(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183462
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法
(51)【国際特許分類】
G21F 9/06 20060101AFI20221206BHJP
G21F 9/08 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
G21F9/06 581H
G21F9/08 511F
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090800
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚本 泰介
(72)【発明者】
【氏名】小川 尚樹
(72)【発明者】
【氏名】柿木 浩一
(72)【発明者】
【氏名】島田 隆
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 正彦
(72)【発明者】
【氏名】針貝 美樹
(57)【要約】
【課題】高い作業性で、より多くのマイナーアクチノイドを固体化できる。
【解決手段】マイナーアクチノイドを含有する高レベル放射性物質を処理する高レベル放射性物質処理装置であって、高レベル放射性物質を含有する液体を供給する液体供給部と、有機相の抽出剤を供給する抽出剤供給部と、希釈液を供給する希釈液供給部と、液体と、抽出剤と、希釈液とを混合し、高レベル放射性物質に含まれるマイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を抽出剤に抽出するMA抽出液生成部と、を含み、MA抽出液生成部は、高レベル放射性物質を含有する液体がネプツニウムを含む場合には酸化還元処理によってネプツニウムを4価または6価に価数調整を行い、抽出剤は、C,H,O,Nの4元素で構成される材料である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイナーアクチノイドを含有する高レベル放射性物質を処理する高レベル放射性物質処理装置であって、
前記高レベル放射性物質を含有する液体を供給する液体供給部と、
有機相の抽出剤を供給する抽出剤供給部と、
希釈液を供給する希釈液供給部と、
前記液体と、前記抽出剤と、前記希釈液とを混合し、前記高レベル放射性物質に含まれる前記マイナーアクチノイドを前記抽出剤に抽出するMA抽出液生成部と、を含み、
MA抽出液生成部は、前記高レベル放射性物質を含有する液体がネプツニウムを含む場合には酸化還元処理によってネプツニウムを4価または6価に価数調整を行い、
前記抽出剤は、C,H,O,Nの4元素で構成される材料である高レベル放射性物質処理システム。
【請求項2】
前記希釈液は、沸点が100℃以下である請求項1に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項3】
前記希釈液は、引火点を有していないまたは引火点が150℃以上である請求項1または請求項2に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項4】
前記希釈液は、熱や放射線による分解物が金属イオンと錯体を形成し難い性質をそなえる炭化水素系の構造を有する溶媒を含有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項5】
前記希釈液は、地球温暖化係数が2000以下、オゾン破壊係数0.01以下である請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項6】
前記希釈液は、ハイドロフルオロカーボン及びハイドロフルオロオレフィンの少なくとも一方を含有する請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項7】
前記MA抽出液生成部で生成したMA抽出液から希釈液を蒸発させ、MAを含む固体を生成する固化処理部と、
前記固化処理部で蒸発させた希釈液を回収し、前記希釈液供給部に供給する回収処理部と、を有する固化装置をさらに備える請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の高レベル放射性物質処理システム。
【請求項8】
マイナーアクチノイドを含有する高レベル放射性物質を処理する高レベル放射性物質処理方法であって、
高レベル放射性物質を含有する液体がネプツニウムを含む場合には酸化還元処理によって、ネプツニウムを4価または6価に価数調整を行い、かつ、有機相の抽出剤と、希釈液と投入するステップと、
