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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183444
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】電気機器及び電気機器システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 21/34 20130101AFI20221206BHJP
   B25F 5/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G06F21/34
B25F5/00 C
B25F5/00 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090757
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 聡史
(72)【発明者】
【氏名】塙 浩之
【テーマコード(参考)】
3C064
【Fターム(参考)】
3C064AA02
3C064AB02
3C064AC02
3C064BA23
3C064BA24
3C064BB10
3C064BB89
3C064CA53
3C064CA78
3C064CA79
3C064CA80
3C064CB17
3C064CB62
3C064CB71
3C064DA03
3C064DA11
3C064DA43
3C064DA56
3C064DA89
3C064DA91
3C064EA02
3C064EA03
(57)【要約】
【課題】使用する人の正当性の認証を要求する電気機器において、認証プロセスが完了する前に、電気機器100の制限的な作動を可能とする。
【解決手段】電気機器100の制御部は、トリガスイッチの操作開始に伴って、モータの稼働を許可すると共に、ユーザ400が正当であるか否かを近接無線通信により接続された認証機器(端末装置10)に照合する。端末装置10から所定時間内に認証情報が受信できなかった場合や、認証情報の不一致により認証失敗の場合は、制御部はモータの回転を禁止する。このように認証プロセスが終了する前に電気機器の使用を制限付きで可能としたので、電気機器100の即時使用性が向上する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷部と、前記負荷部の駆動を指示する操作部と、前記操作部の操作に応じて前記負荷部を制御する制御部と、を有し、前記操作部を操作する使用者が正当であるか否かの認証を要求する電気機器であって、
前記制御部は、前記操作部の操作開始に伴って前記負荷部の稼働を許可すると共に、使用するユーザ又は使用機器が正当であるか否かを外部機器に照合し、
前記外部機器によって所定時間内に認証が許可された場合には前記電気機器の通常使用を許可し、制限内に認証が許可されなかった場合には前記負荷部の動作を阻止する、ことを特徴とする電気機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電気機器において、
前記制限内に認証が許可されなかった場合とは、前記負荷部の駆動を開始してから前記認証が許可されないまま所定時間経過後が経過した場合、又は、前記電気機器と前記外部機器との間の認証情報が一致しない場合、の少なくとも一方であることを特徴とする電気機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電気機器において、
前記制御部は、前記外部機器との間を近接無線通信によって接続し、前記電気機器は前記外部機器により入力された認証コードと、予め登録されている認証コードを比較することによって前記ユーザが正当であるか否かを判断することを特徴とする電気機器。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機器において、
前記電気機器と前記外部機器との間の認証が成功した後に、一定期間毎に認証をおこなうことを特徴とする電気機器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の電気機器において、
前記電気機器と前記外部機器との間の認証情報が一致しない場合であっても、一定期間後に再照合することにより認証が許可された場合には、前記負荷部の駆動を許可することを特徴とする電気機器。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電気機器と、
前記電気機器と無線通信可能な携帯端末と、を備えた電気機器システムであって、
前記電気機器又は複数の前記使用機器のいずれかは、制御部と、前記制御部に接続された機器側通信部と、を備え、
前記携帯端末は、前記機器側通信部と無線通信可能な端末側通信部を有し、
前記機器側通信部と前記端末側通信部とが互いに無線通信可能エリア内に位置する状態で前記機器側通信部と前記端末側通信部との無線通信が不能な状態において、前記負荷部を駆動可能にした、ことを特徴とする電気機器システム。
【請求項7】
負荷部と、前記負荷部の駆動を指示する操作部と、前記操作部の操作に応じて前記負荷部を制御する制御部と、を有し、外部機器との認証を行う電気機器であって、
前記制御部は、前記操作部の操作がされた際に前記認証が完了していない場合は未認証停止モードにて、制限を付けた状態で前記電気機器の稼働を許容し、
その後、前記認証が完了した場合には電気機器を通常作動モードに移行させ、前記認証が完了しなかった場合には前記電気機器の稼働を禁止する未認証停止モードに移行させることを特徴とする電気機器。
【請求項8】
請求項7に記載の電気機器において、
前記制限は、所定時間によって決定されるか、認証情報の照合制限回数によって決定されることを特徴とする電気機器。
【請求項9】
負荷部と、前記負荷部の駆動を指示する操作部と、を有する電気機器において、
前記電気機器に選択的に接続可能な複数の外部機器のうちの1つを接続した状態において、所定の駆動条件を満たさなくても前記操作部を操作すると前記負荷部を駆動する第1モードと、前記所定の駆動条件を満たすまで前記操作部を操作しても前記負荷部を駆動しない第2モードを有することを特徴とする電気機器。
【請求項10】
請求項9に記載の電気機器において、
前記所定の駆動条件は、前記電気機器と前記接続した外部機器との間の認証が成功した場合であることを特徴とする電気機器。
【請求項11】
請求項9又は10に記載の電気機器において、
前記第1モードを選択した場合、所定の停止条件を満たすと前記第2モードに移行することを特徴とする電気機器。
【請求項12】
請求項11に記載の電気機器において、
前記所定の停止条件は、前記負荷部の駆動を開始してから所定時間経過後が経過した場合、前記電気機器と前記接続した外部機器との間の認証が失敗した場合、の少なくとも一方であることを特徴とする電気機器。
【請求項13】
請求項9から12のいずれか一項に記載の電気機器において、
前記負荷部と前記操作部は電気機器本体に設けられ、
前記外部機器は、前記電気機器本体に着脱可能な電池パックである、
ことを特徴とする電気機器。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の電気機器と、
前記電気機器と無線通信可能な携帯端末と、を備えた電気機器システムであって、
前記電気機器は、制御部と、前記制御部に接続された機器側通信部と、を備え、
前記携帯端末は、前記機器側通信部と無線通信可能な端末側通信部を有し、
前記機器側通信部と前記端末側通信部とが互いに無線通信可能エリア内に位置する状態で前記機器側通信部と前記端末側通信部との無線通信が不能な状態において、前記負荷部を駆動可能にしたことを特徴とする電気機器システム。
【請求項15】
負荷部と、前記負荷部の駆動を指示する操作部と、前記操作部の操作に応じて前記負荷部を制御する制御部と、を有する電気機器本体と、前記電気機器本体に対して着脱可能な電池パックと、を有し、前記電気機器本体と前記電池パックとの間で認証可能な電気機器であって、
前記制御部は、
前記電気機器本体に前記電池パックとして第1の電池パックを接続した状態で前記操作部を操作すると、前記負荷部の駆動を開始し、その後、前記操作部を操作している間は前記負荷部の駆動を継続し、
前記電気機器本体に前記電池パックとして第2の電池パックを接続した状態で前記操作部を操作すると、前記負荷部の駆動を開始し、その後、前記操作部を操作している間に前記負荷部の駆動を停止する、
よう構成される、ことを特徴とする電気機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電気機器及び電気機器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
