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特開2022-183463低収縮超高強度グラウト組成物及び低収縮超高強度グラウト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183463
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】低収縮超高強度グラウト組成物及び低収縮超高強度グラウト
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/08 20060101AFI20221206BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20221206BHJP
   C04B 20/00 20060101ALI20221206BHJP
   E04G 21/02 20060101ALN20221206BHJP
【FI】
C04B28/08
C04B18/14 Z
C04B18/14
C04B20/00 B
E04G21/02 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090802
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000174943
【氏名又は名称】三井住友建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100122437
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 一宏
(74)【代理人】
【識別番号】100209495
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 さおり
(72)【発明者】
【氏名】中原 和彦
(72)【発明者】
【氏名】江橋 徳紀
(72)【発明者】
【氏名】松田 拓
(72)【発明者】
【氏名】臺 哲義
(72)【発明者】
【氏名】坂本 遼
【テーマコード(参考)】
2E172
4G112
【Fターム(参考)】
2E172AA01
2E172AA03
2E172AA07
2E172AA09
4G112PA29
4G112PB02
4G112PB41
(57)【要約】
【課題】低水結合材比においても練り混ぜ可能で、流動性に優れ、高い強度発現性を示し、且つ、自己収縮ひずみが抑制された低収縮超高強度グラウト組成物及び低収縮超高強度グラウトを提供すること。
【解決手段】セメント、シリカフューム及び高炉スラグからなる結合材と、フェロニッケルスラグ細骨材と、発泡剤と、を含み、フェロニッケルスラグ細骨材の粒度は、フェロニッケルスラグ細骨材全量に対し、粒径が0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量割合が20~70質量%であり、1.2mm以上4mm未満である粒子の質量割合が20~75質量%である、低収縮超高強度グラウト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、シリカフューム及び高炉スラグからなる結合材と、フェロニッケルスラグ細骨材と、発泡剤と、を含み、
前記フェロニッケルスラグ細骨材の粒度は、前記フェロニッケルスラグ細骨材全量に対し、粒径が0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量割合が20~70質量%であり、1.2mm以上4mm未満である粒子の質量割合が20~75質量%である、低収縮超高強度グラウト組成物。
【請求項2】
前記粒径が0.15mm以上1.2mm未満である粒子と、前記粒径が1.2mm以上4mm未満である粒子との質量比([0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量]/[1.2mm以上4mm未満である粒子の質量])が、0.3~2.5である、請求項1に記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
【請求項3】
前記フェロニッケルスラグ細骨材の粒度は、前記フェロニッケルスラグ細骨材全量に対し、粒径が0.15mm未満である粒子の質量割合が10質量%以下である、請求項1又は2に記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
【請求項4】
前記フェロニッケルスラグ細骨材の含有量が、前記結合材100質量部に対し、100~200質量部である、請求項1~3のいずれか一項に記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
【請求項5】
膨張材を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
【請求項6】
前記結合材100質量部に対し、前記シリカフュームの含有量が5~25質量部であり、前記高炉スラグの含有量が15~40質量部である、請求項1~5のいずれか一項に記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の低収縮超高強度グラウト組成物と、水とを含み、
