(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183435
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】植物成長調整剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
A01N 63/20 20200101AFI20221206BHJP
C12N 1/20 20060101ALI20221206BHJP
C12P 1/04 20060101ALI20221206BHJP
A01P 21/00 20060101ALI20221206BHJP
A01N 65/44 20090101ALI20221206BHJP
A01N 25/04 20060101ALI20221206BHJP
A01N 37/10 20060101ALI20221206BHJP
C12P 13/22 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
A01N63/20
C12N1/20 E
C12N1/20 A
C12P1/04 Z
A01P21/00
A01N65/44
A01N25/04
A01N37/10
C12P13/22 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090748
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】391009877
【氏名又は名称】雪印種苗株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162396
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 泰之
(74)【代理人】
【識別番号】100122954
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷部 善太郎
(72)【発明者】
【氏名】小鑓 亮介
(72)【発明者】
【氏名】眞木 祐子
(72)【発明者】
【氏名】浦島 三眞子
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 太
(72)【発明者】
【氏名】副島 洋
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H011
【Fターム(参考)】
4B064AD30
4B064AE29
4B064AE34
4B064CA02
4B064CC03
4B064CD24
4B064DA11
4B065AA30X
4B065AC14
4B065BB26
4B065BC15
4B065BD43
4B065CA05
4B065CA10
4B065CA17
4B065CA49
4H011AB03
4H011BA06
4H011BB06
4H011BB21
4H011BB22
4H011DA14
4H011DF04
(57)【要約】
【課題】新規な植物成長調整剤を提供すること。
【解決手段】コーンスティープリカー(CSL)高濃度含有乳酸菌培養液を有効成分とする植物成長調整剤。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーンスティープリカー(CSL)高濃度含有乳酸菌培養液を有効成分とする植物成長調整剤。
【請求項2】
コーンスティープリカー(CSL)高濃度含有乳酸菌培養液が、CSL由来の固形分を20質量%以上含有するものである請求項1に記載の植物成長調整剤。
【請求項3】
乳酸菌培養液がフェニル乳酸を160mg/L以上含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の植物成長調整剤。
【請求項4】
乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される乳酸菌である請求項1~3のいずれかに記載の植物成長調整剤。
【請求項5】
乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)から選択される乳酸菌である請求項1~4のいずれかに記載の植物成長調整剤。
【請求項6】
乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)#720株(受託番号NITE BP-03117)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)#555株(受領番号NITE ABP-03379)、ラクトバチルス・sp(Lactobacillus sp.)#728株(受領番号NITE ABP-03380)のいずれかである請求項1~5のいずれかに記載の植物成長調整剤。
【請求項7】
コーンスティープリカー(CSL)由来の固形分を20質量%以上含有する培地で増殖し、植物成長調整剤を産生する乳酸菌。
【請求項8】
乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される乳酸菌である請求項7に記載の乳酸菌。
【請求項9】
乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)のいずれかである請求項7または8に記載の乳酸菌。
【請求項10】
コーンスティープリカー(CSL)由来の固形分20質量%以上とフェニルアラニンを含有する乳酸菌培養液を有効成分とする植物成長調整剤。
【請求項11】
コーンスティープリカー(CSL)由来の固形分を20質量%以上とEDTA鉄(III価)及び/又はEDTA亜鉛(II価)を含有する乳酸菌培養液を有効成分とする植物成長調整剤。
【請求項12】
コーンスティープリカー(CSL)由来の固形分を20質量%以上含有する培地で乳酸菌を培養することを特徴とする請求項1~6のいずれかに記載の植物成長調整剤の製造方法。
【請求項13】
コーンスティープリカー(CSL)高濃度含有乳酸菌培養液から得られる、イソプロパノール及びブタノール可溶性の植物発根用の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は植物成長調整剤及びその製造方法、植物成長調整剤の調製に用いることのできる乳酸菌及び乳酸菌培養物に関する。
【背景技術】
【0002】
農業分野において植物の成長を制御することは、生産性向上のために重要な技術である。現在では様々な種類の植物成長調整剤が実用化され、作物の収量や生産物の品質向上に貢献している。
【0003】
しかしながら、植物成長調整剤の中でも根の発達を促進する植物成長調整剤は、その数も種類も少なく、効果も十分でない。また、好ましくない作用を有する植物成長調整剤が多い。例えば、植物成長調整剤の中でも、現在発根剤として広く用いられているインドール酢酸等のオーキシン系化合物は、植物の種類や状態、施用する濃度によっては葉の上偏成長、茎の捻転や茎割れ、根こぶの誘導、更には枯死等といった好ましくない作用を及ぼすことがあるため、使用方法、使用量等が制限を受ける。また根の発達を促進する作用も十分満足できるものではなかった。
これに対し、乳酸発酵で産生されるフェニル乳酸とトリプトファンを含有する植物成長調整剤が上記の問題点を解決できる発根剤として提案されている(特許文献1)。また、製造方法も開示されている。
一方、トウモロコシでんぷん製造の副産物としてコーンスティープリカー(以下「CSL」)が知られている。CSLはトウモロコシからデンプンを作る工程で得られる可溶性成分を乾燥或いは濃縮したものである。この、CSLは、製造工程の一部に乳酸発酵工程が含まれている(非特許文献1)。この製造工程において、乳酸発酵を行う発酵槽に定着している乳酸菌株の種類や、CSLの原料となる発酵液の濃縮条件を調整することで、CSLからフェニル乳酸とトリプトファンを含む植物成長調整剤を製造できることが特許文献1に記載されている。
【0004】
しかしながら、このCSL中に含有されているフェニル乳酸濃度は30mg/L以下の低濃度であり、CSLをそのまま植物成長調整剤として使用するには適していない。
一方でCSLは、遊離アミノ酸を6~7%含有する。このため、近年、世界的に農業上活用されているバイオスティミュラント(生物刺激剤)の1分野であるアミノ酸含有資材(非特許文献2)としても効果が期待されている。しかし、一般に流通しているCSLは粘度が高く、また、おり(沈殿物)が生じやすく、実際にアミノ酸含有資材としては使用しにくかった。
CSLの沈殿物発生を改善するために、おり(沈殿物)を生成しないCSL及びその製造方法が特許文献2に記載されている。この製造方法は、特殊な遠心分離機が必要となるほか、粘度の問題が解決できていない。またCSLを希釈して、アミノ酸含有資材に使用する方法も考えられるが、遊離アミノ酸およびフェニル乳酸の濃度がさらに低下してしまうため、植物成長調整剤として使用することができない品質となってしまう。
【0005】
また、CSLの希釈液を培地として用い、乳酸発酵することでフェニル乳酸濃度を高め、遊離アミノ酸とフェニル乳酸の双方の濃度が高い植物成長調整剤を調製することが可能となる。しかし、乳酸菌は高濃度のCSL中では増殖が困難であることが知られている。このため、従来技術では、発酵原料として使用するCSLは、クエン酸処理によって改良されたものであっても、培地として使用する濃度は、CSLの含有量が培地当たりわずか7%に過ぎなかった(特許文献3参照)。
さらにまた、CSLに乳酸菌増殖促進作用があることが知られているが、その目的で使用する場合は、培地中にはわずか0.005%添加するに過ぎないのが現状である(非特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5389677号公報
【特許文献2】特開2001-204410号公報
【特許文献3】特開昭53-72889号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】三輪泰造、1979、とうもろこし加工工業副産物、『配合飼料講座(下巻)』、265-269ページ、チクサン出版社
【非特許文献2】Calvo et al.2014.Agricultural uses of plant biostimulants.Plant Soil 383:3-41.
