(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183357
(43)【公開日】2022-12-08
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/05 20060101AFI20221201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20221201BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20221201BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20221201BHJP
A61K 31/167 20060101ALI20221201BHJP
A61K 31/704 20060101ALI20221201BHJP
A61K 31/135 20060101ALI20221201BHJP
A61K 31/245 20060101ALI20221201BHJP
【FI】
A61K31/05
A61P43/00 111
A61P17/00
A61P29/00
A61P43/00
A61K31/167
A61K31/704
A61K31/135
A61P43/00 121
A61K31/245
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022169091
(22)【出願日】2022-10-21
(62)【分割の表示】P 2018046486の分割
【原出願日】2018-03-14
(71)【出願人】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 康成
(72)【発明者】
【氏名】上谷 亜希子
(72)【発明者】
【氏名】綱井 良恵
(57)【要約】
【課題】肌表面に近い角層から、正常な状態に近づけることが可能である外用組成物を提供する。
【解決手段】(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を、KPRPタンパク質発現亢進作用を示す有効量を含む、KPRP遺伝子が介在する角層正常化機能亢進のための外用組成物を調製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を、KPRPタンパク質発現亢進作用を示す有効量を含む、KPRP遺伝子が介在する角層正常化機能亢進のための外用組成物。
【請求項2】
(A)ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、過敏肌の予防及び/又は改善用外用組成物。
【請求項3】
(A)ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、接触性皮膚炎の予防、治療及び/又は改善用外用組成物。
【請求項4】
(A)ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、角層正常化用組成物。
【請求項5】
(A)ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、KPRPタンパク質発現亢進用組成物。
【請求項6】
前記(A)成分の含有量が、組成物全量に対して、0.0001~10質量%である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
さらに、(B)ジフェンヒドラミン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、リドカイン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
外陰部、臀部及び/又は肛門部に対して適用される、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
接触性皮膚炎の起因物質が、尿、汗、便及び/又は尿ケア製品である、請求項3に記載の組成物。
【請求項10】
中高年齢者に対して適用される、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近代社会においては、人間は常に太陽光、大気汚染、活性酸素、化学物質、温度、乾燥、喫煙、皮膚過洗浄、ストレス等によって、各種刺激物質に曝されている。そのため、皮膚の状態が過敏になり、また今まで刺激を起こさなかった物質などにも過敏に反応してしまう症状が報告されている。
【0003】
上記のような刺激物質は、正常な皮膚の状態であれば影響は少ないが、特に表皮のバリア機能が損なわれている場合に過敏に反応しやすい。このため、表皮バリア機能を維持、修復できる技術の開発が求められている。
【0004】
hKPRP(human keratinocyte proline-rich protein)遺伝子は、ヒト染色体の1q21に位置することが知られている公知の遺伝子である。hKPRP遺伝子は、表皮分化複合体(EDC)を構成する1つの遺伝子であり、hKPRPタンパク質をコードする。hKPRPタンパク質は、プロリンタンパク質を約18%程度含むタンパク質であり、正常表皮の顆粒層上部で断続的に発現することが知られ、表皮バリア機能形成に関与することが示唆されている(非特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Lee WH et al., J. Invest. Dermatol., 995-1000, 2005
【非特許文献2】Kong W et al., J. Biol. Chem. 22781-6, 2003
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、種々の刺激に対し過敏になっている皮膚の状態を改善し、肌表面に近い角層から、正常な状態に近づけることが可能となる薬剤は報告されていない状況である。
【0007】
特に、KPRPタンパク質の発現を亢進させることにより、KPRP遺伝子が介在する角層正常化をもたらす成分については、十分に検証された報告はない。
【0008】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、KPRPタンパク質の発現を顕著に亢進させる成分を見出し、KPRP遺伝子が介在する角層正常化をもたらす外用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種が、表皮角化細胞(ケラチノサイト)でのKPRPタンパク質発現に影響を与え、そのタンパク質産生を促進することが見出された。すなわち、ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種が、KPRP遺伝子が介在する角層正常化をもたらし得ることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記に掲げる組成物を提供する。
項1.
(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を、KPRPタンパク質発現亢進作用を示す有効量を含む、KPRP遺伝子が介在する角層正常化機能亢進のための外用組成物。
項2.
(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、過敏肌の予防及び/又は改善用外用組成物。
項3.
(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、接触性皮膚炎の予防、治療及び/又は改善用外用組成物。
項4.
(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、角層正常化用組成物。
項5.
(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、KPRP発現亢進用組成物。
項6.
前記(A)成分の含有量が、組成物全量に対して、0.0001~10質量%である、項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
項7.
さらに、(B)ジフェンヒドラミン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、リドカイン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
項8.
外陰部、臀部及び/又は肛門部に対して適用される、項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
項9.
接触性皮膚炎の起因物質が、尿、汗、便及び/又は尿ケア製品である、項3に記載の組成物。
項10.
