(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183478
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】液質測定装置及び液質測定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 27/416 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
G01N27/416 353Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090822
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三原 俊哉
(57)【要約】
【課題】循環経路内の測定液に対して別の液体を適切に添加する。
【解決手段】液質測定装置1は、測定液Sが流れる循環経路10を構成する配管90と、循環経路10内の測定液Sの液質を測定する液質センサ31と、を備える。液質測定装置1は、配管90と取水口54および排水口55を介して接続されつつ循環経路10の一部を構成し、内部空間50が形成された添加槽33を更に備える。添加槽33は、測定液Sとは別の液体を添加槽33の外部から内部空間50に導入する導入部70と、内部空間50の空気を外部に排出させる通気部60と、を有する。内部空間50の底部には、取水口54と排水口55とを結びつつ測定液Sが流れる添加槽内経路56が形成されている。導入部70および通気部60は添加槽内経路56よりも上側の内部空間50に面する添加槽33の壁面に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定液が流れる循環経路を構成する配管と、
前記循環経路内の前記測定液の液質を測定する液質センサと、を備えた液質測定装置であって、
前記配管と取水口および排水口を介して接続されつつ前記循環経路の一部を構成し、内部空間が形成された添加槽を更に備え、
前記添加槽は、前記測定液とは別の液体を前記添加槽の外部から前記内部空間に導入する導入部と、前記内部空間の空気を外部に排出させる通気部と、を有し、
前記内部空間の底部には、前記取水口と前記排水口とを結びつつ前記測定液が流れる添加槽内経路が形成され、
前記導入部および前記通気部は前記添加槽内経路よりも上側の前記内部空間に面する前記添加槽の壁面に配置されている液質測定装置。
【請求項2】
前記添加槽内経路の最大幅Wmaxは、前記取水口の直径R1との関係で下記式(1)の条件を満たし、且つ前記排水口の直径R2との関係で下記式(2)の条件を満たす請求項1に記載の液質測定装置。
R1×0.9<Wmax<R1×1.1・・・式(1)
R2×0.9<Wmax<R2×1.1・・・式(2)
【請求項3】
前記添加槽のうち前記添加槽内経路の最も低い位置から前記取水口の最も低い位置までの高さ方向の距離は、前記取水口の直径R1の0.1倍未満であり、且つ、前記添加槽内経路の最も低い位置から前記排水口の最も低い位置までの高さ方向の距離は、前記排水口の直径R2の0.1倍未満である請求項1に記載の液質測定装置。
【請求項4】
前記添加槽内経路の上端は、前記取水口の上端及び前記排水口の上端のいずれよりも上方に配置されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の液質測定装置。
【請求項5】
前記添加槽は、前記添加槽内経路の上端から前記添加槽内経路から離れる方向に向けて上方に傾斜する傾斜面を有する請求項4に記載の液質測定装置。
【請求項6】
前記別の液体を導入する前記導入部は、前記添加槽内経路の真上に配置されている請求項2から請求項5のいずれか一項に記載の液質測定装置。
【請求項7】
前記導入部は、前記添加槽の天壁に設けられている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の液質測定装置。
【請求項8】
前記通気部の開口の断面積の合計値は、前記取水口の断面積よりも大きく、且つ前記排水口の断面積よりも大きい請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の液質測定装置。
