(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022183495
(43)【公開日】2022-12-13
(54)【発明の名称】鋳物砂搬送装置および鋳物砂搬送方法
(51)【国際特許分類】
B22C 5/16 20060101AFI20221206BHJP
【FI】
B22C5/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021090844
(22)【出願日】2021-05-31
(71)【出願人】
【識別番号】592089799
【氏名又は名称】メタルエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(74)【代理人】
【識別番号】100130096
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一総
(72)【発明者】
【氏名】金平 諭三
(57)【要約】
【課題】低コストの設置費用で済み、修繕費用が安く保全の容易な鋳物砂搬送装置を提供する。
【解決手段】鋳物砂搬送装置において、余剰の鋳物砂を生じる設備の下方に、鋳物砂の落下範囲に応じて上面開口した樋形状に設けられ、鋳物砂を搬送する搬送方向に沿って延在する搬送路と、搬送路に直角な方向に沿って夫々延設されるとともに、搬送方向に沿って所定間隔で並べられ、鋳物砂を搬送方向に沿って押圧する複数の押圧板と、複数の押圧板を、搬送路に対して搬送方向に沿って往復動させる往復動装置とを備え、押圧板は、往路において鋳物砂を搬送方向に沿って前進させる方向に押圧し、復路において鋳物砂を搬送方向に沿って後退させる方向に押圧することなく復帰する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
余剰の鋳物砂を生じる設備の下方に、前記鋳物砂の落下範囲に応じて上面開口した樋形状に設けられ、前記鋳物砂を搬送する搬送方向に沿って延在する搬送路と、
前記搬送路に交差するように前記搬送方向に沿って所定間隔で並べられ、前記鋳物砂を前記搬送方向に沿って押圧する複数の押圧板と、
各前記押圧板が前記搬送方向に沿った方向に揺動可能に夫々支持され、複数の前記押圧板を前記搬送路に対して前記搬送方向に沿って往復動させる往復動装置と、
前記往復動の往路において、各前記押圧板の揺動を規制することで、前記鋳物砂を前記搬送方向に沿って前進させるように各前記押圧板で押圧し、前記往復動の復路において各前記押圧板の揺動の規制を解くことで、前記鋳物砂を前記搬送方向に沿って後退させるように押圧することなく各前記押圧板を復帰させる揺動規制装置と、
を備えた鋳物砂搬送装置。
【請求項2】
前記往復動装置は、複数の前記押圧板を前記搬送方向に沿って連結し、複数の前記押圧板を連動して前記往復動させる連結装置を備えた請求項1に記載の鋳物砂搬送装置。
【請求項3】
前記連結装置は、各前記押圧板を支持する複数の揺動中心軸を備え、
各前記押圧板は、前記揺動中心軸を中心に揺動する請求項2に記載の鋳物砂搬送装置。
【請求項4】
前記押圧板と前記揺動中心軸との間には、前記押圧板を前記搬送方向に向かって所定角度以上回転させたときに、前記揺動中心軸より外れる取り外し機構を備えた請求項3に記載の鋳物砂搬送装置。
【請求項5】
各前記押圧板の下端部には、前記鋳物砂を前記搬送方向に沿って前進させる方向に所定幅で曲げ起こした曲起こし部を備えた請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の鋳物砂搬送装置。
【請求項6】
各前記押圧板には、前記押圧板の重心位置を前記揺動中心軸側に近づけるバランサをさらに備えた請求項3または請求項4に記載の鋳物砂搬送装置。
【請求項7】
前記往復動装置は、回転運動を前記搬送方向に沿った直線運動に変換するスライダクランク機構を備えた請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の鋳物砂搬送装置。
【請求項8】
前記搬送路は、前記搬送方向に向かって徐々に上がっていく上向き傾斜または前記搬送方向に向かって徐々に下がっていく下向き傾斜とする傾斜構造である請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の鋳物砂搬送装置。
【請求項9】