前記水の含有量が、前記結合材100質量部に対し、19~24質量部である、低収縮超高強度グラウト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、低収縮超高強度グラウト組成物及び低収縮超高強度グラウトに関する。
【背景技術】
【0002】
土木構造物、建築構造物の各種接合部、機械設置等の場面において、セメント系グラウト材が使用されている。近年、構造物の大型化及び高層化、並びに工事の省力化に伴い、各種接合部に用いられるグラウト材にも高強度且つ高性能なものが求められている。
【0003】
一般的にモルタルやコンクリートを超高強度化するために、シリカフューム等のシリカ質微粉末を添加する方法が知られている。例えば、特許文献1には、特定の性質を示すシリカフュームをセメントに混和した高強度グラウト材が提案されている。
【0004】
しかしながら、シリカフュームを用いたグラウト材は自己収縮ひずみが大きくなる傾向にあると言われている。そこで、自己収縮ひずみを小さくするために、銅スラグ細骨材を使用し、自己収縮ひずみを抑制する高強度コンクリートやモルタルが提案されている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-143759号公報
【特許文献2】特開2019-210200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、高い強度が得られる優れた強度発現性や自己収縮ひずみが小さい等の高性能な特性に加えて、従来の良好な流動性や無収縮性を備えた、総合的にバランスの優れたグラウト材が望まれている。これらの特性に加えて、水と混練する際の作業性もグラウト材には必要な性能である。高強度化するためにより低水結合材比で混練する場合、練り混ぜが困難であり、練り混ぜできたとしても流動性が低下し、所定の流動性が得られなくなる場合がある。
【0007】
したがって、本発明は、低水結合材比においても練り混ぜ可能で、流動性に優れ、高い強度発現性を示し、且つ、自己収縮ひずみが抑制された低収縮超高強度グラウト組成物及び低収縮超高強度グラウトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らが上記課題について鋭意検討した結果、フェロニッケルスラグ細骨材を特定の粒度分布となるように調整することで、低水結合材比においても練り混ぜやすく、流動性に優れ、高い強度発現性を示し、且つ、自己収縮ひずみが抑制された低収縮超高強度グラウト組成物及び低収縮超高強度グラウトが得られることを見出した。
【0009】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]セメント、シリカフューム及び高炉スラグからなる結合材と、フェロニッケルスラグ細骨材と、発泡剤と、を含み、フェロニッケルスラグ細骨材の粒度は、フェロニッケルスラグ細骨材全量に対し、粒径が0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量割合が20~70質量%であり、1.2mm以上4mm未満である粒子の質量割合が20~75質量%である、低収縮超高強度グラウト組成物。
[2]粒径が0.15mm以上1.2mm未満である粒子と、粒径が1.2mm以上4mm未満である粒子との質量比([0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量]/[1.2mm以上4mm未満である粒子の質量])が、0.3~2.5である、[1]に記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
[3]フェロニッケルスラグ細骨材の粒度は、フェロニッケルスラグ細骨材全量に対し、粒径が0.15mm未満である粒子の質量割合が10質量%以下である、[1]又は[2]に記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
[4]フェロニッケルスラグ細骨材の含有量が、結合材100質量部に対し、100~200質量部である、[1]~[3]のいずれかに記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
[5]膨張材を更に含む、[1]~[4]のいずれかに記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
[6]結合材100質量部に対し、シリカフュームの含有量が5~25質量部であり、高炉スラグの含有量が15~40質量部である、[1]~[5]のいずれかに記載の低収縮超高強度グラウト組成物。
[7][1]~[6]のいずれかに記載の低収縮超高強度グラウト組成物と、水とを含み、水の含有量が、結合材100質量部に対し、19~24質量部である、低収縮超高強度グラウト。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低水結合材比においても練り混ぜ可能で、流動性に優れ、高い強度発現性を示し、且つ、自己収縮ひずみが抑制された低収縮超高強度グラウト組成物及び低収縮超高強度グラウトを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。