中高年齢者に対して適用される、項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を含有する組成物を皮膚等に適用することにより、表皮バリア機能形成に関与することが示唆されているKPRPタンパク質をコードする、KPRP遺伝子の発現を促進させ、KPRPタンパク質の産生量を増加させることが出来る。よって、本発明により、表皮バリアの機能形成が促進され、種々の刺激に対し過敏になっている皮膚の状態を改善し、肌表面に近い角層から、正常な状態に近づけることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の外用組成物は、(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである。
【0013】
[(A)成分]
(A)成分のうち、ウフェナマート(フルフェナム酸ブチルとも言う)は、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)の1種として公知の成分である。ウフェナマートは、ステロイド系抗炎症剤と比較して、安全性が高いことが知られており、過敏に反応しやすい皮膚やデリケートな部位へも長期的に連用しやすい。
【0014】
(A)成分のうち、イソプロピルメチルフェノールは、フェノール系抗菌剤の一つであり、高い安定性や安全性を有し、さらにカビや細菌に広く効果を発揮するものである。イソプロピルメチルフェノールは、その安全性の高さから、過敏に反応しやすい皮膚やデリケートな部位へも長期的に連用しやすい。
【0015】
これらの(A)成分は、合成して用いてもよく、市販品を用いてもよい。また、これらの(A)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明の組成物において、(A)成分の含有量は、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。限定はされないが、例えば、(A)成分の総含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.0001質量%以上であり、より好ましくは0.001質量%以上、さらに好ましくは0.005質量%以上、特に好ましくは0.01質量%以上、さらに特に好ましくは0.05質量%以上、最も好ましくは0.1質量%以上である。また、(A)成分の総含有量は、組成物全量に対して、好ましくは10質量%以下であり、より好ましくは8質量%以下、特に好ましくは、6重量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。(A)成分の総含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.0001質量%~10質量%であり、より好ましくは0.001質量%~8質量%、更に好ましくは0.01質量%~6質量%、特に好ましくは0.1質量%~5質量%である。
【0017】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、ウフェナマート及び/又はその塩を(A)成分として含有する場合に、ウフェナマート及び/又はその塩の単独の含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.1質量%~10質量%であり、より好ましくは1質量%~8質量%、更に好ましくは3質量%~6質量%、特に好ましくは4質量%~5.5質量%、最も好ましくは5質量%である。
【0018】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、イソプロピルメチルフェノールを(A)成分として含有する場合に、イソプロピルメチルフェノールの単独の含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.005質量%~5質量%であり、より好ましくは0.01質量%~2質量%、更に好ましくは0.05質量%~1質量%である。
【0019】
[(B)成分]
本発明の組成物は、さらに、(B)ジフェンヒドラミン、グリチルリチン酸、グリチルレチン酸、グリチルレチン酸ステアリル、リドカイン及びそれらの塩からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。これらの(B)成分は、角層の正常化が求められる部位へ適用されることにより、皮膚状態の改善に作用し得る。
【0020】
(B)成分の塩としては、生理学的に許容され得る塩であれば特に制限されず、例えば、無機塩基との塩[例えば、アンモニウム塩;アルカリ金属(ナトリウム、カリウム等)、アルカリ土類金属(カルシウム、マグネシウム等)、アルミニウム等の金属との塩等];有機塩基との塩(例えば、メチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、モルホリン、ピペラジン、ピロリジン、トリピリジン、ピコリン等の有機アミンとの塩等);無機酸塩(例えば、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩等);有機酸塩[例えば、モノカルボン酸塩(酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、酪酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩等)、多価カルボン酸塩(フマル酸塩、マレイン酸塩、コハク酸塩、マロン酸塩等)、オキシカルボン酸塩(乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩等)、有機スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩、トシル酸塩等)等]等が挙げられる。これらの塩の中でも、好ましくは無機塩基との塩及び/又は有機塩基との塩、より好ましくは無機塩基との塩、更に好ましくは塩酸塩、アルカリ金属塩及び/又はアンモニウム塩、特に好ましくはカリウム塩、ナトリウム塩及び/又はアンモニウム塩が挙げられる。
【0021】
(B)成分の塩としては、限定はされないが、ジフェンヒドラミン塩酸塩、グリチルリチン酸二カリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、リドカイン塩酸塩が好適に用いられる。
【0022】
これらの(B)成分は、合成して用いてもよく、市販品を用いてもよい。また、これらの(B)成分は、1種単独で用いてもよく、2種以上を任意に組み合わせて用いてもよい。
【0023】
本発明の組成物において、(B)成分の含有量は、(B)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定される。限定はされないが、例えば、(B)成分の総含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上、特に好ましくは0.1質量%以上である。また、(B)成分の総含有量は、組成物全量に対して、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは2質量%以下、最も好ましくは1質量%以下である。