余剰の鋳物砂を生じる設備の下方に、前記鋳物砂の落下範囲に応じて上面開口した樋形状に設けられ、前記鋳物砂を搬送する搬送方向に沿って延在する搬送路と、前記搬送路に交差するように前記搬送方向に沿って所定間隔で並べられ、前記鋳物砂を前記搬送方向に沿って押圧する複数の押圧板と、各前記押圧板が前記搬送方向に沿った方向に揺動可能に夫々支持され、複数の前記押圧板を前記搬送路に対して前記搬送方向に沿って往復動させる往復動装置と、前記押圧板の揺動を規制する揺動規制装置と、を備えた鋳物砂搬送装置を使用して前記鋳物砂を搬送する方法であって、
前記往復動の往路において、前記揺動規制装置により、各前記押圧板の揺動を規制することで、前記鋳物砂を前記搬送方向に沿って前進させるように各前記押圧板で押圧する押圧工程と、
前記往復動の復路において、前記揺動規制装置による各前記押圧板の揺動の規制を解くことで、前記鋳物砂を前記搬送方向に沿って後退させるように押圧することなく各前記押圧板を復帰させる復帰工程と、
を備えた鋳物砂搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造設備に付帯する各設備から発生する余剰分の鋳物砂の搬送装置およびその搬送装置を使用した鋳物砂の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造設備に付帯する各装置では、造型後に鋳物砂の余剰分が発生する場合がある。例えば、造型後の鋳枠背面側に発生する鋳物砂の突出分を除去したり、注湯済みの鋳型を鋳枠より抜き出すと同時に鋳枠内壁を清掃することで使用済みの鋳物砂の搬出・搬送が必要となる。
従来、特許文献1に開示するように、鋳造設備に付帯する各装置の下方にピットを掘り、鋳物砂を集めてピットに落下させる傾斜ホッパを設けてベルトコンベヤで搬送していた。
【0003】
しかし、傾斜ホッパとベルトコンベヤとを使用するには、ピットを深くする必要があるため、基礎工事費が増大する問題があった。またピット工事が困難で鋳造設備全体を嵩上げする場合は嵩上げ分の設置フレーム鋼材、建屋の高さ延長等、設備費用が大幅に増加する問題があった。
そのため、特許文献2では、鋳物砂搬送コンベヤでは余剰砂の落下範囲に併せてL形スクレーパの巾を広くすることにより傾斜ホッパを省略し、ピットを浅くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-183984号公報
【特許文献2】特開2003-335409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献2の鋳物砂搬送コンベヤは、コンベヤチェーン部に落下砂が被り、コンベヤチェーンのジョイント部が早期に摩耗して修繕費用が増大する問題とピット内での保全の煩わしさがあった。
【0006】
本発明は、低コストの設置費用で済み、修繕費用が安く保全の容易な鋳物砂搬送装置および鋳物砂搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様によれば、鋳物砂搬送装置は、余剰の鋳物砂を生じる設備の下方に、鋳物砂の落下範囲に応じて上面開口した樋形状に設けられ、鋳物砂を搬送する搬送方向に沿って延在する搬送路と、搬送路に交差するように搬送方向に沿って所定間隔で並べられ、鋳物砂を搬送方向に沿って押圧する複数の押圧板と、各押圧板が搬送方向に沿った方向に揺動可能に夫々支持され、複数の押圧板を搬送路に対して搬送方向に沿って往復動させる往復動装置とを備えている。
【0008】
さらに、往復動の往路において、各押圧板の揺動を規制することで、鋳物砂を搬送方向に沿って前進させるように各押圧板で押圧し、往復動の復路において各押圧板の揺動の規制を解くことで、鋳物砂を搬送方向に沿って後退させるように押圧することなく各押圧板を復帰させる揺動規制装置を備えている。
【0009】
これによれば、高さ寸法の小さい装置で、造型後に発生する鋳物砂余剰分の落下砂を搬送できるので傾斜角度を有する高さの高いホッパが必要無く、ピット深さの軽減、または鋳造設備全体の嵩上げ量が減少して大幅な設備費用を削減できる。また、コンベヤチェーンを使用していないので、ジョイント部に鋳物砂が入り込むことによる摩耗を生じることもない。また、鋳物砂落下範囲における機械摺動部分が少ないので摩耗による修繕費用の増大を軽減できる。
【0010】
本発明の第二の態様によれば、往復動装置は、複数の押圧板を搬送方向に沿って連結し、複数の押圧板を連動して往復動させる連結装置を備えた。
【0011】