前記液体と、前記抽出剤と、前記希釈液とを混合し、前記高レベル放射性物質に含まれるマイナーアクチノイドを前記抽出剤に抽出するステップと、を含み、
前記抽出剤は、C,H,O,Nの4元素で構成される材料である高レベル放射性物質処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高レベル放射性廃棄物の処理として、高レベル放射性物質から放射性物質であるマイナーアクチノイドを抽出する方法がある(例えば特許文献1、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-63198号公報
【特許文献2】特開2019-15533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高レベル放射性物質からマイナーアクチノイドを抽出することで、抽出したマイナーアクチノイドを高速増殖炉等の燃料として再利用することができる。また、マイナーアクチノイドを除去することで廃棄物の処理負荷を低減することが可能となる。ここで、マイナーアクチノイドは、価数によって溶媒抽出に対する性質が異なるが、効率よく、簡単なプロセスで抽出することが求められる。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、高い作業性で、より多くのマイナーアクチノイドを固体化できる高レベル放射性物質処理システム及び高レベル放射性物質処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、マイナーアクチノイドを含有する高レベル放射性物質を処理する高レベル放射性物質処理装置であって、前記高レベル放射性物質を含有する液体を供給する液体供給部と、有機相の抽出剤を供給する抽出剤供給部と、希釈液を供給する希釈液供給部と、前記液体と、前記抽出剤と、前記希釈液とを混合し、前記高レベル放射性物質に含まれる前記マイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を前記抽出剤に抽出するMA抽出液生成部と、を含み、MA抽出液生成部は、前記高レベル放射性物質を含有する液体がネプツニウムを含む場合には酸化還元処理によってネプツニウムを4価または6価に価数調整を行い、前記抽出剤は、C,H,O,Nの4元素で構成される材料である。
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示は、マイナーアクチノイドを含有する高レベル放射性物質を処理する高レベル放射性物質処理方法であって、高レベル放射性物質を含有する液体がネプツニウムを含む場合には酸化還元処理によってネプツニウムを4価または6価に価数調整を行い、かつ、有機相の抽出剤と、希釈液と投入するステップと、前記液体と、前記抽出剤と、前記希釈液とを混合し、前記高レベル放射性物質に含まれるマイナーアクチノイド及びランタノイドの少なくとも一方を前記抽出剤に抽出するステップと、を含み、前記抽出剤は、C,H,O,Nの4元素で構成される材料である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、高い作業性で、より多くのマイナーアクチノイドを固体化できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、マイナーアクチノイドのうちネプツニウムを分離する試験の試験条件を示す模式図である。
【
図3】
図3は、マイナーアクチノイドのうちネプツニウムの分離結果の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示にかかる高レベル放射性物質処理装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。本開示の高レベル放射性物質処理装置は、高レベル放射性物質からMA(マイナーアクチノイド)を抽出し、ガラス固化して安定化する。また、高レベル放射性物質処理装置は、高レベル放射性物質にランタノイドが含まれる場合、マイナーアクチノイドとともにランタノイドも抽出する。本開示において、「MA(マイナーアクチノイド)」とは、アクチノイドに属する超ウラン元素のうちPuを除いた元素である。「アクチノイド」とは、原子番号89から103までの元素の総称である。マイナーアクチノイドには、例えば、Np(ネプツニウム)、Am(アメリシウム)、Cm(キュリウム)が含まれる。「Ln(ランタノイド)」とは、原子番号57から71までの元素の総称である。
