(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183483
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】超音波検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 29/11 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
G01N29/11
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090827
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】594123387
【氏名又は名称】ヤマハファインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】奈良 晃寛
(72)【発明者】
【氏名】山田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】小山 孝生
【テーマコード(参考)】
2G047
【Fターム(参考)】
2G047AA08
2G047AB07
2G047BA01
2G047BC03
2G047BC09
2G047EA10
2G047GB02
2G047GB26
2G047GG20
2G047GG28
2G047GG33
(57)【要約】
【課題】包装容器のうち容器用部材の縁を重ねて接合した接合部分が所定物体の表面から当該表面に対して直交する方向に突出した状態であっても、接合部分における容器用部材の剥離を精度よく検査できる超音波検査装置を提供する。
【解決手段】超音波検査装置1は、包装容器100の接合部分103が所定物体105の表面105aから当該表面105aに対して直交する方向に突出した状態で、所定物体105から突出する接合部分103のうち少なくとも所定物体105側に位置する基端部103Aに向けて超音波Wを送信する送信部10を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器用部材の縁を重ねて接合した接合部分を有する包装容器を検査する超音波検査装置であって、
前記接合部分が所定物体の表面から当該表面に対して直交する方向に突出した状態で、前記所定物体から突出する前記接合部分のうち少なくとも前記所定物体側に位置する基端部に向けて超音波を送信する送信部を備える超音波検査装置。
【請求項2】
前記超音波が前記接合部分に向かう方向に対して交差する方向においてマトリクス状又はアレイ状に配列され、前記接合部分を透過した前記超音波を受信する受信面を有する複数の受信部を備える請求項1に記載の超音波検査装置。
【請求項3】
前記送信部は、超音波を送信する送信部本体と、
前記送信部本体から送信された前記超音波を反射するミラーと、を備え、
前記ミラーは、当該ミラーにおいて反射した前記超音波が少なくとも前記基端部に向けて伝播するように配置される請求項1又は請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項4】
前記送信部本体は、超音波を送信する送信面を有し、
前記ミラーは、前記送信面のうち周縁領域を除く内側領域から送信された超音波を反射する請求項3に記載の超音波検査装置。
【請求項5】
前記送信部から送信される前記超音波の送信方向は、前記容器用部材が重なる方向において前記送信部から前記接合部分に向かうにしたがって、前記所定物体に対する前記接合部分の突出方向と逆の方向に向かうように傾斜している請求項1又は請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項6】
前記送信部は、前記超音波を送信する送信面を有する送信素子と、前記送信面が露出するように前記送信素子を保持する保持ケースと、を有し、
前記保持ケースは、前記送信面の周縁の少なくとも一部を覆わないように前記送信素子を保持する請求項1又は請求項2に記載の超音波検査装置。
【請求項7】
前記送信部は、前記送信面に直交する方向から見て、前記送信面の周縁のうち前記保持ケースによって覆われない部分から前記送信面の外側に突出する突起を有する請求項6に記載の超音波検査装置。
【請求項8】