(B)成分の総含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.005質量%~20質量%であり、より好ましくは0.01質量%~10質量%、更に好ましくは0.05質量%~5質量%、特に好ましくは0.1質量%~4質量%である。
【0024】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩を(B)成分として含有する場合に、ジフェンヒドラミン及び/又はその塩の単独の含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.05質量%~10質量%であり、より好ましくは0.1質量%~5質量%、更に好ましくは0.5質量%~3質量%、特に好ましくは1質量%~2質量%である。
【0025】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、グリチルリチン酸及び/又はその塩を(B)成分として含有する場合に、グリチルリチン酸及び/又はその塩の単独の含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.005質量%~10質量%であり、より好ましくは0.01質量%~5質量%、更に好ましくは0.05質量%~2質量%、特に好ましくは0.1質量%~1質量%である。
【0026】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、グリチルレチン酸及び/又はその塩を(B)成分として含有する場合に、グリチルレチン酸及び/又はその塩の単独の含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.005質量%~10質量%であり、より好ましくは0.01質量%~5質量%、更に好ましくは0.05質量%~1質量%、特に好ましくは0.1質量%~0.5質量%である。
【0027】
限定はされないが、好ましい態様では、例えば、リドカイン及び/又はその塩を(B)成分として含有する場合に、リドカイン及び/又はその塩の単独の含有量は、組成物全量に対して、好ましくは0.005質量%~10質量%であり、より好ましくは0.01質量%~5質量%、更に好ましくは0.05質量%~3質量%、特に好ましくは0.1質量%~2質量%である。
【0028】
本発明の組成物において、本発明による効果をより顕著に奏する観点から、(A)成分に対する(B)成分の配合比率は、例えば、(A)成分の総含有量1質量部に対して、(B)成分の総含有量が0.001~500質量部とすることができ、0.005~300質量部、0.01~100質量部、0.02~50質量部とすることも可能である。
【0029】
[用途]
一つの実施態様において、本発明の組成物は、KPRP遺伝子が介在する角層正常化機能亢進のために用いられる。本発明の組成物は、KPRPタンパク質発現亢進作用が新たに見出された(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を含有するため、適用部位の表皮顆粒層上部でKPRPタンパク質の産生量を増加させ、角層の正常化機能を亢進することが可能となる。
【0030】
本明細書において、皮膚の角層(角質細胞層ともいう)とは、皮膚の最外層に位置して、表皮角化細胞が角化し、扁平な角化細胞が重なった層をいう。表皮は、最深部から順に基底層、有棘層、顆粒層、及び最上部の角層に至るまでの4層に分類される。基底層を構成する基底細胞が分裂し、成熟するに従って上方の層に移って行く。基底細胞が分裂を起こして、角層まで移行し、脱落するまでのターンオーバーにかかる期間は約45日と考えられている。
【0031】
顆粒層には、球形のオドランド小体が分布しており、その内容物であるセラミドなどの脂質を放出することにより、細胞間脂質を形成し、角層の角化及び/又は保湿の点から重要な層である。一つの実施態様において、本発明の組成物は、主に顆粒層の上部に働きかけ、KPRPタンパク質の発現を亢進させることができ、角層の角化を正常に促すことが可能となる。よって、本発明の組成物は、角層正常化用途に好適に用いられる。
【0032】
正常な角層は、周辺帯と呼ばれる構造が存在し、太陽光、大気汚染、活性酸素、化学物質、温度、乾燥、喫煙、皮膚過洗浄、ストレス等の外界からの物理的及び/又は化学的刺激に対して安定である。しかし、角層に異常を来し、その構造に乱れが生じると、上記の物理的及び/又は化学的刺激に対して過敏に反応してしまうようになる。一つの実施態様において、本発明の組成物は、KPRPタンパク質発現亢進作用が新たに見出された(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を含有するため、皮膚を内側から正常化し、上記の物理的及び/又は化学的刺激に対して過敏に反応してしまう肌状態(過敏肌ともいう)を予防及び/又は改善することが可能となる。
【0033】
また、上記の作用から、例えば、尿(尿中のアンモニア)、汗、便、経血、尿パッド、生理用ナプキン、おむつ等、なかでも特には、尿、尿パッド、汗、便等が刺激になって発生する、デリケート部位における接触性皮膚炎等においても、角層の角化及び又は保湿機能を高めて角層を正常化することによって、接触性皮膚炎による痛痒さや、しみるような痒さなどの症状を改善することが出来る。よって、一つの実施態様において、本発明の組成物は、KPRPタンパク質発現亢進作用が新たに見出された(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を含有するため、接触性皮膚炎の予防、治療及び/又は改善用途に好適に用いられる。特に高齢者においては、元々の皮膚の状態において角層の構造に乱れが生じていることが多く、上記の症状(尿、汗、便及び/又は尿パッド等の尿ケア製品に起因する刺激)が特に顕著に発生する可能性があるが、そのような状態の皮膚においても、症状を速やかに改善することが可能となる。本明細書において、尿ケア製品には、尿パッド、尿ケアライナー、尿ケアパンツ、おむつ等の公知の製品が含まれ、男性用であってもよく、女性用であってもよい。
【0034】
他の実施態様において、本発明の組成物は、角層の構造に乱れを生じる状態、症状及び/又は疾患に対して好適に用いられる。
【0035】
白癬菌(トリコフィトン属真菌)が関与する状態、症状及び/又は疾患(水虫やたむし等)では、角層において白癬菌が増殖し、角層に異常を来す。典型的には、足裏の皮膚(角層)に白癬菌が感染し、角層が増殖・肥厚して、皮膚が厚く、固くなることがある。よって、一つの実施態様において、本発明の組成物は、白癬菌が関与する状態、症状及び/又は疾患の予防、治療及び/又は改善用途に好適に用いられる。限定はされないが、角質増殖型白癬に対しては、本発明の組成物は、主に顆粒層の上部に働きかけ、KPRPタンパク質の発現を亢進させることができ、角層の角化を正常に促すことが可能となる。