認証用に記憶したパターン情報(パスコード)が一致した場合にだけ作動可能に構成され、不一致の場合には作動不能とされる電気機器が知られている。認証を必要とするのは、第三者による使用を不可にして電気機器の盗難防止を図るため、盗難された品の転売を防止するため、正規品以外の装着品(電池パック等)の使用を防止するため等、それらの目的は様々である。特許文献1には、電池パックと電気機器(電動工具)との間で認証を行い、その結果、それらの使用を許可するか、使用を禁止するかを決定する電気機器が記載されている。このような認証機能付きの電気機器は、通常、使用に先立って認証を行い、認証が成功した場合にのみ作動を許可する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2018/079233号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電気機器(例えば電動工具)の使用時にユーザの認証を行う場合は、認証に要する時間が大きいため、トリガスイッチの操作から作動開始までの時間が遅れてしまうという問題がある。特に、電池駆動機器の場合は、省電力が要求され、通信機器やセンサを省電力(休止や断続駆動など)で駆動させるため、省電力モードから通常作動モードへの復帰を行った上で認証を行うので即応性が損なわれる虞がある。また、電気機器の認証を、無線通信を介してスマートフォン等の外部機器を用いて行う場合には、通信相手を検索する必要があり、無線通信路を確立するための時間も要するため、認証に必要とされる時間がさらに大きくなってしまう。このように外部機器によって無線通信を用いた認証を前提とする場合、即応性が良くないという問題がある。特許文献1では、認証の結果が出るまで電気機器を使用することができないため、認証に要する時間によっては作業性を悪くする可能性があった。
【0005】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、使用する人の正当性の認証や、装着される機器(使用機器)の正当性の認証を前提に稼働が許可される電気機器において、認証プロセスが完了する前に、電気機器本体の制限的な作動を許可する電気機器及び電気機器システムを提供することにある。
本発明の他の目的は、認証が失敗した際には稼働中であっても使用を阻止するようにして、ユーザの限定や、装着される機器の正当性を確保できるようにした電気機器及び電気機器システムを提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、無線にて接続可能な外部機器を用い、容易な操作でユーザの認証を行うことができる電気機器及び電気機器システムを提供することである。
本発明の他の目的は、作業性の良い電気機器及び電気機器システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。
本発明の一つの特徴によれば、負荷部と、負荷部の駆動を指示する操作部と、操作部の操作に応じて負荷部を制御する制御部とを有し、操作部を操作する使用者が正当であるか否かの認証を要求する電気機器であって、制御部は、操作部の操作開始に伴って負荷部の稼働を許可すると共に、使用するユーザ又は使用機器(装着される機器)が正当であるか否かを外部機器に照合し、外部機器によって所定時間内に認証が許可された場合には電気機器の通常使用を許可し、制限内に認証が許可されなかった場合には負荷部の動作を阻止するようにした。ここで、制限内に認証が許可されなかった場合とは、負荷部の駆動を開始してから認証が許可されないまま所定時間経過後が経過した場合、又は、電気機器と外部機器との間の認証情報が一致しない場合、の少なくとも一方である。
【0007】
本発明の他の特徴によれば、電気機器の制御部は、外部機器との間を近接無線通信によって接続し、電気機器は外部機器により入力された認証コードと、予め登録されている認証コードを比較することによってユーザが正当であるか否かを判断する。また、電気機器と外部機器との間の認証が成功した後に、一定期間毎に認証をおこなう。ここで、電気機器と外部機器との間の認証情報が一致しない場合であっても、一定期間後に再照合することにより認証が許可された場合には、負荷部の駆動を許可する。このような電気機器と、電気機器と無線通信可能な携帯端末と、を備えた電気機器システムを構成し、電気機器又は複数の使用機器のいずれかは、制御部と機器側通信部を備え、携帯端末は端末側通信部を有するようにした。そして、機器側通信部と端末側通信部とが互いに無線通信可能エリア内に位置する状態で機器側通信部と端末側通信部との無線通信が不能な状態において、負荷部を駆動可能にした。
【0008】
本発明のさらに他の特徴によれば、電気機器において、制御部は、操作部の操作がされた際に認証が完了していない場合は未認証停止モードにて制限を付けた状態で電気機器の稼働を許容し、その後、認証が完了した場合には電気機器を通常作動モードに移行させ、認証が完了しなかった場合には電気機器の稼働を禁止する未認証停止モードに移行させる。この制限は、所定時間によって決定されるか、認証情報の照合制限回数によって決定されるようにすると良い。
【0009】
本発明のさらに他の特徴によれば、電気機器に選択的に接続可能な複数の外部機器のうちの1つを接続した状態において、所定の駆動条件を満たさなくても操作部を操作すると負荷部を駆動する第1モードと、所定の駆動条件を満たすまで操作部を操作しても負荷部を駆動しない第2モードを設けた。ここで所定の駆動条件は、電気機器と接続した外部機器との間の認証が成功した場合である。また、第1モードを選択した場合、所定の停止条件を満たすと第2モードに移行するようにした。所定の停止条件は、負荷部の駆動を開始してから所定時間経過後が経過した場合、電気機器と接続した外部機器との間の認証が失敗した場合、の少なくとも一方である。外部機器の一例は電気機器本体に着脱可能な電池パックである。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、前記電気機器と、電気機器と無線通信可能な携帯端末と、を備えた電気機器システムであって、電気機器は、制御部と機器側通信部を備え、携帯端末は端末側通信部を有し、機器側通信部と端末側通信部とが互いに無線通信可能エリア内に位置する状態で機器側通信部と端末側通信部との無線通信が不能な状態において、負荷部を駆動可能にした。また、負荷部と、負荷部の駆動を指示する操作部と、操作部の操作に応じて負荷部を制御する制御部と、を有する電気機器本体と、電気機器本体に対して着脱可能な電池パックと、を有し、電気機器本体と電池パックとの間で認証可能な電気機器であって、制御部は、電気機器本体に電池パックとして第1の電池パックを接続した状態で操作部を操作すると、負荷部の駆動を開始し、その後、操作部を操作している間は負荷部の駆動を継続し、電気機器本体に電池パックとして第2の電池パックを接続した状態で操作部を操作すると、負荷部の駆動を開始し、その後、操作部を操作している間に負荷部の駆動を停止するように構成した。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、認証プロセスが完了する前に、電気機器本体の制限的な作動を可能とし、制限的な作動中に認証プロセスを並行して実行するので、電気機器本体の稼働の即応性を損ねることなく、従来の電気機器と同じ使い勝手の電気機器及び電気機器システムを提供できる。また、認証が失敗した場合は電気機器の作動を停止させるので、不正使用者による作動や、不正機器を接続した状態での作動を抑制でき、信頼性の高い電気機器及び電気機器システムを提供できる。さらに、認証プロセスにはユーザ認証機能付きの情報端末を用い、無線通信にて情報端末と電気機器が情報のやりとりを行うため、認証作業が容易な電気機器及び電気機器システムを提供できる。よって、作業性の良い電気機器及び電気機器システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る電気機器システム1の全体構成図である。
図2図1の電気機器100及び情報端末10の回路構成を示すブロック図である。
図3図1の電気機器100に示す認証モードの遷移図である。
図4図1の情報端末10、電池パック50、電気機器本体101の操作と、通信を用いた認証手順を説明するシーケンス図である(認証成功時)。
図5図1の電気機器本体101のマイコン116における作動モードの設定手順を説明するフローチャートである。
図6図1の電気機器本体101のマイコン116における認証処理の実行判断手順を説明するフローチャートである。
図7図1の情報端末10、電池パック50、電気機器本体101の操作と、通信を用いた認証手順を説明するシーケンス図である(認証失敗時)。