前記送信部は、前記超音波を送信する送信面と、前記送信面に直交する方向から見て、前記送信面の外側に突出する突起と、を有する請求項1又は請求項2に記載の超音波検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シート部材やカップ状部材などの容器用部材の縁を重ねて接合することで内部に収容空間を形成した包装容器がある。このような包装容器において、容器用部材の接合部分は、容器用部材のうち接合されずに収容空間を構成する非接合部分に対して収容空間の外側に延びる。
特許文献1には、容器用部材の接合部分における剥離を検査するための超音波検査装置が開示されている。この種の超音波検査装置は、超音波を送信する送信部を有し、送信部から送信されて接合部分を透過した超音波を受信して解析することで、接合部分に剥離が生じているか否かを判定する。従来の超音波検査装置では、送信部から接合部分に向けて、接合部分において容器用部材の縁が重なる方向に超音波を送信している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、容器用部材の接合部分が所定物体の表面から当該表面に対して直交する方向に突出した状態で、接合部分の超音波検査を実施することがある。所定物体は、例えば、包装容器の収容空間を構成する容器用部材の非接合部分であったり、包装容器を製造する装置(例えばピロー包装機)や、包装容器を搬送する装置において包装容器を支持する台であったりする。しかしながら、従来のように接合部分において容器用部材の縁が重なる方向(すなわち所定物体の表面に沿う方向)に超音波を送信するように送信部を所定物体の表面に配置すると、送信部から送信された超音波を、所定物体から突出した接合部分のうち所定物体側に位置する基端部に到達させることが難しい。このため、従来の超音波検査装置では、包装容器の接合部分における容器用部材の剥離を精度よく検査することが困難である。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、接合部分が所定物体の表面から当該表面に対して直交する方向に突出した状態であっても、接合部分における容器用部材の剥離を精度よく検査することが可能な超音波検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第一の態様は、容器用部材の縁を重ねて接合した接合部分を有する包装容器を検査する超音波検査装置であって、前記接合部分が所定物体の表面から当該表面に対して直交する方向に突出した状態で、前記所定物体から突出する前記接合部分のうち少なくとも前記所定物体側に位置する基端部に向けて超音波を送信する送信部を備える超音波検査装置である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、容器用部材の接合部分が所定物体の表面から当該表面に対して直交する方向に突出した状態であっても、接合部分における容器用部材の剥離を精度よく検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第一実施形態に係る超音波検査装置を模式的に示す断面図である。
【
図2】
図1の要部を拡大して示す拡大断面図である。
【
図5】第一実施形態に係る超音波検査装置の変形例を模式的に示す斜視図である。
【
図6】第一実施形態に係る超音波検査装置の他の使用例を模式的に示す断面図である。
【
図7】第二実施形態に係る超音波検査装置の要部を模式的に示す拡大断面図である。
【
図8】第三実施形態に係る超音波検査装置の要部を模式的に示す拡大断面図である。
【
図9】第四実施形態に係る超音波検査装置の要部を模式的に示す拡大断面図である。
【
図10】本発明に係る超音波検査装置の検査対象である包装容器の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〔第一実施形態〕
以下、
図1~4を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態の超音波検査装置1は、超音波Wを利用して包装容器100の検査を行う。本実施形態における包装容器100は、シート状の容器用部材101の縁を重ねて接合することで内部に収容空間102を形成した容器である。図示例の包装容器100は、1枚の容器用部材101によって構成されているが、例えば2枚の容器用部材101によって構成されてもよい。超音波検査装置1は、包装容器100のうち、容器用部材101を重ねて接合した接合部分103における容器用部材101の剥離を検査する。以下の説明では、容器用部材101のうち接合されずに収容空間102を形成する包装容器100の部位を、非接合部分105と呼ぶ。
【0010】