【0036】
アクネ菌(プロピオバクテリウム・アクネス)、黄色ブドウ球菌、マラセチア属真菌が関与する状態、症状及び/又は疾患(ニキビ、癜風、マラセチア毛包炎、脂漏性湿疹(脂漏性皮膚炎とも言う)、脂漏性角化症、アトピー性皮膚炎、外耳炎等)では、アクネ菌やマラセチア属真菌が増殖し、角層に異常を来す。よって、一つの実施態様において、本発明の組成物は、アクネ菌(プロピオバクテリウム・アクネス)及び/又はマラセチア属真菌が関与する状態、症状及び/又は疾患の予防、治療及び/又は改善用途に好適に用いられる。ニキビでは、炎症を生じて所謂赤ニキビを生じる前の初期の段階から角質の肥厚が生じることがある。限定はされないが、本発明の組成物は、角層が肥厚し、毛穴が塞がった初期ニキビ(白ニキビ)の予防、治療及び/又は改善用途に好適に用いられる。また、限定はされないが、ニキビに炎症を生じた場合、角層の構造の乱れは一層悪化することとなるため、本発明の組成物は、炎症を生じたニキビ(赤ニキビ)の予防、治療及び/又は改善用途に好適に用いられる。
【0037】
他の実施態様において、本発明の組成物は、角層に炎症を生じる状態、症状及び/又は疾患に対して好適に用いられる。
【0038】
[適用部位]
本発明の組成物が適用される部位は、皮膚等の角層の異常が問題となる部位であれば特に制限されず、例えば、顔、首元、胸元、背中、腕、肘、手、腋窩部、腹部、外陰部、臀部、肛門部、脚、指、足先及び足裏からなる群より選択される少なくとも1種であり得る。角層の異常が問題となりやすい部位としては、衣服着用時に開放部が無く、高温、多湿(蒸れ)になりやすい観点から、背中、上腕、腋窩部、腹部、外陰部、臀部、肛門部、脚、足の指及び足裏からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、背中、上腕、肘、外陰部、臀部、肛門部、足の指及び足裏からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。また、角層の異常が問題となりやすい部位としては、衣服、尿、汗、便、尿ケア製品等への接触による物理的及び/又は化学的刺激を受けやすいとの別の観点から、首元、胸元、背中、腕、肘、腹部、外陰部、臀部、肛門部、脚、足先及び足裏からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、デリケートな部位である、外陰部、臀部及び肛門部からなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい。また、本発明の組成物に含有される(A)成分は安全性が高いため、デリケートな子どもや赤ちゃんの薄い皮膚に対しても用いられ得る。
【0039】
[適用対象者]
本発明の組成物が適用される対象者は、角層の異常が問題となる可能性があれば、特に制限されないが、角層の乱れを生じやすい年齢層であることが好ましく、おむつによるお尻かぶれが生じやすい新生児(生後28日まで)、乳児(生後28日以降、1歳未満)、幼児(1歳から就学前まで)であってもよく、ニキビを生じやすい思春期(10歳頃から18歳頃)、大人ニキビを生じやすい青年期(15歳頃から30歳頃)であってもよく、尿等によるかぶれを生じやすい中年齢者(45歳頃以上55歳未満)や高年齢者(55歳以上)であってもよい。衣服、尿、汗、便、尿ケア製品等への接触による物理的及び/又は化学的刺激を受けやすい観点から、本発明の組成物は、中高年齢者(45歳頃以上)に対して適用されることが好ましい。
【0040】
[pH]
本発明の組成物のpHは、(A)成分の種類、他の配合成分の種類及び含有量、製剤形態、使用方法等に応じて適宜設定され、生理学的又は薬学的に許容できる範囲であれば制限されないが、例えば、pH2~9とすることができる。本発明の効果を安定的に発揮する観点から、本発明の組成物のpHは、好ましくは2~9.5、より好ましくは3~9、更により好ましくは4~8.5、更により好ましくは4.5~8、更により好ましくは5.5~7.5とすることができる。
【0041】
[剤形]
本発明の組成物は、医薬品、医薬部外品又は化粧品として公知の形態であれば、特に限定されないが、例えば、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、パウダー剤、不織布等のシートに本発明の組成物を含浸させたシート剤等の形態により、公知の方法で製剤化することができる。
【0042】
液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、ローション剤等の形態で本発明の組成物を液状又は半固形状に製剤化した場合、限定はされないが、例えば、ノズル付き容器に収容することにより、本発明の組成物を、患部に直接的に塗布することができる。ノズルの先端にロール又はボール等の回転体を用いることにより、本発明の組成物を患部に均一に塗布するよう設計することも可能である。患部に本発明の組成物を塗布した後に、不織布や指等により、塗り拡げて用いることも可能である。
【0043】
本発明の組成物を適用する際には、手の届きにくい患部にも適用しやすいように、スプレー型容器を用いることも可能である。スプレー型容器は、逆さまにしても噴霧が可能なミストタイプのスプレー型容器を用いることも可能である。スプレー型容器の形状は特に制限されないが、例えば、ポンプ式スプレーやトリガー式スプレー、エアゾール式スプレー等の公知の形状を用いることが可能である。ポンプ式スプレーでは、例えば、ポンプ式ノズルを容器に装着した形状とすることができ、汎用性や携帯性に優れる。トリガー式スプレーでは、例えば、ピストル型のノズル付噴霧器を容器に装着した形状とすることができ、小さな力で噴霧力を得られる。エアゾール式スプレーでは、例えば、炭酸ガス、窒素ガス、酸素ガス、フロンガス、液化石油ガス(LPG)ジメチルエーテル(DME)等の噴射剤を充填した容器形状とすることができ、より細かな液滴を噴霧することができるようになる。スプレー型容器の材質は特に制限されないが、例えば、ポリプロピレンやポリエチレン等の公知のプラスチック素材を用いることが可能である。
【0044】
本発明の組成物の別の態様として、泡状に吐出されるフォーム剤(泡状製剤ともいう)として適用することも可能である。フォーム剤は、例えば、過敏肌の状態によっては、塗布に伴う物理的刺激を低減させることが可能となり、また介護等で使用する際にも介護する側のハンドリングが容易となることから、好ましい。フォーム剤は、エアゾール式容器や、ポンプフォーマーなど、公知の形状を用いて提供することが出来る。
【0045】
[使用方法]
本発明の組成物の使用方法は、適用する対象者の状態、適用部位の状態、年齢などによって適宜変更され得るが、例えば、1日数回(例えば、約1回~5回、好ましくは2回~3回)、適量を適用部位の皮膚に塗布することで使用することができる。塗布期間は、適用する対象者の状態、適用部位の状態、年齢などによって適宜変更され得るが、例えば、約1~14日間、好ましくは約3~14日間とすることができる。
【0046】
本発明の組成物は、公知の方法により製造することができる。必要に応じて、滅菌工程を含めることができる。