【0012】
本実施形態の低収縮超高強度グラウト組成物は、セメント、シリカフューム及び高炉スラグからなる結合材と、フェロニッケルスラグ細骨材と、発泡剤と、を含む。
【0013】
本明細書において、結合材とは、セメント、シリカフューム及び高炉スラグの三成分からなる。
【0014】
セメントは、種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、速硬性セメント等が挙げられる。これらの中でも、早期硬化性及び流動性を両立しやすいという観点から、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントが好ましい。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0015】
セメントの含有量は、結合材100質量部に対し、40~70質量部であることが好ましく、45~65質量部であることがより好ましく、50~60質量部であることが更に好ましい。
【0016】
シリカフュームは、JIS A 6207:2016に記載されているシリカフュームが挙げられる。
【0017】
シリカフュームの含有量は、結合材100質量部に対し、5~25質量部であることが好ましく、10~20質量部であることがより好ましく、12~18質量部であることが更に好ましい。シリカフュームの含有量が上記範囲内であれば、材料分離抵抗性に優れ、練り混ぜ時の作業性や流動性が良好であり、且つ、高い強度発現性が得られる傾向にある。
【0018】
高炉スラグは、銑鉄製造工程で発生するものであり、高炉徐冷スラグや高炉水砕スラグが挙げられる。高炉スラグは微粉末であることが好ましい。高炉スラグの比表面積はブレーン比表面積で3000~10000cm/gであることが好ましく、3000~9000cm/gであることがより好ましく、3000~8000cm/gであることが更に好ましい。
【0019】
高炉スラグの含有量は、結合材100質量部に対し、15~40質量部であることが好ましく、20~38質量部であることがより好ましく、25~35質量部であることが更に好ましい。高炉スラグが上記範囲内であれば、より良好な長期強度発現性や耐久性が得られる。
【0020】
フェロニッケルスラグ細骨材は、ニッケル鉱石からニッケルを精錬する際に発生する副産物であり、JIS A 5011:2016第2部フェロニッケルスラグ骨材に記載されているフェロニッケルスラグ細骨材が挙げられる。フェロニッケルスラグ細骨材は、風砕によって製造されたものが好ましく、その吸水率は1.5~3.5質量%であることが好ましい。吸水率は(吸水量/絶乾質量)×100(質量%)で算出できる。吸水量は、細骨材の表面が乾燥し、細骨材の内部空隙が飽水状態にあるとき(表乾状態)の水の質量を指し、絶乾質量は絶乾状態、すなわち細骨材の表面にも内部空隙にも水分がないときの細骨材の質量を指す。フェロニッケル細骨材の最大粒径は、4mm未満であることが好ましい。
【0021】
フェロニッケルスラグ細骨材の粒度は、フェロニッケルスラグ細骨材全量に対し、粒径が0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量割合が20~70質量%であり、1.2mm以上4mm未満である粒子の質量割合が20~75質量%である。フェロニッケルスラグ細骨材の粒度が上記範囲外であると、練り混ぜ時に水となじむまでの時間がかかり、流動性が低下する。練り混ぜ時の水なじみが更によく、流動性もより一層向上しやすいという観点から、フェロニッケルスラグ細骨材の粒度は、フェロニッケルスラグ細骨材全量に対し、粒径が0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量割合が25~68質量%であり、1.2mm以上4mm未満である粒子の質量割合が25~73質量%であることが好ましく、粒径が0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量割合が40~60質量%であり、1.2mm以上4mm未満である粒子の質量割合が35~63質量%であることがより好ましく、粒径が0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量割合が45~58質量%であり、1.2mm以上4mm未満である粒子の質量割合が38~55質量%であることが更に好ましい。
【0022】
また、0.15mm以上1.2mm未満である粒子と1.2mm以上4mm未満である粒子との質量比([0.15mm以上1.2mm未満である粒子の質量]/[1.2mm以上4mm未満である粒子の質量])は、0.3~2.5であることが好ましく、0.6~2であることがより好ましく、0.8~1.5であることが更に好ましい。0.15mm以上1.2mm未満である粒子と1.2mm以上4mm未満である粒子との質量比が上記範囲内であれば、練り混ぜ時の水なじみが更によく、流動性もより一層向上する。