【非特許文献3】Johnson et al.1971.Characterization of growth stimulants in corn steep for lactic Streptococci. Appl. Microbil. 21:316-320.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、新規な植物成長調整剤を提供することを課題とする。また本発明は、この新規植物成長調整剤を製造する製造方法並びに、この製造方法で使用するための乳酸菌を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
(1)コーンスティープリカー(CSL)高濃度含有乳酸菌培養液を有効成分とする植物成長調整剤。
(2)コーンスティープリカー(CSL)高濃度含有乳酸菌培養液が、CSL由来の固形分を20質量%以上含有するものである(1)に記載の植物成長調整剤。
(3)乳酸菌培養液がフェニル乳酸を160mg/L以上含有することを特徴とする(1)又は(2)に記載の植物成長調整剤。
(4)乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される乳酸菌である(1)~(3)のいずれかに記載の植物成長調整剤。
(5)乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)から選択される乳酸菌である(1)~(4)のいずれかに記載の植物成長調整剤。
(6)乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)#720株(受託番号NITE BP-03117)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)#555株(受領番号NITE ABP-03379)、ラクトバチルス・sp(Lactobacillus sp.)#728株(受領番号NITE ABP-03380)のいずれかである(1)~(5)のいずれかに記載の植物成長調整剤。
(7)コーンスティープリカー(CSL)由来の固形分を20質量%以上含有する培地で増殖し、植物成長調整剤を産生する乳酸菌。
(8)乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・カゼイ(Lactobacillus casei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lactobacillus buchneri)、ラクトバチルス・ブレビス(Lactobacillus brevis)、ラクトバチルス・ラピ(Lactobacillus rapi)、ラクトバチルス・ディオリボランス(Lactobacillus diolivorans)から選択される乳酸菌である(7)に記載の乳酸菌。
(9)乳酸菌が、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lactobacillus paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lactobacillus rhamnosus)のいずれかである(7)または(8)に記載の乳酸菌。
(10)コーンスティープリカー(CSL)由来の固形分20質量%以上とフェニルアラニンを含有する乳酸菌培養液を有効成分とする植物成長調整剤。
(11)コーンスティープリカー(CSL)由来の固形分を20質量%以上とEDTA鉄(III価)及び/又はEDTA亜鉛(II価)を含有する乳酸菌培養液を有効成分とする植物成長調整剤。
(12)コーンスティープリカー(CSL)由来の固形分を20質量%以上含有する培地で乳酸菌を培養することを特徴とする(1)~(6)のいずれかに記載の植物成長調整剤の製造方法。
(13)コーンスティープリカー(CSL)高濃度含有乳酸菌培養液から得られる、イソプロパノール及びブタノール可溶性の植物発根用の組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の植物成長調整剤は、植物に対する発根促進活性が高く、且つ葉の上偏成長促進作用といった副作用が極めて弱いため、植物の成長調整剤、特に発根促進剤として生育期間全体にわたって使用できる。さらに育苗期・移植時の発根促進剤として有効性を示す。
また、植物の発根促進活性が高まることにより、キュウリ、トマト、ナス、ピーマン、イチゴなどの施設栽培によって継続的に収穫する作物の成り疲れ抑制剤としても使用可能である。このため、農薬や肥料添加剤として、また本発明の植物成長調整剤そのものを肥料として使用することも可能である。
さらに本発明に係る乳酸菌は、従来知られていた乳酸菌が生育困難である高濃度のCSLを含有する培地中で生育可能であって、CSLを主成分とする培養基で容易に培養が可能であり、培養液中に高濃度のフェニル乳酸を産生する。また、この培養終了後の培養液は高活性の植物成長調整剤となる。
また本発明の植物調整剤の製造方法は、簡便な培養装置と安価な培地を用いるため、極めて低コストで高活性な植物成長調整剤を産生することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】試験例4において、フェニル乳酸(PLA)産生量とフェニルアラニン(Phe)添加量の関係を示す散布図である。
【
図2】試験例5において、培養時に添加する各種金属化合物とpH低下効果を測定した経時変化グラフである。なお図中でEDTA(4H、遊離型)は「H」、EDTA4ナトリウムは「Na」、EDTAカルシウム(II価)は「Ca」、EDTAマグネシウム(II価)は「Mg」、EDTA亜鉛(II価)は「Zn」、EDTA鉄(III価)は「Fe」と表記した。
【
図3】製造例1の培養液pH経時変化を測定した結果を示すグラフである。
【
図4】製造例1の培養液を希釈して調製した植物成長調整剤のアズキ切断部に対する発根作用を測定した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明者らは課題を解決するために鋭意研究した結果、高濃度のCSLを含有する液体培地で増殖可能な乳酸菌株を見出し、さらにこれらの乳酸菌株を用いて得られた乳酸菌培養液が優れた植物成長調整剤となることを見出した。
この乳酸菌培養液は、フェニル乳酸とトリプトファンを高濃度に含有し、さらにn-ブタノールで抽出される発根促進物質も含有するため、植物の発根を促進し、優れた植物成長調整剤となる。
【0013】
本発明におけるコーンスティープリカー(以下「CSL」)は、トウモロコシからデンプンを作る工程で得られる可溶性成分を濃縮又は乾燥したものをいう。
また、「CSL高濃度含有乳酸菌培養液」とは、一般的な乳酸菌増殖困難な濃度のCSL希釈液或いはCSLを乾燥質量換算で20質量%以上含有するCSL高含有培地中で生育可能な乳酸菌を、前記希釈液または培地で培養した後の培養液をいう。
また、本発明における「植物成長調整剤」とは、植物の成長と発育に対して調節作用をもち、農作物の生育調節に使われる薬剤をいう。
【0014】
本発明の植物成長調整剤は、高濃度のCSLを含有する培養液でCSL耐性を示す乳酸菌を培養した後に得られる培養液である。この植物成長調整剤は、CSL由来の固形分が、20質量%以上、好ましくは20~25質量%、特に好ましくは20~23質量%、フェニル乳酸が160mg/L以上、好ましくは160~200mg/L、より好ましくは16~150mg/L含有される。また、遊離アミノ酸が3質量%以上、好ましくは3~10質量%、より好ましくは3~5質量%含有される。
なお、コーンスティープリカー中の固形分の測定は、一般に有機物の固形分測定に用いられている乾燥重量測定方法で測定できる。一例としては、デシケータ内で乾燥させたアルミカップなどの容器に、サンプル1mL入れ、正確に秤量し、ホットプレート上で粘凋な飴状になるまで加熱乾燥し、その後、105℃のオーブン内で3時間乾燥した後、デシケータ内で放冷し、再度秤量することによって固形分を算出できる。
【0015】
また本発明の植物成長調整剤は、含有するフェニル乳酸とトリプトファンの比率が、フェニル乳酸1質量部当たりトリプトファン0.01~600質量部、好ましくはトリプトファン0.1~100質量部、より好ましくはトリプトファン0.5~5質量部である。
また、本発明の植物成長調整剤は、乳酸菌を培養後の培養液中のトリプトファン濃度が低い場合は、前記のトリプトファン濃度に達するようにトリプトファンを添加して使用することが好ましい。
【0016】
前記の乳酸菌培養液を植物成長調整剤として使用する場合は、これをそのまま直接、植物成長調整剤として植物に散布又は土壌に散布することができる。また水等で100~1000倍に希釈して散布することができる。
【0017】
本発明の植物成長調整剤は、上記の培養液とその他の任意成分を常法に従い、混合、撹拌等することにより製剤として製造することができる。
本発明の植物成長調整剤の製剤化は、上記の培養液を、水和剤、乳剤、粒剤、粉剤等、通常の植物成長調整剤で用いられる担体を用いて製剤化することができる。
製剤の形状に制限はなく、粉剤、顆粒剤、粒剤、水和剤、フロアブル剤、乳剤及びペースト剤等のあらゆる製剤形態に成形することができる。
【0018】