【請求項9】
前記通気部は、前記添加槽の側壁に設けられる請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の液質測定装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9のいずれか一項の液質測定装置と、
前記液質測定装置による制御に応じて前記導入部から前記別の液体として調整液を供給する調整液供給部と、
前記液質センサが測定した前記測定液の液質を監視するモニタリング装置と、を備えた液質測定システムであって、
前記液質測定装置は、前記調整液による前記測定液の液質調整が完了した後に前記液質センサによる液質測定動作を開始する、あるいは前記液質調整が完了した後の前記液質センサによる測定値を前記測定液の液質値として採用する液質測定システム。
【請求項11】
前記液質測定装置は、更に前記測定液のpHを測定するpHセンサを備え、前記液質調整として、前記pHが閾値を超えたと判定するまで前記調整液供給部に前記調整液を供給させる請求項10に記載の液質測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液質測定装置及び液質測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、水質センサを備える熱水水質測定装置が開示されている。この熱水水質測定装置では、主配管を通流する熱水の水質が、水質センサによって測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術を利用して主配管に測定液を流し、液質センサによって測定液の液質を測定することが考えられる。しかし、この場合、測定中は主配管に測定液を流し続けることとなるため、測定液の消費量が多くなってしまう。そこで、特許文献1における循環経路内で測定液を循環させながら液質を測定することが考えられる。しかし、循環経路内の測定液に対して測定液とは別の液体を添加してから液質を測定しようとする場合、循環経路内が閉じた空間であるため、上記別の液体を上手く添加できなかったり、上記別の液体の供給ライン側に測定液が逆流して供給ラインが汚染されたりするおそれがある。
【0005】
本発明は、循環経路内の測定液に対して別の液体を適切に添加することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]本発明の液質測定装置は、測定液が流れる循環経路を構成する配管と、循環経路内の測定液の液質を測定する液質センサと、を備える。本発明の液質測定装置は、更に添加槽を備える。添加槽は、配管と取水口および排水口を介して接続されつつ循環経路の一部を構成し、内部空間が形成されている。添加槽は、測定液とは別の液体を添加槽の外部から内部空間に導入する導入部と、内部空間の空気を外部に排出させる通気部と、を有する。内部区間の底部には、取水口と排水口とを結びつつ測定液が流れる添加槽内経路が形成されている。導入部および通気部は、添加槽内経路よりも上側の内部空間に面する添加槽の壁面に配置されている。
【0007】
この液質測定装置は、循環経路の一部を構成する添加槽を備え、この添加槽に導入部及び通気部を設けている。このため、この液質測定装置によれば、添加槽の内部空間の空気を通気部から排出させながら、導入部から測定液とは別の液体を適切に添加することができる。
【0008】
[2]上記添加槽内経路の最大幅Wmaxは、取水口の直径R1との関係で下記式(1)の条件を満たし、且つ排水口の直径R2との関係で下記式(2)の条件を満たす構成であってもよい。
R1×0.9<Wmax<R1×1.1・・・式(1)
R2×0.9<Wmax<R2×1.1・・・式(2)
【0009】
この構成によれば、循環経路に充填させる測定液の必要量を小さく抑えることができる。
【0010】
[3]上記添加槽のうち添加槽内経路の最も低い位置から取水口の最も低い位置までの高さ方向の距離は、取水口の直径R1の0.1倍未満であり、且つ、添加槽内経路の最も低い位置から排水口の最も低い位置までの高さ方向の距離は、排水口の直径R2の0.1倍未満であってもよい。
【0011】
この構成によれば、循環経路内の測定液を排出させたときに、添加槽内経路の底に測定液が溜まることを抑制することができる。
