IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電産コパル株式会社の特許一覧

特開2022-183465医療用監視装置および医療用監視システム
<>
  • 特開-医療用監視装置および医療用監視システム 図1
  • 特開-医療用監視装置および医療用監視システム 図2A
  • 特開-医療用監視装置および医療用監視システム 図2B
  • 特開-医療用監視装置および医療用監視システム 図3
  • 特開-医療用監視装置および医療用監視システム 図4A
  • 特開-医療用監視装置および医療用監視システム 図4B
  • 特開-医療用監視装置および医療用監視システム 図5
  • 特開-医療用監視装置および医療用監視システム 図6
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183465
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】医療用監視装置および医療用監視システム
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/16 20060101AFI20221206BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20221206BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
A61M1/16 111
A61B5/00 102A
A61B5/00 101A
G08B25/00 510M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090804
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000001225
【氏名又は名称】日本電産コパル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 龍三
(72)【発明者】
【氏名】滝口 泰三
【テーマコード(参考)】
4C077
4C117
5C087
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077CC03
4C077EE01
4C077HH04
4C077HH20
4C117XA04
4C117XB04
4C117XC01
4C117XD11
4C117XE43
4C117XE64
4C117XE65
4C117XG05
4C117XH02
4C117XJ01
4C117XJ42
4C117XJ45
5C087AA02
5C087AA11
5C087AA31
5C087BB18
5C087DD03
5C087DD29
5C087FF01
5C087FF02
5C087GG02
5C087GG08
5C087GG70
5C087GG83
(57)【要約】
【課題】血液の処置を行う医療現場において、看護師等の労働負荷を軽減することが可能な医療用監視装置および医療用監視システムを提供する。
【解決手段】処置領域検出部31は、撮影部18で撮影された監視画像の中から処置領域を検出する。データ変換部32は、検出された処置領域に含まれるRGB形式の画像データをHSV形式の画像データに変換する。領域検出部は、血液の色とみなすHSVの数値範囲が定められ、当該HSVの数値範囲に基づいてデータ変換部32で変換されたHSV形式の画像データの中から血液の領域を検出する。出血判定部33は、検出された血液の領域の幅がチューブの幅よりも大きい場合に異常有りと判定する。通知部34は、出血判定部33で異常有りと判定された場合に異常を通知する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液の処置を受けている患者の身体の一部の領域であり、チューブの先端に装着される針が挿入される箇所を含む領域を処置領域として、前記処置領域を含む範囲を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影された監視画像の中から前記処置領域を検出する処置領域検出部と、
前記処置領域検出部で検出された前記処置領域に含まれるRGB形式の画像データをHSV形式の画像データに変換するデータ変換部と、
血液の色とみなすHSVの数値範囲が定められ、前記HSVの数値範囲に基づいて前記データ変換部で変換された前記HSV形式の画像データの中から血液の領域を検出する領域検出部と、
前記領域検出部によって検出された前記血液の領域の幅が前記チューブの幅よりも大きい場合に異常有りと判定する出血判定部と、
前記出血判定部で異常有りと判定された場合に異常を通知する通知部と、
を備える、
医療用監視装置。
【請求項2】
請求項1記載の医療用監視装置において、
前記通知部は、前記処置領域検出部で前記処置領域が検出されない場合にも、異常を通知する、
医療用監視装置。
【請求項3】