超音波検査装置1において包装容器100を検査する際には、接合部分103を、非接合部分105の外面105a(所定物体の表面)から当該外面105aに対して直交する方向に突出させる。なお、非接合部分105の外面105aに対する接合部分103の突出方向は、厳密に直交していなくてもよく、若干傾斜していてもよい。
【0011】
図面では、接合部分103において容器用部材101が重なる方向をY軸方向で示している。また、接合部分103が非接合部分105の外面105aから突出する方向を、接合部分103の幅方向とし、Z軸方向で示している。また、Z軸方向及びY軸方向に直交する方向を、接合部分103の長手方向とし、X軸方向で示している。
【0012】
図1,2に示すように、超音波検査装置1は、送信部10と、受信ユニット20と、を備える。
送信部10は、包装容器100の接合部分103が非接合部分105の外面105aに対して直交する方向に突出した状態で、接合部分103に向けて超音波Wを送信する。送信部10は、特に接合部分103のうち非接合部分105側に位置する基端部103Aに向けて積極的に超音波Wを送信するように構成されている。
【0013】
本実施形態の送信部10は、送信部本体11と、ミラー12と、を有する。
送信部本体11は、超音波Wを送信する部位である。本実施形態の送信部本体11は、送信素子13と、保持ケース14と、を有する。送信素子13は、超音波Wを送信する送信面13aを有する。保持ケース14は、送信素子13の送信面13aが外部に露出するように送信素子13を保持する。本実施形態の保持ケース14は、送信面13aの周縁全体を覆うように送信素子13を保持する。すなわち、送信素子13の送信面13aは、保持ケース14の所定部位によって囲まれている。
【0014】
ミラー12は、送信部本体11から送信された超音波Wを反射する。ミラー12は、当該ミラー12において反射した超音波Wが少なくとも接合部分103の基端部103Aに向けて伝播するように配置される。また、本実施形態のミラー12は、
図2に示すように、送信部本体11の送信面13aのうち周縁領域13a2を除く内側領域13a1から送信されたビーム状の超音波Wを反射する。すなわち、ミラー12は、送信面13aの周縁領域13a2から送信された超音波W2を反射せず、送信面13aの内側領域13a1から送信された超音波W1だけを反射して接合部分103に向けて伝播させる。上記した送信面13aの内側領域13a1は、例えば送信される超音波W1の強度が一様である領域である。また、送信面13aの周縁領域13a2は、例えば送信される超音波W2の強度が内側領域13a1から送信される超音波W1の強度よりも低い領域である。
以下、本実施形態の送信部本体11及びミラー12についてより具体的に説明する。
【0015】
本実施形態において、送信部本体11は、Y軸方向において接合部分103の一方側(
図1,2においては接合部分103の左側)に配置されている。また、送信部本体11は、X軸方向から見て、超音波Wが送信部本体11の送信面13aから非接合部分105に対する接合部分103の突出方向(Z軸正方向)と逆向き(Z軸負方向)に送信されるように配置されている。
【0016】
ミラー12は、X軸方向から見て、Z軸方向において送信部本体11と非接合部分105との間に配置されている。超音波Wを反射するミラー12の反射面12aは、平坦に形成されている。ミラー12の反射面12aは、Z軸方向において送信部本体11の送信面13aに対向し、かつ、Y軸方向において接合部分103に対向している。また、ミラー12の反射面12aは、送信部本体11の送信面13aから送信される超音波Wの送信方向(Z軸負方向)及び非接合部分105の外面105aに対して傾斜している。当該反射面12aの傾斜角度は、45度となっている。ミラー12は、その反射面12aがZ軸方向において非接合部分105の外面105aのすぐ近くに位置するように、包装容器100に対して配置することができる。
【0017】
これにより、送信部本体11の送信面13aからミラー12に向けて送信された超音波Wは、ミラー12の反射面12aにおいて反射することで、接合部分103に向けてY軸正方向に伝播し、当該接合部分103を透過する。また、ミラー12の反射面12aが非接合部分105の外面105aのすぐ近くに位置することで、当該反射面12aで反射した超音波Wを、接合部分103の基端部103Aに到達させることができる。
【0018】
本実施形態における送信部本体11の送信面13aは、
図3に示すようにY軸方向から見てZ軸正方向側に窪む円弧状に形成されている。また、送信面13aは、