例えば、製剤化の固体担体としては鉱物質粉末(カオリン、ベントナイト、クレー、モンモリロナイト、タルク、ケイソウ土、雲母、バーミキュライト、セッコウ、炭酸カルシウム、リン石灰等)、植物質粉末(大豆粉、小麦粉、木粉、タバコ粉、デンプン、結晶セルロース等)、高分子化合物(石油樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニル酢酸樹脂、ポリ塩化ビニル、ケトン樹脂等)、更に、アルミナ、ワックス類等を使用することができる。また、製剤化の液体担体としては、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、ベンジルアルコール等)、芳香族炭化水素類(トルエン、ベンゼン、キシレン等)、塩素化炭化水素類(クロロホルム、四塩化炭素、モノクロルベンゼン等)、エーテル類(ジオキサン、テトラヒドロフラン等)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサン等)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、酸アミド類(N、N-ジメチルアセトアミド等)、エーテルアルコール類(エチレングリコールエチルエーテル等)、又は水等を使用することができる。
【0019】
乳化、分散、拡散等の目的で使用される界面活性剤としては、非イオン性、陰イオン性、陽イオン性及び両イオン性のいずれも使用することができる。本発明において使用することができる界面活性剤の例を挙げると、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンポリマー、オキシプロピレンポリマー、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル、第四級アンモニウム塩、オキシアルキルアミン、レシチン、サポニン等である。また、必要に応じてゼラチン、カゼイン、アルギン酸ソーダ、デンプン、寒天、ポリビニルアルコール等を補助剤として用いることができる。
【0020】
本発明の植物成長調整剤は、水溶液又は懸濁液とした場合のpH(25℃)が、2~8となるのが好ましく、当該pHを調整するために使用する緩衝剤としては、酢酸、クエン酸、フマル酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、酒石酸等の有機酸塩、リン酸、塩酸、硫酸等の無機塩、水酸化ナトリウム等の水酸化物、アンモニア又はアンモニア水等が挙げられる。これらを単独又は2種以上組み合わせて用いてもよく、さらに他のpH調整剤と適宜組み合わせてもよい。
【0021】
本発明の植物成長調整剤は、根量を増加させる作用、生育全般を促進する作用等を有するが、特に発根促進剤、イネ科植物の登熟向上剤として用いることが好ましい。
また、本発明の植物成長調整剤組成物は、CSL由来のアミノ酸を含んでいるため、そのものを肥料やバイオスティミュラントとしても利用可能である。
【0022】
本発明の植物成長調整剤を植物に施用する場合、直接そのまま使用してもよいし、或いは水で適宜希釈又は懸濁して使用してもよい。
【0023】
植物に施用する場合、土壌処理剤、茎葉処理剤、播種前の種子処理剤、移植前植物の処理剤及び移植時の植物に対する処理剤等として使用することができる。また、水耕栽培においては水耕液に混合して使用してもよく、組織培養では培地中に懸濁又は溶解させて用いてもよい。
【0024】
本発明の植物成長調整剤を土壌や植物に対する散布用の製剤として用いる場合の使用濃度は、好ましくは100~100000倍希釈、より好ましくは100~10000倍希釈、特に好ましくは500~1000倍希釈の範囲とすることができる。特に育苗期の苗に使用する場合は、上記濃度の希釈液を培養土1L当たり50~200mL散布することが望ましい。また、イネ科植物の登熟向上剤として使用する場合は土地面積1ha当たり200~2000L散布することが望ましい。これらの場合、展着剤を使用してもよく、用いる展着剤の種類及び使用量については特に制限されない。
【0025】
本発明の植物成長調整剤を肥料と混合する場合を含め、土壌に直接施用する場合の使用量としては、1ヘクタール当たり100~100000g、特に500~50000g用いるのが好ましい。特に育苗期の苗に使用する場合は、培養土1L当たり0.001~100g用いるのが望ましい。この場合、播種前の培養土に予め混合しておいてもよく、育苗期間中に散布してもよい。
【0026】
播種前の種子処理用に用いる場合は、水、アルコール類(メタノール、エタノール等)、ケトン類(アセトン等)、エーテル類(ジエチルエーテル等)、エステル類(酢酸エチル等)等の液体担体に10~10000倍希釈となるように希釈又は懸濁し、乾燥種子に噴霧するか、乾燥種子を希釈液に浸漬して種子に吸収させることもできる。浸漬時間としては特に制限されないが1秒~30分が好ましい。また、処理した種子は、風乾、減圧乾燥、加熱乾燥、真空乾燥等によって液体担体を蒸発させてもよい。また、クレー等の鉱物質粉末の固体担体を用いて製剤化したものを種子表面に付着させ使用することもできる。また、通常用いられている種子コーティング剤、種子コーティングフィルムに混合して種子に被覆することもできる。
【0027】
組織培養や細胞培養時に使用する場合は、通常用いられる植物組織培養用の培地(MS培地、ホワイト培地、ガンボルグのB5培地等)に培地中濃度として、フェニル乳酸又はその塩とトリプトファン又はその塩の合計濃度として、好ましくは0.010~100000倍希釈ppm、特に好ましくは0.100~1000ppm倍希釈の範囲で溶解又は懸濁して用いることができる。この場合、通常行われているように、炭素源としての糖類(ショ糖、ブドウ糖等)、各種植物ホルモンとしてサイトカイニン(ベンジルアデニン、カイネチン等)、オーキシン(インドール酢酸、ナフタレン酢酸等)、ジベレリン(GA3、GA4等)、アブシジン酸等を適宜加えることができる。
【0028】
移植前の植物に直接吸収させる場合は、10~10000倍に希釈又は懸濁した液に、植物の根部あるいは全体を浸漬して使用することができる。また、挿し穂、挿し芽、挿し木等であれば基部又は全体を浸漬して使用することができる。この場合の浸漬時間は1秒~1週間、特に1分~3日間が望ましい。また、鉱物質粉末の固体担体を用いて製剤化したものを、根部に付着させる。あるいは、挿し穂、挿し芽、挿し木等の場合は茎基部に付着させてもよい。
【0029】
本発明の植物成長調整剤の投与時期としては、生育期間中いかなる時期にも使用が可能であるが、特に発根促進剤として適用する場合は、播種前、播種時、苗の育成時、移植等の耕種的断根を伴う作業の前後、気象要因等で根の発育が阻害されあるいは根に障害が発生した場合等が特に有効である。また、イネ科植物の登熟向上剤として使用する場合は、開花期以降、黄熟期までの期間が適切な使用期間である。
【0030】
本発明の植物成長調整剤を発根促進剤として植物に適用すれば、側根数、不定根数等の根数の増加を通じて根量や根密度が増加するため、苗の移植時の活着率向上や、健苗育成、生育促進、吸水力の向上、吸肥力の向上、肥料成分利用率の向上、緑色の保持、光合成能力の向上、水ストレス耐性の向上、倒伏防止、収量増加等の効果が得られる。また、イネ科植物の登熟向上剤として適用すれば、一粒当たりの子実重が増加するため、収量増加等の効果が得られる。
【0031】
本発明の植物成長調整剤組成物の適用対象となる植物としては、特に限定されないが、例えば、トマト、ピーマン、トウガラシ、ナス等のナス類、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ等のウリ類、セルリー、パセリー、レタス等の生菜・香辛菜類、ネギ、タマネギ、ニンニク等のネギ類、ダイズ、ラッカセイ、インゲン、エンドウ、アズキ等の豆類、イチゴ等のその他果菜類、ダイコン、カブ、ニンジン、ゴボウ等の直根類、サトイモ、キャッサバ、バレイショ、サツマイモ、ナガイモ等の芋類、アスパラガス、ホウレンソウ、ミツバ等の柔菜類、トルコギキョウ、ストック、カーネーション、キク等の花卉類、イネ、コムギ、オオムギ、エンバク、トウモロコシ等の穀物類、ベントグラス、コウライシバ等の芝類、ナタネ、ヒマワリ等の油料作物類、サトウキビ、テンサイ等の糖料作物類、ワタ、イグサ等の繊維料作物類、クローバー、ソルガム、デントコーン等の飼料作物類、リンゴ、ナシ、ブドウ、モモ等の落葉性果樹類、ウンシュウミカン、レモン、グレープフルーツ等の柑橘類、サツキ、ツツジ、スギ等の木本類が挙げられる。
【0032】
これらのうち、発根促進剤として適用する場合は、トマト、ピーマン、トウガラシ、ナス、キュウリ、カボチャ、メロン、スイカ、セルリー、パセリー、レタス、ネギ、タマネギ、アスパラガス、トルコギキョウ、ストック、イネ、ベントグラス、コウライシバ、テンサイイグサ等の栽培中に移植を行う植物や、キク、カーネーション、サツキ、ツツジ、ブドウ等の切り枝や挿し穂から発根させることにより増殖を行う植物に対しては特に有効である。また、イネ科植物の登熟向上剤として使用する場合は、コムギ、イネ、オオムギ、エンバク等の子実が包皮に覆われていない植物に対して特に有効である。
【0033】