これによれば、連結装置によって連結された複数の押圧板を一つの往復動装置によって、一体的に往復動させることができる。
【0012】
本発明の第三の態様によれば、連結装置は、各前圧板を支持する複数の揺動中心軸を備え、各押圧板は、揺動中心軸を中心に揺動する。
これによれば、各押圧板は、簡素な構造でよく、揺動中心軸を中心に揺動する。
【0013】
本発明の第四の態様によれば、押圧板と揺動中心軸との間には、押圧板を搬送方向に向かって所定角度以上回転させたときに、揺動中心軸より外れる取り外し機構を備えた。
【0014】
これによれば、取り外し機構によって、摩耗等によって取り換えが必要となった押圧板の取り換えを容易かつ迅速に行うことができる。
【0015】
本発明の第五の態様によれば、各押圧板の下端部には、鋳物砂を搬送方向に沿って前進させる方向に所定幅で曲げ起こした曲起こし部を備えた。
【0016】
これによれば、往路において、鋳物砂を曲起こし部ですくい上げることで、多量の鋳物砂を前進させることができる。復路においては、曲起こし部により鋳物砂に対し接触部が真正面から向き合って押圧するのを逃げることができ、鋳物砂の後退をわずかなものとすることができる。
【0017】
本発明の第六の態様によれば、押圧板には、押圧板の重心位置を揺動中心軸側に近づけるバランサをさらに備えた。
【0018】
これによれば、押圧板の質量に基づく押圧板に生じる回転モーメント力を減少させるので、復路において押圧板が戻す鋳物砂の量を減少させることができる。
【0019】
本発明の第七の態様によれば、往復動装置は、回転運動を搬送方向に沿った直線運動に変換するスライダクランク機構を備えた。
【0020】
これによれば、一方々向の回転駆動のみで両側移動端のショックも無く簡単な制御でスムーズな往復動を実現することができる。
【0021】
本発明の第八の態様によれば、搬送路は、搬送方向に向かって徐々に上がっていく上向き傾斜または搬送方向に向かって徐々に下がっていく下向き傾斜とする傾斜構造である。
【0022】
これによれば、傾斜搬送が可能となりベルトコンベヤ同様に落差のある鋳物砂の搬送ができる。
【0023】
本発明の第九の態様によれば、使用される鋳物砂搬送装置は、余剰の鋳物砂を生じる設備の下方に、鋳物砂の落下範囲に応じて上面開口した樋形状に設けられ、鋳物砂を搬送する搬送方向に沿って延在する搬送路と、搬送路に交差するように搬送方向に沿って所定間隔で並べられ、鋳物砂を搬送方向に沿って押圧する複数の押圧板と、を備えている。
【0024】
さらに、各押圧板が搬送方向に沿った方向に揺動可能に夫々支持され、複数の押圧板を搬送路に対して搬送方向に沿って往復動させる往復動装置と、押圧板の揺動を規制する揺動規制装置と、を備えている。
【0025】
そして、鋳物砂搬送方法は、往復動の往路において、揺動規制装置により、各押圧板の揺動を規制することで、鋳物砂を搬送方向に沿って前進させるように各押圧板で押圧する押圧工程と、往復動の復路において、揺動規制装置による各押圧板の揺動の規制を解くことで、鋳物砂を搬送方向に沿って後退させるように押圧することなく各押圧板を復帰させる復帰工程と、を備えている。
【0026】
これによれば、搬送される余剰の鋳物砂は、サラサラではなく、転がって塊となりやすい性質のものである。そのため、押圧板の往復動という簡単な動きで、余剰の鋳物砂を確実かつ迅速に搬送することができる。このように、搬送方向に沿った往復動で、搬送路に落下した鋳物砂を搬送できるので、エンドレスベルトを使用したコンベヤベルトのようにベルトが上下2段に延在することがない。そのため、高さ寸法の小さい搬送装置とすることができ、傾斜角度を有する高さの高いホッパが必要無く、ピット深さの軽減を図ることで、鋳物砂の搬送方法に必要な設備コストの低減を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の鋳物砂搬送装置の概要を示す平面図である。
【
図3】本発明の鋳物砂搬送装置の概要を示す側面図である。
【
図5】本発明の鋳物砂搬送装置の概要を示す正面図である。
【
図6】ガイドローラおよび押圧板の取付構造を一部断面図で示す拡大図である。
【
図7】スライダフレームを下流側に移動させ、鋳物砂を搬送する状態を示す説明図である。
【
図8】押圧板の使用状態での揺動角度を説明する図である。
【
図9】押圧板を取り外す場合の角度を示す図である。
【
図10】スライダフレームを下流側に移動させ、鋳物砂を搬送する往路の状態を示す説明図である。