図8】本発明の第2の実施例に係る電気機器100A及び情報端末10の回路構成を示すブロック図である。
図9】本発明の第3の実施例に係る認証プロセス手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【実施例0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。なお、以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。図1は本発明の実施例に係る電気機器システム1の全体構成図である。本実施例の電気機器システムは、認証を行うことを前提に稼働が許可される被認証機器(例えば電気機器100)と、電気機器に対して認証を行う認証機器(例えば情報端末10)によって構成される。電気機器100の数は、単数でも良いし複数でも良い。
【0014】
4つの電気機器100(100-1~100-4)は、それぞれ電気機器本体101と電池パック50により構成され、電池パック50を電源としてモータ等の負荷装置を駆動させる携帯型の機器である。電気機器100は、それぞれトリガスイッチ106を有し、ユーザ400がトリガスイッチ106を引くことによって電気機器100のモータ(図では見えない)の回転が開始され、図示しない先端工具が回転する。図1では、電気機器100として同一の機器100-1~100-4を図示しているが、同一機種である必要性はなく、異なる種類の電気機器100を用いても良い。電気機器100は、使用を正当に許可されたユーザ400だけが作動できるように事前設定でき、許可されていないユーザ(不正使用者)に対しては使用を阻止することが可能である。また、電気機器100はユーザの認証を必要とせずに、誰でも使用することができるセキュリティ設定無しのモードも有しているので、ユーザがいずれか(認証有りのモード、認証なしのモード)を選択して電気機器本体101に事前設定しておくことが可能である。なお本明細書では、電気機器本体101を電気機器、電池パック50を外部機器と称する場合もある。
【0015】
電気機器100のユーザ400に対する正当性の認証は、外部機器たる情報端末10を用いて行われる。電気機器100側に、ユーザ認証用の装置(例えば、パスワード入力用のキーボード、指紋認証用のタッチパッド、顔認証用のカメラ)を装着することも考えられるが、それらは電気機器100の価格の高騰に繋がるので現実的ではない。そこで、電気機器100から、近接無線通信可能な情報端末10を用いて、ユーザ400の認証を行うようにした。
【0016】
情報端末10は、電気機器100に対する初回の認証コード登録が行われたら、それを記憶部内に登録しておき、電気機器100からの認証要求を受けた際に、自動的に電気機器100の使用のための認証コードを返信する。このように構成することで、電気機器100の使用開始のたびにユーザ400が情報端末10から認証コードを入力する必要が無くなるため、使い勝手を良くすることができる。
【0017】
情報端末10は、例えばスマートフォンを用いることができる。情報端末10には、情報を表示する表示部と、作業者からの操作を受け付けるための操作部が設けられる。これら表示部と操作部は、タッチパネル式の表示部11にて実現できる。さらに、情報端末10には、指紋認証用のタッチパッド12a、画像入力用のカメラ12bが設けられる。情報端末10は電話通信網を用いて基地局220経由でインターネット等のネットワーク網200に接続可能であり、電気機器100のメーカのサーバ装置220に電話回線230やインターネット回線を介して接続可能である。
【0018】
本実施例の電気機器システム1の初期設定として、ユーザ400は情報端末10に、電気機器100-1~4との無線通信を行い、認証プロセスを実行するための専用のアプリケーションソフトウェア(以下、「アプリ」と称する)をインストールする。そのアプリは、サーバ装置220からダウンロード可能である。次に、情報端末10は、近接無線通信によって、自ら所有(又は使用)する電気機器100-1~4のそれぞれに対して、電気機器100-1~4の制限的な使用のための認証情報(パスワード等)の設定を行う。情報端末10としてスマートフォンを用いれば、スマートフォンには使用するユーザ400の認証を行う機能を有しているので、その機能を用いることにより、ユーザ400の所有する情報端末10のアプリを利用して無線通信によるペアリングが成功したことで、認証成功と見做すことが可能である。例えば、専用のアプリによって、情報端末10のロック状態を解除するだけで電気機器100の認証プロセスが実行できる。尚、ロック状態の解除をすることなく近接無線通信が可能な状態の情報端末10を電気機器100の通信可能範囲内に位置づけるだけで認証プロセスが実行できるように構成したりしても良い。
【0019】
情報端末10は近接無線通信を介して電気機器100と接続し、認証に必要な手順を実行する。基本的には、電気機器100から認証要求(パスワード等の認証コードの要求)を受けて、ユーザ400が情報端末10から入力した認証情報を、近接無線通信を介して電気機器100に返信する。この認証情報の返信は、最初の認証時だけユーザ400の操作が必要とされるものの、電気機器100の作動時の定期的な認証(再認証)においては、ユーザ400の操作を必要とせずに情報端末10が自動的に電気機器100に対して認証情報を返信するように構成できる。認証情報を受信した電気機器100は、受け取った認証情報と、予め電気機器100の制御部内に登録されている認証情報を照合して、それらが一致すれば“認証成功”、不一致ならば“認証失敗”と判断する。認証情報が一致した場合は、電気機器100を通常使用することができ、認証情報が不一致の場合は電動工具100の使用が阻止される。
【0020】
情報端末10にインストールされた専用のアプリは、通信可能範囲内にある電気機器100、ここでは電気機器100-1~100-3との通信を行い、それぞれの認証プロセスを実行する。図1の例では、稼働が許可された電気機器を丸印で、稼働が許可されない電気機器をバツ印で示している。電気機器100-1と100-2は、近接無線通信を用いた確認により認証コードの一致により稼働が許可され(後述の“通常作動モード”に移行)、電気機器100-3は、近接無線通信を用いた確認により認証コードの不一致が発生して稼働が禁止される(後述の“未認証停止モード”に移行)状態を示している。一方、電気機器100-4は、情報端末10と電気機器100との近接無線通信ができない、つまり無線可能範囲を超えた離れた位置にあるため、認証プロセスの実行ができない状態にあるのでその作動が禁止される(後述の“未認証停止モード”に移行)。
【0021】
近接無線通信手段として、例えばブルートゥース(Bluetooth: Bluetooth SIG, Inc. USAの登録商標)を用いることができる。採用する無線通信方式は任意であるが、ブルートゥース(登録商標)の伝送距離が数m~数十mであるため、電気機器100の使用可能範囲の限定をするのに有利だからである。情報端末10と電気機器100のそれぞれには、ブルートゥース(登録商標)による通信を行う無線通信部(図2で後述)が設けられる。
【0022】
近年、情報端末10では端末を使用するユーザ400を限定するために、情報端末10のユーザ登録とログインが必須とされ、ユーザ認証が成功しないとロック機構によって情報端末10の使用ができないように構成される。このログイン機能を利用すれば、図1のシステムで利用する専用アプリの使用者がユーザ400であることを保証できるので、電気機器100は情報端末10との通信成立によりユーザ400が正当であると確認できる。
【0023】
電気機器100の制御部は、起動時にユーザ400の正当性の認証のための認証プロセスを実行する。この認証は、電気機器100を使用する人(ユーザ)が正当であるかを検証する人的正当性の認証と、電気機器100に装着される機器(例えば電池パック50)の正当性の認証等、様々に設定可能である。電気機器100を使用する人(ユーザ)の認証プロセスの方法として、電気機器100にユーザ400に対する認証情報(パスコードや、指紋・顔・声など生体情報)を予め登録しておき、認証プロセスの実行時に情報端末10側から送信される認証情報との比較を行う。
【0024】
図2は電気機器100及び情報端末10の回路構成を示すブロック図である。電気機器100は、電気機器本体101と、電気機器本体101に対して着脱可能な電池パック50により構成される。電池パック50は、合成樹脂製のケース内に二次電池65を収容したものである。二次電池65は定格電圧3.6Vのリチウムイオン電池セルを5本直列接続して、正極端子51と負極端子52に定格18Vの電力を供給する。二次電池65への充放電は制御部55によって制御される。制御部55には、マイコン56と、記憶部57が含まれる。記憶部57は、マイコン56とは別に設けられる不揮発性のメモリであるが、マイコン56に内蔵された不揮発性メモリを用いても良く、制御部55のハードウェア構成は任意である