【0012】
[4]上記添加槽内経路の上端は、取水口の上端及び排水口の上端のいずれよりも上方に配置されている構成であってもよい。
【0013】
この構成によれば、循環経路に充填させる測定液の必要量を小さく抑えることができる。
【0014】
[5]上記添加槽は、添加槽内経路の上端から添加槽内経路から離れる方向に向けて上方に傾斜する傾斜面を有する構成であってもよい。
【0015】
この構成によれば、添加槽の内部空間に溜まった測定液が傾斜面によって添加槽内経路に誘導され、その結果、添加槽内経路から排出されやすい。
【0016】
[6]上記別の液体を導入する導入部は、添加槽内経路の真上に配置される構成であってもよい。
【0017】
この構成によれば、導入部から導入された別の液体が添加槽内経路から外れた場所に無駄に供給されることを抑制することができる。
【0018】
[7]上記導入部は、添加槽の天壁に設けられる構成であってもよい。
【0019】
この構成によれば、測定液が導入部から逆流することを防止しやすい。
【0020】
[8]上記通気部の開口の断面積の合計値は、取水口の断面積よりも大きく、且つ排水口の断面積よりも大きい構成であってもよい。
【0021】
この構成によれば、内部空間に供給される測定液の量以上の量の空気を通気部から排出しやすいため、測定液が導入部から逆流することを防止しやすい。
【0022】
[9]上記通気部は、添加槽の側壁に設けられる構成であってもよい。
【0023】
この構成によれば、添加槽の内部空間において所定の水位を超える測定液を外部に排出させることができる。
【0024】
[10]本発明の液質測定システムは、[1]から[9]のいずれか1つの液質測定装置と、調整液供給部と、モニタリング装置とを備える。調整液供給部は、液質測定装置による制御に応じて導入部から別の液体として調整液を供給する。モニタリング装置は、液質センサが測定した測定液の液質を監視する。液質測定装置は、調整液による測定液の液質調整が完了した後に液質センサによる液質測定動作を開始する、あるいは液質調整が完了した後の液質センサによる測定値を測定液の液質値として採用する。
【0025】
この構成によれば、液質調整が完了した状態の測定液の液質値を得ることができる。
【0026】
[11]液質測定装置は、更に測定液のpHを測定するpHセンサを備え、液質調整として、pHが閾値を超えたと判定するまで調整液供給部に調整液を供給させる構成であってもよい。
【0027】
この構成によれば、pHが調整された状態の測定液の液質値を得ることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、循環経路内の測定液に対して別の液体を適切に添加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1は、液質測定システムを概略的に示す構成図である。
【
図6】
図6は、液質測定装置の流れを例示するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
1.第1実施形態
1-1.液質測定システム100の構成
図1に示す液質測定システム100は、測定液Sの液質を測定するシステムであり、例えばバイオガスプラントの原料槽の液体配管ラインに搭載される。液質測定システム100は、液質測定装置1を備える。液質測定装置1は、測定液Sを循環させる経路である循環経路10と、循環経路10に測定液Sを供給する測定液供給部11と、循環経路10から測定液Sを排出させる測定液排出部12と、を備える。
【0031】
測定液供給部11は、循環経路10に設けられる三方弁20と、三方弁20に接続される共通経路21と、共通経路21から分岐する複数の分岐路22と、分岐路22の各々に設けられる二方弁23と、を備える。三方弁20は、共通経路21から循環経路10への測定液Sの供給を許容する許容状態と、禁止する禁止状態とに切り替わる。分岐路22は、測定液Sごとに設けられ、対応する測定液Sを吸入する。二方弁23は、対応する分岐路22を開放する開放状態と、閉塞する閉塞状態とに切り替わる。測定液供給部11は、三方弁20を許容状態とし、且つ二方弁23を開放状態とすることで、測定液Sを循環経路10に供給する。
【0032】