【
図11】スライダフレームを上流側に移動させ、押圧板を戻す復路の状態を示す説明図である。
【
図12】第二実施形態の押圧板の取付け部分を正面からの断面図で示す拡大図である。
【
図13】第二実施形態の押圧板の取付け部分を側面からの断面図で示す拡大図である。
【
図14】第二実施形態において、スライダフレームを上流側に移動させ、押圧板を戻す復路の状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
(第一実施形態)
本発明に係る鋳物砂搬送装置を、鋳造ラインに実施した第一実施形態について、
図1~
図11を参照して以下に説明する。
【0029】
図1は、鋳物砂搬送装置全体の概要を示すものである。
本実施形態の鋳物砂搬送装置1は、搬送路2と、押圧板3と、往復動装置4とを備えている。
本明細書において、搬送物である余剰の鋳物砂CSが搬送される方向を「搬送方向」という。鋳物砂CSの搬送を水の流れに例えて、搬送の始点となる側を「上流側」、搬送の終点となる側を「下流側」という。搬送方向において上流方向を「後方」といい、下流方向を「前方」というものとする。搬送方向に延在する中心線を想定した場合に、その中心線より遠い側を「外側」、近い側を「内側」というものとする。
【0030】
(搬送路)
搬送路2は、余剰の鋳物砂CSを生じる図略の付帯設備(例えばサンドカッター装置等)の下方に設けられ、落下した余剰の鋳物砂CSを載置して搬送する。
搬送路2は、
図1に示すように、搬送路本体21(トラフ)と、ガイドローラ22と、設置脚23(
図2参照)と、を備えている。
搬送路本体21は、例えば、鉄製の板により底の浅い樋形状に形成され、搬送方向に沿って延在している。
【0031】
搬送路本体21の底部21aは、水平面で形成され、搬送方向に沿って延在する底部21aの両端部は、傾斜壁21cを介して所定の高さの垂直壁21bが形成されている。搬送路本体21の搬送方向に直角な方向の幅は、
図4に示すように、鋳物砂CSの落下する範囲の幅よりも広く(例えば、傾斜壁21cの搬送方向に直角な水平方向の幅分だけ広く)形成されている。
【0032】
搬送路本体21の上流端には、
図2に示すように、垂直板21dで搬送方向に直角な方向に沿って仕切りが設けられ、垂直板21dには搬送方向に向かって仰向きに傾斜する傾斜板21eが設けられている。傾斜板21eは、垂直板21dの付近に砂溜りが生じるのを防止する。
搬送路本体21の下流端は、搬送された余剰砂がシュートCHに向かって落下するようになっている。
【0033】
垂直壁21bの上部外側には、
図3に示すように、複数のガイドローラ22が設けられている。ガイドローラ22は、
図4に示すように、回転軸22aが搬送方向に直角な方向に沿って延在し、各回転軸22aは垂直壁21bに設けられた軸受け部22bに回転自在に受承されている。ガイドローラ22は、搬送方向に沿って三対が設けられている。
【0034】
各ガイドローラ22の外周は、
図6に示すように、基端部側にフランジ部22cが周設されて垂直壁21bの上端部よりも突出している。各ガイドローラ22の外周は、垂直壁21bの上端部よりも突出することで、後述するスライダフレーム43(連結装置)を受けて、搬送路本体21に対してスライダフレーム43が搬送方向に沿って往復動(スライド)可能とするように構成されている。
【0035】
設置脚23は、
図4に示すように、搬送路本体21を床面BGから上方に離間させた状態で固定する。設置脚23は、傾斜壁21cの上部まで接着して支持することで、搬送路本体21の剛性の補強を兼ねている。
【0036】
設置脚23は、例えば、垂直に延在する鉄製の板材で形成され、搬送方向に直角な方向に延在するように立てられて構成される。上端部が搬送路本体21の下底面に倣う形状に形成され、搬送路本体21に例えば溶接等で接着されている。設置脚23は、搬送方向に沿って並ぶように、五か所に設置されている。下流端の二か所の設置脚23は、
図3および
図5に示すように、後述する駆動装置41を支える支柱44aの間に設けられている。支柱44aと下流端の二か所の設置脚23とは、鉄製の四角中空材よりなる保持部材44cによって連結され固定されている。
【0037】
(押圧板)
押圧板3は、搬送路本体21内の鋳物砂CSを搬送方向に押圧する。
押圧板3は、搬送方向に直角な方向に延在するように設けられている。押圧板3は、複数枚(本実施形態では九枚)が所定間隔で搬送方向に沿って並べられている。
