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特開2022-18346コンクリート構造物及びそれに用いる接続用補強筋
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022018346
(43)【公開日】2022-01-27
(54)【発明の名称】コンクリート構造物及びそれに用いる接続用補強筋
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/04 20060101AFI20220120BHJP
   E04B 1/16 20060101ALI20220120BHJP
   E04C 5/18 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
E04B1/04 E
E04B1/16 L
E04C5/18 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020121400
(22)【出願日】2020-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(74)【代理人】
【識別番号】100212059
【弁理士】
【氏名又は名称】三根 卓也
(72)【発明者】
【氏名】中谷 郁夫
(72)【発明者】
【氏名】谷口 哲憲
(72)【発明者】
【氏名】小山 直人
【テーマコード(参考)】
2E164
【Fターム(参考)】
2E164AA02
2E164BA02
2E164BA22
(57)【要約】
【課題】2つのコンクリート部材を接合させてコンクリート構造物を構成する場合に、構造物に設計上必要なせん断耐力を確保し、且つ、2つのコンクリート部材間でのジベル機能を十分に確保する。
【解決手段】第1のコンクリート部材には複数の下部主鉄筋と当該下部主鉄筋に交差する方向に延伸する下部配力筋が埋設され、第2のコンクリート部材には複数の上部主鉄筋と当該上部主鉄筋に交差する方向に延伸する上部配力筋が埋設され、打継面において第1のコンクリート部材と第2のコンクリート部材との間に跨って配置される接続用補強筋を備え、接続用補強筋は第1のコンクリート部材及び第2のコンクリート部材の内部においてコンクリート構造物の内部方向に向かってU字形になるように折り返された形状を有し、接続用補強筋の一方の端部は第1のコンクリート部材から第2のコンクリート部材に向かって突出するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部構造としての第1のコンクリート部材と、上部構造としての第2のコンクリート部材と、を打継面において接合させて構成されるコンクリート構造物であって、
前記第1のコンクリート部材には複数の下部主鉄筋と当該下部主鉄筋に交差する方向に延伸する下部配力筋が埋設され、
前記第2のコンクリート部材には複数の上部主鉄筋と当該上部主鉄筋に交差する方向に延伸する上部配力筋が埋設され、
前記打継面において前記第1のコンクリート部材と前記第2のコンクリート部材との間に跨って配置される接続用補強筋を備え、
前記接続用補強筋は前記第1のコンクリート部材及び前記第2のコンクリート部材の内部において前記コンクリート構造物の内部方向に向かってU字形になるように折り返された形状を有し、
前記接続用補強筋の一方の端部は前記第1のコンクリート部材から前記第2のコンクリート部材に向かって突出するように構成されることを特徴とする、コンクリート構造物。
【請求項2】
前記接続用補強筋は、前記第1のコンクリート部材の内部において前記下部主鉄筋及び前記下部配力筋のいずれか一方あるいは両方に係留され、且つ、前記第2のコンクリート部材の内部において前記上部主鉄筋及び前記上部配力筋のいずれか一方あるいは両方に係留されることを特徴とする、請求項1に記載のコンクリート構造物。
【請求項3】
前記第1のコンクリート部材はプレキャストコンクリート部材であり、前記第2のコンクリート部材は現場打ちコンクリート部材であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のコンクリート構造物。
【請求項4】
前記接続用補強筋は、その両端が互いに突き合わされるように同一方向に向かって折り返され、断面視で略C字形状を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
【請求項5】
前記接続用補強筋は、その両端が異なる方向に向かって折り返され、断面視で略S字形状を有することを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
【請求項6】
前記接続用補強筋において、前記第1のコンクリート部材から前記第2のコンクリート部材に向かって突出する端部には平面状の鋼板からなる定着板が取り付けられることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