図2に示すようにY軸方向に直線状に延びている。このため、Y軸方向から見た送信面13aの形状は、Y軸方向の位置にかかわらず変化しない。すなわち、本実施形態の送信面13aの形状は、円筒の内周面の周方向の一部と同じような形状である。
【0019】
送信面13aが上記のように形成されていることで、送信部本体11の送信面13aから送信された超音波Wは、
図3に示すように、Z軸負方向に向かうにしたがってX軸方向において収束(フォーカス)するが、Y軸方向においては収束しない。このため、ミラー12が無い場合、送信部本体11の送信面13aから送信された超音波Wは、収束した位置において、X軸方向における長さが小さく、Y軸方向における長さが大きい線状となる。
本実施形態では、送信部本体11から送信された超音波Wが収束する位置よりも手前にミラー12の反射面12aが位置する。このため、ミラー12の反射面12aにおいて反射してY軸正方向に伝播する超音波Wは、
図4に示すように、Y軸正方向に向かうにしたがってX軸方向において収束し、Z軸方向には収束しない。これにより、ミラー12の反射面12aにおいて反射した超音波Wは、収束した位置において、X軸方向における長さが小さく、Z軸方向における長さが大きい線状となる。
【0020】
図2に示すように、受信ユニット20は、前述した送信部10との間に包装容器100の接合部分103が位置するように配置される。受信ユニット20は、包装容器100の接合部分103を透過した超音波Wを受信する。受信ユニット20は、複数の受信部21を有する。各受信部21は、包装容器100の接合部分103を透過した超音波Wを受信する受信面21aを有する。受信面21aの面積は小さいことが好ましい。
【0021】
本実施形態において、複数の受信部21は、
図2,4に示すように、超音波Wがミラー12(送信部10)から包装容器100の接合部分103に向かう方向(Y軸正方向)に対して交差する方向においてアレイ状に配列されている。具体的に、複数の受信部21は前述したように収束した線状の超音波Wに対応するアレイ状に配列されている。すなわち、複数の受信部21はZ軸方向に一列に並んでいる。
複数の受信部21は、超音波Wが収束した位置に厳密に配置されることに限らず、例えば超音波Wが収束した位置よりも送信部10から離れた方向(Y軸正方向)にずらした位置に配置されてよい。ただし、複数の受信部21は、できる限り超音波Wが収束した位置の近くに配置されることがより好ましい。
図4に例示するように、超音波Wが包装容器100の接合部分103あるいはその近傍で収束する場合、複数の受信部21はY軸方向において接合部分103の近くに配置されることが好ましい。
【0022】
図1,2に例示する構成において、送信部10は、超音波Wが接合部分103の突出方向の基端側の部分のみを透過するように配置されているが、これに限ることはない。送信部10は、例えば接合部分103の突出方向の基端から先端までの全体を透過するように配置されてよい。この場合、受信ユニット20(複数の受信部21)は、接合部分103の突出方向の基端から先端に至るまで配置されればよい。
【0023】
本実施形態の超音波検査装置1では、送信部10から送信され、包装容器100の接合部分103を透過した超音波Wを、受信部21において受信して解析することで、接合部分103において容器用部材101の剥離が生じているか否かを判定することができる。
接合部分103における剥離の有無の判定は、例えば、検査対象である接合部分103を透過して受信部21で受信した超音波Wの波形(検査対象波形)を、剥離が生じていない接合部分103を透過して受信部21で受信した場合の超音波Wの波形(リファレンス波形)と比較することで行われる。例えば、リファレンス波形の位相と検査対象波形の位相との相関値を計算し、相関値が高い場合には接合部分103に剥離が生じていないと判定し、相関値が低い場合には接合部分103に剥離が生じていると判定する。
【0024】
以上説明したように、第一実施形態の超音波検査装置1では、送信部10が、少なくとも包装容器100の接合部分103の基端部103Aに向けて超音波Wを送信するように構成されている。これにより、接合部分103の基端部103Aに超音波Wを到達させて、接合部分103の基端部103Aにおける容器用部材101の剥離を精度よく検査することができる。したがって、接合部分103が非接合部分105の外面105a(所定物体の表面)から当該外面105aに対して直交する方向に突出した状態であっても、接合部分103における容器用部材101の剥離を精度よく検査することが可能となる。
【0025】