請求項1記載の医療用監視装置において、
前記HSVの数値範囲は、Hが0°~30°,330°~360°の範囲、Sが30%~100%の範囲、Vが30%~100%の範囲である、
医療用監視装置。
【請求項4】
請求項1記載の医療用監視装置において、
前記出血判定部は、検出した前記血液の領域の縦幅および横幅が共に前記チューブの幅よりも大きい場合に異常有りと判定する、
医療用監視装置。
【請求項5】
医療用監視装置と、前記医療用監視装置との通信が可能な管理端末とを有する医療用監視システムであって、
前記医療用監視装置は、
血液の処置を受けている患者の身体の一部の領域であり、チューブの先端に装着される針が挿入される箇所を含む領域を処置領域として、前記処置領域を含む範囲を撮影する撮影部と、
前記撮影部で撮影された監視画像の中から前記処置領域を検出する処置領域検出部と、
前記処置領域検出部で検出された前記処置領域に含まれるRGB形式の画像データをHSV形式の画像データに変換するデータ変換部と、
血液の色とみなすHSVの数値範囲を保持し、前記HSVの数値範囲に基づいて前記データ変換部で変換された前記HSV形式の画像データの中から血液の領域を検出する領域検出部と、
前記領域検出部によって検出された前記血液の領域の幅が前記チューブの幅よりも大きい場合に異常有りと判定する出血判定部と、
前記出血判定部で異常有りと判定された場合に前記管理端末へ異常を通知する通知部と、
を備える、
医療用監視システム。
【請求項6】
請求項5記載の医療用監視システムにおいて、
前記通知部は、前記処置領域検出部で前記処置領域が検出されない場合にも、前記管理端末へ異常を通知する、
医療用監視システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用監視装置および医療用監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、カテーテル等の医療デバイスの自己抜去に起因する医療事故を防止する自己抜去監視システムが示される。当該システムは、撮影部によって撮影された監視画像から、監視対象者を特定し、監視対象者に装着されている医療デバイスの装着位置を特定し、監視対象者の動作を認識する。また、当該システムは、特定された装着位置の周辺の色の変化に基づいて血液の流出を検知する。当該システムは、これらの特定結果、認識結果、検知結果の組み合わせに基づいて、監視者へ対応要求通知を出力するか否かを判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-29673号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、人工透析等の血液の処置を行う医療現場では、血液の処置を受けている患者が針やチューブを外すまたは動かすこと等で、異常な出血が生じる場合がある。異常な出血を早期に検出するためには、例えば、看護師等が、頻繁に見回りを行いながら患者に対する処置の状況を確認する必要がある。このため、看護師等の労働負荷が重くなっていた。
【0005】
一方、このような異常な出血を人手に依らずに検出する方法として、例えば、特許文献1に示されるような方法を用いることが考えられる。特許文献1の方法では、医療デバイスの装着位置の周辺に特定の色(赤色)が出現したことを、監視画像の画像解析により判別している。しかしながら、血液の処置を行う場合には、チューブ内に血液を流すため、点滴等の場合と異なり、正常状態であっても血液が検出され得る。さらに、血液の色は、ある程度の幅があるため、画像解析を用いて血液を認識する具体的な方法を定めることも、容易でない。
【0006】
そこで、本発明の目的の一つは、血液の処置を行う医療現場において、看護師等の労働負荷を軽減することが可能な医療用監視装置および医療用監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の医療用監視装置は、撮影部と、処置領域検出部と、データ変換部と、出血判定部と、通知部と、を備える。撮影部は、血液の処置を受けている患者の身体の一部の領域であり、チューブの先端に装着される針が挿入される箇所を含む領域を処置領域として、処置領域を含む範囲を撮影する。処置領域検出部は、撮影部で撮影された監視画像の中から処置領域を検出する。データ変換部は、処置領域検出部で検出された処置領域に含まれるRGB形式の画像データをHSV形式の画像データに変換する。領域検出部は、血液の色とみなすHSVの数値範囲が定められ、当該HSVの数値範囲に基づいてデータ変換部で変換されたHSV形式の画像データの中から血液の領域を検出する。出血判定部は、検出された血液の領域の幅がチューブの幅よりも大きい場合に異常有りと判定する。通知部は、出血判定部で異常有りと判定された場合に異常を通知する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、血液の処置を行う医療現場において、看護師等の労働負荷を軽減することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施の形態の医療用監視システムの構成例を示す概略図である。