【請求項7】
前記接続用補強筋において、前記第1のコンクリート部材から前記第2のコンクリート部材に向かって突出する端部には水平方向に伸びる折り曲げ部が形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
【請求項8】
前記接続用補強筋において、前記第1のコンクリート部材から前記第2のコンクリート部材に向かって突出する端部には略半円形状のフック部が形成されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のコンクリート構造物。
【請求項9】
複数のコンクリート部材の打継面において、コンクリート部材間に跨って配置される接続用補強筋であって、請求項1~8のいずれか一項に記載のコンクリート構造物において前記複数のコンクリート部材の内部鉄筋に係留され、当該複数のコンクリート部材同士を接続させることを特徴とする、接続用補強筋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのコンクリート部材が接合されてなるコンクリート構造物及びそれに用いる接続用補強筋に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄筋コンクリート構造等の鉄筋を有するコンクリート複合構造物において、2つのコンクリート部材を接合させて床部材や壁部材を構成することが知られている。その際、2つのコンクリート部材の打継面(境界部)においては、設計上、せん断破壊を防止するためにせん断補強筋やせん断補強筋に代わる鋼板等を配置することが求められる。
【0003】
せん断補強筋やせん断補強筋に代わる鋼板等は、主鉄筋が配置された後に配置されることが通例であり、主鉄筋の配筋工程とは別にせん断補強筋等の配筋工程が必要となるため、労力や工期が求められる。特に、要求される耐荷重が大きい場合、多くのせん断補強筋等を配置する必要があるため、労力や工期が過大となる。そこで、例えば、特許文献1には、せん断耐力を確保しつつ容易に施工することができる鋼コンクリート複合構造やその施工方法が開示されている。特許文献1に係る技術によれば、孔あき鋼材を用いることで施工のための労力の軽減や工期の短縮を図ることができ、せん断耐力の確保も実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-188851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術では、せん断耐力を確保するための構成として板面が長方形状の長尺の平板状である孔あき鋼材を用いている。一般的に2つ(あるいはそれ以上)のコンクリート部材を接合させて床部材や壁部材を構成する場合に、せん断耐力と共に2つのコンクリート部材間でのずれ止め機能(いわゆるジベル機能)を担保することが求められる。この点に関し、特許文献1に記載の技術は、せん断耐力を確保するために孔あき鋼材を用い、加えて接合鋼板を用いて複数のコンクリート部材を接合させる構成が開示されているが、ジベル機能を確保する技術については何ら開示されていない。
【0006】
特許文献1に開示された孔あき鋼材や接合鋼板によって複数のコンクリート部材間でのジベル機能を確保しているものと推定されるが、平板状の鋼板部材を用いているため当該鋼板部材への応力集中が懸念され、部材コストの増加も懸念される。加えて、長尺の孔あき部材と主鉄筋や配力筋とを組み合わせて施工を行うため、孔あき鋼材の側方から鉄筋を組み入れるといった煩雑な作業を伴う場合があり更なる施工性の向上が求められる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、2つのコンクリート部材を接合させてコンクリート構造物を構成する場合に、構造物に設計上必要なせん断耐力を確保し、且つ、2つのコンクリート部材間でのジベル機能を十分に確保することが可能なコンクリート構造物及びそれに用いる接続用補強筋を提供することにある。
なお、本明細書における「コンクリート構造物」とは、例えば鉄筋構造を内包する床部材や壁部材を指すが、これに限られるものではなく、本発明技術はコンクリート部材を用いたあらゆる構造物に適用可能である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明によれば、下部構造としての第1のコンクリート部材と、上部構造としての第2のコンクリート部材と、を打継面において接合させて構成されるコンクリート構造物であって、前記第1のコンクリート部材には複数の下部主鉄筋と当該下部主鉄筋に交差する方向に延伸する下部配力筋が埋設され、前記第2のコンクリート部材には複数の上部主鉄筋と当該上部主鉄筋に交差する方向に延伸する上部配力筋が埋設され、前記打継面において前記第1のコンクリート部材と前記第2のコンクリート部材との間に跨って配置される接続用補強筋を備え、前記接続用補強筋は前記第1のコンクリート部材及び前記第2のコンクリート部材の内部において前記コンクリート構造物の内部方向に向かってU字形になるように折り返された形状を有し、前記接続用補強筋の一方の端部は前記第1のコンクリート部材から前記第2のコンクリート部材に向かって突出するように構成されることを特徴とする、コンクリート構造物が提供される。