測定液排出部12は、循環経路10に設けられる三方弁25と、三方弁25に接続される排出路26と、を備える。三方弁25は、循環経路10から排出路26への測定液Sの排出を許容する許容状態と、禁止する禁止状態とに切り替わる。測定液排出部12は、三方弁25を許容状態とすることで、循環経路10内の測定液Sを排出させる。
【0033】
循環経路10は、三方弁20と三方弁25にそれぞれ接続される第1経路10A及び第2経路10Bを有する。三方弁20及び三方弁25は、測定液供給部11の共通経路21から循環経路10(より具体的には、第1経路10A)への測定液Sの流入を許容する第1状態と、循環経路10を構成する第2状態と、循環経路10(より具体的には、第1経路10A)から測定液排出部12の排出路26への測定液Sの排出を許容する第3状態とに切り替わる。なお、第1状態では、循環経路10からの測定液Sの排出は禁止される。第2状態では、循環経路10への測定液Sの流入、および循環経路10からの測定液Sの排出は禁止される。第3状態では、循環経路10への測定液Sの流入は禁止される。
【0034】
液質測定装置1は、ポンプ30と、液質センサ31と、pHセンサ32と、添加槽33と、制御部34と、を備える。
【0035】
ポンプ30は、循環経路10(より具体的には、第1経路10A)に設けられる。ポンプ30は、三方弁20及び三方弁25が第1状態である場合に、測定液供給部11から供給される測定液Sを循環経路10内に吸入する。ポンプ30は、三方弁20及び三方弁25が第2状態である場合に、循環経路10内の測定液Sを循環させる。ポンプ30は、三方弁20及び三方弁25が第3状態である場合に、循環経路10内の測定液Sを測定液排出部12から排出させる。
【0036】
液質センサ31は、測定液Sの液質(より具体的には、pHとは異なる液質)を測定するセンサである。液質センサ31は、測定液Sの特定のイオン(本実施形態では、アンモニウムイオン)の濃度を測定する光学センサである。液質センサ31は、循環経路10(より具体的には、第1経路10A)に設けられ、循環経路10内の測定液Sの液質を測定する。液質センサ31は、測定値を出力する。液質センサ31の測定値は、モニタリング装置49に入力され、モニタリング装置49を介して制御部34に入力される。なお、液質センサ31は、光学センサ以外に限らず、例えば隔膜式センサ等の他の測定方式のセンサであってもよい。液質センサ31の測定対象は、アンモニウムイオンに限らず、例えばリン酸イオンや金属イオン等の他のイオンであってもよいし、ORP(酸化還元電位)であってもよい。
【0037】
pHセンサ32は、測定液SのpHを測定するセンサである。pHセンサ32は、循環経路10(より具体的には、第1経路10A)に設けられ、循環経路10内の測定液SのpHを測定する。pHセンサ32は、測定値を出力する。pHセンサ32の測定値は、モニタリング装置49に入力され、モニタリング装置49を介して制御部34に入力される。
【0038】
添加槽33は、循環経路10(より具体的には、第2経路10B)の一部を構成する。添加槽33については後ほど詳しく説明する。
【0039】
制御部34は、例えばMCU(Micro Controller Unit)であり、CPU,ROM,RAM等を有する。制御部34は、液質測定システム100の各機器(具体的には、測定液供給部11、測定液排出部12、ポンプ30、液質センサ31、pHセンサ32、および供給部40)の動作を制御する。
【0040】
液質測定システム100は、供給部40と、モニタリング装置49と、を備える。
【0041】
供給部40は、調整液供給部41と、洗浄液供給部42と、を有する。調整液供給部41は、添加槽33に接続され、調整液を添加槽33に供給する。調整液供給部41は、添加槽33に接続される調整液供給路43と、調整液供給路43に設けられる調整液用ポンプ44と、を有する。調整液供給部41は、調整液供給路43を介して添加槽33に調整液を供給する。調整液は、本実施形態では、酸・アルカリなどのpH調整液である。洗浄液供給部42は、添加槽33に接続され、洗浄液を添加槽33に供給する。洗浄液供給部42は、添加槽33に接続される洗浄液供給路45と、洗浄液供給路45に設けられる洗浄液用ポンプ46と、を有する。洗浄液供給部42は、洗浄液供給路45を介して添加槽33に洗浄液を供給する。なお、調整液は、pH調整剤に限らず、例えば呈色反応用の薬液等であってもよい。
