(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183492
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】扉用蝶番
(51)【国際特許分類】
E05D 11/00 20060101AFI20221206BHJP
E05D 3/02 20060101ALI20221206BHJP
E05D 7/04 20060101ALI20221206BHJP
【FI】
E05D11/00
E05D3/02
E05D7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090838
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】000196314
【氏名又は名称】株式会社ニシムラ
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】林 宏一
【テーマコード(参考)】
2E030
2E032
【Fターム(参考)】
2E030AB02
2E030BB03
2E030CA01
2E030CB01
2E030CC01
2E030GA01
2E030GB04
2E030GC06
2E032AA01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ドアクローザに起因して想定外の力が加わっても羽根板の変形が防止される扉用蝶番を提供する。
【解決手段】枠側羽根板10と、扉側羽根板と、その両羽根板を開閉自在に連結する支点軸11と、この支点軸を支持する筒部12を有する扉用蝶番1において、前記枠側羽根板10と前記扉側羽根板のいずれかに補強板40が接合されている。前記補強板40は前記いずれかの羽根板10の少なくとも90%をカバーする大きさと形状を有するとともに、前記筒部12との最接近距離が0.5~3mmである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠側羽根板(10,10A)と、扉側羽根板と、その両羽根板を開閉自在に連結する支点軸(11,11A)と、この支点軸を支持する筒部(12,12A)を有する扉用蝶番(1,1A)であって、前記枠側羽根板(10,10A)と前記扉側羽根板のいずれかに補強板(40)を接合させた扉用蝶番において、
前記補強板(40,40A)が前記いずれかの羽根板(10,10A)の少なくとも90%をカバーする大きさと形状を有するとともに、前記筒部(12)との最接近距離が0.5~3mmであることを特徴とする扉用蝶番。
【請求項2】
前記扉用蝶番が、前後方向及び左右方向の位置調節を行う調整部材(60)を有する調整蝶番である請求項1記載の扉用蝶番(1)。
【請求項3】
前記扉用蝶番が、前後方向及び左右方向の位置調節を行う調整部材を有しないタイプの蝶番である請求項1記載の扉用蝶番(1A)。
【請求項4】
前記補強板(40)と前記いずれかの羽根板(10)との接合が締め付け固定である請求項1~3のいずれかに記載の扉用蝶番(1)。
【請求項5】
前記補強板(40A)と前記いずれかの羽根板(10A)との接合が溶接固定である請求項1~3のいずれかに記載の扉用蝶番(1A)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、玄関や室内などでドアを開閉するために用いる扉用蝶番に関する。特にドアクローザが併設された扉用蝶番に関する。
【背景技術】
【0002】
ドアクローザはドアおよび枠の上部に取り付けられる装置であり、閉扉時の「バタン」という音の発生を防いだり、開扉状態で固定したりするために用いられる。例えば、特開2010-19053(特許文献1)など多種類のものが知られている。
【0003】
ドアクローザの作用でドアがゆっくりと閉じている途中で、人がドアを強制的に閉じようとして力を加えることがある。そのようなとき、ドアと枠とを連結している蝶番羽根板の左右方向において想定外の荷重が作用し、羽根板が枠から浮き上がろうとする。このような荷重が繰り返し羽根板に作用すると、羽根板が変形して扉用蝶番の機能に支障をきたすことがある。
【0004】
この問題に対して、特開2019-127699(特許文献2)では、前後方向及び左右方向の位置調節を行う調整部材を有する調整蝶番において、その調整部材を覆うカバーを取り付けることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-19053