【0025】
マイコン56は、二次電池65の状態、例えば電圧、電流や電池セルの温度を監視する。電圧は電圧検出部58によって検出され、その出力は制御部55のマイコン56に入力される。5本の電池セル(二次電池65)には、電池保護IC60が接続される。電池保護IC60は、いわゆる“リチウムイオン電池用保護IC”として市販されている集積回路であり、二次電池65の各電池セルの両端電圧を入力することにより、電池セル各々の電圧を検出し、検出された電圧を用いて過充電保護機能、過放電保護機能の他、セルバランス機能、カスケード接続機能、断線検出機能等のいずれか一つ以上を実行する。電池保護ICは、二次電池65に対する過充電状態を検出したら、マイコン56に対して過充電検出信号61を出力し、過放電状態を検出したら、マイコン56に対して過放電検出信号62を出力する。
【0026】
二次電池65から流れる又は二次電池65に対して流れる電流は、二次電池65と直列に接続されたシャント抵抗59を用いて検出される。シャント抵抗59の両端電圧は電流検出部64により測定され、電流値としてマイコン56に出力される。二次電池65の温度は、その近傍に設けられたサーミスタ等のセル温度検出部63によって検出されマイコン56に入力される。マイコン56は、過放電検出信号62を受信した状態、即ち、二次電池65の電圧が規定の下限値を下回った際には、“放電禁止”とする放電許可/禁止信号69をLD端子53、113を介して電気機器本体101の制御部115に送出する。
【0027】
電池パック50には、情報端末10と近接無線通信を行うための無線通信部68が設けられる。無線通信部68としてブルートゥース(登録商標)用の送受信機が用いられる。無線通信部68は電池パック50のマイコン56により制御される。電池パック50と電気機器本体101の接続端子の一つとして通信端子54、114が設けられ、電池パック50の制御部55(マイコン56)と、電気機器本体101の制御部115(マイコン116)が通信可能である。従って、無線通信部68、通信端子54、114を用いて、電気機器本体101のマイコン116は情報端末10との双方向通信(点線矢印で示す中継通信モード32の通信経路を介して、外部機器(情報端末10等)から認証情報の受信が可能となる。
【0028】
電池パック50の制御部55には、ユーザ400の指示を入力するための操作部66が設けられる。操作部66としては、電池残量を4段階で表示するための残量チェックボタン(状態表示指示)、無線通信部68によってマイコン56が外部機器(例えば情報端末10)と通信を行う通信モードへの切替えるための通信スイッチ(通信設定)等が含まれる。
【0029】
制御部55にはさらに、ユーザ400に対して情報を表示するための表示部67が設けられる。表示部としては、複数(例えば4つ)の多色表示可能なLEDを用いて実現でき、電池残量を赤色の4段階で表示したり(残量表示)、電池パック50の異常状態を赤色LEDの点滅で表示したり(異常状態表示)、近接無線によるペアリングが確立しているか否かを1つの青色LEDの点灯で表示したり(通信状態表示)、認証が成功したことを1つの緑色のLEDの点灯で表示したりする(認証状態表示)。尚、表示部67を複数個の多色LEDによって実現するだけでなく、複数個の単色LED、セグメントLED、液晶ディスプレイ、その他の視覚的出力装置を用いるようにしても良い。また、電池の残量の表示スイッチ(図示せず)と、近接無線通信によるペアリング開始のための通信スイッチを兼用として、ボタンを普通に押す操作で電池の残量の表示をし、ボタンの長押しをしたらペアリングを開始するように構成しても良い。
【0030】
電気機器本体101にはモータ104が設けられ、図示しない先端工具を駆動する。電気機器本体101が電動工具の場合は、モータ104が、電池パック50の電力の大部分を消費する主な負荷部である。正極端子111から負極端子112に至る電力経路中には、トリガスイッチ106と、モータ104と、電力回路を遮断する半導体スイッチング素子107が介在される。トリガスイッチ106は、図示しない先端工具を起動するために作業者によって操作されるもので、ユーザ400がトリガスイッチ106をオンにするとモータ104が回転する。使用されるモータ104の種類は任意であり、例えばブラシ付きの直流モータや、図示しないインバータ回路を用いて駆動されるブラシレスモータを用いることができる。半導体スイッチング素子107として、例えばFET(電界効果トランジスタ)を用いることができ、制御部115からゲート信号を制御されることにより、電力経路を接続又は遮断(導通していない状態)に切り替える。
【0031】
電気機器本体101の制御部に115は、マイコン116と記憶部117が含まれる。制御部115はモータ104の回転制御を行うと共に、異常発生時にはスイッチング素子107を遮断状態にしてモータ104の回転を阻止(停止)する。また制御部115は、異常信号端子であるLD端子113を介して電池パック50のLD端子53から放電禁止信号が伝達されると、半導体スイッチング素子107のゲート信号をLowにしてソース-ドレイン間をオフ状態(非導通状態)にすることによりモータ104の回転を禁止(停止)する。図2では図示していないが、電気機器本体101内にも電流検出部を設け、電力経路に過電流が流れたことをマイコン116により監視する。
【0032】
制御部115の記憶部117は、不揮発性メモリで構成されており、プログラムを予め格納しておくと共に、ユーザ400に関する“認証情報”を格納し、また、情報端末10の無線接続用の識別情報を格納する。ここで“認証情報”は、ユーザ400が設定した英数字数桁からなるパスワード、生体情報をコード化した識別情報であるが、情報端末10が認証機能付きの場合は前記の識別情報に加えて、又は、前記の識別情報に代えて、ユーザ400が所有する情報端末10の固有番号(機器番号、ブルートゥース(登録商標)のID番号等)としても良い。
【0033】
制御部115のマイコン116は、ペアリング登録された外部機器(ここでは情報端末10)との無線通信を行う。ここでは、電池パック50側に無線通信部68が設けられるため、電池パック50が電気機器本体101側のマイコン116と、情報端末10側の制御部15との通信を中継する。制御部115には初回の情報端末10とのペアリングの際に、ユーザ400が使用する情報端末10の固有情報(近接無線通信に基づくID等)を格納する。そのため2回目以降の接続の場合は、ブルートゥース(登録商標)の接続手順に沿って自動的にペアリングを行うことができる。電気機器100側と情報端末10のペアリングが完了すると、情報端末10にインストールされた専用のアプリによって、電気機器本体101側のマイコン116との通信が行われ、認証情報の送受信が行われる。外部機器がスマートフォン等のユーザ400が専用に使用する機器であって、外部機器の使用に指紋認証がフェイス認証等の情報端末10に固有の認証(ログイン)が必要とされる場合は、情報端末10の認証結果をユーザ400の正当性判断に利用しても良い。この場合は、ユーザ400の所有するスマートフォン(情報端末10)と近接無線通信によるペアリングが確立したことで、電気機器本体101へのユーザ400の認証が完了した扱いとすれば良い。また、特定のタイミングでユーザ400の再確認が必要な場合は、ユーザ400に情報端末10へのログイン操作を再度行わせるようにすれば良い。
【0034】
制御部115には、ユーザ400の指示を入力するための操作部118が設けられる。操作部118としては、現在の状態(認証済みか否を示すLED、動作異常を示すLED等)を表示するためのチェックボタンと、電気機器本体101の作動モードの設定スイッチ等が含まれる。制御部115にはさらに、ユーザ400に対して情報を表示するための表示部119が設けられる。電気機器本体101としてどの作動モードが設定されているかを示す作動モード表示、動作異常が発生しているか否かを示す表示(異常状態表示)、ユーザ400に対する人的認証が正常に行われたか否かを示す表示(認証状態表示)等が含まれる。表示部119は、1つ又は複数のLEDにより実現できるが、複数個の単色又は多色LED、セグメントLED、液晶ディスプレイ、その他の視覚的出力装置を用いても良い。
【0035】
情報端末10は、図示しないCPU(Central Processing Unit)を含む制御部15を有し、制御部15は必要な情報を表示部11に表示させる。表示部11は、タッチ式のディスプレイを用いることにより情報を表示する出力機器(表示部11)と共に、ユーザ400による操作を入力するための入力機器(指示受付部12)として機能させることができる。情報端末10にはブルートゥース(登録商標)用の無線通信部13(端末側無線通信部)が設けられ、無線通信部13には図示しないアンテナが接続される。電池パック50の無線通信部68と、情報端末10の無線通信部13は所定の無線通信可能範囲で行うことができ、無線通信可能範囲を外れる(例えば機器同士の距離が遠すぎる等)と無線通信が不能となる。