図2A図1における医療用監視装置の外形例を示す斜視図である。
図2B図2Aの医療用監視装置における内部構造の外形例を示す平面図である。
図3図1において、医療用監視装置の主要部の機能構成例を示すブロック図である。
図4A図1において、医療用監視装置の撮影部によって撮影された正常時の監視画像の一例を示す図である。
図4B図1において、医療用監視装置の撮影部によって撮影された異常時の監視画像の一例を示す図である。
図5図3において、制御ユニットによる血液の認識方法の一例を説明する図である。
図6図3の医療用監視装置において、主要部の処理内容の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0011】
<医療用監視システムの概略>
図1は、一実施の形態の医療用監視システムの構成例を示す概略図である。図1には、患者51がベッド50に寝た状態で血液の処置を受けている状況が示される。この例では、人工透析を受けている状況が示される。ただし、血液の処置の実体は、人工透析に限らず、輸血等であってもよい。
【0012】
患者51の身体、例えば腕51aには、2本の針が挿入されている。この2本の針は、2本のチューブ61a,61bの一方の先端にそれぞれ装着される。2本のチューブ61a,61bの他方の先端は、人工透析装置60に装着される。人工透析装置60は、例えば、患者51の動脈からチューブ61aを介して血液を吸い取り、所定の透析処理を行ったのち、透析後の血液を、チューブ61bを介して患者51の静脈へ戻す。
【0013】
ここで、医療用監視システム1は、医療用監視装置10と、当該医療用監視装置との通信が可能な管理端末40と、を備える。医療用監視装置10は、撮影部18を備える。撮影部18は、患者51の身体、例えば腕51aの一部の領域であり、チューブ61a,61bの先端に装着される針が挿入される箇所を含む領域を処置領域として、当該処置領域を含む範囲を撮影する。そして、医療用監視装置10は、撮影部18で撮影された監視画像に基づいて、出血等の異常を検出する。
【0014】
医療用監視装置10は、異常を検出した場合、管理端末40へ異常を通知する。管理端末40は、例えば、看護師等が持ち運ぶ携帯端末や、または、ナースステーションに設置されるPC(Personal Computer)等であってよい。また、この例では、医療用監視装置10と管理端末40との通信は、無線で行われる。ただし、この通信経路の一部または全ての区間で有線が用いられてもよい。
【0015】
<医療用監視装置の詳細>
図2Aは、図1における医療用監視装置の外形例を示す斜視図である。図2Bは、図2Aの医療用監視装置における内部構造の外形例を示す平面図である。図2Aに示されるように、医療用監視装置10は、略直方体形状のハウジング12を有している。図2Aおよび図2Bに示されるように、医療用監視装置10のハウジング12内には、撮影部18、言い換えれば監視カメラを構成する撮像素子13およびレンズ14が収容される。撮像素子13は、CCD(Charge Coupled Device)型やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)型のイメージセンサである。レンズ14は、撮像素子13に対して被写体からの光を集める。
【0016】
図2Aに示されるように、ハウジング12には、レンズ14を介して撮像素子13に光を取り込むための開口部15が形成される。そして、ハウジング12には、この開口部15を開閉するレンズカバー11が移動自在に取り付けられる。撮影部18による撮影は、レンズカバー11によって開口部15を開いた状態で行われる。一方、撮影を行わない期間では、レンズカバー11によって開口部15を閉じることで、レンズ14等を保護することができる。なお、撮影部18は、必ずしもレンズ14を有する必要はない。また、レンズカバー11は、医療用監視装置10によって撮影されていないことを患者(被撮影者)に知らせるために閉じられることもある。
【0017】
図2Aに示されるように、ハウジング12には、撮影時に点灯するランプLP、メモリカードが挿入されるカードスロットCS、および電源ケーブルが接続される電源ポートPW等が取り付けられる。また、図2Aおよび図2Bに示されるように、ハウジング12内には、2つの無線通信モジュール21,22が収容される。各無線通信モジュール21,22は、アンテナを備えたプリント基板21a,22aと、プリント基板21a,22aに搭載される集積回路部品21b,22bと、を有する。集積回路部品21b,22bは、例えば、RF(Radio Frequency)回路等と呼ばれる無線通信回路を搭載する。
【0018】