【特許文献2】特開2019-127699
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、特開2019-127699のカバーを簡素化することにより、調整蝶番だけでなく、従来タイプの蝶番も含み、幅広く使用可能なカバーと、それを有する扉用蝶番を提供することを目的とする。以下、本明細書ではこのカバーを「補強材」と呼ぶ。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、扉側羽根板と、枠側羽根板と、その両羽根板を開閉自在に連結する支点軸と、この支点軸を支持する筒部を有する扉用蝶番であって、前記扉側羽根板と前記枠側羽根板のいずれかに補強板を接合させた扉用蝶番において、前記補強板が前記いずれかの羽根板の少なくとも90%、好ましくは95%以上をカバーする大きさを有するとともに、前記筒部との最接近距離が0.5~3mm、好ましくは1~2mmであることを特徴とする。
【0008】
扉用蝶番は、前後方向及び左右方向の位置調節を行う調整部材を有する調整蝶番でもよいし、そのような調整機構を有しない従来タイプの扉用蝶番であってもよい。
【0009】
前記補強板と前記いずれかの羽根板との接合はビス等の締付具による締め付け固定でもよいし、溶接等の永久的な固定でもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、補強板が羽根板の少なくとも90%をカバーする大きさを有するとともに、前記支点軸との最接近距離が0.5~3mmであるので、補強効果が極めて高い。そのため、ドアクローザに起因して想定外の力が加わっても蝶番の変形が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施例1に係る調整蝶番の扉側部品の全体斜視図である。
【
図2】
図1において、表面板を分離させた状態の斜視図である。
【
図3】
図1において、補強板を実線で示した斜視図である。
【
図4】
図1において、表面板を除去するとともに、羽根板とベース部材を展開した状態の斜視図である。
【
図5】補強板の(a)平面図、(b)左側面図、(c)正面図、(d)右側面図、(e)底面図である。
【
図6】実施例2に係る従来タイプの蝶番の(a)平面図、(b)左側面図、(c)正面図、(d)右側面図、(e)底面図、(f)
図6(c)のf―f断面図、(g)
図6(c)のg―g断面図である。
【
図7】実施例2の蝶番を折りたたんだ状態の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付の図面に基づき、本発明の実施例を説明する。実施例1(
図1~5)は、前後方向及び左右方向の位置調節を行う調整部材を有する調整蝶番に関するものである。実施例2(
図6,7)はそのような調整機構を有しない従来タイプの扉用蝶番に関するものである。
【実施例0013】
図4に示すように、この発明に係る調整蝶番1は、枠側羽根板10と、扉側羽根板(図示せず)と、その両羽根板を開閉自在に連結する支点軸11を有している。
【0014】
枠側羽根板10および扉側羽根板は板体からなり、その一側部には同軸上に配置される筒部12が形成されている。支点軸11は、同軸上に配置された筒部12に挿入され、その支点軸11を中心にして枠側羽根板10と扉側羽根板が開閉自在とされている。
【0015】
図2および
図4に示すように、枠側羽根板10は調整部材60と一体化している。調整部材60は、ベース部材20と、このベース部材20の裏面に接合される座板30と、前記枠側羽根板10と、この枠側羽根板10の表面を覆う補強材40と、この補強材40の表面に位置する表面板50を有する。調整部材60をドアに固定するには、ベース部材20及び座板30を止めネジ31でドアに固定することにより行う。
【0016】
ベース部材20は、縦長長寸の第1部分21と、この第1部分21に隣接する縦長短寸の第2部分22を有する。
【0017】
第1部分21は、上面が開放された矩形状の窪み部23を有し、その窪み部23内に枠側羽根板10が挿入される。ベース部材20の窪み部底部24には、単一の調整ネジ25が設定されるとともに、一対のビス挿入孔26が上下方向に間隔をおいて形成されている。さらに、後記する蝶番の前後方向調整用のカム本体27及びカム操作部28が設けられている。
【0018】