【0047】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、医薬品、医薬部外品、化粧品等として用いられ得る、公知の基剤又は担体と共に混合して製剤化することができる。その他に、本発明の組成物には、例えば、界面活性剤、油分、アルコール類、増粘剤、防腐剤、抗酸化剤、酸化防止剤、保存剤、キレート剤、pH調整剤、安定化剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、無痛化剤、分散剤、香料、着色剤、色素、水等の添加剤を配合することができる。これらの添加剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0048】
基剤又は担体としては、流動パラフィン、スクワラン、ゲル化炭化水素(プラスチベースなど)、オゾケライト、α-オレフィンオリゴマー、軽質流動パラフィンのような炭化水素;メチルポリシロキサン、架橋型メチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、環状シリコーン、アルキル変性シリコーン、架橋型アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、架橋型ポリエーテル変性シリコーン、架橋型アルキルポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリエーテル変性シリコーン、シリコーン・アルキル鎖共変性ポリグリセリン変性シリコーン、ポリエーテル変性分岐シリコーン、ポリグリセリン変性分岐シリコーン、アクリルシリコン、フェニル変性シリコーン、シリコーンレジンのようなシリコーン油;ポリエチレングリコール;ジオキサン;ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリットのようなエステル類;エタノール、イソプロパノールのような低級アルコール;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルのようなグリコールエーテル;ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、グリセリン、イソプレングリコールなどの多価アルコール;水などの水系基剤などが挙げられる。本発明の効果を安定的に発揮する観点から、基剤又は担体は、1,3-ブチレングリコール及び/又はグリセリンが好ましい。
【0049】
基剤又は担体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用できる。
【0050】
界面活性剤としては、例えば、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ペンタ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ-2-エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタンのようなソルビタン脂肪酸エステル類;モノステアリン酸プロピレングリコールのようなプロピレングリコール脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40(HCO-40)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50(HCO-50)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60(HCO-60)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油80などの硬化ヒマシ油誘導体;モノラウリル酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート20)、モノステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタン(ポリソルベート80)、イソステアリン酸ポリオキシエチレン(20)ソルビタンのようなポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類;ポリオキシエチレンモノヤシ油脂肪酸グリセリル;モノステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸のようなグリセリン脂肪酸類;グリセリンアルキルエーテル;アルキルグルコシド;ポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレン(9)ラウリルエーテルのようなポリオキシアルキレンアルキルエーテル;ステアリルアミン、オレイルアミンのようなアミン類;ポリオキシエチレン・メチルポリシロキサン共重合体、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、PEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコンのようなシリコーン系界面活性剤;ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、ココイルグルタミン酸塩、ヤシ油メチルアラニン塩、アシルメチルタウリン塩、ポリオキシエチレンラウリル硫酸塩のようなアニオン性界面活性剤、ラウリルジアミノエチルグリシン塩、ヤシ油脂肪酸ベタイン塩などの両性界面活性剤、ポリオキシエチレンラウリルアルコールエーテルなどの非イオン性界面活性剤などが挙げられる。なお、本明細書において、ポリオキシエチレンは「POE」とも記載され、括弧内の数値はエチレンオキシドの付加モル数を示す。
【0051】
油分としては、天然動植物油脂類、炭化水素油、エステル油、シリコーン油、高級アルコール、高級脂肪酸、動植物や合成の精油などが挙げられる。
【0052】
天然動植物油脂類としては、例えば、アボガド油、アマニ油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、牛脂、キリ油、小麦胚芽油、ゴマ油、米胚芽油、米糠油、サフラワー油、大豆油、月見草油、ツバキ油、トウモロコシ油、ナタネ油、馬脂、パーシック油、パーム油、パーム核油、ヒマシ油、ヒマワリ油、豚脂、ブドウ油、ホホバ油、マカデミアナッツ油、ミンク油、綿実油、モクロウ、ヤシ油、硬化ヤシ油、落花生油、ラノリン、卵黄油、ローズヒップ油等が挙げられる。
【0053】
炭化水素油としては、パラフィン系炭化水素、オレフィン系炭化水素が用いられ、例えば、スクワラン、スクワレン、セレシン、パラフィン、プリスタン、マイクロクリスタリンワックス、流動パラフィン、ワセリン等が挙げられる。
【0054】