図2Bに示される例では、無線通信モジュール21のプリント基板21aと無線通信モジュール22のプリント基板22aとは、ハウジング12内で互いに直交する向きに配置される。無線通信モジュール21,22は、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)等の通信規格に基づいて、装置外部と無線通信を行う。なお、Wi-Fiを用いる場合には、例えば、無線LANルータ等を介して外部装置との無線通信が行われる。
【0019】
図3は、図1において、医療用監視装置の主要部の機能構成例を示すブロック図である。図3に示す医療用監視装置10は、メモリ17と、撮影部18と、無線通信モジュール21,22と、赤外線受信ユニット23と、マイク24と、駆動ユニット25と、制御ユニット30と、電源ユニット28と、カードスロットCSとを備える。メモリ17は、RAM(Random access memory)等の揮発性メモリと、フラッシュメモリ、SSD(Solid State Drive)、HDD(Hard Disk Drive)等の不揮発性メモリとの組み合わせで構成される。
【0020】
制御ユニット30は、代表的には、プロセッサおよび各種周辺回路を含むマイクロコントローラ等によって構成される。この場合、メモリ17の一部は、マイクロコントローラにも搭載される。制御ユニット30は、医療用監視装置10全体の制御機能を担う。その一部の制御機能として、制御ユニット30は、詳細は後述するが、例えば、プロセッサがメモリ内のプログラムを実行することで実現される処置領域検出部31、データ変換部32、出血判定部33および通知部34を備える。なお、制御ユニット30は、マイクロコントローラに限らず、FPGA(Field Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等で構成されてもよい。
【0021】
なお、他の実施例では、制御ユニット30は、領域検出部をさらに含んでいてもよい。この領域検出部は、出血判定部33に含まれるものであってもよいし、出血判定部33とは異なるものであってもよい。
【0022】
撮影部18は、前述した撮像素子13およびレンズ14に加えて、画像処理ユニット16を備える。画像処理ユニット16は、例えば、ISP(Image Signal Processor)であり、撮像素子13によって撮影された監視画像のRAWデータを、RGB(Red Green Blue)形式の画像データに変換してメモリ17に保存する。無線通信モジュール21,22は、前述したように、所定の通信規格に基づいて管理端末40と無線通信を行う。この際のベースバンドでの信号処理は、制御ユニット30によって行われる。
【0023】
赤外線受信ユニット23は、例えば、リモコンからの赤外線による命令を受信し、制御ユニット30へ送信する。マイク24は、音声を検出する。検出された音声は、例えば、制御ユニット30を介してメモリ17に保存されてもよく、また、制御ユニット30が音声認識に基づいて各種制御を行うような場合に用いられてもよい。駆動ユニット25は、制御ユニット30からの開閉命令に応じて、アクチュエータ26およびリンク機構27を介してレンズカバー11の開閉を制御する。
【0024】
電源ユニット28は、例えば、電源管理IC等で構成され、図2Aに示した電源ポートPWからの電源を受け、医療用監視装置10の各部へ所定の電源電圧値で電力供給を行う。また、電源ユニット28は、制御ユニット30からの命令に基づいて各部への電力供給を制御する。その一つとして、電源ユニット28は、撮影を行わない期間で不必要な箇所への電力供給を遮断する省電力制御等を行ってもよい。なお、電源ユニット28は、電源ポートPWからの電源に限らず、バッテリからの電源を受けてもよい。
【0025】
カードスロットCSには、制御ユニット30によってアクセス可能なメモリカードMCが挿入される。制御ユニット30は、例えば、撮影部18によってメモリ17に保存された画像データを、メモリカードMCにコピーするようなことも可能である。
【0026】
<出血有無の判定方法>
図4Aは、図1において、医療用監視装置の撮影部によって撮影された正常時の監視画像の一例を示す図である。図4Bは、図1において、医療用監視装置の撮影部によって撮影された異常時の監視画像の一例を示す図である。撮影部18は、前述したように、患者51の身体、例えば腕51aの一部の領域であり、チューブ61a,61bの先端に装着される針62a,62bが挿入される箇所を含む領域を処置領域70として、処置領域70を含む範囲を撮影する。その結果、図4Aおよび図4Bに示されるような監視画像が得られる。
【0027】
図4Aにおいて、針62a,62bの挿入箇所には、例えば、ガーゼやテープ等の固定部材63a,63bが装着される場合が多い。また、図4Aに示されるように、監視画像には、正常時であっても、チューブ61a,61b内を流れる血液52が含まれ得る。したがって、単純に血液52の有無だけで、正常・異常、すなわち出血の有無を判定することは困難であり、さらに、血液52を認識する具体的な方法を定めることも、容易ではない。
【0028】