【0009】
前記接続用補強筋は、前記第1のコンクリート部材の内部において前記下部主鉄筋及び前記下部配力筋のいずれか一方あるいは両方に係留され、且つ、前記第2のコンクリート部材の内部において前記上部主鉄筋及び前記上部配力筋のいずれか一方あるいは両方に係留されても良い。
【0010】
前記第1のコンクリート部材はプレキャストコンクリート部材であり、前記第2のコンクリート部材は現場打ちコンクリート部材であっても良い。
【0011】
前記接続用補強筋は、その両端が互いに突き合わされるように同一方向に向かって折り返され、断面視で略C字形状を有しても良い。
【0012】
前記接続用補強筋は、その両端が異なる方向に向かって折り返され、断面視で略S字形状を有しても良い。
【0013】
前記接続用補強筋において、前記第1のコンクリート部材から前記第2のコンクリート部材に向かって突出する端部には平面状の鋼板からなる定着板が取り付けられても良い。
【0014】
前記接続用補強筋において、前記第1のコンクリート部材から前記第2のコンクリート部材に向かって突出する端部には水平方向に伸びる折り曲げ部が形成されても良い。
【0015】
前記接続用補強筋において、前記第1のコンクリート部材から前記第2のコンクリート部材に向かって突出する端部には略半円形状のフック部が形成されても良い。
【0016】
また、別の観点からの本発明によれば、複数のコンクリート部材の打継面において、コンクリート部材間に跨って配置される接続用補強筋であって、上記記載のコンクリート構造物において前記複数のコンクリート部材の内部鉄筋に係留され、当該複数のコンクリート部材同士を接続させることを特徴とする、接続用補強筋が提供される。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、2つのコンクリート部材を接合させてコンクリート構造物を構成する場合に、構造物に設計上必要なせん断耐力を確保し、且つ、2つのコンクリート部材間でのジベル機能を十分に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の概略説明図である。
図2】コンクリート構造物の概略俯瞰図である。
図3】接続用補強筋を用いた他の実施形態についての概略説明図である。
図4】本発明の第1変形例に係るコンクリート構造物の概略説明図である。
図5】本発明の第2変形例に係るコンクリート構造物の概略説明図である。
図6】本発明の第3変形例に係るコンクリート構造物の概略説明図である。
図7】接続用補強筋の変更例についての概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する場合がある。また、本明細書の実施の形態においては、床部材や壁部材に用いられる板状のコンクリート構造物を例示して図示・説明するが、本発明に係る技術はこれに限定されるものではなく、種々のコンクリート構造物に適用可能である。また、本明細書では、説明のために鉄筋構造や配筋構成について、一部図示を省略する場合や、あるいは、部材内部の鉄筋等を図示する場合がある。
【0020】
(本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物の構成)
図1は本発明の実施の形態に係るコンクリート構造物1(以下、単にコンクリート構造物1と記載)の概略説明図であり、側面から見た概略断面図である。また、図2(a)、(b)はコンクリート構造物1の概略俯瞰図であり、(b)は(a)の一部を拡大した図である。
【0021】
図1、2に示すように、コンクリート構造物1は2つのコンクリート部材が接合された構成であり、例えば平板状の第1のコンクリート部材10と、第2のコンクリート部材30からなる。本実施の形態では、下部構造としての第1のコンクリート部材10の上に打継面20を接合面として上部構造としての第2のコンクリート部材30が接合されているものとして説明する。なお、第1のコンクリート部材10、第2のコンクリート部材30は共に現場打ちコンクリート部材でも良く、あるいは、一方が現場打ちコンクリート部材で他方がプレキャストコンクリート部材でも良い。プレキャストコンクリート部材とは、工場などで予め製作された部材であり、施工現場に搬入し既設部材に組み付けることで構造物を構成するものである。
【0022】