エステル油としては、合成エステル類、高級アルコールと高級脂肪酸とのエステル類が用いられ、例えば、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸2-ヘキシルデシル、アジピン酸ジ-2-ヘプチルウンデシル、イソステアリン酸イソステアリル、トリイソステアリン酸トリメチロールプロパン、2-エチルヘキサン酸セチル、ジ-2-エチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、トリ-2-エチルヘキサン酸トリメチロールプロパン、テトラ-2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリトール、オクタン酸セチル、オレイン酸オレイル、オレイン酸オクチルドデシル、オレイン酸デシル、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、コハク酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸イソセチル、ステアリン酸ブチル、セバシン酸ジイソプロピル、乳酸セチル、乳酸テトラデシル、ミリスチン酸イソプリピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、ミリスチン酸セチル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸オクチル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、パルミチン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-ヘプチルウンデシル、12-ヒドロキシステアリン酸コレステリル、オレイン酸フィトステリル、リンゴ酸ジイソステアリル、パラメトキシケイ皮酸エステル、テトラロジン酸ペンタエリスリット、中鎖脂肪酸トリグリセリド等が挙げられる。
【0055】
シリコーン油としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、高重合メチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、オクタメチルシクロペンタシロキサン、デカメチルシクロヘキサシロキサン、ステアロキシシリコーン等の高級アルコキシ変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン等が挙げられる。
【0056】
高級アルコールとしては、例えば、オクチルドデカノール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、ステアリルアルコール、セタノール、ベヘニルアルコール等が挙げられる。
【0057】
高級脂肪酸としては、飽和又は不飽和の直鎖もしくは分岐鎖の炭素数12~22の脂肪酸を用いることができ、例えば、イソステアリン酸、オキシステアリン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ベヘニン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、ラノリン酸、リノール酸、リノレン酸等が挙げられる。
【0058】
増粘剤としては、例えば、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、キサンタンガム、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、疎水化ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、アクリル酸メタクリル酸アルキル共重合体、ポリエチレングリコール、ベントナイト、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマーなどが挙げられる。
【0059】
防腐剤の好適な例としては、例えばパラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸などが挙げられる。
【0060】
抗酸化剤の好適な例としては、例えば亜硫酸塩、アスコルビン酸などが挙げられる。
【0061】
酸化防止剤としては、ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール、ソルビン酸、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸、エリソルビン酸、L-システイン塩酸塩などが挙げられる。
【0062】
保存剤としては、安息香酸、安息香酸ナトリウム、デヒドロ酢酸、デヒドロ酢酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸イソブチル、パラオキシ安息香酸イソプロピル、パラオキシ安息香酸ブチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル、パラオキシ安息香酸ベンジル、パラオキシ安息香酸メチル、フェノキシエタノールなどが挙げられる。
【0063】
キレート剤としては、EDTA・2ナトリウム塩、EDTA・カルシウム・2ナトリウム塩などが挙げられる。本発明の効果を顕著に奏する観点から、本発明の背中用にきび予防及び/又は治療薬は、EDTA・2ナトリウム塩をさらに含むことが好ましい。
【0064】
pH調整剤としては、無機酸(塩酸、硫酸など)、有機酸(乳酸、乳酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸ナトリウムなど)、無機塩基(水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、有機塩基(トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミンなど)などが挙げられる。
【0065】
安定化剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソールなどが挙げられる。
【0066】
溶解補助剤の好適な例としては、例えばポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0067】
懸濁化剤の好適な例としては、例えばステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリンなどの界面活性剤;例えばポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースなどの親水性高分子などが挙げられる。
【0068】
等張化剤の好適な例としては、例えば塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどが挙げられる。
【0069】
緩衝剤の好適な例としては、例えばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩などの緩衝液などが挙げられる。
【0070】
無痛化剤の好適な例としては、例えばベンジルアルコールなどが挙げられる。
【0071】
分散剤としては、例えば、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸架橋コポリマー、有機酸等が挙げられる。