【0042】
モニタリング装置49は、液質センサ31およびpHセンサ32による測定結果を監視する。つまり、モニタリング装置49は、測定液SのpHおよびアンモニウムイオンの濃度を監視する。
【0043】
1-2.添加槽33の構成
添加槽33は、上述したように循環経路10の一部を構成する。添加槽33は、
図2から
図5に示すように、内部空間50が形成された箱状をなしている。添加槽33は、底壁51と、底壁51から立ち上がり四方を囲む側壁52と、天壁53と、を有する。内部空間50は、底壁51、側壁52、及び天壁53に囲まれて形成されている。
【0044】
上述した液質測定装置1は、
図3および
図4に示すように、循環経路10を構成する配管90を備える。配管90は、第1配管91と、第2配管92とを有する。添加槽33の側壁52には、取水口54および排水口55が形成されている。取水口54および排水口55の断面形状は、それぞれ円形である。添加槽33は、取水口54を介して第1配管91に接続されており、排水口55を介して第2配管92に接続されている。
【0045】
図3および
図5に示すように、内部空間50の底部50Aには、取水口54と排水口55とを結びつつ測定液Sが流れる添加槽内経路56が形成されている。添加槽内経路56は、上方に開放された溝状をなしており、直線状に延びている。添加槽内経路56の底面は、水平方向に沿って平坦な面である。添加槽内経路56の側面は、底面に対して直交しており、平坦な面である。
【0046】
図5に示すように、添加槽内経路56の幅(添加槽内経路56の両側面の間隔)は、上下方向に一定である。
図4に示すように、添加槽内経路56の最大幅Wmaxは、取水口54との関係で下記式(1)の条件を満たすことが好ましく、排水口55との関係で下記式(2)の条件を満たすことが好ましい。
R1×0.9<Wmax<R1×1.1・・・式(1)
R2×0.9<Wmax<R2×1.1・・・式(2)
【0047】
添加槽内経路56の最も低い位置56Bから取水口54の最も低い位置54Bまでの高さ方向hの距離は、取水口54の直径R1の0.1倍未満であることが好ましく、0であることがより好ましい。添加槽内経路56の最も低い位置56Bから排水口55の最も低い位置55Bまでの高さ方向hの距離は、排水口55の直径R2の0.1倍未満であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0048】
図5に示すように、添加槽33は、添加槽内経路56の上端56Aから添加槽内経路56から離れる方向(添加槽内経路56の幅方向)に向けて上方に傾斜する傾斜面57を有する。
【0049】
添加槽33は、導入部60と、通気部70とを有する。
【0050】
導入部60は、測定液Sとは別の液体を添加槽33の外部から内部空間50に導入する部位である。導入部60には、供給部40が接続され、供給部40から液体が供給される。供給部40から供給された液体は、導入部60を介して内部空間50に導入される。導入部60は、添加槽内経路56よりも上側の内部空間50に面する添加槽33の壁面に配置されている。つまり、導入部60の下端は、添加槽内経路56の上端56Aよりも上方に配置されている。
【0051】
導入部60は、
図2に示すように、調整液用導入部61と、洗浄液用導入部62と、を有する。調整液用導入部61には、調整液供給部41が接続され、調整液供給部41から調整液が供給される。調整液供給部41から供給された調整液は、調整液用導入部61を介して内部空間50に導入される。洗浄液用導入部62には、洗浄液供給部42が接続され、洗浄液供給部42から洗浄液が供給される。洗浄液供給部42から供給された洗浄液は、洗浄液用導入部62を介して内部空間50に導入される。
【0052】
図2、
図3および
図5に示すように、調整液用導入部61および洗浄液用導入部62は、添加槽33の天壁53に設けられている。調整液用導入部61は、添加槽内経路56の真上に配置されている。調整液用導入部61は、1つのみ設けられている。洗浄液用導入部62は、傾斜面57の真上に配置されている。洗浄液用導入部62は、2つ設けられている。洗浄液用導入部62は、添加槽内経路56の幅方向両側に1つずつ設けられている。