また、コンクリート構造物1には、第1のコンクリート部材10と第2のコンクリート部材30に跨る接続用補強筋40が配置されている。接続用補強筋40の数は特に限定されるものではないが、例えば、図1、2のように打継面20の平面方向に等間隔で複数設けられることが好ましい。接続用補強筋40の具体的な形状や構成は図1、2を参照して以下に説明するものに限られず、その他の例については後述の変形例において図面を参照して説明する。
【0023】
また、第1のコンクリート部材10と第2のコンクリート部材30の内部には、いずれも複数の鉄筋(内部鉄筋)が設けられている。第1のコンクリート部材10の内部には所定の方向に延伸する複数の下部主鉄筋50と下部主鉄筋50に交差する方向(例えば下部主鉄筋50に直交する方向)に延伸する複数の下部配力筋60が設けられている。複数の下部主鉄筋50同士は互いに等間隔且つ平行となるように延伸している。同様に複数の下部配力筋60同士も互いに等間隔かつ平行となるように延伸している。
【0024】
同様に、第2のコンクリート部材30の内部には、所定の方向に延伸する複数の上部主鉄筋70と上部主鉄筋70に交差する方向(例えば上部主鉄筋70に直交する方向)に延伸する複数の上部配力筋80が設けられている。複数の上部主鉄筋70同士は互いに等間隔且つ平行となるように延伸している。同様に複数の上部配力筋80同士も互いに等間隔かつ平行となるように延伸している。
【0025】
なお、コンクリート構造物1において、図示のように、上述した下部主鉄筋50と上部主鉄筋70は互いに平行、且つ、同じ方向に延伸し、下部配力筋60と上部配力筋80は互いに平行、且つ、同じ方向に延伸することが好ましい。
【0026】
(接続用補強筋の構成・形状)
図1、2に示す接続用補強筋40は、コンクリート構造物1の内部において下部配力筋60と上部配力筋80の両方に係留するように構成されている。下部配力筋60と上部配力筋80において接続用補強筋40が係留される位置は、下部主鉄筋50と下部配力筋60との交差部近傍、及び、上部主鉄筋70と上部配力筋80との交差部近傍であることが好ましい。
【0027】
接続用補強筋40の形状等は限定されるものではない。一例として、図1に示すように、1本の鉄筋が、第1のコンクリート部材10の内部と、第2のコンクリート部材の内部のそれぞれにおいて、コンクリート構造物1の内部方向に向かってU字形になるように折り返された形状である。即ち、接続用補強筋40は、断面視で略C字形状となるような一本の鉄筋からなる部材であることが好ましく、その際の接続用補強筋40を構成する鉄筋の両端部は互いに突き合わされた配置となる。このような形状の場合、接続用補強筋40の一方のU字部40aが下部配力筋60に係留され、他方のU字部40bが上部配力筋80に係留される。
【0028】
また、接続用補強筋40の一方のU字部40a(即ち、第1のコンクリート部材10の内部で折り返された部分)の先端部45は、第1のコンクリート部材10から打継面20を経て所定の長さ(例えば、図1中の突出長さL)だけ第2のコンクリート部材30の内部に突出するように構成されている。この突出長さLは、第2のコンクリート部材30に使用された骨材の最大径(いわゆるGmax)以上の値とすることが好ましい。ここで、骨材とは、コンクリート部材を構成するコンクリートを用いる際にセメントや水などと混合される砂利や砂等の総称である。先端部45の突出長さLを第2のコンクリート部材30に使用された骨材の最大径以上の値とすることで、先端部45の鉄筋と、上記骨材とが噛み合うことで2つのコンクリート部材間でのズレへの抵抗力が向上し、ジベル機能が確保される。
【0029】
(本発明の他の実施形態)
図1、2に示した本発明の実施の形態では、接続用補強筋40の一方のU字部40aが下部配力筋60に係留され、他方のU字部40bが上部配力筋80に係留されるとの構成を図示・説明したが、接続用補強筋40の係留方法はこれに限られるものではない。図3は、接続用補強筋40を用いた他の実施形態についての概略説明図であり、他の係留方法を示した図である。なお、図3において、上記図1、2と同じ機能構成を有する構成要素については同一の符号を付して図示し、その説明は省略する場合がある。
【0030】
図3に示すように、本形態では、第2のコンクリート部材30の内部において、接続用補強筋40のU字部40bが上部主鉄筋70と上部配力筋80との交点P(図中破線部)に係留される。即ち、接続用補強筋40は上部主鉄筋70及び上部配力筋80の両方に係留される構成となっている。また、図3では図示していないが、第1のコンクリート部材10の内部においても、同様に、接続用補強筋40のU字部40aが下部主鉄筋50と下部配力筋60との交点に係留される。
【0031】
また、図示しないが、接続用補強筋40の一方のU字部40aが下部主鉄筋50に係留され、他方のU字部40bが上部主鉄筋70に係留されるといった構成も考えられる。即ち、接続用補強筋40は、第1のコンクリート部材10と第2のコンクリート部材30の両方の内部において、主鉄筋と配力筋のいずれか一方あるいは両方に係留されていればよい。