【0023】
フェロニッケルスラグ細骨材の粒度は、フェロニッケルスラグ細骨材全量に対し、粒径が0.15mm未満である粒子の質量割合が10質量%以下であることが好ましく、9質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
【0024】
フェロニッケルスラグ細骨材の粒度は、フェロニッケルスラグ細骨材を4mmふるい、1.2mmふるい、0.15mmふるいでふるい分けすることにより調整できる。フェロニッケルスラグ細骨材全量をふるい分けし、4mmふるいを通過し、1.2mmふるいに残留する粒子を1.2mm以上4mm未満である粒子とし、1.2mmふるいを通過し、0.15mmふるいに残留する粒子を0.15mm以上1.2mm未満である粒子とし、0.15mmふるいを通過する粒子を0.15mm未満である粒子とする。
【0025】
フェロニッケルスラグ細骨材の含有量が、結合材100質量部に対し、100~200質量部であることが好ましく、120~180質量部であることがより好ましく、135~160質量部であることが更に好ましい。フェロニッケルスラグ細骨材の含有量が上記範囲内であれば、練り混ぜ時の水なじみが更によく、グラウトとしてより良好な流動性が得られ、自己収縮ひずみがより一層低減する。
【0026】
発泡剤は特に限定されず、例えば、水と混練後に気体を発生する物質であればよい。発泡剤としては、アルミニウムや亜鉛等の両性金属の粉末等が挙げられる。発泡剤としては、効果的に発泡し、膨張作用をより一層発揮することができるという観点から、両性金属の粉末が好ましく、中でもアルミニウム粉末が好ましい。発泡剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0027】
発泡剤の含有量は、結合材100質量部に対し、0.0001~0.008質量部であることが好ましく、0.0003~0.006質量部であることがより好ましく、0.0005~0.004質量部であることが更に好ましい。発泡剤の含有量が上記範囲内であれば、充填後の沈下現象を防止しやすく、構造物との一体化が図れ、過度な膨張による強度低下を起こしにくい。
【0028】
本実施形態の低収縮超高強度グラウト組成物は、消泡剤を含有してもよい。消泡剤は、一般のセメント用消泡剤、セメントモルタル用消泡剤又はコンクリートに使用される消泡剤であれば特に限定されず、例えば、鉱油系消泡剤、エステル系消泡剤、アミン系消泡剤、アミド系消泡剤、ポリエーテル系消泡剤、シリコーン系消泡剤が挙げられる。消泡剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。消泡剤は、液体のものでも粉体のものでもよく、プレミックスモルタルのようにプレミックス、つまり、セメント及び混和材料を乾式混合したときに材料が均質化しやすいという観点から、粉体のものを使用することが好ましい。
【0029】
消泡剤の含有量は、結合材100質量部に対し、0.1~1質量部であることが好ましく、0.2~0.8質量部であることがより好ましく、0.3~0.6質量部であることが更に好ましい。消泡剤の含有量が上記範囲内であれば、混練時の僅かな気泡を消し、硬化体を緻密化することができ、強度発現性が向上しやすい。
【0030】
本実施形態の低収縮超高強度グラウト組成物は、膨張材を含有してもよい。膨張材は、コンクリート用膨張材として一般に使用されているJIS適合の膨張材(JIS A 6202:2008)であれば、何れの膨張材でもかまわない。膨張材としては、例えば、遊離生石灰を主成分とする膨張材(生石灰系膨張材)、アウインを主成分とする膨張材(エトリンガイト系膨張材)、遊離生石灰とエトリンガイト生成物質の複合系膨張材が挙げられる。膨張材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。膨張材は、強度発現性に優れ、自己収縮ひずみがより一層低減されるという観点から、ブレーン比表面積が2000~6000cm/gのものを使用することが好ましい。
【0031】
膨張材の含有量は、結合材100質量部に対し、1~5質量部であることが好ましく、1.5~4質量部であることがより好ましく、1.7~3質量部であることが更に好ましい。膨張材の含有量が上記範囲内であれば、圧縮強度、寸法変化率等がより一層優れたものとなる。
【0032】
本実施形態の低収縮超高強度グラウト組成物は、減水剤を含有してもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤が挙げられる。これらの減水剤の中でも流動性を確保しやすいという観点から、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0033】
減水剤の含有量は、結合材100質量部に対し、0.1~2質量部であることが好ましく、0.2~1.5質量部であることがより好ましく、0.3~1質量部であることが更に好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を確保しやすく、流動性がより一層向上する。
【0034】