【0036】
以上のように、電気機器100側(具体的には電池パック50)に無線通信部68を設けることにより、電気機器100と外部機器(ここでは情報端末10)との無線通信が可能となる。本実施例において電池パック50は、中継機器として、外部電気機器(情報端末10)と電池パックが装着された電気機器本体101との間の通信を可能としている(電池パック50の動作モードを“中継通信モード”と呼ぶ)が、電池パック50内でなく電気機器本体101内に無線通信部(図示せず)を設けるようにすれば、電池パック50を介することなく電気機器本体101のマイコン116と外部機器(ここでは情報端末10)が直接通信できる。
【0037】
上記構成において、情報端末10は専用アプリの起動時に、登録した相手(電池パック50A)と自動で無線接続し、認証用の情報を送信する。電池パック50は、未認証状態では無線通信接続試行状態として未認証作動モードとし、通信接続した場合に認証情報を受信して、記憶された認証情報と一致したら通常作動モードになる。電池パック50の制御部55は省電力のため、所定時間不使用状態が継続したらスリープ状態、又は、シャットダウンさせても良い。その場合、電源をオンにしたとき(電池パック50の制御部55がスリープ状態又はシャットダウン状態から復帰したとき)に改めて無線通信接続・認証処理を行う。これは、ユーザ400の操作なし(情報端末10のロック解除もなし)に認証処理が行われることを意図している。認証情報が記憶されている情報端末10において専用アプリがバックグラウンドで実行されており、設定済みの相手(電気機器100)と自動で通信接続及び認証処理が可能な構成を想定している。その構成の場合、省電力のために通信を解除しても、再び電源をオンにしたときに、自動で通信接続及び認証処理が行われるため、作業性を損なわない利点がある。
【0038】
図3図1の電気機器100に示す認証モードの遷移図である。(A)は従来例の認証手順の例である。電気機器100を使用するに当たって、ユーザ400は電気機器本体101に対して個人認証を行う。図3(A)において、時刻0において電気機器本体101のマイコン116が起動(スリープ状態又はシャットダウン状態から復帰)すると、マイコン116は認証プロセスを開始する。電気機器本体101がインパクト工具等の電動工具である場合は、トリガスイッチ106が引かれると制御部115に動作用の定電圧(5V又は3.3V)が供給されるので、マイコン116が起動する。起動したマイコン116は情報端末10に対して認証コードの送信要求をする。情報端末10から認証情報を受信した電気機器本体101のマイコン116は、記憶部117内に登録されている認証情報と比較し、一致するならば“認証成功”、不一致ならば“認証失敗”との判定を行う。図3(A)は従来例で認証が成功した場合を示しており、時刻tにて、認証プロセス121が完了して“認証成功”との結果となると、電気機器本体101は初めて動作が可能となる。本発明では、この通常の動作が可能な作動モードを「通常作動モード」と呼ぶ。尚、図示していないが、時刻tにて認証失敗した場合は、電気機器本体101の使用ができない。
【0039】
図3(B)は本実施例に係る認証モードの遷移図である。時刻0にてシャットダウン中の電気機器本体101のトリガスイッチ106が引かれると、電気機器本体101は情報端末10とのとの通信を開始し、認証プロセス121を開始する。認証プロセス121では、情報端末10に対して認証コードの送信要求をする。同時に、電気機器本体101のマイコン116は、制限的な条件の下でモータ104を起動し、電気機器本体101を稼働させる(未認証作動モード123)。このように未認証状態でも作動する“未認証作動モード”を設け、“未認証作動モード”では、所定時間の経過まで、または、認証失敗が数回まで作動可能とした。未認証作動モード”と“通常作動モード”の違いは、“未認証作動モード”では、時間的制限又は/及び認証プロセス終了までの作業を可能とした期間的な制限、電気機器の主機能が作動しない等の機能的な制限、電気機器の出力が低くなる等の出力的な制限、のいずれか一つ以上が付加される。ここで、「未認証でも作動する」とは、機器の主目的の機能が作動することを意味し、その作動のために必要な処理を含む。例えば、電動機器ならアクチュエータへの通電、熱電機器(冷温庫、ヒーター、炊飯器など)なら熱電装置や素子への通電、照明機器なら発光素子への通電(特に照明として期待される程度の光量・時間が得られる通電)である。未認証作動モード123では、通常作動モード122とは異なる状態で電気機器本体101を稼働させることにより、ユーザに対して未認証状態での使用であること、又は、制限付きの使用モードであることを報知器(特定のLEDの点灯態様による区別)やモータ動作(例えば、通常作動モードに比べて、モータ104の回転の立ち上がりが遅い、回転数が低い、回転の立ち下がりが遅い等による区別)で報知するようにしてもよい。
【0040】
未認証作動モードでの制限を稼働期間による制限とする場合は、期間が満了するまでは未認証作動モード123でも通常と同等の作動を実行できる。この未認証作動モード123の実行と並行して、マイコン116による認証プロセス121が並行して実行される。つまり、図3(B)で示すように、電気機器本体101に、未認証でも作動する“未認証作動モード123”を設けて、未認証状態でのトリガスイッチ106を引いたらすぐに電気機器本体101が稼働するようにした。次に、未認証作動モード123の実行と並行して行われる認証プロセス121によって、時刻tにおいて、認証プロセス121が完了して“認証成功”との結果がでると、電気機器本体101のマイコン116は、“未認証作動モード123”から“通常作動モード122”に移行させる。“通常作動モード”は、未認証作動モード123の制限を解除した作動モードである。なお、再認証については、一定周期ではなく、不使用状態が一定時間継続した場合に行っても良い。又は、通常作動モードでは再認証せず、省電力のために不使用状態が一定時間継続してマイコンがシャットダウンしたら、次の起動時に未認証作動モードとなるようにしても良い。
【0041】
通常作動モード122では電気機器本体101の通常の使用を許可し、マイコン116がシャットダウンするまで使用許可状態を維持しても良い。しかしながら、セキュリティの向上のために、通常作動モード122の所定時間毎に認証を行うようにし、認証失敗したら未認証作動モード(又は未認証停止モード124)へ移行させても良い。ここでは、認証完了してから所定時間Tだけ経過したあとに、認証プロセス121aを再度実行する。そして時刻tにて認証結果が“認証成功”の場合はそのまま“通常作動モード”を維持し(通常作動モード122a)、認証結果が“認証失敗”の場合は“未認証停止モード124”に移行する。“未認証停止モード124”では半導体スイッチング素子107のソース-ドレイン間を遮断(非導通)することによりモータ104の回転が阻止(停止)される。このように、本実施例では認証が失敗したら、未認証停止モード124へ移行することにより、認証されていないユーザによる電気機器100の使用を禁止する。
【0042】
図3(C)は本実施例に係る最初の認証プロセスで認証失敗した際の遷移図である。時刻0~時刻t付近までの動作は、図3(B)の手順と同じである。ここでは時刻tよりも後の時刻tにおいて認証失敗になっている。認証失敗が起こる具体的な例としては(1)近接無線通信による通信可能範囲外である場合、(2)認証コード不一致による場合、があげられる。近接無線通信による通信可能範囲外である場合は、近接無線通信路が確立しないため時刻tを過ぎても認証が未完了のままとなり、時刻tにて制限時間到達(タイムアウト時間T経過)により“認証失敗”が確定する。すると、電気機器本体101のマイコン116は、電気機器本体101の動作を停止させるべくスイッチング素子107のゲート信号をLowにすることにより、スイッチング素子107のソース-ドレイン間を遮断し、モータ104の回転を阻止(停止)する。この状態が“未認証停止モード124”である。
【0043】
未認証作動モード124への移行は、所定時間T経過の時点(時刻t)、又は、未認証失敗が確定した時点(例えば認証コードが複数回不一致した時点)であり、それまで未認証作動モード123で稼働していた電気機器本体101は、認証できないことが確定した時点にて稼働が阻止(停止)される。また、未認証作動モード123で認証が成功したら、認証が成功した旨を示す特定のLEDの点灯表示をすると良い。さらに、図3(B)、(C)の未認証停止モード124では、所定時間毎(例えばT時間毎)に認証を試行するようにして、認証が成功したら、通常作動モード122に切り替えて半導体スイッチング素子107のソース-ドレイン間を導通させるようにしても良い。