【0032】
なお、本形態において、接続用補強筋40のU字部40aの先端部45が所定の長さ(例えば、突出長さL)だけ第2のコンクリート部材30の内部に突出するように構成されている点は上記実施の形態と同様である。
【0033】
(作用効果)
本実施の形態に係るコンクリート構造物1においては、第1のコンクリート部材10と第2のコンクリート部材30とを接合させて1つの構造物を構成する場合に、第1のコンクリート部材10と第2のコンクリート部材30に跨るように接続用補強筋40が配置されている。そして、接続用補強筋40は少なくとも下部配力筋60と上部配力筋80の両方に係留されている。これにより2つのコンクリート部材の打継面におけるせん断耐力が向上し、せん断破壊が防止される。
【0034】
加えて、接続用補強筋40は、その先端部45が第1のコンクリート部材10から打継面20を経て所定の長さ(突出長さL)だけ第2のコンクリート部材30の内部に突出するように構成されている。これにより、2つのコンクリート部材間でのずれ止め機能(いわゆるジベル機能)が担保される。即ち、コンクリート構造物1を2つのコンクリート部材を接合することで構築する場合に、接続用補強筋40を配置するといった簡易な構成により、構造上必要なせん断耐力とジベル機能の両方が享受される。
【0035】
また、上記第1のコンクリート部材10、第2のコンクリート部材30は共に現場打ちコンクリート部材でも良く、あるいは、一方が現場打ちコンクリート部材で他方がプレキャストコンクリート部材でも良いと説明したが、工期短縮や施工性向上の観点から、第1のコンクリート部材10をプレキャストコンクリート部材とし、第2のコンクリート部材30を現場打ちコンクリート部材とすることが好ましい。プレキャストコンクリート部材と、現場打ちコンクリート部材とを併用することで、材料費の低減や工期の短縮が図られ、更には、施工時の作業効率や部材の運搬性を向上させることができる。即ち、施工性の向上と、せん断耐力やジベル機能の確保の両方が実現される。
【0036】
また、上記他の実施の形態では、接続用補強筋40のU字部40a、40bを主鉄筋と配力筋の両方に係留させる構成を採っている。これにより、更なるせん断耐力の向上が図られる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態の一例を説明したが、本発明は図示の形態に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。以下では、本発明に係る変形例について図面等を参照して説明する。なお、以下の変形例に係る説明において、本実施の形態と同じ機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付して図示し、説明は省略する場合がある。
【0038】
(本発明の第1変形例)
図4は本発明の第1変形例に係るコンクリート構造物1aの概略説明図であり、側面から見た概略断面図である。図4に示すように、本変形例に係るコンクリート構造物1aには、第2のコンクリート部材30の内部において、U字部40aの先端部45に定着板100が取り付けられている。この定着板100の材質や形状等は特に限定されるものではないが、例えば、材質としては鉄・鋳物などが好ましく、接続用補強筋40の鉄筋断面積以上の面積を有するような形状の鋼板であることが好ましい。また、定着板100の先端部45への取り付け方法も特に限定されないが、例えば、溶接、摩擦圧接、かしめる、ネジ止め、といった種々の方式が考えられる。
【0039】
本変形例に係るコンクリート構造物1aによれば、上記実施の形態で説明した作用効果に加え、定着板100を設けたことにより第1のコンクリート部材10と第2のコンクリート部材30とを分断させるように働く力(いわゆる引き抜き)に対する抵抗力が向上し、構造物全体としての耐力向上が図られる。
【0040】
(本発明の第2変形例)
図5は本発明の第2変形例に係るコンクリート構造物1bの概略説明図であり、側面から見た概略断面図である。図5に示すように、本変形例に係るコンクリート構造物1bには、第2のコンクリート部材30の内部において、先端部45の上端に水平方向に伸びる折り曲げ部110が形成されている。即ち、本変形例では、接続用補強筋40において一方の端部が略L字形状に折り曲げられた構成となっている。なお、図5では折り曲げ部110は主鉄筋(下部主鉄筋50、上部主鉄筋70)と平行且つ同じ方向に延伸する場合を図示しているが、折り曲げ部110の延伸方向は任意であり、例えば、配力筋(下部配力筋60、上部配力筋80)と平行且つ同じ方向に延伸しても良い。
【0041】