図4Bの監視画像には、例えば、患者51が針62aやチューブ61aを外すまたは動かすこと等で、針62aやチューブ61aから血液52が漏れ出した結果、異常な血液の領域53が含まれている。この異常な血液の領域53は、通常、チューブ61a,61bの幅Wtよりも大きい幅W1を持ち得る。このため、幅の方向を確定できる場合には、チューブ61a,61bの幅Wtよりも大きい幅W1を持つ血液の領域53を、異常な出血領域として判定することができる。
【0029】
一方、幅の方向を確定できない場合には、例えば、チューブ61a,61bの長手方向を幅方向と誤認識してしまう可能性がある。このような場合には、例えば、検出した血液の領域53の縦幅W1および横幅W2が共にチューブの幅Wtよりも大きい場合を、異常と判定すればよい。
【0030】
図5は、図3において、制御ユニットによる血液の認識方法の一例を説明する図である。図3で述べたように、撮影部18からは、RGB形式の画像データが得られる。一方、血液52の色は、赤色を基準に、濃淡の度合いや明暗の度合い等で、ある程度の幅を持つ。このように、ある程度の幅を持つ血液52の色を、RGB形式の画像データに基づいて認識することは容易でない。すなわち、血液52の色を、赤(R)、緑(G)、青(B)のそれぞれの数値範囲で規定することは容易でない。
【0031】
そこで、制御ユニット30は、RGB形式の画像データをHSV(Hue Saturation Value)形式の画像データに変換する。図5には、HSV形式に基づく色空間のモデルの一例が示される。ここでは、円錐モデルが示されるが、他にも円柱モデルや六角錐モデル等も知られている。HSV形式は、人間の知覚方法に近い形式であり、色を、色相(H)、彩度(S)、明度(V)で表現する。
【0032】
色相(H)は、底面となる円の円周方向で表され、0°~360°の範囲で表される。色相(H)をRGBに対応付けると、色相(H)の0°は赤色(R)であり、120°は緑色(G)であり、240°は青色(B)である。また、例えば、色相(H)の0°~60°の範囲では、赤色(R)に対して緑色(G)を混ぜる割合が増えていき、60°では、赤色と緑色とが均等に混ざることで黄色となる。一方、色相(H)の360°(=0°)~300°の範囲では、赤色(R)に対して青色(B)を混ぜる割合が増えていき、300°では、赤色(R)と青色(B)とが均等に混ざることで赤紫(マゼンタ)色となる。
【0033】
彩度(S)は、円の半径方向で表され、円の中心点を0%、円周上の点を100%として、0%~100%の範囲で表される。例えば、底面上において、色相(H)が表す色は、彩度(S)が100%から0%に近づくほど薄くなっていき、0%では白になる。明度(V)は、円錐の高さ方向で表され、円錐の頂点を0%、底面となる円の中心点を100%として、0%~100%の範囲で表される。色相(H)が表す色は、明度(V)が100%から0%に近づくほど暗くなっていき、0%では黒色となる。
【0034】
このようなHSV形式を用いると、RGB形式を用いる場合と異なり、色相(H)、彩度(S)、明度(V)のそれぞれの数値範囲を用いて、血液52の色を、濃淡の度合いや明暗の度合い等を反映させた上で容易に規定することが可能になる。一例として、血液52の色は、色相(H)が0°~30°,330°~360°の範囲、彩度(S)が30%~100%の範囲、明度(V)が30%~100%の範囲に定められる。ただし、誤認識を防止するため、これらの範囲を更に限定してもよい。また、出血直後の血液52を早期に検出するという観点では、彩度(S)および明度(V)は、より100%寄りの範囲に定められるとよい。
【0035】
<医療用監視装置の監視動作>
図6は、図3の医療用監視装置において、主要部の処理内容の一例を示すフロー図である。図6において、まず、撮影部18内の撮像素子13は、図4Aおよび図4Bに示した処置領域70を含む範囲を撮影する(ステップS101)。続いて、撮影部18内の画像処理ユニット16は、撮像素子13からの監視画像のRAWデータをRGB形式の画像データに変換し、メモリ17に保存する(ステップS102)。
【0036】
次いで、制御ユニット30内の処置領域検出部31は、撮影部18で撮影された監視画像の中から、詳細には、メモリ17内の画像データの中から処置領域70を検出する(ステップS103)。具体的には、処置領域検出部31は、例えば、処置領域70に含まれる腕51aの形状やチューブ61a,61bの形状等をディープラーニング等の機械学習で予め学習しておき、これらの形状を含む領域が存在するか否かを判別することで処置領域70を検出する。続いて、処置領域検出部31は、処置領域70が検出されたか否かを判定する(ステップS104)。
【0037】
ステップS104で処置領域70が検出されなかった場合(“No”時)、制御ユニット30内の通知部34は、無線通信モジュール21,22を介して管理端末40へ異常を通知する(ステップS109)。すなわち、図1において、例えば、患者51が腕51aの上に布団を被せてしまうこと等で処置領域70が検出されない場合がある。この場合、例えば、処置領域70で安全性に関わる事象が生じたとしても、それを検出することは困難となる。そこで、通知部34は、例えば、処置領域が検出されない旨や見回り回数の増加が必要となる旨などを表す異常通知を、メール等によって管理端末40へ送信する。