【0053】
通気部70は、内部空間50の空気を外部に排出させる部位である。通気部70は、添加槽内経路56よりも上側の内部空間50に面する添加槽33の壁面に配置されている。つまり、通気部70の下端は、添加槽内経路56の上端56Aよりも上方に配置されている。通気部70は、
図3に示すように、第1通気部71と、第2通気部72とを有する。
【0054】
第1通気部71は、
図3に示すように、添加槽33の天壁53に設けられている。第1通気部71は、撥水フィルタを有しており、外部から内部空間50への液体の浸入を防止する。第2通気部72は、
図3に示すように、添加槽33の側壁52に設けられている。第2通気部72の下端は、添加槽内経路56の上端56Aよりも上方に配置されており、第2通気部72の上端は、導入部60の下端よりも下方に配置されている。
【0055】
通気部70の開口70A(第1通気部71の開口71Aと第2通気部72の開口72A)の断面積の合計値は、取水口54の断面積よりも大きく、且つ排水口55の断面積よりも大きい。
【0056】
1-3.液質測定装置1の動作
液質測定装置1は、測定液Sの液質を測定する際、
図6に例示する処理を行う。液質測定装置1は、取水開始条件が成立した場合に、ステップS10にて循環経路10に測定液Sを取り込む取水制御を行う。取水開始条件は、例えば作業者による所定の取水開始操作が行われたことであってもよいし、別の条件であってもよい。液質測定装置1は、取水制御では、三方弁20および三方弁25を第1状態とし、取り込む測定液Sに対応する二方弁23を開放状態とし、ポンプ30を作動させることで、測定液Sを循環経路10内に取り込む。
【0057】
液質測定装置1は、取水完了条件が成立した場合に、取水制御を終了する。取水完了条件は、例えば添加槽33の内部空間50における水位が取水完了位置まで到達したことであってもよいし、取水量が所定量に到達したことであってもよいし、別の条件であってもよい。取水完了位置に到達したか否かの判定は、例えば、内部空間50における水位を検出する水位センサを設け、この水位センサの検出値に基づいて行うようにしてもよい。あるいは、取水完了位置に到達したか否かの判定は、循環経路10又は共通経路21に流量センサを設け、この流量センサの検出値に基づいて行うようにしてもよい。取水量が所定量に到達したか否かの判定は、例えば、循環経路10又は共通経路21に流量センサを設け、この流量センサの検出値に基づいて行うようにしてもよいし、別の方法によって行うようにしてもよい。
【0058】
このように取水制御が行われることで、循環経路10内に測定液Sが充填される。内部空間50内の水位は、例えば添加槽内経路56の上端56Aよりも上方の位置で、且つ導入部60の下端よりも下方の位置となる。
【0059】
液質測定装置1は、取水制御を終了した後、ステップS11にて、循環制御を開始する。液質測定装置1は、循環制御では、三方弁20および三方弁25を第2状態とし、ポンプ30を作動させる。これにより、測定液Sが、循環経路10内で循環する。
【0060】
液質測定装置1は、ステップS12にて、循環経路10内の測定液SのpHを調整する液質調整を行う。液質測定装置1は、液質調整では、調整液供給部41にpHセンサ32の検出値に基づいて、測定液SのpHが予め定められた閾値を超えたと判定するまで調整液供給部41にpH調整液を供給させる。液質測定装置1は、測定液SのpHが閾値を超えたと判定すると、液質調整を終了する。
【0061】
液質測定装置1は、液質調整が完了した後、ステップS13にて、液質センサ31による液質測定動作を開始させる。そして、液質測定装置1は、この液質測定動作による測定値を測定液Sの液質値として採用する。
【0062】
液質測定装置1は、液質センサ31による液質測定が完了した後、ステップS14にて、ステップS11で開始した循環制御を終了する。液質測定装置1は、循環制御を終了した後、ステップS15にて、循環経路10内の測定液Sを排出させる排出制御を行う。液質測定装置1は、排出制御では、三方弁20および三方弁25を第3状態とし、ポンプ30を作動させる。これにより、循環経路10内の測定液Sが排出路26から排出される。液質測定装置1は、排出完了条件が成立した場合に、排出制御を終了する。排出完了条件は、例えば、排出制御を開始してから予め定められた排出時間が経過したことであってもよいし、別の条件であってもよい。