【0072】
着色剤としては、無機顔料、天然色素などが挙げられる。
【0073】
本発明の組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の有効成分を含むことができる。有効成分の具体例としては、例えば、保湿成分、パール光沢付与剤、コンディショニング剤、スクラブ剤、血行促進成分、収斂成分、紫外線吸収成分、紫外線散乱成分、洗浄成分、抗菌成分、抗炎症剤、ビタミン類、ペプチド又はその誘導体、アミノ酸又はその誘導体、細胞賦活化成分などが挙げられる。
【0074】
保湿成分としては、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ジグリセリンのような多価アルコール;トレハロース、キシリトール、オリゴ糖のような糖類;ヒアルロン酸ナトリウム、ヘパリン類似物質、コンドロイチン硫酸ナトリウム、コラーゲン、エラスチン、ケラチン、キチン、キトサンのような高分子化合物;グリシン、アスパラギン酸、アルギニンのようなアミノ酸;乳酸ナトリウム、尿素、ピロリドンカルボン酸ナトリウムのような天然保湿因子;セラミド、コレステロール、リン脂質のような脂質;カミツレエキス、ハマメリスエキス、チャエキス、シソエキスのような植物抽出エキスなどが挙げられる。本発明の効果を安定的に発揮する観点から、保湿成分は、グリセリン及び/又は1,3-ブチレングリコールが好ましい。
【0075】
パール光沢付与剤としては、例えば、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸エチレングリコール、ジステアリン酸トリエチレングリコールなどが挙げられる。
【0076】
コンディショニング剤としては、例えば、カチオン化セルロース、カチオン化澱粉、カチオン化フェヌグリークガム、カチオン化グアーガム、カチオン化タラガム、カチオン化ローカストビーンガム、カチオン化キサンタンガム、ジアリル四級アンモニウム塩/アクリルアミド共重合物、ポリクオタニウム、ビニルイミダゾリウムトリクロライド/ビニルピロリドン共重合体、ヒドロキシエチルセルロース/ジメチルジアリルアンモニウムクロライド共重合体、ビニルピロリドン/四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート共重合体、ポリビニルピロリドン/アルキルアミノアクリレート/ビニルカプロラクタム共重合体、ビニルピロリドン/メタクリルアミドプロピル塩化トリメチルアンモニウム共重合体、アルキルアクリルアミド/アクリレート/アルキルアミノアルキルアクリルアミド/ポリエチレングリコールメタクリレート共重合体、アジピン酸/ジメチルアミノヒドロキシプロピルエチレントリアミン共重合体等が挙げられる。
【0077】
スクラブ剤としては、例えば、アプリコット核粉末、アーモンド殻粉末、アンズ核粉末、塩化ナトリウム粒、オリーブ核粉末、海水乾燥物粒、キャンデリラワックス、くるみ殻粉末、さくらんぼ核粉末、サンゴ粉末、炭粉末、はしばみ殻粉末、ポリエチレン末、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0078】
血行促進剤としては、例えば、アセチルコリン、イクタモール、カフェイン、カプサイシン、カンタリスチンキ、ガンマーオリザノール、ショオウキョウチンキ、ジンゲロン、セファランチン、センブリエキス、タンニン酸、トウガラシチンキ、トラゾリン、ニコチン酸トコフェロール、ニコチン酸ベンジルエステル等が挙げられる。
【0079】
収斂成分としては、硫酸亜鉛、ヒドロキシアルミニウム、塩化アルミニウム、スルホ石炭酸亜鉛及びタンニン酸等が挙げられる。
【0080】
紫外線吸収成分としては、オクチルトリアゾン、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸オクチル、パラメトキシケイ皮酸2-エチルヘキシル、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタン、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸、メトキシケイヒ酸オクチル、メトキシケイヒ酸エチルヘキシルなどが挙げられる。
【0081】
紫外線散乱成分としては、含水ケイ酸、ケイ酸亜鉛、ケイ酸セリウム、ケイ酸チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化チタン、酸化鉄、無水ケイ酸等の無機化合物、それらの無機化合物を含水ケイ酸、水酸化アルミニウム、マイカやタルク等の無機粉体で被覆したり、ポリアミド、ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ナイロン等の樹脂粉体に複合化したもの、さらにシリコン油や脂肪酸アルミニウム塩等で処理したものなどが挙げられる。
【0082】
洗浄成分としては、ラウリン酸カリウム、ミリスチン酸カリウム、パルミチン酸カリウム又はステアリン酸カリウムなどのアルカリ金属塩、アルカノールアミド塩又はアミノ酸塩などの石けん類、ココイルグルタミン酸ナトリウム、ココイルメチルタウリンナトリウムなどのアミノ酸系界面活性剤、ラウレス硫酸ナトリウムなどのエーテル硫酸エステル塩、ラウリルエーテル酢酸ナトリウムなどのエーテルカルボン酸塩、アルキススルホコハク酸エステルナトリウムなどのスルホコハク酸エステル塩、ヤシ油脂肪酸モノエタノールアミド、ヤシ油脂肪酸時エタノールアミドなどの脂肪酸アルカノールアミド、ラウリルリン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸ナトリウムなどのモノアルキルリン酸エステル塩、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ラウリルヒドロキシスルホベタイン及びラウロイルアミドエチルヒドロキシエチルカルボキシメチルベタインヒドロキシプロピルリン酸ナトリウムなどのベタイン型両性界面活性剤、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウムなどのアミノ酸型両性界面活性剤などが挙げられる。
【0083】
抗菌成分としては、クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、アクリノール、エタノール、塩化ベンゼトニウム、クレゾール、グルコン酸及びその誘導体、ポピドンヨード、ヨウ化カリウム、ヨウ素、トリクロカルバン、トリクロサン、感光素101号、感光素201号、パラベン、フェノキシエタノール、1,2-ペンタンジオール、塩酸アルキルジアミノグリシン、ピロクトオラミン、ミコナゾールなどが挙げられる。
【0084】
抗炎症剤としては、他の非ステロイド系抗炎症剤を更に配合することも可能であり、アラントイン又はその誘導体;インドメタシン;イブプロフェン;イブプロフェンピコノール;ブフェキサマク;フルフェナム酸ブチル;ベンダザック;ピロキシカム;ケトプロフェン;フェルビナク;サリチル酸メチルおよびサリチル酸グリコール等のサリチル酸誘導体;メントール;カンフルなどが挙げられる。
