ) …(5)
【0041】
ステップS5では、図7に示す開度-圧力特性と式(3)とからプラントゲインGp(θ)を算出する。その結果、図9に示すような開度-プラントゲイン特性が得られる。ステップS6では、校正処理によって取得されたプラントパラメータ、すなわち、チャンバ3の容積V0、開度-排気速度特性(Se(θ))および開度-プラントゲイン特性(Gp(θ))を、マスタのAPCバルブ1Aの記憶部125に記憶する。記憶部125に予めプラントパラメータが記憶されている場合には、そのプラントパラメータを校正処理により取得されたプラントパラメータで書き替える。
【0042】
上述したように、バルブシステムに含まれる複数のAPCバルブ1A~1Dの各々は、外部装置との間で信号を入出力する入出力部126と、バルブ開閉動作を行うバルブ駆動部122と、チャンバ3の圧力(すなわち、圧力計測値Pg)、チャンバ3の圧力目標値Psおよび調圧制御用のプラントパラメータに基づいて複数のAPCバルブ1A~1Dに対して同一の開度信号θsを出力するAPCバルブ1Aの調圧制御部121と、外部から入力される設定指令に基づいて、開度信号θsによりバルブ駆動部122を動作させ、かつ、開度信号θsを入出力部126から出力させる第1の状態と、入出力部126から入力される開度信号θsによりバルブ駆動部122を動作させる第2の状態とのいずれかに設定する設定部124と、を備え、複数のAPCバルブ1A~1Dの内、いずれか1台のバルブ(図1ではAPCバルブ1A)はチャンバ3の圧力計測値Pgが入力されると共に前記第1の状態に設定され、残りのバルブ(図1ではAPCバルブ1B~1D)は前記第2の状態に設定される。
【0043】
このように、バルブ制御部12の調圧制御部121から出力される同一の開度信号θsによりAPCバルブ1A~1Dの開閉動作が制御されるので、複数のバルブを独立に調圧制御した場合の調圧応答の干渉を防止することができ、調圧応答性の向上を図ることができる。また、本実施の形態では、図3に示すように、同一構成のAPCバルブをAPCバルブ1A~1Dに使用し、設定部124による設定でマスタとして用いるかスレーブとして用いるかを決めているので、マスタ専用およびスレーブ専用のバルブを用いることなくバルブシステムを構成することができる。
【0044】
(変形例1)
図10は変形例1を示す図である。図1~3に示した構成ではスレーブのバルブにもAPCバルブを用いたが、調圧制御部121は少なくともマスタのAPCバルブ1Aに設けられていれば良いので、図10のような構成としても良い。
【0045】
図10に示す変形例1では、マスタのAPCバルブ1Amは、バルブ制御部12mにおいて設定部124が省略されている点が図3に示すAPCバルブ1Aと異なるが、その他の構成は図3に示すAPCバルブ1Aと同一である。スレーブのバルブには、APCバルブ1Bに代えて、外部から入力される開度信号θsによって開閉動作するスレーブ専用のバルブ1Bsが用いられている。バルブ1Bsのバルブ制御部12sでは、バルブ制御部12に設けられていた調圧制御部121,校正部123,設定部124および記憶部125が省略されている。APCバルブ1C,1Dについても、バルブ1Bsと同様の構造のバルブ1Cs,1Dsに置き換えられている。
【0046】
図10に示すバルブシステムは、マスタ専用のバルブ(APCバルブ1Am)とスレーブのバルブ(バルブ1Bs~1Ds)とが予め決められており、半導体装置のコントローラ4にはマスタのAPCバルブ1Amのバルブ制御部12mが接続される。上述の実施の形態の場合と同様に、APCバルブ1Amからはスレーブのバルブ1Bsへ開度信号θsが送信され、バルブ1Bsの開度計測値θrbがスレーブ情報としてバルブ1BsからAPCバルブ1Amへ送信される。調圧制御および校正動作は上述した実施の形態の場合と同様であるので、説明を省略する。
【0047】