【0063】
液質測定装置1は、排出制御を終了した後、ステップS16にて、循環経路10内を洗浄液によって洗浄する洗浄制御を行う。液質測定装置1は、洗浄制御では、三方弁20および三方弁25を第2状態とし、洗浄液供給部42に洗浄液を供給させ、ポンプ30を作動させる。液質測定装置1は、洗浄制御を開始してから予め定められた洗浄時間が経過した場合に、ステップS17にて、洗浄完了条件が成立したか否かを判定する。液質測定装置1は、例えば循環経路10内の液体のpHに基づいて、洗浄完了条件が成立したか否かを判定する。液質測定装置1は、例えば、循環経路10内の液体のpHが予め定められた所定範囲内に収まった場合に洗浄完了条件が成立したと判定する。
【0064】
液質測定装置1は、洗浄完了条件が成立していないと判定した場合(ステップS17にてNoの場合)、ステップS15に戻る。つまり、液質測定装置1は、洗浄完了条件が成立したと判定するまで、排出制御と洗浄制御を繰り返す。液質測定装置1は、洗浄完了条件が成立したと判定した場合(ステップS17にてYesの場合)、三方弁20および三方弁25を第3状態として洗浄液を排出させて、
図6の処理を終了する。
【0065】
1-4.第1実施形態の効果
第1実施形態の液質測定装置1は、循環経路10の一部を構成する添加槽33を備え、この添加槽33に導入部60及び通気部70を設けている。このため、添加槽33の内部空間50の空気を通気部70から排出させながら、導入部60から測定液Sとは別の液体を適切に添加することができる。
【0066】
更に、添加槽内経路56の最大幅Wmaxは、取水口54の直径R1との関係で下記式(1)の条件を満たし、且つ排水口55の直径R2との関係で下記式(2)の条件を満たす。
R1×0.9<Wmax<R1×1.1・・・式(1)
R2×0.9<Wmax<R2×1.1・・・式(2)
このため、循環経路10に充填させる測定液Sの必要量を小さく抑えることができる。
【0067】
更に、添加槽33のうち添加槽内経路56の最も低い位置56Bから取水口54の最も低い位置54Bまでの高さ方向hの距離は、取水口54の直径R1の0.1倍未満であり、且つ、添加槽内経路56の最も低い位置56Bから排水口55の最も低い位置55Bまでの高さ方向hの距離は、排水口55の直径R2の0.1倍未満である。このため、循環経路10内の測定液Sを排出させたときに、添加槽内経路56の底に測定液Sが溜まることを抑制することができる。
特に、本実施形態では、添加槽33のうち添加槽内経路56の最も低い位置56Bから取水口54の最も低い位置54Bまでの高さ方向hの距離は0であり、且つ、添加槽内経路56の最も低い位置56Bから排水口55の最も低い位置55Bまでの高さ方向hの距離は0である。このため、循環経路10内の測定液Sを排出させたときに、添加槽内経路56の底に測定液Sが溜まることをより確実に抑制することができる。
【0068】
更に、添加槽内経路56の上端56Aは、取水口54の上端54A及び排水口55の上端55Aのいずれよりも上方に配置されている。このため、循環経路10に充填させる測定液Sの必要量を小さく抑えることができる。
【0069】
更に、添加槽33は、添加槽内経路56の上端56Aから添加槽内経路56から離れる方向に向けて上方に傾斜する傾斜面57を有する。このため、添加槽33の内部空間50に溜まった測定液Sが傾斜面57によって添加槽内経路56に誘導され、その結果、添加槽内経路56から排出されやすい。
【0070】
更に、調整液用導入部61は、添加槽内経路56の真上に配置されている。このため、導入部60から導入された調整液が添加槽内経路56から外れた場所に無駄に供給されることを抑制することができる。
【0071】
更に、導入部60は、添加槽33の天壁53に設けられている。このため、測定液Sが導入部60から逆流することを防止しやすい。
【0072】
更に、通気部70の開口70A(第1通気部71の開口71Aと第2通気部72の開口72A)の断面積の合計値は、取水口54の断面積よりも大きく、且つ排水口55の断面積よりも大きい。このため、内部空間50に供給される測定液Sの量以上の量の空気を通気部70から排出しやすいため、測定液Sが導入部60から逆流することを防止しやすい。