また、本発明の効果向上を目的として、他の植物成長調整剤と併用することもでき、場合によっては相乗効果を期待することもできる。例えば、発根促進剤として適用する場合、高い栽植密度、高湿度、日照不足等といった極めて徒長しやすい条件下での育苗時には、地上部地下部重比の小さい良質な苗の育成を目的として、強力な茎の伸長抑制作用を持つ抗ジベレリン剤(パクロブトラゾール、ウニコナゾールP、アンシミドール等)、成長抑制剤(ダミノジッド等)、エチレン発生剤(エテホン等)と併用してもよい。また、挿し穂、挿し芽、挿し木、組織培養時においては、発根促進効果の増強を目的として、オーキシン系化合物(インドール酢酸、インドール酪酸、ナフチルアセトアミド、ナフタレン酢酸等)と併用してもよい。また、播種前の種子処理時には、発芽促進作用を持つジベレリン剤と併用してもよい。また、イネ科植物の登熟向上剤として使用する場合はヒドロキシイソキサゾール、イソプロチオラン等の他の登熟歩合向上剤と併用してもよい。これらは単なる例示であって、本発明の植物成長調整剤と併用できる他の植物成長調整剤がこれらに限られるものではない。
【0034】
また、本発明の植物成長調整剤は、各種殺虫剤、殺菌剤、微生物農薬、肥料等と混用又は併用することも可能である。特に、発根促進剤として適用する場合は殺菌作用の他に発根促進作用も報告されているヒドロキシイソキサゾール、メタスルホカルブ、メタラキシル等との併用は有効である。また、育苗期に使用する殺虫殺菌剤と混用は特に有効である。また、肥料と併用する場合、健苗育成を目的とした育苗用肥料との併用、活着促進を目的とした移植直前施用肥料との併用は特に有効である。また、本発明の植物成長調整剤の効力を長期間持続させ肥料成分利用率を向上させる目的とした緩効性肥料との混用も特に有効である。
また、イネ科植物の登熟向上剤として使用する場合は尿素、燐酸アンモニウム、アミノ酸等、他の葉面散布用肥料との混用も有効である
【0035】
本発明の乳酸菌は、従来の乳酸菌が生育できないCSL由来の固形分を20質量%以上含有する培地中で生育し、培地にL-フェニルアラニンを0.5%添加した場合培養終了時に培地中にフェニル乳酸が160mg/L以上と遊離アミノ酸を3質量%以上産生する。
また、本発明の乳酸菌は、高濃度のCSLを含有する培地を選抜培地として用いで、この培地中に生育する乳酸菌から選抜できる。
【0036】
乳酸菌選抜に用いる培地に配合するCSLは、そのままでは浸透圧が高すぎて一般の乳酸菌も本発明の乳酸菌も増殖が困難である。したがって選抜に用いる培地中には、CSLを、適宜希釈して使用する。選抜用培地、あるいは植物成長調整剤生産用培地には、CSLが、最終的に固形分換算で20~30%(w/v)、より好ましくは20~24%となるように希釈して使用する。CSL希釈液のみを選抜培地とすることもできる。
【0037】
乳酸菌を選抜する培地として、CSLに、各種炭素源、窒素源を添加することもできる。炭素源としては、対象となる乳酸菌が資化できるものであればいずれも使用可能である。なかでも、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖などが挙げられる。
また窒素源としては、対象となる乳酸菌が資化できるものであればいずれも使用可能である。中でもコムギグルテン酵素加水分解物、ダイズタンパク質加水分解物が好ましい。
さらに亜鉛などの金属元素やビタミンを添加することがより好ましい。
【0038】
本発明に使用する乳酸菌は、上記の選抜培地に生育可能であり、37℃で3日間培養したとき、培養終了時に培地当たりフェニル乳酸が160mg/L以上産生する。
この生産量と成育能力とを合わせて選抜基準として採用し、本発明に適した乳酸菌を選別できる。また選抜対象の乳酸菌は、乳酸球菌、乳酸桿菌のいずれであっても良いが、乳酸桿菌が好ましく、中でもラクトバチルス属が特に好ましい。
【0039】
本発明のラクトバチルス属に分類される乳酸菌としては、次のものを好ましく例示できる。
乳酸菌の属としては、ラクトバチルス(Lactobacillus以下「Lb.」と略記する場合がある)属が好ましい。乳酸菌の種としては、ラクトバチルス・アセトトレランス(Lb.acetotolerans)、ラクトバチルス・アシディファリナエ(Lb.acidifarinae)、ラクトバチルス・アシドピスシス(Lb.acidipiscis)、ラクトバチルス・アシドフィルス(Lb.acidophilus)、ラクトバチルス・アジリス(Lb.agilis)、ラクトバチルス・アルジドゥス(Lb.algidus)、ラクトバチルス・アリメンタリウス(Lb.alimentarius)、ラクトバチルス・アミロリチクス(Lb.amylolyticus)、ラクトバチルス・アミロフィルス(Lb.amylophilus)、ラクトバチルス・アミロトロフィクス(Lb.amylotrophicus)、ラクトバチルス・アミロボルス(Lb.amylovorus)、ラクトバチルス・アニマリス(Lb.animalis)、ラクトバチルス・アントリ(Lb.antri)、ラクトバチルス・アピス(Lb.apis)、ラクトバチルス・アポデミ(Lb.apodemi)、ラクトバチルス・アクアチレ(Lb.aquatile)、ラクトバチルス・アクアチクス(Lb.aquaticus)、ラクトバチルス・アビアリウス(Lb.aviarius)、ラクトバチルス・バキイ(Lb.backii)、ラクトバチルス・ビフェルメンタンス(Lb.bifermentans)、ラクトバチルス・ブランタエ(Lb.brantae)、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)、ラクトバチルス・ブクネリ(Lb.buchneri)、ラクトバチルス・カカオヌム(Lb.cacaonum)、ラクトバチルス・カメリアエ(Lb.camelliae)、ラクトバチルス・カピラツス(Lb.capillatus)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・セチ(Lb.ceti)、ラクトバチルス・コレオホミニス(Lb.coleohominis)、ラクトバチルス・コリノイデス(Lb.collinoides)、ラクトバチルス・コンポスチ(Lb.composti)、ラクトバチルス・コンカブス(Lb.concavus)、ラクトバチルス・コリニフォルミス(Lb.coryniformis)、ラクトバチルス・クリスパンツス(Lb.crispatus)、ラクトバチルス・クルストラム(Lb.crustorum)、ラクトバチルス・クリエアエ(Lb.curieae)、ラクトバチルス・クルバツス(Lb.curvatus)、ラクトバチルス・デルブルエキイ(Lb.delbrueckii)、ラクトバチルス・デクストリニクス(Lb.dextrinicus)、ラクトバチルス・ディオリボランス(Lb.diolivorans)、ラクトバチルス・エクイ(Lb.equi)、ラクトバチルス・イクイクルソリス(Lb.equicursoris)、ラクトバチルス・エクイゲネロシ(Lb.equigenerosi)、ラクトバチルス・ファビファルメンタンス(Lb.fabifermentans)、ラクトバチルス・ファエシス(Lb.faecis)、ラクトバチルス・ファシミニス(Lb.farciminis)、ラクトバチルス・ファラジニス(Lb.farraginis)、ラクトバチルス・ファメンタム(Lb.fermentum)、ラクトバチルス・フロリコラ(Lb.floricola)、ラクトバチルス・フロルム(Lb.florum)、ラクトバチルス・フォルニカリス(Lb.fornicalis)、ラクトバチルス・フルクチボランス(Lb.fructivorans)、ラクトバチルス・フルメンチ(Lb.frumenti)、ラクトバチルス・フクエンシス(Lb.fuchuensis)、ラクトバチルス・フツァイ(Lb.futsaii)、ラクトバチルス・ガリナルム(Lb.gallinarum)、ラクトバチルス・ガセリ(Lb.gasseri)、ラクトバチルス・ガストリカス(Lb.gastricus)、ラクトバチルス・ガネンシス(Lb.ghanensis)、ラクトバチルス・ギゲリオルム(Lb.gigeriorum)、ラクトバチルス・グラミニス(Lb.graminis)、ラクトバチルス・ハメシ(Lb.hammesii)、ラクトバチルス・ハムステリ(Lb.hamsteri)、ラクトバチルス・ハルビネンシス(Lb.harbinensis)、ラクトバチルス・ヘイロングジアンゲンシス(Lb.heilongjiangensis)、ラクトバチルス・ハヤキテンシス(Lb.hayakitensis)、ラクトバチルス・ヘルベティカス(Lb.helveticus)、ラクトバチルス・ヒルガルディイ(Lb.hilgardii)、ラクトバチルス・ホッカイドネンシス(Lb.hokkaidonensis)、ラクトバチルス・ホミニス(Lb.hominis)、ラクトバチルス・ホモヒオキイ(Lb.homohiochii)、ラクトバチルス・ホルデイ(Lb.hordei)、ラクトバチルス・イネルス(Lb.iners)、ラクトバチルス・イングルビエイ(Lb.ingluviei)、ラクトバチルス・インテスチナリス(Lb.intestinalis)、ラクトバチルス・イワテンシス(Lb.iwatensis)、ラクトバチルス・ジェンセニイ(Lb.jensenii)、ラクトバチルス・ジョンソニイ(Lb.johnsonii)、ラクトバチルス・カリキセンシス(Lb.kalixensis)、ラクトバチルス・ケフィラノファシエンス(Lb.kefiranofaciens)、ラクトバチルス・ケフィリ(Lb.kefiri)、ラクトバチルス・キムチカス(Lb.kimchicus)、ラクトバチルス・キムチエンシス(Lb.kimchiensis)、ラクトバチルス・キソネンシス(Lb.kisonensis)、ラクトバチルス・