変形例1では、複数のバルブは、開度信号θsを生成してスレーブ専用のバルブ1Bs~1Dsに開度信号θsを出力するバルブ制御部12mを含むAPCバルブ1Amと、開度信号θsが入力されるスレーブ専用のバルブ1Bs~1Dsとを含む。バルブ1Bs~1Dsには開度信号θsによりバルブ開閉駆動を行うバルブ駆動部122が設けられている。このように、スレーブ専用のバルブ1Bs~1Dsを用いることで、図3の構成のようにマスタおよびスレーブのバルブに同一構成のAPCバルブを使用する場合と比べてバルブ制御部12sの構成を簡略化することができ、上述した第1の実施の形態と同様の作用効果を奏しつつバルブシステムのコスト低減を図ることができる。
【0048】
-第2の実施の形態-
上述した第1の実施の形態では、マスタのAPCバルブ1Aからの指令によりAPCバルブ1B~1Dの調圧制御や校正制御が行われた。一方、以下に述べる第2の実施の形態では、バルブシステムコントローラを別に設けて、そのバルブシステムコントローラからの指令により複数台のバルブを同一の開度信号θsで同期して制御するようにした。
【0049】
図11,12は、第2の実施の形態のバルブシステムの一例を示す図である。図11は、図1の場合と同様のバルブシステムの全体構成を示す図である。チャンバ3に装着されている4台のバルブ1As~1Dsは図10に示したバルブ1Bsと同様の構成とされている。バルブ1As~1Dsは通信ライン7により接続され、バルブ1Asはバルブシステムコントローラ8に接続されている。バルブシステムコントローラ8は、真空計5で計測されたチャンバ3の圧力計測値Pgと半導体装置のコントローラ4からの圧力目標値Psとバルブ1Asの開度計測値θraとに基づいて、バルブ1As~1Dsの開閉動作を制御する。
【0050】
図12のブロック図は、図11のバルブ1As,1Bsおよびバルブシステムコントローラ8を示したものである。各バルブ1As~1Dsのバルブ制御部12sは図10に示したバルブ制御部12sと同一構成であって、バルブ駆動部122、入出力部126および警報部127を備えている。バルブシステムコントローラ8は、調圧制御部80,校正部81,記憶部82,警報部83および入出力部84を備えている。バルブシステムコントローラ8は各バルブ1As~1DsにIDを設定し、そのIDによりバルブ1As~1Dsを管理する。
【0051】
バルブシステムコントローラ8には、バルブ1As~1Dsからスレーブ情報として各バルブ1As~1Dsの開度計測値θra~θrdおよびアラーム信号等が入力される。バルブシステムコントローラ8の調圧制御部80は、そのスレーブ情報に基づいてバルブ1As~1Dsの稼働状況を判定する。警報部83はスレーブ情報に基づいてアラーム信号をコントローラ4へ出力する。記憶部82には、チャンバ3の容積V0,プラントゲインGp(θ)および排気速度Se(θ)などのプラントパラメータが記憶されている。
【0052】
調圧制御部80は図3に示した調圧制御部121と同様の調圧制御機能を有しており、受信した開度計測値θraと記憶部82に記憶されているプラントパラメータとに基づいて開度信号θsを生成し、その開度信号θsを各バルブ1As~1Dsに送信することで、上述した第1の実施の形態の場合と同様の調圧制御を行う。校正部81は図3に示した校正部123と同様の校正処理機能を有しており、同一の開度信号θsをバルブ1As~1Dsのそれぞれに送信して図5に示した校正処理を実行する。
【0053】
なお、図12に示すバルブシステムでは、チャンバ3に装着される4台のバルブを、バルブ制御部12sを備えるバルブ1As~1Dsで構成したが、図13に示すような構成としても良い。すなわち、4台のバルブを、図3に示したバルブ制御部12を備えるAPCバルブで構成しても良い。第1の実施の形態で説明した図1,3に示す構成の場合には、設定指令が半導体装置のコントローラ4から各APCバルブ1A~1Dに入力されたが、図13に示す構成の場合には、バルブシステムコントローラ8から各APCバルブ1A~1DにIDナンバーとマスタ/スレーブ設定に関する設定指令が入力される。
【0054】