【0011】
図1は、本実施形態の高レベル放射性物質処理装置の概略構成を示す模式図である。
図1に示す高レベル放射性物質処理装置(処理装置)10は、抽出装置12と、固化装置14と、安定化装置16と、保管装置18と、を含む。本実施形態の処理装置は、高レベル放射性物質として、高レベル放射性廃棄物(以下、「HALW」とも記す。)を用いた場合として説明する。廃液は、例えば、軽水炉から排出される使用済み核燃料の再処理で、使用済み核燃料の溶液からU(ウラン)及びPu(プルトニウム)を回収した後の液体である。廃液に含まれる高レベル放射性廃棄物には、核分裂生成物(以下、「FP」とも記す。)のほか、MA、ランタノイドが含まれる。高レベル放射性廃棄物(以下、「HALW」とも記す。)は、具体的には、ピューレックス(PUREX)法による再処理で生成する廃液が挙げられる。ピューレックス法では、UやPuを含む硝酸溶液と、トリブチルリン酸(TBP)と、ドデカン等の有機溶媒とを接触混合する。これにより、硝酸溶液中のUやPuがTBPと錯体を形成して有機溶媒側へ移動する。一方、FP、MA、Lnは硝酸溶液(廃液)側に残る。FP、MA、Lnを含有する硝酸溶液が、処理対象の廃液となる。
【0012】
抽出装置12は、廃液からMA成分を抽出する。抽出装置12は、廃液供給部22と、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、MA抽出液生成部28と、を含む。廃液供給部22は、液体の高レベル放射性廃棄物であるHALWを貯留し、MA抽出液生成部28に供給する。本実施形態では、抽出剤供給部24と、希釈液供給部26と、を設けたが、抽出剤供給部24と希釈液供給部26とを1つの装置として、抽出剤が溶解した液相の有機溶媒を供給してもよい。
【0013】
抽出剤供給部24は、抽出剤をMA抽出液生成部28に供給する。抽出剤は、MA及びLnを捕捉する。また、抽出剤は、希釈液に移行、均一混合する液体である。抽出剤としては、例えば、MAやLnと錯体を形成する錯化剤を用いることができる。錯化剤は、選択的にMAと錯体を形成する錯化剤に比べて安価であることが好ましい。抽出剤としては、C,H,O,Nの4元素で構成される材料が好ましい。抽出剤としては、ジグリコールアミド(DGA)系の材料(錯化剤)を用いることがより好ましい。錯化剤の具体例としては、N,N,N’,N’-テトラオクチル-3-オキサペンタンジアミド(TODGA)、テトラ(2-エチルヘキシル)ジグリコールアミド(T2EHDGA)等が挙げられる。抽出剤は1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0014】
希釈液供給部26は、希釈液をMA抽出液生成部28に供給する。希釈液は、廃液の液体成分に不溶な有機相の材料である。希釈液は、廃液の液体から抽出剤を溶離する特性を備える。希釈液は、沸点が100℃以下である。また、希釈液は、引火点を有していないまたは引火点が150℃以上であることが好ましい。また、希釈液は、再利用しても熱や放射線による劣化が少ない材料であることが好ましく、再利用しても熱や放射線による劣化が少ない炭化水素系の構造を有する溶媒であることが好ましい。ここで、再利用しても熱や放射線による劣化が少ないとは、熱や放射線のエネルギーを受けて、低分子量の構造になったとしても、金属イオンと錯体を形成し難い性質をもつことである。また、希釈液は、地球温暖化係数やオゾン破壊係数等の環境負荷が低いことが好ましい。具体的には、希釈液は、地球温暖化係数が2000以下、オゾン破壊係数0.01以下であることが好ましい。希釈液としては、例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、ハイドロフルオロオレフィン(HFO)等を用いることができる。
【0015】
MA抽出液生成部28は、廃液と抽出剤と希釈液が供給される。MA抽出液生成部28は、廃液がネプツニウムを含む場合、廃液に対して、酸化還元処理によるMAの価数調整を行い、5価のネプツニウムを4価または6価にする。MA抽出液生成部28は、例えば、電解処理、還元剤の投入で、5価のネプツニウムを4価に還元する。ここで、MA抽出液生成部28は、価数調整処理時に、ヒドラジンを添加することが好ましい。ヒドラジンを添加することで、ネプツニウムの価数を安定させることができる。なお、他のMAについても必要な価数調整を行うことが好ましい。
【0016】