【0073】
更に、通気部70は、添加槽33の側壁52に設けられている。このため、添加槽33の内部空間50において所定の水位を超える測定液Sを外部に排出させることができる。
【0074】
第1実施形態の液質測定システム100は、液質測定装置1と、調整液供給部41と、モニタリング装置49と、を備える。調整液供給部41は、液質測定装置1による制御に応じて導入部60から調整液を供給する。モニタリング装置49は、液質センサ31が測定した測定液Sの液質を監視する。液質測定装置1は、調整液による測定液Sの液質調整が完了した後に液質センサ31による液質測定動作を開始する。この液質測定システム100によれば、液質調整が完了した状態の測定液Sの液質値を得ることができる。
【0075】
更に、液質測定装置1は、更に測定液SのpHを測定するpHセンサ32を備え、液質調整として、pHが閾値を超えたと判定するまで調整液供給部41に調整液を供給させる。このため、液質測定システム100は、pHが調整された状態の測定液の液質値を得ることができる。
【0076】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。また、上述した実施形態や後述する実施形態の様々な特徴は、矛盾しない組み合わせであればどのように組み合わされてもよい。
【0077】
上記実施形態では、水質測定システムがバイオガスプラントの液体配管ラインに搭載される構成であったが、別の構成であってもよい。水質測定システムは、陸上養殖システム、メタン発酵槽、下水処理場、または工場排水など廃液管理が必要な施設の液体配管ラインに搭載される構成であってもよい。
【0078】
上記実施形態では、第1通気部が撥水フィルタを有する構成であったが、第1通気部が撥水フィルタを有さない構成であってもよい。
【0079】
上記実施形態では、液質測定装置が第1通気部および第2通気部の両方を備える構成であったが、少なくともいずれか一方を有する構成であればよい。
【0080】
上記実施形態では、液質測定装置が、調整液による調整液の液体調整が完了した後に液質センサによる液体測定動作を開始させる構成であったが、別の構成であってもよい。例えば、液質測定装置は、調整液による調整液の液体調整と、液質センサによる液体測定動作を並行して実行させ、液質調整が完了した後の液質センサによる測定値を測定液の液質値として採用する構成であってもよい。
【0081】
なお、今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、今回開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示された範囲内又は特許請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0082】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明に係る水質測定装置及び水質測定装置は、多様な用途に利用することができる。例えば、海上養殖、陸上養殖、水処理、排水処理、アクアリウム、農業(水耕栽培)など水質を測定する必要がある分野において、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0083】
1…液質測定装置
10…循環経路
31…液質センサ
32…pHセンサ
33…添加槽
40…供給部
41…調整液供給部
49…モニタリング装置
50…内部空間
50A…底部
52…側壁
53…天壁
54…取水口
54A…取水口の上端
54B…取水口の最も低い位置
55…排水口
55A…排水口の上端
55B…排水口の最も低い位置
56…添加槽内経路
56A…添加槽内経路の上端
56B…添加槽内経路の最も低い位置
57…傾斜面
60…導入部
61…調整液用導入部
62…洗浄液用導入部
70…通気部
70A…通気部の開口
71…第1通気部
71A…第1通気部の開口
72…第2通気部
72A…第2通気部の開口
90…配管
100…液質測定システム
H1…添加槽内経路の最も低い位置から取水口の中心の高さ位置までの高さ
H2…添加槽内経路の最も低い位置から排水口の中心の高さ位置までの高さ
S…測定液
Wmax…添加槽内経路の最大幅