第2部分22は第1部分21の座板30の延長部であり、支点軸11の筒部12の直前まで伸びている。
【0019】
枠側羽根板10には、上記ビス挿入孔26のそれぞれと対向する位置に左右方向に長孔13が形成されているとともに、上記調整ネジ25の頭部が露出する切り欠き14が設けられている。さらに、上記カム操作部28を露出させるネジ孔15と、補強板40と接合するためのビス孔16が設けられている。
【0020】
本発明の特徴である補強板40は、
図2~5に示すように、1枚の平坦な金属板である。その大きさと形状は枠側羽根板10のすべてをほぼ覆うに足りるものである。換言すれば、ベース部材20すなわち第1部分21と第2部分22をほぼ全面的に覆う大きさと形状である。しかも、支点軸の筒部12との衝突が避けられる程度に支点軸11と接近させて取り付ける。具体的には、前記補強板40が羽根板10の少なくとも90%、好ましくは95%以上をカバーする大きさを有するとともに、前記支点軸の筒部12との最接近距離が0.5~3mm、好ましくは0.5~2mmである。しかも、その形状はネジ孔を除き、扉用羽根板のすべてをほぼ覆うに足りるものである。
【0021】
補強板40にも上記ビス挿入孔26のそれぞれと対向する位置に左右方向に長孔41が形成されているとともに、上記調整ネジ25の頭部が露出する切り欠き42が設けられている。さらに、上記カム操作部28を露出させるネジ孔43と、羽根板10と接合するためのビス孔44も設けられている。
【0022】
表面板50はベース部材20の第1部分21を覆うことができる大きさである。表面板50には上記ビス挿入孔26のそれぞれと対向する位置にネジ孔51が形成されているとともに、上記調整ネジ25の頭部が露出するネジ孔52が設けられている。
【0023】
これらの枠側羽根板10の長孔13、補強材40の長孔41、表面板50のネジ孔51をビス29が挿通することにより、これらの部品がベース部材20の窪み部底部24に固定され、一体化される。このビス29を緩めることにより、枠側羽根板10が前後左右方向に位置調整可能な状態となり、ビス29を締め付けることにより、枠側羽根板10とベース部材20の位置が固定される。さらに、羽根板10と補強板40はそれぞれのビス孔16,44を挿通するビス17(
図2)により強力に接合される。
【0024】
蝶番1を前後方向に移動させる機構はそれ自体業界において周知であり、ベース部材20内に配設されたカム本体27と、カム操作部28とからなるカムを用いて行う。具体的には、カム操作部28をドライバ等の操作具で適宜方向に回転させると、カム本体27が偏心して回転するために、羽根板10は、ベース部材20上を前後方向に移動するので、蝶番の前後方向の調整が可能になる。
【0025】
さらに、この蝶番1は左右方向の移動も可能である。この機構もそれ自体業界において周知であり、羽根板10の切り欠き14、補強材40の切り欠き42、表面板50のネジ孔52を通して露出している上記調整ネジ25の頭部をドライバ等の操作具で回動することにより行う。
【0026】
この実施例では、羽根板10のすべてをほぼ覆う補強板40を羽根板10と強力に接合しているため、従来の調整蝶番において変形が起こりやすかった第2部分がしっかりと補強されている。そのため、ドアクローザに起因して想定外の力が加わっても蝶番の変形が防止される。
枠側羽根板10Aおよび扉側羽根板10Bは板体からなり、その一側部には同軸上に配置される筒部12Aが設けられている。支点軸11Aは、同軸上に配置された筒部12A内に挿入され、その支点軸11Aを中心にして枠側羽根板10Aと扉側羽根板10Bが開閉自在とされている。
実施例1と同様に、枠側羽根板10Aと扉側羽根板10Bのいずれかに補強板40Aを設ける。例えば枠側羽根板10Aに補強板40Aを取り付ける場合、支点軸の筒部12Aとの衝突が避けられる程度に支点軸11Aと接近させて取り付ける。具体的には、前記補強板40Aが羽根板10Aの少なくとも90%、好ましくは95%以上をカバーする大きさを有するとともに、前記支点軸の筒部12Aとの最接近距離が0.5~3mm、好ましくは0.5~2mmである。しかも、その形状はネジ孔を除き、扉用羽根板のすべてをほぼ覆うに足りるものである。
この実施例2においても、羽根板のすべてをほぼ覆う補強板を羽根板と強力に接合しているため、従来の蝶番において変形が起こりやすかった支点軸周辺がしっかりと補強されている。そのため、ドアクローザに起因して想定外の力が加わっても蝶番の変形が防止される。