キタサトニス(Lb.kitasatonis)、ラクトバチルス・コリエンシス(Lb.koreensis)、ラクトバチルス・クンケエイ(Lb.kunkeei)、ラクトバチルス・レイクマンイ(Lb.leichmannii)、ラクトバチルス・インドネリ(Lb.lindneri)、ラクトバチルス・マレフェレメンタンス(Lb.malefermentans)、ラクトバチルス・マリ(Lb.mali)、ラクトバチルス・マニホチボランス(Lb.manihotivorans)、ラクトバチルス・ミンデンシス(Lb.mindensis)、ラクトバチルス・ムコサエ(Lb.mucosae)、ラクトバチルス・ムリヌス(Lb.murinus)、ラクトバチルス・ナゲリイ(Lb.nagelii)、ラクトバチルス・ナムレンシス(Lb.namurensis)、ラクトバチルス・ナンテンシス(Lb.nantensis)、ラクトバチルス・ナスエンシス(Lb.nasuensis)、ラクトバチルス・ネンジアンゲンシス(Lb.nenjiangensis)、ラクトバチルス・ノデンシス(Lb.nodensis)、ラクトバチルス・オドラチトフイ(Lb.odoratitofui)、ラクトバチルス・オエニ(Lb.oeni)、ラクトバチルス・オリゴファーメンタス(Lb.oligofermentans)、ラクトバチルス・オリス(Lb.oris)、ラクトバチルス・オリザエ(Lb.oryzae)、ラクトバチルス・オタキエンシス(Lb.otakiensis)、ラクトバチルス・オゼンシス(Lb.ozensis)、ラクトバチルス・パニス(Lb.panis)、ラクトバチルス・パンテリス(Lb.pantheris)、ラクトバチルス・パラブレビス(Lb.parabrevis)、ラクトバチルス・パラブクネリ(Lb.parabuchneri)、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lb.paracasei)、ラクトバチルス・パラコリノイデス(Lb.paracollinoides)、ラクトバチルス・パラケフィリ(Lb.parakefiri)、ラクトバチルス・パラリメンタリウス(Lb.paralimentarius)、ラクトバチルス・パラプランタラム(Lb.paraplantarum)、ラクトバチルス・パステウリイ(Lb.pasteurii)、ラクトバチルス・パウキボランス(Lb.paucivorans)、ラクトバチルス・ペントスス(Lb.pentosus)、ラクトバチルス・ペロレンス(Lb.perolens)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ポブジヒイ(Lb.pobuzihii)、ラクトバチルス・ポンチス(Lb.pontis)、ラクトバチルス・ポルシナエ(Lb.porcinae)、ラクトバチルス・プシタキ(Lb.psittaci)、ラクトバチルス・ラピ(Lb.rapi)、ラクトバチルス・レニニ(Lb.rennini)、ラクトバチルス・ロイテリ(Lb.reuteri)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lb.rhamnosus)、ラクトバチルス・ロデンチウム(Lb.rodentium)、ラクトバチルス・ロゴサエ(Lb.rogosae)、ラクトバチルス・ロシアエ(Lb.rossiae)、ラクトバチルス・ルミニス(Lb.ruminis)、ラクトバチルス・サエリムネリ(Lb.saerimneri)、ラクトバチルス・サケイ(Lb.sakei)、ラクトバチルス・サリバリウス(Lb.salivarius)、ラクトバチルス・サンフランシスエンシス(Lb.sanfranciscensis)、ラクトバチルス・サニビリ(Lb.saniviri)、ラクトバチルス・サツメンシス(Lb.satsumensis)、ラクトバチルス・セカリフィリス(Lb.secaliphilus)、ラクトバチルス・セロンゴレンシス(Lb.selangorensis)、ラクトバチルス・セニオロリス(Lb.senioris)、ラクトバチルス・センマイズケ(Lb.senmaizukei)、ラクトバチルス・シェレピエア(Lb.sharpeae)、ラクトバチルス・シェンゼーネンシス(Lb.shenzhenensis)、(ラクトバチルス・シラゲイ(Lb.silagei)、ラクトバチルス・シリギンシス(Lb.siliginis)、ラクトバチルス・シミリス(Lb.similis)、ラクトバチルス・ソンガウジンジェネシス(Lb.songhuajiangensis)、ラクトバチルス・スピチェリ(Lb.spicheri)、ラクトバチルス・スシコーラ(Lb.sucicola)、ラクトバチルス・スエビカス(Lb.suebicus)、ラクトバチルス・スンキ(Lb.sunkii)、ラクトバチルス・タイワネンシス(Lb.taiwanensis)、ラクトバチルス・タイランデンシス(Lb.thailandensis)、ラクトバチルス・ツセチ(Lb.tucceti)、ラクトバチルス・ウルツネンシス(Lb.ultunensis)、ラクトバチルス・ウバラム(Lb.uvarum)、ラクトバチルス・バクシノストレカス(Lb.vaccinostercus)、ラクトバチルス・バギナリス(Lb.vaginalis)、ラクトバチルス・ベルソモルデネシス(Lb.versmoldensis)、ラクトバチルス・ヴィニ(Lb.vini)、ラクトバチルス・クサンガファンゲネシス(Lb.xiangfangensis)、ラクトバチルス・ヨンギネンシス(Lb.yonginensis)、ラクトバチルス・ゼアエ(Lb.zeae)、ラクトバチルス・ザイマエ(Lb.zymae)等を例示できる。
【0040】
ラクトバチルス属の好ましい乳酸菌として、これら例示した菌種の中でもラクトバチルス・パラカゼイ(Lb.paracasei)、ラクトバチルス・カゼイ(Lb.casei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lb.rhamnosus)、ラクトバチルス・プランタラム(Lb.plantarum)、ラクトバチルス・ブフネリ(Lb.buchneri)、ラクトバチルス・ブレビス(Lb.brevis)、ラクトバチルス・ラピ(Lb.rapi)、ラクトバチルス・ディオリボランス(Lb.diolivorans)が好ましく、ラクトバチルス・パラカゼイ(Lb.paracasei)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lb.rhamnosus)、ラクトバチルス・sp(Lactobacillus sp.)から選択される乳酸菌がより好ましい。
また、独立行政法人製品評価技術基盤機構 バイオテクノロジーセンター 特許微生物寄託センターに本出願人より寄託されたラクトバチルス・パラカゼイ(Lb.paracasei)#720株(受託番号NITE BP-03117)、ラクトバチルス・ラムノサス(Lb.rhamnosus)#555株(受領番号NITE ABP-03379)、ラクトバチルス・sp(Lactobacillus sp.)#728株(受領番号NITE ABP-03380)から選択されるいずれかの株が特に好ましい。
【0041】
本発明の植物成長調整剤を生産するためには、前記の乳酸菌を適宜選択し、これを、CSL由来の固形分を20質量%以上含有する生産培地に1×106cpu/mL程度の密度になるように、適切な前培養用の培地で前培養した培養液を、生産用培地の1質量%程度を接種し培養する。
乳酸菌摂取した後の培養温度は、好ましくは25~37℃、より好ましくは37℃で、培養時間は、好ましくは24~300時間、より好ましくは48~72時間培養する。
本発明の植物成長調整剤生産用の培地としては、CSLを水で希釈してCSL由来の固形分が、20質量%以上、好ましくは20~30質量%、特に好ましくは20~25質量%なるように、水で希釈して生産用培地とする。
CSLは、一般に水素イオン濃度がpH4前後であり、乳酸菌生育する条件としては酸性度が高すぎる。このため、あらかじめ農業上使用可能な塩基を加え、培地のpHを、pH5~8、より好ましくはpH5~7に高めておくことが望ましい。
農業上使用可能な塩基としてはアンモニア、カリウム、カルシウム、マグネシウム。マンガン、ナトリウムなどの塩類や塩基が挙げられる。アンモニア、カリウム塩や塩基が好ましい。また、製造上の扱いやすさからは、アンモニア水、水酸化カリウムが好ましい。
【0042】
上記の通り希釈してpHを調整したCSLは、そのまま本発明実施のための乳酸菌用培地として使用することができる。必要によっては、乳酸菌の増殖を促進するために、各種炭素源、窒素源をさらに添加することができる。炭素源としては、培養する乳酸菌が資化できるものであればいずれでも使用可能であるが、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖などの糖類が挙げられる。また、乳糖源としては、チーズホエーが好ましい。
窒素源としては、培養する乳酸菌が資化できるものであればいずれも使用可能であるが、コムギグルテン酵素加水分解物、ダイズタンパク加水分解物が好ましい。
また、培養液中のフェニル乳酸濃度を高めるために、フェニル乳酸の基質であるL-フェニルアラニンを添加することが好ましい。L-フェニルアラニンの培地中の濃度としては0.1~1質量%が好ましく、より好ましくは0.3~0.7質量%が好ましい。