また、本実施形態の超音波検査装置1では、送信部10が、超音波Wを送信する送信部本体11と、送信部本体11から送信された超音波Wを反射するミラー12と、を備える。送信部本体11から送信された超音波Wをミラー12において反射させることで、超音波Wを容易に接合部分103の基端部103Aに到達させることができる。
【0026】
また、本実施形態の超音波検査装置1において、ミラー12は、送信部本体11の送信面13aのうち周縁領域13a2を除く内側領域13a1から送信されたビーム状の超音波Wを反射する。これにより、接合部分103に剥離が生じているか否かをより正確に判定することができる。以下、この点について説明する。
送信面13aの周縁領域13a2から送信される超音波W2の強度は、送信面13aの内側領域13a1から送信される超音波W1の強度よりも低いことがある。この場合には、従来のように、送信部本体11の送信面13aから容器用部材101が重なる方向に向けて直接超音波Wを送信すると、接合部分103の基端部103Aに到達する超音波Wの強度が低く、接合部分103に剥離が生じているか否かを正しく判定できない。これに対し、本実施形態の超音波検査装置1において、ミラー12は、送信面13aの内側領域13a1から送信されたビーム状の超音波Wを反射する。このため、ミラー12において反射したビーム状の超音波Wの強度は一様となる。これにより、ミラー12において反射した強度が一様の超音波Wを、容器用部材101が重なる方向に向けて伝播させることで、接合部分103に剥離が生じているか否かを正しく判定することができる。
【0027】
また、本実施形態の超音波検査装置1では、超音波Wを受信する受信面21aを有する複数の受信部21が、超音波Wが接合部分103に向かう方向(Y軸正方向)に対して交差する方向においてアレイ状に配列されている。このため、各受信部21の受信面21aの面積を小さくすることで、接合部分103(特に基端部103A)における容器用部材101の剥離を高い精度で検査することが可能となる。また、受信部21をアレイ状に配列することで、受信面21aの合計面積を広くすることができる。これにより、基端部103Aを含めた接合部分103全体を高精度かつ短時間で検査することができる。
【0028】
第一実施形態において、送信部本体11は、少なくとも送信部本体11の送信面13aから送信された超音波Wがミラー12において反射することで包装容器100の接合部分103に向かうように配置されればよい。このため、送信部本体11は、X軸方向から見て、超音波Wが送信部本体11の送信面13aから非接合部分105の外面105aに向けて当該外面105aに直交する方向(Z軸負方向)に送信されることに限らず、例えば超音波Wが送信部本体11の送信面13aからZ軸方向に対して傾斜する方向に送信されるように配置されてもよい。
【0029】
また、ミラー12において反射して接合部分103に向かう超音波Wは、X軸方向から見て、厳密にY軸方向に伝播することに限らず、例えば、Y軸方向に対して傾斜する方向に伝播してもよい。ミラー12において反射した超音波Wは、X軸方向から見て、例えば接合部分103に向けてY軸方向に向かうにしたがってZ軸負方向(すなわち接合部分103の基端部103A側)に向かうように傾斜して伝播してもよい。このような場合でも、送信部10から送信された超音波Wを容易に接合部分103の基端部103Aに到達させることができる。
【0030】
第一実施形態において、送信部本体11の送信面13aは、例えば
図5に示すように、平坦面であってもよい。この場合、送信部本体11の送信面13aから送信された超音波Wは、収束することなく、ミラー12において反射して包装容器100の接合部分103に向けて伝播する。このため、ミラー12から接合部分103に向かう超音波Wの伝播方向(Y軸正方向)に直交する超音波Wの形状は、Y軸方向の位置に関わらず面状となる。
【0031】
この場合、受信ユニット20を構成する複数の受信部21は、上記した面状の超音波Wに対応するマトリクス状に配列される。すなわち、複数の受信部21は、Y軸方向に直交する2つの方向(X軸方向及びZ軸方向)に並ぶ。複数の受信部21は、Y軸方向において接合部分103から離れて位置してもよいが、Y軸方向においてできる限り接合部分103の近くに配置されることがより好ましい。
複数の受信部21をマトリクス状に配列された構成では、複数の受信部21をアレイ状に配列した場合と同様の効果を奏する。
【0032】
第一実施形態において、超音波検査装置1によって検査される包装容器100の接合部分103は、包装容器100の非接合部分105から突出する部分に限らず、例えば