折り曲げ部110を構成する場合には、接続用補強筋40に用いられる鉄筋をそのまま用いても良く、あるいは、先端部45の上端に別部材としての鉄筋を溶接等により固着させても良い。ここで、折り曲げ部110の水平方向での長さL1は、接続用補強筋40として用いられている鉄筋の径の8倍以上とすることが好ましい。基本的に、長さL1が長いほど、大きなずれ止め効果(ジベル機能)が享受されるが、一方で配筋効率等の低下が懸念される。
【0042】
本変形例に係る構成では、上記実施の形態で説明した第2のコンクリート部材30の厚みに起因し、部材内部での鉄筋の上方への延長に寸法制限がある場合であっても、必要な鉄筋長さを確保することが可能となる。また、折り曲げ部110の延伸方向を所望の方向に選択可能であるため、2つのコンクリート部材間に生じるずれの方向に効率的に対応することができジベル機能の向上が図られる。例えば、複数の接続用補強筋40が配置された状態において、隣り合う複数の折り曲げ部110の延伸方向を交互に90度ずらした配置構成とすることで、あらゆる方向へのずれ防止が可能となる。
【0043】
本変形例に係るコンクリート構造物1bによれば、上記実施の形態で説明した作用効果に加え、折り曲げ部110を設けたことにより第1のコンクリート部材10と第2のコンクリート部材30とを分断させるように働く力(いわゆる引き抜き)に対する抵抗力が向上し、構造物全体としての耐力向上が図られる。また、2つのコンクリート部材間でのずれ止め機能(いわゆるジベル機能)がより向上する。なお、ジベル機能向上の観点から、折り曲げ部110の延伸する方向は、コンクリート構造物1bにおいて、ずれが生じる方向に沿ったものとすることが好ましい。折り曲げ部110の長さL1はずれ止め機能の観点からは長い方が好ましいが、長すぎると現場での配筋作業等の障害になる恐れがあり、所定の好適な長さに設計される。
【0044】
(本発明の第3変形例)
図6は本発明の第3変形例に係るコンクリート構造物1cの概略説明図であり、側面から見た概略断面図である。図6に示すように、本変形例に係るコンクリート構造物1cには、第2のコンクリート部材30の内部において、先端部45の上端に略半円形状のフック部120が形成されている。即ち、図6のように、本変形例では、接続用補強筋40において一方の端部が断面視で略円環形状に構成されている。
【0045】
本変形例に係るコンクリート構造物1cによれば、上記実施の形態で説明した作用効果に加え、フック部120を設けたことにより第1のコンクリート部材10と第2のコンクリート部材30とを分断させるように働く力(いわゆる引き抜き)に対する抵抗力が向上し、構造物全体としての耐力向上が図られる。また、2つのコンクリート部材間でのずれ止め機能(いわゆるジベル機能)がより向上する。
【0046】
(その他の各種変更例)
上記実施の形態及びその変形例においては、接続用補強筋40の基本的な構成として断面視で略C字形状となるような一本の鉄筋からなる部材であるとして説明したが、本発明に係る接続用補強筋40の構成はこれに限られるものではない。図7は接続用補強筋40の変更例についての概略説明図である。
【0047】
図7(a)は上記実施の形態及びその変形例で示した基本的な構成の接続用補強筋40であり、その両端が突き合わされるように同一方向にU字形状に折り返されており、断面視でいわゆる略C字形状を有している。しかしながら、接続用補強筋40の断面視での形状はこれに限られるものではなく、第1のコンクリート部材10の内部と第2のコンクリート部材30の内部のそれぞれにおいて主鉄筋や配力筋に係留可能な形状であれば良い。例えば、図7(b)に示すように、接続用補強筋40の両端が異なる方向に向かってU字形状に折り返され、断面視でいわゆる略S字形状を有しても良い。
【0048】
なお、本明細書において、上記実施の形態や各変形例について、図示、説明した鉄筋構造は一例であり、各種鉄筋(下部主鉄筋、下部配力筋、上部主鉄筋、上部配力筋など)の具体的な本数や配置構成等は任意に設計可能である。また、コンクリート構造物を構成するコンクリート部材が、第1のコンクリート部材10と第2のコンクリート部材30の2つである場合を図示して説明したが、本発明技術の適用範囲はこれに限られるものではなく、例えば、2以上の複数のコンクリート部材を接合させて構成されるコンクリート構造物に対しても適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、コンクリート構造物及びそれに用いる接続用補強筋に適用できる。
【符号の説明】
【0050】
1、1a~1c…コンクリート構造物
10…第1のコンクリート部材
20…打継面
30…第2のコンクリート部材
40…接続用補強筋
40a…(一方の)U字部
40b…(他方の)U字部
45…先端部
50…下部主鉄筋
60…下部配力筋
70…上部主鉄筋
80…上部配力筋
100…定着板
110…折り曲げ部
120…フック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7