また、乳酸菌の増殖を促進するために微量成分として培地中に鉄、亜鉛を加えることが好ましい。添加する鉄、亜鉛の化合物形態は、培地に溶解すれば、どのような塩や化合物であってもよいが、キレート塩が好ましく、より好ましくは、鉄はEDTA鉄、亜鉛はEDTA亜鉛である。
【0043】
本発明の植物成長調整剤は、培養終了後、培養液を回収する。
培養液は、必要な場合には公知の方法で乳酸菌をろ過又は遠心分離によって除去し、あるいは除去せずそのまま殺菌処理を行い、植物調整剤あるいは、植物調整剤の製剤の原料として用いることができる
【実施例0044】
次に実施例・試験例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例・試験例に限定されるものではない。
【0045】
<試験例1(CSL濃度と乳酸菌生育との関係)>
以下の試験例において「%」は特段の注記がない場合は、重量/容量(w/v)%である。
1.試験方法
昭和産業(株)製CSL(固形分40.5%、w/v)にアンモニア水(北海道和光純薬(株)製)を加えてpH6に調整し、遠心分離(8、000G)することにより上澄を得た。この上澄1mLをデシケータ内で乾燥させたアルミカップに入れ、秤量し、ホットプレート上で粘凋な飴状になるまで加熱乾燥し、その後、105℃のオーブン内で3時間乾燥した後、デシケータ内で放冷し、再度秤量することによって固形分重量を算出した結果、40.5w/v%であった。この上澄を30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%の濃度になるように水で希釈した。したがって、希釈液のCSL由来の固形分濃度は、それぞれ12.15%、16.2%、20.25%、24.3%、28.35%、32.4%、36.45%であった。なお遠心分離によって沈殿した沈殿物は、ごく微量のため固形分の含有率には影響しなかった。
次いで、これらの希釈液と遠心分離後の上澄液に、ブドウ糖(北海道和光純薬(株)製)を0.25%添加して溶解した。
この溶液を試験管に10mLずつ分注し、121℃で15分オートクレーブ滅菌したものを培地とした。
【0046】
試験用の乳酸菌株としては、CSLを含む培養液で生育可能なことが知られている、Lactobacillus paracasei SBS0003株、Lactobacillus diolivorans SBS0007株、Lactobacillus buchneri NK01株を試験株として選択した。
これらの乳酸菌株をMRS(ベクトン・ディッキンソン製)培地で前培養し、この培養液を、上記のCLSにブドウ糖を添加した培地に1%接種し、37℃で3日間培養を行った。
培養前の培養液のpH及び培養終了時のpHを測定した。
【0047】
2.試験結果
培養終了後の培養液のpHと元の培養液から、低下したpH変化量を下記表1に示す(なお(-)符号はpHが低下したことを表している)。
【0048】
【0049】
CSLの濃度が30%(CSL由来固形分12.15%)の場合、試験菌株は、3菌株とも培養液のpHが0.1以上低下した。すなわち乳酸菌が十分に増殖できていた。
一方、CSL濃度が40~50%(CSL由来固形分16.2~20.25%)ではSBS0003株は、pHを0.1程度しか低下させなかった。
またCSL濃度が60%(CSL由来固形分24.3%)以上では、試験に供したすべての菌株の培養液でpHの低下が0.1以下であった。すなわち、実質的に乳酸菌が増殖せず、発酵が進んでいないことが判明した。以上の試験結果から、CSL由来の固形分濃度が20%を超えると一般的な乳酸菌は増殖できないことが確認された。
【0050】
<試験例2(高濃度CSL耐性乳酸菌の選抜)>
1.試験方法
試験例1と同様に、CSLにアンモニア水(北海道和光純薬(株)製)を加えてpH7に調整し、遠心分離(8、000G)することで上澄を得た。この上澄を60%濃度(固形分濃度24.3%)になるように水で希釈し、チーズホエー粉FC06(乳清パウダー、雪印メグミルク(株)製)を2%添加した。この溶液を試験管に10mL分注し、121℃で15分オートクレーブ滅菌した。この滅菌培地を選抜培地とした。
【0051】
牧草・サイレージから分離し、同定した乳酸菌株の中から予備試験で高濃度のCSLで生育可能なことが確認された乳酸菌10株を選択した。また一般的な乳酸菌標準株であるLb.rhamnosus JCM1136株、Lb.diolivorans JCM12183、Lb.plantarum JCM1149株を選択した。これらの乳酸菌株をMRS培地(ベクトン・ディッキンソン製)で前培養し、この培養液を試験培地当たり1%接種し、37℃で3日間培養を行った。培養終了後pHを測定した。
また試験例1で選択した乳酸菌株も比較のために同様に培養し、pHを測定した。
【0052】
2.試験結果
培養後のpH及びpH変化量を表2に示す。
【0053】
【0054】
試験例1で生育した菌株は、CSL濃度60%(固形分24.3%)の培地において、非接種培地と比較してpHを0.15~0.31低下させたに過ぎなかった。すなわちほとんど生育できないかわずかに生育しただけであった。
また、市販の乳酸菌標準株であるLb.rhamnosus JCM1136株およびLb.plantarum JCM1149株もそれぞれpHを0.31および0.25低下させたに過ぎなかった。Lb.diolivorans JCM12183株においてはpH低下が認められず、乳酸菌が増殖せず、発酵がすすんでいないと考えられた。
一方、新規分離株(収集した乳酸菌から選択した株)10菌株は、pHを0.68~0.82低下させた。すなわち高濃度のCSL含有培地で増殖可能であった。この試験結果から、これら10菌株は、高濃度のCSL中で生育可能な株であるということができる。この10株は、本発明に使用可能な特性を持つ乳酸菌であると判断した。
【0055】
<試験例3(ホエー添加が乳酸菌増殖に及ぼす効果)>
1.試験方法
試験例1に用いたと同じCSL(固形分40.5%、w/v)を、そのまま水で60%に希釈した。次いで、ブドウ糖またはチーズホエー粉FC06(乳清パウダー、雪印メグミルク(株)製)を0.25%、1%、2%加え、溶解した後、アンモニア水でpH7.0に調整し、三角フラスコに100mL分注した。これを、121℃で15分間オートクレーブ滅菌したものを試験用培地とした。
乳酸菌は、上記の牧草・サイレージから新規に分離した新規乳酸菌株からLb.paracasei #736株、Lb.sp.#768株を選択した。また基準株としてLb.rhamnosus JCM1136株、Lb.diolivorans JCM12183、Lb.plantarum JCM1149株をMRS培地で前培養し、この培養液を試験培地当たり1%接種し、37℃で3日間培養を行った。培養終了後pHを測定した。
【0056】
2.試験結果
培養前後の各培養液のpH及び無添加区とのpHの差を表3に示す。
【0057】
【0058】
すべての試験培地において、基準菌株(JCM)よりもLb.paracasei #736株、Lb.sp.#768株の培養液でpHの低下が大きかった。
また、ブドウ糖を添加した場合は、無添加区と比較してLb.paracasei #736株、Lb.sp.#768株の培養液のpHが0.12よりも低下することはなく、実質的に添加による増殖促進効果は認められなかった。
一方、ホエーを添加した場合、基準菌株接種区(JCM株)では無添加区と比較して培養液pHが0.23よりも低下することはなかった。また、Lb.paracasei #736株、Lb.sp.#768株の培養液では、ホエー粉を0.25~1%添加した処理区において、無添加区と比較して培養液pHが0.45以上低下していた。しかし2%添加の場合、その効果は小さかった。
以上の試験結果から、Lb.paracasei #736株、Lb.sp.#768株は、培地にホエー粉を添加することによって乳酸菌が増殖して、発酵が促進されることが明らかとなった。ホエー粉添加量は、0.25~2%が好ましい効果を与えるものと考えられた。
【0059】
<試験例4(フェニルアラニンの添加効果)>
1.試験方法
フェニル乳酸産生量に対するフェニルアラニンの添加効果を試験した。
(1)培養条件
試験例1と同じCSL(固形分40.5%、w/v)を用い、これをそのまま水で50%(CSL由来孔径分20.25%)に希釈した。さらにチーズホエー粉FC06(乳清パウダー、雪印メグミルク(株)製)を1%、小麦グルテン酵素加水分解物ソルプロ505(Tereos syral社製)を1%、EDTA鉄を1%加え、さらにL-フェニルアラニン(Phe)を無添加(0%)、0.1%、0.3%、0.5%、0.7%を添加した後よく溶解させ、アンモニア水でpH7.0に調整した。これを、三角フラスコに500mL分注し、試験培地とした。
別途選抜した、高濃度CSL培地で生育可能なLb.paracasei #720株をMRS培地(#製)で前培養し、この培養液を、試験培地当たり1%接種し、37℃で12日間培養を行った。
【0060】
(2)フェニル乳酸分析法
培養液中のフェニル乳酸濃度は、次の方法で分析した。
すなわち、培養液を等量の20%メタノールと混合し、10%メチルアルコールで馴化したSepPaktC18(Waters Co.)を通過させて得た通過液を濃縮し、0.1%ギ酸に溶解したものを高速液体クロマトグラフ-トリプル四重極型質量分析システム(LCMS-8050 島津製作所)で分析した。
分析用のHPLCカラムは、L-Column2 ODS 2.1×100mm、粒子径2μm(化学物質評価研究機構)を使用した。