図6に示すように、包装容器100を支持する支持台305から突出する部分であってもよい。この場合、超音波検査装置1によって検査される包装容器100の接合部分103(特に基端部103A)は、支持台305の下面305a(所定物体の表面)から下方に突出する部分となる。支持台305は、例えば包装容器100を製造する装置(例えばピロー包装機)や、包装容器100を搬送する装置において包装容器100を支持する台である。
【0033】
〔第二実施形態〕
次に、
図7を参照して本発明の第二実施形態について説明する。本実施形態では、第一実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0034】
図7に示すように、本実施形態の超音波検査装置1Dは、第一実施形態の超音波検査装置1と同様に、超音波Wを送信する送信部10Dと、受信ユニット20と、を備える。受信ユニット20の構成は、第一実施形態と同様である。
【0035】
本実施形態の送信部10Dは、第一実施形態と同様の送信部本体11を備えているが、ミラー12(
図2等参照)を備えていない。
送信部10Dの送信面13aから送信される超音波Wの送信方向は、Y軸方向(容器用部材101が重なる方向)において送信部10Dから接合部分103に向かうにしたがって、Z軸負方向(非接合部分105に対する接合部分103の突出方向と逆の方向)に向かうように傾斜している。具体的に、送信部10Dの送信部本体11は、その送信面13aがY軸正方向側(接合部分103側)及びZ軸負方向側(非接合部分105の外面105a側)に向くように傾斜状態で配置されている。これにより、送信部10Dからの超音波Wの送信方向が上記したように傾斜する。
【0036】
なお、送信部10Dから送信される超音波Wは、非接合部分105に到達させる必要はない。このため、送信部10Dは、超音波Wが接合部分103の基端部103Aに到達する範囲で、非接合部分105の外面105aからZ軸正方向に間隔をあけて位置する。また、Z軸方向における送信部10Dと非接合部分105の外面105aとの間隔は、例えば送信部10Dの送信面13aのうち内側領域13a1(
図2参照)から送信された超音波Wが接合部分103の基端部103Aに到達するように、また、送信面13aの周縁領域13a2(
図2参照)から送信された超音波Wが接合部分103の基端部103Aに到達しないように、設定されることが好ましい。
【0037】
第二実施形態の超音波検査装置1Dによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、第二実施形態の超音波検査装置1Dでは、送信部10Dから送信される超音波Wの送信方向が、Y軸方向(容器用部材101が重なる方向)において送信部10Dから接合部分103に向かうにしたがって、Z軸負方向(非接合部分105に対する接合部分103の突出方向と逆の方向)に向かうように傾斜している。このため、送信部本体11から送信された超音波Wを、容易に接合部分103の基端部103Aに到達させることができる。特に、送信部10Dの送信面13aの内側領域13a1から送信された超音波W(すなわち、強度が一様である超音波W)を、容易に接合部分103の基端部103Aに到達させることができる。
【0038】
〔第三実施形態〕
次に、
図8を参照して本発明の第三実施形態について説明する。本実施形態では、第一、第二実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0039】
図8に示すように、本実施形態の超音波検査装置1Eは、第一、第二実施形態の超音波検査装置1、1Dと同様に、超音波Wを送信する送信部10Eと、受信ユニット20と、を備える。受信ユニット20の構成は、第一実施形態と同様である。
【0040】
本実施形態の送信部10Eは、第二実施形態と同様に、送信素子13及び保持ケース14Eを含む送信部本体11Eを備える。ただし、本実施形態の保持ケース14Eは、送信素子13の送信面13aの周縁の一部を覆うように送信素子13を保持している。すなわち、送信素子13には、送信面13aの周縁のうち保持ケース14Eによって覆われていない部分がある。なお、保持ケース14Eは、例えば送信面13aの周縁全体を覆わないように送信素子13を保持してもよい。
【0041】
本実施形態では、送信部10Eの送信面13aから送信される超音波Wの送信方向がY軸方向(容器用部材101が重なる方向)となるように、送信部10Eが配置される。また、送信面13aの周縁のうち保持ケース14Eによって覆われていない部分が非接合部分105の外面105a上(所定物体の表面上)に位置するように、送信部10Eが配置される。これにより、送信部10Eから送信された超音波Wを、容易に包装容器100の接合部分103の基端部103Aに到達させることができる。以下、この点について説明する。