【0044】
以上、本実施例のように未認証作動モード123を設けることで、作動開始前の認証に要する時間がかかって作業開始が遅れるという問題を解消できる。また、認証機器たる情報端末10の制御部15が省電力モードやスリープモードになっている場合であっても、電気機器本体101をすぐに動作させることができるので、ユーザにとって便利であり、作業性を向上することができる。また、近接無線通信の場合は、電気機器本体101側と情報端末10とのリンク確立に時間がかかるが、その遅延の問題も解消できる。多くの認証を要する電気機器の場合は、未認証状態では全く使わせないようにするのが普通である。しかしながら、未認証でも使用を開始させた方が良い電気機器も存在する。例えば、個人認証を用いて電気機器の盗難抑止を図るような場合である。盗難防止を図る目的であるならば、未認証だとすぐに停止してしまうような電気機器ならば、盗難後は実質的に電動工具として役に立たないので、盗難抑制効果は十分達成できる。
【0045】
次に図4のシーケンス図を用いて、情報端末10、電池パック50、電気機器本体101の操作と、通信を用いた認証手順を説明する。図4の例では電池パック50を電気機器本体101に装着し、情報端末10とペアリングを行い(認証モード)、ペアリング状態を維持したままで電気機器本体101の駆動を行う(通常作動モード)。
【0046】
まず、電池パック50と情報端末10のペアリングを行うために、作業者(ユーザ400)は電池パック50が装着された状態で電気機器本体101の作動スイッチ(ここではトリガスイッチ106)を操作する(ステップ401)。すると、シャットダウン又はスリープ状態にあった電気機器本体101のマイコン116(図2参照)と、電池パック50のマイコン56(図2参照)が起動する。次に、電気機器本体101のマイコン116は、動作モードを“未認証作動モード”に設定し(ステップ151)、電力で駆動される負荷装置(ここではモータ104)の稼働を許可する(ステップ152)ことによってモータ104がオンになる(ステップ125)。この稼働許可は、マイコン116がスイッチング素子107のゲート信号をHighにして、ソース-ドレイン間を導通させることで、トリガスイッチ106の操作によりモータ104への電力が供給される。
【0047】
次に、電気機器本体101のマイコン116は、電池パック50のマイコン56に対して、認証情報を取得して返信するように要求する(ステップ153)。認証情報要求を受けた電池パック50のマイコン56は、情報端末10への通信接続を試行する(ステップ71)。まず、近接無線通信(ここではブルートゥース(登録商標))を用いて情報端末10に機器情報を送信する(ステップ72)。情報端末10は、受信した機器情報から情報端末10と接続可能な機器であるか否かを判定し(ステップ22)、接続可能な機器ならば接続要求を行う(ステップ23)。次に、通信接続の確立、いわゆるペアリング登録を行う。ここで「ペアリング」とは、無線通信を用いて情報端末10と、電池パック50側の関連づけ登録を行う作業であり、これらの登録作業(ペアリング)を行うことにより、情報端末10は、ペアリングされた特定の電池パック50との通信を行うことができる。このペアリング相手の関係は、情報端末10:電池パック50の数=1:1でも良いが、1:n(nは自然数)であっても良い。nがいくつまでペアリングできるかは、使用する無線通信規格に依存する。また、所有するすべての無線接続可能な電池パックと同時にペアリングさせても良いが、必ずしも全数を同時に行う必要は無く、稼働させる電気機器本体101に装着された電池パック50だけを選択してペアリングさせるようにすれば良い。
【0048】
情報端末10と電池パック50の無線通信接続が確立されると(ステップ24)、電池パック50のマイコン56は中継通信モードを設定し(ステップ73)、情報端末10に対して認証情報の送信要求を行う(ステップ74)。送信要求を受けた情報端末10は、専用のアプリによって入力された情報、又は、予め登録されている情報に従って認証情報を電池パック50に送信する(ステップ25)。電池パック50のマイコン56は、受け取ったデータを通信端子54、114(図2参照)を介して電気機器本体101に伝達する(ステップ75)。電気機器本体101のマイコン116は、情報端末10から受け取った認証情報と、自らの記憶部117(図2参照)に登録されている認証情報を照合して正当性を判定する。ここで、認証が成功すると(ステップ154)、電気機器本体101のマイコン116は、認証結果を電池パック50を介して情報端末10に送信する(ステップ155、76)し、作動モードを“未認証作動モード”から“通常作動モード”に切り替える(ステップ156)。この切り替えタイミングが、図3(B)の時刻tの操作に対応する。通常作動モードでは、電気機器本体101の機能を制限無く使用することができる。また、ステップ76にて認証結果(ここでは“成功”)を受け取った情報端末10は、その旨を示す可視的な情報を表示部11に表示する(ステップ26)。
【0049】
以上のように、電池パック50を装着して電気機器本体101を使用する際に認証動作を行い、認証が成功したら“通常作動モード”にて使用が可能になる。しかしながら、認証は1回だけでなく、所定の間隔(例えば絶対時間間隔、実作業時間間隔、作業回数間隔)にて再認証プロセスが実行される。ここでは認証成功から所定時間Tが経過したら(ステップ157)、通信端子114、54を介して電池パック50のマイコン56に対して認証情報を情報端末10に要求する(ステップ158)。認証情報要求を受け取った電池パック50のマイコン56は、中継通信モードに切り替えて(ステップ77)、無線通信にて情報端末10に認証情報の送信要求を行う(ステップ78)。
【0050】
送信要求を受けた情報端末10は、登録済みの認証情報を電池パック50に再送信する(ステップ27)。電池パック50のマイコン56は、受け取ったデータを通信端子54、114を介して電気機器本体101に転送し(ステップ79)、電気機器本体101のマイコン116は、情報端末10から受け取った認証情報を用いて認証の整合性を再判定する。ここで、認証が成功すると(ステップ159)、電気機器本体101のマイコン116は、それまでの“通常作動モード”を維持し、認証結果を電池パック50を介して情報端末10に送信する(ステップ160、80)。ステップ80にて認証結果(ここでは“成功”)を受け取った情報端末10は、その旨を示す可視的な情報、即ちステップ26で表示済みの情報を表示部11に継続表示する(ステップ28)。
【0051】
以上のように、電気機器本体101のマイコン116は、認証モードをモータ104の実際の稼働とは並列して行うことにより、図中のステップ401からステップ154までに至る最初の認証プロセスの最中に、モータ104の稼働を行うことができる。尚、図4の例では電気機器本体101の例として電動工具とし、その負荷部の例として図示しないインパクト機構を駆動するモータ104の例で説明したが、電気機器本体101の種類や作業内容は任意であり、電池パック50を用いて何らかの作業、例えば、モータの回転、照明装置の点灯、音響装置の稼働、発熱又は吸熱装置の稼働を行う機器であって、外部機器との通信を行う制御部を有するものであるならば、任意の電気機器本体101であっても良い。また、電池パック50は着脱可能である必要は無く、電気機器100に内蔵するタイプの電気機器であっても、同様に本実施例を適用できる。
【0052】
次に、図5を用いて電気機器本体101のマイコン116における作動モードの設定手順を説明する。図5で示す一連の手順は、電気機器本体101のマイコン116にあらかじめ格納されたプログラムによってソフトウェア的に実行される。図5のフローは、電池パック50が電気機器本体101に装着され、マイコン116が起動状態になって認証判定(図4で言えばステップ154、159)ごとに実行される。又は、所定時間間隔毎、或いは、認証判定毎に実行されるようにしても良い。また、図5のフローチャートは動作モードの設定手順であって、並行して行われるモータ104の回転制御とは別の処理である。
【0053】
最初にマイコン116は、電気機器本体101を使用する個人が正当であるか否かの人的認証が完了しているか否かを判定する(ステップ131)。ここで、人的な認証が完了していない場合は、マイコン116は“未認証停止モード”に設定済みか否かを判定する(ステップ132)。ここで“未認証停止モード”が設定されている場合はステップ134に進み、設定されていない場合は電気機器本体101の動作モードを“未認証作動モード”に設定してからステップ134に進む(ステップ133)。
【0054】