HPLCの移動相は、0.1%ギ酸混合アセトニトリルを用い、アセトニトリル濃度を5%から95%まで15分間かけて上昇させた。カラムオーブン温度は40℃に設定した。
インターフェイス条件は、ネブライザーガス流量3L/min、ヒーティングガス流量10L/min、インターフェイス温度300℃、DL温度250℃、ヒートブロック温度400℃、ドライイングガス流量10L/minに設定し、ESI-でイオン化した。定量はMRMモード(プリカーサーイオン165.1m/z、プロダクトイオン147.0m/z、コリジョンエネルギー16.0V)で行った。
フェニル乳酸標品は保持時間5.96分に検出され、サンプル中の測定対象物質であるフェニル乳酸は保持時間5.95-5.98分に検出された。
【0061】
(3)トリプトファン分析法
培養液中トリプトファン濃度を次の通り分析した。
すなわち、培養液を直接高速液体クロマトグラフ-トリプル四重極型質量分析システム(LCMS-8050(株)島津製作所)で分析した。
カラムは、L-Column2 ODS 2.1×100mm、粒子径2μm(化学物質評価研究機構)を使用した。
移動相は0.1%ギ酸混合アセトニトリルを用い、アセトニトリル濃度を5%から95%まで15分間かけて上昇させた。
カラムオーブン温度は40℃とした。インターフェイス条件は、ネブライザーガス流量3L/min、ヒーティングガス流量10L/min、インターフェイス温度300℃、DL温度250℃、ヒートブロック温度400℃、ドライイングガス流量10L/minに設定し、ESI+でイオン化した。
定量はMRMモード(プリカーサーイオン205.0m/z、プロダクトイオン188.2m/z、コリジョンエネルギー-10.0Vで行った。
トリプトファン標品は、保持時間4.02分に検出され、サンプル中のトリプトファン対象物質は保持時間3.94-4.00分に検出された。
【0062】
2.試験結果
(1)フェニル酢酸乳酸測定結果
各培養液液中のフェニル乳酸(PLA)の濃度を
図1に示した。
図1に示す通り、フェニルアラニン(Phe)の添加濃度が0.3~0.7%の範囲で、フェニル乳酸の産生量が向上した。0.5~0.6%付近に最適濃度が存在することが確認できた。
【0063】
(2)トリプトファン濃度
培養液中のトリプトファン濃度とフェニルアラニン量を表4に示す。
【0064】
【0065】
表4に示す通り、フェニルアラニンの添加量が増加するとトリプトファンの濃度が減少し、その後フェニルアラニンの添加量が0.5%を超えると、再度トリプトファン量が増加することが分かった。
この試験に用いた菌株と培地の場合、培地中にフェニルアラニンを添加し、フェニル酢酸乳酸とトリプトファン濃度を高めるためのフェニルアラニンの最適濃度は0.5%であった。
【0066】
また、下記表5に示す通り、いずれの培養液(試験培養液)のフェニル乳酸とトリプトファンの比は、フェニル乳酸1質量部当たり0.01~600質量部(1:600~99:1)の範囲であった。
【0067】
<試験例5(金属イオンの添加効果)>
1.試験方法
試験例1と同じCSL(固形分40.5%、w/v)を用い、これを遠心分離せずにそのまま水に50%希釈した。
この溶液にチーズホエー粉FC06(乳清パウダー、雪印メグミルク(株)製)を1%、小麦グルテン酵素加水分解物ソルプロ505を1%、L-フェニルアラニンを0.5%添加した。この培地に微量金属として、さらにEDTA(4H、遊離型)「H」、EDTA4ナトリウム「Na」、EDTAカルシウム(II価)「Ca」、EDTA鉄(III価)「Fe」、EDTAマグネシウム(II価)「Mg」、EDTA亜鉛(II価)「Zn」(いずれも(株)同仁化学研究所社製)を加えてよく溶解し、アンモニア水でpH7.0とし、三角フラスコに100mL分注したものを試験用培地とした。
試験例5と同様にLb.paracasei #720株をMRS培地で前培養した培養液を、試験培地当たり1%接種し、37℃で11日間培養を行った。
【0068】
2.試験結果
培養液pHの経時的測定結果を
図2に示す。EDTA(4H、遊離型)「H」、EDTA4ナトリウム「Na」、EDTAカルシウム(II価)「Ca」、EDTAマグネシウム(II価)「Mg」、EDTA亜鉛(II価)「Zn」、EDTA鉄(III価)「Fe」の順に変化が大きかったが、中でもEDTA亜鉛とEDTA鉄の効果が大きかった。遊離型EDTAを添加した培養液の測定結果とEDTA鉄(III価)「Fe」又は、EDTA亜鉛(II価)「Zn」を添加した培養液の測定結果を対比すると、後者が培養4日目には急速にpHが低下するのに対して、遊離型EDTAを添加した場合はpHの低下が極めて緩やかで培養開始11日目でようやくpHが1程度低下しただけであった。EDTAナトリウム「Na」の添加は、遊離型EDTAより有効であったが、7日目にpHの低下はプラトーに達した。EDTAカルシウム「Ca」及びEDTAマグネシウム「Mg」の添加は、EDTAナトリウムの低下よりpHが低下するが、pHの低下の程度は小さく、7日目以降は、pHがpH5.8付近の低下でプラトーに達した。
一方、EDTA鉄「Fe」及びEDTA亜鉛「Zn」を添加した場合は、最終到達pHが5.0近傍まで低下した。
このpHの変化のグラフから、EDTA鉄「Fe」又はEDTA亜鉛「Zn」の添加は、乳酸菌の生育を促進し、その結果培養液の植物成長調整活性を高めるものと考えられた。
【0069】
なお、以上の試験で好ましい結果が確認された乳酸菌のうち、3菌株は、本発明の実施に適する乳酸菌株として、本発明出願人により独立行政法人製品評価技術基盤機構バイオテクノロジーセンター特許微生物寄託センターに次の通り寄託されている。
ラクトバチルス・パラカゼイ(Lb.paracasei)#720株(SBS-0010受託番号NITE BP-03117)
ラクトバチルス・ラムノサス(Lb.rhamnosus)#555株(SBS-0012受領番号NITE ABP-03379)
ラクトバチルス・sp(Lactobacillus sp.)#728株(SBS-0013受領番号NITE ABP-03380)
【0070】
<製造例1(パイロットプラントによる植物成長調整剤の製造)>
1.製造方法
遠心分離したCSL上澄を水で50%希釈し(CSL由来の固形分量20.25%)に調整した。さらにFC10(ホエー粉末、雪印メグミルク株式会社製)を1%、粉末状大豆たんぱく(フジプロE:不二製油株式会社)1%、EDTA鉄(III価)を1%、L-フェニルアラニン0.5%を加えて攪拌し、溶解後アンモニア水でpH7.0に調整した。
この溶解液200Lを加熱殺菌し、これを製造用培地とした。
試験例4と同様にLb.paracasei#720株をMRSで前培養し、前記の製造用培地に2%接種し、37℃で9日間静置培養を行った。
培養期間中毎日、培養液のpHを測定した。pHの変化を
図4に示した。
培養液のpHは、培養2日後に大きく低下し、乳酸菌が順調に生育していることが確認できた。3日目以降のpHの変化は小さく、3日程度で乳酸菌増殖がプラトーに達するものと考えられた。最終の培養液pHは、4.7であった。この培養液を回収し、全量を本発明の植物成長調整剤とした。
【0071】
2.製造例1の植物成長調整剤(培養液)中のフェニル乳酸濃度の測定
(1)測定方法
培養期間終了後の培養液を同量の20%メタノールと混合しこれを10%メタノールで馴化したSepPaktC18(Waters Co.)を通過させて得た通過液を回収した。回収した液を、さらに濃縮し、0。1%ギ酸に溶解し、高速液体クロマトグラフ-トリプル四重極型質量分析システム(LCMS-8050島津製作所)で分析した。
分析用カラムは、L-Column2ODS 2.1×100mm、粒子径2μm(化学物質評価研究機構)を使用した。HPLCの移動相として0.1%ギ酸混合アセトニトリルを用い、アセトニトリル濃度を5%から95%まで15分間かけて上昇させた。
カラムオーブン温度は40℃とした。
インターフェイス条件は、ネブライザーガス流量3L/min、ヒーティングガス流量lOL/min、インターフェイス温度300℃、DL温度250℃、ヒートブロック温度400℃、ドライイングガス流量10L/minとし、ESI‐でイオン化した。定量はMRMモード(プリカーサーイオン165.lm/z、プロダクトイオン147.0m/z、コリジョンエネルギー16.0V)で行った。
フェニル乳酸の標品は、保持時間5.96分に検出され、サンプル中のフェニル乳酸は保持時間5.95-5.98分に検出された。
【0072】
(2)フェニル乳酸量測定結果
得られた培養液中のフェニル乳酸(PLA)の含有量は195mg/Lであった。また、この製造例1の培養液のトリプトファン濃度は、29.3mg/Lであった。
【0073】
<製造例2(パイロットプラントによる植物成長調整剤の製造>とフェニルアラニン・トリプトファン混合物の力価比較)>
(1)製造方法
遠心分離したCSLを50%希釈し、CSL由来の固形分量を22.03%に調整した。さらにFC10(ホエー粉末、雪印メグミルク株式会社製)を1%、粉末状大豆たんぱく(フジプロE:不二製油株式会社)1%、EDTA鉄(III価)を1%、L-フェニルアラニン0.5%を加えて攪拌し、溶解後アンモニア水でpH7.0に調整した。
この溶解液200Lを製造用培地とした。試験例4と同様にLb.paracasei#720株をMRSで前培養し、前記の製造用培地に2%接種し、37℃で3日間静置培養した。培養3日目に培養液のpHは、5.4であった。