本実施形態の低収縮超高強度グラウト組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和材料を配合してもよい。混和材料としては、例えば、セメント用ポリマー、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、凝結遅延剤、石粉、火山灰、空気連行剤、表面硬化剤が挙げられる。
【0035】
本実施形態の低収縮超高強度グラウト組成物を製造する方法は、特に限定されず、例えば、V型混合機や可傾式コンクリートミキサー等の重力式ミキサー、ヘンシェル式ミキサー、噴射型ミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー等のミキサーにより混合することで製造することができる。
【0036】
本実施形態の低収縮超高強度グラウト組成物は、水と混合して低収縮超高強度グラウトとすることができ、その水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、結合材100質量部に対して19~24質量部であることが好ましく、19.5~23質量部であることがより好ましく、20~22質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、練り混ぜ時の水なじみ及び流動性がより一層向上する。
【0037】
本実施形態の低収縮超高強度グラウトの調製は、通常のモルタル組成物と同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、モルタルミキサー、グラウトミキサー、ハンドミキサー、傾胴ミキサー、二軸ミキサー等が挙げられる。
【0038】
本実施形態の低収縮超高強度グラウト組成物及び低収縮超高強度グラウトは、低水結合材比においても練り混ぜ可能で、流動性に優れ、高い強度発現性を示し、且つ、自己収縮ひずみが抑制されたものである。したがって、本実施形態の低収縮超高強度グラウト組成物及び低収縮超高強度グラウトは、高い耐久性が要求される構造物・建築物等に好適に使用することができる。その施工方法は特に限定されない。
【実施例0039】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0040】
[材料]
セメント:早強ポルトランドセメント
高炉スラグ:ブレーン比表面積4000cm/g
シリカフューム:市販品
細骨材:フェロニッケルスラグ(風砕品、吸水率2.8質量%)又は珪砂
膨張材:生石灰系膨張材(ブレーン比表面積3200cm/g)
消泡剤:シリコーン系消泡剤
減水剤:ポリカルボン酸系減水剤
発泡剤:アルミニウム粉末
【0041】
フェロニッケルスラグ及び珪砂の粒度を調整し、細骨材1~9を調製した。細骨材1~9の粒径分布を表1に示す。表1中の粒径分布(%)は質量基準である。
【0042】
【表1】
【0043】
[低収縮超高強度グラウトの作製]
セメント55質量部、高炉スラグ30質量部及びシリカフューム15質量部からなる結合材100質量部に対し、表2に示す各種細骨材を145質量部、膨張材を2質量部、消泡剤を0.5質量部、減水剤を0.55質量部、発泡剤を0.001質量部として配合設計し、低収縮超高強度グラウト組成物を調製した。
20℃環境下において、10Lの円筒容器に配合設計した低収縮超高強度グラウト組成物と水とを添加し、ハンドミキサー(BMV-150A、300rpm)で150秒混練して低収縮超高強度グラウトを作製した。水は結合材100質量部に対し、21質量部となるように添加した。
【0044】
[評価方法]
下記の評価方法にて、実施例1~5及び比較例1~4の低収縮超高強度グラウトの評価を行った。各試験は20℃で行った。試験結果を表2に示す。
・流動化時間(水なじみ)
所定量の水に対し、ハンドミキサーで攪拌しながら低収縮超高強度グラウト組成物を投入した後、低収縮超高強度グラウト組成物と水分がなじむ(低収縮超高強度グラウト材が流動化する)までの時間(秒)を目視にて計測した。流動化時間が60秒以内であれば、水なじみが良好(練り混ぜやすい)であると評価した。
・流動性試験:
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」のフロー試験に準じて流動性試験を実施した。フロー値は引抜きフロー値を測定した。
・圧縮強度
土木学会基準JSCE-G 505-2018「円柱供試体を用いたモルタルまたはセメントペーストの圧縮強度試験方法(案)」に準じて、材齢7日及び28日におけるモルタル硬化体の圧縮強度を測定した。供試体の寸法は、直径50mm、高さ100mmとした。養生は20℃にて24時間後まで型枠のまま湿潤養生とした。24時間後に型枠を脱枠し、以降所定材齢まで水中養生とした。
・膨張収縮率
NEXCO試験方法 試験法312-1999「無収縮モルタル品質管理試験方法」の膨張収縮試験方法に準じて、20℃環境下で材齢1日の膨張収縮率を測定した。
・自己収縮ひずみ
日本コンクリート工学会(JCI)の「超流動コンクリート研究委員会報告書の「高流動コンクリートの自己収縮試験方法」に記載された方法に準じて測定した。このとき、自己収縮ひずみの起点は凝結の始発をゼロとした。
【0045】
【表2】