ステップ134では、“未認証作動モード”が設定されているか否を判定する。“未認証作動モード”が設定済みでない場合は、ステップ138に進む。“未認証作動モード”が設定されている場合は、作動開始から所定時間Tが経過しているか否かを判定し(ステップ135)、経過していたら電気機器本体101の動作モードを“未認証停止モード”に設定して、モータ104の稼働を禁止(停止)する(ステップ137)。この所定時間(T図3の時刻0~t)は、いわゆるタイムアウトであり、例えば数十秒~数分程度に設定可能である。ステップ135で所定時間Tが経過していない場合は、認証プロセスの実行の結果、認証が成功しているか否かを判定する(ステップ136)。ここで、認証が失敗の場合は、電気機器本体101の動作モードを“未認証停止モード”に設定して、モータ104の稼働を禁止し(ステップ137)、認証が成功の場合はステップ138に進む。
【0055】
ステップ138にて認証が成功しているか否かを判定し、成功ならば動作モードとして“通常作動モード”を設定する(ステップ139)。認証が成功していない場合は、ステップ140に進む。ステップ140では“通常作動モード”であるか否かを判定し、“通常作動モード”が設定済みでない場合は処理を終了し(ステップ140)、“通常作動モード”である場合は、認証が失敗したか否かを判定する(ステップ141)。ステップ141で認証が失敗ならば、電気機器本体101の動作モードを“未認証作動モード”に設定し(ステップ142)、失敗でない場合は処理を終了する。以上の手順によって、電気機器本体101の作動モードとして、“未認証作動モード”、“通常作動モード”、“未認証停止モード”のいずれかが設定されることになる。
【0056】
次に図6のフローチャートを用いて、電気機器本体101のマイコン116における認証処理の実行判断手順を説明する。この認証処理は図3の認証プロセス121、121a…として、作動モードにかかわらず定期的な時間間隔Tで実行される処理である。最初に、電気機器本体101のマイコン116は、それまで設定されていたモードが“未認証作動モード”か否かを判定する(ステップ161)。ここで、未認証作動モードの場合は認証処理を行う(ステップ162)。これらステップ161と162の処理手順が図4のステップ164で行われる処理に相当する。
【0057】
ステップ163では、設定されているモードが未認証停止モードであるか否かを判定する。未認証停止モードの場合は、前回の認証失敗の時から所定時間Tが経過しているか否かを判定し(ステップ164)、所定時間Tが経過したら認証処理を行い(ステップ165)、所定時間Tが経過していなかったらステップ166に移行する。
【0058】
ステップ166では、設定されているモードが通常作動モードであるか否かを判定する。通常作動モードの場合は、前回の認証失敗の時から所定時間Tが経過しているか否かを判定し(ステップ167)、所定時間Tが経過したら認証処理を行い(ステップ168)、所定時間Tが経過していなかったら図6に示す処理を終了する。これらステップ166~168の処理手順が図4のステップ157、159で実行される処理に相当し、作動モードにかかわらず定期的な時間間隔毎に実行される。
【0059】
次に図7のシーケンス図を用いて、電気機器本体101における認証失敗時の処理手順を説明する。図7において、鎖線A1から上側に示す処理は図3で示したシーケンス図と同一手順であり、同一番号の符号を付している。ステップ170が、図6のステップ161、162に至る処理であり、その認証処理の結果、認証が失敗し、“未認証停止モード”となった手順を示している。ステップ170における認証結果が“認証失敗”の場合は、その認証結果を電池パック50を介して情報端末10に伝達する(ステップ171、76A)。同時に、自らの動作モードを“未認証停止モード”に設定し(ステップ172)、半導体スイッチング素子107のソース-ドレイン間を遮断することでモータ104の動作を禁止する(ステップ173)。尚、図7のステップ番号において、図4に対応するステップ番号の末尾にAを付加しているのは、図4に示すステップの処理と同じ処理であるが、伝達される情報内容が異なる場合を示している。“認証失敗”の結果を受信した情報端末10は、その結果を表示部11に表示することによりユーザ400に、電気機器本体101が“未認証停止モード”に設定され、再認証が行われない限り稼働できないことを報知する(ステップ26A)
【0060】
電気機器本体101のマイコン116は、ステップ173における認証失敗から設定された所定時間(=T)が経過したか否かを監視し、所定時間Tが経過したら(ステップ174)、再認証を行うべく、電池パック50を介して情報端末10に対して認証情報の送信要求を行う(ステップ175)。認証情報の送信要求を受け取った電池パック50のマイコン56は、中継通信モードを実行し(ステップ77A、78A)、電気機器本体101から受け取った認証情報要求を近接無線通信を用いて情報端末10に伝達する(ステップ77A)。
【0061】
認証情報の送信要求を受け取った情報端末10は、近接無線通信を用いて電池パック50に認証情報を送信し(ステップ27)、電池パック50のマイコン56は、受け取った認証情報を通信端子54、114を介して電気機器本体101に転送する(ステップ79A)。認証情報を受け取った電気機器本体101のマイコン116は、認証処理を実行する(ステップ176)。図7の処理は、図6のフローチャートのステップ163~165の処理に相当する。
【0062】
ステップ176にて“認証成功”になると、電池パック50を介して情報端末10に対して認証結果の伝達を行う(ステップ177)と共に、電気機器100を通常作動モードに設定し(ステップ178)、半導体スイッチング素子107のゲート信号をハイにすることによりモータ104の起動を許可する(ステップ179)。認証結果を受け取った電池パック50のマイコン56は、中継通信モードの実行であるので、電気機器本体101から受け取った認証結果を近接無線通信を用いて情報端末10に伝達する(ステップ80A)。認証結果を受け取った情報端末10は、その結果を表示部11に表示する(ステップ28A)。この結果、ユーザ400は、電気機器本体101が“通常作動モード”に設定され、電気機器本体101を正常に稼働できるようになったことを認識できる。その後、ユーザ400は、作業スイッチ(トリガスイッチ106)をオンにすることで、電気機器本体101のモータ104が起動する(ステップ402、126)。
【0063】
以上説明した実施例においては、電気機器本体101には無線通信部が設けられておらず、電池パック50に無線通信部68を設けることで、電気機器100(電気機器本体101と電池パック)が外部機器である情報端末10と通信できるように構成した。本発明はこの構成に限定されるものではなく、電気機器本体101に無線通信部128(後述の図8参照)を設けて、電気機器本体101のマイコン116と情報端末10が無線通信によって直接通信するように構成しても良い。その構成を示すのが図8である。
【実施例0064】
図8は本発明の第2の実施例に係る電気機器100A及び情報端末10の回路構成を示すブロック図である。電気機器100Aと電池パック50Aの構成は、無線通信部128と無線通信部68(図2参照)の有無を除き、図2で示した電気機器100と同一であり、同一の部分には同じ符号を伏しているので、繰り返しの説明は省略する。第2の実施例では、電気機器本体101Aに無線通信部128を設けて、制御部115のマイコン116が、近接無線通信を用いて情報端末10と直接通信を行う。従って、電池パック50A側には無線通信部68(図2参照)を設ける必要がない(但し、無線通信部68が有っても良い)。
【0065】
情報端末10の構成は、図1図2で示したものと同一で有り、専用のアプリを入れる点も同様であるが、情報端末10から見た接続先ID情報が第1の実施例では電池パック50の無線通信部68の接続IDであるのに、第2の実施例では電気機器本体101Aの無線通信部128の接続IDが設定される点で異なる。通信を用いた認証手順のシーケンスは、情報端末10と電気機器本体101Aの通信が、電池パック50を介さずに直接行われることを除いて図4図7と同様である。つまり、図4図7から電池パック50を除いた構成とほぼ同様になる。
【0066】
第2の実施例の特徴は、電池パック50に無線通信部68を設ける必要がなくなる点である。また、電気機器本体101を用いた作業を行う場合に、複数の電池パック50を準備して、それらを交換しながら作業を行うが、その場合であっても情報端末10から見た接続先が固定(無線通信部128)であるので、電池パック50、50Aの交換時においても迅速に承認プロセスを実行できる。
【0067】