押圧板3は、例えば鉄製の鋼板で形成され、取付部31と、押圧板本体32と、曲起こし部33とを備えている。
【0038】
押圧板本体32は、縦方向が短く横方向に長い平板状に形成されている。搬送方向に直角な方向である横方向の長さが、搬送路本体21の底部21aの搬送方向に直角な方向の長さより少し短く形成されている。
【0039】
取付部31は、例えば鉄製で断面が円形のパイプ状に形成され、押圧板本体32の搬送方向に直角な方向の長さよりも少し長く形成されている。取付部31は、押圧板本体32の上端部に一体に形成されている。そのため、取付部31は、両端部において押圧板本体32より突出している。取付部31の突出した部分には、円筒部の下部約三分の一の部分が押圧板本体32側に開口する切欠き部31aが形成されている。切欠き部31aの開口幅(切欠き部31aの上流側の開口端31uと下流側の開口端31dとの間の長さ)は、後述する揺動中心軸5の外径より小さく、かつ揺動中心軸5に除去部5aより形成される縦方向の長さよりも大きく形成されている(
図8および
図9参照)。
【0040】
曲起こし部33は、
図7に示すように、押圧板本体32の下端部を、搬送する余剰の鋳物砂CSを前進させる方向に所定幅で湾曲状に曲げ起こして形成されている。曲起こし部33は、押圧板3が、前進する場合に、搬送路2内の鋳物砂CSをすくい上げて多量に前進させる。曲起こし部33は、押圧板3が、後退する場合に、鋳物砂CSの上面を滑って鋳物砂CSを後退させないようになっている(
図11参照)。
【0041】
曲起こし部33の下端は、搬送路2の底部21aの上面に接触することなく、例えば3~6mmの隙間を設けるように構成されている。搬送される鋳物砂CSがサラサラのものでなく、まとまり易く塊を形成し易いことにより、隙間があっても鋳物砂CSの塊を押圧して移動することができる。さらに、搬送路2の底部21aに接触しないので、下端が早く摩耗して押圧板3の交換時期を早めることがないので、ランニングコストの低減を図ることができる。
【0042】
(往復動装置)
往復動装置4は、押圧板3を搬送方向に沿って所定のストロークで往復動させる。
往復動装置4は、
図2に示すように、駆動装置41と、運動変換装置42と、スライダフレーム43(連結装置)とを備えている。
【0043】
駆動装置41は、例えば電動式モータであり、
図5に示すように、一方向に回転運動する出力軸41bを備えている。駆動装置41は、搬送路本体21の下流端位置に設けられた例えば鉄製の架台44に固定されている。架台44は、搬送路本体21の下端部において、搬送路2を両側から挟むように床面BGに立設された一対の支柱44aと、支柱44aの上部において支柱44a間に横架された梁部材44bとを備えている。梁部材44bは、断面矩形状の中空部材で形成されている。そして、架台44は、搬送路本体21を跨ぐようにして、床面BGに固定されている。
【0044】
駆動装置41は、梁部材44bの下流側の側面に固定され、減速機構41aを介して下方に向かって延在する出力軸41bを有している。出力軸41bは、後述する運動変換装置42のクランクアーム42aを回転させる中心軸に相当する。駆動装置41の駆動は、図略の制御装置によって制御される。
【0045】
運動変換装置42は、例えばスライダクランク機構の一種である、ダブルスライダクランク機構(スコッチヨーク機構)であり、電動式モータの回転運動を、搬送方向に沿ったスライダフレーム43の直線運動に変換する。
【0046】
ダブルスライダクランク機構は、駆動装置41の出力軸41bに基端部が相対回転不能に組付けられ、水平面内において回転するクランクアーム42aを備えている。そして、クランクアーム42aの先端には、ピンによって連結された第一スライダ42bが設けられている。さらに、ダブルスライダクランク機構は、第一スライダ42bが摺動し搬送方向に直角な方向に延在する溝部42cを備えている。
【0047】
そして、溝部42cは、搬送方向に直角な方向に延在する保持梁部材43fの上面に組付けられ、保持梁部材43fは、スライダフレーム43(第二スライダ)に一体に設けられている。クランクアーム42aが、一回転するとスライダフレーム43が一回、往復動する。クランクアーム42aが描く円の直径が、往復動の幅である一ストロークとなる(
図2参照)。
ダブルスライダクランク機構は、公知技術であるため、詳細な説明を省略する。
【0048】
(スライダフレーム)