【0042】
第一、第二実施形態において示した送信部10、10Dの送信部本体11のように、保持ケース14が送信面13aの周縁全体を覆うように送信素子13を保持する場合、超音波Wの送信方向が非接合部分105の外面105aに沿うように、送信部本体11を非接合部分105の外面105a(所定物体の表面)上に配置した状態では、送信面13aの周縁を覆う保持ケース14の分だけ送信面13aが非接合部分105の外面105aから離れて位置する。このため、非接合部分105の外面105aに沿って接合部分103に向けて超音波Wを送信しても、当該超音波Wを容易に接合部分103の基端部103Aに到達させることは難しい。
【0043】
これに対し、第三実施形態では、送信面13aの周縁のうち保持ケース14Eによって覆われていない部分が非接合部分105の外面105a上に位置するように、送信部10Eの送信部本体11Eが配置される。このため、送信面13aの周縁を非接合部分105の外面105aに対してより近くに配置することができる。したがって、非接合部分105の外面105aに沿って接合部分103に向けて超音波Wを送信することで、当該超音波Wを容易に接合部分103の基端部103Aに到達させることができる。
【0044】
上記した第二、第三実施形態において、送信部10D、10Eは、第一実施形態の
図3,4に例示したように、超音波WをZ軸方向に延びる線状に収束させるように構成されてよい。この場合、複数の受信部21はZ軸方向に一列に並ぶようにアレイ状に配列されればよい。また、これら送信部10D、10Eは、第一実施形態の
図5に例示したように超音波Wを収束させないように構成されてもよい。この場合、複数の受信部21はY軸方向に直交する2つの方向(Z軸方向及びX軸方向)に並ぶようにマトリクス状に配列されればよい。
【0045】
また、第二、第三実施形態において、超音波検査装置1D、1Eによって検査される包装容器100の接合部分103は、包装容器100の非接合部分105から突出する部分に限らず、第一実施形態の
図6に例示したように、包装容器100を支持する支持台305から突出する部分であってもよい。
【0046】
〔第四実施形態〕
次に、
図9を参照して本発明の第四実施形態について説明する。本実施形態では、第三実施形態と同様の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0047】
図9に示すように、本実施形態の超音波検査装置1Fは、第三実施形態の超音波検査装置1Eと同様に、超音波Wを送信する送信部10Fと、受信ユニット20と、を備える。
【0048】
本実施形態の送信部10Fは、第三実施形態と同様の送信素子13及び保持ケース14Eを含む送信部本体11Eを備える。本実施形態の送信部10Fは、突起15Fをさらに備える。突起15Fは、送信面13aに直交する方向(Y軸方向)から見て、送信面13aの周縁のうち保持ケース14Eによって覆われていない部分から送信面13aの外側に突出する。また、突起15Fは、送信素子13(特に送信面13a)よりも後側(Y軸負方向側)に位置する。
図9において、突起15Fは、保持ケース14Eによって覆われていない送信面13aの周縁の領域に対応する保持ケース14Eの面から突出している。
図9に例示する突起15Fは断面円形に形成されているが、突起15Fの形状は任意であってよい。
【0049】
本実施形態では、第三実施形態と同様に、送信部10Fの送信面13aから送信される超音波Wの送信方向がY軸方向(容器用部材101が重なる方向)となるように、送信部10Fが配置される。また、送信面13aの周縁のうち保持ケース14Eによって覆われていない部分が非接合部分105の外面105a上(所定物体の表面上)に位置するように、送信部10Fが配置される。この状態では、送信部10Fの突起15Fが、非接合部分105の外面105aに押し付けられる。
【0050】
第四実施形態の超音波検査装置1Fによれば、第三実施形態と同様の効果を奏する。
また、第四実施形態の超音波検査装置1Fにおいて、送信部10Fは、送信面13aに直交する方向(Y軸方向)から見て、送信面13aの周縁のうち保持ケース14Eによって覆われていない部分から送信面13aの外側に突出する突起15Fを有する。これにより、包装容器100の接合部分103の基端部103Aに剥離が生じているか否かをより正しく判定することが可能となる。以下、この点について説明する。