以上、第1及び第2の実施例では、電気機器本体101を使用するユーザが正当であるか否かの認証(人的認証)において、“未認証作動モード”を設けるように構成したが、同様の認証及び稼働手順を、電気機器本体101に装着又接続される機器の正当性の認証プロセス時に適用することも可能である。例えば、電池パック50、50Aが、純正品(正規品)であるかの認証(物的認証)を行う際に、認証プロセスが完了する前にモータ104の起動を可能にして、認証プロセスが終了した時点で、電池パック50、50Aが、非正規品と判断された場合(この場合は、認証失敗となる)は、“未認証停止モード”に移行させるようにすれば良い。つまり、電気機器本体101のマイコン116は、図6のフローチャートの認証処理時に、ユーザ400の正当性を認証することに加えて、又は、代えて、装着されている電池パック50、50Aが正規品(純正品)又は管理されている電池パックであるか否かを検証する。
【0068】
電気機器本体101のマイコン116は、ユーザ400の認証(第1の認証)及び/又は電池パック50、50Aの認証(第2の認証)を行うようにして、双方又は一方の認証が成功したら“通常作動モード”に移行させる。このように電池パック50の正当性も合わせて認証するようにすれば、コピー商品の使用を抑制できる。尚、電池パック50、50Aが、電気機器100、100Aに対して純正品であるか否かの認証プロセスは、通信端子54、114、又は/及び、その他の図示しない通信端子を介して有線による通信で行うことができる。例えば、使用機器の一つである電池パックとして、第1の電池パック(正規品、管理されている電池パック)が電気機器本体101に接続された状態でトリガスイッチ106を操作すると、未認証作動モード122でモータの駆動を開始する。その後、第1の電池パックと電気機器本体101との間での認証が成功すると、トリガスイッチ106が操作されている間、第1の電池パックが正常の場合、通常動作モード123にてモータの駆動を継続する。一方、第2の電池パック(非正規品、管理されていない電池パック)が電気機器本体101に接続された状態でトリガスイッチ106を操作すると、未認証作動モード122でモータの駆動を開始する。その後、第2の電池パックと電気機器本体101との間での認証が失敗すると、トリガスイッチ106が操作されていても未認証停止モードに移行し、モータの駆動を停止する。
【実施例0069】
次に図9を用いて本発明の第3の実施例を説明する。第1及び第2の実施例では電気機器本体101のマイコン116が情報端末10と通信を行うことにより、認証プロセスを行っていた。第3の実施例では電池パック50に無線通信部68を持たせると共に、ユーザ400に関する認証を行わせるようにしたものである。ハードウェア構成は図2で示したものと同じであり、電池パック50の記憶部57と、電気機器本体101の記憶部117に格納されているプログラムが異なる。図9は、電池パック50のマイコン56がコンピュータプログラムを実行することによって実現される制御である。
【0070】
電池パック50が電気機器本体101に装着され、最初にトリガスイッチ106がオンにされると電気機器本体101のマイコン116(図2参照)が起動する。すると、マイコン116は、認証処理を実行するように通信端子114、54を介して電池パックに要求するので、電池パック50のマイコン56は認証要求を受信する(ステップ188)。この要求には、電気機器本体101の使用が許可されるユーザ400に関する情報(認証情報)を含まれる。認証情報は、一時的に電池パック50の記憶部57に格納される。
【0071】
次に電池パック50のマイコン56は、近接無線通信を用いて情報端末10との接続を試行する(ステップ189)。この手順は、近接無線通信がブルートゥース(登録商標)の場合は、その規格に沿って行われる。ステップ190で通信接続が確立したら(ステップ190でYES)、電池パック50のマイコン56は、通信相手たる情報端末10に対して認証のためのパターン情報を送信するように要求する(ステップ191)。この際、電気機器本体101の記憶部117には、認証用に記憶したパターン情報(パスコードや生体情報(指紋,顔,声など))記録されている。ステップ190にて通信接続が確立しなかったらステップ190に戻る。次に、電池パック50のマイコン56はパターン情報を受信したか否かを判定する(ステップ192)。
【0072】
ステップ192にて、パターン情報を受け取れなかったら、パターン情報を要求してからの時間が所定の時間(タイムアウト時間)を越えたか否かを判定し、越えていたら認証失敗であるとしてステップ195に進む。ステップ192にてパターン情報を受信したら、電池パック50のマイコン56は、ステップ188にて情報端末10から受信した認証情報とパターン情報を比較することにより、それらが一致するか否かを判定する(ステップ193)。一致した場合は、認証成功であるので、“認証成功”との認証結果を通信端子54、114(図2参照)で電気機器本体101に伝達すると共に、近接無線通信にて情報端末10にも認証成功である旨を伝達して処理を終了する。“認証成功”との認証結果を受け取った後の電気機器本体101のマイコン116の制御は、図4のシーケンス図のステップ154以降の制御(155~160)と同じである。また、“認証成功”との認証結果を受け取った後の情報端末10の制御は、図3のシーケンス図のステップ26、28と同じである。
【0073】
ステップ193にて電気機器本体101から受信した認証情報と情報端末10から受け取ったパターン情報が一致しなかった場合は認証失敗であるので(ステップ197)、認証のリトライを行う。ここでは、失敗回数3回目まではステップ191に戻ることにより再認証を行う。失敗回数が3回続いたらステップ195に進み、“認証失敗”との認証結果を通信端子54、114(図2参照)で電気機器本体101に伝達すると共に、近接無線通信にて情報端末10にも伝達して処理を終了する。“認証失敗”との認証結果を受け取った後の電気機器本体101のマイコン116の制御は、図7のシーケンス図のステップ170以降の制御(173、174)と同じであり、モードが“未認証停止モード”に変更される。また、“認証失敗”との認証結果を受け取った後の情報端末10の制御は、図7のシーケンス図のステップ26と同じである。
【0074】
第3の実施例では認証機能付きの電池パック50Aを用いることで、ユーザ認証機能をもたない従来の電気機器本体101でも、ユーザ400の正当性を判断することができる。また、認証プロセスに要する時間が、作動時間に影響しないので、電気機器の迅速な作業開始が可能となる。また、電池パック50Aに認証機能を持たせることにより、電気機器本体101の認証機能の有無が作動時間に影響しない。さらに、認証技術や環境(情報端末の種類/設定を含む)によって、作動時間が遅れることが無く安定した使用感の電動工具を実現できる。
【0075】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えば、上述の実施例では電気機器の一例として電動工具の一つであるインパクト工具で説明したが、電気機器は、ユーザ認証の必要な機器であれば任意の機器でも実現可能である。尚、本発明の認証装置は、情報端末10だけでなく、被認証機器(電気機器100)からの無線による要求に応じて、予め決められた認証コードを無線にて返信する小型無線装置、いわゆる電子キーを用いた認証装置であっても良い。この場合は、ユーザは被認証機器(電子キー)を持つか、または、近接の場所に置かないと電気機器100を通常作動モードで動作できないようなシステムになる。
【符号の説明】
【0076】
1 電気機器システム 10 情報端末 11 表示部 12 指示受付部
12a タッチパッド 12b カメラ 13 無線通信部 15 制御部
32 中継通信モード 50、50A 電池パック 51 正極端子
52 負極端子 53 LD端子 54 通信端子 55 制御部
56 マイコン 57 記憶部 58 電圧検出部 59 シャント抵抗
60 電池保護IC 61 過充電検出信号 62 過放電検出信号
63 セル温度検出部 64 電流検出部 65 二次電池 66 操作部
67 表示部 68 無線通信部 69 禁止信号
100、100A 電気機器 101、101A 電気機器本体
104 モータ 106 トリガスイッチ 107 半導体スイッチング素子
111 正極端子 112 負極端子 113 LD端子
114 通信端子 115 制御部 116 マイコン 117 記憶部
118 操作部 119 表示部 121、121a 認証プロセス
122、122a 通常作動モード 123 未認証作動モード
124 未認証停止モード 128 無線通信部 131 未認証作動モード
132、132a 通常作動モード 133 未認証停止モード
200 ネットワーク網 220 サーバ装置 230 電話回線
235 通信スイッチ 400 ユーザ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9