スライダフレーム43は、搬送路本体21の上面を覆う矩形の枠形状に形成され、複数の押圧板3を連結して、搬送路本体21に対して搬送方向に沿って往復動する。
スライダフレーム43は、
図5に示すように、搬送方向に沿って延在する一対のライナー枠部材43aと保持梁部材43fとを備えている。スライダフレーム43は、連結装置に相当するとともに、搬送方向に沿って直線的に往復動する第二スライダとして機能する。
各ライナー枠部材43aは、例えば鉄製で断面L字形の部材で形成され、搬送路本体21の垂直壁21bに内側から対向する垂直部材部43bと垂直部材部43bに連続し水平方向に所定の幅で延在する水平部材部43cとを備えている。水平部材部43cの下面には、搬送方向に延在するライナー43dが設けられ、ライナー43dは、ガイドローラ22の外周上端に接触支持されるようになっている。
【0049】
垂直部材部43bの内側には、
図1に示すように、対向する二か所の垂直部材部43b間において渡しフレーム43eが横架されている。渡しフレーム43eは、例えば鉄製で断面逆V字状の梁部材で形成され、上流端位置と、上流端の下流端の中間にある中間位置と、に設けられている。渡しフレーム43eの両端部は、例えば溶接によって垂直部材部43bの内側に組付けられている。
【0050】
スライダフレーム43の下流端位置には、対向する垂直部材部43b間において保持梁部材43fが横架されている。保持梁部材43fは、
図2に示すように、例えば鉄製で断面矩形状の中空部材で形成されている。保持梁部材43fの上面には、ダブルスライダクランク機構の溝部42cが、搬送方向の直角な方向に沿って組付けられている。
【0051】
(揺動中心軸)
垂直部材部43bには、
図6に示すように、搬送方向の直角な方向に沿って軸心が延在する揺動中心軸5が、例えば、ねじ51によって締結されている。
揺動中心軸5は、複数本(本実施形態では九本)搬送方向に沿って並べて設けられ、前述の押圧板3が揺動可能に取り付けられる。揺動中心軸5は、押圧板3の取付部31における切欠き部31aよりも水平方向に短い長さに形成されている。本実施形態では、ねじ51の頭の高さ寸法と揺動中心軸5の長さとが、切欠き部31aより短い長さとなるよう設定されている。
【0052】
揺動中心軸5は、円柱形を横にした状態で、下端部分の四分の一ほどを除去部5aによって水平面で除去した形状となっている。除去部5aにより、揺動中心軸5の縦方向の外形の長さは、切欠き部31aの開口部の上流側の開口端31uから下流側の開口端31dまでの長さよりも小さくなるように設定されている(
図8参照)。
【0053】
押圧板3を搬送方向に向かって所定角度以上回転させたときに、押圧板3は、切欠き部31aの上流側の開口端31uが、除去された形状の揺動中心軸5の下流側の端部に至ることで、切欠き部31aの上流側の開口端31uが揺動中心軸5の頂部を乗り越えることができ、揺動中心軸5より外れる(
図9参照)。
【0054】
取付部31の切欠き部31aおよび除去した形状の揺動中心軸5は、取り外し機構を構成する。
揺動中心軸5の上方には、揺動中心軸5と取付部31の切欠き部31aとを覆うように断面逆V字形の砂除け板6が設けられている。
【0055】
揺動中心軸5の下方には、押圧板3の上流側の面に当接するストッパ7が設けられている。ストッパ7は、押圧板3が、垂下された位置から搬送方向の逆方向に回転するのを規制する。ストッパ7は、例えば四角板状に形成され、板を上下方向に立てた状態で、垂直部材の内側に例えば溶接等で組付けられている。ストッパ7によって、押圧板3は、往復動作における往路において鋳物砂CSを搬送方向に沿って前進させる方向に押圧し、復路において鋳物砂CSを搬送方向に沿って後退させる方向に押圧することなく復帰する。ストッパ7は、揺動規制装置に相当する。
【0056】
搬送路本体21の上方には、グレーチング8が設けられている。グレーチング8は、高さ方向の寸法が厚い鉄製の格子で形成され、落下して搬送される鋳物砂CSの塊の大きさを制限する。グレーチング8は、付帯設備の設置フレーム81と同じ高さ位置に設けられている。グレーチング8と搬送路2の間には、スロープ板82が設けられ、搬送路2への鋳物砂CSの導入を図っている。
【0057】
(作動)
上記のように構成された鋳物砂搬送装置1の作動について、
図2、
図7、
図10および
図11に基づいて以下に説明する。
スライダフレーム43は、