【0051】
第一実施形態においても述べたように、送信面13aの周縁領域13a2から送信される超音波Wの強度は、周縁領域13a2の内側に位置する送信面13aの内側領域13a1から送信される超音波Wの強度よりも低いことがある。この場合、送信面13aの周縁のうち保持ケース14Eによって覆われていない部分が非接合部分105の外面105a上に位置するように送信部10Fを配置するだけでは、接合部分103の基端部103Aには、送信面13aの周縁領域13a2から送信された強度の弱い超音波Wが接合部分103の基端部103Aに到達することになる。その結果として、接合部分103に剥離が生じているか否かを正しく判定できない可能性がある。
【0052】
これに対し、上記した第四実施形態の構成では、送信面13aの周縁うち保持ケース14Eによって覆われていない部分が非接合部分105の外面105a上に位置するように送信部10Fを配置する際に、突起15Fによって非接合部分105を包装容器100の内側(収容空間102側)に押し込むことができる。これにより、送信面13aの内側領域13a1から送信される強度が一様である超音波Wを、接合部分103の基端部103Aに到達させることができる。したがって、接合部分103に剥離が生じているか否かをより正しく判定することが可能となる。
【0053】
第四実施形態において、送信部10Fの突起15Fは、例えば、送信面13aに直交する方向から見て、送信面13aの周縁のうち保持ケース14Eによって覆われる部分から送信面13aの外側に突出してもよい。また、第四実施形態の突起15Fは、例えば、保持ケース14が送信面13aの周縁全体を覆うように送信素子13を保持する第一、第二実施形態の送信部10、10Dに適用されてもよい。このような構成の送信部であっても、接合部分103に剥離が生じているか否かをより正しく判定することは可能である。
【0054】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0055】
本発明において、複数の受信部21は縦横に隙間なく並ぶマトリクス状、又は、直線方向に隙間なく並ぶアレイ状に配列されることに限らず、少なくとも所定のパターンに応じて配列されていればよい。複数の受信部21は、例えばマトリクス配列された状態から所定の法則で受信部21を取り除いたパターン(例えば格子状(lattice pattern)や市松模様(checkered pattern))に配列されてよい。また、複数の受信部21は、湾曲した線状(例えば螺旋状)に沿って一列に配列されてもよい。また、複数の受信部21は、例えば隙間なく一列に配列された状態から所定の法則で受信部21を取り除いたパターン(例えば2つの受信部21からなるユニットを間隔をあけて一列に配置したパターン)に配列されてもよい。
【0056】
本発明において、送信部は、例えば送信部の送信面から離れるにしたがって扇状、球面状に広がるように超音波を送信してもよい。
【0057】
本発明に係る超音波検査装置の検査対象である包装容器は、シート状の容器用部材101のみからなる包装容器100(
図1等参照)に限らず、例えば
図10に示すカップ状容器200であってもよい。
図10に例示するカップ状容器200は、第一の容器用部材であるカップ状部材201Aの開口端に、第二の容器用部材であるシート状部材201Bを重ねて接合することで、内部に収容空間202を形成した容器である。このカップ状容器200では、カップ状部材201Aの開口端とシート状部材201Bとの接合部分203が、カップ状部材201Aの側壁部205の外面205a(所定物体の表面)から当該外面205aに対して直交する方向に突出している。本発明に係る超音波検査装置は、このカップ状容器200のうち、カップ状部材201Aの開口端とシート状部材201Bとを重ねて接合した接合部分203におけるカップ状部材201Aとシート状部材201Bとの剥離を検査することができる。
【符号の説明】
【0058】
1,1D,1E,1F…超音波検査装置、10,10D,10E,10F…送信部、11,11E…送信部本体、12…ミラー、13…送信素子、13a…送信面、13a1…内側領域、13a2…周縁領域、14,14E…保持ケース、15F…突起、21…受信部、21a…受信面、100…包装容器、101…容器用部材、103…接合部分、105…非接合部分(所定物体)、105a…外面(表面)、200…カップ状容器(包装容器)、201A…カップ状部材(容器用部材)、201B…シート状部材(容器用部材)、203…接合部分、205…側壁部(所定物体)、205a…外面(表面)、W…超音波