【0085】
ビタミン類としては、トコフェロール酢酸エステル、dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロール、コハク酸dl-α-トコフェロールカルシウム等のビタミンE類;リボフラビン、フラビンモノヌクレオチド、フラビンアデニンジヌクレオチド、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビンテトラ酪酸エステル、リボフラビン5’-リン酸エステルナトリウム、リボフラビンテトラニコチン酸エステル等のビタミンB2類;ニコチン酸dl-α-トコフェロール、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸メチル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、ニコチン酸1-(4-メチルフェニル)エチル等のニコチン酸類;アスコルビゲン-A、アスコルビン酸ステアリン酸エステル、アスコルビン酸パルミチン酸エステル、ジパルミチン酸L-アスコルビルなどのビタミンC類;メチルヘスペリジン、エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロールなどのビタミンD類;フィロキノン、ファルノキノン等のビタミンK類、γ-オリザノール、ジベンゾイルチアミン、ジベンゾイルチアミン塩酸塩;チアミン塩酸塩、チアミンセチル塩酸塩、チアミンチオシアン酸塩、チアミンラウリル塩酸塩、チアミン硝酸塩、チアミンモノリン酸塩、チアミンリジン塩、チアミントリリン酸塩、チアミンモノリン酸エステルリン酸塩、チアミンモノリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル、チアミンジリン酸エステル塩酸塩、チアミントリリン酸エステル、チアミントリリン酸エステルモノリン酸塩等のビタミンB1類;塩酸ピリドキシン、酢酸ピリドキシン、塩酸ピリドキサール、5’-リン酸ピリドキサール、塩酸ピリドキサミン等のビタミンB6類;シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、デオキシアデノシルコバラミン等のビタミンB12類;葉酸、プテロイルグルタミン酸等の葉酸類;ニコチン酸、ニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテニルアルコール(パンテノール)、D-パンテサイン、D-パンテチン、補酵素A、パントテニルエチルエーテル等のパントテン酸類;ビオチン、ビオチシン等のビオチン類;アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステルナトリウム、アスコルビン酸リン酸エステルマグネシウム等のアスコルビン酸誘導体であるビタミンC類;カルニチン、フェルラ酸、α-リポ酸、オロット酸等のビタミン様作用因子などが挙げられる。
【0086】
ペプチド又はその誘導体としては、ケラチン分解ペプチド、加水分解ケラチン、コラーゲン、魚由来コラーゲン、アテロコラーゲン、ゼラチン、エラスチン、エラスチン分解ペプチド、コラーゲン分解ペプチド、加水分解コラーゲン、塩化ヒドロキシプロピルアンモニウム加水分解コラーゲン、エラスチン分解ペプチド、コンキオリン分解ペプチド、加水分解コンキオリン、シルク蛋白分解ペプチド、加水分解シルク、ラウロイル加水分解シルクナトリウム、大豆蛋白分解ペプチド、加水分解大豆蛋白、小麦蛋白、小麦蛋白分解ペプチド、加水分解小麦蛋白、カゼイン分解ペプチド、アシル化ペプチド(パルミトイルオリゴペプチド、パルミトイルペンタペプチド、パルミトイルテトラペプチド等)などが挙げられる。
【0087】
アミノ酸又はその誘導体としては、ベタイン(トリメチルグリシン)、プロリン、ヒドロキシプロリン、アルギニン、リジン、セリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、β-アラニン、スレオニン、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、シスチン、メチオニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、ヒスチジン、タウリン、γ-アミノ酪酸、γ-アミノ-β-ヒドロキシ酪酸、カルニチン、カルノシン、クレアチン等が挙げられる。
【0088】
細胞賦活化成分としては、γ-アミノ酪酸、ε-アミノカプロン酸などのアミノ酸類、レチノール、チアミン、リボフラビン、塩酸ピリドキシン、パントテン酸類などのビタミン類、グリコール酸、乳酸などのα-ヒドロキシ酸類、タンニン、フラボノイド、サポニン、感光素301号などが挙げられる。
【実施例0089】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試験例に限定されるものではない。
【0090】
(試験例1.ケラチノサイトでのKPRP遺伝子の発現に影響を与える物質のスクリーニング)
[試験方法]
以下の手順に従い、表皮角化細胞によって産生されたKPRPタンパク質を測定した。
ヒト正常表皮角化細胞(NHEK)(倉敷紡績株式会社製)を9×104cells/wellになるように96ウェルプレート(BDファルコン社製、No.353219)に播種し、37℃で2日間培養した。細胞の生育に問題がないことを顕微鏡観察により確認した後、塩化カルシウムを終濃度1mM、及び、表1に記載の各種薬剤を、終濃度が表1の所定濃度となるよう培地に添加し、37℃で5日間培養した。細胞間KPRPタンパク質を、抗KPRP抗体(アブカム社製)を用いた免疫染色により染色し、細胞核をHoechst33342(同仁化学研究所社製)にて染色した後、ImageXpress
(モレキュラーデバイス社製)にて染色面積、強度並びに核数を計測し、KPRPタンパク質産生量を評価した。
【0091】
評価対象となる薬剤を添加しないこと以外は、上記と同様に処理したサンプルをブランクとし、ブランクにおけるKPRPタンパク質の産生量を100%とした場合の、各サンプルのKPRPの産生量(%)を表1に併せて示す。
【0092】
【0093】
表1に示されるとおり、ウフェナマート及び、イソプロピルメチルフェノールは表皮角化細胞におけるKPRPタンパク質の産生を促進することが明らかとなった。
【0094】
これらの結果は、ウフェナマート及びイソプロピルメチルフェノールが、KPRPタンパク質の産生を促進することにより、皮膚バリア機能を促進し、過敏状態となった皮膚を正常化することを示唆するものである。
【0095】
[製剤処方例]
以下、本発明の製剤処方例を示す。表2に記載の処方で、乳液(製剤例1、5)、クリーム剤(製剤例2)、ゲル剤(製剤例3)、液剤(製剤例4)を常法により調製した。これらの製剤は、KPRPタンパク質発現亢進作用が新たに見出された(A)ウフェナマート及びその塩、並びにイソプロピルメチルフェノールからなる群より選択される少なくとも1種を含有するため、KPRP遺伝子が介在する角層正常化機能亢進によりもたらされる各種用途のために有効に用いられる。
【0096】