図2に示すように、上流端に位置決めされ、各押圧板3は、垂下された状態となっている。鋳物砂CSは、以前に押圧板3で送られた状態のものが、小山となって、各押圧板3の下流側に置かれている。
【0058】
制御装置は、駆動装置41を駆動させてクランクアーム42aを180度回転させる。それによって、スライダフレーム43は、下流端まで往路を移動する(押圧工程)。その際に、
図7および
図10に示すように、垂下した状態の各押圧板3は、ストッパ7によって、上流側への回転が規制され、下流側に小山となった鋳物砂CSを下流側に移動させる。曲起こし部33によって、鋳物砂CSをすくい上げるので、より多くの鋳物砂CSを移動させることができる。
【0059】
次に、制御装置は、クランクアーム42aをさらに回転(本実施形態では、
図11に示すように、一回転の途中であるが、上流端の位置にあったスライダフレーム43に対応する位置を0度とした場合、約300度)させる。これによって、スライダフレーム43は、復路を移動し、各押圧板3は隣接する上流側の押圧板3が移動させた鋳物砂CSの小山を乗り越えて上流側に戻ってゆく(復帰工程)。このように、押圧板3は、下流側へ回転し、上流側に戻る際に、鋳物砂CSを上流側へ移動させない。押圧板3は、曲起こし部33によって、引っ掛かることなく滑らかに鋳物砂CSの小山を越えて移動する。
【0060】
以下、同様にスライダフレーム43の往復動を繰り返すことで、鋳物砂CSを下流側へ搬送する。シュートCHに落下され集められた鋳物砂CSは、成分調整されて造型に再利用される。
【0061】
上記の記載で明らかなように、本実施形態の鋳物砂搬送装置1は、余剰の鋳物砂CSを生じる設備の下方に、鋳物砂CSの落下範囲に応じて上面開口した樋形状に設けられ、鋳物砂CSを搬送する搬送方向に沿って延在する搬送路2と、搬送路2に交差するように、搬送方向に沿って所定間隔で並べられ、鋳物砂CSを搬送方向に沿って押圧する複数の押圧板3と、各押圧板3が搬送方向に沿った方向に揺動可能に夫々支持され、複数の押圧板3を、搬送路2に対して搬送方向に沿って往復動させる往復動装置4とを備えている。
【0062】
さらに、往復動の往路において、各押圧板3の揺動を規制することで、鋳物砂CSを搬送方向に沿って前進させるように各押圧板3で押圧し、往復動の復路において各押圧板3の揺動の規制を解くことで、鋳物砂CSを搬送方向に沿って後退させるように押圧することなく(押圧板3の下端を鋳物砂CSの上面に沿わせて移動して)、各押圧板3を復帰させるストッパ7を備えている。
【0063】
これによれば、高さ寸法の小さい装置で、造型後に発生する落下した余剰の鋳物砂CSを搬送できるので傾斜角度を有するホッパが必要無く、ピット深さの軽減、または鋳造設備全体の嵩上げ量が減少して大幅な設備費用を削減できる。また、深いピット内での煩わしい保全作業がなくなるので、保全作業の容易化を図ることができる。また、コンベヤチェーンを使用していないので、ジョイント部に鋳物砂CSが入り込むことによる摩耗を生じることもない。また、鋳物砂CSの落下範囲における機械摺動部分が少ないので摩耗による修繕費用の増大を軽減できる。
【0064】
また、往復動装置4は、複数の押圧板3を搬送方向に沿って連結し、複数の押圧板3を連動して往復動させるスライダフレーム43を備えた。
【0065】
これによれば、スライダフレーム43によって連結された複数の押圧板3を一つの往復動装置4によって、一体的に往復動させることができる。
【0066】
また、スライダフレーム43は、各押圧板3を支持する複数の揺動中心軸5を備え、各押圧板3は、揺動中心軸5を中心に揺動する。
これによれば、各押圧板3は、簡素な構造でよく、揺動中心軸5を中心に揺動する。
【0067】
また、各押圧板3は、押圧板3を搬送方向に向かって所定角度以上回転させたときに、揺動中心軸5より外れる取り外し機構(除去部5a,切欠き部31a)を備えた。
【0068】
これによれば、取り外し機構(除去部5a,切欠き部31a)によって、摩耗等によって取り換えが必要となった押圧板3の取り換え作業を容易かつ迅速に行うことができる。
【0069】
また、各押圧板3の下端部には、前進させる方向に所定幅で曲げ起こした曲起こし部33を備えた。
【0070】
これによれば、往路において、鋳物砂CSを曲起こし部33ですくい上げることで、多量の鋳物砂CSを前進させることができる。復路においては、鋳物砂CSに対し接触部である曲起こし部33によって、鋳物砂CSに対して真正面から向き合って押圧するのを逃げることができ、鋳物砂CSの後退をわずかなものとすることができる。