MA抽出液生成部28は、溶媒抽出法により、ネプツニウムの価数を調整した廃液中のMA及びLnと抽出剤とを接触すると、MA及びLnが抽出剤側に移行する。MA及びLnを捕捉した抽出剤は、希釈液に内包される。MA抽出液生成部28は、抽出処理後、廃液に対して、希釈液を分離することで、希釈液中にMA及びLnを捕集した抽出剤が内包されたMA抽出液を生成する。MA抽出液生成部28は、連続的に各材料が供給され、MA抽出液を生成する連続式でも、間欠的に各材料が供給され、MA抽出液を生成するバッチ式でもよい。また、MA抽出液生成部28は、抽出剤でMAを選択的に捕捉する、あるいは、MA及びLnを同時に捕捉して処理してもよい。
【0017】
固化装置14は、MA抽出液の液体成分を除去し、固化体を生成する。固化装置14は、固化処理部40と、回収処理部42と、を含む。固化処理部40は、MA抽出液を蒸留して、希釈液成分を除去する。固化処理部40は、希釈液を蒸留することで、抽出剤とMAを含む固化残留物が、錯体として残留する。残留物が固化体となる。固化体は、MAを含む物質と抽出剤の有機金属錯体である。固化処理部40は、蒸留処理として回分式、連続式(棚段塔や充填塔)等の公知の蒸発方式を用いることができる。回収処理部42は、固化処理部40で蒸留された希釈液を捕集し、冷却して、液化することで、希釈液を回収する。回収処理部42は、回収した規約液を希釈液供給部26に供給する。回収処理部42は、希釈液に不純物が混入している場合は、除去処理をするようにしてもよい。
【0018】
安定化装置16は、固化体から炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去する安定化処理を行う。安定化装置16は、安定化処理部50を有する。安定化処理部50は、固化体を加熱し、か焼、焼結することで、処理対象物を酸化物化させる。安定化装置16は、保管時にガス化する可能性がある成分である炭素、水素、酸素、窒素成分の一部又は全部を除去することで、固化体を安定化させる。
【0019】
保管装置18は、安定化処理した処理物を保管する。保管装置18は、保管部60を含む。保管部60は、安定化処理したMAを含む物質を固体の状態で保管する。保管部60は、例えば、キャスクである。また、保管部60を地中に設け、安定化処理した処理物を地中に埋設してもよい。
【0020】
処理システム10の保管部60で保管しているMAを含む物質は、原子力発電システムの燃料として使用することができる。MAを燃料として燃焼させる場合、保管している酸化物固化体を溶解させ、MA及びLnを含む溶液を生成する(固化体溶解)。次に、得られた溶液に対してMAの精製処理を行う(MA精製)。MA精製では、例えば、得られた溶液中のMAとLnとを分離し、必要に応じてMAから高発熱性のMAを分離する。次に、得られたMA(Np、Am等)をU、Puと混合し、混合酸化物を得ることにより、燃料を製造する(MA燃料製造)。得られた燃料は高速増殖炉等で燃焼させる(MA燃焼)。
【0021】
本実施形態の処理装置10は、抽出装置12で、廃液に、抽出剤、希釈液を投入し、混合することで、廃液からLnの同伴を許容してMAを分離する分離処理を行い、MA抽出液を生成する。次に、処理装置10は、固化装置14で、MA抽出液から希釈液を蒸留することで、MAを含有する固化体を生成する。次に、処理装置10は、安定化装置16で、MAを含有する固化体から、有機成分(CHON)を除去して、安定化させる。処理装置10は、保管装置18で、安定化した処理物を保管する。
【0022】
処理装置10は、ネプツニウムの価数を調整して、4価または6価とし、かつ、抽出剤として、C,H,O,Nの4元素で構成される材料、好ましくはジグリコールアミド(DGA)系材料を用いることで、ネプツニウムを含むMAを効率よく、抽出剤及び希釈液側に移動させることができる。
【0023】
図2は、マイナーアクチノイドのうちネプツニウムを分離する試験の試験条件を示す模式図である。
図3は、マイナーアクチノイドのうちネプツニウムの分離結果の一例を示すグラフである。
図3は、4価のネプツニウムについて、抽出剤側の層への移動割合を測定した。また、比較のため、5価のネプツニウムについて、抽出剤側の層への移動割合を測定した。
図2に示すように試験は、DGA系の抽出剤であるテトラ(2-エチルヘキシル)ジグリコールアミド(T2EHDGA)を用い、希釈剤としてHFCを用いた。また、抽出剤の濃度は、0.1から10mmol/lとし、液相(水相)の硝酸濃度は、1から6mol/l(
図3のグラフに示す試験では、3mol/lと5mol/l)とした。また、金属イオン(ネプツニウム)濃度を0.05mmol/lとした。ヒドラジンを100mmol/l添加している。
【0024】
ここで、廃液から抽出剤側の層への抽出の際に生じる化学平衡は、下記式となる。