【0038】
一方、ステップS104で処置領域70が検出された場合(“Yes”時)、制御ユニット30内のデータ変換部32は、処置領域70に含まれるRGB形式の画像データ、詳細には、メモリ17内の画像データを、HSV形式の画像データに変換する(ステップS105)。具体的には、図5に示した円錐モデルに基づく場合、データ変換部32は、例えば、以下に示す式(1)、式(2)および式(3)を用いて、各画素のR,G,Bの数値を、H,S,Vの数値に変換できる。式(1)、式(2)および式(3)において、MXは、R,G,Bの数値の中の最大値であり、MNは、R,G,Bの数値の中の最小値である。
【0039】
【数1】
【0040】
次いで、制御ユニット30内の出血判定部33は、血液52の色とみなすHSVの数値範囲に基づいて、データ変換部32で変換されたHSV形式の画像データの中から血液の領域を検出する(ステップS106)。すなわち、出血判定部33は、血液とみなす画素領域を検出する。なお、図5で述べたように、当該HSVの数値範囲は、予め定められたのち、メモリ17等に保持される。
【0041】
そして、ステップS107において、出血判定部33は、図4Bで述べたように、検出した血液の領域53の幅W1がチューブ61a,61bの幅Wtよりも大きい場合(“Yes”時)には、異常有りと判定し、ステップS108へ移行する。一方、ステップS107において、チューブ61a,61bの幅Wtよりも大きい幅W1の血液の領域53が出血判定部33によって検出されなかった場合(“No”時)、ステップS101に戻って同様の処理が繰り返される。なお、チューブ61a,61bの幅Wtは、ステップS103での画像認識によって検出されるか、または、監視画像の縮尺がほぼ変わらない場合には、予め固定的に定められてもよい。
【0042】
なお、ステップS106、S107を実行する制御ユニット30は、出血判定部と呼ばれることもある。また、ステップS106を実行する制御ユニット30が領域判定部と呼ばれ、ステップS107を実行する制御ユニット30が出血判定部と呼ばれることもある。
【0043】
ステップS108において、通知部34は、無線通信モジュール21,22を介して管理端末40へ異常を通知する。すなわち、通知部34は、例えば、異常な出血を検出した旨や処置領域70の目視確認が必要となる旨などを表す異常通知を、メール等によって管理端末40へ送信する。なお、仮に、ステップS103で述べた処置領域70の検出処理を行わない場合、監視画像の中に血液52自体が存在しないような状況が生じ得る。この場合、ステップS107において正常であるとの誤判定が生じ得る。この観点からも、ステップS103の処理を設けることが有益となる。
【0044】
<実施の形態の主要な効果>
以上、実施の形態の方式を用いることで、看護師等は、管理端末40への異常通知が行われた場合に、見回り等を行えばよい。その結果、代表的には、人工透析等の血液の処置を行う医療現場において、看護師等の労働負荷を軽減することが可能になる。また、出血時に限らず、処置領域70が検出されない場合にも、通知が行われるため、看護師等に、安全性に関わる患者の様々な行動を早期に把握させることが可能になる。
【0045】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0046】
例えば、異常を通知する方法は、管理端末40へ異常通知を送信する方法に限らず、看護師等が知覚し易い箇所に警告ランプやスピーカ等を設置した上で、当該警告ランプを点灯する方法やスピーカから警報を発する方法等であってもよい。また、ここでは、HSV形式への変換を行ったが、代わりに、HSL(Hue Saturation Lightness)形式への変換を行ってもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…医療用監視システム、10…医療用監視装置、11…レンズカバー、12…ハウジング、13…撮像素子、14…レンズ、15…開口部、16…画像処理ユニット、17…メモリ、18…撮影部、21,22…無線通信モジュール、21a,22a…プリント基板、21b,22b…集積回路部品、23…赤外線受信ユニット、24…マイク、25…駆動ユニット、26…アクチュエータ、27…リンク機構、28…電源ユニット、30…制御ユニット、31…処置領域検出部、32…データ変換部、33…出血判定部、34…通知部、40…管理端末、50…ベッド、51…患者、51a…腕、52…血液、53…血液の領域、60…人工透析装置、61a,61b…チューブ、62a,62b…針、63a,63b…固定部材、70…処置領域、CS…カードスロット、LP…ランプ、MC…メモリカード、PW…電源ポート
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5
図6