【0071】
また、往復動装置4は、回転運動を搬送方向に沿った直線運動に変換するスライダクランク機構(運動変換装置42)を備えた。
【0072】
これによれば、一方方向の回転駆動のみで両側移動端のショックも無く簡単な制御でスムーズな往復動を実現することができる。
【0073】
(第二実施形態)
次に、本発明に係る鋳物砂搬送装置の第二実施形態について、
図12~
図14を参照して以下に説明する。
第二実施形態の各押圧板3には、取付部31において、上部にバランサ9が組付けられている点において、第一実施形態と相違する。その他の構造は、第一実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0074】
バランサ9は、例えば、鉄製で四角板状に形成され、搬送方向に沿って延在する垂直面を備えている。バランサ9は、取付部31の上部の外周であって、揺動中心軸5に近い位置に、例えば溶接により接着されている。バランサ9の重量は、押圧板本体32の重量よりも軽く設定されている。そのため、バランサ9を付けた状態で押圧板本体32が垂下する。押圧板本体32は、
図13に示すように、ストッパ7に当接することによって垂直に位置決めされる。しかし、バランサ9と押圧板本体32とを合体した重心は、押圧板本体32だけの重心よりも揺動中心軸5に近い位置となる。
このように、バランサ9は、押圧板3の重心位置を揺動中心軸5側に近づけるものである。
【0075】
これによれば、押圧板3の質量に基づく押圧板3に生じるモーメント力を減少させるので、復路において押圧板3が戻す鋳物砂CSの量を減少させることができる。
【0076】
なお、上記実施形態において搬送路2を水平方向に延在するように配置したものとしたが、これに限定されない。例えば、
図15に示すように、搬送方向に向かって上方に徐々に上がっていく上向き傾斜構造2Uとしてもよく、
図16に示すように、搬送方向に向かって下方に徐々に下がっていく下向き傾斜構造2Dとしてもよい。
【0077】
上向き傾斜構造2Uは、搬送路2の底部21aと設置脚23とを支える底部支持脚24が設けられている。底部支持脚24は、例えば鉄製で四角柱状に形成され、搬送方向の下流側に向かって、より丈の長いものが用いられている。底部支持脚24は、搬送方向に直角な方向に沿って一対ずつ並べて設けられている。底部支持脚24の上端部は、設置脚23が嵌まり込む切れ込みが形成されるとともに、搬送路2の底部21aに例えば溶接等で接着されている。
【0078】
下向き傾斜構造2Dは、搬送路2の底部21aと設置脚23とを支える底部支持脚24が設けられている。底部支持脚24は、例えば鉄製で四角柱状に形成され、搬送方向の下流側に向かって、より丈の短いものが用いられている。その他の構成は、上向き傾斜構造2Uと同様なので、説明を省略する。
【0079】
このように傾斜構造とすることで、搬送の上流側と下流側との間で落差のあるレイアウトが必要な設置場所においても、傾斜させた搬送を行うことができる。
【0080】
また、押圧板3の曲起こし部33を、所定幅で湾曲状に曲げ起こして形成されたものとしたが、これに限定されない。例えば、押圧板本体の縦方向の長さの五分の一程度の下部を、前進させる方向に30度程度屈曲させて直線的な曲起こし部としてもよい。
【0081】
また、上記実施形態では、揺動中心軸5を、円柱形を横にした状態で、下端部分の四分の一ほどを除去部5aによって水平面で除去した形状としたが、これに限定されない。例えば、揺動中心軸を、円柱形を横にした状態で、下端部分と上端部分とを夫々水平面で除去した形状としてもよい。
【0082】
また、運動変換装置42として、ダブルスライダクランク機構を使用したがこれに限定されない。例えば、特許第5548255号公報に記載のスライダクランク機構を使用することができる。
運動変換装置42を、搬送路2の下流端側に配置したが、これに限定されず、例えば、搬送路2の上流端側に運動変換装置を設けてもよい。
【0083】
本発明は、上記しかつ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0084】
1:鋳物砂搬送装置、2:搬送路、3:押圧板、33:曲起こし部、4:往復動装置、41:駆動装置、42:運動変換装置(スライダクランク機構)、43:スライダフレーム(連結装置)、5:揺動中心軸、7:ストッパ(揺動規制装置)、9:バランサ、CS:鋳物砂。