【数1】
【0025】
【0026】
試験結果を
図3に示す。
図3は、分配比(移動した割合)Dと、抽出剤であるジグリコールアミド(DGA)の濃度を対数軸で示している。D(logD)の値が高くなるほど、抽出剤側の層への移動量が多い結果となる。
図3に示すように、ネプツニウムを4価にすることで、ネプツニウムが5価の状態よりも高い割合で抽出剤側の層への移動していることがわかる。
【0027】
ここで、MA抽出液生成部28は、廃液がネプツニウムを含むか否かを測定し、廃液がネプツニウムを含む場合のみ価数調整を行い、廃液がネプツニウムを含まない場合価数調整を行わないことが好ましい。また、MA抽出液生成部28は、廃液が含むネプツニウムの価数の分布等に応じて、実行する価数調整の処理の内容、例えば、酸化還元で導入する薬剤の量を調整することが好ましい。MA抽出液生成部28は、廃液がネプツニウムを含むか否かを測定せずに、常に同様の価数調整の処理を行ってもよい。
【0028】
また、処理装置10は、LnとMAを分離し、固化し、安定化させる。これにより、液体の高レベル放射性廃棄物からMAを効率よく抽出することができ、廃棄物の処分負荷を小さくすることができ、固体化することができる。また、MA及びLnを抽出し、安定化させた物質とすることで、MAを燃料として再利用するために保管する場合も、安定して保管することができる。
【0029】
また、MAとLnを分離せずに処理することで、MAとLnとを分離する処理が不要になり、処理負荷を小さくすることができる。
【0030】
また、本実施形態の処理装置10は、希釈液として、沸点が100℃以下である有機溶媒を用いることで、固化処理部40で希釈液を蒸留する処理の負荷を小さくすることができる。これにより、プロセス負荷を低減することができる。
【0031】
また、希釈液は、引火点を有していないまたは引火点が150℃以上であることが好ましい。引火点を上記範囲とすることで、固化処理部40の作業条件を緩和することができ、作業時に希釈液の発火や燃焼等が生じる可能性を低減できる。これにより、処理システム10での処理を高い作業性でより安定して行うことができる。
【0032】
また、希釈液は、沸点と引火点との温度差が50℃以上であることが好ましい。これにより作業性を高くすることができる。
【0033】
また、希釈液は、熱や放射線による劣化が少ない炭化水素系の構造を有することが好ましい。これにより、回収した希釈液を再利用することが可能となり、抽出処理の経済性を高くすることが出来る。また,希釈液は地球温暖化係数が2000以下、オゾン破壊係数0.01以下であることが好ましい。これにより、使用後の希釈液を処理する際の環境負荷を低減することができる。また、希釈液は上述したようにハイドロフルオロカーボン(HFC)及びハイドロフルオロオレフィン(HFO)の少なくとも一方を含有することがより好ましい。上記の物質を希釈液として用いることで、抽出剤と希釈液を容易に混合することができるため,廃液の液体成分に対して分離しやすくできる。なお、希釈液は、上記成分を主成分とすることが好ましいが、副成分として、沸点が上記範囲のアルコール等の有機溶媒を含めてもよい。
【0034】
また、本実施形態の処理装置10は、回収処理部42を設け、固化処理部40の処理で蒸発させた希釈液を回収し、希釈液供給部26に供給することで、希釈液を再利用することができる。また、上述したように沸点が上記範囲の希釈液を用いることで、回収処理部42での処理負荷を小さくすることができる。
【0035】
また、処理装置10は、抽出剤として、硝酸系の物質を含有する高放射性物質に対してMA抽出液を生成する際に、第三相を形成しない抽出剤を用いることが好ましい。具体的には、DGA系の材料を用いることが好ましい。一例としては、T2EHDGAがある。また、抽出剤は、安定化装置16での処理時に除去できる材料、具体的には、炭素,水素,窒素,酸素のみで構成された材料とすることが好ましい。また、抽出剤は、腐食性成分を含まないことが好ましい。
【0036】
また、本実施形態の処理装置は、安定化処理を行ったが、安定化処理は行わず、保管してもよい。
【0037】
以上、本発明について、実施形態を示して説明したが、本開示は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 処理システム(高レベル放射性物質処理システム)
12 抽出装置
14 固化装置
16 安定化装置
18 保管装置
22 廃液供給部
24 抽出剤供給部
26 希釈液供給部
28 MA抽出液生成部
40 固化処理部
42 回収処理部
50 安定化処理部
60 保管部