この時点で概ねプラトーに達したため培養終了とした。
このことからコーンスティープリカーのロットによっては、培養期間が3日でも十分であることが確認された。
得られた培養液中のフェニル乳酸含有量を製造例1と同様の方法で測定した結果、686mg/Lであった。また、トリプトファン濃度は、14.523mg/Lであった。
この培養液を製造例2の植物成長調整剤とした。
【0074】
<試験例6(製造例2の植物調整剤のアズキ発根アッセイ)>
1.試験方法
製造例2で得られた植物成長調整剤を評価するために、発根作用を指標とする試験を行った。
製造例2で得た培養液をpH6.8-7.0に調整し、蒸留水で1000倍に希釈した溶液を試験液とした。
また、比較対照として培養前培地、DL-フェニル乳酸(DL-PLA)50ppmとL-トリプトファン(L-Trp)50ppmを含有する溶液(特許文献1参照)を同様に試験した。
アズキ種子(雪印種苗株式会社製、品種:エリモ)をバーミキュライト4号(北海道農材工業)を充填した穴あきバットに播種し、12日間栽培した。生育したアズキ苗は、地上部を生長点の除去のため、下部3cmの切除を行った。次いで5ml試験管に試験液を入れ、この試験液に切断部位を浸漬した。
試験液は、毎日新鮮な試験液と交換し、これを3日間行った。ついで曝気した超純水に4日間浸漬した。浸漬処理終了後、アズキ苗の切断部位に発生した総根数を数え、発根活性を判定した。
【0075】
2.試験結果
表5に各試験液の発根活性を測定した結果を示す。
【0076】
【0077】
蒸留水と比較してフェニル乳酸+トリプトファン混合液区は若干発根数の増加が認められた。
培養前培地にも発根活性が認められたが、この原因は、この培地にはコーンスティープリカーが含有されており、コーンスティープリカーそのものに含有されているフェニル乳酸と、その他に加えたホエー粉や粉末状大豆たんぱく大豆に含有される栄養分・ミネラル・ビタミンなどの複合的な効果と考えられた。
一方、これらの比較対照に比べて製造例2の植物成長調整剤(3日間培養後の培養液)は圧倒的に高い発根促進活性を示すことが明らかとなった。
以上の試験結果から、本発明の方法によって高い活性の植物成長調整剤を得るためには、培養期間は3日間が必要であることが明らかとなった。
【0078】
<試験例7(ブタノール抽出画分の発根アッセイ)>
試験例6によって、製造例2で得た培養液の発根作用の一部はフェニル乳酸と培地中に含まれるトリプトファンによるものと考えられた。
フェニル乳酸とトリプトファン以外の発根物質が本発明の植物成長調整剤に含有されていることを確認するために以下の試験を行った。
【0079】
1.試験方法
(1)トリプトファンの除去
試験例1で用いた培養前培地と、製造例2で得られた植物成長調整剤、それぞれ1LをpH3.0に調整した。
別途、スチレン―ジビニルベンゼン系合成吸着樹脂ダイヤイオンHP-20をメタノールで洗浄した後、カラム(内径45mm×長さ600mm)に充填し、蒸留水を通液して調整した。
このカラムに上記の液を流液し、活性成分を吸着させた。カラムは、吸着後蒸留水で洗浄した。
このカラム吸着条件では、カラム内担体にトリプトファンを含めアミノ酸が吸着されないことを確認した。したがって、トリプトファンはこの工程でカラムに吸着されず、洗浄除去された。
【0080】
(2)活性成分の溶出
次いで、20容量%イソプロパノール1.0Lでカラムに吸着された活性成分を溶出し、溶出液を回収した。
【0081】
(3)フェニル乳酸の除去
回収した溶出液は、エバポレータで約1.0mLに濃縮し、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8.0に調整した。
次いで、適量の酢酸エチルで3回溶媒抽出を行い、酢酸エチル層を除去した。
残った水相を、塩酸を用いてpH2.5に調整し、さらに酢酸エチル抽出を3回繰り返し、抽出液を回収した。この抽出後回収した酢酸エチル画分は、フェニル乳酸が含有されることを確認した。
酢酸エチル抽出後の水相画分(フェニル乳酸不含)は、水酸化ナトリウム水溶液を用いて再度pH8.0に調整した後、適量のn-ブタノールで3回抽出を行った。このn―ブタノール抽出液を、中性ブタノール画分として保管した。
次いで、このn-ブタノール抽出終了後の水相は、再度塩酸を用いてpH2.5とし、さらに適量のn-ブタノールで3回抽出を行った。このn―ブタノール抽出液を、酸性ブタノール画分として保管した。
得られた中性ブタノール画分と酸性ブタノール画分は、それぞれエバポレータを用いて残存するブタノールを留去した後、再度、上記と同様にダイヤイオンHP-20カラムに通液し、活性成分を吸着させた。その後、20容量%イソプロパノールで溶出し脱塩した。
回収したイソプロパノール溶出画分(中性ブタノール画分及び酸性ブタノール画分)は、それぞれエバポレータを用いて濃縮・乾固し、中性ブタノール画分及び酸性ブタノール画分の試験用サンプルとした。
得られた試験用サンプルは蒸留水で1000倍希釈し、この溶液を用いて試験例6と同様にアズキ発根アッセイを行った。
【0082】
2.試験結果
表6にそれぞれの抽出画分(1,000倍希釈液)の発根数を示す。また同様に操作して抽出した培養前培地の中性ブタノール画分及び酸性ブタノール画分の発根数の試験結果も合わせて示した。
【0083】
【0084】
製造例2の培養液から抽出した中性ブタノール画分および酸性ブタノール画分は、それぞれ培養前液に比較して、発根数が増加した。培養前を1とするとそれぞれ1.5倍及び1.7倍に増加した。
この試験結果から、製造例2の植物成長調整剤は、フェニル乳酸とトリプトファン以外に新たな発根作用を促進する物質が含有されることが確認できた。
この発根作用を促進する物質は、イソプロパノール及びブタノール可溶性の物質であることが明らかとなった。
【0085】
<試験例8(ブロッコリー育苗試験)>
1.試験方法
製造例1で得られた植物成長調整剤を、ブロッコリーの育苗試験で評価した。
8×8セルトレーにプラグB培土(北海道農材工業(株))を充填し、ブロッコリー品種「ピクセル」種子を、それぞれのセルに2粒ずつ播種した。
子葉が展開した段階で1セル当たり1本になるように間引きを行った。
次いで、製造例1で得た植物成長調整剤を水で500倍希釈し、本葉展開期に1回、その1週間後にさらに1回の計2回の散布処理を行った。なお散布する植物成長剤は、500倍希釈液を用い、比較対照として水を散布した。
散布する散布液量は、トレー1枚あたり500mlとした。また対照区は、水のみを散布した。育苗期間終了後(播種後29日目)に各トレー中で、生育が平均的な外観の5株を選んで採取し、それぞれの株一本ごとに葉面積・総根長・乾物重量(地上部、地下部)を測定した。
【0086】
2.試験結果
測定結果は、各個体の測定結果の合計値(5株合計値)として表7に示した。
また水のみを散布したときの各項目の測定数値を100としたとき、本発明の植物成長調整剤散布した場合の相対値をあわせて示した。
【0087】
【0088】
表7に示す通り、いずれの項目の測定結果も、本発明の植物成長調整剤(培養液)を散布したブロッコリー苗が高い値を示した。特に総根長の増加が、水のみの散布を100としたとき124と大きかった。また極端な徒長を示した個体は見当たらなかった。
この表6の試験結果から、本発明の植物成長調整剤は、ブロッコリーの育苗時に散布すると、根を伸長させ、苗を徒長させることなく、健全な苗に成長させることが分かった。またオーキシン処理にみられる葉枯れなどの副作用現象も発生しなかった。
【0089】
<試験例9(肥料成分を添加した植物成長調整剤を用いた水稲育苗試験)>
1.試験法
製造例1で得られた植物成長調整剤に、肥料成分としてアンモニア態窒素1質量%、硝酸態窒素1質量%、可溶性リン酸4質量%、水溶性カリ2質量%加え、試験溶液を調製した。
試験場所は北海道上川管内の水稲農家で実施した。
前記の試験溶液は、灌注時に水でさらに1000倍に希釈し、この希釈液を、灌注処理液とした。
灌注処理は、種籾の播種量を200ml/箱として播種後発芽した育苗中の「ななつぼし」のマット苗に、播種後8日目と17日目に、前記の1000倍希釈液をジョウロ等で通常の灌水と同様の方法で1箱当たり500ml散布した。比較対照の水も同様に散布した。
播種後29日目に育苗を終了として、サンプリングを行った。
サンプリングは、マット苗の平均的な生育を示す箇所を直径8センチメートルのホールカッターでくり抜き、くりぬき部分に含まれる稲の苗の個体数(本数)をカウントした。
また、くり抜いたサンプルから平均的な生育を示す15個体について、個体ごとに草丈、第一葉鞘高、葉数、分けつ数を測定した。なお地上部の乾物重は、15個体まとめて測定した。
なお、総根長は、くり抜いた部分に発生(発根)した全ての根の長さを、一本ずつすべて測定し、集計した。また測定対象とした根は、すべて回収し、全量を乾燥後、重量を測定した。
【0090】
2.試験結果
測定結果は、すべてを集計後、1個体に換算(平均値)して表示した。測定結果を下記表8に示す。
【0091】
【0092】
表8に示す通り、草丈、総根長、根の乾物重量において、本発明製造例1の植物成長調整剤から調製した試験液を散布した処理区が明らかに優れていた。すなわち、本発明の植物成長調整剤を散布すると根が顕著に発達し、その結果草丈が伸長するものと考えられた。
また、本発明の植物成長調整剤を散布した処理区では、対照区で発生した黄化、葉枯れなども発生しなかった。