各APCバルブ1B~1Dにおける設定の詳細は図3に示す構成の場合と同様であり、各APCバルブ1B~1Dの調圧制御部121および校正部123は無効化されて動作を停止する。本実施の形態の場合にはAPCバルブ1Aもスレーブに設定され、APCバルブ1Aの調圧制御部121および校正部123は無効化されて動作を停止する。そして、図12の場合と同様に、バルブシステムコントローラ8の調圧制御部80および校正部81によって、図12の場合と同様の調圧制御および校正処理が行われる。
【0055】
以上説明した第1および第2の実施の形態によれば、バルブシステムの制御装置は、複数の真空ポンプ2と複数のバルブとから成る全体排気系の排気速度Seおよび前記チャンバの容積V0を前記複数のバルブの内の稼働しているバルブの台数nで除した1台当たり排気速度se=Se/nおよび1台当たり容積v=V0/nと、チャンバ3の圧力(すなわち、圧力計測値Pg)と、チャンバ3の圧力目標値Psとに基づいて、複数のバルブに対して同一の調圧用開度信号を出力する調圧制御部を備える。
【0056】
例えば、図1に示すバルブシステムの場合には、APCバルブ1Aのバルブ制御部12がバルブシステムの制御装置として機能し、バルブ制御部12の調圧制御部121から出力される開度信号θsによりAPCバルブ1A~1Dの開閉動作が制御される。また、図11に示すバルブシステムの場合には、バルブシステムコントローラ8の調圧制御部80から出力される開度信号θsによりバルブ1As~1Dsの開閉動作が制御される。
【0057】
このように同一の開度信号θsで複数のバルブを制御することでチャンバ全体を均一な圧力状態で調圧制御を行うことが可能となり、複数のバルブを独立に調圧制御した場合の調圧応答の干渉を防止することができ、調圧応答性の向上を図ることができる。
【0058】
制御装置はさらに校正部123,81を備え、校正部123,81は、チャンバ3に一定流量Qinのガスを導入しつつ複数のバルブを同一の校正用の開度信号で開閉制御して、チャンバ3の圧力(すなわち、圧力計測値Pg)を複数の開度に対して取得する。そして、校正部123,81は、取得された圧力と開度との関係から全体排気系の排気速度Seおよびチャンバ3の容積V0を算出する。校正によりプラントの状況および調圧制御が反映されたプラントパラメータ(Se、V0)が取得されるので、より高精度の調圧制御を行うことができる。なお、調圧制御に排気速度Seから導出されるプラントゲインGpを用いる場合には、校正により得られた排気速度Seから算出されるプラントゲインGpを用いれば良い。
【0059】
図3に示す構成では、APCバルブ1Aのバルブ制御部12に設けられた校正部123は、チャンバ3に一定流量Qinのガスを導入しつつ複数のAPCバルブ1A~1Dを同一の校正用開度信号で開閉制御し、複数の開度の各々におけるチャンバ3の圧力(すなわち、圧力計測値Pg)を取得し、取得された圧力と開度との関係から、複数の真空ポンプ2と複数のAPCバルブ1A~1Dとから成る全体排気系の排気速度Seおよびチャンバ3の容積V0を算出する。そのため、同一の開度信号θsでAPCバルブ1A~1Dを調圧制御するバルブシステムに適応した容積V0および排気速度Seを取得することができ、高精度な調圧制御が可能となる。
【0060】
上記では、種々の実施の形態および変形例を説明したが、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。例えば、上述した実施形態では真空ポンプ2としてターボ分子ポンプを用いたが、真空ポンプ2はターボ分子ポンプに限らない。
【符号の説明】
【0061】
1A~1D…APCバルブ、2…真空ポンプ、3…チャンバ、4…コントローラ、5…真空計、8…バルブシステムコントローラ、11…モータ部、12…バルブ制御部、80,121…調圧制御部、81,123…校正部、124…設定部、126…入出力部、1231…開度生成部、1232…特性取得部、1233…演算部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14